(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記活性成分が、気管支拡張薬、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、充血緩和薬、鎮咳薬物質、およびプロスタサイクリンアナログからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
前記第1の粉末が、気管支拡張薬、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、充血緩和薬、および鎮咳薬物質からなる群から選択される2つ以上の活性成分を含有する、請求項1に記載の製剤。
前記第1の供給原料の薬物含有量の量が、前記活性乾燥粉末粒子製剤の前記薬物含有量が前記吸入可能な乾燥粉末製剤の所望の薬物含有量を達成するのに十分なものである、請求項13に記載の方法。
前記第1の供給原料および前記第2の供給原料を、前記両供給原料をスプレー乾燥して、前記個々の供給原料から調製される前記活性乾燥粉末粒子および前記非活性乾燥粉末粒子を混合する二流体噴霧器に通して、吸入可能な乾燥粉末製剤を得る、請求項13に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明の実施形態は、液体などの懸濁媒体中のAPIの溶解分画を低下させることにより、懸濁液をベースとするスプレー乾燥法における、強力なAPIの化学的安定性を改善する製剤および方法を対象としている。溶解APIがスプレー乾燥の間にアモルファスAPTに変換され、かつアモルファス相が、結晶性薬物と比べて、化学的安定性が低いことが多い場合、本発明の実施形態は、スプレー乾燥中に、液体に溶解している薬物量を制限することにより、実質的に結晶性薬物を形成する。
【0053】
喘息/COPD治療剤のスプレー乾燥製剤に関する高い効力(低薬物添加量)は、これらの強力なAPIに対する粒子の設計加工戦略を制限する恐れがある。例えば、APIが液体中で微細な微粉化結晶として分散する、懸濁液をベースとする供給原料では、薬物添加量が少ないと、液体中に溶解することができる難溶解性結晶性薬物の比率の向上をもたらし得る。液状供給原料へのAPIの溶解分画は、
【0054】
【数1】
(式中、S
APIは、APIの溶解度(mg/ml)であり、Φ
PFOBは、製剤中に存在する場合、細孔形成剤の体積比(v/v)であり、C
solidsは、供給原料中の固体濃度(mg/ml)であり、X
APIは、スプレー乾燥薬物製品中のAPIの薬物添加量(%w/w)である)により与えられる。この薬物添加量は、名目用量D
nomと充填質量m
fillとの比に単に関連する。
【0055】
充填質量3mgおよび現実的なスプレー乾燥パラメータ(Φ
PFOB=0.2およびC
solids=30mg/ml)の場合、%溶解は、溶解度と名目用量との単純比に変換される。すなわち、
【0057】
%溶解の低下は、S
APIを低下、またはC
solidsもしくはX
APIが増加することにより達成することができる。S
APIの関数としての液状供給原料に溶解しているAPIの比率を、
図1にプロットしている。
図1中の様々な線は、様々なX
APIの値を表している。この具体的なプロットの場合、C
solids=30mg/mlおよびΦ
PFOB=0.2であると仮定している。
図2において実証されている通り、高い効力の喘息/COPD治療剤に対する典型である、X
API=2%〜5%の場合、API溶解度が0.1mg/mlと低い場合でさえも、%溶解は1〜10%である。名目用量100mcgの場合、溶解度が>0.16mg/mlであるAPIはいずれも、>10%アモルファス含有量になると思われる。したがって、0.1〜1.0mg/mlの間の溶解度を有する強力なAPIは、水性をベースとする供給原料からのスプレー乾燥後に、アモルファス含有量をかなり有するリスクがある。以下の表1は、様々な喘息/COPDのAPIに関連する名目用量を示すことによる、効力の影響をさらに例示している。
【0059】
スプレー乾燥法(ミリ秒の時間尺度)における急速な乾燥速度のために、溶解APIは一般に、スプレー乾燥薬物製品中でアモルファス相へと変換されることになろう。多くのAPIの場合、準安定性アモルファス相により、結晶性薬物と比べて、化学分解速度が向上している。
【0060】
本発明の方法の実施形態により、設計加工された粒子のブレンドを含む吸入用乾燥粉末製剤が生じ、この場合、該粒子は、APIの用量および溶解度により水相への溶解がもたらされる、1つまたは複数のAPIの懸濁液を含む水性供給原料をスプレー乾燥することにより調製される。
【0061】
本発明の方法の実施形態により、設計加工された粒子のブレンドを含む吸入用乾燥粉末製剤が生じ、該ブレンドは、疾患および状態を処置するのに適した少なくとも1つの活性成分を含有している。
【0062】
本発明の方法の実施形態により、設計加工された粒子のブレンドを含む吸入用乾燥粉末製剤が生じ、該ブレンドは、喘息および/またはCOPDなどの閉塞性または炎症性気道疾患を処置するのに適している。
【0063】
一実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤は、第1の設計加工された粉末および第2の設計加工された粉末から実質的に均質なブレンドを含む。
【0064】
この第1の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤に分散している、実質的に結晶性の治療活性成分を含有する、スプレー乾燥粒子を含む。
【0065】
第1の設計加工された粉末中の結晶性治療活性成分の薬物添加量は、スプレー乾燥される液状供給原料における活性成分の溶解を制限するだけ十分に多い。供給原料中の活性成分の溶解割合は、10%w/w未満、好ましくは、5%w/w未満、より好ましくは1%w/w未満とすべきである。この溶解割合は、薬物に特有の分析法により実験的に測定するか、または式1を使用して、測定された溶解度および供給原料の組成に基づいて算出することができる。
【0066】
第2の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤から形成されるスプレー乾燥粒子を含み、いかなる治療活性成分も実質的に含まない。一部の実施形態では、第1のスプレー乾燥粉末の疎水性添加剤は、ブレンド均質性および性能を最大化するため、第2のスプレー乾燥粉末の疎水性添加剤と同じである。一部の実施形態では、第2の粒子は、第2の薬物、および該薬物、例えば濃度を希釈するための追加の疎水性添加剤を含有する。第2および第3の薬物は、結晶またはアモルファス形態のどちらかで存在することができ、同一供給原料または別の供給原料中に存在することができる。固定用量配合剤中の第2および第3のAPIの含有量は、上の第1のAPIに関して議論した通り、所望の名目用量、充填質量、およびブレンド組成により規定されることになろう。APIすべてに関する目標は、薬物製品中で、完全な結晶または完全なアモルファスのどちらかとして、APIを維持することである。
【0067】
本明細書に記載されているインダカテロールを含む固定用量配合剤の実施形態などの一部の実施形態では、第2の粒子は、第2の薬物、および薬物の総濃度を希釈するための追加的な疎水性添加剤を含む。
【0068】
本発明の乾燥粉末製剤は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の活性成分を含有することができる。追加の活性成分は、第1もしくは第2の設計加工された粉末中に共製剤化されてもよく、または第3の設計加工された粉末中に製剤化されてもよい。この追加の活性成分は、結晶またはアモルファス形態のどちらかで存在することができる。
【0069】
2種以上のスプレー乾燥粉末からなるブレンドは、TURBULA(登録商標)などのミキサーを使用し、2種以上の粉末を物理的にブレンドすることにより調製することができる。好ましい実施形態では、これら2種の粉末の粒子生成およびブレンドは、スプレーブレンドと呼ばれる単一ステップ操作で行われる。この方法では、この2つの供給原料は、複数の二流体ノズルを含む噴霧器により同時にスプレー乾燥器に噴霧される。こうしたシナリオの下では、粒子の混合は、該粒子が生成されてブレンド中で優れた均質性をもたらすので、リアルタイムで行われる。例示的なスプレーブレンド法は、US8524279に記載されている。特に、この特許公開は、吸入により投与される医薬製品において使用するのに適したより小さな粒子(例えば、0.5〜50μm)を調製するために開発された、スプレー乾燥法を開示している。この方法は、液状ビヒクル中に活性剤が含有している供給原料を用意するステップ、この供給原料を液体用噴霧器を使用して噴霧しスプレー液滴を生成するステップ、および加熱ガス流中で該スプレー液滴を流して液状ビヒクルを蒸発させ、活性剤を含有する乾燥粒子を得るステップを含む。US8524279は、一般的に、噴霧器が複数の供給原料に提供される場合、単一ステップすなわちスプレーブレンドで、2つの異なる種類の粒子を形成してブレンドすることができると開示している。本発明の実施形態の方法および組成物により、一次粒子サイズ分布、タップ密度、形態および表面組成を含む、同一または類似の物理化学特性を有する粒子の物理的混合物が生じる。言い換えると、本目標は、粒子間の凝集力およびその結果として得られる物理特性の観点から、実質的に同一の粒子からなるブレンドを生成することである。こうしたブレンドは、有利には、輸送または保管時に分離する傾向が最小限となり、分子間凝集力が、固定用量配合剤中の異なる薬物に関して等しくなり、単一製剤およびその固定用量配合剤に対して等しいエアゾール成績をもたらす。従来技術のラクトースブレンドと本発明のスプレーブレンドの実施形態との間の例示的な差異は、表2中に詳述されている。ラクトースブレンドの場合、薬物と担体との間に凝集物が形成され、その結果、その薬物製品のバルク粉末特性が改善されるのが望ましいと考えられる。本発明の実施形態では、対照的に、本組成物は、粉末の凝集度を最小化して、ほとんどエネルギーを適用しなくとも容易に脱凝集する粒子を作製するよう、設計加工されている。したがって、本発明の実施形態では、所望のバルク粉末特性が、設計加工された粒子それ自体に構築される。
【0070】
従来的な吸入用ブレンドでは、微粉化薬物粒子(1〜5μm)を不活性な担体粗粒子(50〜200μm)とブレンドして、薬物粒子が該担体粒子上に付着している、規則正しい混合物を形成する。
【0072】
本発明の一部の実施形態は、表面組成および形態の観点から、実質的に同一の粒子を含む、方法および組成物を含む。一部の実施形態では、本供給原料および/またはスプレー乾燥法は、コア−シェル粒子を生成するよう調節される。こうした実施形態では、粒子のシェルは、疎水性添加剤から実質的になる。粒子のコアは、活性成分、および該活性成分の化学的安定性を改善するための追加の添加剤を含有する。粒子形態および表面組成は、供給原料の組成およびスプレー乾燥条件を調節することにより、「構造化する」ことができるか、または「設計加工する」ことができる。
【0073】
スプレー乾燥の間の噴霧液滴中の揮発性液状構成要素の蒸発は、結合熱および大量輸送問題として記載することができる。液体の蒸気圧と気相中のその分圧との間の差異は、乾燥工程の推進力である。2つの特徴的な時間が重要であり、スプレー乾燥粒子の形態および該乾燥粒子内部の固体物質の分布を決定づける。1番目は、液滴が乾燥するのに必要な時間、τ
dであり、2番目は、噴霧液滴中の物質が、該液滴の端からその中心部に拡散するのに必要な時間、R
2/Dである。ここで、Rは噴霧液滴の半径であり、Dは供給原料中に存在する溶質またはエマルション液滴の拡散係数である。これら2つの特徴的な時間の比は、ペクレ数
【0074】
【数3】
すなわち、拡散および対流過程の相対的重要性を特徴付ける、無次元の物質移動数と定義される。噴霧液滴の乾燥が十分に遅い(Pe≪1)境界では、構成要素は、液滴を蒸発させる間に拡散により再分布するための適度な時間を有する。最終結果は、均一な組成を有する、比較的濃厚な粒子(粒子密度≒構成要素の真密度)である。対照的に、噴霧液滴の乾燥が急速(Pe≫1)な場合、構成要素は、液滴の表面から中心部に拡散する時間が不十分であり、代わりに、噴霧液滴の乾燥前面近辺に蓄積する。こうした場合、構成要素のコア/シェル分布を有する密度の低い粒子が発生し得る。
【0075】
複雑なエマルション供給原料内部の様々な構成要素は、異なるPe(例えば、エマルション液滴対溶解した溶質)を有しており、これにより、粒子内部の濃度グラジエントの発生が推進される。
【0076】
エマルション液滴はかなり大きなサイズであるために、それらは、非常にゆっくりと拡散し、遠のいていく液滴の表面に蓄積する。乾燥過程が継続するので、蒸発した前面は、残存溶液を取り囲むエマルション液滴に富む、シェルまたは外殻となる。最終的に、残存水相およびより高沸点の油相が外殻を通して蒸発し、元々の液状液滴の代わりに、細孔が残る。この粒子表面は、遅い拡散性エマルション液滴を構成する構成要素に富んでいる。
【0077】
本明細書に記載されている懸濁液をベースとする供給原料の場合、薬物添加量は少なく、結晶性薬物粒子は、薬物製品のわずかな割合しか占めない。薬物の結晶は、上で議論したペクレ数の通り、疎水性添加剤の多孔層によりコーティングされる。薬物を含まないビヒクル粒子は、薬物含有粒子として、類似した表面組成を示す。
【0078】
一般に、本発明の実施形態の設計加工された粉末は、粒子の表面に細孔または凹凸を含むことにより、および該粒子界面では疎水性添加剤に富んでいることにより、粒子間の凝集力が低下するよう設計されている。したがって、この粒子は、粗担体粒子とブレンドされていないにもかかわらず、エネルギーをほとんど適用することなく、流動化および分散するよう、設計加工されている。肺送達の効率は、送達される用量の40%を超えることが予期される。文献により、こうした条件下での平均患者間のばらつきは、10〜20%まで低下することが示されている。咽頭での沈着度により、吸入薬物の肺沈着におけるばらつきを説明することができる。さらに、受動型乾燥粉末吸入器からの設計加工された粒子の送達は、患者の最大吸気流量(PIF)に大きく依存することが予期される。中咽頭でのフィルター作用(filtering)および流量依存性が低下すると、現在上市されている喘息/COPD治療剤よりも、本発明の設計加工された粉末の方が、より一貫性の高い薬物送達となることが予期される。
【0079】
本発明の設計加工された粉末は、測定ごとの放出用量または放出粉末質量に、優れた均質性を実現することになろう。一部の実施形態では、このばらつきは、測定の90%が表示値の20%偏差内であり、25%偏差の範囲外が1つもないべきであるということを明記しているFDAドラフトガイダンスの範囲内にある。一部の実施形態では、測定の90%は、表示値の15%偏差内であるか、または表示値もしくは平均放出用量の10%偏差内にある。
【0080】
本発明の実施形態は、スプレーブレンドされている固定用量配合剤中の2つの異なる活性成分間の空気力学的粒子サイズ分布に良好な相関を示す粒子が生じる。これは、NEXT GENERATION IMPACTOR(商標)カスケードインパクター(NGI(商標))において、特定のステージに群分けしたものを直接比較することにより評価される。本発明の実施形態は、25%以内、好ましくは15%または10%以内となるべき、大きな粒子用量(ステージ0〜ステージ2)におけるばらつきをもたらす。一部の実施形態では、微粒子用量(ステージ3〜フィルター)のばらつきは、15%以内、好ましくは10%または5%以内である。これに加えてまたはこれに替えて、一部の実施形態では、超微粒子画分(ステージ4〜フィルター)のばらつきは、15%以内、好ましくは10%または5%以内である。
【0081】
本発明の実施形態は、ステージ3〜フィルターのステージ群分けをすると、名目用量の少なくとも40%、好ましくは名目用量の50%超または60%超となる、設計加工された粒子を含む。
【0082】
本発明の実施形態は、エマルションをベースとするPULMOSPHERE(商標)乾燥粉末製造技法を使用して、設計加工された粒子を含む。本技法の周辺の設計概念は、目的のすべてについて、それらの全体の開示が、本明細書に組み込まれている、US6565885、US7871598、およびUS7442388に詳細に記載されている。特に、医薬品用途について穴の空いたマイクロ構造体を調製する方法は、生物活性剤を含む供給原料、界面活性剤(例えば、リン脂質)、および発泡剤を含む供給原料をスプレー乾燥するステップを含む。得られた穴の空いているマイクロ構造体は、生物活性剤および界面活性剤を含み、PULMOSPHERE(商標)粒子として知られている。
【0083】
本発明の実施形態は、均質性の高いエアゾール成績により特徴付けられる、スプレーブレンド製剤を含む。これは、放出粉末質量および放出用量に関して、重量測定アッセイと薬物特有アッセイとの間の良好な相関により証明することができる。好ましい実施形態では、2つの測定間の分散は、15%以内、好ましくは10%または5%以内であるべきである。重量測定によるサイズ分布と薬物に特有のサイズ分布との間の一致は、ブレンド中の2種の粒子間で均質に混合しているという尺度を提供する。
【0084】
吸入用に微粉化された結晶性薬物中にアモルファス薬物領域が存在することは、一般に望ましいことではないと考えられている。アモルファス領域は、熱力学的に不安定であり、経時的に安定な結晶多形に変換し得る。再結晶化過程により、微粉化薬物粒子の粗粒子化がもたらされ、エアゾール成績が低下することが多い。より高いエネルギーのアモルファス領域はまた、結晶性薬物と比べて、より大きな溶解度、より迅速な溶解、および化学的安定性の低下も示し得る。その結果、微粉化薬物粒子中のアモルファス含有量を低下させようとする試みは一般的慣例であり、企業はアモルファス含有量が低下した「状態」の粉末にする努力を惜しんでいない。本発明の方法は、スプレー乾燥される液状供給原料中の活性成分の%溶解を低下させることにより、スプレー乾燥の間の、活性成分においてアモルファス領域の形成を最小化する。
【0085】
活性成分
本発明は、スプレー乾燥される液状供給原料に溶解限度がある結晶性活性成分を含む製剤を対象とする。本発明の実施形態は、とりわけ、名目用量が500mcg未満の非常に強力な活性成分を含む粒子を設計加工するのに有用である。本発明の実施形態は、喘息および/またはCOPD治療剤を含むスプレー乾燥製剤を含む粒子を設計加工するのに有用である。
【0086】
本発明の実施形態は、1つまたは複数の強力な活性成分を含むスプレー乾燥粒子を設計加工するのに有用であり、1つまたは複数の活性剤は、スプレー乾燥される供給原料に溶解限度があることによって特徴付けられ、かつ本方法および製剤は、得られたスプレー乾燥薬物製品中の活性物の結晶度を維持する。
【0087】
本発明の実施形態は、1つまたは複数の強力な活性成分を含むスプレー乾燥粒子を設計加工するのに有用であり、1つまたは複数の活性剤は、式1によって定義される溶解分画によって特徴付けられ、かつ本方法および製剤は、得られたスプレー乾燥製品中の活性物の結晶度を維持する。
【0088】
本発明の乾燥粉末の活性成分は、とりわけ肺投与により処置可能な疾患または状態を処置するのに有用な任意の活性医薬成分とすることができる。処置可能な疾患または状態は、全身性、肺、またはそれらの両方とすることができる。
【0089】
多くの実施形態では、活性医薬成分は、閉塞性または炎症性気道疾患、特に喘息および/またはCOPDを処置するのに有用なものである。該活性成分は、例えば、気管支拡張薬、抗炎症薬、およびこれらの混合物、とりわけ、長時間作用性β
2−アゴニスト(LABA)、長時間作用性ムスカリンアンタゴニスト(LAMA)、吸入用コルチステロイド(ICS)、デュアルβ
2−アゴニスト−ムスカリンアンタゴニスト(MABA)、PDE4阻害剤、A
2Aアゴニスト、カルシウムブロッカーおよびそれらの混合物から選択することができる。
【0090】
適切な活性成分には、β
2−アゴニストが含まれる。適切なβ
2−アゴニストには、アルホルモテロール(例えば、酒石酸塩)、アルブテロール/サルブタモール(例えば、ラセミ体、またはR−鏡像異性体などの単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけ硫酸塩)、AZD3199、バンブテロール、BI−171800、ビトルテロール(例えば、メシル酸塩)、カルモテロール、クレンブテロール、エタンテロール、フェノテロール(例えば、ラセミ体、またはR−鏡像異性体などの単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけ臭化水素酸塩)、フレルブテロール(flerbuterol)、ホルモテロール(例えば、ラセミ体、またはR,R−ジアステレオマーなどの単一ジアステレオマー、またはその塩、とりわけフマル酸塩もしくはフマル酸塩二水和物)、GSK−159802、GSK−597901、GSK−678007、インダカテロール(例えば、ラセミ体、またはR−鏡像異性体などの単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけマレイン酸塩、酢酸塩、またはキシナホ酸塩)、アベジテロール、メタプロテレノール、ミルベテロール(例えば、塩酸塩)、ナミンテロール、オロダテロール(例えば、ラセミ体、またはR−鏡像異性体などの単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけ塩酸塩)、ピルブテロール(例えば、酢酸塩)、プロカテロール、レプロテロール、サルメファモール、サルメテロール(例えば、ラセミ体、またはR−鏡像異性体などの単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけ、キシナホ酸塩)、テルブタリン(例えば、硫酸塩)、およびビランテロール(またはその塩、とりわけ、トリフェニル酢酸塩)が含まれる。ある種の好ましい実施形態では、β
2−アゴニストは、インダカテロール、または潜在的にアベジテロール、ミルベテロール、オロダテロールまたはビランテロールなどの超長時間作用性β
2−アゴニストである。
【0091】
一部の実施形態では、活性成分の1つは、インダカテロール(すなわち、(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン)またはその塩である。これは、とりわけ長時間作用性(すなわち、24時間にわたる)および短い作用発現(すなわち、約10分)を有するβ
2−アドレナリン受容体アゴニストである。この化合物は、国際特許出願WO2000/75114およびWO2005/123684に記載されている方法によって調製される。この化合物は、酸付加塩、特に、薬学的に許容される酸付加塩を形成することが可能である。式Iの化合物の薬学的に許容される酸付加塩には、無機酸、例えば、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸の塩、ならびに有機酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、o−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−クロロ安息香酸、ジフェニル酢酸、トリフェニル酢酸、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸、脂肪族ヒドロキシ酸(乳酸、クエン酸、酒石酸またはリンゴ酸など)、ジカルボン酸(フマル酸、マレイン酸またはコハク酸など)、およびスルホン酸(メタンスルホン酸またはベンゼンスルホン酸など)など)の塩が含まれる。これらの塩は、公知の塩形成手順によって上記の化合物から調製することができる。(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オンの好ましい塩は、マレイン酸塩である。別の好ましい塩は、(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オン酢酸塩である。別の好ましい塩は、(R)−5−[2−(5,6−ジエチル−インダン−2−イルアミノ)−1−ヒドロキシエチル]−8−ヒドロキシ−1H−キノリン−2−オンキシナホ酸塩である。他の有用な塩には、コハク酸水素塩、フマル酸塩、馬尿酸塩、メシル酸塩、硫酸水素塩、酒石酸水素塩、塩化水素塩、臭化水素塩、ギ酸塩、エシル酸塩、トシル酸塩、グリコール酸塩およびマロン酸水素塩が含まれ、これらは、酢酸塩およびキシナホ酸塩のように、国際特許出願WO2008/000839において、これらのそれぞれの調製方法と一緒に開示されている。
【0092】
適切な活性成分には、ムスカリンアンタゴニストまたは抗ムスカリン作用剤が含まれる。適切なムスカリンアンタゴニストには、アクリジニウム(例えば、臭化物)、BEA−2180(例えば、臭化物)、CHF−5407、ダリフェナシン(例えば、臭化物)、ダロトロピウム(例えば、臭化物)、グリコピロレート(例えば、ラセミ体または単一鏡像異性体、またはその塩、とりわけ臭化物)、デキシピロニウム(dexpirronium)(例えば、臭化物)、iGSK−202405、ウメクリジニウム、GSK−656398、イプラトロピウム(例えば、臭化物)、LAS35201、オチロニウム(例えば、臭化物)、オキシトロピウム(例えば、臭化物)、オキシブチニン、PF−3715455、ピレンゼピン、レバトロペート(revatropate)(例えば、臭化水素塩)、ソリフェナシン(例えば、コハク酸塩)、TD−4208、テロジリン、チオトロピウム(例えば、臭化物)、トルテロジン(例えば、酒石酸塩)、およびトロスピウム(例えば、塩化物)が含まれる。特定の好ましい実施形態では、ムスカリンアンタゴニストは、臭化ダロトロピウム、ウメクリジニウム、グリコピロレート、または臭化チオトロピウムなどの長時間作用性ムスカリンアンタゴニストである。
【0093】
一部の実施形態では、活性成分の1つは、グリコピロニウム塩である。グリコピロニウム塩は、有効な抗ムスカリン作用剤であることが知られているグリコピロレートとしても公知の臭化グリコピロニウムを含む。より詳細には、これはM3ムスカリン受容体へのアセチルコリン結合を阻害し、それによって気管支収縮を阻害する。グリコピロレートは、第四級アンモニウム塩である。適切な対イオンは、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、酪酸イオン、乳酸イオン、クエン酸イオン、酒石酸イオン、リンゴ酸イオン、マレイン酸イオン、コハク酸イオン、安息香酸イオン、p−クロロ安息香酸イオン、ジフェニル酢酸イオンまたはトリフェニル酢酸イオン、o−ヒドロキシ安息香酸イオン、p−ヒドロキシ安息香酸イオン、1−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸イオン、3−ヒドロキシナフタレン−2−カルボン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、およびベンゼンスルホン酸イオンを含む、薬学的に許容される対イオンである。グリコピロレートは、米国特許US2956062に記載されている手順を使用して調製することができる。これは、2つのステレオジェン中心を有しており、したがって、米国特許明細書US6307060およびUS6,613,795に記載されている通り、4つの異性体、すなわち、臭化(3R,2’R)−、(3S,2’R)−、(3R,2’S)−および(3S,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニル−アセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムで存在する。乾燥粉末製剤の原薬がグリコピロレートである場合、グリコピロレートはこれらの異性体の1つまたは複数、とりわけ、3S,2’R異性体、3R,2’R異性体または2S,3’R異性体とすることができ、したがって、単一鏡像異性体、ジアステレオマー混合物、またはラセミ体、とりわけ、臭化(3S,2’R/3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシ−フェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムを含む。R,R−グリコピロレートは、デキシピロニウム(dexpirronium)としても公知である。
【0094】
適切な活性成分には、デュアルβ
2−アゴニスト−ムスカリンアンタゴニストなどの二官能性活性成分が含まれる。適切なデュアルβ
2−アゴニスト−ムスカリンアンタゴニストには、GSK−961081(例えば、コハク酸塩)が含まれる。
【0095】
一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末の活性成分は、肺動脈性肺高血圧症および/または関連疾患を処置するのに有用な任意の活性医薬成分とすることができる。適切な活性成分には、シグナル伝達分子、血小板凝集阻害剤、および血管拡張剤などの、こうした疾患に対して効力を有する任意のものが含まれる。一部の実施形態では、活性物は、プロスタサイクリンアナログを含む。
【0096】
適切な活性成分には、ステロイド、例えば、コルチコステロイドが含まれる。適切なステロイドには、ブデソニド、ベクラメタゾン(例えば、二プロピオン酸エステル)、ブチキソコルト(例えば、プロピオン酸エステル)、CHF5188、シクレソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン(例えば、プロピオン酸エステルまたはフランカルボン酸エステル)、GSK−685698、GSK−870086、LAS40369、メチルプレドニゾロン、モメタゾン(例えば、フランカルボン酸エステル)、プレドニゾロン、ロフレポニド、およびトリアムシノロン(例えば、アセトニド)が含まれる。ある種の好ましい実施形態では、ステロイドは、ブデソニド、シクレソニド、フルチカゾンまたはモメタゾンなどの長時間作用性コルチコステロイドである。
【0097】
一実施形態では、活性成分の1つは、モメタゾン(すなわち、(11β、16α)−9,21−ジクロロ−17−[(2−フラニルカルボニル)オキシ]−11−ヒドロキシ−16−メチルプレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオン、あるいは9α,21−ジクロロ−16α−メチル−1,4−プレグナジエン−11β,17α−ジオール−3,20−ジオン17−(2’−フロエート)と称される)またはその塩、例えば、モメタゾンフロエートおよびモメタゾンフロエート一水和物である。モメタゾンフロエートおよびその調製は、US4472393に記載されている。喘息の処置におけるその使用は、US5889015に記載されている。他の呼吸器疾患の処置におけるその使用は、US5889015、US6057307、US6057581、US6677322、US6677323およびUS6365581に記載されている。
【0098】
上記の治療剤の薬学的に許容されるエステル、アセタールおよび塩が意図される。適切なエステル、アセタール、または塩の形態の決定は、作用持続時間および忍容性/安全性データによって進められる。同様に、APIの選択は、本発明の実施形態を達成するための適切な物理特性(例えば、溶解度)を有する治療剤を選択するという観点から重要となり得る。
【0099】
組合せ
本発明の乾燥粉末製剤は、疾患および状態を処置するのに有用な、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の治療活性成分を含有することができる。
【0100】
一部の実施形態では、この疾患または状態は、閉塞性または炎症性気道疾患、特に喘息およびCOPDを含む。特に好ましい固定用量配合剤には、以下のファミリーであるLABA/ICS、LABA/LAMA、LABA/LAMA/ICS、およびMABA/ICSに由来するAPIの組合せが含まれる。
【0101】
適切な組合せには、β
2−アゴニストおよびコルチコステロイドを含有するものが含まれる。例示的な組合せの実施形態は、括弧内:(カルモテロールとブデソニド)、(ホルモテロールとベクロメタゾン)、(ホルモテロールフマル酸塩とブデソニド)、(ホルモテロールフマル酸塩二水和物とモメタゾンフロエート)、(ホルモテロールフマル酸塩とシクレソニド)、(インダカテロールマレイン酸塩とモメタゾンフロエート)、(インダカテロール酢酸塩とモメタゾンフロエート)、(インダカテロールキシナホ酸塩とモメタゾンフロエート)、(ミルベテロール塩酸塩とフルチカゾン)、(オロダテロール塩酸塩とフランカルボン酸フルチカゾン)、(オロダテロール塩酸塩とモメタゾンフロエート)、(サルメテロールキシナホ酸塩とプロピオン酸フルチカゾン)、(ビランテロールトリフェニル酢酸塩とフランカルボン酸フルチカゾン)、および(ビランテロールトリフェニル酢酸塩とモメタゾンフロエート)、β
2−アゴニストとムスカリンアンタゴニスト、例えば(ホルモテロールと臭化アクリジニウム)、(インダカテロールとダロトロピウム)、(インダカテロールマレイン酸塩とグリコピロレート)、(インダカテロール酢酸塩とグリコピロレート)、(インダカテロールキシナホ酸塩とグリコピロレート)、(インダカテロールマレイン酸塩とウメクリジニウム)、(ミルベテロール塩酸塩とグリコピロレート)、(ミルベテロール塩酸塩と臭化チオトロピウム)、オロダテロール塩酸塩とグリコピロレート)、(オロダテロール塩酸塩と臭化チオトロピウム)、(サルメテロールキシナホ酸塩と臭化チオトロピウム)、(ビランテロールトリフェニル酢酸塩とダロトロピウム)、(ビランテロールトリフェニル酢酸塩とグリコピロレート)、(ビランテロールトリフェニル酢酸塩とウメクリジニウム)、および(ビランテロールトリフェニル酢酸塩と臭化チオトロピウム)、およびムスカリンアンタゴニストとコルチコステロイド、例えば(グリコピロレートとモメタゾンフロエート)、および(グリコピロレートとシクレソニド)、またはデュアルβ
2−アゴニスト−ムスカリンアンタゴニストとコルチコステロイド、例えば(GSK−961081コハク酸塩とモメタゾンフロエート)、(GSK−961081コハク酸塩とモメタゾンフロエート一水和物)、および(GSK−961081コハク酸塩とシクレソニド)(paranthetical)により示される。括弧内において記載されている活性物間の組合せを含めた、他のものとの任意の組合せも実質的に可能であることに留意すべきである。
【0102】
本発明の一部の実施形態は、2つの活性成分を含むスプレー乾燥粒子を含む。本発明の一部の実施形態は、3つの活性成分を含むスプレー乾燥粒子を含む。
【0103】
適切な3つの組合せには、β
2−アゴニスト、ムスカリンアンタゴニストおよびコルチコステロイドを含有するもの、例えば(サルメテロールキシナホ酸塩、プロピオン酸フルチカゾンおよび臭化チオトロピウム)、(インダカテロールマレイン酸塩、モメタゾンフロエートおよびグリコピロレート)、(インダカテロール酢酸塩、モメタゾンフロエートおよびグリコピロレート)、および(インダカテロールキシナホ酸塩、モメタゾンフロエートおよびグリコピロレート)が含まれる。
【0104】
本発明の一部の実施形態は、4つ以上の活性成分を含むスプレー乾燥粒子を含む。
【0105】
添加剤
3%未満の相対標準偏差を伴って、高速充填ラインで商業的に合理的に充填することができる微細粉末の最小充填質量は、約0.5mgである。対照的に、必要とされる活性成分の肺用量は、0.01mgと低くてもよく、慣例では、約0.2mg以下である。したがって、相当な量の添加剤が、通常、必要である。
【0106】
一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤は、薬学的に許容される疎水性添加剤を含有する。
【0107】
疎水性添加剤は、乾燥粉末製剤の組成および使用用途に少なくともある程度依存することになる様々な形態をとり得る。適切な薬学的に許容される疎水性添加剤は、一般に、長鎖リン脂質、疎水性アミノ酸およびペプチド、ならびに長鎖脂肪酸石鹸からなる群から選択することができる。
【0108】
一部の実施形態では、本発明の製剤は、第1および第2の設計加工された粉末を含む。こうした実施形態では、本乾燥粉末製剤の第1の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤に分散している治療活性成分を含有するスプレー乾燥粒子を含む。本乾燥粉末製剤の第2の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤から形成される(かつ、いかなる治療活性成分も実質的に含まない)スプレー乾燥粒子を含む。
【0109】
一部の実施形態では、第1のスプレー乾燥粉末の疎水性添加剤は、ブレンド均質性および成績を最大化するため、第2のスプレー乾燥粉末の疎水性添加剤と同じである。一部の実施形態では、第1のスプレー乾燥粉末の添加剤は、第2のスプレー乾燥粉末の添加剤とは異なる。
【0110】
本製剤中の疎水性添加剤の含有量は、APIおよび充填質量の名目用量から決定することができる(X
exc=(1−X
API)=1−(D
nom/m
fill))。
【0111】
本製剤および方法を制御することにより、第1のスプレー乾燥粒子の表面は、疎水性添加剤から主になることが可能となる。表面濃度は、75%超または80%超または85%超など、70%を超え得る。一部の実施形態では、この表面は、90%超の疎水性添加剤、または95%超または98%超または99%超の疎水性添加剤からなる。強力なAPIの場合、表面が95%超の疎水性添加剤からなるのは希ではない。
【0112】
一部の実施形態では、疎水性添加剤は、しわ状の粒子形態の開発を容易にする。これは、粒子形態が、滑らかというよりもむしろ、多孔性で、しわが寄り、かつひだがあることを意味する。これは、吸入可能な医薬粒子の内面および/または外面が、少なくとも部分的にしわ状であることを意味する。この凹凸度は、粉末の流動性および分散性を改善することによって用量の一貫性および薬物の標的化を実現するのに有用である。粒子の凹凸度が増加することにより、粒子がファンデルワールスコンタクト内に近づくことができなくなる結果として、粒子間凝集力が低下する。凝集力の低下は、しわ状粒子の集合において粉末流動性および分散性を劇的に改善するのに十分である。
【0113】
粒子の凹凸度は、粒子の製造の間にパーフルブロンなどの細孔形成剤を使用することによって、またはしわ状粒子を生成するための製剤および/もしくは方法を制御することによって増加し得る。
【0114】
天然および合成源の両方からのリン脂質を、様々な量で使用することができる。リン脂質が存在する場合、その量は、通常、リン脂質の多孔質コーティングマトリックスを実現するのに十分である。存在する場合、リン脂質の含有量は一般に、本医薬の約40〜99%w/w、例えば、本医薬の70%〜90%w/wの範囲である。高い割合の添加剤はやはり、高い効力の、したがって通常、少用量の活性成分によってももたらされる。担体粒子がスプレー乾燥粒子中に存在しないことを考慮すると、これらの添加剤はまた、本製剤中の増量剤としても働き、低用量の治療剤を有効に送達することを可能にする。一部の実施形態では、粒子特性が該粒子の表面組成および形態によって制御されることを確実にするために、薬物添加量を低く保つことも望ましい。これによって、同等の表面組成および粒子形態を有する設計加工された粒子のブレンドの場合でさえも、単一および組合せ粒子の間で、同等の物理的安定性およびエアゾール成績が達成されることを可能にする。
【0115】
一般に、適合性リン脂質は、約40℃超(60℃超、または約80℃超など)で、ゲルから液晶へ相転移するものを含む。組み込まれたリン脂質は、相対的に長鎖(例えば、C
16〜C
22)の飽和リン脂質とすることができる。開示されている安定化調製物において有用な例示的なリン脂質には、以下に限定されないが、ホスファチジルコリン(ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、および水素化卵またはダイズのホスファチジルコリン(例えば、Lipoid KG、Ludwigshafen、ドイツから入手可能なE−100−3、S−100−3)など)が含まれる。天然リン脂質は、好ましくは水素化され、低いヨウ素価(<10)を有する。
【0116】
リン脂質を場合によりコレステロールと組み合わせて、リン脂質アシル鎖の流動性を改変することができる。
【0117】
長鎖リン脂質は、二価金属イオン(例えば、カルシウム、マグネシウム)と場合により組み合わせてもよい。このような二価金属イオンは、頭基の水和を低下するように作用して、それによってリン脂質のゲルから液晶への相転移、および肺被覆液上の粉末の湿潤性を高める。多価陽イオンとリン脂質とのモル比は、約0.05:1〜0.5:1など、少なくとも約0.05:1とすることができる。1つまたは複数の実施形態において、多価陽イオン:リン脂質のモル比は、0.5:1である。理論に縛られることを意図するものではないが、この方法では、二価金属イオンは双性イオン性ホスファチジルコリンの頭基上のリン酸基に結合し、水分子を置換すると考えられる。0.5を超える金属イオンとリン脂質とのモル比は、リン酸基に結合していない遊離金属イオンをもたらし得る。これは、得られた乾燥粉末の吸湿性をかなり高める恐れがあり、好ましいものではない。多価金属イオンがカルシウムである場合、これは塩化カルシウムの形態となり得る。カルシウムなどの金属イオンは、リン脂質と共に含まれることが多いが、必要というわけではなく、他のイオンが製剤中に存在する場合、それらの使用は問題となることがある(例えば、リン酸は、リン酸カルシウムとしてカルシウムイオンを沈殿させる恐れがある)。適合性問題が発生する場合、Mg
++塩は、通常、Ca
++塩よりも3〜4桁高いK
sp値を有するので、Mg
++塩の使用に利点が存在し得る。
【0118】
疎水性添加剤は、長鎖脂肪酸石鹸も含み得る。アルキル鎖長とは、一般に、14〜22個の炭素長であり、飽和アルキル鎖が好ましい。脂肪酸石鹸は、一価対イオン(例えば、Na
+、K
+)または二価対イオン(例えば、Ca
++、Mg
++)を利用することができる。特に好ましい脂肪酸石鹸は、ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムである。脂肪酸石鹸の溶解度は、クラフト点を超えて増加し得る。脂肪酸のカリウム塩は一般に、所与の温度において、最も低いクラフト点温度、およびより高い水溶解度を有する。カルシウム塩は、最も低い溶解度を有することが予想される。疎水性脂肪酸石鹸は、粒子上にワックス様コーティングをもたらす。スプレー乾燥粒子における提案される添加量は、既に詳述したリン脂質と同様である。
【0119】
疎水性添加剤は、疎水性アミノ酸、ペプチド、またはタンパク質も含み得る。特に好ましいのは、アミノ酸であるロイシン、およびそのオリゴマーであるジロイシンおよびトリロイシンである。ヒト血清アルブミンなどのタンパク質も意図される。その溶解度プロファイルおよび他の物理化学特性(例えば、表面活性、logP)が、コア−シェル粒子の生成を促進するので、トリロイシンが特に好ましく、この場合、トリロイシンは、得られた粒子の表面特性および形態を制御する。
【0120】
企図される他の添加剤には、塩、緩衝剤、およびガラス形成剤が含まれる。供給原料中のAPIの溶解を防止するために、スプレーブレンドの製剤に特に重要なことは、APIの塩を形成するために使用される酸の共役塩基を添加することである。例えば、インダカテロールマレイン酸塩の場合、その共役塩基とは、マレイン酸ナトリウムである。インダカテロールマレイン酸塩を水中で置く場合、平衡は、インダカテロールマレイン酸塩、インダカテロール遊離塩基、およびマレイン酸ナトリウムの間で確立される。マレイン酸ナトリウムを添加すると、塩形態の方向に平衡がシフトし、これにより、塩の溶解度が低下し、かつスプレー乾燥粉末中のアモルファス含有量が低下する。これは、共通イオン効果と呼ばれることが多い。この共通イオンは、製剤中では、緩衝剤およびガラス形成性添加剤としても働き得る。
【0121】
従来的なガラス形成剤(例えば、炭水化物、アミノ酸、緩衝剤)も意図される。特に好ましいのは、スクロース、トレハロース、マンニトール、およびクエン酸ナトリウムである。
【0122】
製剤
本発明の実施形態は、スプレー乾燥粒子からなる、化学的に安定で実質的に均質なブレンドを含む乾燥粉末製剤を提供する。
【0123】
本発明の実施形態は、多孔性またはしわ状の表面を含む、設計加工された粒子を含む。こうした粒子は、同等の一次粒子サイズの微粉化薬物結晶と比べて、粒子間凝集力の低下を示す。これにより、微粉化薬物および粗ラクトースからなる規則正しい混合物と比べて、粉末流動性および分散性が改善する。
【0124】
本発明の乾燥粉末製剤の実施形態は、0.1〜50%w/wの活性成分、または0.1〜40%w/wの活性成分、または0.1%〜30%w/wの活性成分(0.5%〜10%w/w、または2%〜5%w/wなど)を含むことができる。
【0125】
一部の実施形態では、結晶性活性成分は微粉化されている。微粉化活性成分のMMD(×50)は、3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満または1.0μm未満とすべきである。×90は、7μm未満、好ましくは5μm未満または3μm未満とすべきである。
【0126】
本発明の乾燥粉末製剤は、上述の疎水性添加剤の他に、1つまたは複数の添加剤を含むことができる。こうした追加の添加剤は、時として、本明細書では、「添加物」と呼ばれる。
【0127】
本発明の乾燥粉末製剤の1つまたは複数の実施形態では、本製剤は、該製剤の安定性または生体適合性をさらに増強するための添加物をさらに含んでもよい。例えば、様々な塩、緩衝剤、キレート剤、増量剤、共通イオン、ガラス形成性添加剤、および矯味剤が意図される。本発明による組成物において使用するのに適した他の添加物は、それらの両方の全体が、参照により本明細書に組み込まれている、“Remington: The Science & Practice of Pharmacy,” 19
th ed., Williams & Williams, (1995)および“Physician’s Desk Reference,” 52
nd ed., Medical Economics, Montvale, N.J. (1998)に一覧表示されている。
【0128】
一部の実施形態、特に活性剤およびリン脂質を含むものでは、疎水性添加剤が、該製剤の残りを構成する。すなわち、疎水性添加剤は、該製剤中の表面改質剤および増量剤の両方として働く。こうした実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤中の疎水性添加剤の含有量は、所与の粒子の組成の70%w/wを超え、多くの場合、所与の粒子の組成の90%w/wを超え、または95%w/wまたは99%w/wを超える。疎水性添加剤の添加量は、99.9%w/wと高くすることができる。
【0129】
トリロイシなどの疎水性添加剤の使用は、液状供給原料におけるそれらの溶解度により制限され得る。一般に、設計加工された粉末中のトリロイシンの含有量は、30%w/w未満であり、より多くの場合、10%w/w〜20%w/wの程度である。水への溶解度限度およびその表面活性のために、トリロイシンが、優れたシェル形成剤である。その結果、トリロイシンは一般に、増量剤と混合され、この増量剤は、結晶性活性成分を含む粒子のコア中に存在する。ロイシンはまた、シェル形成性添加剤として使用することもでき、本発明の実施形態は、最大約50%のロイシン濃度を有する粒子を含むことができる。脂肪酸石鹸はロイシンおよびトリロイシンと類似した挙動を示し、したがって、適切な表面改質剤である。
【0130】
増量剤は、高いガラス転移温度(>80℃)を有するガラス形成性添加剤とすることができる。本発明の実施形態は、スクロース、トレハロース、ラクトース、マンニトールおよびクエン酸ナトリウムなどのガラス形成剤を含むことができる。これらの増量剤は、追加的または代替的に、製剤中に存在している、任意のアモルファス活性成分の安定化の一助となり得る。
【0131】
ある種の好ましい実施形態では、疎水性添加剤は、化学分析用電子分光法(ESCA、X線光電子分光法またはXPSとしても知られている)により測定すると、粒子界面の70%超、好ましくは90%超または95%超を占める。
【0132】
一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤の粒子は、好適には、質量中央径(MMD)が1〜5ミクロンの間、例えば、1.5〜4ミクロンの間を有する。
【0133】
一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤の粒子は、好適には、空気力学的質量中央径(MMAD)が1〜5ミクロンの間、例えば、1〜3ミクロンの間を有する。
【0134】
一部の実施形態では、本発明の乾燥粉末製剤の粒子は、好適には、凹凸度が1.5超、例えば1.5〜20、3〜15、または5〜10を有する。
【0135】
一部の実施形態では、肺沈着における患者間のばらつきを最小化するために、本発明の乾燥粉末製剤の粒子は、好適には40%超、好ましくは50%超、しかしとりわけ60%超の、<3.3μmの名目用量の百分率(FPF
<3.3μm)として表される微粒子割合を有する。名目用量の50〜60%(送達される用量の60〜80%)という高い肺沈着が意図される。
【0136】
一部の実施形態では、4.7μm未満の直径を有する本発明の乾燥粉末製剤の粒子の微粒子用量(すなわち、FPF
<4.7μm)は、好適には50%超、例えば、40%〜90%の間、とりわけ50%〜80%の間である。これは、中咽頭のフィルター作用と関連する患者間のばらつきを最小化する。
【0137】
本発明の製剤が2つの活性成分を含有する場合、この2つの活性成分に関するFPF
<3.3μmの差異は、好適には15%未満、好ましくは5%未満である。
【0138】
一部の実施形態では、理想的なアルバータ口腔−咽頭を使用して測定される「肺用量」は、放出用量の50%超、例えば放出用量の50%〜90%の間、とりわけ50%〜80%の間にある。
【0139】
方法
本発明は、スプレー乾燥粒子のブレンドを含む、吸入用乾燥粉末製剤を調製する方法であって、該ブレンドが少なくとも1つの活性成分を含有する、方法を提供する。本発明の実施形態は、スプレー乾燥粒子のブレンドを含む、吸入用乾燥粉末製剤を調製する方法であって、該ブレンドが、閉塞性または炎症性気道疾患、特に喘息および/またはCOPDを処置するのに適した、少なくとも1つの活性成分を含有する、方法を提供する。
【0140】
スプレー乾燥は、吸入用に設計加工された粒子を生成する上で、迅速に乾燥粉末を生成するための能力、ならびにサイズ、形態、密度および表面組成を含めた粒子特質の制御などの利点を付与する。この乾燥過程は、非常に迅速である(ミリ秒程度)である。その結果、液相中に溶解しているほとんどの活性成分は、結晶化する十分な時間を有していないので、アモルファス固体として沈殿する。
【0141】
スプレー乾燥は、4つの単位操作:供給原料の調製、供給原料を噴霧してミクロンサイズの液滴の生成、熱ガス中での液滴の乾燥、およびバグハウスまたはサイクロン分離器による乾燥粒子の採取を含む。
【0142】
本発明の方法の実施形態は、3つのステップを含むが、一部の実施形態では、2つまたはこれらのステップの3つすべてでさえ実質的に同時に行うことが可能であり、そうして、実施面では、本方法は、実際に、単一ステップ法として見なすことができる。本発明の方法を記載する目的だけのために、これら3つのステップを個別に記載するが、こうした説明は、3ステップの方法に限定することを意図するものではない。
【0143】
本発明の方法の第1のステップの実施形態では、活性乾燥粉末粒子は、第1の供給原料を調製し、この供給原料をスプレー乾燥して、活性乾燥粉末粒子が得ることにより調製される。
【0144】
この第1の供給原料は、液状供給原料またはビヒクル中に分散している少なくとも1つの活性成分および薬学的に許容される疎水性添加剤を含む。この第1の供給原料は、スプレー乾燥される液状供給原料中に溶解している活性成分の割合を低下させるのに十分高い活性成分の添加量を備えている。
【0145】
液状供給原料(またはビヒクル)の選択は、活性成分の物理化学特性に依存する。そこから選択を行う有用な液体には、水、エタノール、エタノール/水、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、およびICH Q3Cガイドライン、例えばICH Topic Q3C (R4) Impurities:Guideline for Residual Solvents(European Medicines Agency reference CPMP/ICH/283/95、2009年2月)に定義されている他のクラス3の溶媒が含まれる。
【0146】
一部の実施形態では、活性成分は、水に難溶解性であり、したがって、好ましい液体は水である。活性成分がインダカテロールまたはその塩を含む場合、液体は水が好適である。
【0147】
スプレー乾燥される供給原料への活性成分の溶解度は、該供給原料の温度を下げることにより、低下させることができる。大まかにして言えば、溶解度は、温度が10℃ごとに下がるにつれて、2分の1に低下する。したがって、室温から冷蔵条件にすると、溶解度が約4分の1に低下することが期待されると思われる。
【0148】
一部の場合、活性成分を「塩析」させる塩の添加を利用して、本発明の状況内で調製することができる不溶性活性成分の範囲をさらに拡大することができる。pHを変更するか、またはルシャトリエの原理に従ってイオン性基を有する活性成分に関する共通イオンを加えて、溶解度を制限することも可能となり得る。塩の性質を利用して、活性成分の物理化学特性、特に溶解度を変えることができる。
【0149】
結晶性活性成分の溶解度が分かれば、式1を使用して、供給原料における目標%溶解を達成するのに必要な薬物添加量を計算することができる。
【0150】
一部の実施形態では、結晶性活性成分の%溶解は、10%w/w未満、好ましくは5%w/w未満または1%w/w未満である。
【0151】
不溶性の結晶性活性成分の粒子サイズ分布は、スプレー乾燥中に噴霧液滴内部の均質性を達成するのに重要である。本発明の実施形態は、×
50(中央径)が3.0μm未満、好ましくは2.0μm未満、または1.0μm未満にさえすべきであると提示している。一部の実施形態では、不溶性の結晶性粒子は、ナノサイズ、すなわちx50<1000nmまたは200nmとすることができる。×90は、7μm未満、好ましくは5μm未満、好ましくは4μm未満、または3μm未満にさえすべきである。ナノ粒子の場合、x90は約1000nm未満にすべきである。
【0152】
乾燥粉末が水に実質的に不溶な2つ以上の活性成分を含有することになる実施形態では、それらの活性成分は、類似の一次粒子サイズ分布を有することが好ましいことが多く、その結果、空気力学的粒子サイズ分布および肺沈着のパターンは、単一製剤中の活性成分と類似している。
【0153】
水中油型エマルションを含む供給原料を含む実施形態では、分散した油相は、細孔形成剤として働き、スプレー乾燥薬物製品において、粒子の多孔性および凹凸度を向上させる。適切な細孔形成剤には、臭化パーフルオロオクチル(ペルフルブロン)、ペルフルオロデカリン、およびペルフルオロオクチルエタンを含む様々なフッ素化オイルが含まれる。エマルション液滴は、スプレー乾燥粒子において疎水性添加剤として働く長鎖リン脂質の単層によって安定化され得る。
【0154】
本発明の実施形態では、エマルションは、適切な高せん断機械式ミキサー(例えば、ULTRA−TURRAX T−25ミキサー)を8000rpmで2〜5分間使用して、疎水性添加剤を熱蒸留水(例えば、70℃)にまず分散させることによって調製することができる。この疎水性添加剤がリン脂質である場合、二価金属、例えば塩化カルシウムを加えて、頭基の水和を減少させることができる。次に、フルオロカーボンを混合しながら滴下して加える。次に、得られた水中フルオロカーボンのエマルションを、高圧ホモジナイザーを使用して処理し、粒子サイズを低下させることができる。通常、エマルションを8,000〜20,000psiで別個に2〜5回通過させて処理し、600nm未満の中央径を有する液滴を生成する。活性成分をこのエマルションの連続相中に加え、これが分散して懸濁液が形成されるまで混合および/またはホモジナイズする。追加の添加剤/添加物は、このエマルションの連続相に溶解する。
【0155】
一部の実施形態では、供給原料は水性をベースとするが、本発明の吸入可能な乾燥粉末製剤は、有機溶媒または二溶媒系を使用して調製することもできる。エタノール/水系は、粒子を含む1つまたは複数の物質の溶解度を制御する手段としてとりわけ有用である。溶媒をベースとする系は、疎水性添加剤、例えば、液状供給原料に溶解するトリロイシンおよび/またはロイシンを含む製剤にとってとりわけ有用である。
【0156】
薬物製品の水分含量を制御することが重要である。水和されない薬物の場合、粉末中の水分含量は、好ましくは5%未満、より典型的には3%未満、または2%w/w未満にもなる。しかし、水分含量は、粉末が大きな静電引力を示さないことを確実とするだけ、十分高くなければならない。スプレー乾燥粉末中の水分含量は、カールフィッシャー滴定法により決定することができる。
【0157】
一部の実施形態では、供給原料は、溶媒を蒸発させるフィルター処理された温気流にスプレーし、この乾燥生成物を採集器に運搬する。次に、消費された空気は、溶媒と一緒に排出される。得られる乾燥粒子の必要な粒子サイズ、水分含量、および生成収率が生じるよう、入り口温度、出口温度、供給速度、噴霧圧、乾燥用空気の流量、およびノズルの構造などのスプレー乾燥器の操作条件を調節することができる。適切な装置および処理条件の選択は、本明細書における教示を鑑みると、当業者の権限内にあり、過度な実験なしに行うことができる。NIRO(登録商標)PSD−1(登録商標)スケール乾燥器に関する例示的な設定は、以下の通りである:空気の入り口温度は約80℃〜約200℃の間(110℃〜170℃の間など)、空気出口は約40℃〜約120℃の間(約60℃〜100℃など)、液体の供給速度は約30g/分〜約120g/分の間(約50g/分〜100g/分など)、全空気流量は約140scfm〜約230scfm(約160scfm〜210scfmなど)、噴霧空気流量は約30scfm〜約90scfmの間(約40scfm〜80scfmなど)。スプレー乾燥用供給原料中の固体含有量は、通常、0.5%w/v(5mg/ml)〜10%w/v(100mg/ml)(1.0%w/v〜5.0%w/vなど)の範囲になろう。これらの設定は、当然ながら、規模および使用する機器の種類、および使用する溶媒系の性質に応じて変動するであろう。いかなる場合においても、これらおよび類似の方法を使用すると、肺へのエアゾール沈着に適切な直径を有する粒子の形成が可能になる。
【0158】
乾燥時に、疎水性リン脂質の表皮が、粒子の表面に形成される。水溶性の薬物および添加剤が、噴霧液滴全体に拡散する。最終的に、油相が蒸発して、スプレー乾燥粒子に細孔、およびしわ状の粒子形態が後に残る。粒子表面の性質および形態は、供給原料内部の構成要素の溶解度および拡散率を制御することにより、制御されよう。表面活性疎水性添加剤(例えば、トリロイシン、リン脂質、脂肪酸石鹸)は、粒子の表面粗さの向上をやはり推進しながら、界面において濃縮されて、粉末流動性および分散性を改善することができる。
【0159】
添加剤がすべて供給原料に溶解する供給原料を含む実施形態では、分散している活性成分上のコア−シェルコーティングが、溶解している溶質の物理特性の差異によって推進される。
【0160】
粒子の表面凹凸度を向上させるために、細孔形成剤を添加してもよい。これにより、粒子の流動および分散特徴が改善される。
【0161】
本発明の方法の第2のステップの実施形態では、非活性乾燥粉末粒子は、第2の供給原料から調製され、その供給原料をスプレー乾燥すると、非活性乾燥粉末粒子が得られる。第2の供給原料は、薬学的に許容される疎水性添加剤を含み、好ましくは活性成分を実質的に含まない。
【0162】
粒子は、場合により、組成物を増量するための追加の添加物を含有する。エマルションをベースとする供給原料が利用される場合、上記のことは必要とはなり得ないが、水性またはエタノール性供給原料中への溶解度が制限されるトリロイシンのような添加剤の場合、追加の増量剤が必要である。好ましい増量剤は、スクロース、トレハロースなどの炭水化物、マンニトールの様な糖アルコール、または塩もしくは緩衝剤である。
【0163】
非活性物含有乾燥粉末粒子と活性物含有粒子との比は、スプレー乾燥される液状供給原料中の結晶性薬物の溶解を制限するために活性物含有乾燥粉末粒子に必要な薬物添加量によって決まることになろう。一部の実施形態では、非活性粒子は、本質的に、「充填剤」の役割を果たし、粉末収容容器において、許容可能な充填質量でAPIの治療用量を送達するのに必要な、所望の薬物添加量を達成する。
【0164】
第2の供給原料を調製するために使用される疎水性添加剤は、第1の供給原料を調製するために使用されるものと同じ疎水性添加剤とすることができ、または異なる疎水性添加剤とすることができる。第1のステップにおいて形成される活性乾燥粉末粒子と第2のステップにおいて形成される形成される非活性乾燥粉末粒子の両方に同じ疎水性添加剤が使用される実施形態では、得られた本発明の乾燥粉末製剤は、所望のブレンド均質性が生じる、実質的に同じ物理化学特性により特徴付けられることが多い。
【0165】
液体の選択は、活性成分の物理化学特性に依存する。そこから選択を行う有用な液体には、水、エタノール、エタノール/水、アセトン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、およびICH Q3Cガイドライン、例えば、ICH Topic Q3C (R4) Impurities: Guideline for Residual Solvents(European Medicines Agency reference CPMP/ICH/283/95、2009年2月)に定義されている他のクラス3の溶媒が含まれる。
【0166】
任意のスプレー乾燥ステップおよび/またはすべてのスプレー乾燥ステップは、吸入により投与される医薬品において使用するためのスプレー乾燥粒子を調製するために使用される従来的な機器を使用して実施することができる。市販のスプレー乾燥器には、Buchi Ltd.およびNiro Corp.により製造されたものが含まれる。
【0167】
結晶性活性成分を含む粒子に関して既に議論した通り、粒子表面の性質および形態は、供給原料内の構成要素の溶解度および拡散率を制御することにより、制御されよう。表面活性疎水性添加剤(例えば、トリロイシン、リン脂質、脂肪酸石鹸)は、粒子にとっての表面粗さの向上をやはり推進しながら、界面において濃縮されて、粉末流動性および分散性を改善することができる。
【0168】
2つ以上の活性成分を含む固定用量配合剤を含む実施形態の場合、これらの活性成分は、第1もしくは第2の供給原料、または追加的もしくは代替的に第3の供給原料のいずれかに溶解または分散し得る。この追加の活性成分は、結晶またはアモルファス形態のどちらかで製剤化することができる。
【0169】
本発明の方法の第3のステップの実施形態では、活性乾燥粉末粒子および非活性乾燥粉末粒子を混合またはブレンドして、本発明の吸入可能な乾燥粉末製剤を得る。
【0170】
第1のステップにおいて調製される活性乾燥粉末粒子は、従来的な混合機器を使用して、第2のステップにおいて調製される非活性乾燥粉末粒子と混合することができる。
【0171】
一部の実施形態では、第1、第2および第3のステップは、単一ステップ粒子生成およびブレンド法、すなわち「スプレーブレンド」で、好都合に実施される。この方法では、活性乾燥粉末粒子は、1つまたは複数のスプレー乾燥器用ノズルから噴出され、近接位に設置されている1つまたは複数の別のスプレー乾燥器用ノズルから噴出された非活性乾燥粉末粒子と混合される。これは、個々の供給原料により供給されるマルチヘッド型噴霧器を使用して容易に達成することができる。こうしたマルチヘッド型噴霧器は、SnyderらのUS8524279に開示されている。
【0172】
従来的な機械式ブレンド操作と比べて、スプレーブレンドは、中間体の保管の必要性をなくし、生成物への不純物混入および/または生成物の損失のリスクを低減し、機器の資本コストを削減し、これにより生成時間およびコストが下がる。さらに、本スプレーブレンド法により、従来的なブレンド操作において問題となる恐れがある、摩擦帯電の可能性が低減する。
【0173】
ブレンド均質性は、ホイル−ホイル型ブリスター(foil-foil blister)への充填後の、スプレーブレンド済み製剤中の活性成分を使用して分析することができる。この点で、含有量の値は、内容物の均質性に関する現在の規制ガイドラインを少なくとも満たすべきであり、このガイドラインは、相対標準偏差(RSD)は6%以下であるべきと明記している。本明細書における一部の実施形態では、バッチの始め、真ん中、および終わりの少なくとも1つ、または2つ、またはそれらの各々において、内容物の均質性のRSDは、5%未満、または4%未満、または3%未満、または2%未満であるべきである。本発明の方法および製剤の一部の実施形態では、内容物の均質性の値は、少なくとも2年間にわたり、薬物製品の輸送の間、および保管時に維持される。
【0174】
治療における使用
本発明の実施形態は、閉塞性または炎症性気道疾患、とりわけ喘息および慢性閉塞性肺疾患の処置方法であって、有効量の上述の乾燥粉末製剤をそれを必要とする対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0175】
1つまたは複数の実施形態では、処置方法は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wのモメタゾンフロエート、約0.5〜3%w/wの臭化グリコピロニウム、約89〜98%のDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、3つの活性物を含む乾燥粉末製剤(「トロンボ(trombo)」)を対象に投与するステップを含む。
【0176】
1つまたは複数の実施形態では、処置方法は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wのモメタゾンフロエート、約93〜99%w/wのDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、2つの活性物を含む乾燥粉末製剤(「コンボ」)を対象に投与するステップを含む。
【0177】
1つまたは複数の実施形態では、処置方法は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wの臭化グリコピロニウム、約93〜99%のDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、2つの活性物を含む乾燥粉末製剤(「コンボ」)を対象に投与するステップを含む。
【0178】
本発明はまた、閉塞性または炎症性気道疾患、とりわけ喘息および慢性閉塞性肺疾患を処置するための医薬製造における、上述の乾燥粉末製剤の使用にも関する。
【0179】
本発明はまた、閉塞性または炎症性気道疾患、とりわけ喘息および慢性閉塞性肺疾患の処置に使用するための上述の乾燥粉末製剤も提供する。
【0180】
本発明による疾患または状態の処置は、対症的処置もしくは予防的処置、またはその両方とすることができる。
【0181】
本発明が適用可能な、例示的な閉塞性または炎症性気道疾患には、内因性(非アレルギー性)喘息と外因性(アレルギー性)喘息の両方を含めた、いかなるタイプまたは起源の喘息が含まれる。喘息の処置はまた、例えば、喘鳴症状を呈し、「乳児喘鳴」(主要な医学上の懸念の確立されている患者カテゴリーであり、初発または早期相喘息患者として今や特定されることが多い)と診断されるか、または診断可能である4歳または5歳未満の対象の処置を包含するものと理解される。(便宜上、この特定の喘息状態は、「乳児喘鳴症候群」と称される)。
【0182】
喘息の処置における予防有効性は、症候性発作、例えば急性喘息もしくは気管支収縮性発作の頻度または重症度の低下、肺機能の改善もしくは気道過敏性の改善によって証明されよう。予防有効性は、他の対症療法、すなわち症候性発作が起こった際の症候性発作のための療法、またはそれを制限もしくは中断するよう意図した治療、例えば、抗炎症(例えば、コルチコステロイド)または気管支拡張の必要性の低下によってさらに証明することができる。喘息における予防的利点は、「モーニングディップ」を起こす傾向がある対象において特に明らかであり得る。「モーニングディップ」は、認識されている喘息症候群であり、相当な割合の喘息患者に共通しており、例えば、約4〜6amの間の時間、すなわち、任意の事前に行われた喘息の対症療法とは通常かなり離れた時間における、喘息発作によって特徴付けられる。
【0183】
本発明が適用可能な他の閉塞性または炎症性気道疾患および状態には、急性/成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺または気道疾患(COPDまたはCOAD)(慢性気管支炎、またはそれと関連する呼吸困難を含む)、気腫、および他の薬物療法、特に、他の吸入薬物療法による気道過敏性の増悪が含まれる。本発明は、例えば、急性、アラキドン酸性、カタル性、クループ性(croupus)、慢性または結核性気管支炎を含む、いかなるタイプまたは起源の気管支炎の処置にも適用可能である。本発明が適用可能なさらなる閉塞性または炎症性気道疾患には、いかなるタイプまたは起源の塵肺症(一般的に職業上の肺の炎症性疾患であり、気道閉塞(慢性または急性のどちらか)を頻繁に伴い、繰り返される粉塵吸入によって引き起こされる)(例えば、アルミニウム沈着症、炭粉症、石綿症、石粉症、睫毛脱落症、鉄沈着症、ケイ肺症、タバコ症および綿肺症を含む)が含まれる。嚢胞性線維症および非CF気管支拡張症に伴う気管支拡張症も考えられる。
【0184】
本発明の乾燥粉末製剤の実施形態は、喘息、COPD、またはその両方の処置にとりわけ有用である。
【0185】
本発明が適用可能な、例示的な全身性疾患および状態には、以下に限定されないが、肺動脈性肺高血圧症が含まれる。
【0186】
単位剤形
本発明はまた、本発明の乾燥粉末製剤を含有する容器を含む単位剤形も提供する。
【0187】
一実施形態では、本発明は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wのモメタゾンフロエート、約0.5〜3%w/wの臭化グリコピロニウム、約89〜98%のDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、3つの活性物からなる乾燥粉末製剤(「トロンボ」)を含有する容器を含む単位剤形を対象としている。本発明の実施形態では、単位剤形は、0.5mg〜10mgの充填質量を含む。
【0188】
一実施形態では、本発明は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wのモメタゾンフロエート、約93〜99%w/wのDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、2つの活性物からなる乾燥粉末製剤(「コンボ」)を含有する容器を含む単位剤形を対象としている。本発明の実施形態では、単位剤形は、0.5mg〜10mgの充填質量を含む。
【0189】
一実施形態では、本発明は、約0.5〜3%w/wのインダカテロールマレイン酸塩、約0.5〜3%w/wの臭化グリコピロニウム、約93〜99%のDSPC+CaCl
2、および約0.1〜1%w/wのマレイン酸(緩衝剤として)を含む、2つの活性物からなる乾燥粉末製剤(「コンボ」)を含有する容器を含む単位剤形を対象としている。本発明の実施形態では、単位剤形は、0.5mg〜10mgの充填質量を含む。
【0190】
容器の例には、以下に限定されないが、カプセル、ブリスター、または金属製の容器密封システム、ポリマー(例えば、プラスチック、エラストマー)、ガラスなどが含まれる。
【0191】
容器は、エアゾール化装置に装着することができる。容器は、乾燥粉末製剤を含有し、かつ使用可能な条件において乾燥粉末製剤を提供する、適切な形状、サイズ、および物質とすることができる。例えば、カプセルまたはブリスターは、乾燥粉末製剤と有害に反応しない物質を含む壁を含むことができる。さらに、この壁は、カプセルが開放されて乾燥粉末製剤がエアゾール化されることを可能にする物質を含むことができる。1つまたは複数の型において、この壁は、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース(HPMC)、ポリエチレングリコール配合HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天、アルミホイルなどを1つまたは複数含む。現在上市されている喘息/COPDの治療剤の場合、容器内の充填質量は、0.5mg〜10mgの範囲、好ましくは1mg〜4mgの範囲にある。
【0192】
ホイル−ホイル型ブリスターの使用も考えられる。このブリスター用の適切なホイルの選択は、本明細書における教示を考慮して、当業者の権限内にある。利用されるホイルの性質は、シールの透湿性、ならびに物質が適切なサイズおよび形状のブリスターに形成できるかによって行われるであろう。一実施形態では、粉末は、0.5〜10mgの間、好ましくは1.0mg〜4.0mgの充填質量でホイル−ホイル型ブリスターに充填される。
【0193】
送達系
本発明はまた、吸入器、および本発明の乾燥粉末製剤を含む送達系も提供する。
【0194】
一実施形態では、本発明は、乾燥粉末吸入器、および第1の設計加工された粉末および第2の設計加工された粉末からなる実質的に均質なブレンドを含む吸入用乾燥粉末製剤を含む送達系であって、前記第1の設計加工された粉末が、薬学的に許容される疎水性添加剤に分散している治療活性成分を含有するスプレー乾燥粒子を含み、前記第2の設計加工された粉末が、薬学的に許容される疎水性添加剤から形成され、かついかなる治療活性成分も実質的に含まないスプレー乾燥粒子を含み、前記第1のスプレー乾燥粉末中の活性成分の添加量が、スプレー乾燥されることになる供給原料における活性成分の溶解を制限するだけ十分に多い、送達系を対象とする。
【0195】
吸入器
適切な吸入器には、乾燥粉末吸入器(DPI)を含む。いくつかのこのような吸入器には、乾燥粉末をカプセルまたはブリスターに保存し、使用前に患者がカプセルまたはブリスターの1つまたは複数を該装置に装填する、単位用量吸入器が含まれる。他の多回用量用乾燥粉末吸入器には、該用量がホイル−ホイル型ブリスター、例えばカートリッジ、ストリップまたはホイール(wheel)中に事前包装されているものが含まれる。
【0196】
好ましい乾燥粉末吸入器には、DISKUS(商標)(GSK、US6536427に記載されている)、DISKHALER(商標)(GSK、WO97/25086に記載されている)、GEMINI(商標)(GSK、WO05/14089に記載されている)、GYROHALER(商標)(Vectura、WO05/37353に記載されている)、PROHALER(商標)(Valois、WO03/77979に記載されている)、およびTWISTHALER(商標)(Merck、WO93/00123、WO94/14492およびWO97/30743に記載されている)吸入器などの、多回用量用乾燥粉末吸入器が含まれる。
【0197】
好ましい単回用量用乾燥粉末吸入器には、AEROLIZER(商標)(Novartis、US3991761に記載されている)およびBREEZHALER(商標)(Novartis、米国特許出願公開第2007/0295332号(Zieglerら)に記載されている)が含まれる。他の適切な単回用量用吸入器には、米国特許第8069851号および同第7559325号に記載されているものが含まれる。
【0198】
1日1回の投与を必要とする医薬を送達するために使用するのが、より簡単でより便利と一部の患者が分かる、好ましい単位用量ブリスター吸入器には、Gluskerらへの米国特許出願公開US2010/0108058において記載されている吸入器が含まれる。
【0199】
特に好ましい吸入器は、粉末を流動化して分散するためのエネルギーが患者により供給される(すなわち、「受動型」MD−DPI)、多回用量用乾燥粉末吸入器である。本発明の粉末は、低い最大吸気流量(PIF)で効率よく流動化して分散する。その結果、PIFでの粉末分散の観察される小さな変化は、PIFの向上に伴って起こる、慣性衝突の増加を効果的に均衡させて、流量非依存性の肺沈着をもたらす。本発明の粉末に流量依存性が観察されないことは、総合的な患者間のばらつきの低減を推進する。適切なブリスターをベースとする受動型多回用量用吸入器には、DISKUS(商標)(GSK)、GYROHALER(商標)(Vectura)、DISKHALER(商標)(GSK)、GEMINI(商標)(GSK)、およびPROHALER(商標)(Valois)装置が含まれる。
【0200】
いく人かの患者は、粉末を流動化して分散させるためのエネルギーが、吸入器により供給される「能動型」多回用量用乾燥粉末吸入器を使用することを好むことがある。適切なこのような吸入器には、例えば、WO96/09085、WO00/072904、WO00/021594およびWO01/043530に開示されている加圧可能な乾燥粉末吸入器、ならびにASPIRAIR(商標)(Vectura)吸入器が含まれる。他の能動的装置は、米国特許公開第2005/0183724号に記載されている装置などのMicroDose Technologies Inc.から入手可能なものを含むことができる。好ましい装置は、該装置の能動的構成要素(例えば、圧縮空気、回転翼)によって粉末を均質に分散させるだけではなく、能動的DPIでは一般的である逆の流量依存性(すなわち、PIFの低下に伴い、肺沈着が増加する)を生じさせないよう、呼吸プロファイルを標準化するものでもある。
【0201】
カプセル
さらなる実施形態および特徴は、一部が以下に続く記載において説明されており、一部は、明細書の検討時に当業者に明らかになるか、または本発明の実施によって学び得る。
【0202】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されるが、この実施例は限定と解釈すべきではない。
【0203】
実施例において使用される略号への記号表
以下の略号が、実施例において使用される。
【0205】
DSPC ジステアロイルホスファチジルコリン
【0207】
RP−HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー
実施例
【実施例1】
【0208】
インダカテロールマレイン酸塩およびインダカテロールマレイン酸塩+モメタゾンフロエートのスプレーブレンド乾燥粉末製剤の調製
この実施例では、インダカテロールマレイン酸塩を含有する、本発明の乾燥粉末製剤を、スプレーブレンド法により調製した。これには、インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートの固定用量配合剤を含む製剤が含まれる。
【0209】
5種のスプレーブレンド製剤(表3および4を参照されたい)を調製し、マルチヘッド型HYDRA(商標)噴霧器を装備したNiro PS−1スケールスプレー乾燥器でスプレー乾燥した。HYDRA(商標)噴霧器(
図3)は、5つの二流体ノズル(
図3Aを参照されたい)を含み、これらの各々は、
図3Bに概略が示されている、独立液体供給ラインにより制御される。ノズルすべてに噴霧用ガス(圧縮空気)を供給するために、共通のガス用ラインを使用した。乾燥中、噴霧プルームの相互作用を最小化するよう、ノズルの向きを定めた。以下に詳述する5つのロットについて、5つのスプレー用ノズルの3つだけを利用した(フィードラインA、B、C)。スプレー乾燥した供給原料の組成、および液体流量は表3に詳述している。スプレーブレンド用バルク粉末中のインダカテロールマレイン酸塩(IM)およびモメタゾンフロエート(MF)に関する組成も示している。
【0210】
ロットIの場合、フィードラインAは、6%w/wのIM(遊離塩基を基準とする)を含有した。フィードラインAの上記の残りは、mol:mol比2:1のDSPC:CaCl
2からなった。フィードラインBおよびCに関する供給原料は、mol:mol比2:1のDSPC:CaCl
2が100%であった。総固体添加量は、スプレーブレンドしたロットのすべてについて30mg/mLであり、10:1w/wのPFOB:添加剤(DSPC、CaCl
2、トレハロース、マレイン酸ナトリウム)を利用した。スプレーブレンド製剤中の最終的なIM含有量は1.44%であった。したがって、フィードラインA中の薬物添加量は4倍超に増加した。
【0211】
ロットIIでは、フィードラインA中のインダカテロールの濃度は18%w/wであり、フィードラインBおよびCからの残りのスプレー乾燥粒子はAPIを含有していないので、スプレーブレンドしたバルク粉末中の濃度は、ちょうど4.1%w/wであった。インダカテロールマレイン酸塩が0.2mg/mlの水溶解度を有すると仮定した場合、ロットIIにおいて利用されるスプレーブレンド法により、供給原料中に溶解したインダカテロールを約8.0%〜1.6%(式1)に低下させる。
【0212】
ロットIIIは、5%w/wのトレハロースをフィードラインAに添加したこと以外、ロットIIのように製剤化した。トレハロースは、本方法の間に、形成し得るアモルファスIMを安定化するために利用される添加剤である。
【0213】
ロットIVは、20mMマレイン酸ナトリウム(pH5.5)をフィードラインAに添加したこと以外、ロットIIのように製剤化する。マレイン酸ナトリウムを加えて、水へのインダカテロール溶解度を約0.01mg/ml(共通イオン効果)に低下させた。この場合、スプレーブレンドにより、供給原料中に溶解するインダカテロールを約8.0%〜0.1%に低下させた。%溶解のすべてがスプレー乾燥粉末中でアモルファス固体に変換されると仮定すると、スプレーブレンドおよび共通イオン効果によるスプレー乾燥法の間に導入されるアモルファス薬物の割合は、関連する脱アモルファス化ステップを含む標準的な微粉化法の間に導入される量と同等か、またはそれより少ない可能性が高い。
【0214】
ロットVは、IMおよびMFの固定用量配合剤を含有する。MFは、フィードラインBおよびCにおいて製剤化した。
【0215】
【表3】
【0216】
スプレーブレンド製剤の組成を表4に詳細に記している。これらの製剤は、主に、mol:mol比が2:1のDSPC:CaCl
2(>90%w/w)から構成されていることに留意されたい。リン脂質は疎水性添加剤として働き、粒子の表面組成および形態を制御する。リン脂質は、製剤中の増量剤としても働く。
【0217】
【表4】
【実施例2】
【0218】
エマルションをベースとする供給原料に由来するインダカテロールマレイン酸塩およびインダカテロールマレイン酸塩+モメタゾンフロエートからなるスプレーブレンド乾燥粉末製剤の調製
この実施例では、実施例1において使用した供給原料の調製に関してさらなる詳細を提示する。米国特許明細書US6565885において記載されている方法に従って調製したエマルションをベースとする供給原料から、インダカテロールマレイン酸塩を含有する本発明の乾燥粉末製剤を調製し、インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートを含有する本発明の乾燥粉末製剤を調製した。この方法では、微粉化した結晶性インダカテロールマレイン酸塩は、水中油型エマルションの連続相中に分散する。本方法により、疎水性添加剤の多孔層によりコーティングされている結晶性インダカテロール粒子となる。この粒子の形態は、走査型電子顕微鏡(データは図示せず)により確認した。
【0219】
それに応じて、ULTRA TURRAX(商標)T−25(商標)高せん断ミキサーにより、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびCaCl
2をそれぞれ、熱水(約70℃)に分散および溶解して、多重ラメラ層リポソームを形成させる。この油相は、臭化パーフルオロオクチル、すなわちPFOB(Atofina、Paris、フランス)であった。混合しながら、上記のDSPC分散液にPFOBを滴下して加え、粗(ミクロンサイズの)水中油型エマルションを生成させた。このエマルション液滴は、単層DSPCにより安定化する。次に、個々に3回の通過について圧10、10および20kpsigに設定したAVESTIN C−50(登録商標)ホモジナイザーにより、高圧下でこの粗エマルションをホモジナイズした。これにより、微細(サブミクロン)エマルション液滴が生じる。このエマルション液滴の中央径は、通常、0.1μm〜1.0μmの範囲、より典型的には0.3μm〜0.6μmの範囲にある。
【0220】
高せん断ミキサーにより、インダカテロールマレイン酸塩添加懸濁液も調製した。この分散液に湿潤剤としてDSPCを配合し、水中にインダカテロールの懸濁を促進した。DSPCを熱水(約70℃)に加え、次に高せん断ミキサーを用いて混合することにより、DSPC分散液を調製した。次にIMの添加前に、このDSPC分散液を2〜8℃に冷却した。ロットIVの場合、所定量のマレイン酸およびNaOHを添加することによりマレイン酸ナトリウムの緩衝溶液を調製し、pH5.5を有する溶液にして、次に2〜8℃に冷却した。ロットIIIおよびIVについて、このDSPC分散液に、インダカテロール添加の前に追加の添加剤を加えた。次に、高せん断ミキサーを使用して、上記の冷却したDSPC添加分散液に、インダカテロールを加えた。2〜8℃において薬物を維持する(IMの溶解をさらに最小化するため)冷却処理条件下で、すべてを添加したAPI懸濁液を調製した。
【0221】
ロットVに関すると、高せん断ミキサー(ULTRA TURRAX(商標)T−25(商標))を使用して、モメタゾンフロエート(MF)添加懸濁液を調製し、微粉化MFを水中に分散した。個々の添加物を2〜8℃に維持した微細エマルションに加えることにより、供給原料を調製した。得られた供給原料を開放ステンレス鋼製容器中、2〜8℃に維持し、オーバーヘッド型LIGHTNIN(登録商標)実験実用ミキサーにより混合した。微細エマルションを5%w/vまたは50mg/mlの目標固体濃度まで希釈することにより、フィードラインBおよびCに使用したビヒクル供給原料を調製した。
【0222】
このプロトコルに使用した噴霧器構造により、3つの非依存性の供給原料流をスプレー乾燥器に供給することが可能であった。これら3つの供給原料流は、以下の通り分割した。
・ 供給原料流の1つ(フィードラインA)を使用して、インダカテロール含有供給原料をスプレー乾燥した。
・ 上記供給原料流の残り2つ(フィードラインBおよびC)は、ビヒクル(ロットI、II、IIIおよびIV)またはモメタゾン含有供給原料(ロットV)のいずれかとなる、同じ供給原料を共有した(Y型金具を使用して、流量を等量に分割した)。
【0223】
これらの供給原料の比を固定値に維持するため、単軸シャフトにより駆動するマルチヘッド型ペリスタポンプを使用した。単一流量メーターを使用して、フィードラインB+Cの全流量をモニターした。単一流量メーターしか利用することができなかったので、フィードラインAの流量は、固定した期間にわたり送液された供給原料Aの質量を重量測定により決定することにより求めた。スプレー乾燥条件およびフィードラインの目標比は、機器能力(噴霧器およびマルチヘッド型供給原料用ポンプ)を評価した後に選択した。表3に示される組成に関すると、体積による供給速度の目標比は、約3:1(フィードラインB+C):(フィードラインA)であった。目標とするスプレー乾燥条件を表5に示す。
【0224】
【表5】
【実施例3】
【0225】
インダカテロールマレイン酸塩およびインダカテロールマレイン酸塩+モメタゾンフロエートからなるスプレーブレンド乾燥粉末製剤の物理特性の測定
この実施形態では、実施例1におけるスプレーブレンド乾燥粉末製剤のある種の物理化学特性、すなわち一次粒子サイズ、タップ密度および水含有量を測定した。
【0226】
図7A〜
図7Eは、本発明の実施形態のスプレーブレンド粉末の電子顕微鏡写真であり、この粉末は、インダカテロールを含む。この粉末は、表3に従って製剤化したものであり、
図7A〜Eは、ロットI〜ロットVの順に対応している。この粉末は、エマルションをベースとするスプレー乾燥法に特徴的な、中空の多孔性形態を示す。
図7A〜Eのスプレーブレンド製剤において、様々な種類の粒子が存在している証拠はない。
【0227】
表6は、これらの製剤について測定した物理特性を表す。
【0228】
【表6】
【0229】
スプレー乾燥粉末の一次粒子サイズ分布は、レーザー回折(Sympatec GmbH、Clausthal−Zellerfeld、ドイツ)により決定した。SYMPATEC HELOS(商標)粒子サイズ分析器は、ASPIROS(商標)マイクロ用量フィーダーおよびRODOS(商標)乾燥粉末分散用ユニットを装備した。約10mgの試料の質量をASPIROSに導入した。約1%のトリガー光学濃度(C
opt)および4barの駆動圧を利用した。10秒の測定期間にわたり、データを採集した。フラウンホーファーモデルを使用する機器ソフトウエアにより、粒子サイズ分布を算出した。試料測定の前に、Sympatec GmbHにより供給されている炭化ケイ素参照標準の一次粒子サイズ分布を測定することにより、このシステムの適性を評価した。データは、平中央径(x
50)およびGSD(x
84.13/x
50)に関して提示している。GSDまたは幾何標準偏差は、対数正規粒子サイズ分布の多分散性の尺度である。
【0230】
タップ密度は、マイクロスパチュラを使用し、既知の体積の円筒空洞(単軸圧縮(UCセル))を充填するのに必要な粉末の質量を測定することにより決定した。この試料ホルダーを卓上で、おだやかにたたいた。試料体積が低下するたびに、このセルに粉末をさらに加えた。空洞が充填されて、さらにたたいても粉末床がこれ以上詰まらなくなるまで、たたいて粉末を添加するステップを繰り返した。この報告結果は、5回の繰り返しの平均を示している。
【0231】
粉末中の水すなわち水分含量は、物質中に含有している、%w/w基準の水量を指す。実施例1のスプレーブレンド乾燥粉末製剤の各々の水含有量は、カールフィッシャー滴定により求めた。
【0232】
これらの結果は、粉末の組成が非常に異なっているにもかかわらず、一次粒子サイズ分布は、粉末間で著しく一致したことを示している。このことは、一次粒子サイズ分布が、スプレー乾燥条件によって主に制御され、組成の差異によってではないことを実証している。
【0233】
ロットIIの乾燥粉末がインダカテロールマレイン酸塩の単一製剤であり、ロットIVの乾燥粉末が、インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートの配合製剤であるにもかかわらず、ロットIIおよびIVに由来するスプレーブレンド粉末の物理特性は、かなり一致した。ロットIIIについて留意されるタップ密度の小さな差異は、トレハロースを製剤に添加した結果である可能性が高い。トレハロースは脂質と相互作用し、これにより、表面特性がわずかに改変して、より大きな密度の粒子となる。リン脂質および添加トレハロースを含む単一製剤および固定用量配合剤は、やはり、同等のタップ密度を有する等価な物理特性を示すことも予期されると思われる。このことは、非スプレーブレンド製剤について実証された。
【0234】
これらの結果は、粒子中の活性物および添加剤の組成と独立した物理特性を有するスプレー乾燥粒子を実現するという目標は、実施例1のスプレーブレンド乾燥粉末製剤について達成されたことを示している。
【実施例4】
【0235】
インダカテロールマレイン酸塩を含有するスプレーブレンド乾燥粉末の内容物の均質性
この実施形態では、実施例1のロットIIで調製されたスプレーブレンド乾燥粉末の内容物の均質性を測定した。ロットIIは、単一活性成分として、結晶性インダカテロールマレイン酸塩を含有する。
【0236】
ロットIIに由来するスプレーブレンドインダカテロールを含むバルク粉末を、米国特許明細書US2004/0060265において記載されているドラムをベースとする充填剤を使用して、1.5mgの充填質量で、単位用量ホイル−ホイル型ブリスターに充填した。充填済みブリスターの内容物の均質性は、薬物に特有の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)法により評価した。薬物含有量および分解生成物は、Waters2487デュアル波長検出器、Water PDA996検出器、およびWaters Empower Build1154ソフトウエアを備えたWaters Alliance2695/2795HPLCシステムにより決定した。含有量および関連物質の分析に関すると、YMC Pack ODS AQカラムを使用した。鏡像異性体に関しては、Daicel Chiral OJ−RHカラムを使用した。各試料について2回の反復回数で分析した。含有量の結果が以下の表7に示されている。
【0237】
【表7】
【0238】
10回の反復についてインダカテロール含有量測定値の相対標準偏差(RSD)はちょうど1.5%である。達成した充填済みブリスターの内容物の均質性により、単一ステップの乾燥/ブレンド法でインダカテロール粒子およびビヒクル粒子の均質ブレンドを実現する上で、本発明のスプレーブレンド法の有効性が確認された。これらのデータはまた、スプレーブレンド中の目標インダカテロール薬物添加量に適合できることも実証している。
【実施例5】
【0239】
インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートを含有するスプレーブレンド乾燥粉末の内容物の均質性
この実施形態では、実施例1のロットVで調製したスプレーブレンド乾燥粉末の内容物の均質性を測定した。このロットは、個別にスプレーブレンドした粒子中に、活性成分として、インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートを含有する。
【0240】
インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートを含有する粒子を含む、ロットVに由来するスプレーブレンド乾燥粉末を、1.5mgの充填質量でホイル−ホイル型ブリスターに充填した。充填済みブリスターの内容物の均質性は、実施例4に記載されている逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により評価した。結果が以下の表8に示されている。
【0241】
【表8】
【0242】
各場合において、反復回数10回のRSD値が、インダカテロールおよびモメタゾンについてそれぞれ1.44%および1.61%であることにより証明される通り、両方の活性成分について、測定された含有量の値の均質性は優れていた。このことは、単一ステップの乾燥/ブレンド法における均質ブレンドを達成する上で、本発明のスプレーブレンド法の有効性が確認された。
【実施例6】
【0243】
インダカテロールマレイン酸塩のスプレーブレンド乾燥粉末製剤に関して、RP−HPLCによる放出粉末質量と放出用量との比較
この実施形態では、実施例1のロットIIで調製したスプレーブレンド乾燥粉末のエアゾール成績を測定した。より詳細には、知的財産権のある単位用量のブリスターをベースとする受動型乾燥粉末吸入器により送達される粉末の放出粉末質量および放出用量を決定して比較した。この粉末は、単一活性成分としてインダカテロールマレイン酸塩を含有した。
【0244】
この乾燥粉末吸入器は、国際特許出願WO08/51621に記載されている吸入器であった。ブリスター中の充填質量は1.5mgであった。エアゾール成績は、35L/分の流量に相当する、4kPaの圧力低下で評価した。
【0245】
粉末の放出粉末質量(EPM)および放出用量(ED)を測定し、これらの結果を以下の表9に示す。
【0246】
【表9】
【0247】
重量測定法によりEPMを決定すると、装置から放出されてフィルター上に捕捉された粉末(インダカテロールおよびスプレー乾燥されるビヒクル粒子を含有するスプレー乾燥粒子)の総質量が測定される。データは、名目充填質量の百分率として表されている。
【0248】
このEDは、実施例4に記載されている薬物に特有のHPLC法により求めた。EDにより、ブリスター中のインダカテロールの申告されている(名目)含有量の百分率として表される、吸入器を出るインダカテロールの質量が測定される。
【0249】
これらの結果は、EPMおよびED測定値は、本質的に等しいことを示している。このことは、薬物含有粒子および添加剤/ビヒクル粒子は、スプレーブレンド法の間に、十分に混合されたことを示唆している。さらに、これらの結果は、ドラム充填過程の間に、2種の粒子の分離が起こらないことを実証している。
【実施例7】
【0250】
インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートからなるスプレーブレンド乾燥粉末製剤に関する、RP−HPLCによる放出粉末質量と放出用量との比較
この実施形態では、実施例1のロットVで調製されたスプレーブレンド乾燥粉末のエアゾール成績を測定した。より詳細には、知的財産権のある単位用量のブリスターをベースとする受動型乾燥粉末吸入器により送達される粉末の放出粉末質量および放出用量を決定して比較した。この粉末は、活性成分として、インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートを含有した。
【0251】
この乾燥粉末吸入器は、国際特許出願WO08/51621に記載されている吸入器であった。ブリスター中の充填質量は1.5mgであった。エアゾール成績は、35L/分の流量に相当する、4kPaの圧力低下で評価した。
【0252】
粉末の放出粉末質量(EPM)および放出用量(ED)を測定し、これらの結果を以下の表10に示す。
【0253】
【表10】
【0254】
これらの結果は、重量測定法によるEPMおよび薬物に特有のED決定は、密接に対応していることを示している。このことは、インダカテロール粒子に富む内容物が、スプレーブレンド法の間に、モメタゾンを含有する粒子と十分に混合されたことを示唆している。さらに、これらの結果は、ドラム充填過程の間に、2種の粒子の分離が起こらないことを実証している。
【実施例8】
【0255】
インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートからなるスプレーブレンド乾燥粉末製剤の空気力学的粒子サイズ分布
この実施例では、実施例1のロットVにおいて調製した、知的財産権のある単位用量のブリスターをベースとする受動型乾燥粉末吸入器により送達されるスプレーブレンド乾燥粉末のエアゾール成績は、その空気力学的粒子サイズ分布(APSD)を測定することにより決定した。
【0256】
この乾燥粉末吸入器は、国際特許出願WO08/51621に記載されている吸入器であった。実験的に求めた名目用量は、2種の薬物について70±1mcgであった。ブリスター中の充填質量は1.5mgであった。流量は35L/分であり、これは4kPaの圧力低下に相当する。
【0257】
APSDは、NEXT GENERATION IMPACTOR(商標)により測定した。この粉末について、インダカテロールおよびモメタゾンのステージごとの粉末質量を評価した。統計(平均、標準偏差)は、5回の反復測定に基づく。
【0258】
APSDの測定結果が以下の表11に示されている。
【0259】
【表11】
【0260】
空気力学的粒子サイズ分布を様々なステージ群に分割した。「LPD
0〜2」とは、ステージ0〜2(質量基準)上に存在する大きな粒子画分を意味する。「FPD
3〜F」は、ステージ3〜フィルター上の微粒子用量を指し、「VFPD
4〜F」は、ステージ4〜フィルター上の超微粒子用量を表す。NGIにおける様々なステージ上のインダカテロールおよびモメタゾンの質量は、薬物に特有のHPLC法により決定した。
【0261】
これらの結果は、インダカテロールおよびモメタゾンに関するAPSDは、ステージごとの基準に基づいて非常に密接に一致することを示している。2つの活性成分に関する、LPD、FPDおよびVFPDの小さな差異は、この粉末が優れたブレンド均質性を有することを示している。さらに、スプレーブレンド粉末に関するAPSDの優れた一致は、粒子の特性の差異が、2つの粒子間ではごくわずかであることを示している。これは、当然ながら、表面組成および形態が疎水性添加剤(DSPC)により制御されるコア−シェル構造を有するように、粒子が設計されているという点で意図的なものであり、様々なAPIが、該粒子のコアに存在している。
【0262】
ステージ3〜フィルター上の2つの活性成分の総沈着量は、測定された名目用量の66%〜68%に相当する。健常志願者における先のガンマシンチグラフィー検討に基づくと、インビボでの肺への送達は、名目用量の約50〜60%になり、患者間のばらつきは、ちょうど10〜20%になることが予期されると思われる。
【実施例9】
【0263】
インダカテロールマレイン酸塩を含有するスプレーブレンド乾燥粉末の化学的安定性
この実施例では、RP−HPLCを使用して、実施例1において調製したスプレーブレンド乾燥粉末のすべて、およびインダカテロールマレイン酸塩を含有する6つの他のスプレーブレンド乾燥粉末の化学的安定性を、実施例4に記載した通り評価した。
【0264】
これらのバルク粉末は、7日間をかけた加速条件(T=60℃)下で評価した。結果を以下の表12に示す。それらは、分解生成物、すなわち鏡像異性体含有量、および総分解生成物が増加することを示している。
【0265】
【表12】
【0266】
化学的安定性は、インダカテロールのS−鏡像異性体への変換率、およびHPLCにより観察された総不純物の百分率について定量化する。
【0267】
%溶解の推定値は、式1に従って、供給原料の組成に基づいて算出した。インダカテロールの水への溶解度は0.2mg/mlであり、20mMマレイン酸緩衝液中では、0.01mg/mlである。マレイン酸緩衝液中での溶解度の低下は、共通イオンの添加の結果として起こる、インダカテロールマレイン酸塩の沈殿方向に平衡がシフトする結果である。溶解分画に及ぼすスプレーブレンドの影響は、ロットIおよびVIを比較することにより、はっきりと明らかである。スプレーブレンドしたロットIでは、全薬物添加量は1.4%であり、依然として溶解分画はちょうど4.9%である。対照的に、単一供給原料ロットVIの場合、薬物含有量は、実際により高い(2%)が、溶解分画は15%に近い。溶解分画が高いほど、鏡像異性体のレベルがかなり高くなり(7.7%対1.8%)、総不純物レベルも高くなる(4.7%対2.7%)。共通イオン効果とスプレーブレンドの両方を利用したロットVは、試験したロットのなかで最低の溶解分画および最良の化学的安定性を示している。
【0268】
表12に示されている結果は、スプレー乾燥用供給原料中のインダカテロールの溶解分画と、保管時のインダカテロールの化学的安定性の得られた尺度との間に、強力な相関があることを示している。結果を
図4にプロットしている。
【0269】
図4は、ロットI〜XIについて、鏡像異性体、および鏡像異性体(eneatiomer)+総不純物に対してプロットした、インダカテロールの%溶解を示している。溶解したインダカテロールの含有量の低下に伴い、化学的安定性がかなり改善されたことが注目される。共通イオン(マレイン酸塩)の添加により、塩方向に平衡がシフトし、その溶解度がかなり低下する(共通イオン効果)。これは、インダカテロールの溶解分画を低下させる手段でもある。溶解分画が低い場合、ガラス形成剤(例えば、トレハロース)を添加しても、該粉末中のアモルファス含有量が低いので、添加の恩恵はほとんどない。
【0270】
表12および
図4に示されている結果は共に、スプレー乾燥される供給原料に溶解しているインダカテロールの割合と、保管時に生じた化学的安定性との間に有意な相関があることを示している。化学的安定性の低下は、粉末中のアモルファスインダカテロールの割合が増加した結果として起こることが推定される。スプレー乾燥と関連する迅速な乾燥時間(ミリ秒の時間尺度)のために、供給原料に溶解しているいかなるインダカテロールも、スプレー乾燥薬物製品中のアモルファス物質に変換されるであろうことが推定される。不運なことに、薬物添加量が低いため、および現在の分析方法は感度に乏しいため、スプレー乾燥粉末中のアモルファス含有量を定量化するのは不可能である。それにもかかわらず、溶解したインダカテロールが、スプレー乾燥粉末中でアモルファス薬物に変換される可能性は高く、インダカテロールの溶解分画と保管時に観察される生じた安定性の差異との間の相関は、溶解分画/アモルファス含有量/化学的安定性の間に関連性があることに対する追加的な証拠を提示する。
【実施例10】
【0271】
Breezhaler(登録商標)乾燥粉末吸入器中でスプレー乾燥されたインダカテロールマレイン酸塩の設計加工された粉末の肺への送達の予測
実施例10により、理想的なアルバータ口腔−咽頭を通過してフィルター上に沈着する活性成分の質量測定から、インビボでの期待される平均肺沈着量を予測する。理想的なアルバータ口腔−咽頭モデルは、画像研究から得られた口腔−咽頭の解剖模型の鋳造物に基づいて開発されたものである。このモデルは、口腔−咽頭に対する平均沈着量を得られるよう設計されたものである。「肺用量」は、口腔−咽頭に沈着しない活性成分の質量を表す。
【0272】
IM(ロットVIII)のスプレー乾燥製剤に関するインビトロでの「肺用量」が
図5に示されている。設計加工された粉末は、Breezhaler(登録商標)乾燥粉末吸入器により送達される。このBreezhaler(登録商標)は携帯型の、装置の負担(resistance)が低い、カプセルをベースとする乾燥粉末吸入器である。これらの結果を、標準的なブレンド技法を使用して製剤化されており、かつ同じ乾燥粉末吸入器を利用する、上市IM製品(OnBrez(登録商標)吸入用粉末、Novartis、Basel、スイス)からの結果と比較する。設計加工した粉末に関するインビトロでの肺用量は、上記の標準ブレンドの約2倍である。市販のOnBrez薬物製品に関して予期される37%肺沈着は、COPD患者における本薬物製品に関する以前の薬物動態結果とよく一致する。したがって、これらの結果は、設計加工された粉末に関する肺沈着が、名目用量の約70%になるべきであることを示唆している。さらに、設計加工された粉末は、直線的用量応答を示す。
【0273】
設計加工された粉末製剤(ロットVIII)はまた、流量依存性は最小であることも示している。
図6は、Breezhaler(登録商標)乾燥粉末吸入器による流量の関数として、インビトロでの肺用量をプロットしたものを示している。この流量は、30L/分〜60L/分〜90L/分と様々である。Breezhaler(登録商標)吸入器は、負担の低い装置であり、ほとんどの患者は90L/分を超える流量を達成することができる。したがって、30L/分の流量は、非常に厳密な試験条件に相当する。インビトロでの肺用量は、試験した流量のすべてについて、80%超を維持する。
【実施例11】
【0274】
Breezhaler(登録商標)乾燥粉末吸入器から送達されるインダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートのスプレーブレンド製剤中の空気力学的粒子サイズ分布
Breezhaler(登録商標)乾燥粉末吸入器からのIMおよびMF(ロットV)からなる固定用量配合剤の空気力学的粒子サイズ分布を、IM単一製剤(ロットII)からの結果と比較した。Next Generation Impactorで得られたS3−F(表13)からのステージ群について、MMADおよび質量に関する結果を示している。Breezhaler(登録商標)吸入器は、流量60L/分で作動させた。充填質量は、約150μgの名目用量を送達するよう調節した。
【0275】
MMADおよびFPF
S3−Fは、単一製剤およびコンボ製剤において、IMが一致している。さらに、IMおよびMFの送達は、組合せ製品内で一貫している。コンボ製品におけるIMおよびMFに関するFPF
S3−Fの総合的な偏差は、単一製剤に関して得られた薬物送達から5%未満である。
【0276】
【表13】
【実施例12】
【0277】
スプレーブレンドにより調製されたインダカテロールマレイン酸塩、モメタゾンフロエート、および臭化グリコピロニウムの組成
6種の追加的なスプレーブレンド粉末のロットを、マルチヘッド型Hydra噴霧器を装備したNiro PS−1スケールスプレー乾燥器で製造した。ロットはすべて、2:1のmol:mol比のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC):CaCl
2、および10:1のPFOB:添加剤(DSPCおよびCaCl
2)の質量比を使用して製剤化した。プラセボの供給原料は、DSPCおよびCaCl
2を全固体濃度4.04%w/wで、およびPFOBと水との質量比を0.68w/wで含んだ。原薬の供給原料は、すべてのロットについて、インダカテロールマレイン酸塩(IM)、臭化グリコピロニウム(GB)、およびモメタゾンフロエート(MF)、DSPCおよびCaCl
2を全固体濃度4.19%w/wで、およびPFOBと水との質量比を0.52w/wで含んだ。プラセボ、およびこれらの6つのロットの原薬の供給原料の組成は、表14に詳述している。プラセボおよび薬物の供給原料を、それぞれ約3:1の供給比でスプレー乾燥した。これら2つの供給原料をNiro PSD−1でスプレーブレンドし、この場合、ブラセボの供給原料は、63.7〜75.1g/分の範囲の速度でポンプ注入し、原薬は、22.5〜24.9g/分の範囲の速度でポンプ注入した。6つのスプレーブレンドしたロットに関する目標組成は、表15に一覧表示されている。薬物含有粒子(paticle)は、バルク組成物と比べて、薬物中では5倍超で富んでおり、これにより、溶解性に乏しい薬物(例えば、インダカテロールマレイン酸塩)は、供給原料への溶解分画が低下する。さらに、共通イオンとしてのマレイン酸ナトリウムを添加することにより、インダカテロールマレイン酸塩の溶解度が、0.2mg/ml〜0.01mg/mlに低下する。総合的に、6つのロットにおけるインダカテロールマレイン酸塩の%溶解は、≒0.17%(式1を使用して計算)であった。
【0278】
【表14】
【0279】
【表15】
【0280】
スプレーブレンド粒子製剤は、マルチヘッド型Hydra噴霧器を使用して、エマルションをベースとする供給原料からスプレー乾燥する。微粉化インダカテロールマレイン酸塩およびモメタゾンフロエートは、原薬の供給原料の水中油型エマルションの連続相中に分散させる。一方、臭化グリコピロニウム、マレイン酸、クエン酸、および水酸化ナトリウムは連続相に溶解する。共通イオン効果によりインダカテロールマレイン酸塩の溶解度を抑制するため、および該製剤を緩衝化するため、マレイン酸を加えた。マレイン酸は、所望のpHにおいて、ほとんどまたはまったく緩衝化能を有していないので、緩衝化剤としてクエン酸をバッチ6−3に加え、pH4.5に制御する。原薬の供給原料のpHはすべて、水酸化ナトリウムを使用して調節した。それぞれ供給比約1:3の4つのノズルを装備したHydra噴霧器を使用して、原薬の供給原料をプラセボの供給原料と共スプレー乾燥した。供給原料の目標とする組成は、実施例12(表14)に記載されている。この製造方法により、疎水性添加剤の多孔層によりコーティングされたアモルファスGB、結晶性IMおよびMFを含む粒子となる。
【0281】
プラセボの供給原料は、高せん断ミキサー(Ultra−Turrax T−50、IKA−Werke GmbH、Staufen、ドイツ)を使用し、溶解CaCl
2を含有する熱水(約70℃)中にジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を分散させることにより調製し、多重ラメラ層リポソームを形成させた。混合しながら、上記のDSPC分散液に臭化パーフルオロオクチル(PFOB)を加えることにより、粗(ミクロンサイズの)水中油型エマルションを生成した。この粗エマルションにさらなる水を加え、蒸発損失分を占めるのに必要なエマルション重量を得た。次に、圧20±3kpsigの圧力設定で2回、個別に通過させて、この粗エマルションをホモジナイズ(M110 Microfluidizer、Microfluidics Corp.、Newton、MA)することにより、サブミクロンエマルションを生成した。
【0282】
原薬の供給原料は、高せん断ミキサー(Ultra−Turrax T−25、IKA−Werke GmbH、Staufen、ドイツ)を使用し、マレイン酸ナトリウム、DSPC、塩化カルシウムおよびPFOBを含む、水中油型エマルションに、IMおよび/またはMFの原薬の結晶を分散することにより調製した。原薬の供給原料はすべて、2〜8℃に維持した。必要な場合、GBを加え、水中油型エマルションの連続相に溶解した。バッチ6−3の場合、クエン酸緩衝液を調製し、IMおよびMFの原薬を添加する前に、マレイン酸と一緒に水中油型エマルションに加えた。
【0283】
原薬の供給原料に関する水中油型エマルションは、プラセボの供給原料に関する上記と同じ手順および機器を使用して調製した。次に、水中油型エマルションを2〜8
oCに冷却した。6−3の場合を除く各バッチについて、所定量のマレイン酸およびNaOHを添加することにより、マレイン酸ナトリウムの緩衝溶液を調製し、pH3の溶液にして、次に2〜8℃に冷却した。バッチ6−3の場合、所定量のクエン酸およびマレイン酸およびNaOHを添加することにより、緩衝溶液を調製してpH4.5にし、次に2〜8℃に冷却した。
【0284】
このプロトコルに使用した噴霧器の構造により、4つの非依存型の供給原料ラインをスプレー乾燥器に供給することが可能であった。これら4つの供給原料流は、以下の通り分割した。
・ 原薬の供給原料は、噴霧器の流れ(低流量)の1つに供給した。
・ プラセボの供給原料は、流量を分割するためのカスケーディング(cascading)Y型金具を装備した、残りの3つの噴霧器の流れに供給した(高流量)。
【0285】
供給原料がポンプ注入される比を維持するため、2つの独立制御したペリスタポンプを使用した。各供給原料の流量をモニターした。目標とするスプレー乾燥条件を表16に示す。
【0286】
【表16】
【実施例13】
【0287】
スプレーブレンドした組合せ物のエアゾール成績
選択したスプレーブレンドしたロットにおけるインダカテロールマレイン酸塩に関するエアゾール成績を表17に示す。携帯型の受動型乾燥粉末吸入器(T−326)により、粉末を60L/分の流量で送達した。この製剤は、IM単一製剤、そのMFとGBとの固定用量配合剤、およびIM/GB/MFからなる3つの組合せを含む。このエアゾール成績は、10%以下の単一製剤に比べると、固定用量配合剤の場合、微粒子割合(FPF
S3−F)の変動を伴い、単一製剤と固定用量配合剤との間で一致する。
【0288】
【表17】
【実施例14】
【0289】
IM、MFおよびGBを含むスプレーブレンド製剤の化学的安定性
IMのスプレーブレンド製剤、およびそのMFとGBとの固定用量配合剤の化学的安定性を表18に示す。示されているデータは、RP−HPLCにより決定した、3つの原薬の各々に関する主要な分解生成物を示している。スプレーブレンドは、インダカテロールの結晶の性質を維持しており(%溶解=0.17%)、保管時の化学分解は最小限である。LOQをかなり超えるレベルで見られる分解生成物は、インダカテロールに関してピーク529だけである。これは、この薬物の鏡像異性体である。この鏡像異性体は、前臨床試験においてもっと高いレベルで認定されており、この分解度は、懸念事項ではない。
【0290】
【表18】
【実施例15】
【0291】
スプレー乾燥薬物製品の化学的安定性に及ぼす化合物Xの水への溶解の影響
この実施例は、本発明のスプレーブレンド法および組成物が、懸濁液をベースとするスプレー乾燥法に適用可能であることを例示しており、この場合、APIは、スプレー乾燥される水性供給原中に溶解限度を有する。この実施例では、肺動脈性肺高血圧症を処置するための新規プロスタサイクリンアナログ(化合物X)がスプレーブレンドされる。化合物Xの遊離塩基形態は、水への溶解度が0.01mg/mLを有する。APIの用量は、100mcgの範囲に低下するので、本製剤の薬物添加量もやはり低下しなければならない。これにより、スプレー乾燥される供給原料中にAPIが溶解する。少量(約1%w/w)の化合物Xが溶解した場合でさえも、スプレー乾燥薬物製品の化学的安定性にかなりの影響を及ぼし得る。
図8は、2週間および4週間の期間にわたり、%溶解の関数として、化合物Xに関して観察されるAPI分解をプロットしたものを示している。
図8では、少量のAPIの溶解は、スプレー乾燥薬物製品の化学的安定性に大きな影響を及ぼすことが分かる。%溶解は、供給原料中の薬物含有量および固体含有量の変化により様々である(以下の表19を参照されたい)。製剤の残りは、DSPC:CaCl
2が2:1のモル比である。製剤はすべて、Novartisの科学者により設計された特別仕様の実験室用スケールスプレー乾燥器でスプレー乾燥した。このスプレー乾燥粉末をこれらの期間にわたり、40℃/75%RHにおいて保管した。分解の有意な増大が、0.1%を超える%溶解に関して観察される。したがって、本発明の方法および組成物の一部の実施形態では、活性物の%溶解は、約0.1%未満(約0.09%、または0.08%、または0.07%、または0.06%、または0.05%未満など)である。本発明の方法および組成物の一部の実施形態では、4週間後の薬物分解率は約1.5%未満(約1%、または0.9%、または0.8%、または0.7%、または0.6%、または0.5%、または、0.4%、または0.3%、または0.2%、または0.1%未満など)である。
【0292】
【表19】
【実施例16】
【0293】
スプレー乾燥薬物製品の化学的安定性を維持するための化合物Xの製剤のスプレーブレンド
化合物Xの安定性を維持する目的で、APIの溶解を制限するために薬物添加量20%および40%w/wで化合物Xを含む粒子を、2:1のモル比のDSPC:CaCl
2を含有するPULMOSPHERE(商標)のプラセボ粒子と混合する、スプレーブレンド法を開発した。このスプレーブレンド製剤は、2.5%w/wという低いAPI含有量を有した。表20は、試験したスプレーブレンド製剤に関する組成を提示している。製剤はすべて、特別仕様の噴霧および採集ハードウェアを備えたNiro PSD−1スケールスプレー乾燥器で調製した。Hydra噴霧器を使用して、最大5つの独立した液体供給および噴霧ガス流でスプレーブレンドした。
【0294】
【表20】
【0295】
40℃/75%RHにおいて4週間保管した後、全分解量は、試験したすべてのスプレーブレンドについて、0.35%未満であった。化合物Xを含有するノズルが、40%w/w濃度に維持される製剤の場合、全分解量は0.20%未満であった。したがって、本スプレーブレンド法は、供給原料へのAPI溶解を最小化すること、およびスプレー乾燥薬物製品の化学的安定性を維持することに有効であった。
【0296】
上記の個々の項目において言及した、本発明の様々な特徴および実施形態は、適宜、必要な変更を加えて別の項目に適用される。結果として、1つの項目中に特定されている特徴は、適宜、別の項目において特定される特徴と組み合わせることができる。
【0297】
当業者は、単なる型通りの実験だけを使用して、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または確認することができよう。こうした等価物は、以下の特許請求の範囲により包含されることを意図している。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
第1の設計加工された粉末および第2の設計加工された粉末の実質的に均質なブレンドを含む、吸入用粉末製剤であって、
前記第1の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤に分散している結晶性治療活性成分を含む第1のスプレー乾燥粒子を含み、
前記第2の設計加工された粉末は、薬学的に許容される疎水性添加剤の第2のスプレー乾燥粒子を含み、前記第2のスプレー乾燥粒子はいかなる治療活性成分も実質的に含まず、前記第1の設計加工された粉末中の前記活性成分の添加量は、前記活性成分の所望の目標用量を達成するのに十分に高い、
吸入用粉末製剤。
[2]
前記活性成分が、気管支拡張薬、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、充血緩和薬、鎮咳薬物質、およびプロスタサイクリンアナログからなる群から選択される、[1]に記載の製剤。
[3]
前記活性成分が、インダカテロール塩、グリコピロニウム塩、またはモメタゾン塩である、[2]に記載の製剤。
[4]
前記第1の粉末が、気管支拡張薬、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、充血緩和薬、および鎮咳薬物質からなる群から選択される2つ以上の活性成分を含有する、[1]に記載の製剤。
[5]
前記第1の粉末が、活性成分として、インダカテロール塩およびグリコピロレートを含有する、[4]に記載の製剤。
[6]
前記第1の粉末が、活性成分として、インダカテロール塩およびモメタゾンフロエートを含有する、[4]に記載の製剤。
[7]
前記第1の粉末が、活性成分として、インダカテロール塩、グリコピロレート、およびモメタゾンフロエートを含有する、[4]に記載の製剤。
[8]
前記第1のスプレー乾燥粉末および第2のスプレー乾燥粉末が同じ疎水性添加剤を含有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の製剤。
[9]
前記疎水性添加剤がリン脂質である、[1]〜[8]のいずれかに記載の製剤。
[10]
中咽頭での沈着に関連する患者間のばらつきを最小化するために、3.3μm未満の微粒子用量が40%を超える、[1]〜[9]のいずれかに記載の製剤。
[11]
中咽頭での沈着に関連する患者間のばらつきを最小化するために、4.7μm未満の微粒子用量が50%を超える、[1]〜[10]のいずれかに記載の製剤。
[12]
d2Q<500(平均ばらつきとして表される)を有する粒子の割合のばらつきが、乾燥粉末吸入器における2kPa〜6kPaの圧力低下の範囲にわたり20%未満である、[1]〜[11]のいずれかに記載の製剤。
[13]
吸入用収容容器をさらに含み、前記収容容器が、0.5mg〜10mgの充填質量を含む、[1]〜[12]のいずれかに記載の粉末製剤。
[14]
前記活性物が少なくとも90%の結晶化量を有する、[13]に記載の粉末製剤。
[15]
前記結晶性治療活性成分が、0.1〜1.0mg/mlの間の溶解度を有する、[13]に記載の粉末製剤。
[16]
スプレー乾燥粒子の吸入用乾燥粉末製剤を調製する方法であって、
(a)液相中に分散している結晶性活性成分および液相中に分散または溶解している疎水性添加剤を含む第1の供給原料を調製し、前記第1の供給原料をスプレー乾燥して、第1の設計加工された乾燥粉末を得るステップであって、前記結晶性活性剤の薬物添加量が、前記供給原料の前記溶媒相中への10%w/w未満の活性溶解となる、ステップ、
(b)液相中に溶解または分散している疎水性添加剤を含み、前記活性成分を実質的に含まない第2の供給原料を調製し、前記第2の供給原料をスプレー乾燥して、活性成分を実質的に含まない、第2の設計加工された乾燥粉末を得るステップ、
(c)前記活性乾燥粉末粒子および前記非活性乾燥粉末粒子を混合して、吸入可能な乾燥粉末製剤を得るステップ
を含む、方法。
[17]
前記活性乾燥粉末粒子および前記非活性乾燥粉末粒子の比率が、活性成分の目標用量を送達するよう調節される、[16]に記載の方法。
[18]
前記第1の供給原料の薬物含有量の量が、前記活性乾燥粉末粒子製剤の前記薬物含有量が前記吸入可能な乾燥粉末製剤の所望の薬物含有量を達成するのに十分なものである、[16]に記載の方法。
[19]
前記活性乾燥粉末粒子および前記非活性乾燥粉末粒子が、混合調製され、実質的に同時に、混合される、[16]に記載の方法。
[20]
前記第1の供給原料の前記溶媒相への前記活性成分の溶解度が、0.1g/ml〜2g/mlの間である、[16]に記載の方法。
[21]
前記供給原料中の溶解活性成分の割合が、5%w/w未満である、[16]に記載の方法。
[22]
前記第1の供給原料および前記第2の供給原料を、前記両供給原料をスプレー乾燥して、前記個々の供給原料から調製される前記活性乾燥粉末粒子および前記非活性乾燥粉末粒子を混合する二流体噴霧器に通して、吸入可能な乾燥粉末製剤を得る、[16]に記載の方法。
[23]
前記二連式噴霧器が、独立制御可能な2〜6個の二流体ノズルを含む、[22]に記載の方法。
[24]
前記第1の供給原料および前記第2の供給原料を、前記両供給原料をスプレー乾燥する個別の噴霧器に通す、[22]に記載の方法。
[25]
[1]〜[15]のいずれかに記載の乾燥粉末製剤の有効量を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、閉塞性または炎症性気道疾患を処置する方法。
[26]
閉塞性または炎症性気道疾患を処置するための医薬品の製造における、[1]〜[15]のいずれかに記載の乾燥粉末製剤の使用。
[27]
閉塞性または炎症性気道疾患の処置に使用するための、[1]〜[15]のいずれかに記載の乾燥粉末製剤。
[28]
吸入器および[1]〜[15]のいずれかによる吸入用乾燥粉末製剤を含む送達系。