特許第6232073号(P6232073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232073生体由来カルボン酸エステルからのバイオ燃料の製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232073
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】生体由来カルボン酸エステルからのバイオ燃料の製造
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/02 20060101AFI20171106BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20171106BHJP
   C07C 29/149 20060101ALI20171106BHJP
   C07C 31/12 20060101ALI20171106BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C10L1/02
   C07C31/20 B
   C07C29/149
   C07C31/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】21
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-549446(P2015-549446)
(86)(22)【出願日】2013年12月9日
(65)【公表番号】特表2016-501964(P2016-501964A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013073793
(87)【国際公開番号】WO2014099433
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月21日
(31)【優先権主張番号】61/739,790
(32)【優先日】2012年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー−ダニエルズ−ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ステンスラッド,ケネス
(72)【発明者】
【氏名】ベンキタサブラマニアン,パドメッシュ
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 カナダ国特許出願公開第02657666(CA,A1)
【文献】 特表2003−518366(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/027211(WO,A1)
【文献】 特表2002−537848(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/001862(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P,C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種の遊離カルボン酸をみ、且つ、pHが5未満である発酵培養液を得る工程と;b)前記遊離カルボン酸を含む前記発酵培養液を粉末に乾燥させる工程と;c)前記粉末中の前記カルボン酸を、アルコール溶媒と、CO雰囲気中、他の酸触媒の不在下に、前記アルコールまたはCOの少なくとも一方の超臨界、臨界または臨界近傍条件にある反応温度もしくは反応圧力のいずれかまたは両方で反応させることにより、エステルを合成する工程と;d)バイオ燃料を生成するために、前記エステルを水素化分解または水素化のいずれかに供する工程を含む、バイオ燃料を製造するためのプロセス。
【請求項2】
e)前記バイオ燃料を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記バイオ燃料がアルカンまたはアルコールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記バイオ燃料が、エタン、エタノール、プロパン、プロパノール、ブタン、1−ブタノール、オクタンおよびオクタノールの少なくとも1種を含む、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記発酵培養液が細胞塊および不溶な化合物を含み、前記発酵培養液から前記細胞塊および不溶な化合物を乾燥工程前またはエステル合成後のいずれかにおいて濾過する工程をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
水素化分解または水素化のいずれかの前に前記エステルを濃縮する工程をさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
水素化分解または水素化のいずれかの前に濾過を行うことによって前記不溶な化合物を分離する工程をさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記発酵培養液が連続発酵プロセスの一部であり、前記不溶な化合物を前記発酵培養液に戻して再利用する工程をさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記発酵培養液がバッチ式発酵プロセスの一部であり、前記不溶な化合物を第2の発酵反応器で再利用する工程をさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルコール溶媒がC〜C20のR基を有し、少なくとも1種の飽和、不飽和、環状または芳香族種である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびC15〜C18脂肪酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、グルカル酸、シュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸およびトリメシン酸からなる群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カルボン酸が多価カルボン酸である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記多価カルボン酸がジカルボン酸またはトリカルボン酸である、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記カルボン酸が多価カルボン酸である場合、前記エステルは少なくともジエステルである、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記反応温度が150℃〜250℃であり、前記圧力が400psi〜3,000psiの範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
前記遊離カルボン酸が、ハロゲン化アシルを生成するためのハロゲン化物による活性化に付されない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
前記発酵培養液のpHが1.5〜4.5の範囲にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記乾燥工程が、噴霧乾燥、ドラム乾燥または凍結乾燥の少なくとも1つによる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
前記遊離カルボン酸の混合物が、少なくとも2価の酸、3価の酸または多価酸を含み、アルコールとの前記反応による、前記遊離カルボン酸の対応するエステルへの前記2価の酸、3価の酸または多価酸の転化率が最低でも50%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項20】
前記エステルを少なくとも90%の純度に精製する工程をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項21】
前記精製工程が、結晶化、クロマトグラフィーまたは蒸留の少なくとも1つによる、請求項20に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本特許出願は、2012年12月20日に出願された米国仮特許出願第61/739,790号に基づく優先権を主張するものであり、当該明細書の内容を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、特定のバイオ燃料を製造するためのプロセスに関する。特に本発明は、水素化または水素化分解のいずれかにより生体由来のカルボン酸のエステルからバイオ燃料製品を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
環境問題に対する認識の高まりと共に、石油をはじめとした化石由来資源の供給の不安定化に伴う経済的圧力や燃料コストの増大に起因して、代替燃料の開発が重要視されるようになっている。政策担当者らもその重要性を認識しており、バイオ燃料の生産および使用を奨励するようになった。石油化学または天然ガス由来の炭化水素資源依存からの脱却に関心が集まるようになり、再生可能かつ持続可能な「環境負荷の少ない(green process)」炭素資源の探索に注力する者もいる。初期のいわゆる第1世代バイオ燃料の製造は、食料生産物(例えば、デンプンおよび糖類を含むトウモロコシ、コムギ、サトウキビ等の植物)を発酵させることにより短鎖アルコール(例えば、エタノール、ブタノール)を得ることによるかまたは植物油(例えば、菜種、大豆)をグリセロール分解に付し、遊離した脂肪酸をエステル交換することによって、バイオディーゼルとして使用される脂肪酸メチルエステルを得ることにより行われていた。(例えば、Cesar B. Grandaら、“Sustainable Liquid Biofuels and Their Environmental Impact,” ENVIRONMENTAL PROGRESS, Vol. 26, No. 3, pp. 233- 250 (Oct. 2007)参照。当該文献を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。)
【0004】
バイオディーゼルの製造等に使用されるカルボン酸は、植物油から誘導する以外に、発酵によって炭水化物供給源から製造することもできる。リンゴ酸やコハク酸等のカルボン酸の発酵による生産は石油化学系燃料と比較して幾つか利点があるものの、バイオベースのカルボン酸は製造コストが高過ぎるため、バイオベースの製造は石油化学製品の生産体制とコスト競争できるまでには至らなかった(例えば、James McKinlayら、“Prospects for a Bio-based Succinate Industry,” APPL. MICROBIOL. BIOTECHNOL., (2007) 76:727−740参照。当該文献を、本明細書を構成するものとしてここに援用する)。デンプンおよび糖類の発酵においては、微生物を利用することによってカルボン酸が生成する。微生物を機能させるためには一定の条件が必要である。例えば、文献に記載されている商業的実用性が最も高いコハク酸エステルを産生する微生物を用いる場合、増殖性、変換率および生産性を最大にするためにpHを適切な値に保つよう発酵培養液(broth)を中和することが必要である。
【0005】
現在、カルボン酸は、発酵培養液から遊離酸ではなく塩として回収されている。通常、発酵培養液のpHは、水酸化アンモニウムまたは他の塩基を培養液に導入することによってpH7付近に維持されており、それによってカルボン酸が対応する酸塩に変換される。カルボン酸塩を生成させると、遊離有機酸の形態で生成させた場合と比較して処理費用がかなり高くなる。発酵培養液中の酸およびその塩の分離および精製は困難であるため、製造費用全体の約60%が下流の処理で発生する。
【0006】
カルボン酸を塩として回収することには多くの問題が伴い、また、発酵後の下流の処理において、遊離酸を単離するため、および化学的変換に用いるためのカルボン酸を調製するため、および未処理の酸を有用な化合物に変換するために、幾つかの異なる段階を経ることが必要となる。従来の発酵プロセスにおいて塩を生成する場合、酸の各当量を中和する当量の塩基が必要となる。使用される試薬の量によってコストが増大する可能性がある。さらに、遊離酸を得るために塩の対イオンを除去することが必要であり、その結果として生成する廃棄物や副生成物を除去および廃棄することが必要となる。例えば、C二酸のカルシウム塩は水性の培養液に対する溶解性が非常に低いため(通常は室温で3g/リットル未満)、遊離酸種が必要となる多くの用途(ブタンジオールやバイオ燃料等の派生品を得るための化学的変換等)に適していない。したがって、カルシウム塩は通常は硫酸に溶解させており、それによって不溶な硫酸カルシウムが生成する。硫酸カルシウムは遊離二酸から容易に分離することができる。硫酸カルシウムは商業的な用途がほとんどない生成物であるため、通常は固形廃棄物として埋立地または他の固形廃棄物廃棄場に廃棄される。これらの各作業単位が全てプロセス全体のコストに影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遊離カルボン酸の生成に付随する廃棄物およびコストを低減すると共に、回収率を改善するために、リンゴ酸やコハク酸等の様々なカルボン酸を回収するためのより優れたより直接的な方法であって、生物学的に誘導された炭化水素原料を、水素化または水素化分解によるエタン、プロパン、プロパノール、ブタノール等の様々なバイオ燃料製品の製造にうまく結びつける経路を提供することができる方法が必要とされている。このような効率的で環境負荷の少ないプロセスが考案されれば歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の概要
本発明は、バイオ燃料を製造するためのプロセスに関する。このプロセスは:a)少なくとも1種の遊離カルボン酸またはカルボン酸の混合物または少なくとも1種のカルボン酸のカルボン酸およびこれに付随する(associated)アルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩の混合物を含む発酵培養液を得る工程と;b)遊離カルボン酸を含む上記発酵培養液を粉末に乾燥させる工程と;c)対応する1種または複数種のエステルを合成するために、上記粉末中の上記カルボン酸と、アルコール溶媒または少なくとも1種のアルコールの混合物とを、CO雰囲気中、他の酸触媒の実質的な不在下に、このアルコールまたはCOの超臨界、臨界または臨界近傍条件に相当する反応温度および圧力下で反応させる工程と;d)1種以上のバイオ燃料を生成するために、生成したエステルを水素化分解または水素化のいずれかに供する工程と;e)1種以上のバイオ燃料を回収する工程とを含む。このエステルは、モノエステル、ジエステルまたはトリエステルとすることができる。好ましくは、エステルはジエステルまたはトリエステルである。モノエステルはモノアルコールに、ジエステルはジオールに、トリエステルはトリオールに変換することができる。バイオ燃料製品はアルカンまたはアルコールのいずれかとすることができる。
【0009】
エステル化反応温度は約150℃〜約250℃であり、運転可能な反応圧力は約400psi〜約3,000psiである。所望の結果に応じて、エステル化反応を少なくとも約4時間運転することができる。
【0010】
次に記載する詳細な説明において本発明の方法のさらなる特徴および利点を開示する。上述の概要も次に述べる詳細な説明および実施例も単に本発明の代表的なものであり、特許請求される本発明を理解するための概要を提供することを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発酵培養液由来の有機カルボン酸をエステル化するための本プロセスの手順ならびに結果として得られるエステルを単離することができる、および/またはこの種のエステルから他の化合物を生成することができるさらなる下流プロセスの手順を説明する概略図である。
図2】本プロセスの実施形態の一部に従う、発酵由来のコハク酸を用いたエステルの生成ならびにNa塩およびMg塩を発酵反応器に戻して再利用する下流プロセスの例を示す概略図である。
図3】本発明に従い、様々なアルコール中において遊離コハク酸を対応するジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルに変換する、COを利用したエステル化を説明する略図である。
図4】他の多価カルボン酸を用いた、COを利用したエステル化を説明する図である。
図5】温度を変化させた場合の、発酵培養液由来の遊離コハク酸のCOを利用したエステル化の概要を示す一連の反応図である。
図6】初期運転圧力を変化させた場合の、本発明に従う遊離カルボン酸のCOを利用したエステル化の概要を示す一連の反応図である。
図7】温度および反応時間を変化させた場合の、本発明に従う遊離カルボン酸のCOを利用したエステル化の概要を示す一連の反応図である。
図8】コハク酸ならびにそのMg2+およびCa2+塩を反応させた結果をまとめた一連の反応図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
第I項−説明
A.
本開示の一部においては、糖類や他の植物系炭水化物等の生物体由来の炭素資源から水素化または水素化分解のいずれかを行うことによって様々なバイオ燃料製品を製造するためのプロセスについて記載する。このプロセスは、カルボン酸を発酵培養液から回収する機能と、バイオ燃料を生成する反応の原料として酸を使用する機能とを効率的な流れで結びつけたものである。本プロセスは、カルボン酸をその対応するエステル(例えば、モノエステル、ジエステルまたはトリエステル)に、比較的効率的かつ費用対効果の高い形で変換する方法を含む。
【0013】
本明細書において用いられる「バイオ燃料」という語は、植物バイオマス、セルロース系バイオマスもしくは農業バイオマスまたはこれらの誘導体等の再生可能な生物資源から製造される、燃料として使用される気体、液体または固体物質を指す。特に、バイオ燃料とは、内燃機関の特定の機構を作動させる運輸燃料中にもしくは運輸燃料として使用することができるか、またはエネルギー発生用途に使用することができる材料を指す。例えば、プロパノールおよびブタノールはガソリン添加剤として用いることができ、エタノールと大差はない。液化石油ガス(LPG)に含まれるブタンおよびプロパンならびに天然ガスに含まれるエタンは特定の輸送機構の燃料に適合させることができる。他の生物学的に誘導された炭化水素(オクタノール/オクタンまたはCもしくはCよりも高級なアルカン等)もバイオ燃料とすることができる。
【0014】
特に本プロセスは、対象の遊離カルボン酸と、場合により付随するアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウム塩)との混合物を含む発酵培養液(細胞塊および不溶性化合物は除去されていてもいなくてもよい)を得る工程と;遊離カルボン酸を含む未精製または清澄化された発酵培養液を粉末に乾燥させる工程と;エステルを合成するために、粉末中のカルボン酸とアルコールとを、CO含有雰囲気中で、他の酸触媒の実質的な不在下に、アルコールおよび/またはCOの超臨界、臨界または臨界近傍条件に相当する反応温度および圧力で反応させる工程と;バイオ燃料製品を生成するために、このエステルを水素化または水素化分解のいずれかに供する工程とを含む。本明細書において用いられる「遊離カルボン酸」という語は、そのpKa値以下の溶液中で少なくとも50%がそのプロトン化状態にあるカルボン酸化合物を指す。本明細書において用いられる「実質的な不在下」という語は、酸触媒がほとんどもしくは全く存在しないかまたは触媒作用を示す量よりも少ない極小量(de minimis)もしくは微量で存在する状態を指す。換言すれば、他の触媒は全く存在しないかまたは反応物中のカルボン酸に対し10%、5%、3%もしくは1%(重量/重量)未満の量で存在する。
【0015】
他の態様においては、本発明は、他の形態では単離が困難で費用がかかるカルボン酸からエステルを生成する、簡素かつ有効な方法の発見を含む。本発明の利点は、従来の培養液からの酸の抽出に必要であった、発酵培養液からの酸の単離および精製を行う必要なく、発酵培養液から直接遊離カルボン酸を使用することおよびそこから対応するエステルを生成することができることにある。
【0016】
本プロセスは、有機酸を中和または変換によってその塩にする特定の発酵プロセスよりも容易に有機酸を発酵培養液から単離および抽出する方法を提供する。本プロセスにより、発酵培養液から金属塩を析出させることができる滴定および中和ならびに貯蔵用プラットフォーム化合物を製造するための特定の精製段階が不要となる。遊離有機酸はエステルに変換され、このエステルは、高価で複雑なクロマトグラフィー分離用カラムまたは樹脂を使用することなく、蒸留または他の精製技法によってより容易に処理および抽出される。例えば、従来のプロセスにおいては、酸を単離するためにはイオン交換クロマトグラフィーの使用が必要となるであろう。イオン交換後も少量の塩が持ち越される可能性は避けられない。したがって、許容可能な品質水準に到達するまで酸を精製するには複数の作業単位が必要となる可能性がある。作業単位を追加する毎にプロセス全体の費用が増大する。これとは対照的に、本プロセスを用いると、酸のエステルの合成においては、塩を炭酸塩または水酸化物として回収することができ、これは発酵培養液の再生に使用することができるので、廃棄物が最小限に抑えられる。寧ろ、本プロセスの利点は、合成の副生成物を直接発酵培養液に戻してさらに再利用できることにある。カルボン酸をその対応するエステルに変換することにより、この種の問題を回避することができる。
【0017】
B.
従来、エステルは、カルボン酸を酸触媒の存在下にアルコールと一緒に加熱することにより生成する。エステルが酸およびアルコールから生成する機構は、酸を触媒としてエステルが加水分解する工程の逆である。この反応は、用いた条件に応じてどちらの方向にも進行し得る。通常のエステル化プロセスにおいては、触媒として強酸が用いられない限り、カルボン酸はアルコールと反応しない。通常、触媒は濃硫酸または塩化水素である。プロトン化によりカルボニル基の求電子性が強くなり、弱い求核試薬であるアルコールと反応することが可能になる。
【0018】
一般には、本エステル化方法は、発酵に由来する遊離有機カルボン酸とアルコールとを、二酸化炭素(CO)含有雰囲気中で、他の酸触媒の実質的な不在下に反応させることによってエステルを生成することを含む。エステル化反応は、アルコールおよび/またはCOのいずれかの超臨界、臨界または臨界近傍のいずれかの温度および/または圧力条件下に溶液中で行われる。このような条件下において、COは酸触媒を自然発生させるかまたはその場で酸触媒として機能し、エステル化反応が完了した後は元に戻ると本発明者らは考えている。エステル化を誘導して、エステル生成に影響を与えるのに十分に多い量の反応性を有する中間体(モノアルキル炭酸)がその場で生成すると考えられている。この中間体は、遊離カルボン酸と同程度のpKa(例えば、約4〜5)を有し、通常の強酸よりもはるかに弱い炭酸として機能する。温度が高い方がエステルの転化率が高くなる傾向が観測されており、これは、このプロセスの活性化エネルギーが比較的高いことを例証するものである。
【0019】
本発明のプロセスの有利な特徴は、一部の他の技法と異なり、遊離カルボン酸をハロゲン化(例えば、フッ化、塩化、臭化)アシルとして活性化することまたは強鉱酸を使用することが不要になることにある。ハロゲン化アシルは、本来反応性が高く、安定性や廃棄物処理に関わる問題があり、製造が煩雑で費用がかかる可能性があるため使用が難しい。
【0020】
本プロセスにおいては、通常の強酸に替えて二酸化炭素を触媒として機能させることにより、強酸をエステル化反応に導入することが不要になる。この特徴により、通常は触媒として使用された酸を除去するために必要となるpH値の調整を回避することができるので、より簡素かつより夾雑物の少ない(clean)合成が可能になる。結果として得られる生成物からアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩または他の塩を除去するための濾過に単純に進むことができる。より夾雑物の少ない生成物が得られることにより、精製および他の化学原料に変換するための下流の処理における費用が節減されるであろう。
【0021】
本明細書に記載するプロセスは、エステルを製造するためのより環境に優しい方法である。アルコールの存在下におけるエステル化反応の最中に二酸化炭素が酸触媒を自然発生させることができると考えられているので、本方法は、他の酸触媒の使用または追加が不要である。換言すれば、CO単独の場合の反応速度論では、他の酸触媒の実質的な不在下でエステル化を誘発することができる。繰り返しになるが、本プロセスは、遊離酸の活性化(例えば、塩化アシルとして、または強酸による(すなわち、フィッシャーエステル化))が不要である。
【0022】
一般に、エステル化は、約150℃〜約250℃の運転すなわち反応温度、約400psi〜2,500psiの反応圧力で、約12時間までの長時間、例えば4時間行われる。通常、温度は約170℃または190℃〜約230℃または245℃の範囲(例えば、175℃、187℃、195℃または215℃)とすることができ、運転圧力は約900psiまたは950psi〜約2,200psiまたは2,400psiの範囲にある(例えば、960psi、980psi、1020psiまたは1050psi)。あるいは、温度は、約180℃〜約245℃の範囲(例えば、約185℃または200℃または210℃〜約220℃または235℃または240℃)、運転圧力は約1000psi〜2,350psiの範囲(例えば、1,100psi、1,200psi、1,550psi、1,750psi、1,810psiまたは1,900psi)とすることができる。他の温度、例えば、約160℃または185℃〜約210℃または225℃もこの範囲に包含することができ、他の運転圧力、例えば、約1,150psiまたは1,500psi〜約1,800psiまたは2,000psiもこの範囲に包含することができる。
【0023】
これらの反応温度および圧力は、アルコールまたはCOの超臨界、臨界または臨界近傍条件に相当する。表1に、例示を目的として、一部の一般的な溶媒(すなわち、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、水およびCO)の臨界パラメータを示す。
【0024】
【表1】
【0025】
臨界点(すなわち臨界温度および/または圧力)を超える条件下では、流体は超臨界相中に存在し、ここでは液体および気体の中間の性質を示す。より具体的には、超臨界流体は、液体様の密度および気体様の輸送特性(すなわち、拡散係数および粘度)を示す。このことは表2から分かる。表2においては、これらの特性の典型的な値を3種の流体形態、すなわち従来の液体、超臨界流体および気体の間で比較する。
【0026】
【表2】
【0027】
同様に、「臨界近傍」は、少なくともアルコール種またはCOガスの温度または圧力のいずれかが、それぞれの臨界点を下回ってはいるが、臨界点から150K以内(例えば、50〜100K以内)または220psi以内(例えば、30〜150psi以内)にある状態を指す。温度および圧力が臨界近傍、臨界または超臨界条件に到達すると、試薬の溶解性は向上し、それによってエステル化反応が促進されると考えられている。換言すれば、COガス、アルコールおよび酸種は、臨界近傍、臨界または超臨界条件下の方が、それよりも温和な条件下よりも高度に相互作用することができる。この反応には、アルコール種およびCOガスが両方共臨界近傍、臨界または超臨界条件にあることは必要ではなく、これらの種のどちらか一方でもこのような条件を満たしていれば反応を起こすことができる。
【0028】
本エステル化反応をそれぞれ約250℃までおよび2,500psiまたは3,000psiまでのより高い温度およびより高い圧力で、約10または12時間までの反応時間で実施した場合、エステル生成物を比較的高い選択性かつ高い純度で、従来よりも短い反応時間(従来は約18〜20時間であった)で多量に生成させることができる。より低い運転温度(<190℃)においては、多価カルボン酸のモノエステル分子の生成がより支配的であり、一方、190℃または195℃以上の温度で反応させると、多価カルボン酸は優先的にジエステルに変換されるであろう。約190℃または195℃または200℃〜約245℃または250℃のより高い範囲の温度を選択することにより、ジエステルに転化する割合がより多くなる反応を優先的に誘発させることができる。このエステル化により最低でも約50%、望ましくは少なくとも65%または70%のカルボン酸のジエステルを得ることができる。反応を超臨界または超臨界近傍の運転条件で実施した方が良好な結果が得られる傾向がある。臨界または臨界近傍条件である約230℃または約240℃(メタノールの場合)および約31℃/1000psi(COの場合)で運転する場合、転化率を約90%以上、通常は約93%または95%に到達させることができる。異なる温度および反応時間の組合せ(例えば、より高い温度およびより短い反応時間(例えば、10または12時間未満、4〜8時間)またはその逆)を調整することにより高収率を達成することができ、現行の手法よりも有利となる可能性がある。最適化を行うと、250℃において、同一またはより高いCO圧力のいずれかでエステル化を実施することにより、定量に近い(すなわち、収率≧95%)、例えば、約98%、99%または99.9%までの転化率が達成されるであろう。
【0029】
添付の実施例から分かるように、反応条件を変化させ、より高い温度および/またはより長い反応時間を用いることによってより多くのジエステル生成物を生成させることができることが示唆される。しかしながら、上に述べたように、異なる温度に組み換えると、同量のエステル生成物を生成するためのエステル化反応に要する時間が影響を受ける可能性がある。本方法に従う反応は、多量の副生成物の生成を誘導しない。したがって、カルボン酸および他の出発試薬の環化を回避することができる。高温(すなわち、>145℃または>150℃)において脱炭酸が起こり得る可能性は本方法においては認められない。
【0030】
アルコール溶媒をカルボン酸に対し過剰量で用いると、非常に夾雑物の少ないエステル化を行うことができる。本合成プロセスは、高温において酸を触媒とする標準的なエステル化で通常認められる可能性がある低分子量酸(酢酸やギ酸)等の副生成物を多量に生成したり、分子の転位が起こったり、環状生成物を生成することなく、非常に夾雑物の少ないエステル生成物を約70%〜72%の初期純度で生成する。このエステルを高純度化することにより約90〜98%の純度を達成することができる。精製は、例えば、結晶化、クロマトグラフィーまたは蒸留により達成することができる。
【0031】
結果として得られるエステル生成物は、通常、モノエステルまたはジエステルのどちらかにすることもできるし、または両者の混合物を形成することもできる。反応を制御して、エステル化がある1種のエステル形態または他の形態のどちらかの方向に進行するように誘導することができる。例えば、エステル化反応をジエステル分子が優先的に生成する方向に誘導するように運転温度および圧力を選択することができる。同様に、発酵培養液中に存在し得るかまたは発酵培養液から得ることができるカルボン酸の中で、単一種のカルボン酸(例えば、コハク酸)からエステルを生成させるかまたは異なる複数種のカルボン酸の混合物(例えば、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸)からエステルを生成させるかを操作することができる。換言すれば、本エステル化反応に従い様々な異なるエステルを生成するために、様々な異なる種類のカルボン酸を使用することができる。今度は、これらのエステルを単離し、下流の化学プロセスにおいてさらに改質し、特定の実施形態においては、医薬品材料、化粧品材料、食品材料、供給原料、ポリマー材料、バイオ燃料等の有用な化合物に変換することができる。例えば、コハク酸エステルは、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のポリマーに変換することができる。
【0032】
本エステル化プロセスにおいては、触媒(CO)もエステル化試薬(アルコール)も遊離カルボン酸の量に対し大過剰で存在する。反応は高温で行われるので、COは、反応段階においては、起源が何であるか(例えば、ガスタンクまたはドライアイス)に関わらず、気相中に存在するはずである。密閉した高圧反応器が使用される場合、反応装置を組み立てた後に気体のCOを徐々に昇華させることができるので、固体のCOを追加することも戦略の一つである。こうすることによりCOの損失を最小限に抑えることができる。CO(すなわちCO含有)雰囲気中における反応雰囲気中のCOの濃度は、少なくとも10体積%または15体積%、有利には約25%または30%、好ましくは50%超とすることができる。より良好な反応結果を得るためには、CO濃度を最大限にすべきである。望ましいCOの濃度は約75%または80%〜約99.9体積%、通常は約85%〜約98%である。窒素(N)ガスまたは空気は反応器中に存在しても許容されるが、好ましくは、CO以外の気体の濃度は、半分未満(<50%)または極小量のいずれかに維持される。
【0033】
〜C20のR基を有する任意の液体アルコールが溶媒試薬または第1アルコール種の役割を果たすことができる。R基は、飽和、不飽和または芳香族とすることができる。異なる種類のアルコールの混合物(例えば、C〜C12)を反応に使用することもできるが、具体的なR基に応じて対応する異なるエステルの混合物が生成するであろう。C〜Cアルキル基を有する特定の低級アルコール種は、広く入手できること、安価であることおよびエステル化反応の機構の単純さという観点で、COを用いる第1エステル化の試薬として好ましい。さらに、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールが好ましい。その理由は、これらが比較的構造が単純である等の要素を有し、また、本反応が、これらのアルコール種の超臨界、臨界または臨界近傍温度および圧力に対しより容易に制御できるためである。別法として、幾つかの実施形態においては、アルコールとしてC〜Cジオールを用いることもできる。ジオールを用いたエステル化を行うことにより、容易に重合させることができるモノマーまたは低分子量オリゴマーを生成することができる。
【0034】
様々な異なるカルボン酸、例えば:a)モノカルボン酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびC15〜C18脂肪酸;b)ジカルボン酸:フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、グルタル酸、グルカル酸、シュウ酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸;またはc)トリカルボン酸:クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸およびトリメシン酸からなる群から選択されるもの使用することができる。カルボン酸には、これらのカルボン酸に付随するアルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはマグネシウム)塩の混合物も含まれる。望ましくは、カルボン酸は、ジカルボン酸やトリカルボン酸等の多価カルボン酸である。
【0035】
本プロセスは、連続式またはバッチ式のいずれかのプロセスで副生成物を発酵培養液に戻して再利用することにより、廃棄物の量を低減することができる。本発明者らは、本エステル化プロセスにおいて、遊離カルボン酸をアルコールおよびCOと、他の酸触媒の不在下で反応させる場合、アルコール溶媒への溶解性は、カルボン酸の遊離したプロトン化形態の方が、その対応する塩よりもはるかに高いことも見出した。類似の反応条件下で、遊離カルボン酸を試薬として用いてエステル化反応を実施すると、試薬として塩を用いた場合と比較して約2〜3倍の量のエステル生成物が得られるであろう(添付の図3B(遊離酸)の反応を図5A(酸塩)の反応と比較し、また、表4の実施例2および3(酸塩)を実施例5および6(遊離酸)とそれぞれ比較すると、この結果を理解することができる)。この違いの要因は溶解性にあると考えられている。例えば、マグネシウム塩のメタノールおよびエタノールへの溶解性はカルシウム塩の溶解性よりもはるかに高いので、カルシウム塩の反応による生成物の収率は、対応するマグネシウム塩を出発試薬として用いた場合よりもはるかに低い。
【0036】
本発明は、多価カルボン酸をエステル化するための方法を含む。このエステル化方法は:1種以上の遊離カルボン酸の溶液を提供し、アルコールと、CO雰囲気中で、他の酸触媒の不在下に反応させる工程と;エステルを得るために、アルコールおよび/またはCOの超臨界、臨界または臨界近傍条件に相当する運転反応温度または反応圧力を選択する工程とを含む。カルボン酸が多価カルボン酸である場合は、モノエステル分子よりも少なくともジエステル分子を生成する方向に反応が優先的に誘導される反応温度および圧力条件を用いる。上記回収プロセスと同様に、運転反応温度は約150℃〜約250℃であり、運転反応圧力は約400psi〜約2,500psiである。所望の結果に応じて、反応は約12時間まで運転することができる。
【0037】
C.
上述のエステル化プロセスは、発酵をベースとする炭素鎖原料の製造に統合することができ、これは、再生可能資源由来のカルボン酸からエステルを生成するより好都合な方法を提供するものである。本発明は、生物体由来のカルボン酸を、発酵培養液から簡素かつ費用対効果の高いプロセスで回収し、エステルに変換し、次いで水素化または水素化分解に供することによりバイオ燃料を製造することができる、直接的な経路を提供する。添付の図面に、エステルをさらなる下流プロセスに統合する方法を例示する。
【0038】
図1は、発酵培養液からカルボン酸を抽出する一般的なプロセスを示す略図であり、本エステル化反応の結果として得られたエステルを利用することができるさらなるプロセスを統合した形態を含む。図に示すように、反応器から得られた発酵培養液10を(限外)濾過12して細胞塊等の生体物質を除去することにより、カルボン酸(その塩、副生成物および他の化合物を含む)を得る。次いでこれらの材料を全て乾燥13させることにより高純度化前の混合物14を得る。次いでこの乾燥した材料の混合物を、液体系において、アルコール(R−OH;R=アルキルC〜C12)およびCOと、高い運転反応温度および圧力で反応16させることにより、モノエステルまたはジエステルまたは両者の混合物を得る。溶液中で反応するのはカルボン酸のみである。結果として得られる混合物18を濾過20することによりエステル22および他の副生成物24を分離する。エステルは可溶であるが、他の副生成物は不溶である。副生成物には、カルシウム、マグネシウムまたはナトリウムの炭酸塩が含まれ、これは回収して反応器10内の発酵培養液28に戻して再利用26することができる。この再利用により、コストが大幅に削減されると共に、発酵および抽出プロセス全体の効率が改善される。次いで異なるエステルを分離するために、エステルをそれぞれ蒸留30、水素化32または水素化分解処理34のいずれかによって処理し、Cプラットフォーム化合物およびバイオ燃料(例えば、エタン、エタノール、ブタン、ブタノール等)を生成することができる。
【0039】
蒸留プロセスによりアルコールを追い出すことによってエステルを濃縮することができ、次いで、エステル合成によって生じた副生成物を濾過する。さらに混合酸エステル生成物の混合物を異なるエステル種の沸点に従い蒸留することにより様々な個々のエステルを分離することが可能になる。例えば、表3に本発明によるエステル生成物混合物中に存在し得る一般的なエステルの試料の沸点を示す。
【0040】
【表3】
【0041】
残留溶液中のエステルを回収した後は、この材料はそのまま使用できる形態にある。あるいは、異なるエステル種および残留アルコールを分離するためにエステル混合物を蒸留することもできる。エステルを回収したら、モノエステルはキレート剤に変換される前駆体として使用することができ、ジエステルは溶媒として使用することができる。
【0042】
発酵由来のカルボン酸を対応するエステルの形態で回収することの利点は、下流の処理において、エステルは、遊離酸よりも水素化のエネルギー消費量が少ないことにある。本エステル化プロセスの他の利点は、本プロセスが、C化学プラットフォームを得るために発酵由来のカルボン酸を高純度化する他の手法と比較して、より簡素かつより容易であることが分かることである。本プロセスにより、エステルを他の不溶な物質から分離する作業が簡素化することに加えて、分離すべき塩の量が最小限になる。統合されたプロセスにおいては、低pH発酵(この発酵は、カルボン酸のpKa未満のpHで行われる)において製造された遊離酸および塩の組合せを直接エステル化することが可能になる。
【0043】
図2は、本エステル化プロセスの手順を組み込んだ下流の処理の略図を示すものである。具体的には、図2は、発酵培養液由来のコハク酸または他の種類のカルボン酸を抽出し、これを用いて過剰のCOの存在下にアルコールと反応させることによりエステルを生成する例を示すものである。本プロセスのこの手順によれば、グルコース、コーンスティープリカーまたは他の糖類およびMg(OH)/NaOHを発酵反応器21に導入し、発酵23させることによりカルボン酸が生成する。カルボン酸、塩(例えば、コハク酸およびそのナトリウムまたはマグネシウム塩)および他の副生成物の混合物を含む発酵培養液25を濾過27することにより細胞塊および他の不溶物27aを除去する。発酵は低pH値で行う(より高いpH(例えば、pH約7または8)から開始し、発酵の最中にpH値が約2〜3に低下する)。存在する遊離酸および塩の混合物(例えば、塩対酸の比率は約9:1(w/w)〜7:3(w/w))が生成するであろう。発酵培養液を発酵反応器からカルボン酸のpKa(例えば、pH5)未満のpH値で回収する。通常、発酵培養液のpH値は、約1.5〜約4.5の範囲にある。
【0044】
次いで発酵液抽出物を乾燥29させて粉末にする。混合酸の濾液を乾燥させる際は可能な限り水を除去するべきである。この乾燥工程は、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥または凍結乾燥によって達成することができる。一般的なエステル化と同様、水分は比較的少ないことが望ましい。そうしないと可逆反応が起こり、加水分解によってジカルボン酸に戻りやすくなるであろう。本プロセスにおいては、残留水分率の最大値を約5重量%に維持すべきである。水分含有率が3重量%未満の試料であれば、エステルの収率が約98または99%まで増加することが期待できるであろう。
【0045】
次いで乾燥した粉末(平均水分含有率は約1重量%〜5重量%、望ましくは≦3重量%)を、アルキル化試薬の役割を果たすアルコール33と、過剰のCOの存在下に、約180℃〜約250℃の温度で約4時間以上反応31させることにより、カルボン酸をエステル化する。この例においては、コハク酸をメタノールおよびCO中で反応させることによりコハク酸ジメチルが生成する。遊離カルボン酸と一緒に、発酵培養液中に存在していた残留遊離アミノ酸もエステル化される。
【0046】
生成したカルボン酸エステルを発酵培養液から回収したら、これらを水素化または水素化分解系のいずれかの供給原料としてさらに処理することができる。水素化または水素化分解は:米国特許第7,498,450B2号(ジカルボン酸および/または無水物の均一水素化に関する)、米国特許第6,433,193B号または米国特許第5,969,164号(無水マレイン酸の水素化によりテトラヒドロフランおよびγ−ブチロラクトンを製造するためのプロセスに関する)、米国特許第4,584,419A号(Cジカルボン酸ジ(C〜Cアルキル)エステルの水素化を含むブタン−1,4−ジオールを製造するためのプロセスに関する)、英国特許出願公開第2207914A号(マレイン酸エステルおよびフマル酸エステルからブタン1,4−ジオール、γ−ブチロラクトンおよびテトラヒドロフランの混合物を製造するためのプロセスに関する);国際公開第8800937A号(マレイン酸ジアルキルの水素化によりブタン−1,4−ジオールおよびγ−ブチロラクトンを同時に生成するためのプロセスに関する)または国際公開第82/03854号(カルボン酸エステルを水素化分解するためのプロセスに関する)または論文であるS. Varadarajanら、“Catalytic Upgrading of Fermentation-Derived Organic Acids,” BIOTECHNOL. PROG. 1999, 15, 845-854(前述の開示内容全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する)等に記載されている様々な異なる方法、機構およびこれらの変形に従い実施することができる。
【0047】
図2を説明するための例として、コハク酸を、上に定義した反応温度および圧力パラメータに従いメタノールと反応させてエステル化することにより、コハク酸ジメチル(主要な生成物として)、NaHCO、MgCO/Mg(HCOおよび過剰のメタノール35が生成する。コハク酸ジメチルおよびメタノール37はNaHCOおよびMgCO39から分離される。炭酸塩は、CaSOとは異なり、連続式プロセスまたは新たなバッチを用いるバッチ式プロセスのいずれかにより反応器21に戻して再利用41することができる。コハク酸ジメチルおよびメタノールはさらに互いに分離43され、メタノール33は再利用45される。次いで、コハク酸ジメチル47は水素化または水素化分解49のいずれかに供され、アルカンおよび/またはアルコール、例えば、エタン、エタノール、プロパン、プロパノール、ブタンまたはブタノールを含む様々なバイオ燃料製品51に変換される。
【0048】
本プロセスの他の利点は、発酵製品を得るための作物の輸送および処理を簡素化できることにある。例えば、発酵培養液の乾燥粉末を用いることにより、湿潤したまたは液体の貯蔵品を用いて作業することに付随する問題から解放される。発酵培養液の乾燥粉末は、発酵培養液が製造または入手された場所とは異なる場所へより経済的に輸送することができる。それにより、発酵培養液が入手された場所とは異なる離れた場所でエステル合成反応を実施することが可能になり、最終処理施設を配置することができる地理条件を拡張することができる。
【実施例】
【0049】
第II項−実施例
A.
遊離カルボン酸を発酵培養液から単離するためのプロセスに、本エステル化方法に従い調製を行う実施例を統合する。この方法は、概して、次の工程:a)発酵培養液から細胞塊および他の生物片を除去するために、未精製の発酵培養液を濾過する工程と;b)発酵培養液を乾燥させる工程と;c)モノエステルおよびジエステルならびに炭酸塩(NaHCO/MgCO)の混合物を生成するために、乾燥した発酵培養液を過剰のメタノール(CHOH)またはエタノール(COH)および二酸化炭素(CO)と、約150℃〜アルコールおよび/またはCO試薬の臨界近傍または臨界温度までの温度および臨界近傍または臨界圧力で反応させる工程と;d)副生成物を除去するために反応生成物を濾過する工程と;e)エステルを蒸留することにより精製する工程とを含む。
【0050】
発酵培養液の濾液を乾燥させて水分の全部またはほぼ全部を除去することにより、混合有機物の粉末を生成した。噴霧乾燥機またはドラム乾燥機を用いることにより、混合カルボン酸を含む未精製の溶液がエアゾール化して乾燥し、粉末になる。乾燥した粉末をアルコール溶媒に懸濁させる。粉末は、本明細書に記載した条件に応じてアルコールと反応し、エステル化することによりモノエステルまたはジエステルのいずれかとなる。
【0051】
次に示す一般的な手順に従い下に示す各実施例を実施した。但し、ここに示す反応温度、圧力、時間および/または酸の種類に関する変化量は必要に応じて変化させた。凍結乾燥させたコハク酸発酵培養液(オフホワイト色の粉末)を10g、およびメタノール300gを、Parr反応装置に取り付けたジャケット付きの1L容のステンレス鋼槽に装入した。1100rpmで機械的に撹拌しながら、反応槽内部のヘッドスペースをNで置換し、次いで最初にCOで400psiに加圧し、180℃で5時間加熱した。内圧は180℃で約1650psiであることが観測された。反応時間が経過した後、反応器本体を室温に到達するまで水浴で冷却し、圧力を解放した。次いで不均一混合物を濾過して固体を真空下で一夜乾燥させた。固体物質および溶液の試料をガスクロマトグラフィー/質量スペクトル(GC/MS)を用いて定量分析した。コハク酸ジメチルの収率を算出したところ31.9%であり、利用可能なコハク酸マグネシウムの95%超が反応で消費されていた。生成物の残余は、大半部分(約60%〜約65%の範囲)として、対応するモノエステルを含んでいた。
【0052】
添付の図面および表に示した反応から分かるように、特定の温度および圧力パラメータを修正および選択することにより、ジエステル化合物がより多く優先的に生成するような反応が起こる。本プロセスの特定の実施例においては、エステル化反応により、50%超、通常は70%または80%超のコハク酸またはマレイン酸ジアルキルが得られる。上に述べたように、未反応の材料および望ましくない生成物は発酵反応槽で再利用される。これに続くモノエステルおよびジエステルの分離は結晶化によって達成される。
【0053】
図3は、様々なアルコール中におけるCOを利用した遊離コハク酸のエステル化の概要を示す一連のエステル化反応を表すものである。図3Aは、コハク酸とメタノールとを、400psiのCOガス中、150℃で5時間反応させることにより約37%のコハク酸ジメチル収率が達成されることを示している。図3Bの反応においては運転温度を180℃に上昇させ、他の全てのパラメータを図3Aと同一に維持すると、コハク酸ジメチルの収率は2倍を超える約81.2%に上昇した。
【0054】
図3Cは、本運転条件下における、180℃のエタノール中での遊離コハク酸の反応を表すものであり、コハク酸ジエチルが約60.8%という良好な収率で得られる。図3Dにおいては、遊離コハク酸をn−ブタノール中の運転条件下において180℃で反応させると、コハク酸ジブチルが約52.2%という収率で生成した。これらの例は、本エステル化反応が、異なる種類のアルコールが使用できるという観点で多様性を有することを実証するものである。
【0055】
図4は、他の種類の多価カルボン酸のCOを利用したエステル化の例を示すものである。図4Aおよび4Bにおいては、コハク酸をそれぞれトリカルボン酸であるクエン酸およびリンゴ酸に置き換えている。クエン酸トリメチルの収率は約20.1%と妥当であり、COを利用した手順がトリカルボン酸にも適用できることを示している。リンゴ酸のジメチル類縁体の収率は約84.3%と良好であった。したがって、本新規なエステル化方法は使用する酸を他の酸に拡張しても実現可能である。
【0056】
表4は、図5、6および7に示すように、本開示のエステル化方法に従い実施した幾つかの反応の結果をまとめたものである。それぞれの実施例の組は、反応を実施する際に変化させた運転条件:A)温度、B)圧力およびC)反応時間ごとに並べてある。各実施例においては、発酵培養液由来のコハク酸を基質として用いる。濾過により清澄化した遊離酸および塩を含む培養液を乾燥させ、後段でメタノールおよびCOと溶液中で反応させる(反応物を加熱すると、反応槽内の実際の運転温度および圧力は本明細書に記載した初期温度および圧力を超えるであろう)。
【0057】
A組の3つの例において、本発明者らは、初期CO圧力を400psiとし、異なる温度:実施例A−1は180℃、実施例A−2は210℃、実施例A−3は230℃で反応を5時間行った。本発明の酸から対応するジエステルへの転化率は運転温度が高くなるにつれ上昇した。図6は、コハク酸およびその塩の一連のエステル化反応において温度を変化させた効果を示すものである。図5Aにおいては、コハク酸のエステル化を、約180℃の温度で5時間を超えて行う。この反応により約13.9%の収率でコハク酸ジメチルが生成した。図5Bは、図5Aと同一の反応を示すものであり、反応時間を一定に維持しながら温度を約210℃に昇温すると、収率が約42.9%となる。図5Cは、230℃で反応を行ったことを示すものであり、収率は約72.4%となる。これは、反応速度論により、温度が上昇するに従い、より多くの酸およびアルキル化試薬が、反応が完結する方向に誘導され、ジアルキルエステルの収率がより高くなることを示唆している。臨界または臨界近傍の温度および/または圧力条件で行った反応では、転化率は少なくとも95%となり、≧97%または98%となることが見込まれる。
【0058】
B組および図6においては、本発明者らは、初期温度を180℃とし、COガスの初期圧力を:実施例B−1は400psi、実施例B−2は500psi、実施例B−3は600psiに変化させてエステル化反応を5時間行った。酸からその対応するジエステルへの転化率は中程度であり、収率は統計学的には大きな差は見られなかった。反応器内のCOガスの初期圧力は、酸からそのジエステルへの転化に大きな効果を発揮しなかったが、反応中における反応器内の運転圧力は収率に影響することを示唆している。
【0059】
C組および図7においては、本発明者らは、一定の圧力および温度でエステル化反応を行い、反応時間を:実施例C−1は5時間、実施例C−2は2時間、実施例C−3は0.5時間と変化させた。図8に示す実施例は、反応時間が長くなるとより多量の酸がジエステルに転化したことを示唆している。
【0060】
図8は、濃度約4%(w/w)のコハク酸塩を用いてCOを利用したエステル化反応を行った第1組を示している。これを表5の実施例1〜3に示す。実施例1および2においては、コハク酸およびそのマグネシウム(Mg2+)塩をメタノールおよびエタノール中においてそれぞれ210℃および180℃で反応時間を5時間として反応させた。この反応によりそれぞれコハク酸ジメチルが約33%およびコハク酸ジエチルが約1%生成された。メタノールはコハク酸塩を溶解する能力がエタノールよりも高い。コハク酸マグネシウムのメタノールへの溶解性は妥当な水準であり、一方、エタノールへの溶解性は例え高温であっても限られている。そのため、コハク酸ジエチルの収率はほぼゼロとなった。実施例3は、コハク酸カルシウム(Ca2+)を用いて180℃で5時間行った反応を示すものである。この反応による対応するコハク酸ジメチルの収率はわずか約1.33%であった。実施例2および3の比較的低い転化率は、対応するアルカリ金属塩の溶解性の差を反映している。コハク酸のカルシウム塩は例え高温であってもメタノールに不溶である。CO実験において使用したメタノール対塩のモル比はメタノール対コハク酸マグネシウムの場合は約110:1とした。同様に、メタノール対他のカルボン酸の場合、この比は約100:1とした。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】

【0063】
表5は、本方法に従うエステル化反応の他の実施例の結果の一覧である。実施例1、2および3から、コハク酸の塩よりもコハク酸の方の基質溶解性が重要になることを示している。実施例4〜7は、反応の第2の組であり、遊離コハク酸をメタノール、エタノールおよび1−ブタノール中において同様の方法で反応させたものである。実施例8および9は、クエン酸やリンゴ酸等の他のカルボン酸を用いた反応を示すものであり、それぞれ約20%および86%という比較的良好な収率を達成することができている。
【0064】
遊離コハク酸は、メタノール、エタノール、ブタノールおよび、オクタノール(C8アルコール)までの他のアルコール(オクタノールも含む)に完全に可溶であるため、アルコールと容易に反応する。実施例6および7においては、コハク酸はエタノールおよび1−ブタノールと反応し、転化率はそれぞれ60.8%および52.2%となった。
【0065】
カルボン酸塩の特定の溶媒への溶解性はエステル化プロセスに影響を与える可能性がある。溶解性がより高い遊離酸は、酸の官能性が失われたカルボン酸塩よりも反応性が高くなる。したがって、対応するエステルの収率は、2組の反応を比較すると、対照試料よりもはるかに高くなる傾向がある。実施例4〜7の反応により、実施例1〜3よりもはるかに多い量の対応するジエステルが得られている。カルボン酸自体は、本運転温度および圧力条件下においてエステル化反応を触媒するのに十分であろう。本方法に従うエステル化を首尾よく行うために基質の溶解性を調整することができる。
【0066】
B.
実施例:水素化
上に引用した参考文献に記載されているもの等のプロセスを用いて、上述のエステル化プロセスから回収したカルボン酸エステルを直接水素化することができる。例えば、コハク酸ジアルキルエステルをBDO、GBLおよびTHFに水素化するために金属銅触媒を使用することができる。次に水素化プロセスの例を記載する。
【0067】
銅触媒を、次に示す担体:シリカ−アルミナ(シリカ93%、アルミナ7%、Sigma Chemicals)および2種のクロマトグラフ用シリカ(Phase Separations,Inc.)(XOA−400およびXOB−030)(全て−16+30メッシュ)上に銅塩を湿式含浸法によって担持させることにより調製した。所望の担持量を与える硝酸銅を含有する溶液10ミリリットルを担体10gに加えた。このスラリーを室温で2時間撹拌した後、真空中、60℃〜70℃で2時間乾燥させた。次いで乾燥した固体を500℃の炉内で11〜12時間空気中で焼成することにより酸化銅を得た。次いで触媒材料を反応器に装入し、純粋な水素中、200℃、200psigでその場で3時間還元した。触媒担体を反応前後に窒素BET表面積および水銀圧入法で特性評価した。乾燥ベンゼン中でn−ブチルアミンを滴定剤として、p−ジメチルアミンアゾベンゼン(pKa=3.9)を指示薬として用いて担体の酸性度測定を行った。
【0068】
316ステンレス鋼製の、長さ167mm×内径(i.d.)5mmのコーン型閉鎖反応器(cone closure reactor)(Autoclave Engineers,Inc.)に触媒1グラムを装入し、石英フリットで支持した。反応器をクラムシェル型炉で囲み、プログラム可能な温度コントローラ(Omega series CN-2010)で温度制御した。コハク酸ジメチルを30重量%のメタノール溶液としてBiorad社製HPLCポンプを用いて反応器頂部から供給した。水素ガスを、標準的なタンクおよび高圧レギュレータを介して反応器頂部から供給した。反応器出口のガス流量をロータメータで監視した。液体供給量を0.05mL/分に固定し、水素供給量を400mL STP/分に設定して、重量空時速度(WHSV)を0.9g DMS/触媒g/hとし、H/コハク酸エステル比が200:1となるようにした。
【0069】
凝縮可能な生成物を氷浴に浸けた10mL容の1口型Whiteyサンプルシリンダに回収した。三方弁を使用して反応生成物を2本のサンプルシリンダのいずれかに流入させた。反応中は、凝縮可能な生成物を所定の時間捕集器で回収し、その後、捕集器を外して秤量し、内容物を分析のために取り出した。回収用ボンベから流出する気体はラプチャーディスク機構を通過させ、背圧レギュレータを用いて段階的に大気圧まで降圧した。凝縮不可能な生成物の生成を定量化するためのガスクロマトグラフィーを用いた分析用に気体生成物を捕集袋に回収した。
【0070】
回収された凝縮可能な生成物を秤量し、水素炎イオン化検出器およびSupelco SPB-1大口径(0.5mm)キャピラリーカラムを取り付けたVarian 3300ガスクロマトグラフで分析した(50〜200℃、12℃/分、200℃で保持)。生成物濃度を算出するための内部標準物質として乳酸メチルを使用した。
【0071】
実施例:水素化分解
上述した発酵抽出により得られるエステルは、次いで触媒(例えば、還元CuO/ZnO)上で水素化分解される。これにより高い転化率(>98%)および選択性が達成されるはずである(例えば、国際公開第82/03854号)。
【0072】
別法として、米国特許第4,584,419号に記載されたもの等のプロセスに従うこともできる。231℃に維持されたオイルジャケットを備えたステンレス鋼をこの反応に使用した。水素を圧力レギュレータおよびフローコントローラ(図示せず)を用いて、複数のスチールボールを含む気化器の底部に接続されたラインを介して導入した。別のラインを介してエステルを液体として計量供給し、気化器に導入した。結果として得られたエステルおよび水素の蒸気混合物を、予熱コイルを通過させて反応器に導入した。これはガラス球の層の上に触媒床を含むものとした。反応器の残りはガラス球で満たし、反応器の上端には冷却器(図示せず)に続いて減圧弁に繋がる排出管を取り付けた。排出ガスの流量は湿式ガスメータを用いて冷却器の下流で測定した。
【0073】
粒状クロム酸銅触媒30mlを反応器に装入し、次いで42barの窒素で置換した。油浴の温度231℃に昇温した。次いで、N中にHを2%含む気体混合物を42barで触媒上を8時間通過させた後、N中にH.を10%含む気体混合物(同じく42bar)をさらに16時間通過させ、次いで純粋なH(同様に42bar)をさらに12時間通過させた。
【0074】
次いでコハク酸ジエチルを液時空間速度が0.2/hrになるように気化器に導入した。蒸気混合物の水素ガス:エステルのモル比が313:1となるようにした。サンドバスの温度を231℃に維持した。凝縮物を、Chromosorb PAW上に10%コハク酸ジエチレングリコールエステルを含む長さ1.82メートルのステンレス鋼カラム(内径3.18mm)を用いてガスクロマトグラフィーにて分析した。ヘリウムガスの流量を30ml/分とし、水素炎イオン化検出器を使用した。この機器にピーク積分器を備えたチャート記録装置を取り付け、既知の組成のマレイン酸ジエチル、コハク酸ジアルキル、ブチロラクトン、ブタン−1,4−ジオール、テトラヒドロフランおよび水の混合物を用いて校正した。排出ガスも採取して同一の技法でガスクロマトグラフィーにより分析した。ピークの同定は対象物質の基準試料に関し観測される保持時間の比較および質量スペクトルから確認した。次に示す化合物を反応混合物から検出した:コハク酸ジエチル、ブチロラクトン、ブタン−1,4−ジオール、テトラヒドロフランおよび水。2−エトキシテトラヒドロフランおよび2−エトキシブタン−1,4−ジオールを含む微量の主要でない副生成物も反応混合物から検出した。得られた結果から、コハク酸ジエチルがスムーズに生成物に変換されたことが分かった。テトラヒドロフランの選択性は52.2mol%、n−ブタノールの選択性は11.6mol%、ガンマ−ブチロラクトンの選択性は26.1mol%、ブタン−1,4−ジオールの選択性は10.1mol%であり、残余は主要でない副生成物である。
【0075】
本発明を、実施例を用いて一般的におよび詳細に説明してきた。当業者らは、本発明が必ずしも具体的に開示された実施形態に制限されるわけではなく、以下に示す特許請求の範囲に定義された本発明の範囲またはその均等物(本発明の範囲内で使用することができる現時点において知られているかまたは今後開発される他の均等な構成要素を含む)から逸脱することなく修正および変形を行うことができることを理解する。したがって、変更が本発明の範囲を逸脱しない限り、その変更も本明細書に包含されると見なすべきである。
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