特許第6232197号(P6232197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232197
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】樹脂送出用ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 2/18 20060101AFI20171106BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20171106BHJP
   F16J 15/44 20060101ALI20171106BHJP
   F04C 13/00 20060101ALI20171106BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F04C2/18 321D
   F16C33/78 Z
   F16J15/44 B
   F04C13/00 B
   F04C15/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-62936(P2013-62936)
(22)【出願日】2013年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-185628(P2014-185628A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2016年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】510218870
【氏名又は名称】株式会社積水化成品天理
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】川本 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】樋上 洋一
【審査官】 北川 大地
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−086389(JP,U)
【文献】 実開昭50−061253(JP,U)
【文献】 特開2002−139064(JP,A)
【文献】 実開昭55−127167(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/18
F04C 13/00
F04C 15/00
F16C 33/78
F16J 15/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ本体の内部に加熱により溶融された溶融樹脂を一方側から他方側へ送出するための流路と、該流路にあってそれぞれ別の軸体回りに回転する一対の回転送出部とを備え、前記軸体のうちの少なくとも一方は、前記ポンプ本体の側壁を貫通してポンプ本体の外部へ延長された端側部を備え、前記ポンプ本体内に送られてポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出た溶融樹脂を封止するためのシール部が、ポンプ本体の外部に配置され、
該シール部は、前記軸体の端側部の長手方向に沿って配置されて前記漏れ出た溶融樹脂を軸体の回転に伴ってポンプ本体の内部側へ押し戻す軸シールと、該軸シールに対して前記貫通部分と反対側に離れる軸体の軸心方向側方に位置ずれして配置された封止溝とを備え、該封止溝は、前記端側部の軸心方向に直交する方向で該端側部の外周を覆うよう設けられ、
封止溝の径方向外方に、冷却媒体が供給される環状溝を備えていることを特徴とする樹脂送出ポンプ。
【請求項2】
軸シールはビスコシールであり、封止溝は、ビスコシールに隣接して配置されている請求項1記載の樹脂送出ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱により溶融された溶融樹脂を一方側から他方側へ送出する樹脂送出ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂送出ポンプとして、下記特許文献1が提案されている。特許文献1に記載された樹脂送出ポンプは、加熱により溶融された溶融樹脂を第一の押出機(一方側)から第二の押出機(他方側)に向けて送るよう構成されている。この樹脂送出ポンプでは、ポンプ本体(ポンプボディ)に一対のギヤロータが収納され、各ギヤロータの軸体の端側部がポンプ本体の側壁を貫通して、側方に突出されている。
【0003】
樹脂送出ポンプは、シール部を備えている。シール部では、圧力を受けつつポンプ本体内に送られた溶融樹脂が、ポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出るのを防止している。この場合、シール部としてビスコシールが用いられている。ビスコシールは、軸体の端側部に外嵌装着されるとともに、ポンプ本体の側壁に当接するようにして取付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−139064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の樹脂送出ポンプのように、シール部であるビスコシールが、ポンプ本体から突出されている軸体の端側部に外嵌装着されるとともに、ポンプ本体の側壁に当接するようにして取付けられているだけであると、溶融樹脂に加わっている圧力によっては、溶融樹脂がシール部から外部に漏れ出してしまう場合が考えられる。
【0006】
そこで本発明は、溶融樹脂が外部へ漏れ出すのを確実に防止し得る樹脂送出ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポンプ本体の内部に加熱により溶融された溶融樹脂を一方側から他方側へ送出するための流路と、該流路にあってそれぞれ別の軸体回りに回転する一対の回転送出部とを備え、前記軸体のうちの少なくとも一方は、前記ポンプ本体の側壁を貫通してポンプ本体の外部へ延長された端側部を備え、前記ポンプ本体内に送られてポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出た溶融樹脂を封止するためのシール部が、ポンプ本体の外部に配置され、該シール部は、前記軸体の端側部の長手方向に沿って配置されて前記漏れ出た溶融樹脂を軸体の回転に伴ってポンプ本体の内部側へ押し戻す軸シールと、該軸シールに対して前記貫通部分と反対側に離れる軸体の軸心方向側方に位置ずれして配置された封止溝とを備え、該封止溝は、前記端側部の軸心方向に直交する方向で該端側部の外周を覆うよう設けられ、封止溝の径方向外方に、冷却媒体が供給される環状溝を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記構成において、ポンプ本体の流路にある溶融樹脂は、別の軸体回りに回転する一対の回転送出部の回転によって送出され、ポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出た溶融樹脂は、シール部の軸シールにより、軸体の回転に伴ってポンプ本体の内部側へ押し戻され、押し戻されきれなかった溶融樹脂は、シール部の封止溝に至って封止される。
【0009】
本発明の樹脂送出ポンプでは、軸シールはビスコシールであり、封止溝は、ビスコシールに隣接して配置された構成を採用することができる。この構成によれば、ポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出た溶融樹脂は、ビスコシールにより、軸体の回転に伴ってポンプ本体の内部側へ押し戻される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂送出ポンプによれば、ポンプ本体の側壁における軸体の貫通部分からポンプ本体の外部に漏れ出た溶融樹脂は、シール部の軸シールにより、軸体の回転に伴ってポンプ本体の内部側へ押し戻され、押し戻されきれなかった溶融樹脂は、シール部の封止溝に至って封止されることで、溶融樹脂が樹脂送出ポンプの外部へ漏れ出すのを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を表し、樹脂シートの製造設備に敷設されるギヤポンプの正面断面図である。
図2】同平面断面図である。
図3】同ギヤポンプが備えたシール部の平面断面図である。
図4】同側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る樹脂送出ポンプの一実施形態について説明する。この場合、樹脂送出ポンプはギヤポンプである。ギヤポンプを用いた樹脂シートの製造設備の概略構成として、これは、ポリスチレン系樹脂発泡シートの製造設備である。製造設備は、発泡剤を含んだポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練するための押出機として、タンデム型押出機を備える。タンデム型押出機は、上流側押出機と下流側押出機とを備える。上流側押出機と下流側押出機とは、連結路によって連通接続されている。
【0013】
図1ないし図4に示すように、連結路の経路途中に、樹脂送出ポンプであるギヤポンプ1が配置されている。ギヤポンプ1は、駆動モータに減速機を介して連結されている。ギヤポンプ1は、箱型のポンプ本体2と、回転送出部3と、シール部4とを備える。
【0014】
ポンプ本体2は、両側方を開放して直方体形状の箱型に形成された内装箱体5と、内装箱体5とは別体で内装箱体5の両側(開放した側方)に取付けられる一対の側壁(サイドプレートとも称する)6,7とを備える。各側壁6,7は平板状に形成され、内装箱体5の両側に密に接触するようボルトB1によって固定されている。各側壁6,7には、後述する駆動軸8の端側部9,10を挿通するための挿通孔6a,7aが形成されている。
【0015】
図2に示すように、内装箱体5の側周面のうち一方向で対向する各側面(側壁6,7を取付けない側面)に、樹脂取込口11、樹脂吐出口12が形成されている。樹脂取込口11は、連結路における上流側押出機側に接続されている。樹脂吐出口12は、連結路における下流側押出機側に接続されている。
【0016】
内装箱体5の内部には、溶融樹脂を樹脂取込口11から樹脂吐出口12へ向けて送出するための溶融樹脂の流路13が形成されている。すなわち、樹脂取込口11と樹脂吐出口12とが、流路13を介して連通されている。流路13は、後述する回転送出部3を内装している都合から、樹脂取込口11および樹脂吐出口12よりも大容量に形成されている。
【0017】
流路13には、それぞれ別の軸体回りに回転する一対の回転送出部3を備えている。この場合、回転送出部3は駆動ギヤ14と従動ギヤ15である。別の軸体のうちの一方は駆動ギヤ14を外嵌装着した前記駆動軸8であり、他方は従動ギヤ15を外嵌装着した従動軸16である(図2参照)。
【0018】
駆動軸8および従動軸16は互いに平行に配置され、その軸心どうしは平面視して同一鉛直面内に配置されている。駆動軸8および従動軸16は、正面視して互いに上下方向に離間して配置されている。駆動ギヤ14および従動ギヤ15は、外周の歯部どうしが噛合した状態で、駆動軸8および従動軸16とともに流路13に回転自在に内装されている。
【0019】
駆動軸8は、その軸心方向両側部に、各側壁6,7を貫通してポンプ本体2の外部へ延長された前記端側部9,10を備えている。端側部9,10はそれぞれ挿通孔6a,7aに挿通されており、端側部9,10は軸受(例えば、転がり軸受)によって内装箱体5に回転自在に支持されている。駆動軸8は減速機に連結されている。
【0020】
従動軸16の両側部は側壁6,7に形成された支持凹部(図示せず)に嵌合支持されている。該支持凹部は、側壁6,7の厚み方向途中部分まで側壁6,7に穿設され、側壁6,7を貫通していない。この従動軸16の両側部もまた、軸受(符号省略)を介して内装箱体5に回転自在に支持されている。
【0021】
ギヤポンプ1は、前記シール部4を備えている。シール部4はポンプ本体2から漏れ出る溶融樹脂を封止するためのものである。溶融樹脂は、上流側押出機から連結路を通ってポンプ本体2内(流路13)に送られて、下流側押出機に送出される。しかしながら、溶融樹脂は、受けている圧力によっては、ポンプ本体2の側壁6,7における軸体(この場合、駆動軸8)の貫通部分の隙間から、ポンプ本体2の外部に漏れ出る場合がある。シール部4は、このような溶融樹脂がギヤポンプ1の外部へ漏れ出るのを防止する。
【0022】
シール部4は、ポンプ本体2の外側に設けられている。すなわちシール部4は、ポンプ本体2の各側壁6,7の外側に配置されている。各シール部4は、左右対称の構成であるため、以下の説明において、一方側のシール部4の構成の説明が他方側のシール部4の構成の説明に兼用される。
【0023】
シール部4は、シール部本体20を備える。シール部本体20は、径方向内側の内側部材21と、内側部材21の径方向外側に嵌合された外側部材22と、内側部材21および外側部材22の軸心方向外側に配置された押えプレート23とを備える。内側部材21および外側部材22はともに円筒状に形成され、シール部本体20全体としても円筒状に形成されている。内側部材21および外側部材22はともに軸心方向に同一の長さに設定されている。
【0024】
内側部材21の径方向の厚みは、外側部材22の径方向の厚みに比べて薄く形成されている。内側部材21は、その軸心方向外側端部に、拡径された環状の鍔部24を備えている。鍔部24の径方向内方側に、環状のパッキン25を保持するための環状の凹部が形成されている。パッキン25は、駆動軸8の端側部9において外周部に外嵌されるものである。
【0025】
外側部材22は、所定の径方向厚みに形成されて内側部材21の外周面に嵌合する嵌合部26と、嵌合部26の径方向外側に形成されたフィン部27とから一体的に形成されている。嵌合部26はフィン部27に対して軸心方向内側に突出するよう延長された延長部分を一体的に備えている。嵌合部26は、内径が拡大されて内側部材21の鍔部24の外周面に嵌合する拡大嵌合領域部29を備える。
【0026】
前記延長部分、および内側部材21において該延長部分の径方向内側に対応する領域は、後述する凸部17に相当する。また、図3および図4に示すように、フィン部27には、軸心方向に沿うボルト挿通孔27aが形成されている。ボルト挿通孔27aは、フィン部27の周方向に等間隔で複数形成されている。そして、図2に示すように、外側部材22は、各ボルト挿通孔27aに挿通されたボルトB2により、側壁6に固定されている。
【0027】
押えプレート23は環状に形成され、中心部に駆動軸8の端側部9が挿入される孔23aが形成されている。押えプレート23は、外側部材22の軸心方向外端面にボルトB3により固定されている。押えプレート23には、鍔部24の前記凹部に保持されたパッキン25を側方(軸方向外側)から押えるための押圧環30が、孔23aの外周相当部に形成されている。
【0028】
図3に示すように、シール部4は、第一シール機構部31、第二シール機構部32、第三シール機構部33を備えている。まず説明の便宜上、シール部本体20と側壁6との関係に基づく構成である第三シール機構部33について説明する。
【0029】
第三シール機構部33は、凸部17および凹部34の嵌合によって溶融樹脂を封止しようとする構成である。すなわち凹部34が、側壁6の外側面6bにおいて軸受の範囲内に対応する領域に形成されている。凸部17は、シール部本体20の側端面に、凹部34に対応する形状をもって形成されている。なお、前述したように、シール部本体20は、ボルトB2によって、側壁6に固定されている。
【0030】
凹部34は、環状の底面34aと、底面34aから立上がる円筒状の凹部側周壁面34bと、側壁6の外側面6bにおいて凹部側周壁面34bの外周部である環状の外端部領域34cとを備える。凸部17は、底面34aに密に当接する環状の凸部側突出面17aと、凹部側周壁面34bに嵌合する外周面17bと、外端部領域34cに密に当接する環状の端面17cとを備える。第三シール機構部33は、底面34aに凸部側突出面17aが密に当接し、凹部側周壁面34bに外周面17bが密に嵌合し、外端部領域34cに端面17cが密に当接することで機能する。
【0031】
第一シール機構部31は、駆動軸8の端側部の長手方向に沿って配置され、側壁6における駆動軸8の貫通部分からポンプ本体2の外部に漏れ出た溶融樹脂を、駆動軸8の回転に伴ってポンプ本体2の内部側へ押し戻すよう構成されている。この第一シール機構部31は軸シールであり、この場合ではビスコシール35が用いられている。ビスコシール35は、内側部材21の内周面に形成された螺旋状の溝である。該溝は、駆動軸8の回転方向とは逆方向の螺旋に形成されている。
【0032】
ビスコシール35の溝の幅(軸心方向に沿う方向)は、3.0mmに設定され、溝の深さ(駆動軸8の径方向に沿う方向)は、1.0mmに設定されている。溝の条数は、2条(2条ねじに相当する条数)に設定されている。
【0033】
第一シール機構部31は、封止溝36を備える。封止溝36は、内側部材21の内周面に形成された環状の溝である。封止溝36は、パッキン25の近傍であって、パッキン25に対して軸心方向内側に形成されている。すなわち封止溝36は、ポンプ本体2の側壁6における軸体(この場合、駆動軸8)の貫通部分の隙間と反対側に離れる軸心方向外側に位置ずれして配置され、軸心方向に直交する方向で端側部9の外周を覆うよう設けられている。
【0034】
封止溝36の幅は、6.0mmに設定されている。すなわち、ビスコシール35の溝の倍の幅である。封止溝36の深さは、1.0mmである。封止溝36はビスコシール35を構成する螺旋溝に連続して(連通して)形成されている。ビスコシール35は、封止溝36から内側部材21の略軸心方向内側端部まで延長されている。換言すると、ビスコシール35は、封止溝36から凸部17に相当する領域に至って、側壁6における駆動軸8の貫通部分にまで延長されている。
【0035】
図3図4に示すように、第二シール機構部32は、冷却媒体37を用いて溶融樹脂を冷却する構造である。冷却媒体37として、冷却水が用いられている。第二シール機構部32は、外側部材22に形成された冷却領域部であり、該冷却領域部は、外側部材22の内周面に形成された環状溝38と、環状溝38に冷却媒体37を供給する供給口部39と、冷却によって温度上昇した冷却媒体37を環状溝38から排出させるための排出口部40とを備えている。供給口部39および排出口部40は、ともに環状溝38に連通されるよう、フィン部27の径方向に沿うよう形成されている。
【0036】
環状溝38は、外側部材22の内周面において、軸心方向外側寄りに配置されている。環状溝38は、鍔部24の軸心方向内側端面に相当する位置から軸心方向内側へ向け、外側部材22の軸心方向内側端面に至る途中まで延長されている。すなわち、環状溝38の軸心方向内側端面は、凸部17に対応する位置には至っておらず、前記貫通部分に対して駆動軸8の軸心方向外側に位置ずれして配置されている。環状溝38は、封止溝36の径方向外方において封止溝36全体を含み、ビスコシール35の溝の径方向外方において、ビスコシール35の軸心方向に沿う方向の略半分の位置まで延長されている。
【0037】
環状溝38の軸心方向外側端面は、鍔部24の軸心方向内側端面を用いて形成されている。換言すれば、環状溝38の軸心方向外側端面の一部は、鍔部24の軸心方向内側端面である。環状溝38はビスコシール35の軸心方向に沿う長さの略半分の長さに設定されている。具体的に、本実施形態では、環状溝38の軸心方向に沿う長さは、35mmに設定されている。
【0038】
上記のようなシール部4が、シール部本体20の外側に、駆動軸8の各端側部9,10を利用して設けられている。
【0039】
上記構成のギヤポンプ1を備えた製造設備において、溶融樹脂は、上流側押出機から連結路を通り、ギヤポンプ1の樹脂取込口11からポンプ本体2内の流路13に送られ、ギヤポンプ1の駆動により樹脂吐出口12から下流側押出機に送出される。
【0040】
具体的には、ギヤポンプ1の駆動とは、駆動モータが駆動することでその駆動力が減速機に伝達され、駆動力が減速機から駆動軸8に伝えられて駆動軸8がその軸心回りに回転することを意味する。駆動軸8が回転すると、駆動ギヤ14が回転し、駆動ギヤ14に噛合している従動ギヤ15とともに従動軸16が、その軸心回りに回転する。樹脂取込口11から流路内に送られた溶融樹脂は、駆動ギヤ14および従動ギヤ15の噛合部分の回転により、流路13から樹脂吐出口12、下流側押出機に送出される。
【0041】
溶融樹脂は、受けている圧力によっては、ポンプ本体2の側壁6,7における駆動軸8の貫通部分の隙間から、ポンプ本体2の外部に漏れ出る場合がある。このような場合、第一シール機構部31、第二シール機構部32、および第三シール機構部33が機能して、溶融樹脂が外部へ漏れるのを防止する。
【0042】
すなわち、第三シール機構部33では、底面34aに凸部側突出面17aが密に当接し、凹部側周壁面34bに外周面17bが嵌合し、外端部領域34cに端面17cが密に当接することで、ポンプ本体2の側壁6,7における駆動軸8の貫通部分の隙間から、ポンプ本体2の外部に漏れ出るのを抑えられる。
【0043】
溶融樹脂が流路13から樹脂吐出口12、下流側押出機に送出されている際には、駆動軸8は軸心回りに回転しており、駆動軸8の端側部9,10もまた軸心回りに回転している。そして、端側部9,10の外周には第一シール機構部31であるビスコシール35が配置されている。ビスコシール35の溝は、駆動軸8の回転方向とは逆方向の螺旋に形成されている。このため、第三シール機構部33で抑えられずに側壁6,7における駆動軸8の貫通部分の隙間から、端側部9,10および内側部材21の間に侵入した溶融樹脂は、側壁6,7における駆動軸8の貫通部分の隙間へ向けて押し戻される。
【0044】
すなわち、第一シール機構部31(ビスコシール35)によりシールがなされる。さらに、第一シール機構部31は封止溝36を備え、封止溝36は、ビスコシール35を構成する螺旋溝に連続して形成されている。このため、仮にビスコシール35で抑えられなかった溶融樹脂は、封止溝36で抑えられる。
【0045】
このような第一シール機構部31の構成との関係において、第二シール機構部32(環状溝38)の軸心方向内側端面は、凸部17に対応する位置には至っておらず、貫通部分に対して駆動軸8の軸心方向外側に位置ずれされ、環状溝38は、封止溝36全体を含んでいる。したがって、第二シール機構部32は冷却媒体37を用いて溶融樹脂を冷却する部分であるが、端側部9,10および内側部材21の間に侵入した溶融樹脂が第二シール機構部32によって急速に冷却されることはない。換言すれば、端側部9,10および内側部材21の間に侵入した溶融樹脂は、第二シール機構部32に相当する領域までは流動性を維持し易くなっている。
【0046】
端側部9,10および内側部材21の間に侵入した溶融樹脂が急速に固化してしまうと、第一シール機構部31による押し戻し力が低減されてしまう。しかしながら、流動性を維持した溶融樹脂であれば、その流動性によってシール性(溶融樹脂による溶融樹脂を押し戻す力)を確保することができる。
【0047】
そして溶融樹脂が、第二シール機構部32に対応する領域まで至ったとすると、溶融樹脂は、供給口部39から環状溝38に供給された冷却媒体37によって内側部材21を介して冷却媒体37によって冷却されて、駆動軸8(端側部9,10)の軸心方向外側で固化される。溶融樹脂が固化されれば、溶融樹脂がそれ以上、駆動軸8(端側部9,10)の軸心方向外側へ移動するのを抑えられる。しかも、第二シール機構部32は環状溝38を備えており、この環状溝38は封止溝36の径方向外方において封止溝36全体に対応する領域にあるから、封止溝36でも溶融樹脂は冷却されて固化され、シールされる。
【0048】
このように、本実施形態によるギヤポンプ1では、三つのシール機構部によって溶融樹脂がポンプ本体2の外部に漏れ出るのを、確実に抑えることができる。なお、溶融樹脂には発泡剤(ガス)が含まれているが、仮に発泡剤が第二シール機構部32は環状溝38を通ってさらに駆動軸8(端側部9,10)の軸心方向外側へ至った場合では、発泡剤は、パッキン25によって封止され、これが外部へ漏れ出るのを防止することができる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、封止溝36は、ビスコシール35を構成する螺旋溝に連続して形成した例で説明した。しかしながら、封止溝36はビスコシール35を構成する螺旋溝に対し、独立した溝であってもよい。
【0050】
上記実施形態において、ビスコシール35の溝の幅は、3.0mmに設定され、溝の深さは、1.0mmに設定し、溝の条数は、2条に設定された例を説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ビスコシール35の溝の幅を、2.5〜3.5mmの範囲で設定し、溝の深さを、1.0〜1.5mmに設定し、溝の条数は、2条の他に3条であってもよい。
【0051】
上記実施形態では、第一シール機構部31にビスコシール35を備えた。しかしながら、軸体(駆動軸8)の回転に伴って溶融樹脂を押し戻すことができるシールであればビスコシール35に限定されず、ラビリンスシール等をビスコシール35の代替として用いることもできる。
【0052】
上記実施形態では、樹脂送出ポンプとしてギヤポンプ1の例で説明した。しかしながら本発明は、ギヤポンプ1に限定されず、軸体回りに回転する一対の回転送出部が軸心回りに回転することによって、溶融樹脂が一側から他側に送出され、溶融樹脂が回転送出部の軸体に沿ってポンプ本体2の外部へ漏れ出るようなおそれのある樹脂送出ポンプであれば、適用することができる。
【0053】
上記実施形態では、軸体として駆動軸8に沿って溶融樹脂が漏れ出る場合の例で説明した。しかしながら、従動軸16もまたポンプ本体2の側壁6,7から突出するような構成である場合では、従動軸16においても第一ないし第三シール機構部を設けることもできる。
【0054】
上記実施形態では、ギヤポンプ1は、流側押出機と下流側押出機とを連通接続する連結路に配置された例を示した。しかしながら、ギヤポンプ1は、一方側から他方側へ溶融樹脂を送出する装置あるいは設備であれば、流側押出機と下流側押出機とを連通接続する連結路に配置することに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1…ギヤポンプ、2…ポンプ本体、3…回転送出部、4…シール部、5…内装箱体、6,7…側壁、8…駆動軸、11…樹脂取込口、12…樹脂吐出口、13…流路、14…駆動ギヤ、15…従動ギヤ、16…従動軸、17…凸部、20…シール部本体、21…内側部材、22…外側部材、25…パッキン、26…嵌合部、29…拡大嵌合領域部、30…押圧環、31…第一シール機構部、32…第二シール機構部、33…第三シール機構部、34…凹部、35…ビスコシール、36…封止溝、38…環状溝、39…供給口部、40…排出口部
図1
図2
図3
図4