特許第6232205号(P6232205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232205
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】エレベーター装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/06 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B66B7/06 A
   B66B7/06 L
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-97315(P2013-97315)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-218321(P2014-218321A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大部 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】尾方 尚文
(72)【発明者】
【氏名】太田 亮
(72)【発明者】
【氏名】安部 貴
(72)【発明者】
【氏名】大石 照展
(72)【発明者】
【氏名】金井 哲也
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−331264(JP,A)
【文献】 特開2000−038275(JP,A)
【文献】 特開2006−069798(JP,A)
【文献】 特開2009−155087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00− 7/12
B66B11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が昇降路に固定されたトラクションロープが通過する乗りかご下部プーリを備えた乗りかごと、他端が昇降路に固定された前記トラクションロープが通過する釣り合い錘プーリを備えた釣り合い錘と、前記乗りかご下部プーリと前記釣り合い錘プーリの間で前記トラクションロープが通過する前記昇降路に固定された中間プーリと、前記釣り合い錘と前記乗りかごの間で前記トラクションロープが巻き掛けられたシーブ及びこのシーブを回転させる電動機より構成された巻上機とを備えたエレベーター装置において、
少なくとも前記中間プーリ角度を前記トラクションロープの張力方向に沿って変えることができる自在継手を前記中間プーリ設けると共に、
前記中間プーリは、前記自在継手に連結されたプーリ支軸と、前記プーリ支軸に取り付けられた支持部と、前記支持部に支持されたプーリ本体を有し、
更に、前記プーリ本体を支持する前記支持部と前記昇降路の固定面との間が、前記プーリ本体が前記プーリ支軸を中心として所定の角度以上に回転するのを制限する揺動角制限機構によって連結されていることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記揺動角制限機構は、前記支持部と前記昇降路の前記固定面を連結するワイヤ、チェーン、或いはリンクのいずれか1つであることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記中間プーリは少なくとも2個備えられており、一方は前記釣り合い錘プーリ側に前記トラクションロープを介して連結され、他方は前記乗りかご下部プーリ側に前記トラクションロープを介して連結され、前記自在継手はどちらかの前記中間プーリ、或いは両方の前記中間プーリに設けられていることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベーター装置において、
前記自在継手はボールジョイント、スラスト自動調心ころ軸受、ユニバーサルジョイントのいずれか1つであることを特徴とするエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物に設けられた昇降路内に乗りかごを配置して利用客を所定の階層に運ぶエレベーター装置に係り、特に、乗りかごと釣り合い錘とを中間プーリを介してロープで連結したトラクション方式のエレベーター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーター装置はトラクション方式と呼ばれるものが多く普及している。このトラクション方式は乗りかごと釣り合い錘がトラクションロープによって懸架されており、巻上機でトラクションロープを巻き上げることにより乗りかごと釣り合い錘が逆方向に上下に昇降するものである。また、最近のエレベーター装置は機械室レス式のエレベーター装置が主流となりつつあり、これは巻上機、釣り合い錘及び制御盤等を昇降路内に配置することが大きな特徴となっている。
【0003】
例えば、特開2004-331264号公報(特許文献1)においては、巻上機を乗りかごと昇降路壁の隙間に配置する構成のエレベーター装置を開示している。このエレベーター装置では、乗りかごと釣り合い錘の間に昇降路に固定した中間プーリを配置し、乗りかごと釣り合い錘に設けたプーリを動滑車とすることで、巻上機によるトラクションロープの巻き取り量が乗りかごの移動量の2倍となる、いわゆる2対1ローピングの構成をとるようにしている。これによると、動滑車の原理を利用することで巻上機の巻き取りに必要な力を低減できるものである。この構成によれば、巻上機によるトラクションロープの巻き取り量と乗りかごの移動量が等しい1対1ローピングに比べて、巻き取りに必要なトルクが少なく済むため電動機等から構成される巻上機を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-331264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなトラクション方式のエレベーター装置においては、昇降路内に巻上機、釣り合い錘、乗りかご等を収容するため、昇降路の上部、乗りかごの下部、釣り合い錘の上部等の多くの箇所にトラクションロープを通過させて案内するプーリを設けている。そして、狭い昇降路内に乗りかご、巻上機、釣り合い錘等を配置するため、昇降路内のトラクションロープは走行方向やその角度を適切に設定されることが必要であり、上述した各種プーリによって走行方向やその角度を適切に調整している。このため、巻上機、釣り合い錘、乗りかご等の設置条件やプーリの使用箇所によっては、トラクションロープの張力によりプーリは多方向からの合成荷重を受けることがある。
【0006】
特に、昇降路上部に固定、設置される中間プーリ(以下、頂部プーリという)は、昇降路の天井に固定されて角度の調整が出来ない構造となっている。そのため、合成荷重を受けている状態で長期にわたって乗りかごの運行を行った場合、頂部プーリの複数のロープ溝に摩耗量の差(偏摩耗)を生じるようになる。例えば、頂部プーリのロープ溝が複数条あったとすると、合成荷重によってトラクションロープがロープ溝に対して角度をもって或る所定方向に傾いて通過する場合、その張力の差によって外側に位置するロープ溝が内側に位置するロープ溝に対して余分に摩耗するといった現象がある。もちろん、この逆の現象も発生することもある。
【0007】
このため、複数のロープ溝の間に摩耗量の差(偏摩耗)が発生することによって、頂部プーリの各ロープ溝を通過するトラクションロープの張力が更に不均一となることで、トラクションロープの弛みや振動を生じ易くなる。この結果、トラクションロープの弛みによってトラクションロープが相互に接触して寿命が短くなるとか、頂部プーリに設けてある軸受の寿命を低下させるといったエレベーター装置に特有な新たな課題が発生する。
【0008】
尚、上述の説明は頂部プーリについての課題であるが、釣り合い錘に設けられたプーリについても同様のことが言える。
【0009】
本発明の目的は、トラクションロープが通過するプーリのロープ溝の偏摩耗を低減してトラクションロープ、或いはプーリの寿命を向上させたトラクション方式のエレベーター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の特徴は、トラクションロープが通過するプーリの角度をトラクションロープの張力方向に沿って支障なく変えることができる自在継手によってプーリを支持するようにした、ところにある。
【0011】
ここで、自在継手とは、以下の実施例で説明する構成はもちろんのこと、これ以外の構成の自在継手をも含むものである。要はプーリの角度をトラクションロープの張力方向に沿って支障なく変えることができる機能を備えていれば良いものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トラクションロープが通過するプーリの角度をトラクションロープの張力方向に沿って支障なく変えることで、プーリに形成された複数のロープ溝を通過する複数のトラクションロープの張力を適切に調整できるようになる。これによって、トラクションロープ、或いはプーリの寿命を向上することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トラクション方式のエレベーター装置の概略の構成を示す構成図である。
図2】本発明の一実施例になる自在継手の概念を示したプーリの構成を示す構成図である。
図3図2に示した自在継手の概念を具体化したボールジョイントの構成を示す構成図である。
図4図2に示した自在継手の概念を具体化したスラスト自動調心ころ軸受の構成を示す構成図である。
図5図2に示した自在継手の概念を具体化したユニバーサルジョイントの構成を示す構成図である。
図6】本発明の他の実施例になる自在継手の概念を示したプーリの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【0015】
以下、図面に従い本発明の一実施例になるエレベーター装置を説明するが、その前に機械室レス式のエレベーター装置の一般的な構成を説明する。エレベーター装置は良く知られているように建築物に設けられた昇降路の内部に収納されている。
【0016】
図1において、エレベーター装置では一般的に昇降路の床部分に巻上機10が載置され、ボルト等のような固定手段によって床面に固定されている。巻上機10は図1では詳細に記載していないが、複数本のトラクションロープ11を懸架のためのシーブ18を有する。トラクションロープ11は両端部TA、TBを昇降路の天井部分に固定されており、複数本を平行にして使用するのが一般的である。このため、後述する各プーリにはこの複数本のトラクションロープ11が巻き掛けられる複数のロープ溝が設けられている。また、釣り合い錘12の上部には釣り合い錘プーリ13が固定されており、この釣り合い錘プーリ13を介してトラクションロープ11の端部TBが昇降路の天井壁に固定されている。
【0017】
昇降路の天井壁に固定された頂部プーリ(中間プーリ)は、頂部プーリA14と頂部プーリB15の2個があり、それぞれ天井壁にボルト等の固定手段によって固定されている。利用客が乗り降りする乗りかご17の下部には、乗りかご16を上下に昇降させるための乗りかご下部プーリ17が2個設置されている。
【0018】
トラクションロープ11は、釣り合い錘12側の端部TBから、釣り合い錘プーリ13、頂部プーリB15、巻上機10のシーブ18、頂部プーリA14、乗りかご下部プーリ17を経てもう一方の端部TAへと架け渡されて昇降路の天井壁に固定されている。
【0019】
次に、エレベーター装置の稼働時の各部の動きについて説明する。巻上機10が稼働して、シーブ18が矢印AR1で示す回転方向に回転すると、その際のトラクションロープ11とシーブ18の間の摩擦によって、シーブ18に懸架されたトラクションロープ11が矢印AR2で示すロープ走行方向に沿って移動する。
【0020】
そして、頂部プーリA14、頂部プーリB15、乗りかご下部プーリ17、釣り合い錘プーリ13もトラクションロープ11の走行に伴って回転し、トラクションロープ11の動きによって釣り合い錘12と乗りかご16が上下に昇降される。尚、図1では省略しているが、乗りかご16の昇降を円滑にするために、実際のエレベーター装置では乗りかご16の側面をガイドレールと呼ばれる案内部品で案内する構成となっている。
【0021】
このような、エレベーター装置においては図示しない制御器によって運行指令が巻上機10の電動機や制動機構等に与えられ、この運行指令によって乗りかご16が建築物の所定の階層に向けて昇降動作するものである。
【0022】
そして、実際のエレベーター装置における昇降路の断面積は乗りかご16の断面積よりも一回り大きい程度である。このため、乗りかご下部プーリ17と頂部プーリA14とは、互いに最大で90度だけ捩じれた状態で設置され、更には斜め方向へとトラクションロープ11の走行角度を変更する場合がある。このとき、トラクションロープ11の傾きによって頂部プーリA14はトラクションロープ11によって傾いた合成荷重を受ける。また、この傾きは一様ではなく、その時の乗りかごの位置の変化によって異なることもある。
【0023】
したがって、合成荷重を受けている状態で長期にわたって乗りかご16の運行を行った場合、頂部プーリA14の複数のロープ溝に摩耗量の差(偏摩耗)を生じるようになる。つまり、合成荷重によってトラクションロープ11が角度をもって或る所定方向に傾いてロープ溝を通過する場合、その張力の差によって外側に位置するロープ溝が内側に位置するロープ溝に対して余分に摩耗する、或いは内側に位置するロープ溝が外側に位置するロープ溝に対して余分に摩耗するといった現象を発生する。
【0024】
このため、複数のロープ溝の間に摩耗量の差(偏摩耗)が発生することによって、頂部プーリA14の各ロープ溝を通過するトラクションロープ11の張力が更に不均一となることで、トラクションロープ11の弛みや振動を生じ易くなる。この結果、トラクションロープの弛みによってトラクションロープが相互に接触して寿命が短くなるとか、頂部プーリA14に設けてある軸受の寿命を低下させるといったエレベーター装置に特有な新たな課題が発生する。同様に、釣り合い錘プーリ13と頂部プーリB15の間でもこの現象が生じることがある。
【0025】
そこで、図2に示すように、本実施例においてはトラクションロープ11の張力方向に頂部プーリA14の角度を自動的に調整する自在継手を頂部プーリA14に設ける構成を採用したものである。ここで、本実施例では頂部プーリA14について説明しているが、当然のことながら頂部プーリB15や釣り合い錘プーリ13についても同様の構成を採用できるものである。以下、その構成を図2乃至図5に基づき説明するが、これらの図で説明するプーリは頂部プーリA14に関する構成である。
【0026】
図2において、頂部プーリA14には、トラクションロープ11が通過するプーリ本体20と、このプーリ本体20の中心部に形成された軸受部21と、この軸受部21を貫通してプーリ本体20を軸支する支軸22が設けられている。そして、プーリ本体20には図示していないが、少なくとも複数本のロープ溝が全周に亘って形成されており、このロープ溝をトラクションロープ11が通過する構造となっている。したがって、ロープ溝をトラクションロープ11が走行することで、その際の摩擦によってプーリ本体20が支軸22を中心に矢印AR3で示す回転方向に回転することができる。尚、軸受21の種類は特に示していないが、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受、円すいころ軸受等を用いることができる。
【0027】
そして、頂部プーリA14には、プーリ本体20を支持するために支軸22を両端から支持する支持部23と、この支持部23を固定したプーリ支持軸24と、このプーリ支持軸24に連結された、トラクションロープ11の張力方向に頂部プーリA14の角度を自動的に調整する自在継手25とが設けられている。また、自在継手25は昇降路の天井壁、床面、固定梁等の任意の固定面26に固定されている。
【0028】
自在継手25は、固定面26に対して矢印AR4で示すプーリ支持軸24の回転方向に回転可能であり、また、矢印AR5で示すプーリ本体1の上下方向、及び矢印AR6で示すプーリ本体1の左右方向について揺動自由な継手として構成されている。つまり、プーリ本体20は固定面26に対してどの方向にもその向きが調整可能になっているものである。このため、ロープ溝を通過するトラクションロープ11の張力の方向が変化した場合、この張力の作用方向の変化に対応してプーリ本体20の角度を自動的に調整することができるものである。
【0029】
したがって、上述したようにトラクションロープ11の傾きによって、頂部プーリA14はトラクションロープ11によって傾いた合成荷重を受けるようになるが、この合成荷重によるトラクションロープ11の張力の作用方向に、プーリ本体20の位置が自在継手25の働きによって自動的に調整されるようになる。その結果、プーリ本体20に形成されたロープ溝に作用する個々のトラクションロープ11の張力は適切に調整されて、ロープ溝の摩耗量の差による張力の不均一化を少なくすることができる。
【0030】
このため、複数のロープ溝の間に摩耗量の差(偏摩耗)が発生することによって、頂部プーリA14の各ロープ溝の巻き掛けられたトラクションロープ11の張力が更に不均一となることで、トラクションロープ11の弛みや振動を生じ易くなるといった現象の発生を抑制することができるようになる。
【0031】
本実施例になる頂部プーリA14、頂部プーリB15を採用して、15,000時間の実稼働を行い、頂部プーリA14、頂部プーリB15のロープ溝の偏摩耗、トラクションロープ11の損傷について調査した。その結果、本実施例を採用した頂部プーリA14、頂部プーリB15では偏摩耗、及びトラクションロープ11の損傷に関して、従来の頂部プーリに比較して格段に偏摩耗量、損傷の度合いが改善されていることが確認できた。
【0032】
次に、自在継手25の具体的な代表例を3つ選んで説明する。代表例としては、(1)ボールジョイント、(2)スラスト自動調心ころ軸受、及び(3)ユニバーサルジョイントを示している。
【0033】
図3はボールジョイント30の概略の構成を示している。ボールジョイント30は、プーリ支持部軸24と一体、或いは適当な固定手段によってプーリ支持軸24と連結されたボール部31と、このボール部31を包み込むハウジング部32より構成されている。ボール部31とハウジング部32の間には図示していないが防塵、防水用のカバーが取り付けられており、内部には潤滑用のグリースが充填されている。
【0034】
そして、ボール部31はハウジング部32の内部でプーリ支持軸24の回転方向に回転可能であり、また、プーリ本体1の上下方向、及びプーリ本体1の左右方向について揺動自由な継手として機能する。したがって、プーリ本体20は固定面26に対してどの方向にもその向きが調整可能になるものである。このため、ロープ溝を通過するトラクションロープ11の張力の方向が変化した場合、この張力の作用方向の変化に対応してボール部31が変位してプーリ本体20の角度を自動的に調整することができるものである。
【0035】
また、図4はスラスト自動調心ころ軸受40の概略の構成を示している。スラスト自動調心ころ軸受40は、プーリ支持部軸24と一体、或いは適当な固定手段によってプーリ支持軸24と連結された径小軸部41と、この径小軸部41の先側に形成された径大軸部42を備えている。径小軸部41と径大軸部42の間には内輪43が固定され、また、固定面26には外輪44が固定されている。内輪43と外輪44の間にはたる型の複数の回転体45が円周状に配置されている。したがって、このたる型の回転体45によって径小軸部41と径大軸部42は揺動可能となっていると共に、径小軸部41と径大軸部42は固定面26に対して回転可能である。
【0036】
そして、径小軸部41と径大軸部42は回転体45によってプーリ支持軸24の回転方向に回転可能であり、また、プーリ本体1の上下方向、及びプーリ本体1の左右方向についても回転体45によって揺動自由な継手として機能する。したがって、プーリ本体20は固定面26に対してどの方向にもその向きが調整可能になるものである。このため、ロープ溝を通過するトラクションロープ11の張力の方向が変化した場合、この張力の作用方向の変化に対応して回転体45を介して径小軸部41と径大軸部42が変位してプーリ本体20の角度を自動的に調整することができるものである。
【0037】
更に、図5はユニバーサルジョイント50の概略の構成を示している。ユニバーサルジョイント50はプーリ支持部軸24と一体、或いは適当な固定手段によってプーリ支持軸24と連結された第1軸部51と、固定面26に固定された第2軸部52と、これらの間に介装される十字型のクロススパイダ53とより構成されている。第1軸部51の端部はクロススパイダ53の一方の軸部に回転可能に軸支され、第2軸部52の端部はクロススパイダ53の一方の軸部に直交する他方の軸部に回転可能に軸支されている。第1軸部51と第2軸部52は互いに回転できるようになっており、例えば、第1軸部がプーリ支持軸24に対して回転可能に取り付けられるか、或いは第2軸部52が固定面26に対して回転可能に取り付けられるものである。
【0038】
そして、第1軸部51或いは第2軸部52はプーリ支持軸24の回転方向に回転可能であり、また、プーリ本体201の上下方向、及びプーリ本体20の左右方向についてはクロススパイダ53によって揺動自由な継手として機能する。したがって、プーリ本体20は固定面26に対してどの方向にもその向きが調整可能になるものである。このため、ロープ溝を通過するトラクションロープ11の張力の方向が変化した場合、この張力の作用方向の変化に対応して回転体45を介して径小軸部41と径大軸部42が変位してプーリ本体20の角度を自動的に調整することができるものである。
【0039】
ところで、この種のエレベーター装置は建築物に設けられているため地震の影響を必ず受けるものである。近年の大地震では震源から遠い大都市の高層建築物で長周期地震動が生じることが指摘されている。一般に、長周期地震動は周期が数秒程度の低周波数領域であるが故に建物の加速度の値は低いものである。しかしながら、この長周期地震動は建物の揺れ加速度が小さくとも、長い時間に亘って継続するという特徴がある。このため、特に高層建築物の固有振動数と一致して高層建造物を共振させ急激に振幅が増大することがあり、高層建築物などでは高い階に行けばいくほど揺れが強くなる傾向にある。
【0040】
そして、トラクションロープ11はこの高層建築物の揺れと共振して大きく揺れる傾向にある。このため、トラクションロープ11が通過するように掛けられた頂部プーリA14、頂部プーリB15,釣り合い錘プーリ13等においては、大きな振幅によってトラクションロープ11の張力が大きく変化した時等に、自在継手25に取り付けられたプーリ支持軸24を中心に支持部23、プーリ本体20が大きく回転(揺動)することがある。このため、プーリ本体20に掛けられた複数のトラクションロープ11がねじれてしまい、トラクションローップ11の走行ができなくなるといった不具合が考えられる。そこで、このような不具合を解消するため図6に示したような揺動角制限機構を設けるようにしている。
【0041】
図6において、揺動角制限機構は固定面26の固定部61と支持部23の固定部62に固定され、これらの間を接続するワイヤ、チェーン、或いはリンク等からなる制限部材60からなっている。この制限部材60は支持部23の回転角を所定の角度に制限する機能を備えている。つまり、プーリ支持軸24を中心としたプーリ本体20の回転に基づくトラクションロープ11のねじれを所定角度に制限するようにしている。これによって、地震によってトラクションロープ11の振幅が大きくなって支持部23がプーリ支持軸24を中心に回転しようとしても、制限部材60によってこの回転は所定の角度で制限されるようになる。これによって、トラクションロープ11が所定角以上に捩じられることを防止されて正常な走行が可能となるものである。尚、所定の角度を調整する場合は、ワイヤ、チェーン、リンク等の長さを調整すれば任意の角度を得ることができる。好ましい角度は、通常の正規の取り付け状態から±30°程度の角度以上には揺動しないようになっていれば良いものである。
【0042】
尚、図6に示した構成はあくまでも一つの実施例であり、これ以外の構成を採用しても良いものである。例えば、自在継手25の内部にプーリ支持軸23の回転角を制限する機構を設けることもできるものである。このように、揺動角制限機構はプーリ本体20が通常取り付け角度から所定の角度以上に回転(揺動)しない機能をそなえていれば良いものである。
【0043】
以上述べたように、本発明によれば、トラクションロープが通過するプーリの角度をトラクションロープの張力方向に沿って支障なく変えることができる自在継手によってプーリを支持するようにしている。
【0044】
したがって、トラクションロープが通過するプーリの角度をトラクションロープの張力方向に沿って支障なく変えることで、プーリに形成された複数のロープ溝を通過するトラクションロープの張力を適切に調整できるようになる。これによって、トラクションロープ、或いはプーリの寿命を向上することができるようになるものである。
【符号の説明】
【0045】
10…巻上機、11…トラクションロープ、12…釣り合い錘、13…釣り合い錘プーリ、14…頂部プーリA、15…頂部プーリB、16…乗りかご、17…かご下部プーリ、18…シーブ、20…プーリ本体、21…軸受、22…支軸、23…支持部、24…プーリ支持軸、25…自在継手。
図1
図2
図3
図4
図5
図6