(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232203
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】マップ制御によるエンジンを用いた室外機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/02 20060101AFI20171106BHJP
F24F 1/44 20110101ALI20171106BHJP
F25B 27/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F24F11/02 102Q
F24F1/44
F25B27/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-87771(P2013-87771)
(22)【出願日】2013年4月18日
(65)【公開番号】特開2014-211268(P2014-211268A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100178342
【弁理士】
【氏名又は名称】土田 新
(72)【発明者】
【氏名】森 健司
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−247566(JP,A)
【文献】
特開平09−217965(JP,A)
【文献】
特開2003−227388(JP,A)
【文献】
特開2004−286243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
F24F 1/44
F25B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンが吸気ダクトを備えた密閉の筐体内に配置されており、前記エンジンのスロットルに備えられた開度センサにより検知した運転負荷に応じたスロットル開度信号をコントロールユニット(ECU)に送信し、前記コントロールユニット(ECU)に予め記憶させたエンジン回転数と吸入空気の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める通常運転制御マップに従ってエンジンの燃料流量調整弁から燃料を供給するマップ制御によるエンジンを用いた室外機において、前記筐体に保守・点検用扉またはパネルの少なくとも一方に開閉状態を検知して開閉信号を前記コントロールユニット(ECU)に送信する開閉検知センサが備えられているとともに制御マップに前記保守・点検用扉またはパネルが開放した際の筐体内におけるエンジンの吸入空気量に応じたエンジン回転数と吸入空気の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める開放時の制御マップが前記コントロールユニット(ECU)に予め記憶されており、前記コントロールユニット(ECU)に備えられた制御マップ切り替え手段により前記開閉検知センサから送信される開閉信号が開放信号のときには通常運転制御マップ制御を前記開放時の制御マップに切り替えてエンジンを運転することを特徴とするマップ制御によるエンジンを用いた室外機。
【請求項2】
前記開閉検知センサが筐体の保守・点検用扉ならびにパネルに付設されたマイクロスイッチであることを特徴とする請求項1記載のマップ制御によるエンジンを用いた室外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、空調機器、冷凍機器、発電機器などの動力源としてのエンジンを用いた室外機、殊に、エンジンを筐体に収容したエンジンをマップ制御により駆動する室外機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より室内に設置される空調機器、冷凍機器、発電機器などの産業機器の動力源としてエンジンを用いたものが知られているが、エンジンを室内に配置すると、振動や騒音の発生、室内スペースの確保、更には運転操作性などの問題があり、エンジン部分或いはヒートポンプや発電機などの周辺機器を室外機として室外に設置することが一般的に行われている。
【0003】
そして、前記室外機に用いられるエンジンは使用する機器が限定されていることから一定範囲の条件で駆動されることが多く、比較的少ない部品で安価に且つ容易に制御することが望まれており、例えば
図2に示すように、エンジン1が吸気ダクト9を備えた適宜密閉の筐体2内に配置されており、例えば前記エンジン1はスロットル3に備えられたスロットル開度センサ4により検知した運転負荷に応じたスロットル開度信号をコントロールユニット(ECU)5に送信し、前記コントロールユニット(ECU)5に予め記憶させたエンジン回転数と吸入空気6の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める通常運転制御マップに従ってエンジン1の燃料流量調整弁7から燃料8を供給するマップ制御エンジンが採用されている。
【0004】
また、前記室外機はエンジンや周辺機器の駆動により生じる周囲への騒音を考慮し、更には風雨や塵埃などの影響を避けるために例えば特開2005−55147号公報などに提示されているように筐体2と称される適宜の密封性を有する屋外ケースに囲まれて配置されているのが一般的である。
【0005】
そのため、前記筐体2内は換気用の吸気ダクト9からの吸気がなされるが騒音防止や振動防止の効果を発揮させる必要性から他はほぼ密閉状態であることからエンジン1を駆動させると吸入抵抗が高くなり吸入空気量が減少する。そのため、前記制御マップも吸気ダクト9やエンジン1更には筐体2等の性状に合わせて室外機ごとに作成される必要がある。
【0006】
ところが、内部に収容したエンジン1などの点検や保守のために前記筐体2には保守・点検用扉11が備えられており、保守・点検用扉11を開放した状態や、筐体2のパネル12を外した状態でエンジンを駆動させた場合には筐体2内が大気に開放されてエンジン1の吸入抵抗が低下して吸入空気量が増加するが、エンジン1は前記筐体2がほぼ密閉状態を前提とした通常運転制御マップにより制御されているのでエンジン1の吸入空気量が増加して運転不能に陥ることになる。
【0007】
そこで、筐体2の保守・点検用扉11の開閉や、筐体2のパネル12の嵌脱により生じる筐体2内の吸入抵抗の変化を考慮して、例えば常時、吸入空気量を検知して適正な燃料を供給する制御手段によりエンジン1を制御することも可能であるが、部品点数が増加し、更には制御が複雑になるなど経済面や保守・点検の問題があり、特に、室外機の保守・点検用扉11やパネル12の開閉の機会はきわめて少ないことからそのために高価で複雑な制御手段を採用すると採算が合わない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−55147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決しようとするものであり、マップ制御のエンジンを用いた室外機において、点検や保守のために筐体に備えられている保守・点検用扉を開放した状態、或いはパネルを外した状態でエンジンを駆動させた場合にも最適な燃料噴射量を確保して運転不能に陥ることを簡単且つ安価な手段で防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するためになされた本発明であるマップ制御によるエンジンを用いた室外機は、エンジンが吸気ダクトを備え
た密閉の筐体内に配置されており、前記エンジンのスロットルに備えられた開度センサにより検知した運転負荷に応じたスロットル開度信号をコントロールユニット(ECU)に送信し、前記コントロールユニット(ECU)に予め記憶させたエンジン回転数と吸入空気の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める通常運転制御マップに従ってエンジンの燃料流量調整弁から燃料を供給するマップ制御によるエンジンを用いた室外機において、前記筐体に保守・点検用扉またはパネルの少なくとも一方に開閉状態を検知して開閉信号を前記コントロールユニット(ECU)に送信する開閉検知センサが備えられているととも
に制御マップに前記保守・点検用扉またはパネルが開放した際の筐体内におけるエンジンの吸入空気量に応じたエンジン回転数と吸入空気の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める開放時の制御マップが前記コントロールユニット(ECU)に予め記憶されており、前記コントロールユニット(ECU)に備えられた制御マップ切り替え手段により前記開閉検知センサから送信される開閉信号が開放信号のときに
は通常運転制御マップ制御を前記開放時の制御マップに切り替えてエンジンを運転することを特徴とする。
【0011】
また、前記開閉検知センサが筐体
の保守・点検用扉
ならびにパネルに付設されたマイクロスイッチとすることにより安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、通常は経済的なマップ制御によりエンジンを運転可能としているだけでなく、点検や保守のために筐体に備えられている保守・点検用扉を開放した状態、或いはパネルを外した状態でエンジンを駆動させた場合にも最適な燃料噴射量を確保して運転不能に陥ることを簡単且つ安価な手段で防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による実施の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態の概略を示すものであり、全体の構成は前記
図2に示した従来例とほぼ同様であり、エンジン1が吸気ダクト9を備えた適宜密閉の筐体2内に配置されており、例えば前記エンジン1はスロットル3に備えられたスロットル開度センサ4により検知した運転負荷に応じたスロットル開度信号をコントロールユニット(ECU)5に送信し、前記コントロールユニット(ECU)5に予め記憶させたエンジン回転数と吸入空気6の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める制御マップに従ってエンジン1の燃料流量調整弁7から燃料8を供給するマップ制御エンジンが筐体2に収容されている。
【0016】
また、本実施の形態では
、筐体2内に外気を導入するための吸気ダクト9が
筐体2に配置されているとともに、
筐体2には開閉式または取り外し式の保守・点検用扉11ならびにパネル12が備えられており、更に、
例えば前記筐体2
の保守・点検用扉11ならびにパネル12には例えば前記保守・点検用扉11ならびにパネル12が閉成状態のときにOFF状態にあり、開放状態のときにON作動する例えばマイクロスイッチを内蔵するリミットスイッチからなる開閉検知センサ13,14が備えられている。
【0017】
更に、前記コントロールユニット(ECU)5にはエンジンへ最適な燃料供給量を供給するための制御マップとして前記通常運転制御マップに加えて前記保守・点検用扉11またはパネル12が開放した際の筐体2内におけるエンジン1の吸入空気量に応じたエンジン回転数と吸入空気の供給量との関係から最適な燃料噴射量を求める前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放したときの各開放運転制御マップ、更には、前記筐体2の保守・点検用扉11ならびにパネル12部分に備えられた開閉検知センサ13,14からの開閉信号が何れもがOFF状態(閉成状態)の信号が送信されているときに前記制御マップとして通常運転制御マップを選択してエンジンを駆動するとともに前記開閉検知センサ13,14のいずれかまたは双方からON状態(開放状態)の信号が送信されているときには前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放したときの各開放運転制御マップにそれぞれ切り替えてエンジンを駆動する制御マップ切り替え手段が備えられている(図示せず)。
【0018】
以上の構成を有する本実施の形態は、通常、つまり、前記保守・点検用扉11またはパネル12が閉じている状態では前記コントロールユニット(ECU)5に備えられた制御マップ切り替え手段は前記開閉検知センサ13,14からの開閉信号が何れもがOFF状態(閉成状態)の信号が送信されていることからエンジン1の制御マップとして通常運転制御マップを選択することになり、前記
図2に示した従来例と同様に、前記ほぼ密閉した状態の筐体2の雰囲気に合わせて設定した条件で燃料が供給されて効率よく駆動する。
【0019】
そして、保守・点検などのサービスや故障などで前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放したときには、前記開閉検知センサ13,14のいずれかまたは双方からON状態(開放状態)の信号がコントロールユニット(ECU)5に送信され、前記制御マップ切り替え手段より前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方についての各開放運転制御マップが選択されて前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放した際の筐体2内におけるエンジン1の吸入空気量に応じた最適な燃料噴射量がエンジン1に供給されることになり、前記従来例のようにエンジン1の吸入空気量が増加して運転不能に陥ることを解消することができる。
【0020】
また、修理等のサービスが終了して開放状態の前記保守・点検用扉11またはパネル12を再び閉じると、前記開放状態の開閉検知センサ13,14のいずれかまたは双方からOFF状態(閉成状態)の信号がコントロールユニット(ECU)5に送信され、前記制御マップ切り替え手段より前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方についての開放運転制御マップが或いは前記保守・点検用扉11またはパネル12の双方が閉成状態の場合には通常運転制御マップが選択されて前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放した際または前記保守・点検用扉11またはパネル12の双方が閉成した際の筐体2内におけるエンジン1の吸入空気量に応じた最適な燃料噴射量がエンジン1に供給されることになり、前記保守・点検用扉11またはパネル12の一方または双方が開放したとしても何れの場合にもエンジン1を最適量の燃料が供給される状態で制御することができる。
【0021】
特に、本実施の形態では、従来から室外機などにおいて採用されているマップ制御を用いていることから多数の高価な部品や複雑な制御を必要としないので設計、保守なども容易で、安価に提供可能である。
【0022】
更に、本実施の形態では前記開閉検知センサ13,14として例えばマイクロスイッチを内蔵するリミットスイッチを用いたことにより更に安価に且つ正確な開閉状態を検知することができるがこれに限るものでなく、例えば赤外線方式など従来周知の検知センサをもついてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0023】
1 エンジン、2 筐体、3 スロットル、4 スロットル開度センサ、5 コントロールユニット(ECU)、6 吸入空気、7 燃料流量調整弁、8 燃料、9 吸気ダクト、11 保守・点検用扉、12 パネル、13 開閉検知センサ、14 開閉検知センサ