(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボキシル基含有樹脂(A)が、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む請求項1乃至3のいずれか一項に記載のソルダーレジスト組成物。
〈d〉請求項1乃至4のいずれか一項に記載のソルダーレジスト組成物を、絶縁層と、前記絶縁層上にある銅製の配線とを備えるプリント配線板上に前記絶縁層及び前記配線を覆うように配置することで、塗膜を形成する工程、
〈e〉前記塗膜を露光する工程、
〈f〉露光後の前記塗膜をアルカリ性現像液で現像する工程、及び
〈g〉現像後の前記塗膜を加熱することで前記被膜を形成する工程を含み、
前記〈e〉の工程では、前記塗膜における第一の部分に光を照射し、前記塗膜における前記第一の部分とは異なる第二の部分には前記第一の部分よりも露光量が低くなるように光を照射し、
前記〈g〉の工程では、加熱により前記第一の部分内に気泡を発生させることで、前記被膜に気泡を含有する第一の領域と、気泡を含有せず或いは気泡の割合が前記第一の領域よりも低い第二の領域を形成することを特徴とする被覆プリント配線板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を説明する。尚、本明細書においては、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを(メタ)アクリロイルと表す場合がある。また、アクリレート及び/又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと表す場合がある。また、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸と表す場合がある。
【0016】
{ソルダーレジスト組成物}
本実施形態のソルダーレジスト組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の光重合性化合物(B)、光重合開始剤(C)、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)及び青色分散剤(E)を含有する。
【0017】
本実施形態のソルダーレジスト組成物から塗膜を形成し、この塗膜を露光すると共にこの露光時の露光量を部分的に異ならせると、単層であっても視認性に優れたマーキングを有する被膜を形成することができる。銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成すると、マーキングの視認性が特に優れる。
【0018】
ソルダーレジスト組成物の組成について、更に詳しく説明する。
【0019】
[カルボキシル基含有樹脂(A)]
カルボキシル基含有樹脂(A)は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜に、アルカリ性溶液による現像性、すなわちアルカリ現像性を付与することができる。
【0020】
(カルボキシル基含有樹脂(A1))
カルボキシル基含有樹脂(A)は、光重合性官能基を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)(以下、(A1)成分ともいう)を含有することもできる。光重合性官能基は、例えばエチレン性不飽和基である。
【0021】
(A1)成分は、例えば一分子中に二個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a1)における前記エポキシ基のうち少なくとも一つに、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)が反応し、更に多価カルボン酸及びその無水物から選択される少なくとも一種の化合物(a3)が付加した構造を有する樹脂(以下、第一の樹脂(a)という)を、含有することができる。
【0022】
エポキシ化合物(a1)は、例えばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂及びエポキシ基を有する化合物を含むエチレン性不飽和化合物の重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含有することができる。
【0023】
エポキシ化合物(a1)が、エポキシ基を備える化合物(p1)を含むエチレン性不飽和化合物(p)の重合体を含有してもよい。エチレン性不飽和化合物(p)の重合体の合成に供される原料は、エポキシ基を備える化合物(p1)のみを含有してもよく、エポキシ基を備える化合物(p1)とエポキシ基を備えない化合物(p2)とを含有してもよい。
【0024】
エポキシ基を備える化合物(p1)は、適宜のポリマー及びプレポリマーから選択される化合物を含有することができる。具体的には、エポキシ基を備える化合物(p1)は、アクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、メタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類、アクリレートの脂環エポキシ誘導体、メタクリレートの脂環エポキシ誘導体、β−メチルグリシジルアクリレート、及びβ−メチルグリシジルメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。特に、エポキシ基を備える化合物(p1)が、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0025】
エポキシ基を備えない化合物(p2)は、エポキシ基を備える化合物(p1)と共重合可能な化合物であればよい。エポキシ基を備えない化合物(p2)は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(重合度n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、N−フェニルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、3−マレイミド安息香酸N−スクシンイミジル、直鎖状或いは分岐を有する脂肪族又は脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、及びN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。N−置換マレイミド類としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。
【0026】
エポキシ基を備えない化合物(p2)が、更に一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物を含有してもよい。この化合物が使用され、その配合量が調整されることで、被膜の硬度及び油性が容易に調整される。一分子中にエチレン性不飽和基を二個以上備える化合物は、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0027】
エチレン性不飽和化合物(p)が、例えば溶液重合法、エマルション重合法等の公知の重合法により重合することで、重合体が得られる。溶液重合法の具体例として、エチレン性不飽和化合物(p)を適当な有機溶剤中で、重合開始剤の存在下、窒素雰囲気下で加熱攪拌する方法並びに共沸重合法が、挙げられる。
【0028】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される有機溶剤は、例えばケトン類、芳香族炭化水素類、酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。酢酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0029】
エチレン性不飽和化合物(p)の重合のために使用される重合開始剤は、例えばハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、アルキルパーエステル類、パーオキシジカーボネート類、アゾ化合物、並びにレドックス系の開始剤からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。ハイドロパーオキサイド類としては、例えば、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。ジアルキルパーオキサイド類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)−ヘキサン等が挙げられる。ジアシルパーオキサイド類としては、例えば、イソブチリルパーオキサイド等が挙げられる。ケトンパーオキサイド類としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。アルキルパーエステル類としては、例えば、t−ブチルパーオキシピバレート等が挙げられる。パーオキシジカーボネート類としては、例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0030】
エチレン性不飽和化合物(a2)は、適宜のポリマー及びプレポリマーからなる群から選択される化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物を含有することができる。エチレン性不飽和基を一個のみ有する化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。エチレン性不飽和化合物(a2)は、エチレン性不飽和基を複数個備える化合物を更に含有することができる。エチレン性不飽和基を複数個備える化合物は、例えばヒドロキシル基を備える多官能アクリレート、並びに多官能メタクリレートに二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。ヒドロキシル基を備える多官能アクリレート並びに多官能メタクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート等が挙げられる。
【0031】
特にエチレン性不飽和化合物(a2)が、アクリル酸及びメタクリル酸のうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、アクリル酸及びメタクリル酸に由来するエチレン性不飽和基は特に光反応性に優れるため、第一の樹脂(a)の光反応性が高くなる。
【0032】
エチレン性不飽和化合物(a2)の使用量は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対してエチレン性不飽和化合物(a2)のカルボキシル基が0.4〜1.2モルの範囲内となる量であることが好ましく、特に前記カルボキシル基が0.5〜1.1モルの範囲内となる量であることが好ましい。
【0033】
多価カルボン酸及びその無水物からなる群から選択される化合物(a3)は、例えばジカルボン酸;三塩基酸以上の多価カルボン酸;並びにこれらの多価カルボン酸の無水物からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルナジック酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、メチルコハク酸、マレイン酸、シトラコン酸、グルタル酸、イタコン酸等が挙げられる。三塩基酸以上の多価カルボン酸としては、例えば、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0034】
化合物(a3)は、第一の樹脂(a)に酸価を与えることで、ソルダーレジスト組成物に希アルカリ水溶液による再分散、再溶解性を付与することを主たる目的として使用される。化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは30mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上となるように調整される。また、化合物(a3)の使用量は、第一の樹脂(a)の酸価が好ましくは160mgKOH/g以下、特に好ましくは130mgKOH/g以下となるように調整される。
【0035】
第一の樹脂(a)が合成される際に、エポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応、並びにこの付加反応による生成物(付加反応生成物)と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、公知の方法が採用され得る。例えばエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応にあたっては、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にエチレン性不飽和化合物(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により好ましくは60〜150℃、特に好ましくは80〜120℃の反応温度で反応させることで、付加反応生成物が得られる。熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。触媒としては第3級アミン類、第4級アンモニウム塩類、トリフェニルホスフィン、トリフェニルスチビンなどが挙げられる。第3級アミン類としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。第4級アンモニウム塩類としては、例えば、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0036】
付加反応生成物と化合物(a3)との付加反応を進行させるにあたっては、付加反応生成物の溶剤溶液に化合物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて撹拌混合することで、反応性溶液が得られる。この反応性溶液を常法により反応させることで、第一の樹脂(a)が得られる。反応条件はエポキシ化合物(a1)とエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応の場合と同じ条件でよい。熱重合禁止剤及び触媒としては、エポキシ化合物(a1)とカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(a2)との付加反応時に使用された化合物をそのまま使用することができる。
【0037】
(A1)成分は、第二の樹脂(b)を含有してもよい。第二の樹脂(b)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物も含まれていてもよい。
【0038】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができる。例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。ヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートは、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物である。
【0039】
第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0040】
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO,PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0041】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;及びN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。N−置換マレイミド類としては、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。芳香環を有さない化合物は、更にポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は被膜の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0042】
第二の樹脂(b)を得るためのエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、適宜のポリマー又はプレポリマーが挙げられる。このエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例として、アクリル酸又はメタクリル酸のエポキシシクロヘキシル誘導体類;アクリレート又はメタクリレートの脂環エポキシ誘導体;β−メチルグリシジルアクリレート、β−メチルグリシジルメタクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。特に、汎用されて入手が容易なグリシジル(メタ)アクリレートが用いられることが好ましい。
【0043】
(A1)成分は、第三の樹脂(c)を含有してもよい。第三の樹脂(c)は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むエチレン性不飽和単量体の重合体におけるヒドロキシル基の一部又は全部にエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物を付加して得られる。エチレン性不飽和単量体には必要に応じてカルボキシル基及びヒドロキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0044】
第三の樹脂(c)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えば上述の第二の樹脂(b)を得るためのカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と同じでよい。
【0045】
第三の樹脂(c)を得るためのヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の具体例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、及びN−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
第三の樹脂(c)を得るためのエチレン性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物の具体例としては、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズAOI」)、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズMOI」)、メタクリロイルオキシエトキシエチルイソシアネート(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズMOI−EG」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズMOI一BM」)、カレンズMOIのイソシアネートブロック体(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズMOI−BP」)、及び1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート)(具体例として昭和電工株式会社;品名「カレンズBEI」)等が挙げられる。
【0047】
(A1)成分全体の重量平均分子量は、800〜100000の範囲内であることが好ましい。この範囲内において、ソルダーレジスト組成物に特に優れた感光性と解像性とが付与される。
【0048】
(A1)成分全体の酸価は30mgKOH/g以上であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物に良好な現像性が付与される。この酸価は60mgKOH/g以上であれば更に好ましい。また、(A1)成分全体の酸価は160mgKOH/g以下であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中のカルボキシル基の残留量が低減し、被膜の良好な電気特性、耐電蝕性及び耐水性等が維持される。この酸価は130mgKOH/g以下であれば更に好ましい。
【0049】
(カルボキシル基含有樹脂(A2))
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基を有し、光重合性官能基を有さないカルボキシル基含有樹脂(A2)(以下、(A2)成分ともいう)を含有することができる。
【0050】
(A2)成分は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含むエチレン性不飽和単量体の重合体を含有する。エチレン性不飽和単量体には更にカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0051】
カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、適宜のポリマー及びプレポリマーを含有することができ、例えばエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有することができる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸、β−カルボキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、メタクリロイルオキシエチルサクシネート、2−プロペノイックアシッド,3−(2−カルボキシエトキシ)−3−オキシプロピルエステル、2−アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和基を複数有する化合物を含有することもできる。より具体的には、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、ヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートに、二塩基酸無水物を反応させて得られる化合物を含有することができる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。ヒドロキシル基を有する多官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタメタクリレートからなる群から選択される。
【0052】
カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と共重合可能な化合物であればよい。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、芳香環を有する化合物と、芳香環を有さない化合物のうち、いずれも含有することができる。
【0053】
芳香環を有する化合物は、例えば2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2〜17)、ECH変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート、EO変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO、PO変性フタル酸(メタ)アクリレート、ビニルカルバゾール、スチレン、ビニルナフタレン、及びビニルビフェニルからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0054】
芳香環を有さない化合物は、例えば直鎖又は分岐の脂肪族、或いは脂環族(但し、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等;及びN−シクロヘキシルマレイミド等のN−置換マレイミド類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。芳香環を有さない化合物は、更に1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を含有してもよい。1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。これらの化合物は被膜の硬度及び油性の調節が容易である等の点で好ましい。
【0055】
(A2)成分を得るために用いられる化合物の種類、比率等は、(A2)成分の酸価が適当な値となるように適宜選択される。(A2)成分の酸価は20〜180mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、35〜165mgKOH/gの範囲内であれば更に好ましい。
【0056】
[光重合性化合物(B)]
光重合性化合物(B)は、ソルダーレジスト組成物に光硬化性を付与する。光重合性化合物(B)は、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有する。
【0057】
光重合性モノマーは、例えばエチレン性不飽和基を有する。光重合性モノマーは、例えば単官能(メタ)アクリレート;並びに多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0058】
光重合性モノマーが、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)を含有することも好ましい。この場合、ソルダーレジスト組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物は、例えば2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品名ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品名ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品名MR−260)、並びに昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品名HFA―6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品名HFAー3003、及びHFA−6127等)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0059】
光重合性プレポリマーとしては、光重合性モノマーを重合させて得られるプレポリマーに、エチレン性不飽和基を付加したプレポリマーや、オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類等が挙げられる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、スピラン樹脂(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)は、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン類;アントラキノン類;チオキサントン類;ベンゾフェノン類;キサントン類;窒素原子を含む化合物;α-ヒドロキシアルキルフェノン類;α-アミノアルキルフェノン類;モノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;アシルホスフィン系光重合開始剤;並びに、オキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。アセトフェノン類としては、例えば、アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。アントラキノン類としては、例えば、2−メチルアントラキノン等が挙げられる。チオキサントン類としては、例えば、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。キサントン類としては、例えば、2,4−ジイソプロピルキサントン等が挙げられる。窒素原子を含む化合物としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等が挙げられる。α-ヒドロキシアルキルフェノン類としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル-ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられる。α-アミノアルキルフェノン類としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4-メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。モノアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−ホスフィネート等が挙げられる。アシルホスフィン系光重合開始剤としては、例えば、ビス−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−4−プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジクロロベンゾイル)−1−ナフチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,5−ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。オキシムエステル系光重合開始剤としては、例えば、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(О‐ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル) −9H−カルバゾール−3−イル] −,1−(0−アセチルオキシム)等が挙げられる。光重合開始剤(C)は、α-ヒドロキシアルキルフェノン類、α-アミノアルキルフェノン類、チオキサントン類、及びアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される2種以上の成分が含まれていることが特に好ましい。
【0061】
[結晶性エポキシ樹脂(D)]
結晶性エポキシ樹脂(D)は、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中に気泡を形成しやすくする。
【0062】
結晶性エポキシ樹脂(D)は、融点が130℃以上であり、好ましくは138℃〜230℃である。
【0063】
結晶性エポキシ樹脂(D)は、エポキシ基を有し且つ結晶性を有するモノマー、プレポリマー及びポリマーからなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。このような化合物は市販され、容易に入手可能である。例えば結晶性エポキシ樹脂(D)は、1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312(ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂)、日本化薬株式会社製の品名GTR−1800(テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0064】
[青色分散剤(E)]
青色分散剤(E)は、着色剤には分類されないものの、被膜に色を付与することができる。ソルダーレジスト組成物が着色剤(F)を含有しない場合、被膜は青色分散剤(E)によって青色になる。更に、青色分散剤(E)は、結晶性エポキシ樹脂(D)の分散性を向上させる。そのため、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜中に、青色分散剤(E)を含有しない場合よりも気泡をより均一に発生させやすくなる。これにより、視認性に優れたマーキングを有する被膜を作製することができる。
【0065】
青色分散剤(E)は、銅フタロシアニンスルホネート誘導体を含有することができる。銅フタロシアニンスルホネート誘導体の具体例としては、ルブリゾール社製の品名ソルスパース5000、ソルスパース12000、ソルスパース22000(いずれも銅フタロシアニンスルホネート誘導体)などが挙げられる。
【0066】
[着色剤(F)]
本実施形態のソルダーレジスト組成物は着色剤(F)を含有することができる。これにより被膜の色を調整し、特に銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成する場合のマーキングの視認性を更に向上することができる。尚、着色剤(F)は、顔料と染料のいずれも含み得る。
【0067】
着色剤(F)は、プリント配線基板の絶縁層の色などに応じて適宜選択すればよく、例えば青色着色剤、黒色着色剤、赤色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤、茶色着色剤などを含有することができる。
【0068】
特に着色剤(F)は、黒色着色剤及び赤色着色剤のうち少なくとも一方を含むのが好ましい。これにより、銅製の配線を備えるプリント配線板上に被膜を形成する場合に、被膜におけるマーキングの視認性が特に高くなる。
【0069】
黒色着色剤は、ペリレン系黒色着色剤を含有することができる。ペリレン系黒色着色剤は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック31、及びカラーインデックス(C.I.)ピグメントブラック32からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。また、ペリレン系黒色着色剤は上記の成分以外に、カラーインデックスの番号はないが、ペリレン系の近赤外線透過黒色着色剤として知られているBASF社の「Lumogen Black FK 4280」及び「Lumogen Black FK 4281」のうち、少なくとも一方を含有することができる。
【0070】
赤色着色剤は、例えば、アントラキノン系赤色顔料、アゾ系赤色顔料、レーキ系赤色顔料、キナクリドン系赤色顔料、及びジケトピロール系赤色顔料からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。アントラキノン系赤色顔料は、例えば、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド83、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド168、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド177、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド216などが挙げられる。赤色着色剤がアントラキノン系赤色着色剤であることにより、ソルダーレジスト組成物から形成される被膜による導体配線の隠蔽性を特に確保しやすい。また、分散性と耐候性に優れている。
【0071】
青色着色剤は、フタロシアニン系青色着色剤、アントラキノン系青色着色剤などの着色剤を含有することができる。
【0072】
緑色着色剤は、例えば、フタロシアニン系緑色着色剤、アントラキノン系緑色着色剤、ペリレン系緑色着色剤、及び金属置換もしくは無置換のフタロシアニン化合物からなる群から選択される一種以上の着色剤を含有することができる。緑色着色剤のより具体的な例として、ピグメントグリーン7;ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0073】
[その他の成分]
ソルダーレジスト組成物は、融点130℃未満の結晶性エポキシ樹脂を含有してもよい。融点130℃未満の結晶性エポキシ樹脂は、例えば、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY(ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120TE(チオエーテル型結晶性エポキシ樹脂)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製の品名YX−4000(ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂)、及び1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(低融点タイプ)からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0074】
また、ソルダーレジスト組成物は、非晶性エポキシ樹脂を含有してもよい。非晶性エポキシ樹脂は、例えば、非晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−695)、非晶性のフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−775)、非晶性のビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON N−865)、非晶性のビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER1001)、非晶性のビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名jER4004P)、非晶性のビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品名EPICLON EXA−1514)、非晶性のビスフェノールAD型エポキシ樹脂、非晶性の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、非晶性のビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、及び非晶性の特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品名YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品名EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−120T)、及び前記以外の非晶性のビスフェノール系エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。
【0075】
ソルダーレジスト組成物は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、ソルダーレジスト組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。
【0076】
有機溶剤は、例えば直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;ケトン類;芳香族炭化水素類;石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ類;カルビトール類;プロピレングリコールアルキルエーテル類;ポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される一種以上の化合物を含有することができる。直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。石油系芳香族系混合溶剤としては、例えば、スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等が挙げられる。セロソルブ類としては、例えば、セロソルブ、ブチルセロソルブ等が挙げられる。カルビトール類としては、例えば、カルビトール、ブチルカルビトール等が挙げられる。プロピレングリコールアルキルエーテル類としては、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。ポリプロピレングリコールアルキルエーテル類としては、例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。酢酸エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等が挙げられる。
【0077】
ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤の割合は、ソルダーレジスト組成物から形成される塗膜を乾燥させる際に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。特に、ソルダーレジスト組成物全体に対して、有機溶剤が5〜99.5質量%の範囲内であることが好ましく、15〜80質量%の範囲内であれば更に好ましい。尚、有機溶剤の好適な割合は、塗布方法などにより異なるので、塗布方法に応じて割合が適宜調節されることが好ましい。
【0078】
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、ソルダーレジスト組成物は、上記成分以外の成分を更に含有してもよい。
【0079】
例えば、ソルダーレジスト組成物は、ブロックドイソシアネート;アミノ樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びに高分子化合物からなる群から選択される一種以上の樹脂を含有してもよい。ブロックドイソシアネートとしては、例えば、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネートなどが挙げられる。アミノ樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂などが挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型のエポキシ樹脂などが挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。
【0080】
ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合、ソルダーレジスト組成物は、更にエポキシ化合物を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール誘導体;アミン化合物;ヒドラジン化合物;リン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される一種以上の成分を含有することができる。イミダゾール誘導体としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられる。アミン化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4−(ジメチルアミノ)−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メトキシ−N,N−ジメチルベンジルアミン、4−メチル−N,N−ジメチルベンジルアミンなどが挙げられる。ヒドラジン化合物としては、例えば、アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジドなどが挙げられる。リン化合物としては、トリフェニルホスフィンなどが挙げられる。これらの成分の市販品の例として、四国化成株式会社製の2MZ−A、2MZ−OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU−CAT3503N、U−CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U−CATSA102、U−CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)が挙げられる。
【0081】
ソルダーレジスト組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばグアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、並びにS−トリアジン誘導体が、挙げられる。S−トリアジン誘導体としては、例えば、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン、2−ビニル−4,6−ジアミノ−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン・イソシアヌル酸付加物などが挙げられる。
【0082】
ソルダーレジスト組成物は、硬化促進剤;共重合体;レベリング剤;密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;高分子分散剤;並びに無機フィラーからなる群から選択される一種以上の成分を含有してもよい。共重合体としては、例えば、シリコーン、アクリレートなどが挙げられる。密着性付与剤としては、例えば、シランカップリング剤などが挙げられる。無機フィラーとしては、例えば、硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。
【0083】
ソルダーレジスト組成物は、更に公知の光重合促進剤、増感剤等を含有してもよい。例えばソルダーレジスト組成物は、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等を含有してもよい。
【0084】
[ソルダーレジスト組成物に含まれる各成分の配合量及び調製方法]
ソルダーレジスト組成物中の成分の量は、ソルダーレジスト組成物が光硬化性を有しアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0085】
カルボキシル基含有樹脂(A)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物の固形分量に対して20〜65質量%の範囲内であれば好ましく、25〜55質量%の範囲内であればより好ましく、30〜50質量%の範囲内であれば更に好ましい。尚、ここでいう固形分量とは、ソルダーレジスト組成物から被膜を形成する過程で揮発する溶剤などの成分を除いた、全成分の合計量のことである。
【0086】
光重合性化合物(B)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して5〜60質量%の範囲内であれば好ましく、10〜50質量%の範囲内であればより好ましく、15〜40質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0087】
光重合開始剤(C)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、3〜40質量%の範囲内であればより好ましく、5〜25質量%の範囲内であれば更に好ましい。
【0088】
結晶性エポキシ樹脂(D)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して15〜200質量%の範囲内であることが好ましく、20〜100質量%の範囲内であればより好ましく、25〜80質量%の範囲内であれば更に好ましく、30〜60質量%の範囲内であれば特に好ましい。
【0089】
青色分散剤(E)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。青色分散剤(E)の含有割合が上記範囲内であれば、後述するプリント配線板1と被膜3との密着性をより高くすることができ、さらに後述する第一の領域33と第二の領域34との境界をより明確にすることができる。特に、青色分散剤(E)の含有割合が5質量%以下であれば、プリント配線板1と被膜3との密着性を特に高くすることができる。青色分散剤(E)の含有割合が3質量%以下であれば、プリント配線板1と被膜3との密着性を特に高くすることができるとともに、第一の領域33と第二の領域34との境界を特に明確にすることができる。
【0090】
ソルダーレジスト組成物が着色剤(F)を含有する場合、着色剤(F)の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1質量%の範囲内であればより好ましい。着色剤(F)の含有割合が上記範囲内であれば、被膜におけるマーキングの視認性をより高くすることができる。黒色着色剤の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1質量%の範囲内であればより好ましい。赤色着色剤の含有割合は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.01〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.05〜1質量%の範囲内であればより好ましい。
【0091】
上記のようなソルダーレジスト組成物の原料が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト組成物が調製され得る。ソルダーレジスト組成物をロール混練することで、結晶性エポキシ樹脂(D)や無機顔料の良好な分散性が得られ、視認性を向上させることができる。
【0092】
保存安定性等を考慮して、ソルダーレジスト組成物の原料の一部を混合することで第一剤を調製し、原料の残部を混合することで第二剤を調製してもよい。例えば、ソルダーレジスト組成物の原料のうち、光重合性化合物(B)と、有機溶剤の一部と、結晶性エポキシ樹脂(D)とを予め混合して分散させることで第一剤を調製し、ソルダーレジスト組成物の原料のうち残部を混合して分散させることで第二剤を調製してもよい。この場合、適時必要量の第一剤と第二剤とを混合することで、ソルダーレジスト組成物を調製することができる。
【0093】
{被膜及び被覆プリント配線板}
被覆プリント配線板は、
図3に示すように、プリント配線板1と、ソルダーレジスト組成物から形成された被膜3とを備える。プリント配線板1は、絶縁層と、絶縁層上にある銅製の配線とを備える。
被膜3は、絶縁層及び配線を覆っている。
【0094】
絶縁層の色は特に限定されず、例えば、黄色、黄緑色、白色、クリーム色、褐色、オレンジ色、緑色又は黒色であるのが好ましい。
【0095】
プリント配線板1としては、例えば、紙フェノール基板(FR−1、FR−2)、紙エポキシ基板(FR−3、アイボリー色)、ガラスエポキシ基板(ガラス布エポキシ)(FR−4、FR−5)、ガラスマットポリエステル基板(FR−6)、ガラスコンポジット基板(ガラス紙エポキシ)(CEM−1)、ガラスコンポジット基板(ガラス基材エポキシ)(CEM−3)、ガラスポリイミド基板、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂(テフロン(登録商標))基板、金属基板(主にアルミニウム)、セラミック基板などが挙げられる。
【0096】
プリント配線板1が、リジッド材及びフレキシブル材のうち少なくとも一方を含むのが好ましい。
【0097】
被膜3は、
図3に示すように、第一の領域33と、この第一の領域33よりも光透過率が高い第二の領域34とを備える。第一の領域33は、気泡を含有する。第二の領域34は、気泡を含有せず或いは気泡の割合が第一の領域33よりも低い。このため、第一の領域33は第二の領域34よりも光透過性が低い。
【0098】
被膜3を外部から観察すると、第一の領域33では気泡による光の散乱が生じるため白っぽい色調になり、かつ下地であるプリント配線板1の色は透けて見えにくい。一方、第二の領域34では気泡による光の散乱が無いか少ないためプリント配線板1の色が透けて見えやすい。そのため第二の領域34の外観色は、第二の領域34自身の色とプリント配線板1の色とが混ざった色になる。すなわち、第一の領域33と第二の領域34との間には外観の相違がある。本実施形態では、被膜3が青色分散剤(E)を含有するため、第二の領域34の外観色(すなわち第二の領域34自身の色とプリント配線板1の色とが混ざった色)の色調と、第一の領域33の外観色の色調とが、大きく異なる。このため、第一の領域33と第二の領域34を利用して、視認性の高いマーキングを得ることができる。被膜3が着色剤(F)を更に含有すると、第一の領域33の外観色と第二の領域34の外観色との色調の差が更に大きくなり、マーキングの視認性が更に向上する。
【0099】
このように被膜3に第一の領域33及び第二の領域34を形成することで、被膜3に視認性の高いマーキングを容易に形成することができる。例えば第一の領域33が適宜の図形、文字等の形状に形成されることで、第一の領域33によるマーキングが形成される。また、第二の領域34が適宜の図形、文字等の形状に形成されることで、第二の領域34によるマーキングが形成されてもよい。このため、被膜3の形成と同時に、マーキングを施すことができる。
【0100】
被膜3の厚みは、例えば5〜60μmの範囲内である。このように被膜3は、従来の二層の被膜よりも被膜全体の厚みを薄くすることができるので、例えば、被覆プリント配線板1を作製する際、露光(UV光)が被膜3の表層から深部まで十分に届きやすく、プリント配線板1と被膜3との密着性を向上させることができる。また、この厚み範囲において、第一の領域33の外観色と第二の領域34の外観色との相違が明確に視認可能である。
【0101】
第一の領域33における気泡の割合は3〜70%の範囲内であることが好ましく、5〜60%の範囲内であれば更に好ましい。また、第一の領域33における気泡の割合の値に対する、第二の領域34における気泡の割合の値の割合は、0〜5%の範囲内であることが好ましい。
【0102】
尚、この気泡の割合は、被膜3の表面を研磨することで現れる面(すなわち、被膜3の表面に沿った被膜3の断面)における、長径0.5μm以上の気泡の面積割合である。この面積割合は、例えば塗膜における20μm
2の表面積を有する面における長径0.5μm以上の気泡の面積に基づいて導出される。
【0103】
これらの割合は、後述する被膜及び被膜を備える被覆プリント配線板の製造方法において、露光時の第一の部分21の露光量及び第二の部分22の露光量を適宜調整することで、制御されうる。
【0104】
{被膜及び被膜を備えるプリント配線板の製造方法}
本実施形態の被膜及び被膜を備えるプリント配線板の製造方法を、
図1〜3を参照して説明する。
【0105】
本実施形態の被膜の製造方法は、
〈a〉本実施形態のソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成する工程、
〈b〉塗膜2を露光する工程、及び
〈c〉露光後の塗膜2を加熱することで被膜3を形成する工程を含む。
【0106】
前記〈b〉の工程では、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には光を照射せず、或いは第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。
【0107】
前記〈c〉の工程では、加熱により第一の部分21内に気泡を発生させることで、被膜3に気泡を含有する第一の領域33と、気泡を含有せず或いは気泡の割合が第一の領域33よりも低い第二の領域34を形成する。
【0108】
上記の被膜の製造方法は、〈b〉の工程の後、〈c〉の工程の前に、塗膜2を現像液で現像する工程を含まなくてもよく、塗膜2を現像液で現像する工程を含んでもよい。
【0109】
本実施形態の被覆プリント配線板の製造方法は、
被覆プリント配線板を製造する方法であって、
〈d〉本実施形態のソルダーレジスト組成物を、プリント配線板5上に絶縁層及び配線を覆うように配置することで、塗膜2を形成する工程、
〈e〉塗膜2を露光する工程、
〈f〉露光後の塗膜2をアルカリ性現像液で現像する工程、及び
〈g〉現像後の塗膜2を加熱することで被膜3を形成する工程を含む。
【0110】
前記〈e〉の工程では、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。
【0111】
前記〈g〉の工程では、加熱により第一の部分21内に気泡を発生させることで、被膜3に気泡を含有する第一の領域33と、気泡を含有せず或いは気泡の割合が第一の領域33よりも低い第二の領域34を形成する。
【0112】
[工程〈a〉,〈d〉]
工程〈a〉,〈d〉では、プリント配線板1上に、本実施形態のソルダーレジスト組成物を塗布して、
図1に示すように本実施形態のソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成する。この際、工程〈d〉では、本実施形態のソルダーレジスト組成物を、プリント配線板上に絶縁層及び配線を覆うように配置することで、塗膜2を形成する。
【0113】
ソルダーレジスト組成物の塗布方法は、公知の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。
【0114】
必要に応じて、ソルダーレジスト組成物中の有機溶剤を揮発させるために、塗膜2を加熱する(予備乾燥)。この場合の加熱温度は、ソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ樹脂(D)の融点よりも低い温度であることが好ましく、特にソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ樹脂(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度であることが好ましい。この加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内である。
【0115】
プリント配線板1上に塗膜2を形成するにあたっては、予め適宜の支持体上にソルダーレジスト組成物を塗布してから乾燥することでドライフィルムを形成する。乾燥条件は、ソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ樹脂(D)の融点よりも低い温度であることが好ましく、特にソルダーレジスト組成物中の結晶性エポキシ樹脂(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度であることが好ましい。この加熱温度は、例えば60〜100℃の範囲内である。このドライフィルムをプリント配線板1に重ねてから、ドライフィルムとプリント配線板1に圧力をかけることで、プリント配線板1上にドライフィルムを転着させてもよい(ドライフィルム法)。このドライフィルムが塗膜2となる。この場合、予備乾燥が省略されてもよい。
【0116】
[工程〈b〉,〈e〉]
工程〈b〉,〈e〉では、
図2に示すように、塗膜2にマスク4を介して光を照射することで、塗膜2を露光する。これにより、塗膜2の表層から深部にわたって効率良く光硬化反応が進む。特に、塗膜2は単層であるので、従来の二層の被膜よりも全体の膜厚が薄く、塗膜2は表層から深部に亘って充分に硬化される。
【0117】
この際、塗膜2における第一の部分21に光を照射し、塗膜2における第一の部分21とは異なる第二の部分22には第一の部分21よりも露光量が低くなるように光を照射する。また、塗膜2における第一の部分21及び第二の部分22とは異なる第三の部分23には光を照射しない。このように光を照射すると、塗膜2における第一の部分21では光重合性化合物の光重合反応が進行する。一方、第二の部分22では、第一の部分21よりも程度が低いものの、光重合性化合物の光重合反応が進行する。第三の部分23では、光重合性化合物の光重合反応が進行しない。
【0118】
第一の部分21における露光量は均一であってもよく、第一の部分21内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。また、第二の部分22に光を照射する場合、第二の部分22における露光量は均一であってもよく、第二の部分22内に互いに露光量の異なる複数の部分が存在してもよい。
【0119】
露光のための光は、この光の照射を受けてソルダーレジスト組成物中の光重合性化合物の光重合反応が進行するように、選択される。例えば露光のための光として、紫外線、可視光、又は近赤外線が選択される。紫外線が選択される場合、紫外線源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ及びメタルハライドランプからなる群から選択される。
【0120】
マスク4は、互いに光透過性の程度が異なる三種類の部分を備える。例えばマスク4は、光透過性を有する部分(以下、透過性部41という)と、透過性部41よりも低い光透過性を有する部分(以下、低透過性部42という)と、光透過性を有しない部分(以下、非透過性部43という)とを備える。
【0121】
このマスク4を介して塗膜2が露光されると、塗膜2における透過性部41に対応する部分(第一の部分21)には光が照射される。塗膜2における低透過性部42に対応する部分(第二の部分22)には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射される。塗膜2における非透過性部43に対応する部分(第三の部分23)には、光が照射されない。尚、第一の部分21は露光時に光が照射される部分であり、第二の部分22は露光時に光が第一の部分21よりも低い露光量で光が照射される部分であり、第三の部分23は露光時に光が照射されない部分であると、いうこともできる。マスク4は、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23が、塗膜2における所定の箇所に位置するように、設計される。
【0122】
第一の部分21の露光量に対する、第二の部分22の露光量の割合は、例えば1〜75%の範囲内であり、特に1.2〜60%の範囲内であることが好ましい。
【0123】
第一の部分21の露光量は、例えば100〜5000mJ/cm
2の範囲内であり、第二の部分22の露光量は、例えば20〜500mJ/cm
2の範囲内である。
【0124】
尚、本実施形態ではマスク4を用いたが、第一の部分21、第二の部分22及び第三の部分23における露光量が所望の値にコントロール可能であれば、上記のようなマスク4が用いられなくてもよい。例えば、まず塗膜2に、第三の部分23を遮蔽し、かつ第一の部分21及び第二の部分22を遮蔽しないマスク(第一のマスク)を介して、光を照射する。続いて第一のマスクに、第二の部分22を遮蔽し、かつ第一の部分21は遮蔽しないマスク(第二のマスク)を重ね、この第一のマスクと第二のマスクを介して、更に光を照射してもよい。この場合でも、第一の部分21には光が照射され、第二の部分22には、第一の部分21よりも低い露光量で光が照射され、第三の部分23には、光が照射されない。
【0125】
プリント配線板1上に、ソルダーレジスト組成物からなる塗膜2を形成した時点から、塗膜2の露光が完了する時点までの間、塗膜2の温度を、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点よりも低い温度に維持することが好ましい。この場合、第一の領域33内の気泡の割合が、より高くなる。このため第一の領域33と第二の領域34との間の外観色の相違が、より顕著になる。これは、第一の部分21内の光重合性化合物が重合する前に第一の部分21内で結晶性エポキシ樹脂(D)が溶融すると、第一の部分21内で結晶性エポキシ樹脂(D)が安定してしまい、このため塗膜2の露光後に第一の部分21を加熱しても、第一の部分21が変形しにくくなるためであると、推察される。更に好ましくは、ソルダーレジスト組成物をプリント配線板1上に配置する時点から、塗膜2の露光が完了する時点までの間、塗膜2の温度を、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点から30℃減じた温度よりも低い温度に維持する。
【0126】
[工程〈f〉]
工程〈f〉では、露光後の塗膜2をアルカリ性現像液で現像する。これにより、塗膜2における非透過性部43に対応する部分である塗膜2の第三の部分23が、プリント配線板1上から除去される。塗膜2の第一の部分21及び第二の部分22は、プリント配線板1上に残存する。
【0127】
アルカリ性現像液の具体例として、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液等が挙げられる。現像液として、有機アミンなどを使用することもできる。有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ性現像液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。
【0128】
[工程〈c〉,〈g〉]
工程〈c〉,〈g〉では、プリント配線板1上の露光後の塗膜2を加熱することで被膜3を形成する。このように塗膜2が加熱されると、第一の部分21内には、気泡が形成される。特に、本実施形態のソルダーレジスト組成物は、青色分散剤(E)を含有し、結晶性エポキシ樹脂(D)の分散性が高いので、青色分散剤(E)を含有しない場合より第一の部分21内に気泡が形成されやすくなる。一方、第二の部分22内には、加熱されても気泡は形成されず、或いは、気泡は形成されるが、この気泡の割合が第一の部分21よりも低くなる。このため、被膜3における第一の領域33の光透過性が、第二の領域34よりも低くなる。また、第一の領域33では、第二の領域34よりも光の散乱が生じやすくなる。また、このように塗膜2を加熱すると、ソルダーレジスト組成物がエポキシ化合物を含有する場合は、エポキシ化合物の熱硬化反応が進行する。
【0129】
このように第一の部分21内に気泡が形成されるのは、次の理由によるためと推察される。
【0130】
第一の部分21は、塗膜2の露光時に光が照射されているため、光重合性化合物の光重合反応により生成した重合体を含んでいる。この状態で塗膜2を加熱すると、塗膜2内の結晶性エポキシ樹脂(D)が溶融することで、塗膜2が変形しようとするが、第一の部分21は、重合体を含有するため、結晶性エポキシ樹脂(D)の溶融に追随して変形しにくい。このために、第一の部分21内に気泡が生じるものと、考えられる。一方、第二の部分22は、光重合性化合物の重合体を含まず、或いはこの重合体の割合が第一の部分よりも低い。このため、塗膜2を加熱すると、第二の部分22は、第一の部分21と比べて、結晶性エポキシ樹脂(D)の溶融に追随して変形しやすい。このために、第二の部分22内に気泡が生じず、或いは第二の部分22内に気泡の割合が第一の部分21よりも低くなるものと、考えられる。
【0131】
塗膜2の加熱温度は、好ましくはTh≧Tm−30の関係を満たし、より好ましくはTm+100≧Th≧Tm−30の関係を満たす。塗膜2の加熱温度が上記範囲内であれば、ソルダーレジスト組成物中の成分の熱による劣化を抑制することができる。この式において、Th(℃)は塗膜2の加熱温度であり、Tm(℃)は、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点である。加熱温度は、例えば100〜200℃の範囲内である。また加熱時間は10分〜5時間の範囲内である。
【0132】
尚、塗膜2を加熱する際の加熱温度が、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点よりも低くても、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点から30℃を減じた温度以上であれば、第一の部分21内に気泡が生じる。その理由は明確には解明されていないが、塗膜2内では結晶性エポキシ樹脂(D)に別の化合物が混入することで、結晶性エポキシ樹脂(D)の融点降下(凝固点降下)が生じるのが、理由の一つであると推察される。
【0133】
塗膜2の加熱後に、塗膜2全体に光を照射してもよい。この場合、塗膜2内に未反応のまま残存する光重合性化合物の、光重合反応が進行する。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0135】
[カルボキシル基含有樹脂溶液の調製]
還流冷却管、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取り付けた四つ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、品名YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72質量部、及びトリフェニルホスフィン1.5質量部を入れることで、混合物を調製した。この混合物を加熱温度110℃、加熱時間10時間の条件で加熱することで、付加反応を進行させた。続いて、混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加えてから、更に混合物を加熱温度80℃、加熱時間3時間の条件で加熱した。これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(カルボキシル基含有樹脂溶液A)を得た。
【0136】
[原料]
カルボキシル基含有樹脂溶液A以外に、次の原料を用意した。
・結晶性エポキシ化合物A:1,3,5−トリス(2,3−エポキシプロピル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(高融点タイプ)、融点150〜158℃
・結晶性エポキシ化合物B:ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC−1312、融点138〜145℃
・結晶性エポキシ化合物C:ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂、新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV−80XY、融点75〜85℃
・非晶性エポキシ化合物溶液:非晶性のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、DIC株式会社製の品名EPICLON N−695を固形分70%でジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートに溶解した溶液
・光重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製の品名KAYARAD DPHA)
・光重合開始剤A:BASF社製の品名Irgacure TPO
・光重合開始剤B:BASF社製の品名Irgacure 184
・硫酸バリウム:堺化学工業株式会社製の品名バリエースB30
・微粉シリカ:株式会社トクヤマ製の品名レオロシールMT−10C
・メラミン:日産化学工業株式会社製の品名メラミンHM
・消泡剤:信越化学工業株式会社製の品名KS−66
・溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
・青色分散剤:銅フタロシアニンスルホネート誘導体、ルブリゾール社製の品名ソルスパース5000
・青色着色剤:フタロシアニンブルー、大日精化工業株式会社製の品名シアニンブルー4940
・黒色着色剤:ペリレン系黒色顔料、BASF社製の品名Paliogen Black S 0084
・赤色着色剤:アントラキノン系赤色顔料、BASF社製の品名Paliogen Red L 4045
・緑色着色剤:東洋インキ製造社製の品名リオノールグリーン6Y−501
【0137】
[実施例及び比較例]
後掲の表1及び表2に示す原料を混合し、三本ロールにより分散させて、ソルダーレジスト組成物を調製した。尚、結晶性エポキシ化合物A,Bは、予めジェットミル或いは乳鉢により、平均粒径が20μm以下となるように粉砕した。
【0138】
実施例1〜12、比較例1〜4においては、次のプリント配線板を用意し、各プリント配線板上に、得られたソルダーレジスト組成物をスクリーン印刷法で塗布することで、絶縁層と、絶縁層上にある銅製の配線を覆う1層の塗膜を形成した。
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が黄色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が黄緑色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が白色(クリーム色)であるプリント配線板(ガラスコンポジット基板)
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が明るい褐色であるプリント配線板(紙フェノール基板)
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面がオレンジ色であるプリント配線板(ポリイミド基板)
・厚み35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が黒色であるプリント配線板(黒化処理ガラスエポキシ基板)
【0139】
また、比較例5においては、厚さ35μmの銅製の配線を備える、絶縁層表面の色が黄色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)を用意し、このプリント配線板上に、黒色のネガ型フォトソルダーレジストインク(表2の比較例5Uに示す原料を混合したもの)を塗布し、80℃で15分間加熱した。この加熱後の銅製の配線上でのフォトソルダーレジストインクの塗膜の厚みは15μmであった。このフォトソルダーレジストインクの塗膜の上に、得られた混合物(表2の比較例5Tに示す原料を混合したもの)をスクリーン印刷法で塗布することで、2層の塗膜を形成した。
【0140】
この塗膜を80℃で30分間、予備加熱した。
【0141】
続いて、光透過性を有する透過性部と透過性部よりも低い光透過性を有する低透過性部と光透過性を有さない非透過性部とを備えるマスクを介して、塗膜に紫外線を照射することで、塗膜を露光した。塗膜における透過性部を透過する光が照射される部分における露光量は500mJ/cm
2(第一の領域)、低透過性部を透過する光が照射される部分における露光量は80mJ/cm
2(第二の領域)であった。
【0142】
露光後の塗膜に、1%Na
2CO
3水溶液を0.2MPaの圧力で60秒間スプレー噴射することで、現像した。
【0143】
続いて、塗膜を160℃で1時間加熱した。これにより実施例1〜12、比較例1〜4においては、銅製の配線上25μmの厚みの被膜を形成した。また、比較例5においては、銅製の配線上40μmの厚みの被膜を形成した。
【0144】
尚、ダム残り、密着性、耐酸性、耐アルカリ性、耐メッキ性、はんだ耐熱性、鉛筆硬度及び耐電蝕性の評価項目においては、絶縁層表面の色が黄色であるプリント配線板(ガラスエポキシ基板)上に形成した被膜を用いて、評価を行った。
【0145】
[評価]
1.外観色
各実施例及び比較例で形成された被膜の外観を目視で観察し、第一の領域と第二の領域とが、明瞭に区別可能か否かを確認した。その結果、明瞭に区別可能の場合を「A」、区別可能の場合を「B」、区別不明瞭の場合を「C」と、評価した。
【0146】
2.ダム残り
500mJ/cm
2の照射量で露光される箇所と露光されない箇所を有し、幅40μm、50μm、60μm、及び70μmのソルダーダムが形成されるようなマスクを用い、絶縁層上にダムを形成した。形成したソルダーダムに対して、セロハン粘着テープを貼り付けた後、これを剥離する剥離試験(テープテスト)を行った。この剥離試験の結果、残存したソルダーダムのうち、最も線幅の細いもの(ダム残り)を測定して、下記のように判定した。
A:最も細いソルダーダムの線幅が、40μmであるもの
B:最も細いソルダーダムの線幅が、50μm、60μmであるもの
C:最も細いソルダーダムの線幅が、70μm、あるいは70μmのソルダーダムが剥離したもの
【0147】
3.密着性
JIS D0202の試験方法に従って、テストピースの銅製の配線上における被膜に碁盤目状に100マスのクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を次の評価基準により評価した。
A:クロスカット残存率が81〜100%
B:クロスカット残存率が71〜80%
C:クロスカット残存率が70%以下
【0148】
4.耐酸性
室温下でテストピースを10%の硫酸に30分間浸漬した後、被膜の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0149】
5.耐アルカリ性
室温下でテストピースを10%の水酸化ナトリウムに1時間浸漬した後、被膜の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0150】
6.耐メッキ性
市販品の無電解ニッケルメッキ浴及び無電解金メッキ浴を用いて、テストピースにめっきを施した。メッキの状態を観察した。更に、メッキ後の被膜に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次の評価基準により評価した。
A:被膜に、メッキによる外観変化、テープ剥離試験による剥離、メッキの潜り込みの、いずれも認められない。
B:被膜にメッキによる外観変化は認められないが、テープ剥離試験による剥離が一部認められる。
C:被膜にメッキによる浮き上がりが認められ、テープ剥離試験による剥離も認められる。
【0151】
7.はんだ耐熱性
テストピースに水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品名LONCO 3355−11)を塗布し、続いてこのテストピースを260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬し、続いてこれを水洗した。この一連の操作を3回繰り返した後のテストピースにおける被膜の外観を観察し、次の評価基準により評価した。
A:異常が認められない。
B:少し変化が認められる。
C:被膜の剥離等の大きな変化が認められる。
【0152】
8.鉛筆硬度
テストピースにおける被膜の鉛筆硬度を、三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて、JIS K5400に準拠して測定して評価した。
【0153】
9.耐電蝕性
IPC B−25くし型電極Bクーポン上に、上記テストピースの場合と同じ条件で被膜を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。この評価用のプリント配線板のくし型電極にDC100Vのバイアス電圧を引加しながら、評価用のプリント配線板を40℃、90%R.H.の条件下に500時間曝露した。この試験後の評価用のプリント配線板におけるマイグレーションの有無を確認した。その結果を次に示すように評価した。
A:全くマイグレーションが確認されない。
B:若干のマイグレーションが確認される。
C:マイグレーションが発生している。
【0154】
10.L値(明るさ)評価
色差計により銅製の配線上での第一の領域のL値(L
a)と第二の領域のL値(L
b)との差(ΔL=L
a−L
b)を測定し、その結果を次に示すように評価した。L値(明るさ)とは、JIS 8781−4:2013に規定する CIE 1976 L
*a
*b
*色空間における明度指数「L
*」を指す。
A:ΔLが+6以上
B:ΔLが+4以上、+6未満
C:ΔL+4未満
【0155】
11.Y値評価
色差計により銅製の配線上での第一の領域のY値(Y
a)と第二の領域のY値(Y
b)との差(ΔY=Y
a−Y
b)を測定し、その結果を次に示すように評価した。Y値とは、XYZ表色系における刺激値「Y」を指す。
A:ΔYが+3以上
B:ΔYが+1.5以上、+3未満
C:ΔYが+1.5未満
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
表1及び表2によると、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)および青色分散剤(E)が用いられている実施例1〜12では、銅製の配線上、黄色の絶縁層上、黄緑色の絶縁層上、白色の絶縁層上、褐色の絶縁層上、及びオレンジ色の絶縁層上の被膜の外観色が「A」又は「B」と評価されている。これに対して、青色分散剤(E)が用いられていない比較例1〜3や融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)が用いられていない比較例4では、黄色の絶縁層上、黄緑色の絶縁層上、白色の絶縁層上、褐色の絶縁層上、及びオレンジ色の絶縁層上の被膜の外観色が「C」と評価されている。比較例4においては、黒色の絶縁層上の外観色も「C」と評価されている。
【0159】
これは、実施例1〜12では、青色分散剤(E)を用いることで結晶性エポキシ樹脂(D)の分散性が向上し、青色分散剤(E)を用いない場合よりも、第一の領域に気泡がより均一に発生したため、すなわち第一の領域の光透過率がより低くなったため、下地の色である絶縁層の色にかかわらず、第一の領域と第二の領域との境界が明瞭となったと考えられる。また、比較例4においては、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)を用いなかったため、第一の領域に気泡がほとんど発生せず、黒色の絶縁層上においても第一の領域と第二の領域との境界が不明瞭であったと考えられる。
【0160】
表1及び表2によると、1層の塗膜を硬化させて得られた被膜を備える実施例1〜12では、ダム残り及び密着性が「A」又は「B」と評価されている。これに対して、2層の塗膜を硬化させて得られた被膜を備える比較例5では、ダム残り及び密着性がともに「C」と評価されている。
【0161】
これは、比較例5の被膜は2層の塗膜を硬化させて得られた被膜であるので、実施例1〜12の被膜よりも膜厚が厚く、露光の際、塗膜が表層から深部に亘って充分に硬化されていないためであると考えられる。
【0162】
表1及び表2によると、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)が用いられている実施例1〜12では、L値評価及びY値評価が「A」又は「B」と評価されている。これに対して、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)が用いられていない比較例4では、L値評価及びY値評価がともに「C」と評価されている。
【0163】
これは、実施例1〜12では、融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)を用いることで融点130℃以上の結晶性エポキシ樹脂(D)を用いない場合よりも第一の領域に気泡が多く発生し、気泡が光を反射したため、L値評価およびY値評価が高い評価であったと考えられる。
【0164】
表1及び表2によると、カルボキシル基含有樹脂に対する青色分散剤の含有割合が、1.9質量%である実施例2、及び3質量%である実施例8では、銅製の配線上、黄色の絶縁層上、黄緑色の絶縁層上、白色の絶縁層上、褐色の絶縁層上、オレンジ色の絶縁層上及び黒色の絶縁層上の被膜の外観色、並びに、ダム残り及び密着性が「A」と評価されている。カルボキシル基含有樹脂に対する青色分散剤の含有割合が、5質量%である実施例9では、黄色の絶縁層上、黄緑色の絶縁層上、白色の絶縁層上、褐色の絶縁層上、及びオレンジ色の絶縁層上の絶縁層上の外観色が「B」と評価され、ダム残り及び密着性が「A」と評価されている。カルボキシル基含有樹脂に対する青色分散剤の含有割合が、9.6質量%である実施例10、11.5質量%である実施例11では、銅製の配線上、黄色の絶縁層上、黄緑色の絶縁層上、白色の絶縁層上、褐色の絶縁層上、及びオレンジ色の絶縁層上の外観色が「B」と評価され、ダム残りが「B」と評価されている。
【0165】
これらの結果から、カルボキシル基含有樹脂に対する青色分散剤の含有割合が5質量%以下であればプリント配線板と被膜との密着性が特に高く、3質量%以下であれば第一の領域と第二の領域との境界が特に明確になることがわかる。
【0166】
青色分散剤(E)は、ソルダーレジスト組成物に含まれるカルボキシル基含有樹脂(A)に対して0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましく、1〜3質量%であることが更に好ましい。