(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232134
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法と装置
(51)【国際特許分類】
F23J 15/00 20060101AFI20171106BHJP
F01N 3/04 20060101ALI20171106BHJP
F23J 15/06 20060101ALI20171106BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20171106BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F23J15/00 F
F01N3/04 A
F01N3/04 D
F23J15/06
B01D53/78 100
B01D53/26 300
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-527956(P2016-527956)
(86)(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公表番号】特表2016-532845(P2016-532845A)
(43)【公表日】2016年10月20日
(86)【国際出願番号】KR2014009244
(87)【国際公開番号】WO2015050367
(87)【国際公開日】20150409
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0118603
(32)【優先日】2013年10月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516015358
【氏名又は名称】リ,ドン フン
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】リ,ドン フン
【審査官】
黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−256818(JP,A)
【文献】
特開昭62−155921(JP,A)
【文献】
特開昭59−209629(JP,A)
【文献】
特開昭59−166228(JP,A)
【文献】
特開2002−273151(JP,A)
【文献】
特開2001−347131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 15/00
F23J 15/06
B01D 53/26
B01D 53/78
F01N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の水蒸気を含む排気ガス供給源から熱および水分交換部に排気ガスを流入させて前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液とを接触させることで、前記排気ガスに含有された水蒸気の潜熱を回収して凝縮させ、処理された排気ガスは前記熱および水分交換部の外部へ排出させる段階と、
前記吸湿性塩類を含有する溶液と凝縮水との混合物を前記熱および水分交換部の下部に排出させ、前記吸湿性塩類を含有する溶液を濃縮および冷却して循環させる段階とを含み、
前記熱及び水分交換部の外部に排出される排気ガスは60℃以下の出口温度及び40以下の絶対湿度を有し、
前記吸湿性塩類は、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、ギ酸カリウム、塩素酸ナトリウム、および硝酸カリウムよりなる群から1つ以上選ばれ、
前記吸湿性塩類を含有する溶液における前記吸湿性塩類の濃度は40〜80重量%に維持され、
前記循環させる段階は、
前記熱および水分交換部の下部に排出された吸湿性塩類を含有する溶液を前記熱および水分交換部の上部へ供給するためのポンピング段階と、
前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液の一部が流入し、流入した吸湿性塩類を含有する溶液を加熱および濃縮し、濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液を前記熱および水分交換部へ供給させる段階と、
前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、流入した前記吸湿性塩類を含有する溶液を熱交換させる熱交換段階とを含む、排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法。
【請求項2】
前記排気ガスは前記熱および水分交換部の下部から供給され、前記吸湿性塩類を含有する溶液は前記熱および水分交換部の上部から提供されることにより、前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液との接触比が重量比で1:2〜10であり、接触時間は5秒以上である、請求項1に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法。
【請求項3】
前記方法は、前記ポンピング段階の後に、外部から導入される汚染物質を除去することが可能な濾過段階をさらに含む、請求項1に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法。
【請求項4】
高温の水蒸気を含む排気ガス供給源と、
前記排気ガス供給源に連結され、高温の排気ガスおよび水蒸気が流入し、吸湿性塩類を含有する溶液が供給される熱および水分交換部と、
前記熱および水分交換部に連結され、冷却された排気ガスが排出される排気ガス排出部と、
前記熱および水分交換部に連結され、前記吸湿性塩類を含有する溶液を濃縮および冷却して循環させる循環供給部とを含み、
前記排気ガス排出部から排出される排気ガスは60℃以下の出口温度及び40以下の絶対湿度を有し、
前記吸湿性塩類は、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、ギ酸カリウム、塩素酸ナトリウム、および硝酸カリウムよりなる群から1つ以上選ばれ、
前記吸湿性塩類を含有する溶液における前記吸湿性塩類の濃度は40〜80重量%に維持され、
前記循環供給部は、
前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、熱および水分交換部の上部へ前記吸湿性塩類を含有する溶液を供給するためのポンプと、
前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液の一部が流入し、流入した吸湿性塩類を含有する溶液を加熱および濃縮し、濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液を前記熱および水分交換部へ供給させる加熱濃縮部と、
前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、流入した前記吸湿性塩類を含有する溶液を熱交換させる熱交換部とを含む、排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置。
【請求項5】
前記排気ガス供給源は前記熱および水分交換部の下部に連結され、前記吸湿性塩類を含有する溶液は前記熱および水分交換部の上部から提供される、請求項4に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置。
【請求項6】
前記熱および水分交換部は、高温の排気ガスおよび水蒸気と前記吸湿性塩類を含有する溶液との接触面積を増加させるためのビードを含む、請求項4に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置。
【請求項7】
前記熱および水分交換部は、前記交換部の下部に下降する吸湿性塩類を含有する溶液と、加熱濃縮部で濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液とを混合させる撹拌設備を備えた貯蔵施設を含む、請求項4に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置。
【請求項8】
前記装置は、ポンプの後段に位置して外部からの汚染物質を除去することが可能なフィルターをさらに含む、請求項7に記載の排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大気汚染物質を排出する施設である焼却炉、金属溶解炉、ボイラー、湿式脱硫設備などは、運転中に高濃度の汚染物質が含まれている高温の排気ガスを大気中に排出するので、このような排気ガス中に含まれている汚染物質を除去するために、水溶液を噴霧して有害物質を除去するための吸収塔(湿式集塵設備)を設置して主に使用してきた。
【0003】
このような湿式集塵設備は、排出される高温の排気ガスに水を噴霧することにより、出口からの排気ガスは高温多湿(飽和)な状態で煙突を介して大気中に排出される。このとき、排気ガス中に含まれている水分は、湿式集塵設備で完全に除去されていない汚染物質と飽和水分を含んでいる。よって、煙突からの排出の際に、飽和水分を含有した排気ガスは、冷たい外部の大気によって直ちに冷却されながら凝縮し、比重の増加した排気ガス内の飽和水分が水滴に状態変化しながら前記煙突の近くに集中的に落下すると同時に、前記煙突の周辺を汚染させることになる。
【0004】
また、比較的比重の少ない水滴も、拡散せずに、前記煙突から一定の距離まで水蒸気の帯たる白煙を形成しながら落下する。落下した水滴は周囲の設備を腐食させたりして住民の苦情を発生させることもある。
【0005】
従来の汚染物質排出施設から発生する有害ガスを湿式で除去する場合に煙突から発生する白煙を防止するために、外部からの高温の空気を混合させて排気ガスの相対湿度を低減させるか、或いは煙突にバーナーを設置して排気ガスを直接加熱させることにより、排気ガス中の水分を除去してきたが、前者は設置費用が非常に高いという問題、後者は燃料消費に伴うメンテナンス費用が高いという問題があった。
【0006】
たとえば、このような問題を解決するための特許文献としては、特許文献1および2などを含む多数の特許文献などがある。しかし、これらの特許技術は、前述したように、複雑な設備(湿式集塵設備)などを含むだけでなく、依然として白煙問題を適切に解決していない。併せて、排出される排気ガスの廃熱を通常の熱交換レベルで交換するに留まっており、エネルギー活用の面でも効率的でない傾向がある。
【0007】
一方、焼却炉などの発生源設備から排出される排気ガスは高温状態で飽和水分を含有している。既に公知になった湿り空気線図(Psychometric Chart)を活用して多湿な排気ガスの物理的特性を考察すると、乾球温度と絶対湿度を座標とするtx線図(t:温度、x:絶対湿度)に従って、0〜60℃の領域では絶対湿度の増加曲線が緩やかな曲線(徐々に増加)を成し、60〜70℃の領域では絶対湿度が急激な上昇曲線に沿って増加し、70℃以上の温度領域では垂直に近く微小な温度差によっても絶対湿度が増加するものと知られている。
【0008】
したがって、焼却炉、ボイラーなどの排気ガス排出源から排出される温度、すなわち60℃以上の温度領域の排気ガスを経済性のある温度および湿度(出口温度60℃以下、絶対湿度4
0以下)に下げることができれば、過冷却状態で大気中に排出されるときに排気ガスから発生する白煙はほとんど低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10−1200330号
【0010】
【特許文献2】韓国登録特許第10−0375555号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明者は、焼却炉やボイラーなどの排気ガス排出源から排出される高温の水蒸気を含有する60〜200℃の温度領域の排気ガスを、前記水蒸気の潜熱を効率よく吸収することが可能な吸湿性塩類を含有する溶液を用いて、経済性のある温度および湿度(出口温度60℃以下、絶対湿度4
0以下)まで効率よく下げることができることを見出し、本発明はこれに基づいて完成した。
【0012】
したがって、本発明の第1の観点は、焼却炉やボイラーなどの排気ガス排出源から排出される排気ガスの廃熱を効率よく回収しながら、白煙発生を抑制し、煙突の周辺における水滴落下に伴う汚染問題を解決し、可視的な公害要因を解消する一方、メンテナンス費用の少ない理想的な白煙低減方法を提供することにある。
【0013】
本発明の第2の観点は、前記排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法に使用される適切な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[1] 本発明の第1の観点を達成するための排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法は、高温の水蒸気を含む排気ガス供給源から熱および水分交換部に排気ガスを流入させて前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液とを接触させることで、前記排気ガスに含有された水蒸気の潜熱を回収して凝縮させ、処理された排気ガスは熱および水分交換部の外部へ排出させる段階と、前記吸湿性塩類を含有する溶液と凝縮水との混合物を熱および水分交換部の下部に排出させ、前記吸湿性塩類を含有する溶液を濃縮および冷却して循環させる段階とを含んでなる。
【0015】
[2] 前記[1]において、前記吸湿性塩類は、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、ギ酸カリウム(potasium formate)、塩素酸ナトリウム(Sodium chlorate)、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、および塩化カルシウムよりなる群から1つ以上選ばれる。
【0016】
[3] 前記[1]において、前記吸湿性塩類を含有する溶液における前記吸湿性塩類の濃度は40〜80重量%に維持される。
【0017】
[4] 前記[1]において、前記排気ガスは熱および水分交換部の下部から供給され、前記吸湿性塩類を含有する溶液は前記熱および水分交換部の上部から提供されることにより、前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液との接触比が重量比で1:2〜10であり、接触時間は少なくとも5秒である。
【0018】
[5] 前記[1]において、前記循環させる段階は、前記熱および水分交換部の下部に排出された吸湿性塩類を含有する溶液を熱および水分交換部の上部へ供給するためのポンピング段階と、前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液の一部が流入し、流入した吸湿性塩類を含有する溶液を加熱および濃縮し、濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液を熱および水分交換部へ供給させる段階と、前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、流入した前記吸湿性塩類を含有する溶液を熱交換させる熱交換段階とを含む。
【0019】
[6] 前記[5]において、前記方法は、前記ポンピング段階の後に、外部から導入される汚染物質を除去することが可能な濾過段階をさらに含む。
【0020】
[7] 本発明の第2の観点を達成するための排気ガスの廃熱回収および白煙低減装置は、高温の水蒸気を含む排気ガス供給源と、前記排気ガス供給源に連結され、高温の排気ガスおよび水蒸気が流入し、吸湿性塩類を含有する溶液が供給される熱および水分交換部と、前記熱および水分交換部に連結され、冷却された排気ガスが排出される排気ガス排出部と、前記熱および水分交換部に連結され、前記吸湿性塩類を含有する溶液を濃縮および冷却して循環させる循環供給部とを含んでなる。
【0021】
[8] 前記[7]において、前記排気ガス供給源は前記熱および水分交換部の下部に連結され、前記吸湿性塩類を含有する溶液は前記熱および水分交換部の上部から提供される。
【0022】
[9] 前記[7]において、前記熱および水分交換部は、高温の排気ガスおよび水蒸気と前記吸湿性塩類を含有する溶液との接触面積を増加させるためのビードを含む。
【0023】
[10] 前記[7]において、前記循環供給部は、前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、熱および水分交換部の上部へ前記吸湿性塩類を含有する溶液を供給するためのポンプと、前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液の一部が流入し、流入した吸湿性塩類を含有する溶液を加熱および濃縮し、濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液を熱および水分交換部へ供給させる加熱濃縮部と、前記熱および水分交換部から吸湿性塩類を含有する溶液が流入し、流入した前記吸湿性塩類を含有する溶液を熱交換させる熱交換部とを含んでなる。
【0024】
[11] 前記[7]において、前記熱および水分交換部は、前記交換部の下部に下降する吸湿性塩類を含有する溶液と、加熱濃縮部で濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液とを混合させる撹拌設備を有する貯蔵施設を含む。
【0025】
[12] 前記[10]において、前記装置は、ポンプの後段に位置し、外部から導入される汚染物質を除去することが可能なフィルターをさらに含む。
【0026】
[13] 前記[7]において、前記吸湿性塩類は、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、ギ酸カリウム(potasium formate)、塩素酸ナトリウム(Sodium chlorate)、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、および塩化カルシウムよりなる群から1つ以上選ばれる。
【発明の効果】
【0027】
前述したように、本発明は、排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液とを接触させて水分および潜熱を回収させ、煙突を介して排出される白煙を抑制して煙突の周辺における水滴落下に伴う汚染問題を解決し、可視的な公害要因を解消するうえ、メンテナンス費用が少ないだけでなく廃熱を効率よく回収することにより、経済性を高めるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の一実施形態によってボイラーから発生した排気ガスの廃熱を化学的に回収しながら白煙を低減させる全体的な工程を概略的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明をより具体的に説明する前に、本明細書および請求の範囲に使用された用語や単語は、通常的かつ辞典的な意味に限定されてはならず、発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚して、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されるべきであることを明らかにしておく。したがって、本明細書に記載された実施形態の構成は、本発明の好適な一例に過ぎないもので、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物と変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0030】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができるように、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0031】
前述したように、本発明は、焼却炉やボイラーなどの排気ガス排出源から排出される排気ガス中の水分により発生する白煙を除去し、廃熱を回収する方法および装置に関するものである。さらに詳しくは、環境工学分野の中でも大気汚染制御分野であって、その細部の分野は排気ガス中の水分により発生する白煙(水蒸気)の処理に該当するもので、水分が過飽和された排気ガスを、吸湿性塩類を含有する溶液を用いて排気ガス中の水分を吸収すると同時に潜熱を回収し、このとき、排気ガス中の水分が冷却および凝縮して絶対湿度(Absolute Humidity)が低下することにより、大気中に排出される混合ガスが白煙現象を示すことなく、凝縮水分による比重増加現象を抑制して大気中への拡散効果を高めることで、煙突の周辺における凝縮水分および汚染物質の落下(落塵)現象を排除させることができる白煙低減方法および装置に関するものである。
【0032】
簡略にまとめると、本発明は、吸湿性塩類を含有する溶液を用いて、燃料の燃焼時に発生する排気ガス中の水分から潜熱を回収し、排気ガス中に含まれている水分を化学的熱回収方法によって吸収して白煙を低減させる。
【0033】
このような本発明の化学的熱回収および白煙低減方法とこれを用いた装置は、吸湿性塩類を含有する溶液を吸収剤および吸熱剤として使用し、排気ガスの水蒸気を吸収した後、前記吸湿性塩類を含有する溶液における吸湿性塩類の濃度が低くなると、再び一定の濃度に還元させるために循環液の一部を高圧スチームとして加熱および蒸発させて一定の濃度を維持し、このとき、低圧スチームを生産することができる。
【0034】
本発明に係る排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法は、高温の水蒸気を含む排気ガス供給源から熱および水分交換部(例えば、湿式集塵設備など)に排気ガスを流入させて前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液とを接触させ、前記排気ガスに含有された水蒸気の潜熱を回収して凝縮させ、処理された排気ガスは熱および水分交換部の外部へ排出させる段階と、前記吸湿性塩類を含有する溶液と凝縮水との混合物を熱および水分交換部の下部に排出させ、前記吸湿性塩類を含有する溶液を濃縮および冷却して循環させる段階とを含む。
【0035】
本発明に使用される吸湿性塩類は、溶解度が大きく、温度による溶解度の差が大きく、人体に有害でないうえ、公害を誘発せず、可燃性および/または爆発性を有しないものが好ましく、これに加えて溶解時の吸熱物質であれば、さらに好ましい。
【0036】
本発明の一つの実施形態において、このような前記吸湿性塩類としては、硝酸カルシウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸バリウム、過塩素酸バリウム、ギ酸カリウム(potasium formate)、塩素酸ナトリウム(Sodium chlorate)、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、塩化ナトリウム、および塩化カルシウムよりなる群から1つ以上選択できる。
【0037】
本発明によれば、焼却炉やボイラーなどの排気ガス排出源から供給される排気ガスの温度、すなわち60℃以上の温度領域の排気ガスを熱および水分交換部(例えば、湿式集塵設備または吸収塔など)で前記吸湿性塩類を含有する溶液と接触させると、大気への排出が可能な経済性のある温度および湿度(出口温度60℃以下、絶対湿度4
0以下)まで下げることができる。言い換えれば、前記排気ガス中に含まれている水分は前記吸湿性塩類によって最大限に吸収され、これにより、排出される排気ガスの性状は供給される排気ガスから水分が吸収されて循環する前記吸湿性塩類を含有する溶液の供給温度と近似値の温度を有し、この温度で過冷却状態である絶対水分を含有するようになる。過冷却状態で大気中に排出されるときに排気ガスから発生する白煙はほとんど低減できる。
【0038】
このように、本発明は、施設物から排出される過飽和状態の排気ガスを、吸湿性塩類を含有する溶液によって接触冷却させ、排気ガスに含まれている水分を白煙発生含量以下まで除去するようにすることにより、白煙発生を最小化するとともに排気ガス中の水分の潜熱を最大限に回収することができる。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記吸湿性塩類を含有する溶液における前記吸湿性塩類の濃度を40〜80重量%に維持させることが、前記吸湿性塩類が排気ガスの水蒸気を最大限に吸収して前記水蒸気の潜熱を回収しながら水蒸気を効率よく凝縮させることができる。この場合、前記吸湿性塩類の濃度が40重量%未満であれば、前記吸収率が低下し、前記吸湿性塩類の濃度が80重量%超過であれば、前記塩類が沈殿または固化する傾向がある。上記の濃度範囲内で、前記吸湿性塩類は吸湿性塩類ごとに吸収率が異なるので、適切な吸収率を維持するように熱および水分交換部を設計および設置しなければならないが、このような設計および設置構造は当業者によって容易に案出できる。
【0040】
本発明の他の実施形態において、前記排気ガスは一般に熱および水分交換部の下部から供給されて上部を移動し、前記吸湿性塩類を含有する溶液は前記熱および水分交換部の上部から提供され、前記熱および水分交換部の中間部分で直接接触する。このとき、高温の排気ガスと前記吸湿性塩類を含有する溶液との接触面積を増加させるために、前記熱および水分交換部はその中間部分にビード(または充填剤)を含む接触固定層を設置することができる。一方、前記排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液との接触比は、重量比で前記排気ガスが1である場合、前記吸湿性塩類を含有する溶液は2〜10であることが反応効率の面で効果的であり、また、接触時間は少なくとも5秒、好ましくは約10〜30秒程度であることが排気ガスの水蒸気を効率的および経済的に凝縮させることができる。また、上記の範囲内で、排気ガスと吸湿性塩類を含有する溶液との接触比は塩類物質別に異なるが、このような排気ガスの水蒸気を効率よく凝縮させる熱および水分交換部の設計および設置構造は当業者によって容易に案出できる。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、前記熱および水分交換部の下部に排出された吸湿性塩類を含有する溶液は、前記熱および水分交換部の上部に供給するためにポンプなどの装置を用いて循環させることができる。しかも、選択的に、排気ガスに接触した前記吸湿性塩類を含有する溶液は、外部から導入される汚染物質を含むことができるので、これをフィルターなどの手段を用いて濾過および除去することができる。
【0042】
併せて、このように循環する吸湿性塩類を含有する溶液の一部は加熱濃縮手段によって加熱および濃縮され、濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液は昇温した状態で前記熱および水分交換部の下部へ供給される。このようにして、前記吸湿性塩類を含有する溶液における前記吸湿性塩類の濃度を40〜80重量%の範囲に維持させることができる。上記の濃度範囲に維持できるように、前記濃度は本発明に係る装置の少なくとも一つの位置に設置された濃度測定センサーによって測定され、このような測定結果を利用する自動モニタリングシステムによって、前記加熱濃縮手段に流入させる前記吸湿性塩類を含有する溶液の量が決定される。このように、前記交換部の下部に供給される昇温状態の吸湿性塩類を含有する溶液は、前記交換部の上部から下部に下降する吸湿性塩類を含有する溶液と混合されて上記の濃度範囲を維持するうえ、前記熱および水分交換部の貯蔵施設に貯蔵された吸湿性塩類を含有する溶液の温度を上昇させる。
【0043】
一方、前記熱および水分交換部から循環する吸湿性塩類を含有する溶液は、熱交換器などの装置を用いて、前記吸湿性塩類を含有する溶液の廃熱を回収する。本発明によれば、このように回収された廃熱の熱量は排気ガス排出源から供給される排ガスを直接熱交換させた場合よりも大きいが、これは排気ガスに含まれている水蒸気の潜熱を、前記吸湿性塩類を含有する溶液が最大限に吸収したからである。
【0044】
図1は本発明の一実施形態によってボイラーから発生した排気ガスの廃熱を化学的に回収しながら白煙を低減させる全体的な工程を概略的に示す工程図である。
図1を参照すると、本発明の排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法が適用できる装置は、排気ガス供給源20、熱および水分交換部30、排気ガス排出部31、および循環供給部32を含む。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、前記排気ガス供給源20は60℃以上の高温の水蒸気を含み、前記熱および水分交換部30は前記排気ガス供給源に連結された配管21から高温の排気ガスおよび水蒸気が前記交換部30の下部に流入し、吸湿性塩類を含有する溶液34は前記交換部30の上部に連結された配管51を介して供給される。このような排気ガス供給源20は、排気ガスを吸入して熱および水分交換部30の内部に流入させる送風ファンおよび/またはダクト(図示せず)を備えることができる。前記配管51はその前段に噴射装置を設けてもよい。一方、前記排気ガス排出部31は、前記熱および水分交換部30の上部に連結され、これを介して、前記吸湿性塩類を含有する溶液34で処理されて冷却された排気ガスが排出される。排出された排気ガスは煙突70を介して大気中に放出される。前記循環供給部32は、前記熱および水分交換部30の下部に連結され、配管51を介して、前記吸湿性塩類を含有する溶液を熱および水分交換部30の上部に循環させる。
【0046】
本発明の一実施形態において、前記熱および水分交換部30は、一般に高温の排気ガスおよび水蒸気と前記吸湿性塩類を含有する溶液との接触面積を増加させるためのビード33を含むことができる。このようなビードおよび設置構造は当業者にはよく知られている。
【0047】
本発明の他の実施形態によれば、前記循環供給部32はポンプ、加熱濃縮部40および熱交換部50を含む。前記ポンプは、前記熱および水分交換部30から吸湿性塩類を含有する溶液34を循環させて熱および水分交換部30の上部に供給する。前記加熱濃縮部40には、前記熱および水分交換部30の下部から循環する吸湿性塩類を含有する溶液の一部が流入する。このように流入した吸湿性塩類を含有する溶液は例えば高圧スチームで加熱および濃縮する。濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液は、再び上昇した温度で配管41を介して前記熱および水分交換部30の下部へ供給される。このとき、前記熱および水分交換部30から、吸湿性塩類を含有する溶液で凝縮した凝縮水は回収され、前記加熱濃縮部40の上部には低圧スチームを発生させて廃熱が回収される。一方、前記熱交換部50は、前記熱および水分交換部30の下部からポンプによって循環する吸湿性塩類を含有する溶液から熱交換によって温水を得る。
【0048】
本発明の別の実施形態によれば、前記熱および水分交換部30の下部は、吸湿性塩類を含有する溶液を貯蔵することが可能な貯蔵施設を含み、前記貯蔵施設は、前記交換部の下部に下降する吸湿性塩類を含有する溶液34と、加熱濃縮部から配管41を介して供給される濃縮された吸湿性塩類を含有する溶液とを混合させる撹拌設備を含むことができる。前記貯蔵設備は、20分以上の運転時間の間に循環する吸湿性塩類を含有する溶液を貯蔵することができる程度の容量を持つことができる。選択的に、本発明の装置は、ポンプの後段に位置して外部からの汚染物質を除去することが可能なフィルター60をさらに含むことができる。前記フィルター60は、供給される排気ガスからの不純物による設備の詰まりを防止することができる。
【0049】
一方、本発明の別の実施形態によれば、前記装置は、内部の維持および/または保守の際に開放される開閉部材(図示せず)をさらに備えることができる。
【0050】
前述したように、本発明によれば、煙突における混合ガスの湿度が低い状態に維持されるので、排気ガスを排出する施設で飽和水分により起こる白煙発生現象を根本的に抑制するか或いは高効率で処理することができるので、焼却炉や脱硫設備、非鉄金属溶解炉、化学製品製造施設などの湿式大気汚染物質除去過程中に発生する白煙、および各種産業用洗浄機設備から発生する水蒸気を効果的に除去することができる。
【0051】
また、従来の方法で白煙除去のために必要であった多くの加熱用燃料消耗と複雑な施設装置を省略し、安定かつ高効率で白煙を除去することができるため、これまで多くの煙突からの白煙発生による問題点、すなわち、煙突の周辺における凝縮水の落下や汚染物質の落塵現象などを大幅に低減させる効果があるのである。
【0052】
併せて、排気ガスに含まれていた水蒸気の潜熱を回収することにより、効率的なエネルギー管理効果がある。したがって、維持費用の節減効果だけでなく、設置費用の節減効果も期待することができるため、従来よりも遥かに経済的な白煙防止対策の講究が可能であって、実用化が難しかった問題点を解決することができるのである。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に考察する。ところが、これらの例に本発明の範疇が限定されるのではない。
【0054】
実施例1
【0055】
本実施例では
図1のような模擬実験装置を用いて排気ガスの廃熱回収および白煙低減の程度を確認した。
【0056】
下記表1は
図1のような模擬実験装置における排気ガスまたは吸湿性塩類を含有する溶液の各ストリームに対する性状(液相または気相)、温度、圧力、流速、および吸湿性塩類を含有する溶液中の吸湿性塩類の濃度(以下「濃度」という)を示す。前記吸湿性塩類としては硝酸カルシウムを使用した。
【0057】
【表1】
【0058】
前記表1において、ストリーム(1)は水蒸気を約13.2重量%含有し、ストリーム(2)は約3.3重量%含有した。
【0059】
一方、排気ガスストリーム(1)に対して、本発明のような処理なしに、一般的な熱交換器(
図1の50などの装置)を用いて廃熱の回収熱量を計算した結果、175,200kcal/hrであり、白煙および水滴現象が煙突から観察された。これに対し、実施例1に基づいて排気ガスストリーム(1)を処理し、回収された熱量(
図1の(10)、(12)および(13)から回収された熱量の合計)から、供給された熱量(
図1の(11)から供給された熱量)を除外した結果、714,130kcal/hrであった。結果的に、単純な熱交換器を用いた場合よりも約5倍の廃熱回収効果があったとともに、煙突から白煙および水滴現象も観察されなかった。
【0060】
以上、本発明の好適な実施例について詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものである。本発明に係る排気ガスの廃熱回収および白煙低減方法と装置は、これに限定されず、本発明の技術的思想内で当該分野における通常の知識を有する者によって変形や改良が可能であることが明白である。
【0061】
本発明の単純な変形ないし変更はいずれも本発明の範囲に属するもので、本発明の具体的な保護範囲は添付された特許請求の範囲によって明確になるだろう。
【符号の説明】
【0062】
20 排気ガス供給源
21、41、51 配管
30 熱および水分交換部
31 排気ガス排出部
32 循環供給部
33 ビード
34 吸湿性塩類を含有する溶液
40 加熱濃縮部
50 熱交換部
60 フィルター
70 煙突