【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1に記載されたエネルギーチェーン、請求項13に記載されたチェーンリンク、及び、請求項14に記載されたモジュラーセグメントによって独立して達成される。
【0010】
請求項1に記載の前段部分には、チェーンリンクを、その円周方向と接続端の間の双方を連続的に閉じる柔軟なエンベロープで囲む極めて簡単な構成のエネルギーチェーンが記載され、これによって上記目的がすでに達成される。
このエンベロープは、反転ゾーンで所定の曲率で屈曲可能で、且つ、反転ゾーンの往復運動に追従できる十分な柔軟性を有する少なくともいくつかのチェーンリンクによって支持され、牽引されるように構成されている。
【0011】
エンベロープは、好ましくは管状に形成され、チェーンリンクの往復運動に対する抵抗ができるだけ低く保たれるように、適切な材料が選択され、及び/又は、設計される。
本発明のエンベロープは、エネルギーチェーンの両接続端の間で、複数またはすべてのチェーンリンクにわたって閉鎖的に延設されており、これによって、チェーンリンクから又はケーブルから周囲への摩耗屑の排出を簡単な方法で防止する封じ込めまたは保護エンベロープとして機能する。
そのため、エンベロープは、最大限に気密シールし得る構成となっている。
少なくとも、前記エンベロープは密に形成され、大多数の粒子が、エネルギーチェーンの内側から排出されることがないように、すなわち、エンベロープは防塵に形成されなければならない。
【0012】
好ましくは、エンベロープの形状は、そこに用いられるチェーンタイプのチェーンリンクの断面に対応している。
【0013】
特に好ましい実施形態において、エンベロープは、両接続端の間で長手方向にワンピースで連続形成され、好ましくは合成材料で形成されている。
好ましくは、前記合成材料は、例えば、ポリアミドのようなものであり、必要に応じて添加剤の割合を低くすることにより、耐衝撃性と耐座屈性が高く、薄肉で且つ永久に柔軟な蛇腹管状のエンベロープを提供することができる。
特に、前記合成材料は、耐摩耗性があり、好ましくは、耐薬品性を有し、最低でも80℃の耐熱性、好ましくは102℃の耐熱性を有する。
【0014】
有利な実施例では、エネルギーチェーンの固定接続端と可動接続端には、エンベロープの開口端を防塵封止するための接続フランジがそれぞれ設けられている。
【0015】
好ましい構成では、各々の接続フランジは、防塵状態に組み立てられる二つのクランプカラーで構成され、当該クランプカラーは、前端部で防塵状態にエンベロープを囲むように、非積極的及び/又は積極的にエンベロープを保持し、又は、エンベロープを長手方向に保護することができる。
前記クランプカラーの固定手段としては、特に、エネルギーチェーンの接続部にネジ止め固定するための穴の適切なパターンであることが好ましい。
この場合、エネルギーチェーンと防塵封止との固定は、少ない部品点数により、特に、射出成形により形成されたクランプカラーにより実現することができる。
ここで、各接続フランジの後端部分にケーブル、ホースなどの供給ラインを防塵状態に貫通保持するためのシーリングガスケットを設けることは、好ましい。
この目的に適しているのは、例えば、ポリウレタンまたはネオプレンなどの合成材料のブロックであり、案内されるケーブル類の数と断面に対応する孔のパターンを備えている。
このように、シーリングガスケットは、必要に応じて適合させることができる。
好ましくは、シーリングガスケットは、ケーブル類を挿通固定した状態でクランプカラーの間に挟まれることにより、ケーブル類に押し付けられる。
【0016】
エンベロープの別の構成は、長手方向の複数のモジュラーセグメントを備え、当該セグメントはそれぞれ互いに連結されるとともに、周方向に閉じられている。
これらのセグメントのために、チェーンリンク列は、必要に応じてより短くてもより長くてもよく、また、前記セグメントは、チェーンリンク及びケーブル類に対して取り付け易く、その構成を簡略化することができる。
ここで、これらのモジュラーセグメントの各々の少なくとも一部は、好ましくは、第1及び第2のシェル半体からなる。
【0017】
分離型のシェル半体は、さらに、例えば、メンテナンスや修理の際に、チェーンリンク及び案内されているケーブル類を容易に露出させることができる。
セグメントを構成するシェル半体は、好ましくは、エネルギーチェーンの水平中立面でサイドジョイントにより閉鎖状態に組み合わされる。
これにより、シェル半体が、反転ゾーン内で割れたり外れたりする傾向を最小限に抑える。
シェル半体からなるセグメントに替えて、円周方向に完全に閉じられ、少なくとも一つのチェーンリンクの長さに、好ましくは、いくつかのチェーンリンクの長さに形成されたワンピースセグメントを用いることができる。
【0018】
部品の数を減らすため、使用されるシェル半体は好ましくは同一形状に設計され、2つのシェル半体同士を互いに組み合わせるために、鏡面対称的に配置された機械的な留め具を備えている。
ここで、シェル半体は、合成材料から製造されるチェーンリンクと同様に、例えば、射出成形プロセスで製造することができる。
シェル半体を、一つ以上のチェーンリンクの周囲を閉鎖するように囲んで組み合わせるために、例えば、スナップ、係止凸部及び/又はクランプタイプコネクタ、又は、他のコネクタなどの、適切な機械的な留め具が用いられる。
【0019】
本発明では、さらに、シェル半体が、サイドジョイントの領域に、特に、水平中立面に沿って両側に、帯状クリップにより固定される係合歯を備えていることが好ましい。
これによって、シェル半体は、曲げられても反転ゾーン内でも、外れることがない。
したがって、前記帯状クリップとしては、反転ゾーンの曲率を吸収し得るように屈曲可能で、柔軟な合成材料で作られたものを用いることが好ましい。
さらに有利には、前記各シェル半体のサイドジョイントに沿って、係合歯が設けられ、その係合歯は、対向するシェル半体の対応する係合歯と噛み合って、シェル半体同士を長手方向に位置ずれなく固定することができる。
【0020】
上述に替えて、エンベロープの隣接するセグメントが、互いに、それぞれの正面で、追加の連結具を用いることにより円周方向に閉鎖された状態に連結される構成であってもよい。
これに関連して、セグメントの対向する正面は、いずれも、互いに確実に係合するように、あるいは、連結具に対して締りばめ及び/又は圧力ばめによって気密状態に接続されるように設計されている。
圧力ばめの場合には、例えば、クリップ形状の周方向の追加の連結具が、互いに連結されるセグメント同士を周方向及び長手方向に固定するために設けられる
【0021】
エンベロープの個々のセグメントを相互に連結するため、または、個々のチェーンリンクにエンベロープを取り付けるため、連結具としてフレーム状のブラケットを用いることができる。
これらは、セグメントに接続するため、それぞれのチェーンリンクを、特に周方向に、囲んでいる。
このようなブラケットは、別個の構成要素として例えば個々のチェーンリンクのクロスバーに取り付けられ、あるいは、それ自身が側面領域の間のクロスバーを構成するように設計されていてもよい。
前者のような構成は、従来のエネルギーチェーンをそのまま使用することができ、後者のような構成は、エネルギーチェーンの組み立てを簡素化する。
【0022】
既に冒頭で述べたように、本発明は、チェーンリンクに合致する断面のエンベロープを用いる。
ここで、エンベロープは、円周方向及び長手方向の両方で、ほとんど隙間なく又は機械的に最小の隙間で、チェーンリンクを囲み、あるいは、チェーンリンクの外側輪郭に沿って配されている。
チェーンリンクにエンベロープを取り付けたことにより、不要な摩耗も、ノイズの増大を招くことも防ぐことができる。
加えて、チェーンリンクによるエンベロープの取り付けは、簡単な方法で達成される。
【0023】
チェーンリンクを安価に製造できる特に好ましい構成は、エンベロープが、蛇腹管のようにデザインされて長手方向に延設され、特に、実質的に楕円形、長円形または角丸長方形の断面形状を有することである。
【0024】
蛇腹管は、長手方向の位置に応じて直径が波状に変化するフレキシブルホースである。
蛇腹管の有用な内部空間を形成する良好な寸法を得るために、楕円形、長円形またはスロット状断面の外側で測定された幅は、好ましくは、高さの少なくとも1倍半であり、好ましくは、少なくとも2倍である。
【0025】
特に好ましくは、エンベロープは、周期的な波長を有する蛇腹管として構成され、波形の隣接する波の山又は谷の間の距離が、相互接続されたチェーンリンクからなるリンクチェーンのピッチの少なくとも2倍に形成されている。
ピッチは、隣接する旋回軸間の距離に対応し、または、弾性的に屈曲可能な関節要素を含むリンクチェーンの場合には、二つの連続するヒンジ要素の周期的な中心の距離に対応する。
【0026】
隣接するチェーンリンクが、例えば国際公開第02/086349号又は国際公開第2012/131033号パンフレットに記載されたように、少なくとも一つの弾性的に屈曲可能なヒンジ要素を備えたヒンジ式接続により、それぞれ互いに対して回動可能に接続されたリンクチェーンと、蛇腹管エンベロープの組み合わせは、実験では驚くほど有利であることが実証された。
【0027】
また、エネルギーチェーンの固定端又は可動端の遷移領域からの摩耗屑の放出を防止するため、エンベロープの開口端を気密に封止する接続フランジは、それぞれ固定コネクタと可動コネクタの両方に設けられることが好ましい。
【0028】
これに限るものではないが、提案された解決策は、対向する側面領域がクロスバーによって接続され、その内部空間がケーブル類を挿通するハウジングとして形成されたチェーンリンクを使用するために、特に適切である。
【0029】
これにより、今後は、特に、ヒンジボルト/ヒンジ孔の接続形態を有する従来のエネルギーチェーンであっても、クリーンルームの用途に使用し得ることが理解される。
【0030】
一般的に、従来の蛇腹管で形成され、必要に応じて適切な寸法および断面に形成した安価なエンベロープを使用することができる。
上述したように、セグメントの分割は、この時点では必須ではなく、蛇腹管は、連続的に形成され、または、二ヶ所を接続する間でワンピースに形成されていてもよい。
【0031】
これに関連して、特に、長手方向に対する中央領域で、長手方向対する横断面が対応するエンベロープの断面に適合するように丸みを帯びたチェーンリンクを備えたものも提案される。
この楕円形、長円形又は円形輪郭は、主に側面の連結リンクとして構成される側面領域の設計により、あるいは、必要に応じて、連結リンク同士を接続するクロスバーの設計により決定される。
また、それぞれの用途に応じて、チェーンリンク全体に対応するワンピース構造とすることもできる。
【0032】
本発明は、このようなチェーンリンクに加えて、既知のチェーンリンクに適応するエンベロープを用いることができ、上述したセグメントに関する一以上の特徴を備えたモジュラーセグメントを提案するものである。