特許第6232095号(P6232095)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232095
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】開き戸駆動装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/63 20150101AFI20171106BHJP
   E05F 15/619 20150101ALI20171106BHJP
   E05F 15/622 20150101ALI20171106BHJP
   E05F 1/14 20060101ALI20171106BHJP
   E05F 3/18 20060101ALI20171106BHJP
   E05F 5/02 20060101ALI20171106BHJP
   E05F 5/00 20170101ALI20171106BHJP
【FI】
   E05F15/63
   E05F15/619
   E05F15/622
   E05F1/14 A
   E05F3/18
   E05F5/02 C
   E05F5/00 A
【請求項の数】5
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2016-47098(P2016-47098)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-160710(P2017-160710A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】505147408
【氏名又は名称】エバグリーンシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】小野 博
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−016128(JP,A)
【文献】 特開2006−225902(JP,A)
【文献】 特表平07−507117(JP,A)
【文献】 特許第3245335(JP,B2)
【文献】 実開昭60−166776(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
E05F 1/10− 1/14
E05F 3/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機器の駆動力を使用して開き戸を自動的に開閉駆動する、開き戸駆動装置であって、
前記駆動機器の駆動力により移動される第1の可動部材と、
該第1の可動部材の移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、該弾性エネルギーを蓄積する蓄積手段と、
該蓄積手段に蓄積された前記弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して移動される第2の可動部材と、
該第2の可動部材の移動に応答して前記開き戸を駆動する駆動部材と、
を含み、
前記駆動機器の駆動力を遅延させて前記開き戸へ伝達して、前記開き戸を駆動するようにしたことを特徴とする、開き戸駆動装置。
【請求項2】
前記開き戸の急激な動きを抑える緩衝装置を更に備える、請求項1に記載の開き戸駆動装置。
【請求項3】
前記蓄積手段は、前記開き戸が閉まりきったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸を閉め方向へ付勢する閉め付勢力を保っている、請求項1又は2に記載の開き戸駆動装置。
【請求項4】
前記蓄積手段は、前記開き戸が開ききったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸を開き方向へ付勢する開き付勢力を保っている、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の開き戸駆動装置。
【請求項5】
前記開き戸が閉まりきる直前を検知して、検知信号を出力する検知部と、
前記検知信号に応答して、前記第1の可動部材の移動により前記開き戸が閉まる方向へさらに移動するように 前記駆動機器の駆動を制御する制御部と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の開き戸駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物本体に対して蝶番等のヒンジ機構で連結された開き戸を、駆動機器(駆動源;動力源)の駆動力を使用して自動的に開閉駆動する、開き戸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の開き戸駆動装置は、モータ等の駆動機器(駆動源;動力源)の駆動力(回転力)を使用して、開き戸を自動的に開閉駆動する装置である。開き戸は、建物本体のドアフレームに対して、蝶番等のヒンジ機構で連結されている。
【0003】
従来から知られている開き戸駆動装置は、駆動機器(駆動源;動力源)の駆動力(回転力)を、伝達部材を介して、直接、開き戸へ伝達することにより、開き戸を開閉駆動している。換言すれば、駆動機器(駆動源;動力源)の駆動力は、遅延されることなく、伝達部材を介して同期して開き戸へ伝達され、これによって開き戸が開閉駆動される。
【0004】
例えば、特許文献1(特開2008−208645号公報)は、蝶番等で枠に取り付けた既存の扉(開き戸)をそのまま使用し、簡単に取付ができる開き戸用後付型の「自動ドア駆動装置」を開示している。この特許文献1に開示された自動ドア駆動装置は、モータ及び減速機の回転軸に一端が固定された伸縮可能なアームと、扉(開き戸)に固定され、伸縮可能なアームの他端に取り付けられた固定金具とを有する。従って、伸縮可能なアームは、モータの回転力を、扉を開閉する力として伝達する伝達部材として働く。固定金具と回転軸の距離は扉が開くにつれて広くなる。伸縮可能なアームは、自由に伸縮して、なめらかに効率よくモータの回転力を、扉を開く力に変換する。扉が閉まる場合も、同様に回転軸が逆転して扉が閉じる。
【0005】
また、特許文献2(特開2000−80859号公報)は、簡略省力化を図った「開き戸の電動開閉装置」を開示している。この特許文献2に開示された、開き戸の電動開閉装置は、開き戸に取り付けられた駆動モータと、開き戸上部側面に水平に取り付けられたガイドレールと、開き戸上枠に固定された固定支点軸と、開閉アームとを備える。ガイドレールには、溝付車開閉駆動支点軸を設置した牽引ランナーが装着されている。開閉駆動支点軸と固定支点軸間は、両端部に軸受を設置した開閉アームで連結されている。従って、ガイドレールと開閉アームとの組み合わせは、駆動モータの回転力を、開き戸を開閉する力として伝達する伝達部材として働く。
【0006】
さらに、特許文献3(特表2003−531318号公報)は、ヒンジ部によってドアフレームに支持された回転可能な開き戸を開閉する「開き戸の自動開閉装置」を開示している。この特許文献2に開示された、開き戸の自動開閉装置は、少なくとも1つのヒンジ部を覆うフレームと、ヒンジ部に対応するフレーム部に結合し、フレームを回転する回転力を発生する駆動部と、駆動部においてフレームを浮いた構造に支え、駆動部の回転力をフレーム及び開き戸に伝達する支持部と、を備える。回転力を発生する駆動部は、ドアフレームによって覆われ、開き戸に回転力を提供する駆動モータから成る。支持部は、フレームに結合した梁構造部と、支持体とから成る。梁構造物は、駆動部の回転軸と開き戸とを連結して、開き戸に回転力を伝達するためのものである。支持体は、梁構造物、駆動モータおよび開き戸の結合位置を、駆動モータの回転軸の回転中心に位置するように支える。したがって、フレームと梁構造物との組み合わせは、駆動部(駆動モータ)の回転力を、開き戸を開閉する力として伝達する伝達部材として働く。
【0007】
なお、開き戸駆動装置ではないが、本発明に関連する技術として、ドアクローザを用いて、開閉操作を迅速且つ容易に行うことができるようにした「開き戸の開閉装置」も知られている(例えば、特許文献4参照)。周知のように、ドアクローザは、開き戸に取り付けられる装置であって、人によって開けられた開き戸を自動的に閉める働きをする装置である。ドアクローザは、それ自体は動力を持たず、開き戸が開けられた時の力をバネなどに蓄えると同時に、オイルの粘性を利用した減速装置(ダンパ)により急激な働きを抑えるような仕組みとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−208645号公報
【特許文献2】特開2000−80859号公報
【特許文献3】特表2003−531318号公報
【特許文献4】特許第3621912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、上記特許文献1〜3に記載の開き戸駆動装置はいずれも、モータ(駆動源;動力源)の駆動力(回転力)を、伝達部材を介して、直接、開き戸へ伝達することにより、開き戸を開閉駆動している。そのため、次に述べるような問題がある。
【0010】
モータの駆動初期は、開き戸の慣性力に打ち勝つ必要がある。そのため、モータとして強力な駆動源(動力源)が必要となるという問題がある。
【0011】
また、開き戸を玄関などに使用すると、開き戸が風にあおられるなど、モータとして必要な駆動力が変化する。その結果、それに打ち勝つためにも、モータには強力な駆動力が必要となる。
【0012】
そればかりか、風などによる力が、伝達部材を介して、直接、モータ(駆動源;動力源)に加わるので、モータ(駆動源;動力源)やその駆動力を伝達するギヤ(減速機)などを頑丈にする必要がある。その結果、コストの上昇を招き、かつ開き戸駆動装置の寿命を短くする原因ともなる。
【0013】
強力な駆動源(モータ)は安全面ではマイナスに働き、開き戸とドアフレームとの間に手足を挟まれたときなどの、安全性を確保することが困難となる。
【0014】
また、一般に、安全性を担保するために、モータの電流を監視し、電流値が上昇した時に、モータを反転させるなどの対策(安全策)がとられる。しかしながら、強力な駆動力は、手足が挟まれたことを検知することが相対的に困難となり、安全性に問題があることが多い。
【0015】
また、上記安全策を講ずるには、CPU(central processing unit)などの電子回路(複雑なコントローラ)が必要となる。その結果、相対的に故障頻度が上がり、コストの上昇をも招いてしまう。
【0016】
さらに、前述したように、上記特許文献1〜3に記載の開き戸駆動装置では、モータ(駆動源;動力源)と開き戸とが伝達部材を介して結合されているため、モータ(駆動源;動力源)の駆動力(回転力)が直接的に(同期して)開き戸に伝達される。そのため、停電時やモータ(駆動源)の故障時には、開き戸が停止した位置に固定されてしまう。その結果、開き戸を開閉することが出来なくなるという欠点もある。
【0017】
なお、前述したように、特許文献4に開示されているようなドアクローザは、それ自体は動力(駆動源;動力源)を持たない。
【0018】
従って、本発明の目的は、上述した欠点を払拭し、廉価で長寿命、かつ安全性が高く、停電時でも手動で開き戸を開閉可能な、開き戸駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の実施形態に係る開き戸駆動装置は、駆動機器の駆動力を使用して開き戸を自動的に開閉駆動する、開き戸駆動装置であって、前記駆動機器の駆動力により移動される第1の可動部材と、該第1の可動部材の移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、該弾性エネルギーを蓄積する蓄積手段と、該蓄積手段に蓄積された前記弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して移動される第2の可動部材と、該第2の可動部材の移動に応答して前記開き戸を駆動する駆動部材と、を含み、前記駆動機器の駆動力を遅延させて前記開き戸へ伝達して、前記開き戸を駆動するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、廉価で長寿命、かつ安全性が高く、停電時でも手動で開き戸を開閉可能な、開き戸駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る開き戸駆動装置が適用される玄関ドア(開き戸)の部分外観図である。
図2】本発明に係る開き戸駆動装置の外観を示す外観図であって、(A)は開き戸が閉められた状態の開き戸駆動装置の正面図であり、(B)は開き戸駆動装置の底面図である。
図3図1に示した開き戸が閉められた状態における、ローラとレールの状態を示す断面図である。
図4】(A)および(B)は、それぞれ、開き戸が閉じた状態における、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図および右側面図である。
図5】開き戸が開動作をしている状態における、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置内部構成を示す底面断面図である。
図6】開き戸が開いた状態における、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図7】開き戸が閉動作をしている状態における、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図8】開き戸が閉じた状態における、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図9】開き戸が開動作をしている状態における、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図10】開き戸が開いた状態における、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図11】開き戸が閉動作をしている状態における、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図12】開き戸が開動作をしている状態における、本発明の第1の変形例に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図13】開き戸が閉じた状態における、本発明の第2の変形例に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図14図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第1の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第1の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
図15図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第2の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第2の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
図16図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第3の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第3の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
図17図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第4の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第4の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図であり、(C)は、図17(A)のピストン部の拡大図である。
図18図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第5の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第5の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
図19図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される緩衝装置の第7の実施例であって、(A)および(B)は、それぞれ、第7の実施例に係る緩衝装置の内部構成を示す正面断面図および右側面断面図である。
図20】開き戸が閉じた状態における、本発明の第3の変形例に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図21】本発明の第3の実施形態に係る開き戸駆動装置を示す図であって、(A)は開き戸駆動装置の内部構成を示す縦断面図であり、(B)は開き戸駆動装置に使用される緩衝装置(緩衝部材)示す上面図断面図である。
図22】本発明の第1乃至第3の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される、モータを駆動制御するコントローラの一例を示す回路図である。
図23】開き戸が閉じる直前の状態における、本発明の第4の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図24】開き戸が完全に閉じた状態における、本発明の第4の実施形態に係る開き戸駆動装置の内部構成を示す底面断面図である。
図25】本発明の第4の実施形態に係る開き戸駆動装置に使用される、モータを駆動制御するコントローラ(制御部)の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[実施形態1]
まず図1乃至図3を参照して、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100について詳細に説明する。
【0023】
図1図3においては、直交座標系(X,Y,Z)を使用している。図1図3に図示した状態では、直交座標系(X,Y,Z)において、X軸方向は前後方向(奥行方向)であり、Y軸方向は左右方向(幅方向)であり、Z軸方向は上下方向(高さ方向)である。
【0024】
図示の開き戸駆動装置100は、駆動機器(駆動源;動力源)1(図4参照)の駆動力(回転力)を使用して、開き戸200を自動的に開閉駆動する装置である。図示の例では、駆動機器1としてモータが使用される。
【0025】
図1は開き戸駆動装置100が適用される玄関ドア(開き戸)200の部分外観図である。図1は、建物本体の内部側から玄関ドア(開き戸)200を見た部分外観図であって、開き戸200が半開きした状態を示している。図2は開き戸駆動装置100の外観を示す外観図であって、(A)は開き戸200が閉められた状態の開き戸駆動装置100の正面図であり、(B)は開き戸駆動装置100の底面図である。図2(A)は、建物本体の内部側から開き戸駆動装置100を見た正面図である。
【0026】
図1に示されるように、開き戸200は、建物本体のドアフレーム210に対して、蝶番等のヒンジ機構220で連結されている。図示の例では、開き戸駆動装置100は、建物本体の内側で、ドアフレーム210の上部に取り付けられている。しかしながら、開き戸駆動装置100の設置場所は、図1の例には限定されない。また、図示の例では、開き戸駆動装置100は、ドアフレーム210に取り付けられているが、開き戸200に取り付けられてもよい。
【0027】
図1および図2に示されるように、開き戸駆動装置100は、後述するように駆動機器1によって駆動される、駆動軸11を有する。駆動軸11には、アーム110の一端が連結されている。アーム110の他端(先端)には、ローラ120が取り付けられている。一方、開き戸200には、その上部の内壁に、水平方向に延在するように、レール230が取り付けられている。
【0028】
図3は、開き戸200が閉められた状態における、ローラ120とレール230の状態を示す断面図である。ローラ120は、レール230内を転動するように設けられている。
【0029】
このような構成によれば、駆動軸11に取り付けられたアーム110を、駆動軸11の周りに、図1および図2の矢印A1に示された方向に回転(旋回)させることで、開き戸200を開く方向へ駆動することができる。勿論、矢印Aの方向とは逆方向へアーム110を回転(旋回)させることで、開き戸200を閉じる方向へ駆動することができる。
【0030】
前述した特許文献1〜3においては、駆動機器(駆動源;動力源)1であるモータの回転軸(モータ軸)又は減速機の回転軸が、駆動軸11である。
【0031】
これに対して、本第1の実施形態では、後で詳細に説明するように、駆動機器(駆動源;動力源)1であるモータの回転軸2(減速機の回転軸)と、駆動軸11とは別体である。
【0032】
次に、図4を参照して、開き戸駆動装置100の内部構成について詳細に説明する。
【0033】
図4において、(A)および(B)は、それぞれ、開き戸200が閉じた状態における、開き戸駆動装置100の内部構成を示す底面断面図および右側面図である。
【0034】
図示の開き戸駆動装置100は、その外観が、図1に示されるような、略直方体形状の筐体100aで覆われている。図4では、その筐体100aを省略し、筐体100aの内部構成を図示している。
【0035】
開き戸駆動装置100は、駆動源(駆動機器;動力源)としてのモータ1を備えている。図示の例では、モータ1は、左右方向Yに延在する回転軸(モータ軸)2を備えている。本例では、回転軸(モータ軸)2は、モータ1の本体1aから左方向へ延在している。
【0036】
モータ1に印加する電圧の極性を反転させることにより、モータ1は、正転も反転もする。回転軸(モータ軸)2には、雄ねじが切ってある。モータ1には、電線3が接続されている。この電線3からモータ1に電圧が印加される。
【0037】
開き戸駆動装置100は、回転軸(モータ軸)2に嵌合する第1の可動部材4を備えている。図示の例では、第1の可動部材4は、前後方向Xに延在している。本例では、第1の可動部材4は、回転軸(モータ軸)2から前方向へ延在している。第1の可動部材4は、モータ軸2との嵌合部に雌ねじが切ってある。したがって、モータ軸2の雄ねじと第1の可動部材4の雌ねじとが互いに噛み合っている。従って、モータ軸2が回転すると、第1の可動部材4は左右方向Yへ直線移動する。
【0038】
詳述すると、図4の矢印B1に示されるように、モータ1のモータ軸2が反時計方向に回転すれば、第1の可動部材4は左方向へ移動する。一方、矢印B1の方向とは逆方向に、モータ1のモータ軸2が時計方向に回転すれば、第1の可動部材4は右方向へ移動する。
【0039】
第1の可動部材4の前方向の端部には、スライドシャフト4Aが結合されている。スライドシャフト4Aは、左右方向Yに延在している。したがって、スライドシャフト4Aは、第1の可動部材4とともに平行移動する。
【0040】
開き戸駆動装置100は、第1の可動部材4の移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、この弾性エネルギーを(一時的に)蓄積する蓄積手段を備える。
【0041】
図示の例では、蓄積手段は、第1の弾性体5と第2の弾性体6とから成る。第1の弾性体5は、第1の可動部材4の左側に配置されており、第2の弾性体6は、第1の可動部材4の右側に配置されている。すなわち、第1の弾性体5の右端は、第1の可動部材4の左壁に接しており、第2の弾性体6の左端は、第1の可動部材4の右壁に接している。本例では、第1の弾性体5および第2の弾性体6の各々は、金属のコイルバネから構成されている。
【0042】
このような構成によれば、第1の弾性体5は、第1の可動部材4の左方向への移動により、その移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、その弾性エネルギーを開き戸200の開方向に付勢する開付勢力として一時的に蓄積する。第2の弾性体6は、第1の可動部材4の右方向への移動により、その移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、その弾性エネルギーを開き戸200の閉方向に付勢する閉付勢力として一時的に蓄積する。
【0043】
開き戸駆動装置100は、蓄積手段(5,6)に蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して移動される第2の可動部材7を備える。すなわち、第2の可動部材7は、第1の可動部材4に、第1および第2の弾性体5,6を介して接続されている。
【0044】
図4(A)に示されるように、第2の可動部材7は、断面コ字型をしている。すなわち、第2の可動部材7は、スライドシャフト4Aと平行に左右方向に延在する延在部7Eと、この延在部7Eの左端に設けられた左板7Lと、延在部7Eの右端に設けられた右板7Rとを有する。第1の弾性体5の左端は、第2の可動部材7の左板7Lに接続されており、第2の弾性体5の右端は、第2の可動部材7の右板7Rに接続されている。
【0045】
第2の可動部材7の左板7Lには、スライドシャフト4Aの左端部が挿通する貫通孔(図示せず)が空けられており、第2の可動部材7の右板7Rには、スライドシャフト4Aの右端部が挿通する貫通孔(図示せず)が空けられている。
【0046】
図4(B)に示されるように、第2の可動部材7には、その上端に、ボルト等(図示せず)で固定されたスライド部材7Aが固定(結合)されている。スライド部材7Aは、図4(A)に示されるように、左右方向Yに延在する矩形板の形状をしている。したがって、第2の可動部材7とスライド部材7Aとは、第1の可動部材4とスライドシャフト4Aとがモータ1の回転により左右方向Yに平行移動すると、第1の弾性体5又は第2の弾性体6に加わる(蓄積される)付勢力により、モータ1の駆動力とは遅延して(非同期に)、左右方向Yに移動する。
【0047】
尚、図4(A)および(B)では、第1の可動部材4と第2の可動部材7とを接続する第1および第2の弾性体5および6として金属のコイルバネを用いているが、第1および第2の弾性体5および6の材料および形状はこれに限定されない。例えば、第1および第2の弾性体5および6は、金属に限らず、空気を内蔵したゴムや樹脂製のバネであっても良い。或いは、第1の可動部材4をピストン形状とし、第2の可動部材7をシリンダ形状とした場合、第1および第2の弾性体5および6として、シリンダにより圧縮される空気を利用してもよい。さらに、第1および第2の弾性体5および6の材料として、金属を使用する場合でも、第1および第2の弾性体5および6の形状はコイルバネに限らず、板バネやゼンマイ状のバネであってもよい。第1および第2の弾性体5および6として、上述したようなものを使用しても、金属のコイルバネと同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0048】
第2の可動部材7は、スライド部材7Aを介してベース8に保持されている。ベース8は、図4(A)に示されるように、左右方向Yに延在する矩形板の形状をしている。ベース8の下面には、スライド部材7Aの前縁および後縁を摺動可能に保持する一対のスライドレール8Aが取り付けられている。一対のスライドレール8Aは、図4(A)に示されるように、左右方向Yに延在している。このような構成により、第2の可動部材7(およびそれに結合されたスライド部材7A)は、一対のスライドレール8Aに沿って、ベース8上を左右方向Yに移動することが出来る。
【0049】
図4(A)および(B)に示されるように、第2の可動部材7の延在部7Eには、その下端側の前面の一部に、ラックギヤ9が取り付けられている。ラックギヤ9は、左右方向Yに延在している。ラックギヤ9は、ピニオンギヤ10と噛み合っている。ピニオンギヤ10は、第2の可動部材7がスライドレール8A上を左右方向Yに平行移動すると、それに伴いその中心軸(回転軸)の回りで回転する。
【0050】
具体的に説明すると、図4(A)において、第2の可動部材7が右側から左側へ平行移動すると、ピニオンギヤ10は、矢印C1で示される方向に、その中心軸の回りで時計回りに回転する。一方、図4(A)において、第2の可動部材7が左側から右側へ平行移動すると、ピニオンギヤ10は、矢印C1とは逆方向に、その中心軸の回りで反時計回りに回転する。
【0051】
図4(B)に示されるように、ピニオンギヤ10には、開き戸200(図1参照)を駆動する駆動軸11が嵌合されている。駆動軸11は、上下方向Zに延在している。ベース8には、駆動軸11が挿通する貫通孔(図示せず)が空けられている。
【0052】
したがって、ピニオンギヤ10が回転すると、駆動軸11も同時に(同期して)回転する。駆動軸11には、開き戸200に接するアーム110が取り付けられている(図1参照)。その結果、駆動軸11が回転すると、アーム110が開き戸200を押し(又は引き)、開き戸200の開閉を行う。
【0053】
したがって、ラックギヤ9とピニオンギヤ10と駆動軸11とアーム110との組み合わせは、第2の可動部材7の移動に応答して開き戸200を駆動する駆動部材として働く。
【0054】
上述の説明から明らかなように、本第1の実施形態では、モータ1の回転軸2(減速機の回転軸)と、開き戸200を駆動するための駆動軸11とは別体であることが分かる。
【0055】
図4(A)に示されるように、ベース8には、第1の可動部材4が左右方向Yに平行移動する距離を制限する第1および第2のリミットスイッチ12、13が取り付けられている。第1のリミットスイッチ12は、ベース8の右側端部に設けられており、第2のリミットスイッチ13は、ベース8の左側端部に設けられている。
【0056】
第1および第2のリミットスイッチ12、13は、第1の可動部材4が所定の距離だけ移動すると、第1の可動部材4に結合されたスライドシャフト4Aが第1および第2のリミットスイッチ12、13に接触して、第1および第2のリミットスイッチ12、13が切れる位置に設置されている。すなわち、第1および第2のリミットスイッチ12、13は、第1の可動部材4の移動距離を制限する機器として働き、開き戸200の開角度を制限するように動作する。
【0057】
図4(A)では、第1の可動部材4の移動距離を制限する機器として、リミットスイッチ12、13を用いているが、本発明はそれに制限されない。例えば、第1の可動部材4の移動距離を制限する機器としては、透過型のフォトインタラプタや、反射型のフォトセンタと反射材との組み合わせ、マグネットとリードスイッチとの組み合わせなどを使用してよい。すなわち、第1の可動部材4の移動位置を検出できる機能があれば、いずれを用いても、リミットスイッチと同様の効果を発揮することができることが分かる。
【0058】
次に、図4図7を参照して、開き戸駆動装置100の動作について説明する。図5は、開き戸200が開動作をしている状態における、開き戸駆動装置100の内部構成を示す底面断面図である。図6は、開き戸200が開いた状態における、開き戸駆動装置100の内部構成を示す底面断面図である。図7は、開き戸200が閉動作をしている状態における、開き戸駆動装置100の内部構成を示す底面断面図である。
【0059】
最初に、図4図6を参照して、開き戸駆動装置100を用いて、開き戸200を閉じた状態から開くときの動作について説明する。
【0060】
開き戸200が閉じている状態では、図4(A)に示されるように、スライドシャフト4Aの右先端部が第1のリミットスイッチ12に接触し、第1のリミットスイッチ12が切れている。
【0061】
この状態において、図示しないコントローラが、外部から開指令を受けると、コントローラは、モータ1のモータ軸2を矢印B1に示されるように反時計回りに回転するように、モータ1を駆動制御する。このモータ1の駆動により、第1の可動部材4は、図4(A)の矢印C1に示されるように左方向へ平行移動する。この第1の可動部材4の左方向への移動により、図5に示されるように、第1の弾性体5が収縮するので、第1の弾性体5に弾性エネルギーが蓄積される。すなわち、第1の弾性体5は、第1の可動部材4の左方向への移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、この弾性エネルギーを一時的に蓄積する。
【0062】
第1の可動部材4が左方向へ平行移動することにより、第1の可動部材4に結合されたスライドシャフト4Aも左方向へ移動し、その左先端部が、図5に示されるように、第2のリミットスイッチ13に接触する。これにより、第2のリミットスイッチ13が切れる。この第2のリミットスイッチ13が切れるのに応答して、コントローラは、モータ1の駆動を停止する。図5は、このモータ1の駆動が停止したときの状態を図示している。
【0063】
この状態では、上述したように、第1の弾性体5が収縮することにより、第1の弾性体5に弾性エネルギーが蓄えられている。したがって、第1の弾性体5は、その蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して、第2の可動部材7を左方向へ平行移動させるように付勢する。換言すれば、第1の弾性体5は、第2の可動部材7へ開き付勢力を作用させている。
【0064】
この開き付勢力により、第2の可動部材7は図5の矢印D1で示されるように左方向へ平行移動する。その結果、第2の可動部材7に取り付けられているラックギヤ9も左方向へ移動するので、ピニオンギヤ10は、図5の矢印E1で示されるように、時計回りに回転する。このピニオンギヤ10の時計回りの回転により、駆動軸11も同時に時計回りに回転する。この駆動軸11の時計回りの回転により、図2に示されるように、アーム110は、矢印A1に示された方向に回転(旋回)されるので、開き戸200を開くことができる。図6は、開き戸200が開いた状態を図示している。
【0065】
次に、図6図7図4(A)を参照して、開き戸駆動装置100を用いて、開き戸200を開いた状態から閉じるときの動作について説明する。
【0066】
開き戸200が開いている状態では、図6に示されるように、スライドシャフト4Aの左先端部が第2のリミットスイッチ13に接触して、第2のリミットスイッチ13が切れている。
【0067】
この状態において、図示しないコントローラが、外部から閉指令を受けると、コントローラは、モータ1のモータ軸2を矢印B2に示す方向にように、時計回りに回転するように、モータ1を駆動制御する。このモータ1の駆動により、第1の可動部材4は、図6の矢印C2で示すように右方向へ平行移動する。この第1の可動部材4の右方向への移動により、図7に示されるように、第2の弾性体6が収縮するので、第2の弾性体6に弾性エネルギーが蓄積される。すなわち、第2の弾性体6は、第1の可動部材4の右方向への移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、この弾性エネルギーを一時的に蓄積する。
【0068】
第1の可動部材4が右方向へ平行移動することにより、第1の可動部材4に結合されたスライドシャフト4Aも右方向へ移動し、その右先端部が、図7に示されるように、第1のリミットスイッチ12に接触する。これにより、第1のリミットスイッチ12が切れる。この第1のリミットスイッチ12が切れるのに応答して、コントローラは、モータ1の駆動を停止する。図7は、このモータ1の駆動が停止したときの状態を図示している。
【0069】
この状態では、上述したように、第2の弾性体6が収縮することにより、第2の弾性体6に弾性エネルギーが蓄えられている。したがって、第2の弾性体6は、その蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して、第2の可動部材7を右方向へ平行移動させるように付勢する。換言すれば、第2の弾性体6は、第2の可動部材7へ閉じ付勢力を作用させている。
【0070】
この閉じ付勢力により、第2の可動部材7は、図7の矢印D2で示すように右方向へ平行移動する。その結果、第2の可動部材7に取り付けられているラックギヤ9も右方向へ移動するので、ピニオンギヤ10は、図7の矢印E2で示されるように、反時計回りに回転する。このピニオンギヤ10の反時計回りの回転により、駆動軸11も同時に反時計回りに回転する。この駆動軸11の反時計回りの回転により、図2に示されるように、アーム110は、矢印A1とは逆方向に回転(旋回)されるので、開き戸200を閉じることができる。図4(A)は、開き戸200が閉じた状態を図示している。
【0071】
以上の説明から明らかなように、本第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、モータ1の駆動力を遅延させて(非同期に)開き戸200へ伝達して、開き戸200を駆動するようにしている。
【0072】
図4図7に示した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、第1の可動部材4(およびそれに結合されたスライドシャフト4A)の支持体として第2の可動部材7を使用しているが、第2の可動部材7を省いてもよい。すなわち、ベース8を、第1の可動部材4を支持する支持体として使用して、第1の可動部材4がベース8上を左右方向Yに移動できる構造としても良い。
【0073】
図5では、第2の弾性体6であるコイルバネの左端が第1の可動部材4の右壁に接続されているので、第2の弾性体6であるコイルバネが伸びている。また、図7では、第1の弾性体5であるコイルバネの右端が第1の可動部材4の左壁に接続されているので、第1の弾性体5であるコイルバネが伸びている。しかしながら、これらコイルバネは、第1の可動部材4に接続されずに、後述する図12のように、伸び方向の場合に、コイルバネが第1の可動部材4から離れるようにしても良い。換言すれば、本発明は、縮み側のコイルバネの応力のみを利用しても良い。
【0074】
また、図4図7の例では、開き戸200の開方向、閉方向の応力を得るために、蓄積手段として二つのコイルバネから成る二つの弾性体5、6を用いている。しかしながら、蓄積手段としては、二つの弾性体5、6を用いずに、第1および第2の弾性体5、6のどちらか一方のみを用いても良い。この場合、一つのコイルバネから成る一つの弾性体の縮み方向および伸び方向の応力を、開き戸200の開閉に使用することになる。
【0075】
さらに、図4図7の例では、第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aを平行移動させる手段として、雄ねじを切ったモータ軸2に雌ねじを切った第1の可動部材4とが噛み合う構造を採用しているが、第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aを平行移動させる手段はこれに限定されない。
【0076】
たとえば、後述する図13のように、第1の可動部材4とスライドシャフト4Aとを結合せず、スライドシャフト4Aに雄ねじを設け、スライドシャフト4Aそのものをモータ1で回転させることにより、第1の可動部材4を平行移動させるような構造を用いても良い。或いは、油圧、空圧シリンダを第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aの一端に設置し、油圧、空圧ピストンの平行運動をそのまま第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aの平行移動に使用しても良い。又は、電磁ソレノイドの平行運動をそのまま第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aの平行移動に使用しても良い。
【0077】
すなわち、第1の可動部材4およびスライドシャフト4Aを平行移動させる手段として、公知の様々な手段を使用することができ、用いる手段により本発明の効果に影響を及ぼすことはない。
【0078】
次に、本発明の第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100の効果について説明する。すなわち、本発明の第1の実施形態によれば、次のような効果を奏する。
【0079】
1)モータ1などの動力源(駆動源)の駆動力を小さく出来るだけでなく、動力源(駆動源)の長寿命化を図ることができる。その理由は、開き戸駆動装置100では、駆動源の駆動力が伝達部材を介して直接的に(同期して)開き戸に伝達されるのでなく、動力源(駆動源)は弾性体5、6を収縮するのみの作用でよいので、開き戸200の慣性力や開き戸200に加わる風圧などの外力の影響を受けないからである。また、動力源(駆動源)は、ほぼ一定の駆動力を発生させればよいからである。
【0080】
2)開き戸200に挟まれたときも安全性を確保できることである。その理由は、開き戸200は動力源(駆動源)により伝達部材を介して直接的に駆動されるのではなく、弾性体5、6の応力(付勢力)で駆動されるからである。
【0081】
3)停電や故障などで動力源(駆動源)の動作が停止したときでも、手動で開き戸200を開閉することが可能である。その理由は、開き戸200に弾性体5、6の応力に対向する力を加えれば、手動で開き戸200を開閉できるからである。
【0082】
[実施形態2]
図8乃至図11を参照して、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aについて詳細に説明する。
【0083】
開き戸駆動装置100Aの外観は、図1図3に図示した開き戸駆動装置100と同様の構成をしている。
【0084】
開き戸駆動装置100Aは、後述するように、開き戸200の急激な動きを抑える緩衝装置(ダンパ)を更に備えている点を除いて、図4図7に示した開き戸駆動装置100と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では、開き戸駆動装置100と同様の機能を有するものには同一の参照符号を付し、説明の簡略化のために、それらの説明については割愛する。
【0085】
図8は、開き戸200が閉じた状態における、開き戸駆動装置100Aの内部構成を示す底面断面図である。図9は、開き戸200が開動作をしている状態における、開き戸駆動装置100Aの内部構成を示す底面断面図である。図10は、開き戸200が開いた状態における、開き戸駆動装置100Aの内部構成を示す底面断面図である。図11は、開き戸200が開動作をしている状態における、開き戸駆動装置100Aの内部構成を示す底面断面図である。
【0086】
図4図7に図示した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100は、前述したように、安全性に優れ、長寿命の開き戸駆動装置である。しかしながら、第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、開き戸200に風などで過大な外力が加わった場合、開き戸200が急に開閉し、近傍の人や物に危害を加える可能性があった。
【0087】
これに対して、図8図11に図示した第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aは、図4図7に図示した開き戸駆動装置100に、さらに流体抵抗を利用した緩衝装置を付加した構成を有する。そのような構成を採用することにより、開き戸200に過大な外力が加わっても、開き戸200の急激な動作を防止するようにしている。
【0088】
図示の緩衝装置は、第2の可動部材7とラックギヤ9(スライドレール8Aの一方)との間に設けられている。
【0089】
緩衝装置は、粘性のある流体が封入されたシリンダ14と、このシリンダ14内に内接するピストン17とを備える。図示のシリンダ14は、第1の可動部材7の延在部7Eに結合され、第1の可動部材7とともに平行移動する。シリンダ14は、左右方向Yに延在している。シリンダ14は、ピストン17により、第1の部屋15と第2の部屋16とに隔てられている。図示の例では、第1の部屋15はピストン17の左側に設けられ、第2の部屋16はピストン17の右側に設けられている。シリンダ14は、左右方向Yに延在する筒状部14Eと、筒状部14Eの左端に設けられた左板14Lと、筒状部14Eの道端に設けられた右板14Rとから成る。ピストン17の一部には、流体通路(後述する)が設けられている。
【0090】
緩衝装置は、ピストン17に接続されたロッド17Aと、ロッド17Aの一端(図示の例では、左端)をベース8に固定する固定部17Aaとをさらに有する。ロッド17Aは、左右方向Yに延在している。
【0091】
シリンダ14の左板14Lおよび右板14Rには、ロッド17Aが挿通する貫通孔(図示せず)が空けられている。ロッド17Aとシリンダ14の左板14Lおよび右板14Rとの間には、流体の漏れを防ぐためのシール(図示せず)が設けられている。シリンダ14の筒状部14Eに、ラックギヤ9が取り付けられている。
【0092】
図8に示す開き戸駆動装置100Aの基本的な動作は、図4(A)に示す開き戸駆動装置100と同様である。異なる点は次の通りである。第2の可動部材7が接合されたスライド部材7Aが、一対のスライドレール8Aに沿って、左右方向Yに平行移動するとき、シリンダ14も同時に平行移動する。このとき、シリンダ14内に粘性のある流体が封入された第1および第2の部屋15、16の体積を変化させる力が生じる。
【0093】
詳述すると、動力源であるモータ1が矢印B1で示されるように反時計方向に回転し、第1の可動部材4が図8の右側から左側に移動したとする(図9参照)。この場合、図9に示されるように、第1の弾性体5は収縮して、第1の弾性体5に弾性エネルギーが蓄積される。この第1の弾性体5に蓄積された弾性エネルギーは、第2の可動部材7とシリンダ14とを左方向へ移動させる応力(付勢力)として作用する。この応力(付勢力)は、ベース8に固定されたピストン17によって隔てられた、シリンダ14内の第1の部屋15の体積を増加させるともに、第2の部屋16の体積を減少させようとする力となる。
【0094】
しかしながら、第1および第2の部屋15、16には粘性のある流体が封入されているので、第2の可動部材7とシリンダ14とは、容易に動くことは出来ない。その結果、シリンダ14内に封入された流体は、ピストン17に設けられた流体通路を通って徐々に第2の部屋16から第1の部屋15に移動すると共に、シリンダ14と第2の可動部材7とも徐々に左方向に平行移動する。
【0095】
シリンダ14にはその一部にラックギヤ9が取り付けられていて、ラックギヤ9はピニオンギヤ10と噛み合っている。したがって、第2の可動部材7とシリンダ14とがスライドレール8Aに沿って徐々に左方向に平行移動すると、ピニオンギヤ10は、図9の矢印E1で示されるように、時計方向に徐々に回転する。
【0096】
ピニオンギヤ10には開き戸200を駆動する駆動軸11が嵌合されている。したがって、ピニオンギヤ10が回転すると、駆動軸11も同時に回転する。この様に、駆動軸11も徐々に回転するので、駆動軸11に取り付けられたアーム110が徐々に開き戸200を押し、開き戸200はゆっくりと開かれる。
【0097】
最終的に、開き戸駆動装置100Aは、図10に示される状態となる。
【0098】
本第2の実施の形態では、緩衝部材として流体抵抗を使用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、緩衝部材としては、摩擦材を密着させ、それが移動する際の摩擦抵抗なども使用できる。しかしながら、緩衝部材は、本実施の形態のように、初期抵抗のない流体抵抗を使用した緩衝剤がより好ましい。
【0099】
上述した動作説明では、図8図10を参照して、動力源であるモータ1が反時計回りに回転し、第1の可動部材4が右側から左側に動く場合の例について説明した。しかしながら、図10図11、および図8に示されるように、モータ1が矢印B2に示されるように時計回りに回転し、第1の可動部材4が左側から右側に動く場合でも、同様であることは言うまでもない。
【0100】
次に、開き戸200に風などの外力が加わった場合について説明する。
【0101】
図10は、開き戸200が開いている状態における、開き戸駆動装置100Aの内部構成を示す底面断面図である。
【0102】
この状態において、開き戸200が風により閉め方向(図2の矢印A1で示す方向とは逆方向)の外力を受けたとする。この場合、駆動軸11には反時計回りの回転力が加わる。この回転力は、駆動軸11に嵌合しているピニオンギヤ10に伝わり、シリンダ14を右方向へ動かそうとする力として作用する。その結果、シリンダ14の第1の部屋15の体積を減少させ、第2の部屋16の体積を増加させようとする。
【0103】
ここで、緩衝装置が設けられていない、図10と同様の状態である図6に示す開き戸駆動装置100では、風による外力が第1の弾性体5の収縮力に打ち勝つと、第2の可動部材7を右方向へ動かし、開き戸200は風による外力に従って閉まり出す。
【0104】
これに対して、図10に示される開き戸駆動装置100Aでは、シリンダ14内に封入された粘性のある流体が、ピストン17に設けられた流体通路を通り、第1の部屋15から第2の部屋16に移動する際の流体抵抗により移動が妨げられる。その結果、第2の可動部材7の急激な移動、すなわち、開き戸200の急激な閉動作を防止することができる。
【0105】
図8図11に示す第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aでは、ピストン17がベース8に固定され、シリンダ14が第2の可動部材7ともに左右方向Yに平行移動することによる流体抵抗を利用しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、本第2の実施形態とは反対に、シリンダ14がベース8に固定され、ピストン17が第2の可動部材7とともに左右方向Yに平行移動する構成にしても同様の効果が得られる。
【0106】
本第2の実施形態では、第2の可動部材7とシリンダ14とは互いに固定されており、それらの形状に制限はない。しかしながら、第1および第2の弾性体5、6としてコイルバネを使用した場合、第2の可動部材7の外形形状を円筒形にすれば、第1および第2の弾性体5、6の伸縮による半径方向の形状変化を抑制することができる。また、シリンダ14の形状も、そのシリンダ内壁面にかかる流体圧の変化による変形を防止するため、円筒形が優れている。
【0107】
以上の説明から明らかなように、シリンダ14とピストン17とから成る緩衝装置は、第2の可動部材7とそれによって移動する開き戸200の動きのみに作用するものであって、第1の可動部材4の動きには何ら作用を及ぼさない。従って、第1の可動部材4を移動させるための動力源(モータ)1は、専ら第1および第2の弾性体5、6を伸縮させるためにのみ使用される。その結果、本第2の実施形態では、動力源(モータ)1として強力な駆動力を持つものを使用する必要がない。
【0108】
また、本第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aにおいては、開き戸200の開閉速度は概ね第1および第2の弾性体5、6の伸縮伸長力と、ピストン17に作用する流体抵抗との関係で決まる。その結果、動力源(モータ)1が第1の可動部材4を動かす速さは、開き戸200の開閉速度とは直接的に関係を持たない。よって、本第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aは、動力源の設計の自由度が大きくなり、長寿命化を図ることができる。
【0109】
次に、本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aの効果について説明する。すなわち、本発明の第2の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果1)〜3)に加えて、更に次のような効果をも奏する。
【0110】
4)開き戸200に過大な外力が加わった場合でも、開き戸200の急激な動作を防止できる。その理由は、開き戸駆動装置100Aがシリンダ14とピストン17とから成る緩衝装置を備えているからである。
【0111】
[変形例1]
次に、図12を参照して、本発明の第1の変形例に係る開き戸駆動装置100Bについて説明する。図12は、開き戸200が開動作をしている状態における、開き戸駆動装置100Bの内部構成を示す底面断面図である。
【0112】
図示の開き戸駆動装置100Bは、後述するように、第1および第2の弾性部材5、6の端の接続の有無が相違している点を除いて、図5に示した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と同様の構成を有し、動作をする。
【0113】
図5に示されるように、第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、第1および第2の弾性体5、6の端は、他の部材に接続されている。詳述すると、第1の弾性体5の左端は、第2の可動部材7の左板7Lの内壁に接続され、第1の弾性体5の右端は、第1の可動部材4の左壁に接続されている。そして、第2の弾性体6の左端は、第1の可動部材4の右壁に接続され、第2の弾性体6の右端は、第2の可動部材7の右板7Rの内壁に接続されている。したがって、第1の可動部材4の左右方向Yに水平移動に伴って、第1および第2の弾性体5、6は、図5に示されるように、伸縮する。
【0114】
これに対して、図12に示されるように、第1の変形例に係る開き戸駆動装置100Bでは、第1および第2の弾性体5、6の端は、他の部材に接続されておらず、単に配置されている。詳述すると、第1の弾性体5は、第2の可動部材7の左板7Lの内壁と第1の可動部材4の左壁との間に配置されている。第2の弾性体6は、第1の可動部材4の右壁と第2の可動部材7の右板7Rの内壁との間に配置されている。したがって、図12に示されるように、例えば、第1の可動部材4が左方向に水平移動すれば、第1の弾性体5は収縮するが、第2の弾性体6は伸長することなく、第2の弾性体6の左端は、第1の可動部材4の右壁から離れる。
【0115】
このような第1の変形例に係る開き戸駆動装置100Bでも、前述した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と同様の効果を奏することは明らかである。
【0116】
[変形例2]
次に、図13を参照して、本発明の第2の変形例に係る開き戸駆動装置100Cについて説明する。図13は、開き戸200が閉じた状態における、開き戸駆動装置100Cの内部構成を示す底面断面図である。
【0117】
図示の開き戸駆動装置100Cは、後述するように、モータ1と第1および第2のリミットスイッチ12、13の配置位置や、第1の可動部材4とスライドシャフト4Aとの結合状態(嵌合状態)等が相違している点を除いて、図4(A)に示した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と同様の構成を有し、動作をする。
【0118】
図4(A)に示されるように、第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、モータ1は雄ねじが切られた回転軸(モータ軸)2を有し、この雄ねじが切られたモータ軸2に、雌ねじが切られた第1の可動部材4が噛み合う構造を有している。第1の可動部材4にスライドシャフト4Aが結合されている。したがって、スライドシャフト4Aは左右方向Yに平行移動するが、回転することはない。そして、第1のリミットスイッチ12は、ベース8の右端部に設けられて、スライドシャフト4Aの右端部が接触するのを検知する。第2のリミットスイッチ13は、ベース8の左端部に設けられて、スライドシャフト4Aの左端部が接触するのを検知する。
【0119】
これに対して、図13に示されるように、第2の変形例に係る開き戸駆動装置100Cでは、スライドシャフト4Aそれ自体を、モータ1の回転軸(モータ軸)として使用して、第1の可動部材4とスライドシャフト4Aとは結合されていない。その代わりに、スライドシャフト4Aに雄ねじを切って、この雄ねじが切られたスライドシャフト4Aに、雌ねじが切られた第1の可動部材4が噛み合う構造をしている。したがって、スライドシャフト4Aそのものが回転する。スライドシャフト4Aの回転に伴って、第1の可動部材4が左右方向Yに平行移動する。第1および第2のリミットスイッチ12、13は、ベース8の後端部側に設けられている。第1のリミットスイッチ12は、第1の可動部材4が右方向に所定距離だけ移動したときに、第1の可動部材4と接触する位置に配置されている。第2のリミットスイッチ13は、第1の可動部材4が左方向に所定距離だけ移動したときに、第1の可動部材4と接触する位置に配置されている。
【0120】
このような第2の変形例に係る開き戸駆動装置100Cでも、前述した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と同様の効果を奏することは明らかである。
【実施例1】
【0121】
次に、図14を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第1の実施例について説明する。
【0122】
図14において、(A)および(B)は、それぞれ、第1の実施例に係る緩衝装置20の内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
【0123】
緩衝装置20の基本的構成は、図8に図示されたものと同じであるので、説明を割愛し、以下では相違点についてのみ説明する。図8に示されたものと同様の機能を有するものには同一の参照符号を付してある。また、以下の説明では、シリンダ14の形状が円筒形である場合の例を示している。尚、後述する他の実施例でも同様である。
【0124】
図14に示されるように、ピストン17には、第1の部屋15と第2の部屋16との間を連通する流体通路17aが明けられている。流体通路17aの穴径は、流体の粘性抵抗と開き戸200の開閉速度とで決められる。
【0125】
図14に示す例では、流体通路17aをピストン17それ自体に設けているが、流体通路17aを設ける位置はこれに限定されない。例えば、流体通路17aを、シリンダ14とピストン17との間のシールに設けても良いし、シールを用いずに、シリンダ14とピストン17との間の空隙を利用しても良い。
【実施例2】
【0126】
次に、図15を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第2の実施例について説明する。
【0127】
図15において、(A)および(B)は、それぞれ、第2の実施例に係る緩衝装置20Aの内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
【0128】
図14に示す第1の実施例に係る緩衝装置20では、ピストン17に1つの流体通路17aを設けている。
【0129】
これに対して、図15に示す第2の実施例に係る緩衝装置20Aでは、シリンダ14の筒状部14Eの内壁面に切り欠きを設けて、流体通路14aとしている。
【実施例3】
【0130】
次に、図16を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第3の実施例について説明する。
【0131】
図16において、(A)および(B)は、それぞれ、第3の実施例に係る緩衝装置20Bの内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
【0132】
図15に示す第2の実施例に係る緩衝装置20Aでは、シリンダ17の筒状部17Eの内壁面に流体通路17aを設けている。
【0133】
これに対して、図16に示す第3の実施例に係る緩衝装置20Bでは、シリンダ14の外部にパイプ状の流体通路14bを設けている。
【実施例4】
【0134】
次に、図17を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第4の実施例について説明する。
【0135】
図17において、(A)および(B)は、それぞれ、第4の実施例に係る緩衝装置20Cの内部構成を示す底面断面図および右側面断面図であり、(C)は、図17(A)のピストン部の拡大図である。
【0136】
図14に示す第1の実施例に係る緩衝装置20では、ピストン17に1つの流体通路17aのみを設けている。
【0137】
これに対して、図17に示す第4の実施例に係る緩衝装置20Cでは、ピストン17に、後述するような、複数の流体通路と複数の非可逆弁とを設けている。
【0138】
詳述すると、図17に示されるように、ピストン17には、第1の部屋15と第2の部屋16との間を連通する、第1の流体通路17a1と第2の流体通路17a2とが明けられている。第1の流体通路17a1は、開き戸200を開けるときに使用される通路であるで、「開方向流体通路」とも呼ばれる。第2の流体通路17a2は、開き戸200を閉じるときに使用される通路であるので、「閉方向流体通路」とも呼ばれる。
【0139】
また、ピストン17には、上記複数の非可逆弁として、第1のリード弁17b1と第2のリード弁17b2とが取り付けられている。第1のリード弁17b1は、ピストン17の右壁に、第1の流体通路17a1を開閉するように、取り付けられている。第2のリード弁17b2は、ピストン17の左壁に、第2の流体通路17a2を開閉するように、取り付けられている。したがって、第1のリード弁17b1は「開方向リード弁」とも呼ばれ、第2のリード弁17b2は「閉方向リード弁」とも呼ばれる。
【0140】
図17に示されるように、第1の流体通路17a1と第2の流体通路17a2の径は異なっている。これにより、シリンダ14に対してピストン17が左右方向Yに移動する時の流体抵抗を異なる値にすることができる。その結果、開き戸200が開くときの速度と、開き戸200を閉じるときの速度とを変えることが出来る。
【0141】
図17に示す例では、第1の流体通路17a1の径が、第2の流体通路17a2の径よりも大きくなっている。このような構成とすることにより、開き戸200が開く方向では流体抵抗をやや小さくして、開き戸200の開に要する時間を短くすることができる。また、開き戸200が閉まる方向では流体抵抗をやや大きくして、開き戸200の閉まる速度を遅くすることができる。これにより、人の手足などが開き戸200とドアフレーム210(図1参照)との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【実施例5】
【0142】
次に、図18を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第5の実施例について説明する。
【0143】
図18において、(A)および(B)は、それぞれ、第5の実施例に係る緩衝装置20Dの内部構成を示す底面断面図および右側面断面図である。
【0144】
第5の実施例に係る緩衝装置20Dでは、ピストン17に、第1の部屋15と第2の部屋16との間を連通する第1の流体通路17cが明けられており、シリンダ14の一部に、第1の部屋15および/または第2の部屋16を連通する第2の流体通路14cが設けられている。
【0145】
第1の流体通路17cは、図14に示された流体通路17aと同様の機能を有し、動作する。
【0146】
第2の流体通路14cは、ピストン17の左右方向Yの移動に伴って、第1の部屋15と第2の部屋16との間を連通したり、連通しなかったりする。第1の部屋15と第2の部屋16との間を連通する範囲が、第2の流体通路14cが機能する範囲である。第2の流体通路14cが機能する範囲では、流体抵抗が小さくなるので、ピストン17の移動速度を速くすることが出来る。一方、それ以外の範囲(すなわち、第2の流体通路14cが機能しない範囲)では、流体抵抗が大きくなるので、ピストン17の移動速度を遅くすることが出来る。
【0147】
このような構成を採用することにより、例えば、開き戸200が開いているときは、開き戸200の閉まる速度を遅くしたり、開き戸200が閉まりきる間際では、開き戸200が閉まる速度を遅くすることが可能となる。その結果、人の手足などが開き戸200とドアフレーム210(図1参照)との間に挟まれることを防止することが可能となる。
【0148】
尚、図18の例では、第1の流体通路17cは、ピストン17に設けられているが、図15の流体通路14aや、図16の流体通路14bのように、シリンダ14に設けても良いのは言うまでもない。
【0149】
第2の流体通路14cの位置、範囲は、目的により自由に設定することができる。また、第2の流体通路14cは、図18に示されるような、パイプ状の構成に限定されず、シリンダ14の一部に溝を切った通路を利用しても良い。
【実施例6】
【0150】
図面を省略するが、次に、第6の実施例に係る緩衝装置について説明する。
【0151】
第6の実施例に係る緩衝装置は、図17に示された第4の実施例に係る緩衝装置20Cと、図18に示された第5の実施例に係る緩衝装置20Dとを併用した緩衝装置である。
【0152】
したがって、第6の実施例に係る緩衝装置では、図17に示されるように、ピストン17に、開方向流体通路17a1、閉方向流体通路17a2、開方向リード弁17b1、および閉方向リード弁17bが設けられると共に、図18に示されるように、シリンダ14の一部に第2の流体通路14cが設けられている。
【0153】
このような構成を採用することにより、開き戸200の開方向と閉方向の速度を変える機能と、開き戸200の位置により速度を変える機能とを併用することが可能となる。
【実施例7】
【0154】
次に、図19を参照して、図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置の第7の実施例について説明する。
【0155】
図19において、(A)および(B)は、それぞれ、第7の実施例に係る緩衝装置20Eの内部構成を示す正面断面図および右側面断面図である。
【0156】
図8図11に示した本発明の第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aに使用される緩衝装置では、ロッド17Aがシリンダ14の右板14Rと左板14Lとを貫通しているので、シリンダ14内でピストン17が左右方向Yに移動しても、シリンダ14内のロッド17Aの容積は一定である。そのため、シリンダ14内に収容された流体の容積が変動することはない。
【0157】
これに対して、図19に示された第7の実施例に係る緩衝装置20Eでは、ロッド17Bの先端がピストン17の左壁に結合されており、ロッド17Bは、シリンダ14の左板14Lのみを貫通している。このような構造では、ピストン17の移動により、シリンダ14内のロッド17Bの長さが変化するので、シリンダ14内に収容された流体の容積も変化する。
【0158】
そのため、第7の実施例に係る緩衝装置20Eは、シリンダ14の一部に流体溜め18を更に備えている。
【0159】
一方、図19に示すような第7の実施例に係る緩衝装置20Eでは、ロッド17Bとシリンダ14との間に設けられたシール(図示せず)には、圧力がかからない。そのため、シールの構造を簡略化でき、寿命を容易に延伸することができる。
【0160】
流体溜め18は、シリンダ14内のロッド17Bの長さが最長のときに流体溜め18から流体があふれず、シリンダ14内のロッド17Bの長さが最短ときに流体溜め18が空にならない容積が必要である。
【0161】
流体溜め18には、流体圧を逃がすための解圧孔18aが設けられている。この解圧孔18aは、流体溜め18に流入する流体の容積が変化することで、ピストン14の第2の部屋16の流体圧が変化するのを防ぐためのものである。
【0162】
尚、解圧孔18aを用いずに、第2の部屋16の流体圧の変化を弾性体の伸縮力に付加する形で利用しても良い。
【0163】
また、図19に示す緩衝装置20Eでは、流体溜め18がシリンダ14とは別部材の構成になっているが、シリンダ14の一部上方に膨らみを持たせて、その膨らんだ部分を流体溜めとして使用しても良い。
【0164】
[変形例3]
次に、図20を参照して、本発明の第3の変形例に係る開き戸駆動装置100Dについて説明する。図20は、開き戸200が閉じた状態における、開き戸駆動装置100Dの内部構成を示す底面断面図である。
【0165】
図示の開き戸駆動装置100Dは、第1の可動部材4の移動範囲が変更されている点を除いて、図4(A)に示した開き戸駆動装置100と同様の構成を有し動作をする。
【0166】
すなわち、開き戸駆動装置100Dでは、回転軸(モータ軸)2の長さを、図4(A)に示した開き戸駆動装置100の回転軸(モータ軸)2よりも長くすると共に、モータ1を、図4(A)に示した開き戸駆動装置100のモータ1よりも、右側に配置している。
【0167】
図4(A)に示すように、第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100では、開き戸200が閉まりきったときに、第1の弾性体5と第2の弾性体6とが釣り合った状態となっている。そのため、次のような理由で、開き戸200が十分に閉まりきらないことが起こりうる。
【0168】
詳述すると、一般的に、開き戸200は、閉まりきる直前に動作抵抗が大きるなることが多い。その原因としては、開き戸200とドアフレーム210との間の摩擦や、窓などが開いていた場合などで、屋内に入った風が開き戸200を開く方向に流れる場合がある。
【0169】
このような問題を解決するために、図20に示した開き戸駆動装置200Dでは、第2の弾性体6に、開き戸200の閉め方向の応力(閉め付勢力)の残す(保つ)ようにしている。
【0170】
すなわち、図20に示されるように、第2の弾性体6は、開き戸200が閉まりきったときでも、第2の弾性体6に蓄積された弾性エネルギーを利用して、開き戸200を閉め方向へ閉め付勢力を保っている。
【0171】
したがって、図20に示す状態は、第1の弾性体5と第2の弾性体6は釣り合っていないが、第2の可動部材7は、開き戸200が閉まったことで、その動作を停止した状態を表している。
【0172】
換言すれば、動力源であるモータ1により移動する第1の可動部材4の移動範囲を、第2の可動部材7の移動範囲より大きくすることで、開き戸200が閉まりきる直前でも、モータ1の駆動力を保つことが出来る。
【0173】
尚、図20は、開き戸200が閉まる場合の例を示しているが、開き戸200が開く場合も同様にすることが可能である。
【0174】
すなわち、図示はしないが、第1の可動部材4の移動範囲を、開き戸200が開いてストッパ(図示せず)に当たる範囲よりも大きくすればよい。
【0175】
この場合、第1の弾性体5は、開き戸200が開ききったときでも、第1の弾性体5に蓄積された弾性エネルギーを利用して、開き戸200を開き方向へ付勢する開き付勢力を保っている。
【0176】
このような構成を採用することにより、開き戸200が開ききったときに、風などの影響で、開き戸200が容易に動いてしまうことを防ぐことが可能となる。
【0177】
このような第3の変形例に係る開き戸駆動装置100Dでも、前述した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と同様の効果を奏することは明らかである。
【0178】
[実施形態3]
図21を参照して、本発明の第3の実施形態に係る開き戸駆動装置100Eについて詳細に説明する。
【0179】
図示の開き戸駆動装置100Eは、蓄積手段としてゼンマイバネを使用した例である。図示の開き戸駆動装置100Eは、駆動機器(動力源)であるモータ31の駆動力を使用して開き戸200(図1参照)を駆動する装置である。
【0180】
図21において、(A)は開き戸駆動装置100Eの内部構成を示す縦断面図であり、(B)は開き戸駆動装置100Eに使用される緩衝装置(緩衝部材)40を示す上面図断面図である。
【0181】
開き戸駆動装置100Eは、直方体形状の筐体100Eaで囲まれている。開き戸駆動装置100Eは、動力源(駆動機器)であるモータ31を備える。モータ31は、筐体100Ea内の上部に配置されている。モータ31に印加する電圧の極性を反転させることにより、モータ31は正転も反転もする。モータ31は、モータ本体31aから下方へ延出する回転軸31bを持つ。このモータ31の回転軸31bには減速ギヤ32が噛み合っている。したがって、減速ギヤ32の中心軸(回転軸)は、上下方向Zへ延在している。モータ31には、それに電圧を印加するための電線33が接続されている。
【0182】
開き戸駆動装置100Eは、第1の可動部材34を備える。第1の可動部材34は、減速ギヤ32に嵌合されている。したがって、減速ギヤ32が回転すると、その減速ギヤ32の回転とともに、第1の可動部材34も回転する。
【0183】
第1の可動部材34は、中空の軸部341と、上円板342と、円筒部343と、下円板344とを有する。中空の軸部341は、ギヤ32に嵌合されて、ギヤ32の回転軸と同軸に上下方向Zに延在している。上円板342は、中空の軸部341の下端に設けられて、半径方向外側へ延在している。円筒部343は、上円板342の外周端から下方向へ延在している。下円板344は、円筒部343の下端に設けられて、半径方向内側へ延在している。下円板344は、中央に開口344aを持つ。
【0184】
なお、上円板342は第1の円板とも呼ばれ、下円板344は第2の円板とも呼ばれる。
【0185】
本例では、第1の可動部材34は、中空の軸部341と、上円板(第1の円板)342と、円筒部343と、下円板(第2の円板)344とから成るが、下円板(第2の円板)344を省いてもよい。換言すれば、第1の可動部材は、中空の軸部341と、上円板(第1の円板)342と、円筒部343と、のみから構成されてもよい。
【0186】
第1の可動部材34の中空の軸部341には、第2の可動部材37が摺動自在に嵌めこまれている。第2の可動部材37は、円柱形状をしており、減速ギヤ32の回転軸と同軸に、上下方向Zに延在している。すなわち、第2の可動部材37は、第1の可動部材34の中空の軸部341から下方へ延在している。第2の可動部材37は、第1の可動部材34の下円板344の開口344aを、隙間を空けて、貫通している。
【0187】
第1の可動部材34の円筒部343の内壁と、第2の可動部材37との間には、ゼンマイバネ35が設けられている。詳述すると、ゼンマイバネ35の太端部は、第1の可動部材34の円筒部343の内壁に接合されており、ゼンマイバネ35の細端部は、第2の可動部材37に接合されている。
【0188】
したがって、第1の可動部材34が回転すると、その回転に同期して、ゼンマイバネ35の太端部も回転する。このように、ゼンマイバネ35は、第1の可動部材34の回転によって伸縮する弾性体から成る。換言すれば、ゼンマイバネ35は、第1の可動部材34の回転(移動)に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、その弾性エネルギーを一時的に蓄積する蓄積手段として働く。
【0189】
第2の可動部材37は、ゼンマイバネ35に蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して回転(移動)される。
【0190】
図示の例では、第2の可動部材37は、開き戸200の駆動軸11を兼ねている。負荷の無いときには、第2の可動部材37は、第1の可動部材34とともに回転する。
【0191】
駆動軸11を兼ねた第2の可動部材37の下端部には、アーム110が強固に結合されている。アーム110は、駆動軸11の軸方向(上下方向Z)と直交する水平方向へ延在している。アーム110は、駆動軸11の回転とともに回転(旋回)し、開き戸200(図1)の開閉動作を行う。
【0192】
したがって、駆動軸11とアーム110との組み合わせは、第2の可動部材37の移動(回転)に応答して、開き戸200を駆動する駆動部材として働く。
【0193】
開き戸駆動装置100Eは、第2の可動部材37の回転を抑制する緩衝装置40を更に備える。緩衝装置40は、ベース(図示せず)に固定されている。
【0194】
図21(B)に示されるように、緩衝装置40は、半円筒状の密閉空間を持つ筒部44と、この筒部44内に配置された羽根47とから成る。筒部44の中央部を、第2の可動部材37が貫通している。羽根47は、筒部44の内部で、第2の可動部材37に取り付けられている。したがって、第2の可動部材37の回転と共に、羽根47は、筒部44の内壁に沿って摺動しつつ回転する。
【0195】
本例では、筒部44は、半筒状の形状をしているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、筒部44の形状は、羽根47が回転移動する範囲を制限しないような形状であればよい。
【0196】
筒部44の密閉空間は、粘性のある流体で満たされている。筒部44の密閉空間は、羽根47により第1の部屋45と第2の部屋46とに隔てられている。羽根47には、第1の部屋45と第2の部屋46とを連通する流体通路47aが明けられている。
【0197】
したがって、このような構造の緩衝装置40は、開き戸200の急激な動きを抑えることができる。
【0198】
開き戸駆動装置100Eは、第1の可動部材34の回転範囲を制限する第1および第2のリミットスイッチ12、13をさらに備える。第1の可動部材34の上円板342は、半径方向外側へ突出する突起342aを持つ。第1および第2のリミットスイッチ12、13は、この突起342aが接触する位置に設けられている。突起342aが接触すると、第1および第2のリミットスイッチ12、13が切れる。切れたことに応答して、コントローラ(図示せず)は、モータ31の回転を停止する。それにより、第1の可動部材34の回転範囲を制限することができる。
【0199】
次に、図21に示した開き戸駆動装置100Eの動作について説明する。図21の状態では、開き戸200は閉じた状態にあるとする。また、説明の都合上、回転方向は、上下方向Zの上面からみた方向をいうものとする。
【0200】
図21(A)の状態において、第1の可動部材34の突起342aが第1のリミットスイッチ12に接触しており、第1のリミットスイッチ12が切れている。
【0201】
この状態において、外部から開指令がコントローラ(図示せず)に入力されたとする。この開指令に応答して、コントローラは、動力源であるモータ31を、矢印B1で示されるように時計回りに回転するように、駆動制御する。
【0202】
このモータ31の時計回りの回転は、減速ギヤ32によって減速され、減速ギヤ32は、反時計回りに回転する。この減速ギヤ32の反時計回りの回転により、第1の可動部材34も反時計回りに回転する。
【0203】
第1の可動部材34が反時計回りに一定角度回転したところで、第1の可動部材34の突起342aが第2のリミットスイッチ13に接触して、第2のリミットスイッチ13が動作する(切れる)。この第1のリミットスイッチ13の動作(切れたこと)に応答して、コントローラは、モータ31の回転を停止するように制御する。これにより、第1の可動部材34は反時計回りの回転を停止する。
【0204】
前述したように、第1の可動部材34の円筒部343の内壁にはゼンマイバネ35の太端部が接合されている。したがって、第1の可動部材34の反時計回りの回転(移動)に伴う第1の機械エネルギーは、ゼンマイバネ35において弾性エネルギーに変換されて、ゼンマイバネ35にその弾性エネルギーが一時的に蓄積される。換言すれば、第1の可動部材34の反時計回りの回転により、ゼンマイバネ35には、反時計回りの回転の応力(付勢力)が発生する(蓄えられる)。
【0205】
ゼンマイバネ35の細端部には、第2の可動部材37が接合されている。よって、ゼンマイバネ35は、それに蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して、第2の可動部材37を、矢印A1で示させるように、反時計回りに回転させる。この第2の可動部材37(駆動軸11)の反時計回りの回転は、アーム110を反時計回りに旋回させるので、開き戸200が開く。
【0206】
このように、開き戸駆動装置100Eでは、駆動機器31の駆動力を遅延させて(非同期に)開き戸200へ伝達して、開き戸200を駆動している。
【0207】
また、第2の可動部材37には緩衝部材(緩衝装置)40が取り付けられている。第2の可動部材37の反時計回りの回転より、筒部44内の粘性のある流体が満たされた第1の部屋45と第2の部屋46との容積を変える力が働く。
【0208】
筒部44内で、第1の部屋45と第2の部屋46とを隔てる羽根47には流体通路47aが明けられている。したがって、流体抵抗により羽根47は、第2の可動部材37の回りを徐々に反時計回りに回転するので、第2の可動部材37(駆動軸11)も、矢印A1で示されるように、徐々に反時計回りに回転する。その結果、第2の可動部材37(駆動軸11)に取り付けられているアーム110も、反時計回りに旋回して、開き戸200を押し、開き戸200が徐々に開く。
【0209】
開き戸200の開く速さは、流体通路47aの形状(直径や長さなど)と筒部44に封入された流体の粘性とによって決まる。これらを調整することにより、開き戸200の開く速さを適度な速さに設定することができる。これは、図8図11に図示した、第2の実施形態に係る開き戸駆動装置100Aにおいても同じである。
【0210】
図示の例では、流体通路47aを羽根47に設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15図16のように、流体通路を緩衝装置40の筒部44に設けても良い。或いは、図17のように、羽根47に複数の流体通路と複数の不可逆弁とを設けて、閉め方向と開き方向とで開き戸200の移動速度を変えるようにしても良い。更に、図18のように、緩衝装置40の筒部44の一部に第2の流体通路を設けて、開き戸200の位置により開き戸200の移動速度が変わるようにしても良いことは言うまでも無い。
【0211】
次に、本発明の第3の実施形態に係る開き戸駆動装置100Eの効果について説明する。すなわち、本発明の第3の実施形態によれば、上述した第2の実施形態の効果1)〜4)と同様の効果を奏する。
【0212】
図22は、モータ1(モータ31)を駆動制御するコントローラ300の一例を示す回路図である。
【0213】
図示のコントローラ300は、開動作スイッチ301と、電磁継電器(リレー)とから成る。電磁継電器(リレー)は、コイル部310と、接点部320とから成る。
【0214】
図22は、開動作スイッチ301が「閉」側にあって、開き戸200が閉じている状態を示している。したがって、閉め方向リミットスイッチである第1のリミットスイッチ12が切れており、開き方向リミットスイッチである第2のリミットスイッチ13が閉じている状態を示している。
【0215】
この状態において、開動作スイッチ301を「閉」から「開」に切換えると、コイル部310に電流が流れ、その結果、接点部320が切り替わる。これにより、電源からモータ1(モータ31)に電流が供給され、モータ1(モータ31)が駆動される。
【0216】
[実施形態4]
図23及び図24を参照して、本発明の第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fについて詳細に説明する。
【0217】
開き戸駆動装置100Fの外観は、図1図3に図示した開き戸駆動装置100と同様の構成をしている。
【0218】
図示の開き戸駆動装置100Fは、閉扉検出リミットスイッチ51と、再動作リミットスイッチ52とを更に備えている点を除いて、図4図7に示した開き戸駆動装置100と同様の構成を有し、動作をする。したがって、以下では、開き戸駆動装置100と同様の機能を有するものには同一の参照符号を付し、説明の簡略化のために、それらの説明については割愛する。
【0219】
図23は、開き戸200が閉じる直前の状態における、開き戸駆動装置100Fの内部構成を示す底面断面図である。図24は、開き戸200が完全に閉じた状態における、開き戸駆動装置100Fの内部構成を示す底面断面図である。
【0220】
閉扉検出リミットスイッチ51は、開き戸200が閉じたことを感知するスイッチである。再動作リミットスイッチ52は、開き戸200の再動作の移動量を制限するスイッチである。
【0221】
図示の例では、閉扉検出リミットスイッチ51は、開き戸200が閉じる直前に、第2の可動部材7の延在部7Eと接触する位置で、ベース8に設けられている。再動作リミットスイッチ52は、第1のリミットスイッチ12よりも更に右側で、ベース8に設けられている。
【0222】
また、開き戸駆動装置100Fでは、回転軸(モータ軸)2の長さが、図4(A)に示した開き戸駆動装置100の回転軸(モータ軸)2の長さよりも長くなっている。
【0223】
以下、図4図7に示した第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100と、図23及び図24に示した第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fとを比較しつつ説明する。
【0224】
第1の実施形態に係る開き戸駆動装置100においては、図4に示すような、開き戸200が閉じた状態において、第1および第2の弾性体(コイルバネ)5および6には、圧縮力が加わっていない。換言すれば、第1および第2の弾性体(コイルバネ)5および6には、弾性エネルギーが蓄えられていない。その結果、開き戸200は比較的自由に動くことが可能な状態になっている。
【0225】
しかしながら、一般に、開き戸200は、それが閉じた状態の付近において、駆動力が必要となることが多い。その理由は次の通りである。
【0226】
開き戸200を閉じようとした際、開き戸200の立て付けによっては、開き戸200とドアフレーム210(図1参照)とが擦れることがある。また、埃や砂などによって、開き戸200とドアフレーム210との間に摩擦が発生し、開き戸200のスムーズな動きに支障が出ることもある。さらに、家の窓が開いていたりすると、風向きによっては、開き戸200が閉まろうとするのを妨げるような力が開き戸200に作用する場合もある。
【0227】
そこで、図23及び図24に示した第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fは、このような問題点を解決しようとしてなされたものである。すなわち、開き戸200が閉じた状態に近くなったことを、閉扉検出リミットスイッチ51で検知し、その検知信号に応答して、再度、モータ1を作動させる。これにより、閉め方向の力を開き戸200に加えることによって、安定して開き戸200の開閉動作を図っている。
【0228】
なお、図20に示した第3の変形例に係る開き戸駆動装置100Dにおいても、本第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fと同様の効果が得られる。しかしながら、図20に示した第3の変形例に係る開き戸駆動装置100Dでは、最初から、開き戸200に対して大きい駆動力を作用させておいて、開き戸200が閉状態でも、閉め駆動力を残しておくようにしている。そのためには、第3の変形例に係る開き戸駆動装置100Dでは、比較的大きい駆動力が必要となるので、モータ1の大型化が避けられない。
【0229】
これに対して、本第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fでは、開き戸200が閉じる直前においてのみ作用するので、モータ1の大型化を避けることができる。しかも、開き戸200が閉まる直前では、開き戸200に手が挟まれる危険も少ないので、安全面からもメリットがある。
【0230】
図25は、図23及び図24に示した第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fにおいて使用される、モータ1を駆動制御するコントローラ300Aの一例を示す回路図である。
【0231】
図示のコントローラ300Aは、閉扉検出リミットスイッチ51と再動作リミットスイッチ52とを更に備えている点を除いて、図22に示したコントローラ300と同様の構成を有する。
【0232】
図25は、モータ1により開き戸200が閉じる方向に駆動されて、開き戸200が閉じる直前の状態を示している。この状態では、閉扉検出リミットスイッチ51は、第2の可動部材7の右端部とは接触しておらず、切れた状態となっている。また、再動作リミットスイッチ52は、スライドシャフト4Aの右端部とは接触しておらず、閉じた状態となっている。
【0233】
次に、図23乃至図25を参照して、開き戸駆動装置100Fにより開き戸200を閉じる直前からの完全に閉じるまでの動作について説明する。
【0234】
先ず、図23に示されるように、スライドシャフト4Aの右端部が閉め方向リミットスイッチである第1のリミットスイッチ12と接触するので、第1のリミットスイッチ12は切れた状態となる。したがって、図25に示されるように、電源からのモータ1へ電力供給が遮断される。
【0235】
その後、第2の弾性体(コイルバネ)6に蓄えられた弾性エネルギーにより第2の可動部材7が右方向へ駆動される。そして、開き戸200を閉じる直前では、図23に示されるように、第2の可動部材7の右端部が閉扉検出リミットスイッチ51と接触する。
【0236】
これより、閉扉検出リミットスイッチ51は、閉じた状態に切り替わる。この結果、コントローラ300Aは、モータ1のモータ軸2を図23の矢印B3に示す方向にように、時計回りに回転するように、モータ1を駆動制御する。このモータ1の駆動により、第1の可動部材4は、右方向へ平行移動する。この第1の可動部材4の右方向への移動により、図24に示されるように、第2の弾性体6が収縮するので、第2の弾性体6に弾性エネルギーが蓄積される。すなわち、第2の弾性体6は、第1の可動部材4の右方向への移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、この弾性エネルギーを一時的に蓄積する。
【0237】
第1の可動部材4が右方向へ平行移動することにより、第1の可動部材4に結合されたスライドシャフト4Aも右方向へ移動し、その右先端部が、図24に示されるように、再動作リミットスイッチ52に接触する。これにより、再動作リミットスイッチ52が切れる。この再動作リミットスイッチ52が切れるのに応答して、コントローラ300Aは、モータ1の駆動を停止する。図24は、このモータ1の駆動が停止したときの状態を図示している。
【0238】
この状態では、上述したように、第2の弾性体6が収縮することにより、第2の弾性体6に弾性エネルギーが蓄えられている。したがって、第2の弾性体6は、その蓄積された弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して、第2の可動部材7を右方向へ平行移動させるように付勢する。換言すれば、第2の弾性体6は、第2の可動部材7へ閉じ付勢力を作用させている。
【0239】
この閉じ付勢力により、第2の可動部材7は右方向へ平行移動しようとする。しかしながら、この時点では、開き戸200が完全に閉まった状態となっているので、開き戸200はさらに動くことはない。換言すれば、開き戸200には、「しっかり閉める」力が加わった状態となっている。
【0240】
このようにして、本第4の実施形態によれば、安定して開き戸200を開閉することが可能となる。
【0241】
上述したように、コントローラ300Aは、検知信号に応答して、第1の可動部材4の移動により開き戸200が閉まる方向へさらに移動するように、駆動機器1の駆動を制御する制御部として働く。
【0242】
次に、本発明の第4の実施形態に係る開き戸駆動装置100Fの効果について説明する。すなわち、本発明の第4の実施形態によれば、上述した第1の実施形態の効果1)〜3)に加えて、更に次のような効果をも奏する。
【0243】
5)完全に開き戸200を閉めることができる。その理由は、開き戸200が閉まりきる直前を検知して、その検知信号より更に開き戸200を閉める方向へ駆動しているからである。
【0244】
尚、上記第4の実施形態では、開き戸200の閉扉検出用の検知部として、第2の可動部材7の移動により動作するリミットスイッチ51を使用しているが、検知部はこれに限定されない。例えば、検知部としては、開き戸200にリミットスイッチや近接スイッチを取り付けて、閉扉近くを検出するようにしても良い。開き戸200の開扉状態の検出方法は、本発明の要旨に直接関わることではないので、様々な手段を用いることが出来る。
【0245】
また、第1の可動部材4の移動量を検出する手段も、リミットスイッチ12、13、52に限定されない。例えば、第1の可動部材4の移動量を検出する手段として、フォトインタラプタなどの非接触デバイスを用いても、同様の効果を得ることができる。
【0246】
以上、実施形態(実施例)および変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態(実施例)および変形例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しえる様々な変更をすることができる。例えば、上記実施形態(実施例)では、開き戸を駆動する場合を例に挙げて説明したが、本発明は開き戸に限定されず、他の被駆動物を駆動する駆動装置にも適用可能であるのは勿論である。すなわち、本発明の要旨は、開き戸のような被駆動物を駆動機器の駆動力を使用して駆動する方法であって、駆動力による第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換し、その変換した弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して被駆動物を駆動する方法である。
【0247】
上記の実施形態(実施例)の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、本発明は以下には限られない。
【0248】
(付記1)
駆動機器(1;31)の駆動力を使用して開き戸(200)を自動的に開閉駆動する、開き戸駆動装置(100〜100F)であって、
前記駆動機器(1;31)の駆動力により移動される第1の可動部材(4;34)と、
該第1の可動部材(4;34)の移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、該弾性エネルギーを(一時的に)蓄積する蓄積手段(5,6;35)と、
該蓄積手段(5,6;35)に蓄積された前記弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して移動される第2の可動部材(7;37)と、
該第2の可動部材(7;37)の移動に応答して前記開き戸(200)を駆動する駆動部材(9,10,11,110)と、
を含み、
前記駆動機器(1;31)の駆動力を遅延させて(非同期に)前記開き戸(200)へ伝達して、前記開き戸(200)を駆動するようにしたことを特徴とする、開き戸駆動装置。
【0249】
(付記2)
前記駆動機器は、モータ(1;31)から成る、付記1に記載の開き戸駆動装置。
【0250】
(付記3)
前記駆動機器は、油圧、空圧シリンダと、油圧、空圧ピストンとの組み合わせから成る、付記1に記載の開き戸駆動装置。
【0251】
(付記4)
前記駆動機器は、電磁ソレノイドから成る、付記1に記載の開き戸駆動装置。
【0252】
(付記5)
前記第1の可動部材は、前記駆動装置(1)の駆動力により平行移動する板部材(4)から成る、付記2に記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0253】
(付記6)
前記蓄積手段は、前記第1の可動部材(4)の平行移動により伸縮する弾性体(5,6)から成る、付記5に記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0254】
(付記7)
前記弾性体は、金属製のコイルバネ(5,6)、空気を内蔵したゴム、樹脂製のバネ、およびシリンダ内に収容された空気のグループから選択された1つから成る、付記6に記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0255】
(付記8)
前記第2の可動部材(7)は、前記弾性体(5,6)を介して前記第1の可動部材(4)に接続され、前記弾性エネルギーを前記第2の機械エネルギーに変換して平行移動される部材から成る、付記5乃至7のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0256】
(付記9)
前記駆動部材は
前記第2の可動部材(7)の一部に取り付けられたラックギヤ(9)と、
該ラックギヤ(9)と噛み合うピニオンギヤ(10)と、
該ピニオンギヤ(10)に嵌合された駆動軸(11)と、
該駆動軸(11)の回転より旋回するアーム(110)と、
から成る、付記8に記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0257】
(付記10)
前記開き戸(200)の急激な動きを抑える緩衝装置(20〜20E)を更に備える、付記8又は9に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0258】
(付記11)
前記緩衝装置(20〜20E)は、流体抵抗を利用した緩衝装置から成る、付記10に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0259】
(付記12)
前記緩衝装置(20〜20E)は、
前記第2の可動部材(7)に結合されて、前記第2の可動部材(7)と共に平行移動するシリンダであって、内部に粘性のある流体が封入されたシリンダ(14)と、
該シリンダ(14)に内接して固定され、前記シリンダ(14)内の空間を第1の部屋(15)と第2の部屋(16)とに隔てるピストン(17)と、
前記第1の部屋(15)と前記第2の部屋(16)とを連通する流体通路と、
から成る、付記11に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0260】
(付記13)
前記流体通路は、前記ピストン(17)に設けられた1つの流体通路(17a)から成る、付記12に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0261】
(付記14)
前記流体通路は、前記シリンダ(14)の内壁面に切り欠きを設けて形成された流体通路(14a)から成る、付記12に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0262】
(付記15)
前記流体通路は、前記シリンダ(14)の外部に設けられたパイプ状の流体通路(14b)から成る、付記12に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0263】
(付記16)
前記流体通路は、前記ピストン(17)に開けられた、開方向流体通路(17a1)および閉方向流体通路(17a2)から成り、
前記開方向流体通路を開閉する開方向リード弁(17b1)と、
前記閉方向流体通路を開閉する閉方向リード弁(17b2)と、
を更に有し、
前記開方向流体通路(17a1)と前記閉方向流体通路(17a2)の径が異なる、付記12に記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0264】
(付記17)
前記流体通路(17c)と異なり、前記シリンダ(14)の一部に設けられた別の流体通路(14c)を更に有する、付記12乃至16のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0265】
(付記18)
前記緩衝装置(20〜20D)は、前記ピストン(17)に接続されて、前記シリンダ(14)の両端板を貫通するロッド(17A)を更に有する、付記12乃至16のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0266】
(付記19)
前記緩衝装置(20E)は、
前記ピストン(17)の一端に接続されて、前記シリンダ(14)の一端板を貫通するロッド(17B)と、
前記シリンダ(17)の一部に設けられた流体溜め(18)と、
を更に有する、付記12乃至16のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100A)。
【0267】
(付記20)
前記第1の可動部材(4)の平行移動する距離を制限する、第1および第2のリミットスイッチ(12,13)を更に有する、付記8乃至19のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100〜100D、100F)。
【0268】
(付記21)
前記モータ(1)は、雄ねじが切られたモータ軸(2)を有し、
前記第1の可動部材(4)は、前記雄ねじと嵌合する雌ねじを持ち、
前記第1の可動部材(4)の移動方向に延在するように、前記第1の可動部材に結合されたスライドシャフト(4A)を更に備え、
前記第1および第2のリミットスイッチ(12,13)は、前記スライドシャフト(4A)の端部が接触する位置に配置されている、
付記20に記載の開き戸駆動装置(100、100A、100B、100D、100F)。
【0269】
(付記22)
前記蓄積手段(6)は、前記開き戸(200)が閉まりきったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸(200)を閉め方向へ付勢する閉め付勢力を保っている、付記8乃至21のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100D)。
【0270】
(付記23)
前記蓄積手段(5)は、前記開き戸(200)が開ききったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸(200)を開き方向へ付勢する開き付勢力を保っている、付記8乃至22のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100D)。
【0271】
(付記24)
前記モータ(1)は、前記第1の可動部材(4)の移動方向へ延在し、雄ねじが切られたスライドシャフト(4A)を有し、
前記第1の可動部材(4)は、前記雄ねじと嵌合する雌ねじを持ち、
前記第1および第2のリミットスイッチ(12,13)は、前記第1の可動部材(4)と接触する位置に配置されている、
付記20に記載の開き戸駆動装置(100C)。
【0272】
(付記25)
前記開き戸(200)が閉まりきる直前を検知して、検知信号を出力する検知部(51)と、
前記検知信号に応答して、前記第1の可動部材(4)の移動により前記開き戸(200)が閉まる方向へさらに移動するように 前記駆動機器(1)の駆動を制御する制御部(300A)と、
を更に備える、付記8乃至21のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100F)。
【0273】
(付記26)
前記検知部は、前記第2の可動部材(7)の端部が接触する位置に配置された閉扉検出リミットスイッチ(51)から成る、付記25に記載の開き戸駆動装置(100F)。
【0274】
(付記27)
前記第1の可動部材は、前記モータ(31)と噛み合う減速ギヤ(32)に嵌合された可動部材(34)から成る、付記2に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0275】
(付記28)
前記第1の可動部材(34)は、
前記減速ギヤ(32)に嵌合する中空の軸部(341)と、
該中空の軸部(341)の一端に接続されて、半径方向外側へ延在する第1の円板(342)と、
該第1の円板(342)の外周端から前記中空の軸部と同軸に延在する円筒部(343)と、
を有する、付記27に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0276】
(付記29)
前記第1の可動部材(34)は、前記第1の円板(342)と対向するように、前記円筒部(343)の端部に接続されて、半径方向内側へ延在する第2の円板(344)を更に有し、
該第2の円板(344)は、その中央部に開口(344a)を持つ、付記28に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0277】
(付記30)
前記第2の可動部材は、前記中空の軸部(341)に摺動自在に嵌めこまれて、前記中空の軸部(341)の軸方向と同軸に延在する円柱状の回転部材(37)からなり、
前記蓄積手段は、前記円筒部(343)の内壁に太端部が接合され、前記回転部材(37)に細端部が接合されたゼンマイバネ(35)から成る、
付記28又は29に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0278】
(付記31)
前記駆動部材は、
前記第2の可動部材(37)と兼ねる駆動軸(11)と、
該駆動軸(11)の回転より旋回するアーム(110)と、
から成る、付記30に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0279】
(付記32)
前記開き戸(200)の急激な動きを抑える緩衝装置(40)を更に備える、付記30又は31に記載の開き戸駆動装置。
【0280】
(付記33)
前記緩衝装置(40)は、流体抵抗を利用した緩衝装置から成る、付記32に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0281】
(付記34)
前記緩衝装置(40)は、第2の可動部材(37)に取り付けられている、付記33に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0282】
(付記35)
前記緩衝装置(40)は、
前記第2の可動部材(37)が貫通し、密閉空間が粘性のある流体で満たされて、ベースに固定された筒部(44)と、
該筒部(44)内で第2の可動部材(37)に取り付けられ、前記筒部(44)の内壁に沿って摺動しつつ回転して、前記筒部(44)内の密閉空間を第1の部屋(45)と第2の部屋(46)とに隔てる羽根(47)と、
前記第1の部屋(45)と前記第2の部屋(46)とを連通する流体通路と、
から成る、
付記34に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0283】
(付記36)
前記流体通路は、前記羽根(47)に設けられた1つの流体通路(47a)から成る、付記35に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0284】
(付記37)
前記流体通路は、前記筒部(44)の内壁面に切り欠きを設けて形成された流体通路から成る、付記35に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0285】
(付記38)
前記流体通路は、前記筒部(44)の外部に設けられたパイプ状の流体通路から成る、付記35に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0286】
(付記39)
前記流体通路は、前記羽根(47)に開けられた、開方向流体通路および閉方向流体通路から成り、
前記開方向流体通路を開閉する開方向リード弁と、
前記閉方向流体通路を開閉する閉方向リード弁と、
を更に有し、
前記開方向流体通路と前記閉方向流体通路の径が異なる、付記35に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0287】
(付記40)
前記流体通路と異なり、前記筒部(44)の一部に設けられた別の流体通路を更に有する、付記35乃至39のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0288】
(付記41)
前記第1の可動部材(34)の回転移動する範囲を制限する、第1および第2のリミットスイッチ(12,13)を更に有する、付記28乃至40のいずれか1つに記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0289】
(付記42)
前記第1の円板(342)は、半径方向外側へ突出する突起(342a)を持ち、
前記第1および第2のリミットスイッチ(12,13)は、前記突起(342a)が接触する位置に配置されている、付記41に記載の開き戸駆動装置(100E)。
【0290】
(付記43)
駆動機器(1;31)の駆動力を使用して開き戸(200)を駆動する駆動方法であって、
前記駆動機器(1;31)の駆動力により第1の可動部材(4;34)を移動し、
該第1の可動動部材(4;34)の移動に伴う第1の機械エネルギーを弾性エネルギーに変換して、該弾性エネルギーを(一時的に)蓄積手段(5,6;35)に蓄積し、
該蓄積手段(5,6;35)に蓄積された前記弾性エネルギーを第2の機械エネルギーに変換して、第2の可動部材(7;37)を移動し、
該第2の可動部材(7;37)の移動に応答して、駆動部材(9,10,11,110)により前記開き戸(200)を駆動する、
開き戸の駆動方法。
【0291】
(付記44)
緩衝装置(20〜20E;40)により前記開き戸(200)の急激な動きを抑える、付記43に記載の開き戸の駆動方法。
【0292】
(付記45)
前記蓄積手段(6)は、前記開き戸(200)が閉まりきったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸(200)を閉め方向へ付勢する閉め付勢力を保っている、付記43又は44に記載の開き戸の駆動方法。
【0293】
(付記46)
前記蓄積手段(5)は、前記開き戸(200)が開ききったときでも、前記蓄積された弾性エネルギーを利用して前記開き戸(200)を開き方向へ付勢する開き付勢力を保っている、付記43乃至45のいずれか1つに記載の開き戸の駆動方法。
【0294】
(付記47)
前記開き戸(200)が閉まりきる直前を検知して、検知信号を出力し、
前記検知信号に応答して、前記第1の可動部材(4;34)の移動により前記開き戸(200)が閉まる方向へさらに移動するように 前記駆動機器(1;31)の駆動を制御する、
付記43又は44に記載の開き戸の駆動方法。
【産業上の利用可能性】
【0295】
玄関ドアとして使用される開き戸の開閉は、健常者にとっては容易に行えるが、身体障害者などの歩行補助具を使用する者にとっては、困難を要するものであって、時には安全ではない行為を強いるものである。そこで、本発明は、このような障害者などのために玄関ドア(開き戸)の利便性を高める為に、例えば、リモコン(送信機)を使用して玄関ドアを操作して自動的に開閉する自動ドア装置用の開き戸駆動装置として特に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0296】
1 モータ(駆動機器;駆動源:動力源)
1a モータ本体
2 回転軸(モータ軸)
3 電線
4 第1の可動部材
4A スライドシャフト
5 第1の弾性体(コイルバネ)
6 第2の弾性体(コイルバネ)
7 第2の可動部材
7A スライド部材
7E 延在部
7L 左板
7R 右板
8 ベース
8A スライドレール
9 ラックギヤ
10 ピニオンギヤ
11 駆動軸
12 第1のリミットスイッチ
13 第2のリミットスイッチ
14 シリンダ
14a、14b 流体通路
14c 第2の流体通路
14E 筒状部
14L 左板
14R 右板
15 第1の部屋
16 第2の部屋
17 ピストン
17a 流体通路
17a1 第1の流体通路(開方向流体通路)
17a2 第2の流体通路(閉方向流体通路)
17b1 第1のリード弁(開方向リード弁)
17b2 第2のリード弁(閉方向リード弁)
17c 第1の流体通路
17A ロッド
17Aa 固定部
17B ロッド
18 流体溜め
18a 解圧孔
20〜20E 緩衝装置
31 モータ(駆動機器;駆動源:動力源)
31a モータ本体
31b モータ軸
32 減速ギヤ
33 電線
34 第1の可動部材
341 中空の軸部
342 上円板
342a 突起
343 円筒部
344 下円板
344a 開口
35 ゼンマイバネ(弾性体)
37 第2の可動部材
40 緩衝装置(緩衝部材)
44 筒部
45 第1の部屋
46 第2の部屋
47 羽根
47a 流体通路
51 開扉検出リミットスイッチ(検知部)
52 再動作リミットスイッチ
100〜100F 開き戸駆動装置
100a、100Ea 筐体
110 アーム
120 ローラ
200 開き戸(玄関ドア)
210 ドアフレーム
220 ヒンジ機構(蝶番)
230 レール
300、300A コントローラ(制御部)
301 開動作スイッチ
310 コイル部
320 接点部
図1
図2
図3
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図5
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