特許第6232071号(P6232071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232071
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】車両用反射型光センサ
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20171113BHJP
   E05F 15/74 20150101ALI20171113BHJP
   G01S 17/88 20060101ALI20171113BHJP
   G01S 7/487 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01V9/04 Q
   E05F15/74
   G01S17/88
   G01S7/487
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-538986(P2015-538986)
(86)(22)【出願日】2014年7月22日
(86)【国際出願番号】JP2014069300
(87)【国際公開番号】WO2015045588
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-196897(P2013-196897)
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000170598
【氏名又は名称】株式会社アルファ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男
(74)【代理人】
【識別番号】100128864
【弁理士】
【氏名又は名称】川岡 秀男
(72)【発明者】
【氏名】雷 俊
(72)【発明者】
【氏名】小野 高志
(72)【発明者】
【氏名】田中 和也
(72)【発明者】
【氏名】平井 航
【審査官】 田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−095274(JP,A)
【文献】 特開2012−162908(JP,A)
【文献】 特開2008−092218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/00−13/00
E05F 15/74
G01S 7/487
G01S 17/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外壁部から車両外部に設定される検出領域に向けて所定間隔をおいて発光部から検出光を投光し、検出領域からの反射光の受光部における受光光量が所定の検出判定用しきい値を超えるしきい値超過状態を検定して検出領域への検出対象の進入を検出した際に検出確認信号を出力する制御部を備えた車両用反射型光センサであって、
前記制御部は、検出判定用しきい値として、統計的な代表値からなる調整値と予め決定された固定値との加算値を使用するとともに、
前記調整値は、判定対象反射光の受光時に、該判定対象反射光に先行する適数の反射光の反射光量に基づいて算出され、
かつ、前記制御部は、前記代表値算定対象に所定のノイズ判定しきい値を超えるノイズ反射光を検出した際、ノイズ反射光に続く所定のノイズ判定しきい値を超えない非ノイズ光が所定数連続することを条件に、該連続非ノイズ光群の光量に対する統計的な代表値を調整値として検出判定用しきい値を算出する車両用反射型光センサ。
【請求項2】
前記制御部は、検出確認信号出力後、所定の検出再開条件の充足を条件に、しきい値超過状態の解消が検出されなくとも検出確認信号出力後の反射光量により調整値を算出して新たなしきい値超過状態を検出する請求項1記載の車両用反射型光センサ。
【請求項3】
前記検出再開条件は、
【数1】
ただし、Thnzはノイズ判定しきい値(定数)、
rは検出再開判定対象の反射光の反射光量、
sはPrに先行する反射光の個数(定数)である。
で与えられる請求項2記載の車両用反射型光センサ。
【請求項4】
前記検出光は、所定数のパルスからなるパルス群として発射され、パルス群を判定単位としてしきい値超過状態の判定を行う請求項1、2または3記載の車両用反射型光センサ。
【請求項5】
前記しきい値超過状態の検出は、各パルス群における発光時の受光部における受光光量の総和と、非発光時における受光部における受光光量の総和との差分を所定の検出判定用しきい値と比較して行われる請求項4記載の車両用反射型光センサ。
【請求項6】
前記制御部は、各パルス群に対し、発光時の受光部における受光光量の総和と非発光時における受光部における受光光量の総和の差分に対する偏差平方和相当値が所定の検定用しきい値以下である場合にのみ有効検出光とする検定を実行し、有効検出光のみを判定対象反射光として採用する請求項4または5記載の車両用反射型光センサ。
【請求項7】
前記しきい値超過状態の検出は、発光時における受光光量と、当該発光光に続く非発光時における受光光量の差分を所定の検出判定用しきい値と比較して行われる請求項1、2または3記載の車両用反射型光センサ。
【請求項8】
前記統計的な代表値として算術平均値が使用される請求項1から7のいずれかに記載の車両用反射型光センサ。
【請求項9】
請求項1から8に記載の車両用反射型光センサと、
車両用反射型光センサにおける検出対象の検出確認信号を条件としてアクチュエータを作動させて車両ドアを開放操作するドア制御部とを有する車両ドア開閉制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用反射型光センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサーを使用して車両のドア開閉操作を制御する車両ドア開閉制御装置としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、車両には地面に向けて赤外線等の信号を出力する足部検出センサが搭載されており、利用者が所持する携帯型無線端末が認証された後、駆動される足部検出センサにより利用者が検出されるとドアの開閉操作が行われる。
【0003】
しかし、上述した従来例において、足部の判定は、足部からの反射光量を所定の検出判定用しきい値と比較して行われるが、車両は異なった光学的環境に停車され、車両外部に設定した検出領域の明るさ等が停車位置により変わるために、足部からの反射光量も増減し、検出信頼性が極めて低下するという問題がある。
【0004】
また、検出精度を高めるために、特許文献2に示すように、複数の反射光量データの移動平均値を所定の検出判定用しきい値と比較することも行われているが、この場合であっても、観測値に対するノイズの影響を低くしたり、あるいは排除することが可能なだけで、検出環境の変化による検出精度の低下を防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-133529号公報
【特許文献2】特開2006-245685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、制御信頼性を向上させた車両用反射型光センサ、およびこれを使用した車両ドア開閉制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば上記目的は、
車両外壁部から車両外部に設定される検出領域1に向けて所定間隔をおいて発光部2から検出光3を投光し、検出領域1からの反射光4の受光部5における受光光量が所定の検出判定用しきい値を超えるしきい値超過状態を検定して検出領域1への検出対象10の進入を検出した際に検出確認信号を出力する制御部6を備えた車両用反射型光センサであって、
前記制御部6は、検出判定用しきい値として、統計的な代表値からなる調整値と予め決定された固定値との加算値を使用するとともに、
前記調整値は、判定対象反射光の受光時に、該判定対象反射光に先行する適数の反射光の反射光量に基づいて算出され、
かつ、前記制御部6は、前記代表値算定対象に所定のノイズ判定しきい値を超えるノイズ反射光を検出した際、ノイズ反射光に続く所定のノイズ判定しきい値を超えない非ノイズ光が所定数連続することを条件に、該連続非ノイズ光群の光量に対する統計的な代表値を調整値として検出判定用しきい値を算出する車両用反射型光センサを提供することにより達成される。
【0008】
本発明において、しきい値超過状態の検出に使用する検出判定用しきい値は、判定対象の反射光4に先行する適数の反射光4を統計的に処理して得られた調整値に予め決定された固定値を加えて得られるために、停車位置、あるいは停車後の時間経過による明るさ等の光学的特性の変化が判定基準に反映されているために、停車場所、時間等の影響を受けることなく高い検出精度を維持することが可能になり、動作信頼性が向上する。
【0009】
また、制御部6は、
前記代表値算定対象に所定のノイズ判定しきい値を超えるノイズ反射光を検出した際、ノイズ反射光に続く所定のノイズ判定しきい値を超えない非ノイズ光が所定数連続することを条件に、該連続非ノイズ光群の光量に対する統計的な代表値を調整値として検出判定用しきい値を算出するように構成することができる。
【0010】
本発明においては、判定対象の反射光に対してノイズチェックを行い、かつ、ノイズ光と判定された際には、ノイズ原因の消失を待って再び調整値を算出するために、ノイズ反射光による調整値への影響の排除が可能になり、判定精度がより高くなる。
【0011】
さらに、制御部6は、
検出確認信号出力後、所定の検出再開条件の充足を条件に、しきい値超過状態の解消が検出されなくとも検出確認信号出力後の反射光量により調整値を算出して新たなしきい値超過状態を検出するように構成することができる。
【0012】
反射型光センサは、検出確認信号が出力された後、しきい値超過状態解消の検出により再びしきい値超過状態の検出動作を再開する。
【0013】
本発明においては、検出確認信号出力後に所定の検出再開条件が充足されると、しきい値超過状態の解消が検出されなかった場合であっても、検出確認信号出力後の反射光量により調整値を算出し、新たなしきい値超過状態が検出される。
【0014】
したがって本発明によれば、光学的環境の変化等によって検出確認信号が出力された場合であっても、自動的に新たな条件を組み込んだ検出判定用しきい値に基づく検出領域1内への検出対象10の進入を検出することができる。
【0015】
また、前記検出再開条件は、所定のノイズ判定しきい値を超えない非ノイズ光が所定数連続することを条件とすることにより検出確認信号出力後の過渡状態による不安定要因を排除することが可能になるが、
【数10】



【0016】
を検出再開条件とした場合には、複数の反射光4に対して個別に条件充足を判定する場合に比して、演算を簡略にすることができるために、制御部6への負担を軽減することが可能になる。
【0017】
また、車両ドア開閉制御装置の検出光3は、
所定数のパルスからなるパルス群として発射され、
反射型光センサは、パルス群を判定単位としてしきい値超過状態の判定を行うように構成することができる。
【0018】
本発明において、検出光3を複数のパルスから構成されるパルス群単位で発射し、パルス群単位でしきい値超過状態の判定を行うことにより、単発のパルスを単位として判定する場合に比してノイズ耐性が向上し、判定精度も向上する。
【0019】
この場合、
前記しきい値超過状態の検出は、各パルス群における発光時の受光部5における受光光量の総和と、非発光時における受光部5における受光光量の総和との差分を所定の検出判定用しきい値と比較して行われるように構成することができる。
【0020】
車両は停車位置の光学的環境が特定せず、検出領域1の明るさ等が停車位置により変わる上に、同一位置でも屋外停車の場合には、降雪、降雨、日照等が常に変化するために、発光時における反射光量のみを判定基準とすると、検出信頼性が極めて低下する。
【0021】
これに対し、本発明のように、発光時と非発光時の反射光量の差分を判定対象とすることにより、検出領域1の壁面等、背景の反射特性のばらつきによる判定精度の低下を確実に防止することが可能になる。
【0022】
さらに、
前記制御部6は、前記各パルス群に対し、発光時の受光部5における受光光量の総和と非発光時における受光部5における受光光量の総和の差分に対する偏差平方和相当値が所定の検定用しきい値以下である場合にのみ有効検出光とする検定を実行し、有効検出光のみを判定対象反射光4として採用するように構成すると、より精度を高めることが可能になる。
【0023】
また、これら車両用反射型光センサを使用した車両ドア開閉制御装置は、
車両用反射型光センサ(A)と、
車両用反射型光センサ(A)における検出対象10の検出確認信号を条件としてアクチュエータ7を作動させて車両ドア8を開放操作するドア制御部9とを有して構成することができる。
【0024】
本発明において、ドア制御部9は検出確認信号を受領すると、適宜の認証手段により解錠操作権限が認証されていること等の所定の他の条件が充足していることを条件に施錠状態の解除、および車両ドア8の開放操作信号をアクチュエータ7に出力し、ドアの開放操作が行われる。この結果、解錠条件が充足した状態で荷物、手等を検出領域1に差し出すだけで、ドアを開放することができるために、利便性が向上する。
なお、本発明によれば、
車両外壁部から車両外部に設定される検出領域1に向けて所定間隔をおいて発光部2から検出光3を投光し、検出領域1からの反射光4の受光部5における受光光量が所定の検出判定用しきい値を超えるしきい値超過状態を検定して検出領域1への検出対象10の進入を検出した際に検出確認信号を出力する制御部6を備えた車両用反射型光センサであって、
前記制御部6は、検出判定用しきい値として、判定対象反射光4に先行する適数の反射光4の反射光量に対する統計的な代表値からなる調整値と予め決定された固定値との加算値を使用する車両用反射型光センサを提供することも可能である。

【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、判定しきい値を状況に応じて変化させるために、制御信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】車両ドア開閉制御装置が使用された車両を示す図で、(a)は背面図、(b)は側面図、(c)は(a)の1C-1C線断面図である。
図2】反射型光センサのブロック図である。
図3】制御部の動作を示すタイミングチャートである。
図4】しきい値超過状態の検出タイミングを示すタイミングチャートである。
図5】しきい値超過状態解消の検出タイミングを示すタイミングチャートである。
図6】検定再開条件を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に車両ドア開閉制御装置が使用された車両を示す。本例において車両ドア開閉制御装置は、ダンパ装置等のアクチュエータ7により駆動されるパワーバックドアの開閉動作を制御するためのバックドア制御装置として構成されるもので、車両のバックドアに固定される車両用反射型光センサと、アクチュエータ7を制御するためのドア制御部9とを有する。
【0028】
後述するように、反射型光センサ(A)は、検出光3が投光される所定の検出領域1内への検出対象10の進入を検出すると、検出確認信号を出力するように構成されており、ライセンスプレートフィニッシャ11に囲まれたライセンスプレート取り付け凹部の天井壁部に固定される。なお、図1において12はライセンスプレートを示す。
【0029】
また、本例において、反射型光センサ(A)の検出領域1の中心をライセンスプレート取り付け凹部内に位置させるために、検出光3の光軸はやや車両内方側に傾けられる(角度θ)。これにより、ライセンスプレート取り付け凹部外での検出能が低下するために、車両に利用者以外のヒト、動物、ゴミ等が接近した状態で反射型光センサ(A)が不用意に反応することが防止できる。
【0030】
本例においてドア制御部9は、上記反射型光センサ(A)から検出確認信号が出力されると、まず、利用者が所持する電子キーの認証、バックドアの状態検出、施解錠動作等の準備動作を行った後、アクチュエータ7を駆動させる。電子キーの認証は、図外の認証装置と交信して電子キーから出力される認証コードを認証することにより行われ、認証が成立すると、バックドア8が閉扉状態にあることを条件にバックドア8を解錠操作した後、アクチュエータ7を駆動させて開扉動作が開始される。
【0031】
したがってこの実施の形態において、荷物等で手がふさがっている状態であっても、検出領域1として設定されたライセンスプレート取り付け凹部内、あるいはその近傍に検出対象10となる荷物等を近付けるだけでバックドア8の開放操作が行えるために、利便性が向上する。
【0032】
図2に示すように、反射型光センサ(A)は、赤外線LEDを発光源とする発光部2と、赤外線受光素子を含む受光回路を備える受光部5と、制御部6とを有し、制御部6には、発光部2の発光タイミングを制御する発光制御部6a、受光部5での受光タイミングを制御する受光制御部6b、およびしきい値演算部6dを備える演算部6cが含まれる。
【0033】
図3に示すように、発光部2は発光制御部6aに制御されて、適数(本例においては8発)のパルス(pls)からなるパルス群(PLS)を単位とする検出光3を所定の間隔(図3においてはT1、T2)で発射する。
【0034】
受光制御部6bは、省電力のために、発光部2におけるパルス群(PLS)の発光タイミングに合わせて受光回路をスリープ状態から活性化させ、各発光パルス(pls)に対する発光時と非発光時の受光部5における受光光量を取得する。発光パルス(pls)に対する発光時の受光光量の取得は、発光制御部6aが各パルス(pls)の発光要求を発光部2に送出してから発光が開始されるまでの遅延時間等を考慮して各発光パルス(pls)に対する反射光4がピークに達するタイミングで行われ、その値が発光時受光光量(H)として取得される。
【0035】
また、非発光時の受光光量は、発光部2が発光状態から非発光状態に遷移し、発光時の残光が消失したタイミングで取得され、その値が非発光時受光光量(L)とされる。
【0036】
一方、演算部6cは、受光部5での受光光量に基いて、パルス群(PLS)を単位とする反射光量を演算する。パルス群(PLS)の反射光量(P)は、
【数1】



【0037】
で与えられる。
【0038】
なお、(1)式に示されるように、反射光量の算出に際し、先頭パルスに対する受光量(H1、L1)と最後尾パルスに対する受光量(H8、L8)の算入を排除することにより、過渡状態における不安定性が排除される。
【0039】
以上のようにして求められた各パルス群の反射光4は、演算部6cにおいて有効性が判定される。有効性は、同一パルス群内での反射光量の均質性により外乱要素の混入を評価するもので、パルス群内の各パルスのバラつき、具体的には、偏差平方和相当値が所定の有効性検定しきい値(Thval)より大きな場合には、無効データとされる。
【0040】
偏差平方和相当値には、各パルス光に対する受光量(P)と平均値との差の2乗の合計値として与えられるいわゆる偏差平方和、あるいは偏差平方和をデータ数で割って求められる分散、さらには、分散の平方根として求められる標準偏差等を使用することが可能であるが、本例においては、(2)式に示すように、各パルスの受光量と平均値との差の絶対値の総和により代用され、制御部6への負担を軽減している。
【数2】



【0041】
また、演算部6cは、上述したパルス群の反射光量を所定の検出判定用しきい値(Thon)と比較して、しきい値超過状態の検出、しきい値超過状態の解消検出、さらには、検出領域1への検出対象10の進入を判定し、検出領域1への検出対象10の進入が検出された際には、検出確認信号を所定時間出力し、さらに検出確認信号が出力されたことを示す確認信号出力フラグがセットされる。
【0042】
この確認信号出力フラグは、確認信号出力後、所定期間内にしきい値超過状態解消が検出された場合、および所定期間内にしきい値超過状態が検出されなかった場合で、所定の解消条件が成立した場合にリセットされ、演算部6cは、当該確認信号出力フラグがリセット状態にあるときにのみしきい値超過状態の検出ステップを実行する。
【0043】
上記しきい値超過状態の判定基準となる検出判定用しきい値(Thon)は、予め設定された固定値(Thonfix)と、調整値(Thcal)との和として求められ、本例において、固定値(Thonfix)は、有効性検定しきい値(Thval)の20ないし30パーセント程度に設定される。
【0044】
また、調整値(Thcal)は、図4、および(3)式に示すように、判定対象パルス群(Pn)に先行する所定数(本例においては10個)の受光光量の平均値として与えられ、演算部6c内のしきい値演算部6dにおいて算出される。
【数3】



【0045】
なお、本例において、調整値(Thcal)は先行する適数の受光光量の算術平均により与える場合を示したが、統計的な代表値であれば、例えば、最頻値、中央値等適宜のものを使用することができる。
【0046】
また、上記演算部6cは、各パルス群に対する有効性検定に加え、上記調整値(Thcal)を使用したノイズ判定を実行し、ノイズが検出された際に、しきい値演算部6dに伝達する。
【0047】
ノイズ判定は、ノイズ判定対象のパルス群の受光光量(Pn)と、当該受光光量(Pn)に先行する10個の受光光量の平均値、すなわち、調整値(Thcal)との差分と所定のノイズ判定しきい値(Thnz)とを比較して行われ、(4)、(5)式のいずれかを充足することによりノイズ光と判定される。本例において、ノイズ判定しきい値(Thnz)は、Thonfixの5ないし8パーセント程度に設定される。
【数4】



【0048】
ノイズの発生を通知されたしきい値演算部6dは、それ以後の受光光量を観察して受光光量の安定性を判定する。安定性の判定は、ノイズパルス群に後続する適数個(本例においては20個)に対して(6)式を充足するか否か、すなわち、反射光量がノイズ判定しきい値(Thnz)内に収まる非ノイズ光であるか否かを判定し、(6)式を充足する場合には後続パルス群に対して安定性ありと判定する。
【数5】



【0049】
しきい値演算部6dは、後続パルス群に対して安定性ありと判定した場合には、(7)式に示すように、判定対象パルス群(Pn+21)に先行する10個の受光光量の平均を調整値(Thcal)とし、安定性なしと判定した場合には、(8)式に示すように、ノイズパルス群(Pn)に先行する10個の受光光量の平均を調整値(Thcal)として検出判定用しきい値(Thon)を決定する。
【数6】



【0050】
図3以下に制御部6での動作を示す。まず、ドア制御部9、あるいは図外の車載コンピュータ等の制御装置が光センサ(A)による検出動作の開始条件が充足されたことを検知すると、ドア制御部9等から光センサ(A)の駆動信号が出力され、光センサ(A)の電源が投入される。光センサ(A)の検出開始条件は、例えば、車両のシフトレバー位置等による検出される車両の停車等、適宜に設定される。
【0051】
光センサ(A)の電源が投入されると、所定時間、制御部6のCPUが初期化された後(ステップS1)、しきい値演算部6dによるキャリブレーション初期化が実施され(ステップS2)、キャリブレーション初期化中、発光制御部6aは、パルス群の発射間隔(T1)を15(ms)程度に維持する。
【0052】
キャリブレーション初期化は、パルス群を所定数(本例においては10発)発射して各パルス群に対する反射光量(P1、P2・・・・10)を取得し、その平均値を初期の調整値(Thcal)とすることにより行われる。
【0053】
キャリブレーション初期化工程が終了すると、演算部6cは、発光制御部6aにより検出光3の発光間隔を117(ms)程度の長周期の間欠モードに維持した状態でしきい値超過状態への移行を監視する(ステップS3)。
【0054】
図4に示すように、超過状態検出モードにおいて演算部6cは上述したように、検出判定用しきい値(Thon)と反射光量(P)を比較し、
Pn => Thon
=Thonfix+Thcal ・・・・(9)
を充足するとき、しきい値超過状態と判定する。
【0055】
演算部6cがしきい値超過状態を検出すると(ステップS4)、次いで、超過状態の検定工程を実行する(ステップS5)。検定工程は、上記検出されたしきい値超過状態が検出領域1への利用者による意図的な検出対象10の進入操作であるか否かを知るためのもので、超過状態の検出を含め所定回数(本例においては4回)連続して検出判定用しきい値(Thon)を超えたか否かを検定合否基準とする。
【0056】
この検定工程における検出判定用しきい値(Thon)には、検定中における調整値(Thcal)の変化による検定精度の低下を防止するために、しきい値超過状態検出時のものが使用され、以下(10)から(13)式のすべてを充足することが検定合格条件となる。
【数7】



【0057】
上記条件を充足して意図された操作として検定合格と判定されると(ステップS6)、確認信号出力フラグをセットした後、検出確認信号を所定時間(T4)(150msec程度)出力する(ステップS7)。
【0058】
一方、検定工程において、条件合致前に(2)式に基づく、検定用しきい値(Thv)を超える無効な受光光が観測された場合には、検定工程を終了して監視モードに復帰する。
【0059】
また、発光制御部6aは、上記検定工程においてしきい値超過状態が検出されると、検出パルス群(Pn)の直後のパルス群(Pn+1)を間隔(T2)の長周期モードで発生させた後(ステップS51)、発光間隔(T3)が20(msec)程度に短縮された短周期モードに移行し(ステップS52)、検出確認信号の出力を待って超過状態解消検出モードに移行する(ステップS8)。
【0060】
図5に示すように、超過状態解消検出モードは、長周期モードでパルス群を発射しながら、超過状態の解消を監視する。超過状態解消の判定は、パルス群に対する反射光量が所定回数(本例においては4回)連続して検出解消判定用しきい値(Toff=Thofffix+Thcal)を下回ったこと、すなわち、(14)から(17)式のすべてを充足することが条件とされる。本例においてThofffixは、Thnzと同様に、Thonfixの5ないし8パーセント程度に設定される。
【数8】



【0061】
ステップS8において超過状態解消が検出されると(ステップS80)、演算部6cは確認信号出力フラグをリセットし、再び超過状態検出モードに復帰して超過状態の検出に備える(ステップS3)。ステップS3における検出判定用しきい値(Thon)には、上記超過状態解消検出モードにおいて使用した調整値を初期値とした後続パルス群(Pm+4、Pm+5・・・)の平均値が使用される。
【0062】
これに対し、図6に示すように、ステップS8において超過状態解消が検出されなかった場合、演算部6cは検出再開条件の充足を条件にしきい値超過状態を解消させる。検出再開条件は、(6)式により定義される非ノイズ光が所定数(本例においては20)連続することであり、検出再開条件の充足によるしきい値超過状態の解消により、確認信号出力フラグはリセットされて再び超過状態検出モードに復帰し、新たなしきい値超過状態の検出に備える(ステップS9)。ステップS9における検出判定用しきい値(Thon)の調整値(Thcal)は、(7)式により求められた値が使用される。
【0063】
なお、上記検出再開条件の判定は、単一のパルス群ごとに行うことも可能であるが、本例においては、システムへの負担を軽減するために、(18)式のように、20個のパルス群全体を評価することにより連続的な条件合致が類推される。
【数2】
(付記)
(付記1)
車両外壁部から車両外部に設定される検出領域に向けて所定間隔をおいて発光部から検出光を投光し、検出領域からの反射光の受光部における受光光量が所定の検出判定用しきい値を超えるしきい値超過状態を検定して検出領域への検出対象の進入を検出した際に検出確認信号を出力する制御部を備えた車両用反射型光センサであって、
前記制御部は、検出判定用しきい値として、統計的な代表値からなる調整値と予め決定された固定値との加算値を使用するとともに、
前記調整値は、判定対象反射光の受光時に、該判定対象反射光に先行する適数の反射光の反射光量に基づいて算出され、
かつ、前記制御部は、前記代表値算定対象に所定のノイズ判定しきい値を超えるノイズ反射光を検出した際、ノイズ反射光に続く所定のノイズ判定しきい値を超えない非ノイズ光が所定数連続することを条件に、該連続非ノイズ光群の光量に対する統計的な代表値を調整値として検出判定用しきい値を算出する車両用反射型光センサ。
(付記2)
前記制御部は、検出確認信号出力後、所定の検出再開条件の充足を条件に、しきい値超過状態の解消が検出されなくとも検出確認信号出力後の反射光量により調整値を算出して新たなしきい値超過状態を検出する付記1記載の車両用反射型光センサ。
(付記3)
前記検出再開条件は、
【数3】
ただし、Thnzはノイズ判定しきい値(定数)、
rは検出再開判定対象の反射光の反射光量、
sはPrに先行する反射光の個数(定数)である。
で与えられる付記2記載の車両用反射型光センサ。
(付記4)
前記検出光は、所定数のパルスからなるパルス群として発射され、パルス群を判定単位としてしきい値超過状態の判定を行う付記1、2または3記載の車両用反射型光センサ。
(付記5)
前記しきい値超過状態の検出は、各パルス群における発光時の受光部における受光光量の総和と、非発光時における受光部における受光光量の総和との差分を所定の検出判定用しきい値と比較して行われる付記4記載の車両用反射型光センサ。
(付記6)
前記制御部は、各パルス群に対し、発光時の受光部における受光光量の総和と非発光時における受光部における受光光量の総和の差分に対する偏差平方和相当値が所定の検定用しきい値以下である場合にのみ有効検出光とする検定を実行し、有効検出光のみを判定対象反射光として採用する付記4または5記載の車両用反射型光センサ。
(付記7)
前記しきい値超過状態の検出は、発光時における受光光量と、当該発光光に続く非発光時における受光光量の差分を所定の検出判定用しきい値と比較して行われる付記1、2または3記載の車両用反射型光センサ。
(付記8)
前記統計的な代表値として算術平均値が使用される付記1から7のいずれかに記載の車両用反射型光センサ。
(付記9)
付記1から8に記載の車両用反射型光センサと、
車両用反射型光センサにおける検出対象の検出確認信号を条件としてアクチュエータを作動させて車両ドアを開放操作するドア制御部とを有する車両ドア開閉制御装置。
(付記10)
車両外壁部から車両外部に設定される検出領域に向けて所定間隔をおいて発光部から検出光を投光し、検出領域からの反射光の受光部における受光光量が所定の検出判定用しきい値を超えるしきい値超過状態を検定して検出領域への検出対象の進入を検出した際に検出確認信号を出力する制御部を備えた車両用反射型光センサであって、
前記制御部は、検出判定用しきい値として、統計的な代表値からなる調整値と予め決定された固定値との加算値を使用し、
かつ、前記調整値は、判定対象反射光の受光時に、該判定対象反射光に先行する適数の反射光の反射光量に基づいて算出される車両用反射型光センサ。
【符号の説明】
【0064】
1 検出領域
2 発光部
3 検出光
4 反射光
5 受光部
6 制御部
7 アクチュエータ
8 車両ドア
9 ドア制御部
10 検出対象
A 車両用反射型光センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6