【文献】
J.Rahmer, et al.,FAST CONTINUOUS MOTION OF THE FIELD OF VIEW IN MAGNETIC PARTICLE IMAGING,2013 INTERNATIONAL WORKSHOP ON MAGNETIC PARTICLE IMAGING,米国,IEEE,2013年 3月23日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
拡張システム関数は、磁気フォーカスフィールドがない場合に得られる当該装置の定常システム関数の時間領域表現を、前記磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる前記視野の位置の変化に比例してシフトすることによって、生成される、
請求項4に記載の装置。
前記記憶要素は、前記第1サブゾーンの動きの異なる速度、前記第1サブゾーンの動きの異なる方向、及び/又は前記第1サブゾーンが動かされる異なる軌跡について得られた複数の拡張システム関数を記憶するよう構成される、
請求項4に記載の装置。
前記定常システム関数の時間領域表現をシフトすることによって補償される前記磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる前記視野の位置の変化は、線形シフト運動、加速運動、減速運動、及び曲線運動のうちの1つ以上を含む、
請求項1又は4に記載の装置。
前記処理要素は、再構成された軌跡の開始及び/又は終了点をシフトして、異なる時間シフトが再構成され得るようにし、且つ、シフトされた拡張システム関数を連結させるよう構成される、
請求項1又は4に記載の装置。
前記処理要素は、前記磁気フォーカスフィールドの印加の間の前記第1サブゾーンの動きの速度に基づき前記拡張システム関数の振幅の振幅補正を適用するよう構成される、
請求項1又は4に記載の装置。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子イメージング(MPI;Magnetic Particle Imaging)は、新興の医用イメージングモダリティである。MPIの最初のバージョンは、それらが2次元画像を生成する点で2次元であった。より新しいバージョンは3次元(3D)である。非静止対象の4次元画像は、対象が単一の3D画像のためのデータ取得の間に大きく変化しないという条件で、3D画像の時間シーケンスをムービーと結合することによって生成され得る。
【0003】
MPIは、コンピュータ断層撮影法(CT;Computed Tomography)又は磁気共鳴イメージング(MRI;Magnetic Resonance Imaging)のような、再構成イメージング法である。然るに、関心のある対象のボリュームのMP画像は2つの段階において生成される。第1の段階は、データ取得と呼ばれ、MPIスキャナを用いて実行される。MPIスキャナは、「選択フィールド」と呼ばれる静的な磁場勾配フィールドを生成するよう配置される。選択フィールドは、スキャナのアイソセンタにおいて(1つ以上の)フィールドフリーポイント(FFP;field-free point)又はフィールドフリーライン(FFL;field-free line)を有する。更に、このFFP(又はFFL;以下における「FFP」の記述は、概して、FFP又はFFLを意味するものとして理解されるべきである。)は、低い磁界強さを有する第1サブゾーンによって囲まれており、次に、第1サブゾーンは、より高い磁界強さを有する第2サブゾーンによって囲まれている。加えて、スキャナは、時間に依存する、空間的にほぼ一様な磁場を生成する手段を備える。実際に、この磁場は、「駆動フィールド」と呼ばれる、振幅が小さい変化の激しいフィールドと、「フォーカスフィールド」と呼ばれる、振幅が大きいゆっくりと変化するフィールドとを重ね合わせることによって、得られる。時間に依存する駆動フィールド及びフォーカスフィールドを静的な選択フィールドに加えることによって、FFPは、アイソセンタを囲む「走査ボリューム」にわたって所定のFFP軌跡に沿って動かされ得る。スキャナは、1つ以上(例えば、3つ)の受信コイルの配置を更に備え、それらのコイルにおいて引き起こされるあらゆる電圧を記録することができる。データ取得のために、撮像される対象は、関心のある対象のボリュームが、走査ボリュームの一部分であるスキャナの視野によって取り囲まれるようにスキャナにおいて位置される。
【0004】
対象は、磁性ナノ粒子又は他の磁性非線形材を含むべきである。対象が動物又は患者である場合は、かかる粒子を含むトレーサがスキャンの前に動物又は患者に投与される。データ取得の間に、MPIスキャナは、走査ボリューム又は少なくとも視野をトレース/カバーする慎重に選択された軌跡に沿ってFFPを動かす。対象内の磁性ナノ粒子は、変化する磁場を受けて、その磁化を変化させることで反応する。ナノ粒子の変化する磁化は、受信コイルの夫々において、時間に依存する電圧を引き起こす。この電圧は、受信コイルに付随する受信器においてサンプリングされる。受信器によって出力されたサンプルは記録され、取得データを構成する。データ取得の詳細を制御するパラメータは、「スキャンプロトコル」を構成する。
【0005】
画像再構成と呼ばれる画像生成の第2のステップでは、画像は、第1のステップで取得されたデータから計算又は再構成される。画像は、視野における磁性ナノ粒子の位置に依存した濃度へのサンプリングされた近似を表すデータの離散3Dアレイである。再構成は、一般に、適切なコンピュータプログラムを実行するコンピュータによって実行される。コンピュータ及びコンピュータプログラムは、再構成アルゴリズムを実現する。再構成アルゴリズムは、データ取得の数学モデルに基づく。全ての再構成イメージング法と同様に、このモデルは、取得データに作用する積分作用素として定式化され得る。再構成アルゴリズムは、可能な範囲で、モデルの作用を取り消そうとする。
【0006】
そのようなMPI装置及び方法は、それらが被検体の表面の近く及びその表面から離れて非破壊的様式で且つ高い空間分解能を有して任意の被検体(例えば、人体)を試験するために使用され得るという利点を具備する。そのような装置及び方法は、一般的に知られており、独国特許出願公開第10151778(A1)号明細書(特許文献1)において及びGleich, B.及びWeizenecker, J.,“Tomographic imaging using the nonlinear response of magnetic particles”,Nature,vol.435,pp.1214-1217(2005年)(非特許文献1)において記載されたのが最初である。この文献には、再構成原理も概して記載されている。その文献において記載されている磁性粒子イメージング(MPI)のための装置及び方法は、小磁性粒子の非線形磁化曲線を利用する。
【0007】
MRI及びCTのような確立されたイメージングモダリティとは対照的に、MPIが取得データから画像を再構成するためには、簡単な数学的変換は未だ特定されていない。従って、MPI画像再構成は、粒子の所与の空間部分に対するシステム応答、すなわち、周波数応答への粒子位置のマッピングを記述する「システム関数」の知識を必要とする。再構成の問題を解決するよう、システム関数は反転されるべきであり、通常は、何らかの正則化スキームを必要とする。
【0008】
システム関数は、画像ピクセル又はボクセルの数に対応する多数の空間位置での点状サンプルの磁化応答を測定することによって、実験的に決定され得る。この較正プロシージャは、特に、適当な信号対雑音比(SNR;signal-to-noise ratio)を得るために、非常に長い取得時間を必要とする。取得に関する更なる詳細、システム関数の特性及び使用、並びに高速な取得時間及びシステム関数を記憶する記憶空間の削減のための好適な実施形態は、国際公開第2010/067248(A1)号パンフレット(特許文献2)及び国際公開第2010/067264(A1)号パンフレット(特許文献3)において見つけられ得る。それらの詳細は、参照により本願に援用される。
【0009】
MPIにおける大きな空間カバレッジは、磁気駆動フィールドによって符号化される視野(FOV;field of view)を、磁気フォーカスフィールドと呼ばれる更なる一様なオフセット場を用いて動かすことによって、達成され得る。今日まで、磁気フォーカスフィールドは、J. Rahmer et al.,“Continuous Focus Field Variation for Extending the Imaging Range in 3D MPI”,Magnetic Particle Imaging: A Novel SPIO Nanoparticle Imaging Technique 140 (2012): 255(非特許文献2)において記載されるように、例えば、緩やかな連続したFOV動作を3D符号化により生成するために適用されてきた。撮像の間の連続したFOV動作に関して、“緩やかな”とは、1符号化期間の間のシフトが再構成された空間分解能を下回ったままであることを意味する。非特許文献2において、妥協のない画像品質は約200mm/sのシフト速度について示された。この速度は、21.5msの3D符号化時間と約1mmの分解能との間の比に対応する50mm/sをはるかに下回っている。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、視野内の磁性粒子を操作及び/又は検出する装置、すなわち、MPI装置であって、急速な磁気フォーカスフィールドの変化の使用によって撮像ボリューム(すなわち、磁気駆動フィールド励起によってカバーされるボリュームよりもずっと大きい。)の高速カバレッジの場合でさえ動きアーチファクトが全くないか又は低減されている画像の再構成を可能にする装置を提供することである。
【0013】
本発明の第1の態様では、視野内の磁性粒子を操作及び/又は検出する装置であって、
選択フィールド信号生成部及び選択フィールド要素を有し、前記磁性粒子の磁化が飽和されない低い磁界強さを有する第1サブゾーンと、前記磁性粒子の磁化が飽和されるより高い磁界強さを有する第2サブゾーンとが前記視野において形成されるような磁界強さの空間内パターンを有する磁気選択フィールドを生成する選択要素と、
駆動フィールド信号生成部及び駆動フィールドコイルを有し、前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、磁気駆動フィールドによって前記視野内の前記第1サブゾーン及び前記第2サブゾーンの空間内の位置を変化させる駆動要素と、
フォーカスフィールド信号生成部及びフォーカスフィールド要素を有し、磁気フォーカスフィールドによって前記視野の空間内の位置を変化させるフォーカス要素と、
前記第1サブゾーン及び前記第2サブゾーンの空間内の位置の変化によって影響を及ぼされる前記視野内の磁化に依存する検出信号を取得する受信要素と、
磁気フォーカスフィールドがない場合に得られる当該装置の定常システム関数を記憶する記憶要素と、
前記磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる前記視野の位置の変化に比例して前記定常システム関数の時間領域表現をシフトすることによって拡張システム関数を生成し、前記検出信号及び前記拡張システム関数から前記視野内の前記磁性粒子の空間分布を再構成する処理要素と
を有する装置が与えられる。
【0014】
本発明の第2の態様では、視野内の磁性粒子を操作及び/又は検出する装置であって、
選択フィールド信号生成部及び選択フィールド要素を有し、前記磁性粒子の磁化が飽和されない低い磁界強さを有する第1サブゾーンと、前記磁性粒子の磁化が飽和されるより高い磁界強さを有する第2サブゾーンとが前記視野において形成されるような磁界強さの空間内パターンを有する磁気選択フィールドを生成する選択要素と、
駆動フィールド信号生成部及び駆動フィールドコイルを有し、前記磁性粒子の磁化が局所的に変化するように、磁気駆動フィールドによって前記視野内の前記第1サブゾーン及び前記第2サブゾーンの空間内の位置を変化させる駆動要素と、
フォーカスフィールド信号生成部及びフォーカスフィールド要素を有し、磁気フォーカスフィールドによって前記視野の空間内の位置を変化させるフォーカス要素と、
前記第1サブゾーン及び前記第2サブゾーンの空間内の位置の変化によって影響を及ぼされる前記視野内の磁化に依存する検出信号を取得する受信要素と、
複数の定常及び/又は拡張システム関数を記憶する記憶要素であって、前記定常システム関数は、前記視野の異なる位置で磁気フォーカスフィールドがない場合に得られ、前記拡張システム関数は、異なる磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる前記視野の位置の異なる変化に比例して定常システム関数の時間領域表現をシフトすることによって生成されるか、又は前記視野の位置の異なる変化が異なる磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされている間に得られる、記憶要素と、
前記視野の空間内の位置を変化させるために印加される前記磁気フォーカスフィールドに基づき前記記憶されている複数の定常及び/又は拡張システム関数から選択又は構成された拡張システム関数及び前記検出信号から前記視野内の前記磁性粒子の空間分布を再構成する処理要素と
を有する装置が与えられる。
【0015】
本発明の更なる態様では、対応する方法が与えられる。
【0016】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項において定義される。請求される装置及び方法は、従属請求項において定義されている類似した及び/又は同じ好適な実施形態を有することが理解されるべきである。
【0017】
本発明は、システム関数を変更するという考えに基づく。システム関数は、通常は、可変磁気フォーカスフィールドがない場合に取得され、周波数領域表現において記憶される。この“定常”システム関数は、例えば、フーリエ変換を解して、時間領域に変換される。フィールドフリーポイント・シーケンスの間の異なる時点を表すシーケンシャル・ボリューム(すなわち、軌跡)は、次いで、可変磁気フォーカスフィールドによって引き起こされるFFPシフトに従ってシフトされる。その後、定常システム関数は周波数領域に再度変換され、周波数領域において、標準の再構成プロシージャが適用される。
【0018】
MPIにおける大きな空間ボリュームの高速カバレッジは。FOVの急速なシフトを成立させる磁気フォーカスフィールドにおける急速な変化を必要とする。それらが撮像プロセスの間に起こる場合には、動きアーチファクトが現れる。提案される補償技術によれば、意図的なFOV動作又は残留渦電流による不要な動きのいずれかは、追加の磁場の時間的発達が知られている限りは、画像再構成において補償され得る。よって、本発明に従って、数百mm/sまでの高FOV速度に関して、動きアーチファクトは、画像再構成のために使用されるシステム関数の時間領域表現への線形シフトの提案される付加によって、低減され得る。
【0019】
第1の態様に従って、如何なる磁気フォーカスフィールドも印加することなしに(よって、名称「定常システム関数」。)前もって取得されている当該装置の定常システム関数のみが記憶される。検出信号の実際のデータ取得の間又は後に、拡張システム関数は、磁気フォーカスフィールドによって引き起こされる視野の変化に関する情報の使用によって、生成される。このようにして、より大きいボリュームをカバーするシステム関数(よって、名称「拡張システム関数」)が得られ、次いで、より大きいボリュームにおける検出信号からの所望の画像の再構成のために(すなわち、視野内の磁性粒子の空間分布を再構成するために)使用される。
【0020】
シフトされたシステム関数を結合する(連結させる)ために、いくつかのオプションが一般に利用可能である。1つのオプションは、全ての運動パターンを有する大規模システム関数を生成することである。その場合に、再構成は完全な画像を提供する。しかし、拡張システム関数は極めて大きくなり得る。他のオプションは、後に完全な画像へと結合される小さなサブボリュームを(通常は、1リサジュー期間に従って)再構成することである。重なり合った範囲に関しては、重み付けが適用されてよく、夫々のデータセットのエッジに向かって減少する。
【0021】
第2の態様に従って、磁気フォーカスフィールドが印加されていない間(視野の異なる位置について定常システム関数を得るため。)又は異なる磁気フォーカスフィールドが印加されている間(拡張システム関数を得るため。)に前もって取得されている当該装置の複数の定常及び/又は拡張システム関数が記憶される。検出信号の実際のデータ取得の間又は後に、定常及び/又は拡張システム関数は、検出信号の取得の間に実際に印加される磁気フォーカスフィールドに可能な限り対応するよう、複数の記憶されている定常及び/又は拡張システム関数から選択又は構成される。すなわち、一実施形態において、記憶されている拡張システム関数は、磁気フォーカスフィールドが印加されている間に生成された関数であって、検出信号の取得の間に実際に印加される磁気フォーカスフィールドに可能な限り対応する関数が選択される。他の実施形態では、拡張システム関数は、記憶されている定常及び/又は拡張システム関数の1つ以上から構成される。
【0022】
第1の態様に従う装置の好適な実施形態において、記憶要素は、定常システム関数の周波数領域表現を記憶するよう構成され、処理要素は、拡張システム関数を生成するよう定常システム関数の時間領域表現をシフトする前に該時間領域表現へと定常システム関数の周波数領域表現を変換し、且つ、磁性粒子の空間分布を再構成するために使用される周波数領域表現へと拡張システム関数を変換するよう構成される。このように、定常システム関数の空間シフトは時間領域において実行され、一方、システム関数は、好適には周波数領域において記憶され、更には、画像を再構成するために周波数領域において使用される。
【0023】
データは、時間領域において測定され、一般に、同じく時間領域において記憶されてよいが、それらを周波数領域において記憶することは、例えば、フィルタリングの場合において、バックグラウンドの補正及びデータ処理のために、より有利である。更には、不必要な周波数成分は、処理から捨てられ、記憶される必要がない。
【0024】
望ましくは、第1の態様に従う装置は、磁気フォーカスフィールドを測定する測定要素を更に有し、処理要素は、前記測定された磁気フォーカスフィールドによって引き起こされる視野の位置の変化に比例して定常システム関数の時間領域表現をシフトするために前記測定された磁気フォーカスフィールドを使用するよう構成される。一般に、当該装置は、どの磁気フォーカスフィールドが印加されるかを、従って、如何にして視野がシフトされるかを知っているが、磁気フォーカスフィールドを測定し、定常システム関数を空間的にシフトするためにこの測定からの情報を使用することは、シフト、得られた拡張システム関数、ひいては、再構成された画像の精度を更に高めることができる。上記の測定手段は、好適にはホールセンサ、又は磁場を測定することができる如何なる他のセンサも有する。この測定を通じて、動的な渦電流効果は測定されて、補償され得る。
【0025】
第1の態様に従う装置の他の好適な実施形態では、処理要素は、磁気フォーカスフィールドの動きの方向においてパディングを行うことによって拡張システム関数を生成するよう構成され、(定常システム関数をシフトすることで得られるより大きいボリュームの)パディングされたボクセルは、零で、又は隣接するボクセルの値の外挿値で満たされる。外挿プロシージャも、シミュレーションされたデータに依存してよい。
【0026】
第2の態様に従う装置の好適な実施形態において、拡張システム関数は、磁気フォーカスフィールドがない場合に得られる当該装置の定常システム関数の時間領域表現を、磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる視野の位置の変化に比例してシフトすることによって、生成される。
【0027】
望ましくは、第2の態様に従う装置は、磁気フォーカスフィールドを測定する測定要素を更に有し、処理要素は、記憶されている複数の定常及び/又は拡張システム関数から拡張システム関数を選択又は構成するために前記測定された磁気フォーカスフィールドを使用するよう構成される。第1の態様に従う装置について上述されたように、これにより精度が高められ得る。先と同じく、上記の測定手段は、好適にはホールセンサ、又は磁場を測定することができる如何なる他のセンサも有する。
【0028】
第2の態様に従う装置の他の好適な実施形態では、記憶要素は、第1サブゾーンの動きの異なる速度、第1サブゾーンの動きの異なる方向、及び/又は第1サブゾーンが動かされる異なる軌跡について得られた複数の拡張システム関数を記憶するよう構成される。このように、様々な拡張システム関数のカタログは、磁気フォーカスフィールドの使用によって視野の実際のシフトに可能な限り適合する拡張システム関数の選択又は構成を可能にして、再構成された画像の精度の向上をもたらすように、記憶される。
【0029】
定常システム関数の時間領域表現をシフトすることによって補償される磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる視野の位置の変化は、線形シフト運動、加速運動、減速運動、及び曲線運動のうちの1つ以上を含む。従って、磁気フォーカスフィールドによって引き起こされる視野のおおむね全ての異なる種類の運動が、本発明に従って補償され得る。
【0030】
実施形態に従って、処理要素は、再構成された軌跡の開始及び/又は終了点をシフトして、異なる時間シフトが再構成され得るようにし、且つ、シフトされた拡張システム関数を連結させるよう構成される。このようにして、再構成の品質は改善され得、それはまた、より大きいボリュームを再構成することを可能にすることができる。
【0031】
他の実施形態に従って、処理要素は、第1サブゾーン、すなわち、FFPによってカバーされる軌跡の経路間の最大ギャップのサイズ及び位置を決定するよう構成される。これは、フォーカスフィールドによるFFPの更なるシフトが速すぎる場合に現れてよく、それにより、再構成の品質の低下を回避するためにシフトの速度を減速させるよう警告がユーザに発せられ得る。
【0032】
更なる他の実施形態では、処理要素は、磁性粒子の再構成された空間分布にひずみ補正を適用するよう構成される。このように、再構成された画像の品質は更に高められ得る。
【0033】
処理要素は、望ましくは、磁気フォーカスフィールドの印加の間の第1サブゾーンの動きの速度に基づき拡張システム関数の振幅の振幅補正を適用するよう構成される。これは、フォーカスフィールドなしで取得されたシステム関数と比較した場合に磁気駆動フィールドへの磁気フォーカスフィールドの付加によって引き起こされる空間信号応答パターンの振幅のわずかの変化を補償し、よって、再構成された画像の品質を更に高める。一般に、拡張システム関数の全体が振幅補正されるのではなく、夫々の時間ステップが別々に振幅補正される。
【0034】
一実施形態において、フォーカスフィールド手段及び選択要素は、別々の要素、すなわち、別々のコイル及び/又は別々の生成ユニットによって実装される。他の実施形態では、MPI装置は、一体的な選択及びフォーカスフィールドコイル(及び、望ましくは、複合生成ユニット)を用いる。このことは、既知のMPI装置では一般的に別々のコイルとして設けられるフォーカスフィールドコイル及び選択フィールドコイルを、選択及びフォーカスフィールドコイルの組み合わされた組にまとめるという考えに基づく。従って、単流が、夫々のフォーカスフィールドコイル及び夫々の選択フィールドコイルへ従来供給されていた別々の電流よりむしろ、それらのコイルの夫々に供給される。よって、単流は、フォーカスフィールド生成及び選択フィールド生成のための2つの重畳電流と見なされ得る。検査領域内の視野の所望の位置及び動きは、様々なコイルへの電流を制御することによって容易に変更され得る。なお、全ての選択及びフォーカスフィールドコイルが常に制御電流を供給されなければならないわけでなく、いくつかのコイルは、視野の特定の運動のためにのみ必要とされる。
【0035】
一体的な選択及びフォーカスフィールドコイルを用いる提案される実施形態は、対象が位置する検査領域に対してどこにどのようにコイルを配置すべきかの更なる自由度を更に提供する。この配置によれば、患者及び医師又は医療従事者(例えば、インターベンションの間の外科医)の双方によって容易にアクセス可能である開放型スキャナを構成することが、特に可能である。
【0036】
駆動フィールドコイルは、望ましくは、ふた組の選択及びフォーカスフィールドコイルのうちの第1の内部の選択及びフォーカスフィールドコイルどうしの間の領域に配置される。駆動フィールドコイルは、それらがふた組の選択及びフォーカスフィールドコイルの間に(固定して又は可動に)配置されるように設計され得る。他の実施形態では、駆動フィールドコイルは、いくらか可撓性であり、患者が検査領域内に位置される前に患者の身体の所望の部分に配置され得る。
【0037】
かかる実施形態によれば、磁場勾配フィールド(すなわち、磁気選択フィールド)は、視野が第1サブエリア及び第2サブエリアを有し、第1サブエリアが、その第1サブエリアにある磁性粒子の磁化が飽和されないように適応されたより低い磁界強さを有し(例えば、FFP)、第2サブエリアが、その第2サブエリアにある磁性粒子の磁化が飽和されるように適応されたより高い磁界強さを有するような磁界強さの空間分布をもって生成される。磁性粒子の磁化特性曲線の非線形性に起因して、磁化及びそれによって磁性粒子によって生成される磁場は、例えば、検出コイルによって検出され得る、より高い調波を示す。評価信号(信号のより高い調波)は、磁性粒子の空間分布に関する情報を含み、情報は、やはり、例えば、医用イメージングのために、磁性粒子の空間分布の視覚化のために、及び/又は他の用途のために使用され得る。
【0038】
本発明に従うMPI装置は、例えば、核磁気共鳴(NMR;nuclear magnetic resonance)のような他の既知の従来の医用イメージング技術とは異なる新しい物理的原理(すなわち、MPIと呼ばれる原理)に基づく。特に、この新しいMPI原理は、NMRとは対照的に、陽子の磁気共鳴特性に対する物質の影響を利用せず、むしろ、磁化特性曲線の非線形性を利用することによって磁性材料の磁化を直接に検出する。特に、MPI技術は、磁化が非飽和から飽和状態へ変化する領域における磁化特性曲線の非線形性空得られる生成された磁気信号のより高い調波を利用する。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の詳細が説明されるべき前に、磁性粒子イメージングの基本が
図1乃至4を参照して詳細に説明されるべきである。特に、データ取得の非公式の説明も与えられる。異なる実施形態どうしの類似性及び相違が指摘される。概して、本発明は、MPI装置のそれらの異なる実施形態の全てにおいて使用され得る。
【0041】
図1に示されるMPIスキャナの第1実施形態10は、同軸の平行な円形コイルの3つの対12、14、16を有する。それらのコイル対は
図1で表されるように配置される。それらのコイル対12、14、16は、駆動及びフォーカスフィールドとともに選択フィールドを生成する働きをする。3つのコイル対12、14、16の軸18、20、22は、相互に直交しており、MPIスキャナ10のアイソセンタ24として表される単一の点に集まる。加えて、それらの軸18、20、22は、アイソセンタ24に付随する3Dデカルトx−y−z座標系の軸となる。垂直軸20はy軸に指名され、それにより、x及びz軸は水平である。コイル対12、14、16は、それらの軸にちなんで名付けられる。例えば、yコイル対14は、スキャナの上下にあるコイルによって形成される。更に、正(負)y座標を持ったコイルはy+コイル(y−コイル)と呼ばれ、残りのコイルも同様である。更なる便宜上、座標軸及びコイルは、x、y及びzよりむしろ、x1、x2及びx3とラベルを付されるべきである。
【0042】
スキャナ10は、所定の時間に依存する電流をそれらのコイル12、14、16の夫々を通っていずれか一方の方向において導くよう設定され得る。電流が、コイルの軸に沿って見たときに、このコイルの周りを時計回りで流れる場合に、それは正と見なされ、そうでなければ負と見なされる。静的な選択フィールドを生成するよう、一定の正電流I
Sはz+コイルを流れるよう生成され、電流−I
Sはz−コイルを流れるよう生成される。zコイル対16は、その場合に、逆平行の円形コイル対としての機能を果たす。
【0043】
ここで、この実施形態における軸の配置及び軸に与えられる名称は単なる例であり、他の実施形態では異なってもよいことが留意されるべきである。例えば、実際的な実施形態において、垂直軸は、本実施形態で見られるようにy軸よりむしろ、しばしばz軸と考えられる。なお、これは、一般的に、デバイスの機能及び動作並びに本発明の効果を変えるものではない。
【0044】
磁気選択フィールドは、一般に磁場勾配フィールドであって、力線50によって
図2において表されている。それは、選択フィールドを生成するzコイル対16の(水平)z軸22の方向において略一定の勾配を有し、この軸22においてアイソセンタ24で値0に達する。このフィールドフリーポイントを発端として(
図2では個別に図示せず。)、磁気選択フィールド50の磁界強さは、フィールドフリーポイントからの距離が大きくなるにつれて、3つの空間方向の全てで増大する。アイソセンタ24の周りの破線によって表されている第1サブゾーン又は領域52では、磁界強さは、そのサブゾーン52に存在する粒子の磁化が飽和されないほど小さく、一方、第2サブゾーン54(領域52の外側)に存在する粒子の磁化は飽和の状態にある。第2サブゾーン54では(すなわち、第1サブゾーン52の外側のスキャナの視野28の残りの部分では)、選択フィールドの磁界強さは、磁性粒子を飽和の状態に保つほど十分に強い。
【0045】
視野28内の2つのサブゾーン52、54(フィールドフリーポイントを含む。)の位置を変化させることによって、視野28における(全体の)磁化は変化する。視野28における磁化又は磁化によって影響を及ぼされる物理パラメータを決定することによって、視野28における磁性粒子の空間分布に関する情報が取得され得る。視野28における2つのサブゾーン52、54(フィールドフリーポイントを含む。)の相対的な空間位置を変化させるために、更なる磁場、すなわち、磁気駆動フィールド、及び、印加可能であるならば、磁気フォーカスフィールドが、選択フィールド50に重ね合わされる。
【0046】
駆動フィールドを生成するよう、時間に依存する電流I
D1は両方のxコイル12を流れるよう生成され、時間に依存する電流I
D2は両方のyコイル14を流れるよう生成され、時間に依存する電流I
D3は両方のzコイル16を流れるよう生成される。よって、3つのコイル対の夫々は、平行な円形コイル対としての機能を果たす。同様に、フォーカスフィールドを生成するよう、時間に依存する電流I
F1は両方のxコイル12を流れるよう生成され、時間に依存する電流I
F2は両方のyコイル14を流れるよう生成され、時間に依存する電流I
F3は両方のzコイル16を流れるよう生成される。
【0047】
zコイル対16は特別であることが留意されるべきである。それは、駆動及びフォーカスフィールドのその分担分のみならず、選択フィールドも生成する(当然、他の実施形態では、別個のコイルが設けられてよい。)。z±コイルを流れる電流はI
D3+I
F3±I
Sである。残り2つのコイル対12、14を流れる電流はI
Dk+I
Fk(k=1,2)である。それらの配置及び対称性のために、3つのコイル対12、14、16はうまく分離されている。これは望まれている。
【0048】
逆平行の円形コイル対によって生成されるならば、選択フィールドはz軸に関して回転対称であり、そのz成分はzにおいてほぼ非線形であり、アイソセンタ24の周りのかなりのボリュームにおいてx及びyと無関係である。特に、選択フィールドは、アイソセンタで単一のフィールドフリーポイント(FFP)を有する。対照的に、平行な円形コイル対によって生成される駆動及びフォーカスフィールドに対する寄与は、アイソセンタ24の周りのかなりのボリュームにおいて空間的にほぼ一様であり、夫々のコイル対の軸と並行である。3つの平行な円形コイル対の全てによってまとめて生成される駆動及びフォーカスフィールドは、空間的にほぼ一様であり、ある最大強さになるまで、如何なる方向及び強さも与えられ得る。駆動及びフォーカスフィールドはまた、時間に依存する。フォーカスフィールドと駆動フィールドとの間の差は、フォーカスフィールドが時間において緩やかに変化し、大きい振幅を有し得る一方で、駆動フィールドが急激に変化し、小さい振幅を有する点である。それらのフィールドを違うように扱う物理的及び生理医学的理由が存在する。大きい振幅を有して急激に変化するフィールドは、生成するのが難しく、且つ、患者にとって潜在的に危険である。
【0049】
特定の実施形態において、FFPは、磁場が零であると考えられる数学的点と見なされ得る。磁界強さは、FFPからの距離が大きくなるにつれて増大し、増大率は、異なる方向ごとに異なり得る(例えば、デバイスの特定のレイアウトに依存する。)。磁界強さが、磁性粒子を飽和の状態に至らせるのに必要な磁界強さを下回る限りは、粒子は、デバイスによって測定される信号の信号生成に能動的に寄与する。そうでない場合は、粒子は飽和し、如何なる信号も生成しない。
【0050】
MPIスキャナの実施形態10は、やはりx、y及びz軸に沿って方向付けられた平行な円形コイルの少なくとも1つの更なる対、望ましくは3つの更なる対を備える。それらのコイル対は、
図1に図示されないが、受信コイルとなる。駆動及びフォーカスフィールドのためのコイル対12、14、16と同様に、それらの受信コイル対のうちの1つを流れる定電流によって生成される磁場は、視野内の空間的にほぼ一様であり、夫々のコイル対の軸に平行である。受信コイルは、うまく分離されていると考えられる。受信コイルにおいて引き起こされた時間に依存する電圧は、このコイルに取り付けられた受信器によって増幅され、サンプリングされる。もっと正確に言えば、この信号の非常に大きいダイナミックレンジに対処するよう、受信器は、受信された信号と基準信号との間の差をサンプリングする。受信器の伝達関数は、零ヘルツ(“DC”)から、期待される信号レベルがノイズレベルを下回る周波数まで非零である。代替的に、MPIスキャナは、専用の受信コイルを具備しない。代わりに、駆動フィールド送信コイルが、一体的な駆動−受信コイルを用いる本発明に従う場合のように受信コイルとして使用される。
【0051】
図1に示されるMPIスキャナの実施形態10は、z軸22に沿って、すなわち、選択フィールドの軸に沿って、円筒形ボア26を備える。全てのコイルはこのボア26の外に位置する。データ取得のために、撮像される患者(又は対象)は、関心のある患者のボリューム、すなわち、撮像されるべき患者(又は対象)のボリュームがスキャナの視野28、すなわち、スキャナが撮像することができるコンテンツを含むスキャナのボリュームによって取り囲まれるように、ボア26において置かれる。患者(又は対象)は、例えば、患者台に載置される。視野28は、例えば立方体、球、円筒形又は任意の形状といった、ボア26の内側にある幾何学的に単純なアイソセンタボリュームである。立方体の視野28が
図1には表されている。
【0052】
第1サブゾーン52のサイズは、磁気選択フィールドの勾配の強さと、飽和に必要とされる磁場の磁界強さとに依存し、また、飽和に必要とされる磁場の磁界強さは、磁性粒子に依存する。80A/mの磁界強さでの典型的な磁性粒子の十分な飽和と、50×10
3A/m
2に達する磁気選択フィールドの磁界強さの(所与の空間方向における)勾配とのために、粒子の磁化が飽和されない第1サブゾーン52は、(所与の空間方向において)約1mmの大きさを有する。
【0053】
関心のある患者のボリュームは、磁性ナノ粒子を含むと考えられる。例えば、腫瘍の画像診断の前に、磁性粒子は、例えば、患者(対象)の身体に注入されるか、又は別なふうに(例えば、経口で)患者に投与される磁性粒子を有する液体によって、関心のあるボリュームに提供される。
【0054】
一般に、磁性粒子を視野に持ち込むための様々な方法が存在する。特に、磁性粒子が取り込まれるべき身体の患者の場合に、磁性粒子は、外科的及び非外科的な方法の使用によって投与されてよく、専門家(例えば、医師)を必要とする方法及び医師を必要とせず、例えば、素人又は当業者又は患者自身によって実行され得る方法の両方がある。外科的方法の中には、潜在的に危険でなく及び/又は安全な日常的なインターベンション(例えば、血管へのトレーサの注入のような侵襲的なステップを伴う。)、すなわち、実行されるために相当な職業上の医療専門知識を必要とせず且つ深刻な健康リスクを伴わないインターベンションがある。更に、嚥下又は吸入のような非外科的な方法が適用可能である。
【0055】
一般に、磁性粒子は、データ取得の実際のステップが実行される前に事前供給又は事前投与される。実施形態では、なお、更なる磁性粒子が視野内に供給/投与されることも可能である。
【0056】
磁性粒子の実施形態は、例えば、5nmの厚さを有し、例えば、鉄ニッケル合金から成る軟磁性層を設けられているガラスの球形基板を有する。この層は、例えば、化学的及び/又は物理的に浸食性の環境、例えば、酸に対して粒子を保護するコーティング層によって、覆われてよい。そのような粒子の磁化の飽和に必要とされる磁気選択フィールド50の磁界強さは、様々なパラメータ、例えば、粒子の直径、磁性層に使用される磁性材料、及び他のパラメータに依存する。
【0057】
例えば、そのような磁性粒子が10μmの直径を有する場合に、約800A/mの磁場(1mTの磁束密度におおよそ対応する。)が必要とされ、一方、100μmの直径の場合では、80A/mの磁場で足りる。より一層小さい値は、より低い飽和磁化を有する材料のコーティングが選択される場合又は層の厚さが低減される場合に得られる。
【0058】
実際に、リゾビスト(登録商標)の名で市販されている磁性粒子(又は同様の磁性粒子)がしばしば使用されており、この磁性粒子は、磁性粒子のコアを有するか、又は大きい球として形成され、例えば40又は60nmといったナノメートルの範囲の直径を有する。
【0059】
一般的に使用可能な磁性粒子及び粒子組成の更なる詳細については、欧州特許出願公開第1224542号明細書、国際公開第2004/091386号パンフレット、国際公開第2004/091390号パンフレット、国際公開第2004/091394号パンフレット、国際公開第2004/091395号パンフレット、国際公開第2004/091396号パンフレット、国際公開第2004/091397号パンフレット、国際公開第2004/091398号パンフレット、国際公開第2004/091408号パンフレットの対応する部分がこれにより参照され、参照により本願に援用される。それらの文献において、全般にMPI方法の更なる詳細が同様に見つけられ得る。
【0060】
データ取得の間、x、y及びzコイル対12、14、16は、位置及び時間に依存する磁場、印加磁場を生成する。これは、適切な電流を磁場生成コイルを通して導くことによって達成される。実質的に、駆動及びフォーカスフィールドは、FFPが、走査ボリューム、すなわち、視野の上位集合をトレースする事前に選択されたFFP軌跡に沿って動くように、選択フィールドを押しやる。印加磁場は、患者内の磁性ナノ粒子を方向付ける。印加磁場が変化すると、結果として生じる磁化も、それが印加磁場に非線形に応答するにもかかわらず、変化する。変化する印加磁場と変化する磁化との和は、x
k軸に沿った受信コイル対の端子間に、時間に依存する電圧V
kを引き起こす。付随する受信器は、この電圧信号S
kに変換し、更に処理する。
【0061】
図1に示される第1実施形態10と同様に、
図3に示されるMPIスキャナの第2実施形態30は、3つの円形の、相互に直交したコイル対32、34、36を備えるが、それらのコイル対32、34、36は、選択フィールド及びフォーカスフィールドしか生成しない。zコイル36は、先と同じく選択フィールドを生成するコイルであって、強磁性材料37で満たされている。この実施形態30のz軸42は垂直に方向付けられており、一方、x及びy軸38、40は水平に方向付けられている。スキャナのボア46はx軸38と並行であり、よって、選択フィールドの軸42に垂直である。駆動フィールドは、x軸38に沿ったソレノイド(図示せず)によって且つ残り2つの軸40、42に沿ったサドルコイルの対(図示せず。)によって生成される。それらのコイルは、ボアを形成する間の周りに巻き付けられている。駆動フィールドコイルは受信コイルとしても働く。
【0062】
かかる実施形態の2、3の典型的なパラメータを与えるよう、選択フィールドGのz勾配はG/μ
0=2.5T/mを有する。ここで、μ
0は真空の透磁率である。駆動フィールドの時間周波数スペクトルは、25kHz前後の狭帯域(最大約150kHz)において集中している。受信信号の有用な周波数スペクトルは50kHzから1MHz(最終的に最大約15MHzまで)の間にある。ボアは120mmの直径を有する。ボア46に合う最大の立方体28は、120mm/√2≒84mmのエッジ長さを有する。
【0063】
磁場生成コイルの構成は当該技術において一般的に知られているので(例えば、磁気共鳴イメージングの静B
0フィールドから)、この話題は、ここでこれ以上詳述される必要はない。
【0064】
選択フィールドの生成のための代替の実施形態では、永久磁石(図示せず。)が使用されてよい。そのような(対向する)永久磁石の2つの極の間の空間には、
図2に示されたのと同様である、すなわち、相対する極が同じ極性を有する場合の、磁場が形成される。他の代替の実施形態では、選択フィールドは、少なくとも1つの永久磁石と少なくとも1つのコイルとの混合体によって生成され得る。
【0065】
図4は、MPI装置の一般的な外側レイアウトの2つの実施形態200、201を示す。
図4Aは、2つの選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220を有する提案されるMPI装置200の実施形態を示す、コイルユニット210、220は、基本的に同じであって、それらの間に形成される検査領域230の相対する側に配置される。更に、駆動フィールドコイルユニット240は、選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220の間に配置され、それらは、患者(図示せず。)の関心領域の周りに位置する。選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220は、前述の磁気選択フィールド及び磁気フォーカスフィールドに相当する結合磁場を生成するためのいくつかの選択及びフォーカスフィールドコイルを有する。特に、夫々の選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220は、選択及びフォーカスフィールドコイルの望ましくは同一の組を有する。選択及びフォーカスフィールドコイルの詳細は以下で説明される。
【0066】
駆動フィールドコイルユニット240は、磁気駆動フィールドを生成するための複数の駆動フィールドコイルを有する。それらの駆動フィールドコイルは、駆動フィールドコイルのいくつかの対、特に、空間内の3つの方向の夫々において磁場を生成するための1対の駆動フィールドコイルを有してよい。実施形態において、駆動フィールドコイルユニット240は、空間内の2つの異なる方向についての2対のサドルコイルと、患者の長手軸において磁場を生成するための1つのソレノイドコイルとを有する。
【0067】
選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220は、概して、保持ユニット(図示せず。)又は部屋の壁に取り付けられる。望ましくは、選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220が夫々のコイルを担持する磁極片を有する場合に、保持ユニットは選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220を機械的に保持するのみならず、更には、2つの選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220の磁極片を接続する磁束のための経路を提供する。
【0068】
図4Aに示されるように、2つの選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220は、駆動フィールドコイルユニット240の駆動フィールドコイルによって生成された磁場から選択及びフォーカスフィールドコイルを遮へいするための遮へい層211、221を夫々有する。
【0069】
図4Bに示されるMPI装置201の実施形態では、ただ1つの選択及びフォーカスフィールドコイルユニット220のみが、駆動フィールドコイルユニット240とともに設けられている。概して、選択及びフォーカスフィールドコイルユニットは1つあれば、必要とされる結合選択及びフォーカスフィールドを生成するのに十分である。よって、単一の選択及びフォーカスフィールドコイルユニット220は、患者が検査のために載置される患者台(図示せず。)に組み込まれてよい。望ましくは、駆動フィールドコイルユニット240の駆動フィールドコイルは、例えば、可撓性のコイル要素として、前もって既に患者の身体の周りに配置されてよい。他の実施では、駆動フィールドコイルユニット240は、開放され、例えば、軸方向において
図4Bに示された分離線243、244によって示されるように2つのサブユニット241、242に分けられてよく、それにより、患者はその間に位置することができ、駆動フィールドコイルサブユニット241、242は、次いで、連結され得る。
【0070】
MPI装置の更なる他の実施形態では、更に多い選択及びフォーカスフィールドコイルユニットが設けられてよく、それらは、望ましくは、検査領域230の周りに一様分布に従って配置される。しかし、使用される選択及びフォーカスフィールドコイルユニットが多ければ多いほど、その中に患者を置くための且つ医療補助者又は医師によって検査中に患者自身にアクセスするための検査領域のアクセス可能性はますます制限される。
【0071】
図5は、本発明に従うMPI装置100の概略ブロック図を示す。上述された磁性粒子イメージングの一般原理は、別段の定めがない限り、有効であり、本実施形態に同様に適用可能である。
【0072】
図5に示される装置100の実施形態は、所望の磁場を生成するための様々なコイルを有する。最初に、MPIにおけるコイル及びそれらの機能が説明されるべきである。
【0073】
結合した磁気選択及びフォーカスフィールドを生成するために、選択及びフォーカス要素110が設けられる。磁気選択及びフォーカスフィールドは、磁性粒子の磁化が飽和されない低い磁界強さを有する第1サブゾーン(
図2の52)と、磁性粒子の磁化が飽和されるより高い磁界強さを有する第2サブゾーン(
図2の54)とが、検査領域230の小さい部分である視野28において形成されるような磁界強さの空間内パターンを有する。これは、通常は、磁気選択フィールドの使用によって達成される。更に、磁気選択及びフォーカスフィールドの使用によって、検査領域230内の視野28の空間内の位置は、磁気フォーカスフィールドの使用によって通常行われるように、変更され得る。
【0074】
選択及びフォーカス要素110は、少なくともひと組の選択及びフォーカスフィールドコイル114と、磁気選択及びフォーカスフィールドの生成を制御するために少なくともひと組の選択及びフォーカスフィールドコイル114(
図4A、4Bに示される選択及びフォーカスフィールドコイルユニット210、220のうちの1つに相当する。)へ供給される選択及びフォーカスフィールド電流を生成する選択及びフォーカスフィールド生成ユニット112とを有する。望ましくは、別個の生成サブユニットが、少なくともひと組の選択及びフォーカスフィールドコイル114の夫々のコイル要素(又はコイル要素の各対)について設けられる。選択及びフォーカスフィールド生成ユニット112は、磁気選択及びフォーカスフィールドに対する各コイルの寄与の磁界強さ及び勾配強さを個々に設定するよう夫々のコイル要素に界磁電流を供給する可変電流源(一般に増幅器を含む。)及びフィルタユニットを有する。フィルタユニットは省略されてもよいことが留意されるべきである。他の実施形態では、別々の選択要素及びフォーカス要素、すなわち、選択フィールド生成ユニット、フォーカスフィールド生成ユニット、選択フィールドコイル及びフォーカスフィールドコイルが、別個の要素として設けられる。
【0075】
磁気駆動フィールドを生成するために、装置100は、駆動フィールド信号生成ユニット122及びコイル124の組(
図4A、4Bに示される駆動コイルユニット240に相当する。)を有し、磁気駆動フィールドによって視野内の2つのサブゾーンの空間内位置及び/又はサイズを変化させて、磁性粒子の磁化が局所的に変化するようにする駆動要素120を更に有する。上述されたように、駆動フィールドコイル124は、望ましくは、対向して配置されたサドルコイルの2つの組125、126と、1つのソレノイドコイル127とを有する。他の実施、例えば、3対のコイル要素も可能である。
【0076】
駆動フィールド信号生成ユニット122は、望ましくは、駆動フィールドコイルの組124の各コイル要素(又は少なくとも1対のコイル要素)のための別個の駆動フィールド信号生成サブユニットを有する。駆動フィールド信号生成ユニット122は、望ましくは、夫々の駆動フィールドコイルの時間に依存する駆動フィールド電流を供給するための駆動フィールド電流源(望ましくは、電流増幅器を含む。)及びフィルタユニット(本発明によれば省略されてもよい。)を有する。
【0077】
選択及びフォーカスフィールド信号生成ユニット112及び駆動フィールド信号生成ユニット122は、望ましくは、制御ユニット150によって制御される。制御ユニット150は、望ましくは、選択フィールドの全ての空間点の勾配強さの和及び磁界強さの和が所定のレベルに設定されるように選択及びフォーカスフィールド信号生成ユニット112を制御する。このために、制御ユニット150は、また、MPI装置の所望の用途に従ってユーザによって制御命令を供給され得るが、これは、望ましくは、本発明に従って省略される。
【0078】
MPI装置100を用いて検査領域(又は検査領域内の関心領域)における磁性粒子の空間分布を決定するために、特に、関心領域の画像を得るよう、特定の受信コイルにおける信号検出受信要素148と、受信要素148によって検出された信号を受信する信号受信ユニット140とは設けられる。望ましくは、3つの受信コイル148及び3つの受信ユニット140(受信コイルごとに1つ)が実際に設けられるが、3つよりも多い受信コイル及び受信ユニットも使用され得る。その場合に、取得された検出信号は3次元ではなく、K次元であり、Kは受信コイルの数である。
【0079】
信号受信ユニット140は、受信された検出信号にフィルタをかけるフィルタユニット142を有する。このフィルタリングの目的は、2つの部分領域(52、54)の位置の変化によって影響を及ぼされる検査領域内の磁化によって引き起こされる測定値を他の干渉信号から分離することである。このために、フィルタユニット142は、例えば、受信コイル148が動作する時間周波数よりも小さいか、又はその時間周波数の2倍よりも小さい時間周波数を有する信号がフィルタユニット142を通らないように設計されてよい。信号は、次いで、増幅器ユニット144を介してアナログ/デジタルコンバータ146(ADC)へ送信される。
【0080】
アナログ/デジタルコンバータ146によって生成されたデジタル信号は、画像処理ユニット(再構成手段とも呼ばれる。)152へ供給される。画像処理ユニット152は、それらの信号と、検査領域における第1磁場の第1部分領域52が夫々の信号の受信の間に推測され、画像処理ユニット152が制御ユニット150から取得する夫々の位置とから、磁性粒子の空間分布を再構成する。磁性粒子の再構成された空間分布は、最終的に、制御手段150を介してコンピュータ154へ送信される。コンピュータ154は、それをモニタ156で表示する。このように、画像は、検査領域の視野における磁性粒子の部分を示すよう表示され得る。
【0081】
MPI装置100の他の用途において、例えば、磁性粒子を操作するために(例えば、温熱治療のために)、又は(例えば、カテーテルを動かすためにカテーテルに付属しているか、又は薬を特定の場所へ動かすために薬に付属している)磁性粒子を動かすために、受信要素は省略されてもよく、あるいは、単に使用されなくてよい。
【0082】
更に、入力ユニット158は、任意に、設けられてよい(例えば、キーボード)。従って、ユーザは、最高の分解能の所望の方向を設定することが可能であってよく、モニタ156においてアクションの領域の夫々の画像を受け取る。最高の分解能が必要とされる重要な方向が、ユーザによって最初に設定された方向から外れる場合に、ユーザは、改善されたイメージング分解能を有する更なる画像を生成するために、依然として手動により方向を変えることができる。この分解能改善プロセスは、制御ユニット150及びコンピュータ154によって自動的に操作されてもよい。制御ユニット150は、この実施形態において、ユーザによって開始値として設定されるか又は自動的に推定される第1の方向において勾配フィールドを設定する。勾配フィールドの方向は、次いで、それによって受信される画像の分解能が、コンピュータ154によって比較されるときに最大になり、それ以上改善されなくなるまで、段階的に変更される。従って、最も重要な方向は、とり得る最高の分解能を受けるために見つけられて自動的に適応され得る。駆動フィールド励起によってカバーされるボリュームよりもずっと大きい撮像ボリュームの高速カバレッジのために、迅速なフォーカスフィールド変化が用いられ得る。なお、1符号化シーケンスの間の結果として得られる空間シフトが、再構成された空間分解能よりも大きい場合は、画像アーチファクトが現れる。本発明は、データ処理側での動作を補償して、モーションアーチファクトが全くないか又は低減された画像を再構成する。
【0083】
最大数百mm/sの高いFOV速度のために、アーチファクトは、画像再構成のために使用される定常システム関数の時間領域表現に(例えば、線形な)シフトを加えることによって、低減され得る。定常システム関数は、通常は、可変なフォーカスフィールドがない場合に取得され、記憶ユニット151、例えば、ハードディスク又は半導体メモリのようなメモリ素子において周波数領域表現で記憶される。この“定常”システム関数は、このようにして、特定のMPI装置について前もって取得され、後の使用のために記憶される。
【0084】
提案されるシステム及び方法の好適な実施形態では、検出信号の実際のデータ取得の間又はその後に、記憶されている定常システム関数は、フーリエ変換を介して時間領域へと変換される。軌跡に沿ったフィールドフリーポイント(FFP)の移動の間の異なった時点を表すシーケンシャル・ボリュームは、次いで、可変なフォーカスフィールドによって引き起こされるFFPシフトに従ってシフトされる。その後に、得られた拡張システム関数は、標準的な再構成プロシージャが得られた拡張システム関数を用いて適用される周波数領域へと戻される。このように、符号化期間に対するFOVの急速なシフトは補償され、アーチファクトは低減されるか、又は完全に回避される。
【0085】
適切なシステム関数の生成を可能にする如何なる他の表現も同様に使用され得る(例えば、シフト補正がフーリエシフト定理を介して実行される時間領域対フーリエ変換された空間領域、又は時間対コサイン変換された空間領域)。
【0086】
磁気フォーカスフィールドは、対応する生成ユニット及び/又は制御ユニットに一般に知られており、それにより、処理ユニット152は、磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされるFFPの移動を決定することができ、よって、拡張システム関数を得るよう定常システム関数の必要なシフトを計算することができる。なお、更に渦電流を補償するよう、他の実施形態では、測定手段160が磁気フォーカスフィールドを測定するために設けられる。このとき、処理要素152は、測定された磁気フォーカスフィールドによって引き起こされる視野の位置の変化に比例して定常システム関数の時間領域表現をシフトするために、測定された磁気フォーカスフィールドを使用するよう構成される。測定手段160は、望ましくはホールセンサを有する。
【0087】
図6は、線形対角シフトを適用しない場合及び適用した後のリサジュー軌跡の2つのビューを表す図を示す。
図6は、特に、1つの3Dリサジューサイクルの進路が一定の速度での高速な並進運動と重ね合わされる場合にFFP経路が如何にして変化するのかを示す。元のリサジュー軌跡について、
図6Aは上面図を示し、
図6Bは斜位像を示す。線形対角シフトが適用された後のリサジュー軌跡について、
図6Cは上面図を示し、
図6Dは斜位像を示し、リサジュー軌跡がより大きいボリュームにわたって散開していることが示されている。再構成のために、定常システム関数の静的な時間領域表現の個々のボリュームは然るべくシフトされる。これは
図7に表される。
【0088】
図7は、拡張システム関数を得るための内挿/パディングがない場合及びある場合の定常システム関数のいくつかの時間領域表現の図を示す。特に、
図7A、7B、7Cは、測定された定常システム関数の異なる時間フレームを示し、
図7D、7E、7Fは、リサジュー軌跡に適用された線形対角シフトを定常システム関数の夫々の時間フレームに適用することによって得られる生成された拡張システム関数の異なる時間フレームを示す。明らかなように、拡張システム関数によってカバーされるボリュームはより大きく、そのより大きいボリューム内の定常システム関数の夫々の時間フレームの位置は、時間フレームごとに変化する。このより大きいボリュームは、望ましくは、動きの方向におけるパディング及び/又は内挿によって得られる。望ましくは、定常システム関数の夫々の時間フレームは、正確な空間位置でより大きいボリュームの時間フレームにコピーされ、残りのボリュームは、零で(又は外挿ボクセルで)満たされる。この例において、パディングされたボクセルは零で満たされる。なお、アーチファクトを低減するよう、残りのボクセルは、例えば、ボリュームのエッジへ向かって滑らかに減衰しながら、隣接する測定値から外挿される値で満たされる。
【0089】
定常システム関数を取得する上記の実施形態は、フォーカスフィールドの印加に応答して視野の実際に適用される動きに従って後に(“オンザフライ”で)変更されるものであって、異なるシフト方向及び速度を柔軟に扱うことを可能にするという利点を提供する。
【0090】
一般に、線形シフトだけでなく、加速及び/又は曲線運動も、磁場の発生が知られる場合に、補償され得る。空間に依存する磁場ひずみを最小限とするよう、定常システム関数は、対象データ(すなわち、検出データ)が取得される位置の近くで測定されているべきである。
【0091】
図6C及び6Dにおいて、拡張されたFOVはもはや一様にカバーされないことが分かる。1リサジューサイクルの間のFFP経路によって対象を完全にカバーするよう、更なる実施形態では、再構成された軌跡の開始及び終了点をシフトすることが提案される。例えば、対象がサイクルの後半及び次のサイクルの前半によってカバーされる場合に、リサジューサイクルの半分の時間シフトによって、対象は再構成されたボリュームの中心に置かれる。例えば、いくつかのリサジューサイクルにわたって延在するように空間シフトが行われる場合に、例えば、t=TR/2からt=3×TR/2までの後半部分を除き、t=0からt=TR(TRはサイクルの存続期間である。)まで1つの軌跡を再構成しないことが望ましいことがある。これは、その後半の時間部分の間の方が、対象のサンプリング(すなわち、空間カバレッジ)がより良いからである。更には、t=a×TRからt=b×TR(a<b)までの任意の時間部分を再構成することが可能である。
【0092】
このように、異なる時間シフトは、最適条件を見つけるよう再構成され得る。加えて、より大きいボリュームを単一のステップで再構成することを目的として、シフトされた(拡張された)システム関数及び夫々のオブジェクト時間信号を連結させることが有用であり得る。よって、シフトされた(拡張された)システム関数の時間表現は、検出信号の取得の順序に従って順に配置される。任意に長い拡張システム関数は、このように形成される。
【0093】
適用されるシフトが非常に速い場合は、FFPによってカバーされる経路間に大きなギャップが起こり得る。これは、局所的な空間分解能を低下させ得る。よって、他の実施形態では、所与のフォーカスシフトのための最大ギャップのサイズ及び位置を決定するようアルゴリズムが適用される。この情報は、より緩やかな又は他のフォーカスフィールド変動が選択されるべきであるとの警告としてユーザに示され得る(例えば、大きすぎるか又は見当外れのギャップの場合)。より一般的には、軌跡密度の何らかの指標を表すマップが、局所的な画像品質を示すよう画像とともに表示され得る。
【0094】
シフト補正された(拡張された)システム関数が、それが測定された位置をはるかに超えて延在する場合に、中心を外れた磁場ひずみ(一定の選択フィールド勾配からの偏差、フォーカス及び駆動フィールドにおける非一様性)が実施形態において考慮に入れられる。シミュレーションされた又は実験的に決定されたフィールドマップを用いて、適切なひずみ補正が、他の実施形態に従って、再構成された画像に適用される。更に、渦電流により発生する動的な磁場ひずみは、測定又はモデリングされ、次いで、時間に依存する画像ひずみの補正のために適用され得る。
【0095】
絶対的なFFP速度は駆動フィールドへの動的フォーカスフィールドの付加によってわずかに変更されるので、空間信号応答パターンは、シフトされるだけでなく、振幅がわずかに変更される。それを補償するよう、絶対的なFFP速度(フォーカス+駆動フィールド効果)に基づく振幅補正が好適な実施形態に従って導入される。信号強度は、FFPの速度に実質的に比例する。この場合に、2つの状況(動的対静的)の間の信号差は、シミュレーション又は測定から取り出されてよい。
【0096】
更なる他の実施形態では、単一の定常システム関数のみが前もって取得及び記憶されるのではなく、視野の異なる位置についての異なる定常システム関数、及び/又はいくつかの拡張システム関数も、更なる並進運動により予め取得される。すなわち、複数の拡張システム関数は、異なる磁気フォーカスフィールドが適用される間に、前もって取得される(望ましくは、拡張システム関数は、磁気駆動フィールド及び磁気フォーカスフィールドの典型的な結合について取得される。)。すなわち、1つのオプションとして、複数の拡張システム関数は、異なる磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる視野の位置の異なる変化に比例して定常システム関数の時間領域表現をシフトすることによって生成されるか、あるいは、視野の位置の異なる変化が異なる磁気フォーカスフィールドの印加によって引き起こされる間に取得される。
【0097】
この場合に、磁気フォーカスフィールドの知識は、最適な拡張システム関数を選択又は構成するために使用されてよい。他の実施形態では、測定手段160(例えば、ホールセンサ)が磁気フォーカスフィールドを測定するために設けられてよく、処理要素152は、記憶されている複数の拡張システム関数から拡張システム関数を選択又は構成するために、測定された磁気フォーカスフィールドを使用するよう構成される。
【0098】
このように、実施形態において、最も適切な拡張システム関数は、前もって取得された定常及び/又は拡張システム関数のカタログから構成(又は組み立て)されてよい。例えば、軌跡の各時間部分について、比較され得る時間部分について類似した進捗状況を有するシステム関数が検索され得る。この部分は、拡張システム関数において使用され得る。時間部分の長さは、磁気緩和時間の範囲にあるべきである。次いで、部分は、最終的に望まれる拡張システム関数を形成するようその後に配置される。
【0099】
時間領域のシステム関数は、様々な異なるフィールドフリーポイントの運動方向について起こる点広がり関数(PSF;point-spread function)のカタログと見なされ得る。理想的には、このカタログから、任意の軌跡からデータを再構成するのに必要な全てのPSFが収集され、適切なシステム関数へと結合され得る。FFPの異なる空間位置を補償するよう、PSFは然るべくシフトされるべきである。また、PSF振幅はFFP速度に依存するので、カタログは、異なる速度ごとにPSFを含むべきであり、あるいは、異なる速度ごとの振幅補正が導入されるべきである。更に、非ランジュバン(non-Langevin)粒子に関して、FFPの運動履歴は、ある時点でPSFに影響を及ぼす。よって、ある期間(通常は磁気緩和時間によって定義される。)にわたる前段階は、その影響を補償するために知られるべきである。
【0100】
このカタログアプローチの簡単な実施は、対象の測定のために使用される軌跡に酷似している軌跡についてカタログ(すなわち、システム関数)を測定することである。例えば、フォーカスフィールドがない場合に得られた1つ以上の定常システム関数は、フォーカスフィールドの変動の存在下で取得されたデータの再構成のために拡張システムを生成するためのカタログとして使用され得る。この簡単な実施では、カタログは、時間対空間領域において表現される。なお、適切なシステム関数の生成を可能にする如何なる他の表現も使用されてよい(例えば、シフト補正がフーリエシフト理論を介して実行される時間領域対フーリエ変換された空間領域、又は時間対コサイン変換された空間領域)。
【0101】
測定は、実験的な臨床前の実証システムを用いて行われた。3つの直交する駆動フィールドは、振幅16mTで且つx、y及びzチャネルについて夫々周波数24.5、26.0及び25.3kHzで印加された。永久磁石は、dBx/dx=dBy/dy=1.25T/m及びdBz/dz=2.50T/mの選択フィールド勾配を生成し、それにより、駆動フィールドは、25.6×25.6×12.8mm
3のFOVを符号化する。撮像のために、5つの平行な管から成るファントムは、50mmol(Fe)/lの濃度に対応する1:10の希釈でリゾビストにより満たされた。ボリュームは、46.4Hzのレートで取得された。画像再構成のために、システム関数は較正スキャンにおいて決定された。このとき、純粋なリゾビストの小さな円筒サンプル(l=2mm,φ=1mm)の応答は、1.2×1.2×1.0mm
3の間隔を有して30×30×20の長方形グリッドにおいて記録された。撮像の間、フォーカスフィールドは、約33、66、132、264、528、1056、2112、及び4224mm/sのFOVシフト速度に夫々対応するレートでスイープされた。フォーカスフィールドは、x及びyチャネルにおいて同時に変更され、静止ファントムにわたるFOVの対角スイープをもたらした。
【0102】
図8は、ファントムにわたるスイープの間の1つのボリュームからの対角スライスを示す。
図8Aに関して、符号化時間ごとのシフト(33mm/sの速度について0.7mm)は分解能を下回ったままであり、一方、
図8Bに関して、それは分解能を約20上回り(1056mm/sの速度について22.7mm)、大規模な画像アーチファクトをもたらす。
図8Cは、1符号化期間の間のFOVシフトに比例して時間領域の信号応答を空間的にシフトすることによって適応されたシステム関数を用いた再構成を示す。この方策によって、アーチファクトはほぼ完全に除去される。
【0103】
結論として、撮像の間にFOVをシフトする場合に、アーチファクトは、ボリューム符号化時間ごとのシフトが分解能よりも大きいときに現れる。約1m/sのシフト速度までは、それらは、急速な移動についてシフト関数を補償することによって除去され得る。高速な連続したFOVシフトは、単一の撮像ボリュームを関心領域へ速やかに向けるために、又はFOVを関心領域にわたって繰り返しスイープすることによって大きな空間カバレッジを達成するために、使用されてよい。
【0104】
提案される発明は、撮像ボリュームのフォーカスが空間において素早く動かされる間の撮像を可能にする。これは、短時間で大きなボリュームをカバーすることを目的として、例えば、一定の変化率(一定のFOVシフト速度)又は正弦場変動によって、可変磁場を用いるフォーカスフィールド・シーケンスの実施を可能にする。加えて、方法は、これまでは捨てられるべきであった、フォーカスがステーション間を動かされる時間インターバルから画像を生成するために、マルチステーションイメージング(例えば、J. Rahmer et al.,“Results on Rapid 3D Magnetic Particle Imaging with a Large Field of View”,Proc. ISMRM,19:629,2011年において記載される。)において使用され得る。このように、取得された全ての情報は、SNR及び時間分解能を最適化するために使用され得る。
【0105】
システム関数をシフトに適応させる方法は、FOVと対象との間の相対運動の一般的な場合に適用される。すなわち、FOVは静止しているが、対象は素早く動く場合に、同じ補正が適用され得る。
【0106】
上記の様々な考えは、単一の又は全ての駆動フィールドコイルについて夫々独立して使用され得るが、望ましくは、本発明に従うMPI装置の好適な実施形態では一緒に使用される。
【0107】
上記におけるリサジュー軌跡への言及は、単なる一例として理解されるべきである。本発明は、他の軌跡が使用される場合にも適用されてよい。
【0108】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び記載されてきたが、そのような図示及び記載は、限定ではなく実例又は例示と見なされるべきであり、本発明は、開示されている実施形態に制限されない。開示されている実施形態に対する他の変形は、図面、本開示、及び特許請求の範囲の検討から、請求されている発明を実施する際に当業者に理解、達成され得る。
【0109】
コンピュータプログラムは、例えば、他のハードウェアとともに又はその部分として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な非一時的媒体において記憶/分配されてよいが、他の形態においても、例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して、分配されてよい。
【0110】
特許請求の範囲において、語「有する(comprising)」は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外しない。単一の要素又は他のユニットは、特許請求の範囲において挙げられているいくつかの項目の機能を満たしてよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用されないこと示すものではない。
【0111】
特許請求の範囲における参照符号は、適用範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。