(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自転と公転の回転速度を独立して制御するためには、攪拌・脱泡装置に公転用電動モータと自転用電動モータの2つのモータを備え、更にそれぞれの電動モータに電力を供給し、両者を同時に、且つ高精度に駆動制御するための制御システムを開発し、攪拌・脱泡装置に搭載する必要がある。そのため、例えば特許文献3においては、モータ制御機構に駆動制御回路に加え回生抵抗制御回路を搭載し、複雑な制御技術を採用している。
また、様々な材料の攪拌・脱泡処理の要望に対応するために、公転及び自転の回転方向と回転数の高度な制御技術が必要となる。
そのため、モータと制御システムとを有する回転駆動系を2系統備えた攪拌・脱泡装置が、高額化するという問題がある。
【0006】
上記課題を鑑み、本発明は、高額な2系統の回転駆動系を使用することなく、公転と自転の回転運動を独立して制御し、公転に対して自転の回転方向を変更することが可能な、良好な攪拌、脱泡特性を有する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる攪拌・脱泡装置は、
回転方向が可変な回転運動駆動源と、
回転運動の制動装置と、
前記回転運動駆動源の回転力により公転軸を中心に回転する第1の回転体と、
前記回転運動駆動源の回転力により公転軸を中心に回転するとともに制動装置の制動力が与えられる第2の回転体と、
前記第1の回転体に回転自在に軸支された容器ホルダーと、
前記第1の回転体とともに回転する回転運動伝達部とを備え、
前記回転運動伝達部は、前記容器ホルダーに公転運動を伝達するとともに、
前記第2の回転体に対する前記回転運動伝達部の公転運動を、前記第1の回転体に対して一定の回転方向の自転運動に変換し、前記容器ホルダーに伝達することを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる回転運動伝達装置は、
第1の自転体及び第2の自転体と
第1の回転運動変換素子及び第2の回転運動変換素子と、
所定の方向の回転運動のみを伝達可能にする第1の選択的回転運動伝達素子と、
前記第1の選択的回転運動伝達素子とは反対方向の回転運動のみを伝達可能にする第2の選択的回転運動伝達素子とを備え、
前記第2の自転体と前記第1の自転体とは力学的に連結し、
前記第1の回転運動変換素子は前記第1の選択的回転運動伝達素子を介して前記第1の自転体と連結されており、
前記第2の回転運動変換素子は前記第2の選択的回転運動伝達素子を介して前記第2の自転体と連結されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる回転運動伝達装置は、
前記第1の自転体、前記第2の自転体、前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子は、それぞれ歯車からなり、
前記第1の選択的回転運動伝達素子及び前記第2の選択的回転運動伝達素子は、一方向回転動力伝達装置であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる攪拌・脱泡装置は、
前記回転運動伝達部は、前記回転運動伝達装置からなり、
前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子は、前記第2の回転体と力学的に連結し、
前記第1の自転体と前記容器ホルダーとは力学的に連結していることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる攪拌・脱泡装置は、
前記第2の回転体は、歯車からなり、
前記容器ホルダーには、自転歯車が結合されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成とすることにより本発明にかかる攪拌・脱泡装置は、回転運動駆動源(モータ3)の回転駆動力によって第1の回転体(公転歯車5)と第2の回転体(太陽歯車11)とを回転させ、第1の回転体と同期して第1の自転体(第1の中間歯車15a、15b)、第2の自転体(第2の中間歯車17a、17b)、容器ホルダー(2a、2b)、第1の回転運動変換素子(第1の遊星歯車12a、12b)及び第2の回転運動変換素子(第2の遊星歯車13a、13b)を公転させ、制動装置(8)により回転数を制御された第2の回転体(太陽歯車11)と力学的に連結した第1の回転運動変換素子(第1の遊星歯車12a、12b)及び第2の回転運動変換素子(第2の遊星歯車13a、13b)により発生した自転運動を、第1の回転体(公転歯車5)の回転方向に応じて第1の選択的回転運動伝達素子(第1の一方向クラッチ14a、14b)及び第2の選択的回転運動伝達素子(第2の一方向クラッチ16a、16b)により、選択的に第1の自転体(第1の中間歯車15a、15b)又は第2の自転体(第2の中間歯車17a、17b)に伝達し、第1の自転体(第1の中間歯車15a、15b)から容器ホルダー(2a、2b)に、又は第2の自転体(第2の中間歯車17a、17b)から第1の自転体(第1の中間歯車15a、15b)を介して容器ホルダー(2a、2b)に自転運動を伝達することができる。
その結果、容器ホルダー(2a、2b)に保持された容器内に収容された被処理物に対して与える公転運動と自転運動とを独立して制御するとともに、第1の回転体に対して(第1の回転体の静止系に対して)一定の回転方向の自転運動を容器内の被処理物に加えることができ、公転の回転方向を変更することにより、相対的に公転に対して自転の回転方向を反転させることができる。
従来の高額な回転運動駆動系を2系統用いること無く攪拌・脱泡装置を提供できるとともに、公転運動と自転運動とを効果的に組み合わせ、良好な攪拌、脱泡処理を容易に実現できる。
【0013】
さらに、第1の自転体、前記第2の自転体、前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子及び第2の回転体を歯車により構成し、前記第1の選択的回転運動伝達素子及び前記第2の選択的回転運動伝達素子を、一方向回転動力伝達装置により構成することにより、各歯車同士の力学的な連結は、それぞれを噛合することにより容易に実現でき、容器ホルダー、第1の自転体、第2の自転体、第1の回転運動変換素子及び第2の回転運動変換素子の配置の自由度が向上し、装置の省スペース化が可能であり、また自転運動の制御範囲の設定の自由度が向上し、さらに被処理物へ与える遠心力の制御範囲の変更も可能となる。
【0014】
また、本発明にかかる攪拌・脱泡装置は、
前記第1の回転運動変換素子によって前記回転運動伝達部の前記第2の回転体に対する公転運動から変換され、前記容器ホルダーに伝達された自転運動の回転数と、
前記第2の回転運動変換素子によって前記回転運動伝達部の前記第2の回転体に対する公転運動から変換され、前記容器ホルダーに伝達された自転運動の回転数とが異なることを特徴とする。
【0015】
このような構成とすることにより、攪拌・脱泡処理に対して、それぞれ最適な条件を見出すための自転及び公転の回転運動の制御範囲の設定の自由度が向上し、良好な攪拌・脱泡処理条件を得ることができる。
【0016】
本発明にかかる攪拌・脱泡方法は、
回転運動駆動源から付加された回転運動により、第1の回転体を回転させ、
前記第1の回転体に従動して第2の回転体を回転させるとともに、前記第2の回転体に制動力を加え、前記第2の回転体の回転数を前記第1の回転体の回転数以下に制御し、
第1の回転運動変換素子及び第2の回転運動変換素子を前記第1の回転体とともに回転させることにより、前記第2の回転体に対して前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子を公転運動させ、
前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子は、前記第2の回転体に対する公転運動から自転運動を発生させ、
前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子の前記第2の回転体に対する公転運動の方向が、所定の方向である場合、
第1の選択的回転運動伝達素子が前記第1の回転運動変換素子の公転運動及び自転運動を第1の自転体に伝達するとともに、
第2の選択的回転運動伝達素子が第2の自転体を自転自在に支持するとともに、第2の自転体に前記第2の回転運動変換素子の公転運動を伝達し、
前記第1の自転体が前記第2の自転体に自転運動を伝達し、
前記第1の回転運動変換素子及び前記第2の回転運動変換素子の前記第2の回転体に対する公転運動の方向が、前記所定の方向と反対方向である場合、
前記第2の選択的回転運動伝達素子が前記第2の回転運動変換素子の公転運動及び自転運動を前記第2の自転体に伝達するとともに、
前記第1の選択的回転運動伝達素子が前記第1の自転体を自転自在に支持するとともに、前記第1の選択的回転運動伝達素子の公転運動を前記第1の自転体に伝達し、
前記第2の自転体が第1の自転体に自転運動を伝達し、
前記第1の自転体及び前記第2の自転体の少なくとも1つが、被処理物を収容する容器に公転運動と自転運動とを伝達することにより、被処理物を公転運動させるとともに自転運動させ、攪拌・脱泡処理することを特徴とする。
【0017】
このような攪拌・脱泡方法とすることにより、良好な攪拌・脱泡処理を行うことができ、また、処理条件の最適化が容易になり、条件の最適化に要する労力、コストを低減することも可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、公転と自転の回転方向を相対的に逆転させ、かつ公転と自転の回転速度を独立制御することにより、効率的に攪拌、脱泡処理を行うことができる攪拌・脱泡装置を高額な2系統の回転駆動系を用いることなく提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は、いずれも本発明の要旨の認定において限定的な解釈を与えるものではない。また、同一又は同種の部材については同じ参照符号を付して、説明を省略することがある。
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明に係る攪拌・脱泡装置の構成およびその動作原理について、詳細に説明する。
【0022】
<装置構成>
図1(a)及び(b)は、それぞれ本実施形態の攪拌・脱泡装置1の主要構成の一部を示す斜視図及び上面図である。
図2は、
図1(b)のX−O−Y線における攪拌・脱泡装置1の断面を示し、
図3は
図1(b)のX−O−Z線における攪拌・脱泡装置1の断面の一部を示し、それぞれ攪拌・脱泡装置1内部の主要構成を示す。以下、
図1、
図2、
図3を参照し、攪拌・脱泡装置1の構成を詳細に説明する。
【0023】
攪拌・脱泡装置1は、被処理物を収容する容器を支持する容器ホルダー2a、2bと、容器ホルダー2a、2bの公転および自転運動のための回転運動の駆動源であるモータ3とを備える。モータ3の回転軸4の回転運動は、第1の回転体である公転歯車5に伝達される。伝達された回転運動により、容器ホルダー2a、2bは、
図1(b)中Oで示す公転軸19(
図2参照)を中心に公転しながら自転する。
なお、
図1(a)は、容器ホルダー2a、2bが、駆動系を保護するカバー部材6の開口部7a、7bから突出する構成となっている例を示すが、容器200a、200b及び容器2a、2bの構成に合わせて最適な配置を選択すればよい。
【0024】
モータ3は、回転速度、すなわち回転数(回転速さ)と回転方向とを、可変に制御できるもの、すなわち、正逆両用タイプで、回転数を任意に設定できるものを用いる。
或いは、モータ3が一定方向のみ回転駆動が可能な回転軸を備えるものであり、モータ3に、歯車等で回転方向を自由に変換(切換)できる回転方向変換部とを組み合わせることにより、正逆両用可能とした回転運動駆動源を構成してもよい。
なお、攪拌・脱泡装置1は、図示しない電力供給ライン、制御システム、操作パネル、記憶装置等を備える。
【0025】
さらに、攪拌・脱泡装置1は、回転運動に対して制動力を与える制動装置8、例えばパウダーブレーキを備える。パウダーブレーキは、駆動電流又は駆動電圧により、制動力を連続的かつ段階的に制御することができ、いずれの回転方向に対しても制動力を発生させることができるものを用いる。制御方式としては、例えばPWM制御・PAM制御・フィードバック制御等の様々な制御がある。
制動装置8の制動力は、制動装置8に結合した第1のブレーキ歯車9を介して伝達される。
なお、制動装置8は、パウダーブレーキに限定するものではなく、発電ブレーキや回生ブレーキ等の電気ブレーキであってもよく、電気的に制動力を制御できるものであればよい。
【0026】
図2に示すように攪拌・脱泡装置1は、全体を保護するため筐体100で覆われている。モータ3及び制動装置8は、ベースプレート50に固定されており、ベースプレート50は防振装置51を介して筐体100に固定されている。すなわち、モータ3及び制動装置8は、防振機構であるベースプレート50と防振装置51を介して筐体100に固定されており、相互に不必要に振動が伝達することを抑制している。
【0027】
公転歯車5は、ベアリングを介して公転軸19に回転自在に枢着されている。
また、公転歯車5は、モータ3の回転軸4に結合された歯車41と噛合するため、モータ3により駆動された回転運動は公転歯車5に伝達される。
【0028】
公転歯車5は、容器ホルダー2a、2bにそれぞれ対応した回転アーム31a、31bを有する回転ドラム30に結合されている。従って、公転歯車5、回転ドラム30及び回転アーム31a、31bは一体となり回転体を構成し、容器ホルダー2a、2bを回転自在に支持しながら回転する。その結果、容器ホルダー2a、2bは、公転軸19を中心に公転可能となる。
【0029】
容器ホルダー2a、2bは、被処理物を収容する容器200a、200bを堅固に保持し、容器ホルダー2a、2bの回転運動が容器200a、200bに伝達される。
【0030】
容器ホルダー2a、2bは、主要部が円筒状であり、それぞれ自転歯車18a、18bと中心軸が一致するよう結合されている。
自転歯車18a、18bは、自転軸20a、20bと結合されており、自転軸20a、20bはベアリングを介して支持体201a、201bにより軸支されている。
【0031】
支持体201a、201bは、側板52a、52bを介して回転アーム31a、31bと結合されている。
従って、容器ホルダー2a、2bは、公転しながら、自転軸20a、20bを中心に自転することが可能である。
なお、容器ホルダー2a、2bと容器200a、200bとを一体に形成することも可能であり、被処理物を収容し公転運動と自転運動とが可能な被処理物の収容部であればよい。また、容器ホルダー2a、2b専用の容器に代えて他の形状の容器を保持する場合には、保持用のアダプターを利用しても良い。そうすることで、被処理物の容器を入れ替えることなく処理可能となる。
【0032】
自転歯車18a、18bは、噛合部22a、22bにおいて、第1の中間歯車15a、15bと噛合し、自転歯車18a、18b(及び容器ホルダー2a、2b)は、第1の中間歯車15a、15bと力学的に直接連結されている。
【0033】
さらに第1の中間歯車15a、15bは、後述する第2の中間歯車17a、17bと噛合し、第1の中間歯車15a、15bは、第2の中間歯車17a、17bと力学的に直接連結されている。そのため、第1の中間歯車15a、15bから第2の中間歯車17a、17bへ回転運動が伝達される際に、その回転運動の方向を反対方向に変換する。
【0034】
なお、力学的に連結するとは、回転運動が伝達され、回転可能に接続されることを意味し、直接とは他の回転運動を与える回転体を介することなく、回転運動が伝達されることを意味する。従って、回転自在に軸支された回転体(歯車)を介することは可能である。
【0035】
なお、自転軸20a、20bは、鉛直方向に平行に設置することも可能である。あるいは、噛合部22a、22bにおいて、それぞれの歯車を傘歯車構造とすることにより、自転軸20a、20bは、鉛直方向に対して所望の角度θ(
図3参照)、例えば20°から70°傾斜させる、好ましくは40°傾斜させることも可能である。
【0036】
第1の中間歯車15a、15b及び第2の中間歯車17a、17bは、ベアリングを介して回転アーム31a、31bに回転自在に枢着されており、それぞれ回転アーム31a、31bに同期して公転しながら自転可能な第1及び第2の自転体を構成する。
【0037】
第2の回転体である太陽歯車11は、回転ドラム30にベアリングを介して回転自在に軸支され、共に公転軸19に回転自在に枢着されている。
さらに、太陽歯車11は、第2のブレーキ歯車10と結合しており、第2のブレーキ歯車10は第1のブレーキ歯車9と噛合している。第1のブレーキ歯車9は、制動装置8に結合されているため、制動装置8の制動力は、第1のブレーキ歯車9及び第2のブレーキ歯車10を介して、太陽歯車11に伝達される。
【0038】
第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a(
図4、
図5参照)、13bは、回転アーム31a、31bに対して回転自在に枢着されており、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、
図5に詳細を示すように、それぞれ噛合部121a(121b)及び噛合部131a(131b)において太陽歯車11と噛合している。
そのため、後述するように第1のブレーキ歯車9及び第2のブレーキ歯車10を介して、太陽歯車11に制動力が伝達されることにより、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、回転ドラム30を介して公転歯車5に結合された回転アーム31a、31bの回転によって、太陽歯車11に対して公転し、その結果、回転運動(自転運動)を発生させることができる構成となっている。
また、第1のブレーキ歯車9及び第2のブレーキ歯車10を介して伝達される制動力が「0」であれば、自転運動が発生する起動力点を超える回転運動の駆動力が伝達されないため、太陽歯車11は回転ドラム30に従動して共に回転する構成となっている。
【0039】
なお、回転アーム31a、31bは、例えば長方形状をなすが、これに限定するものではない。例えば1個の円板を使用し、円板に第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bを回転自在に枢着してもよい。各歯車の配置の自由度や容器ホルダーの個数の拡張性が向上する。
【0040】
図4(a)、(b)は、太陽歯車11、第1の遊星歯車12a、12b(第1の中間歯車15a、15b)、第2の遊星歯車13a、13b(第2の中間歯車17a、17b)及び自転歯車18a、18bの位置関係を模式的に示す上面図である。
自転歯車18a、18bは、
図1から
図3において鉛直方向に対して傾斜させて示しているが、各歯車の連結状態の理解を容易にするため、
図4においては傾斜がない状態で描画している。
なお、第1の遊星歯車12a、12bと第1の中間歯車15a、15bとは互いに上下に重なり中心軸が同じであり、第2の遊星歯車13a、13bと第2の中間歯車17a、17bとは互いに上下に重なり中心軸が同じであるため、
図4(a)、(b)において同一の円により描画している。
【0041】
なお、
図4(a)、(b)の各歯車の大きさは例示であり、これに限定するものではなく、第1の遊星歯車12a、12bと第1の中間歯車15a、15b、並びに第2の遊星歯車13a、13bと第2の中間歯車17a、17bは、必ずしも同一の径である必要はなく、異なっていてもよい。
【0042】
図4(a)に示すX−O−Y線は
図1(b)に示すX−O−Y線と同じであり、O−X線は、公転軸19と第1の遊星歯車12aの中心軸を通る直線であり、O−Y線は、公転軸19と第2の遊星歯車13bの中心軸を通る直線であり、W−W’は第1の遊星歯車12aの中心軸と第2の遊星歯車13aの中心軸とを通る直線である。
【0043】
図4(a)に示すように太陽歯車11は、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bと噛合している。
【0044】
自転歯車18a、18b、第1の中間歯車15a、15b及び第2の中間歯車17a、17bは、それぞれ自転が可能であり、自転歯車18a、18bは、第1の中間歯車15a、15bと噛合し、第1の中間歯車15a、15bは第2の中間歯車17a、17bと噛合している。
従って、自転歯車18a、18bに結合されている容器ホルダー2a、2bに対して、第1の自転体である第1の中間歯車15a、15bの自転運動を伝達する伝達経路と、第2の自転体である第2の中間歯車17a、17bの自転運動を第1の中間歯車15a、15bを経由して伝達する伝達経路とがある。
【0045】
そのため容器ホルダー2a、2bの回転速度は、第1の中間歯車15a、15bと自転歯車18a、18bとのギア比(歯車比)、第2の中間歯車17a、17bと第1の中間歯車15a、15b)とのギア比に依存し、さらに後述するように第1の中間歯車15a、15bを介して太陽歯車11と第1の遊星歯車12a、12bとのギア比、第2の中間歯車17a、17bを介して太陽歯車11と第2の遊星歯車13a、13bとのギア比に依存する。
【0046】
なお、自転歯車18a、18bは、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bと噛合しておらず、これらの歯車の構成については後述する。
【0047】
図4(a)においては、太陽歯車11、第1の遊星歯車12a、12b(第1の中間歯車15a、15b)及び自転歯車18a、18bの中心が一直線上に配置されている例を示しているが、これに限定されるものではない。
【0048】
図4(b)に示すように、太陽歯車11及び第1の遊星歯車12a、12b(第1の中間歯車15a、15b)の中心が一直線上に配置され、かつ太陽歯車11及び自転歯車18a、18bの中心が一直線上に配置されてもよい。
【0049】
図4(a)における、太陽歯車11の中心Oから自転歯車18a、18bの中心Oa、Obまでの距離と比較して、
図4(b)における、太陽歯車11の中心Oから自転歯車18a、18bの中心Oa、Obまでの距離は短くなる。
太陽歯車11の中心軸は、公転軸と等しいため、公転軸から容器ホルダー2a、2bの自転歯車18a、18bまでの距離を変更でき、公転により発生する遠心力を公転軸からの距離により変更することができる。
【0050】
上記のように、各歯車を変更することなく、自転歯車18a、18bの位置を変更することにより容易に遠心力を変更できるため、公転の回転数が同じで異なる遠心力を発生させる、或いは同じ遠心力に対して公転の回転数を変えることもでき、遠心力の制御範囲の自由度が増大し、被処理物に対して、攪拌・脱泡処理の最適な条件の選択の範囲を広げることができる。
【0051】
このような距離の変更は、自転歯車18a、18bへの自転運動の伝達が、必ず第1の自転歯車18a、18bを経由するため可能となる。
特に自転歯車18a、18bの位置を、本攪拌・脱泡装置1の使用者が変更可能に構成する場合、自転歯車18a、18bと第1の中間歯車15a、15bとの距離を一定にし、回転自在に連結するように、例えば長方形の補助具の両端にベアリング介して自転歯車18a、18bと第1の中間歯車15a、15bとを枢着し、さらに所望の箇所で回転アーム31a、31bに補助具を固定可能にすればよい。そのためには、回転アーム31a、31bを、例えば1つの円板形状とすることで容易に実現できる。
【0052】
図5は、
図4(a)のW−W’線の断面図であり、容器ホルダー2aについての第1の遊星歯車12a、第2の遊星歯車13a、第1の中間歯車15a及び第2の中間歯車17aの構成を示す。
図5で示される機構部は、公転運動を自転運動に変換し、回転運動を容器ホルダー2a、2bに伝達する回転運動伝達装置を構成する。
なお、容器ホルダー2bについても同様の構成であり、
図5中( )内の符号は、容器ホルダー2bに対応する第1の遊星歯車12b、第2の遊星歯車13b等を示す。
【0053】
図5に示すように、第1の中間歯車15a(15b)は、第1の伝達歯車151a(151b)と第2の伝達歯車152a(152b)を有しており、第1の中間歯車15a(15b)と第2の中間歯車17a(17b)とは、第1の伝達歯車151a(151b)の第1の噛合部21a(21b)において噛合し、回転運動を伝達可能な構成となっている。
また、第2の伝達歯車152a(152b)の第2の噛合部22a(22b)において、自転歯車18a、18bと噛合する。
【0054】
なお、第1の中間歯車15a(15b)は、第1の伝達歯車151a(151b)と第2の伝達歯車152a(152b)の2個の歯車を有せず、1個の第1の伝達歯車151a(151b)のみを有し、第1の伝達歯車151a(151b)に対して第2の中間歯車17a(17b)及び自転歯車18a、18bと噛合させてもよい。
しかし、上記のように第1の中間歯車15a(15b)を2個の歯車を有する構成とすることで、第1の中間歯車15a(15b)と第2の中間歯車17a(17b)とのギア比及び第1の中間歯車15a(15b)と自転歯車18a、18bとのギア比の独立した設定を容易にし、さらに第1の中間歯車15a(15b)と第2の中間歯車17a(17b)とのギア比の設定と公転軸19と自転歯車18a、18bとの距離の設定の自由度が向上し、攪拌・脱泡装置1の省スペース化も可能となる。
【0055】
第1の遊星歯車12a(12b)は、第1の選択的回転運動伝達素子である第1の一方向クラッチ14a(14b)を介して第1の中間歯車15a(15b)に連結されており、第2の遊星歯車13a(13b)は、第2の選択的回転運動伝達素子である第2の一方向クラッチ16a(16b)を介して第2の中間歯車17a(17b)に連結されている。
【0056】
ここで、選択的回転運動伝達素子とは、回転運動を伝達するための連結装置であり、一方向の回転運動に対しては、連結対象同士を固定し回転運動を伝達し、反対方向の回転運動については連結対象同士を固定せず互いに回転自在な状態で支持し、回転運動を伝達しない特性を有し、回転方向に対して選択的に回転運動を伝達可能にする回転運動伝達素子である。
なお、選択的回転運動伝達素子については、一方向クラッチに例示されるような一方向に回転動力を伝達する装置(一方向回転動力伝達装置)を好適に使用できるが、上記特性を有する素子であれば、一方向クラッチに限定するものではない。
【0057】
第1の一方向クラッチ14a(14b)及び第2の一方向クラッチ16a(16b)は、互いに伝達する回転方向が逆になるように組み合わされている。例えば、第1の一方向クラッチ14a(14b)が時計回りの回転運動のみを伝達し、第2の一方向クラッチ16a(16b)が反時計回りの回転運動のみを伝達するように組み合わせるか、又は、第1の一方向クラッチ14a(14b)が反時計回りの回転運動のみを伝達し、第2の一方向クラッチ16a(16b)が時計回りの回転運動のみを伝達するように組み合わせる。
【0058】
第1の一方向クラッチ14a(14b)は、第1の遊星歯車12a(12b)と結合されている。第1の遊星歯車12a(12b)が一方向に回転運動した場合、第1の一方向クラッチ14a(14b)は第1の中間歯車15a(15b)を固定し、第1の中間歯車15a(15b)に回転を伝達する。また、第1の遊星歯車12a(12b)が反対方向に回転運動した場合、第1の一方向クラッチ14a(14b)は、第1の中間歯車15a(15b)に回転を伝達することなく、第1の中間歯車15a(15b)を解放し回転自在な状態で支持する。
【0059】
同様に、第2の一方向クラッチ16a(16b)は、第2の遊星歯車13a(13b)と結合されている。第2の遊星歯車13a(13b)が一方向に回転運動した場合、第2の一方向クラッチ16a(16b)は第2の中間歯車17a(17b)を固定し、第2の中間歯車17a(17b)に回転を伝達する。第2の遊星歯車13a(13b)が反対方向に回転運動した場合、第2の一方向クラッチ16a(16b)は、第2の中間歯車17a(17b)に回転を伝達することなく、第2の中間歯車17a(17b)を解放し回転自在な状態で支持する。
【0060】
第1の遊星歯車12a(12b)と第2の遊星歯車13a(13b)は、同期して同一方向に自転運動するが、これらの自転運動を伝達する対象は第1の中間歯車15a(15b)と第2の中間歯車17a(17b)である。第1の一方向クラッチ14a(14b)及び第2の一方向クラッチ16a(16b)の組み合わせた上記構成は、公転歯車5の回転運動の方向に応じて、第1の中間歯車15a(15b)と第2の中間歯車17a(17b)のいずれか一方に選択的に自転運動を伝達する。
【0061】
<動作原理>
以下、攪拌・脱泡装置1の動作原理について、図を参照し説明する。
【0062】
図6は、太陽歯車11と第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bとの相対的回転運動の関係を示す模式図である。
図6(a)は、公転歯車5が筐体100の静止系(すなわち筐体100を基準とした回転しない座標系)に対して時計回りに回転している場合、
図6(b)は、公転歯車5が筐体100の静止系に対して反時計回りに回転している場合を示す。
なお、静止系とは、物理学において相対運動に関して一般的に使用されている物理学用語(学術用語)であり、説明は割愛する。また、( )内の説明は理解のために付記するものであり、以下同様に( )内に説明を付記することがある。
【0063】
図6(a)、(b)は、太陽歯車11に制動力が加えられることにより、太陽歯車11に対して第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bが相対運動している状態を示し、従って太陽歯車11の静止系(すなわち太陽歯車11とともに回転する座標系)における運動を示し、太陽歯車11の静止系における回転方向と筐体100の静止系における回転方向とは必ずしも一致しない。
図6の太矢印は、太陽歯車11に対する第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13b相対運動を示し、細矢印は第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bの自転運動を示す。
【0064】
なお、
図5に示すように、第1の遊星歯車12aと第2の遊星歯車13aとは直接的に噛合していないため、
図6の細矢印に示すように、第1の遊星歯車12aと第2の遊星歯車13aとは、同一方向に回転可能である。また、第1の遊星歯車12bと第2の遊星歯車13bについても同様である。
【0065】
図示しない制御システムにより制御されるモータ3の駆動力(回転力)は、モータ回転軸4に結合された歯車41を回転駆動し、歯車41に噛合する公転歯車5を所定の回転速度で回転させる。公転歯車5が回転すると、公転歯車5に結合されている回転アーム31a、31bが回転する。その結果、回転アーム31a、31bに軸支されている第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bが、公転歯車5に同期して回転する。
【0066】
一方、太陽歯車11は、制動装置8により、第1のブレーキ歯車9及び第2のブレーキ歯車10を介して制動力が加えられる。そのため、制動装置8に印加される駆動電流又は駆動電圧によって、太陽歯車11の回転数は、0(ゼロ)から公転歯車5の回転数の範囲内で制御される。
【0067】
太陽歯車11に制動力が加えられない場合、太陽歯車11は公転歯車5と同じ回転速度で回転する。この場合、公転歯車5と同じ回転速度で回転する第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、太陽歯車11に対して相対的に停止した状態となり、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは自転しない。
【0068】
太陽歯車11に制動力が加えられると、太陽歯車11の回転数が公転歯車5の回転数と比べて低下し、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bが太陽歯車11に対して相対的に回転する。上述したように第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは太陽歯車11と噛合するため、共に同一方向に回転し、自転運動が発生する。
すなわち、太陽歯車11と噛合することによって、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは同一方向に回転が可能なように、力学的に直接連結されており、第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車は、それぞれ公転運動を自転運動に変換する第1の回転運動変換素子及び第2の回転運動変換素子として機能する。
【0069】
太陽歯車11に加える制動力は、制動装置8により連続的に変更が可能であるため、モータ3の回転運動の第1の遊星歯車、第2の遊星歯車への伝達比率を連続的に変更でき、第1の遊星歯車、第2の遊星歯車の自転速度を任意に連続的に変更することが可能である。
【0070】
さらに、第1の遊星歯車12a、12bの回転速度は、太陽歯車11と第1の遊星歯車12a、12bとのギア比(第1のギア比)に依存し、第2の遊星歯車13a、13bの回転速度は、太陽歯車11と第2の遊星歯車13a、13bとのギア比(第2のギア比)に依存する。
【0071】
太陽歯車11に対する第1、第2の遊星歯車の公転の回転数は、公転歯車5の回転数を超えることはないが、第1、第2のギア比を変えることで自転の回転数を変更することが可能であり、公転の回転数に対し、自転の回転数をα倍、例えば2倍に設定することができる。この場合、第1、第2の遊星歯車の自転の回転数をゼロから公転の回転数のα倍の範囲で制御できる。ギア比の変更により、自転運動の制御範囲の設定の自由度が向上する。
なお、αは2つの歯数の比で決まる値であり、整数以外の値も取り得ることは言うまでもない。
【0072】
図6より理解できるように、
図6(a)に示す場合は、 第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、いずれも太陽歯車11に対して時計回りに回転し、
図6(b)に示す場合は、 第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、いずれも太陽歯車11に対して反時計回りに自転する。
なお、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、公転歯車5に同期して公転しているため、公転歯車5に対する(公転歯車5の静止系における)自転方向も上記と同じである。
【0073】
ここで、例えば、第1の一方向クラッチ14a、14bが、時計回りの回転運動のみを第1の中間歯車15a、15bに伝達し、第2の一方向クラッチ16a、16bが、反時計回りの回転運動のみを第2の中間歯車17a、17bに伝達するように設定されている場合を想定する。
【0074】
このとき
図6(a)で示される場合には、第1の一方向クラッチ14a、14bが、公転と同一方向の時計回りの回転運動を第1の遊星歯車12a、12bから第1の中間歯車15a、15bに伝達し、第2の中間歯車17a、17bは回転自在な状態となる。
第1の中間歯車15a、15bは、自転歯車18a、18b及び第2の中間歯車17a、17bと噛合しており、自転歯車18a、18b及び第2の中間歯車17a、17bに自転運動を伝達する。そのため、自転歯車18a、18b及び第2の中間歯車17a、17bは、太陽歯車11に対して反時計回りに回転(自転)する。
その結果、太陽歯車11の静止系に対して自転歯車18a、18bは反時計回りに回転(自転)し、従って、公転歯車5の静止系(すなわち公転歯車5とともに回転する座標系)に対しても、自転歯車18a、18bは反時計回りに回転(自転)する。
【0075】
一方、
図6(b)で示される場合には、第2の一方向クラッチ16a、16bが、公転と同一方向の反時計回りの回転運動を第2の遊星歯車13a、13bから第2の中間歯車17a、17bに伝達し、第1の中間歯車15a、15bは回転自在な状態となる。
第2の中間歯車17a、17bは、第1の中間歯車15a、15bと噛合しており、第1の中間歯車15a、15bに自転運動を伝達する。そのため、第1の中間歯車15a、15bは、太陽歯車11に対して時計回りに回転運動する。さらに、第1の中間歯車15a、15bは、自転歯車18a、18bと噛合しているため、自転歯車18a、18bは、太陽歯車11に対して反時計回りに回転(自転)する。
【0076】
すなわち、
図6(a)及び
図6(b)で示されるいずれの場合にも、太陽歯車11の静止系に対して自転歯車18a、18bは反時計回りに回転(自転)し、従って、公転歯車5の静止系に対しても、自転歯車18a、18bは反時計回りに回転(自転)する。
なお、必ずしも筐体100の静止系に対して自転歯車18a、18bが、常に反時計回りに回転(自転)するわけではない。
【0077】
上述のように、第1の一方向クラッチ14a、14b及び第2の一方向クラッチ16a、16bは、モータ3の回転運動により確定される公転歯車5の回転方向(例えば時計回り又は反時計回り)に応じて、第1の中間歯車15a、15b及び第2の中間歯車17a、17bの内から一方を選択して、公転と同一の回転方向の自転運動を伝達する。
第1の中間歯車15a、15bが選択された場合は、第1の中間歯車15a、15bから自転歯車18a、18bに回転運動が伝達され、第2の中間歯車17a、17bが選択された場合、第2の中間歯車17a、17bから第1の中間歯車15a、15bを介して自転歯車18a、18bに回転運動が伝達される。
その結果、モータ3の回転方向を反対方向に変えることで、容器ホルダー2a、2bの自転方向を公転運動に対して(すなわち公転歯車5の静止系に対して)反対方向にすることができる。
【0078】
なお、第1の一方向クラッチ14a、14bが、反時計回りの回転運動のみを第1の中間歯車15a、15bに伝達し、第2の一方向クラッチ16a、16bが、時計回りの回転運動のみを第2の中間歯車17a、17bに伝達するように設定した場合も、同様であるため説明は割愛する。
【0079】
なお、太陽歯車11と第1、第2の遊星歯車と間の回転運動の伝達方法(、又は力学的な連結方法)は、歯車に限定するものではない。例えば、プーリーとベルトの組み合わせを使用することもできる。
【0080】
しかし、上記のように歯車を使用した場合、ギア比を適宜設定することで、自転の回転数の変更が容易になる。ギア比は、歯数を変えることで変更が可能であり、回転数を増大させる場合、装置の大型化を防止することができる。
【0081】
特に、プーリーとベルトを使用した場合、1個のプーリーに複数のプーリーをベルトで連結することは困難である。そのため、1つの太陽歯車と1つの遊星歯車の組み合わせ毎に2つのプーリーと1つのベルトの組み合わせが必要となる。この場合、1個の容器ホルダーに対して、2つのプーリーと1つのベルトの組み合わせが2組必要となる。さらに2個の容器ホルダーそれぞれに上記組み合わせが必要であり、合計4組のプーリーの組み合わせが必要となる。
4組のプーリーの組み合わせを同一平面に配置することは不可能であるため、立体的に配置することが必要となり、攪拌・脱泡装置が大型化する。
さらに、プーリー数が増える程に重量が増大し、高出力の駆動用モータが必要となる。
【0082】
上記のように1つの太陽歯車に対して、それと噛合する2個の遊星歯車を容器ホルダーの個数に合わせて、1つの太陽歯車の周縁に同一平面に配置することにより、プーリーを用いた場合と比較し、攪拌・脱泡装置の小型化、省力化、回転運動制御の高精度化が可能になる。
さらに、単一の太陽歯車の周縁に沿って、各容器ホルダーに対応した2個の遊星歯車を設置し、複数の容器ホルダーの重心と公転軸19の中心を一致させることにより、3個以上の容器ホルダーの拡張が容易となるという利点もある。
【0083】
なお、本攪拌・脱泡装置1は、容器ホルダーと対向する位置に、バランスウエイトを配置することにより、容器ホルダーが1個の小型装置にも対応できる。この場合、容器ホルダーとバランスウエイトの重心と公転軸19の中心を一致させる。
さらに、容器ホルダーとバランスウエイトの組み合わせを複数配置することも可能となる。
【0084】
<攪拌・脱泡装置の効果>
本攪拌・脱泡装置1を用いた場合、回転駆動用のモータ3を制御し、容器ホルダー2a、2bの公転方向(公転歯車5の回転方向)を反転させることにより、容器ホルダー2a、2bの自転方向を、公転運動に対して相対的に変えることができる。
【0085】
例えば、以下のような2つの処理を連続して組み合わせた攪拌・脱泡プロセスを容易に実行することができる。
まず、モータ3及び制動装置8を制御し、公転歯車5に所定の回転方向(例えば、時計回り又は反時計回り)で所定の公転回転数の回転運動を与えるとともに、太陽歯車11に所定の制動力を与え、容器ホルダー2a、2bを太陽歯車11に対して公転運動させながら、所定の自転回転数で、公転歯車5に対して、上記公転運動の回転方向と反対方向(例えば、反時計回り又は時計回り)に自転させる処理を実施する。
引き続き、モータ3により上記所定の公転回転数と同じ回転数であるが、上記所定の回転方向と反対の回転方向(例えば、反時計回り又は時計回り)に公転歯車5を回転させるとともに、さらに制動装置8により所定の制動力を太陽歯車11に与えることで、容器ホルダー2a、2bを太陽歯車11に対して上記反対の回転方向(例えば、反時計回り又は時計回り)に公転運動させながら、所定の自転回転数で、公転歯車5に対して、上記公転運動の回転方向と同方向(例えば、反時計回り又は時計回り)に自転させる処理を実施する。
【0086】
このように、公転運動に対して(公転歯車5の静止系において)、同じ回転数で異なる方向の自転運動を重畳させる工程を組み合わせるという、本攪拌・脱泡装置1により特に有利に実施可能な処理により、攪拌と脱泡とを両立できる良好な条件を容易に得られることを確認した。
【0087】
従来は、攪拌と脱泡とを両立できる良好な条件を見出すためには、公転用駆動モータと自転用駆動モータとを独立に使用した攪拌・脱泡装置を使用し、例えば公転の回転数を一定に設定したとしても、公転と同一方向と反対方向の両方で回転数を変え、最適条件を見出す必要がある。
なぜなら、これらの装置においては、公転用駆動モータと自転用駆動モータとは筐体に固定されているため、公転運動及び自転運動は、装置の筐体の静止系において定義されているため、完全に独立した回転運動であるからである。
【0088】
一方、本出願人は、被処理物に対して攪拌・脱泡処理を行う際、公転方向と自転方向が反対方向である場合には攪拌効果が高く、公転方向と自転方向とが同一方向である場合には脱泡効果が高い傾向があることを見出した。
本出願人は、上記知見に基づき、本攪拌・脱泡装置1を使用することにより、公転運動に対して(公転歯車5の静止系において)互いに反対の回転方向に対して、同じ回転数の自転を組み合わせることで、調査すべき自転の条件を低減でき、対象物の処理条件確定の労力、時間、実験用サンプルを大幅に低減できることを確認した。
【0089】
このような本攪拌・脱泡装置1の良好な効果は、以下の例に示すように、被処理物に対応した攪拌・脱泡条件の決定のためのコストを大幅に低減することができる。
【0090】
例えば、公転の回転数の条件を固定して自転の最適条件を決定するための実験として、従来の攪拌・脱泡装置の場合、公転方向と同じ方向の自転の回転数についての条件、例えば10条件と、公転方向と反対方向の自転の回転数についての10条件とを組み合わせた合計100条件で、攪拌、脱泡効果を調査し、最適化実験が必要である。
【0091】
一方、本攪拌・脱泡装置1を用いた特別の処理条件は、公転運動に対して異なる回転方向の自転は、それぞれ同じ回転数に設定されているため、10条件の調査により最適化が完了し、10分の1の労力及びサンプル数で条件の最適化が可能である。
【0092】
(変形例1)
本攪拌・脱泡装置1は、様々な被処理物の攪拌及び脱泡処理に対応することができるが、被処理物の物性等により、容器ホルダーの最適な公転及び自転条件は変化する。また、被処理物の物性だけでなく、処理目的、顧客の要望等によっても、最適条件は変化する。
被処理物の物性や顧客の要望又は処理目的に合わせた公転及び自転条件となるよう、例えば第1のギア比、第2のギア比とを同一の値とせず異なる値とし、実際に使用頻度が高い処理条件に有利なように装置をカスタマイズし、本攪拌・脱泡装置の処理効率、生産性を向上させることができる。
【0093】
さらに、ギア比を高くすることにより、制動装置8の制御範囲を大きくすることができる。例えば、自転の回転数を公転回転数の0から1倍の範囲で制御する場合に比べ、ギア比を2倍に設定することで、制動装置8を変えることなく、公転回転数の0から2倍の範囲で自転の回転数を制御することができる。
すなわち、制動力を高めるために制動装置8を大型化する必要がなく、また、装置のカスタマイズがギア比の変更により可能であり、制動装置8のサイズ変更によるモータ3等の各構成部材の配置の変更や筐体の変更が不要になるため、各構成部材の大幅な配置を変更することなくカスタマイズが可能になる。
【0094】
一方、ギア比を低くすることにより、制動装置8の制動力の変化に対して自転回転数の変化が小さくなるため、制動装置8を変えることなく、微小な制動力制御の制御(制動力の制御の分解能の微小化)が可能になる。
【0095】
このように、本攪拌・脱泡装置1においては、自転速度は、モータ3の回転駆動力と制動装置8の制動力による制御に加え、太陽歯車11、自転歯車18a、18b、第1の中間歯車15a、15b、第2の中間歯車17a、17b、 第1の遊星歯車12a、12b、第2の遊星歯車13a、13bによっても制御できるため、様々な制御が可能な構成である。
【0096】
自転運動を制御するための各種歯車の使用可能な組み合わせの変形例を、
図7に示す。
図7においては、第1の一方向クラッチ12a(12b)は時計回りの運動のみを伝達し、第2の一方向クラッチ13a(13b)は反時計回りの運動のみを伝達する例を示すが、これに限定するものではない。
【0097】
図7中の各欄の右端において示される歯車の構成図は、
図5に示される各歯車の構成図に相当するものであり、紙面の都合上、符号等は省略する。これらの構成図は、理解のため模式的に示すものであり、各歯車の径の相対関係を正確に示すものではない。
【0098】
また、「第1の中間歯車=第2の中間歯車」、「第1の中間歯車<第2の中間歯車」、「第1の遊星歯車=第2の遊星歯車」、「第1の遊星歯車<第2の遊星歯車」等の記載は、それぞれの歯車の歯数の大小関係を示す。例えば、「第1の中間歯車=第2の中間歯車」は第1の中間歯車の歯数が第2の中間歯車の歯数に等しいこと、「第1の中間歯車<第2の中間歯車」は第1の中間歯車の歯数より第2の中間歯車の歯数が大きいことを示す。
【0099】
また、「第1の中間歯車の歯数」は、具体的には第1の伝達歯車151a(151b)の歯数を示し、「第2の中間歯車の歯数」は、第2の中間歯車の歯数17a(17b)の歯数、「第1の遊星歯車」は第1の遊星歯車12a(12b)の歯数、「第2の遊星歯車の歯数」は第2の遊星歯車13a(13b)の歯数を示す。
【0100】
また、Lは、公転軸の中心から容器ホルダー(例えば容器ホルダーの自転軸の底部)までの直線距離であり、L(X)は、条件Xに対する距離Lであることを示す。
【0101】
また、「時計回り」、「反時計回り」は、公転の回転方向を示し、「公転=自転」、「公転<自転」、「公転>自転」は、公転の回転数と自転の回転数の大小関係を示し、それぞれ公転の回転数が自転の回転数に等しい、公転の回転数が自転の回転数より小さい、公転の回転数が自転の回転数より大きいことを意味する。ただし、自転の回転数は、公転歯車5の静止系に対する回転数であり、公転の回転数は筐体100の静止系に対する回転数である。
【0102】
なお、理解のため、条件の変更にかかる主要な構成のみを記載しているが、
図7の例に記載されている歯車に限定するものではない
【0103】
以下、
図7に示す各条件について説明する。
【0104】
条件Aは、第1の中間歯車の歯数が第2の中間歯車の歯数に等しく、第1の遊星歯車の歯数が第2の遊星歯車の歯数に等しく、公転方向が、時計回り及び反時計回りともに自転の(最高)回転数と公転の回転数が同じに設定された条件である。
他の条件は条件Aに対して各歯車の構成を変更した条件例を示す。
【0105】
条件Bは、第1の中間歯車の歯数が第2の中間歯車の歯数に等しく、第1の遊星歯車の歯数より第2の遊星歯車の歯数が大きい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数と自転の(最高)回転数が等しく、公転方向が反時計回りのときに、公転の回転数より自転の(最高)回転数が小さくなる。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aと等しい。
【0106】
条件Cは、第1の中間歯車の歯数が第2の中間歯車の歯数に等しく、第1の遊星歯車の歯数より第2の遊星歯車の歯数が小さい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数より自転の(最高)回転数が小さく、公転方向が反時計回りのときは、公転の回転数と自転の(最高)回転数とが等しくなる。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aより長くなる。
【0107】
条件Dは、第1の中間歯車の歯数より第2の中間歯車の歯数が大きく、第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数とが等しい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数は自転の(最高)回転数と等しく、公転方向が反時計回りのときは、公転の回転数が自転の(最高)回転数より小さくなる。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aと等しい。
【0108】
条件Eは、第1の中間歯車の歯数より第2の中間歯車の歯数が小さく、第1の遊星歯車の歯数と第2の遊星歯車の歯数とが等しい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数は自転の(最高)回転数と等しく、公転方向が反時計回りのときは、公転の回転数が自転の(最高)回転数より大きくなる。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aと等しい。
【0109】
条件Fは、第1の中間歯車の歯数より第2の中間歯車の歯数が大きく、第1の遊星歯車の歯数より第2の遊星歯車の歯数が大きい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数は自転の(最高)回転数と等しく、公転方向が反時計回りのときは、公転の回転数は自転の(最高)回転数と等しい。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aと等しい。
【0110】
条件Gは、第1の中間歯車の歯数より第2の中間歯車の歯数が小さく、第1の遊星歯車の歯数より第2の遊星歯車の歯数が小さい条件である。
本条件では公転方向が時計回りのときは、公転の回転数より自転の(最高)回転数が小さく、公転方向が反時計回りのときは、公転の回転数より自転の(最高)回転数が小さい。
この場合、公転軸から容器ホルダーまでの距離は条件Aより長くなる。
【0111】
このように、各歯車の構成を変えることにより、種々の自転と公転の回転数の組み合わせが可能である。
【0112】
なお、容器ホルダーは、公転歯車5と同期して回転するため、容器ホルダーの公転運動は、筐体100の静止系での公転運動を意味する。
【0113】
なお、
図7の例示の他に、例えば、時計回りの公転の回転数を自転の回転数より小さく、反時計回りの公転の回転数を自転の回転数より大きくすることも可能である。
【0114】
各種歯車は、実施する攪拌・脱泡条件に合わせて、適宜変更が可能である。
例えば、被処理物の粘度や比重等により、攪拌又は脱泡の優先すべき効果を考慮し、処理に最適なギア比を選択することで、攪拌・脱泡装置1の処理能力を向上させることができる。
【0115】
また、例えば、容器ホルダーの公転運動の回転方向と、公転歯車5の静止系における自転運動の回転方向とが反対の場合において、容器ホルダーの公転運動の回転数に比べ、公転歯車5の静止系における自転運動の回転数を高くするギア比の条件を選択することで、攪拌効果を高めることができる。
【0116】
(変形例2)
上述のように第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、それぞれ噛合部121a(121b)及び噛合部131a(131b)(
図5参照)において太陽歯車11と噛合する。
第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bは、
図5に示すように、それぞれT字状及び逆T字状の形状をなし、上下逆方向に配置することにより、省スペース化を実現している。
【0117】
そのため、
図8(a)に示すように、太陽歯車11は、噛合部121a(121b)及び噛合部131a(131b)において第1の遊星歯車12a(12b)及び第2の遊星歯車13a(13b)と噛合できるだけの厚さt(高さ)を有する1個の歯車で構成されているが、それに限定するものではない。
【0118】
図8(b)に示すように太陽歯車11を、噛合部121a(121b)及び噛合部131a(131b)において、それぞれ第1の遊星歯車12a(12b)及び第2の遊星歯車13a(13b)に噛合するように、第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112の2個の歯車で構成し、結合部113で第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を結合した構成とすることも可能である。
【0119】
さらに、
図8(c)に示すように太陽歯車11を構成する第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を、それぞれ異なる直径を有する歯車としてもよく、これらの第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を結合部113で結合した構成としてもよい。
【0120】
さらに
図8(d)に示すように異なる直径を有する第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を一体で形成してもよい。
【0121】
なお、
図8(c)、(d)においては、第1の太陽歯車111の直径が第2の太陽歯車112の直径より短い例を示すが、これに限定するものではなく、第1の太陽歯車111の直径が第2の太陽歯車112の直径より長くてもよい。
【0122】
このように第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を有する構造とすることで、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bとのギア比を、それぞれ第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112の歯数によっても変更することができ、ギア比を設定する自由度が向上する。
さらに、第1の遊星歯車12a、12b及び第2の遊星歯車13a、13bの直径に合わせて適宜第1の太陽歯車111及び第2の太陽歯車112を設定し、ギア比の変更だけでなく、省スペース化を図ることも可能である。
【0123】
(変形例3)
自転歯車18a、18b(従って容器ホルダー2a、2b)は、第1の中間歯車15a、15bに噛合し、
図4(b)に示すように配置することで、第2の中間歯車17a、17bに対して、追加の容器ホルダーを容易に設置することができる。
【0124】
図9に示すように、自転歯車18cを有する容器ホルダー2c(図示しない)及び自転歯車18dを有する容器ホルダー2d(図示しない)を更に追加し、自転歯車18c、18dを第2の中間歯車17a、17bと噛合させ、自転歯車18cの中心Oc、太陽歯車11の中心O及び自転歯車18dの中心Odが一直線上に並ぶように配置する。
なお、容器ホルダー2c、2dと自転歯車18c、18dの構成は、容器ホルダー2a、2bと自転歯車18a、18bの構成と同じである。
【0125】
上述のように第1の中間歯車15a、15bに選択的に自転運動が伝達された場合、第1の中間歯車15a、15bは、自転歯車18a、18b及び第2の中間歯車17a、17bの両方に自転運動を伝達する。
自転歯車18c、18dは第2の中間歯車17a、17bと噛合するため、第2の中間歯車17a、17bに伝達された自転運動は、自転歯車18c、18dに伝達される。
その結果、容器ホルダー2a、2b、2c、2dに自転運動が伝達される。
【0126】
第2の中間歯車17a、17bに選択的に自転運動が伝達された場合、第2の中間歯車17a、17bは、自転歯車18c、18d及び第1の中間歯車15a、15bに自転運動を伝達する。
第1の中間歯車15a、15bに伝達された自転運動は、自転歯車18a、18bに伝達される。
その結果、容器ホルダー2a、2b、2c、2dに自転運動が伝達される。
【0127】
なお、
図9に示す例においては、自転歯車18a、18bと自転歯車18c、18dとは、互いに自転運動の方向は反対となる。
必要に応じて自転歯車18c、18dと第2の中間歯車17a、17bとの間に、第3の中間歯車を回転自在に設置し、回転方向を反転させることで、自転歯車18a、18bと自転歯車18c、18dの自転運動の方向を一致させることも可能である。
【0128】
このように、本攪拌・脱泡装置1においては、第1の中間歯車15a、15b及び第2の中間歯車17a、17bは回転方向に依らず、自転運動を互いに伝達することができるため、
図9に示すような容器ホルダーの拡張が可能であり、高い処理能力を有する攪拌・脱泡装置を容易に得ることができる。
【0129】
なお、本変形例では容器ホルダー2a、2b、2c、2dの4個の容器ホルダーを備えた攪拌・脱泡装置1について説明した。
図9において容器ホルダー2a、2bに対応した自転歯車18a、18bの組み合わせみの構成とすることで
図4と同じ構成となり、容器ホルダー2a、2bの2個の容器ホルダーを備えた攪拌・脱泡装置1を提供でき、
図9において、容器ホルダー2c、2dに対応した自転歯車18c、18dの組み合わせみの構成とすることで、容器ホルダー2c、2dの2個の容器ホルダーを備えた攪拌・脱泡装置1を提供することも可能である。
第1の中間歯車15a、15bと第2の中間歯車17a、17bとの間で相互に回転運動を伝達するため、種々の構成の攪拌・脱泡装置1を提供することが可能である。
【0130】
以上、本発明にかかる攪拌・脱法装置について、具体例を示し詳細に説明をしたが、本発明の技術思想は、公転回転の回転力を自転回転に変換し伝達する各歯車構造のユニットに、回転運動の回転方向に対する選択的伝達機能を設け、伝達機能によって被処理物に公転運動とともに自転方向と自転回転力を伝達し、また回転運動の伝達経路において駆動源のモータの出力制御以外の制動力制御を中継させることを可能としたユニット構成となっていることである。
【0131】
また、上記説明における一方向クラッチは、任意の回転方向に対する回転運動の選択的伝達機能を有するものであればその構成に限定はなく、例えば、一方向クラッチが軸支するためのべアリング構造を有するものである方が好ましいが、これに限定するものではない。
【0132】
また、一方向クラッチは、クラッチとベアリングとをそれぞれに構成してもよい。
【0133】
本発明の攪拌・脱泡装置の構成の場合は、回転力を伝達する構造を公転軸心に近い領域、すなわち、回転中心近傍に集中できるため、回転運動を制御するシステムとしてバランス性が良好となる。
【0134】
また、本発明は、回転運動伝達装置を含み、回転力の伝達経路を歯車により構成したが、例示した歯車の形状、大きさ、配置位置、歯車の個数、歯車単体に異なる複数の歯車部設定、異なる歯数を有する歯車の積み重ね、及び、それらから選択される1つ以上の組み合わせに限定するものではなく、回転力を正確に伝達でき、かつ、回転の方向性を制御できる構成であればよい。
【0135】
また、歯車に代わる構成を採用する場合、一方に任意の回転方向で駆動力を付与すると、連結された他方の回転方向は逆方向に従動する条件を満たす構成であればよい。
【0136】
また、制動力を伝達する経路についても、制動装置と太陽歯車との間で制動力が伝達できればよく、上記実施例に限定するものではない。
【解決手段】攪拌・脱泡装置は、回転駆動源及び回転運動の制動装置と、公転軸を中心に回転する第1の回転体及び第2の回転体と、第1の回転体に回転自在に軸支された第1の自転体、第2の自転体及び容器ホルダーとを備え、制動装置により制動力を加えられた第2の回転体に対して、第1の回転体と共に回転することにより自転運動を発生させ、第1の回転体の回転方向に応じて、第1の自転体又は第2の自転体を選択して自転運動を伝達し、第1の自転体から容器ホルダーに自転運動を伝達するか、又は第2の自転体から第1の自転体を介して容器ホルダーに自転運動を伝達することにより、公転しながらその公転方向に依存した回転方向に自転する回転運動を被処理物に与えることができる。