【文献】
E. Drockenmuller et al,Covalent Stabilization of Nanostructure: Robust Block Copolymer Templates from Novel Thermoreactive Systems,Journal of Polmer Science: Part A,2005年,P1028-1037
【文献】
D.A. Olson et al,Templating Nanoporous Polymers with Ordered Block Coplymers" D.A. Olson et al, Chemical Materials,Chemical Materials,2008年,P869-890
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のブロックがアニオン重合され、および/または前記第2のブロックがアニオン重合され、および前記第2のブロックが前記第1のブロックに逐次重合され、前記逐次重合が単一反応容器内で前記第1のブロックの存在下で前記アクリラートモノマーを重合することを含む、請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用される場合、「相分離」とはブロックコポリマーのブロックが別個のマイクロ相分離したドメイン(「マイクロドメイン」または「ナノドメイン」とも称され、および単に「ドメイン」とも称される)を形成する傾向をいう。同じモノマーのブロックが凝集して周期的ドメインを形成し、ドメインの間隔および形態はブロックコポリマー中の異なるブロック間の相互作用、サイズおよび容積分率に応じて決まる。ブロックコポリマーのドメインは適用中に、例えば、スピンキャスティング工程中に、加熱工程中に生じることができ、またはアニーリング工程によって調整されうる。本明細書において「ベーキング」とも称される「加熱」は、基体およびその上に塗布された層の温度が周囲温度より高く上げられる一般的なプロセスをいう。「アニーリング」は熱アニーリング、熱勾配アニーリング、溶媒蒸気アニーリング、または他のアニーリング方法を含むことができる。熱アニーリング(場合によっては「熱硬化」とも称される)はブロックコポリマー組織化の層におけるパターンを固定化しかつ欠陥を除去するために特異的なベーキングプロセスであることができ、一般的にはフィルム形成プロセスの最後または最後付近での、高温(例えば、150℃〜350℃)での、長期間(例えば、数分〜数日)にわたる加熱を伴う。行われる場合には、アニーリングは、マイクロ相分離したドメインの層(以下「フィルム」とも称される)中の欠陥を低減させまたは除去するために使用される。
【0011】
アニーリングの際に基体に対して垂直に配向するドメインを相分離によって形成する第1のブロックおよび第2のブロックを少なくとも有するブロックコポリマーを自己組織化層が含む。「ドメイン」は、本明細書において使用される場合、ブロックコポリマーの対応するブロックによって形成されるコンパクトな結晶(compact crystalline)、半結晶、または非晶質領域を意味し、これら領域はラメラまたはシリンダ状であることができ、かつ基体の表面の面に対しておよび/または基体上に配置された表面修飾層の面に対して、直交するかまたは垂直に形成される。ある実施形態においては、このドメインは約1〜約25ナノメートル(nm)、具体的には約5〜約22nm、さらにより具体的には約5〜約20nmの平均最大寸法を有しうる。
【0012】
本発明のブロックコポリマーに関連して、本明細書および特許請求の範囲において使用される、用語「M
N」は実施例において本明細書において使用される方法に従って決定されるブロックコポリマーの数平均分子量(g/モル単位)である。
【0013】
本発明のブロックコポリマーに関連して、本明細書および特許請求の範囲において使用される、用語「M
W」は実施例において本明細書において使用される方法に従って決定されるブロックコポリマーの重量平均分子量(g/モル単位)である。
【0014】
本発明のブロックコポリマーに関連して、本明細書および特許請求の範囲において使用される、用語「PDI」または「D」は下記方程式:
【数1】
に従って決定されるブロックコポリマーの多分散度(多分散指数、または単に「分散度」とも称される)である。
【0015】
本明細書において使用される場合、PtBS−b−PMMAはポリ(4−tert−ブチルスチレン)とポリメチルメタクリラートとのブロックコポリマーを示す。本明細書において使用される場合、PS−b−PMMAはポリスチレンとポリメチルメタクリラートとのブロックコポリマーを示す。
【0016】
転換語(transition term)「含む」は「からなる」および「から本質的になる」の転換語を包含する。
【0017】
用語「および/または」は、「および」と「または」との双方を意味するために使用される。例えば、「Aおよび/またはB」はA、B、またはAとBを意味すると解釈される。
【0018】
本明細書において開示されるのは、第1のブロックコポリマー(以降、「第1のブロック」または「コポリマーの第1のブロック」)および第2のブロックコポリマー(以降、「第2のブロック」または「コポリマーの第2のブロック」)を含み、この第1のブロックと第2のブロックとは化学的に異種であり、かつ一方のブロックを他方のブロックに溶解させるエネルギーペナルティ(energetic penalty)によって特徴付けられる。このエネルギーペナルティはフローリー−ハギンス(Flory−Huggins)相互作用パラメータ、または「chi」(χで示される)によって特徴付けられ、かつブロックコポリマーにおけるミクロ相セグメント挙動を決定するのに重要な要因である。よって、ブロックコポリマーのχ値は、そのブロックコポリマーが、ブロックコポリマーの重量、鎖長、および/または重合度に応じてミクロドメインへ分離する傾向を規定する。chiパラメータは多くの場合、ブロックコポリマーのそれぞれのポリマーのヒルデブランド(Hildebrand)溶解度パラメータの差の二乗から近似されうる。典型的な実施形態においては、このchiパラメータは240℃で約0.1以上の値を有する。
【0019】
本明細書において使用される場合、χパラメータは0.118立方ナノメートル(nm
3)のセグメント容積に関連したセグメント−セグメント相互作用パラメータを示す。セグメントの分子量m
0(g/モルの単位)はセグメント容積にポリマー密度を乗じ、そしてアボガドロ数で割った値に等しい。また、本明細書において使用される場合、重合度Nはブロックコポリマー分子あたりのセグメント数として定義され、M
N=Nxm
0。
【0020】
コポリマーの第1のブロックとコポリマーの第2のブロックとの間のより大きなchiパラメータは、より小さな、高度に周期的なラメラおよび/またはシリンダ状ドメインの形成を促進し、これはコポリマーが配置される基体に周期的な構造を生じさせるために使用されうる。典型的な実施形態においては、基体における周期的な構造はナノリソグラフィによって生じさせられる。ある実施形態においては、コポリマーの第1のブロックはビニル芳香族モノマーから生じたブロックであり、一方で、コポリマーの第2のブロックはエチレン性不飽和モノマーから生じたブロックである。ある典型的な実施形態においては、ビニル芳香族モノマーはアルキルスチレンモノマーであり、一方、エチレン性不飽和モノマーはアルキルメタクリラートモノマーである。別の典型的な実施形態においては、アルキルスチレンモノマーは4−tert−ブチルスチレンであり、一方で、アルキルアクリラートモノマーはメチルメタクリラートである。典型的な実施形態においては、コポリマーの第1のブロックはポリ(4−tert−ブチルスチレン)であり、一方で、コポリマーの第2のブロックはポリメチルメタクリラートである。ある実施形態においては、コポリマーの第1のブロックはポリ(4−tert−ブチルスチレン)以外のポリスチレンを一定の割合(約1〜約50モルパーセント)で含むことができ、一方で、コポリマーの第2のブロックはポリメチルメタクリラート以外のポリメタクリラートを一定の割合(約1〜約50モルパーセント)で含むことができる。
【0021】
コポリマーの第1のブロックおよびコポリマーの第2のブロックは両方とも狭い多分散指数を有し、その結果、高度の周期性を示すブロックコポリマーを形成する。コポリマーはラメラおよび/またはシリンダ形状を有し、そしてそれらが配置される基体の表面に対して垂直に整列することができ、よってそれらを高度な半導体パターニングに有用にする。これらブロックコポリマーは約25ナノメートル以下である基体(その基体上にそれらが配置される)上にフィーチャを作成するために使用されうる。ブロックコポリマーは、同じ組成を有するがアニールされない比較のコポリマーと比べた場合に、改良されたロングレンジ秩序(long range order)を示す形態に自己組織化するようにアニーリングによってさらに処理されうる。このフィーチャは有利に、ブロックコポリマーが、様々なリソグラフィ用途のための可変のドメイン間隔(interdomain spacing)を有するフォトレジストとして使用されるのを可能にする。
【0022】
ブロックコポリマーを製造する方法も本明細書において開示される。この方法は狭い多分散指数を有するコポリマーの第1のブロックおよびコポリマーの第2のブロックを合成するための制御された重合またはリビング重合を使用することを伴う。
【0023】
典型的な一実施形態においては、ブロックコポリマーは、第1のモノマーが最初にアニオン重合されて第1のブロックを形成する逐次的アニオン重合技術を用いて製造される。コポリマーの第1のブロックが所望の分子量に到達したときに、第1のブロックのポリマーアニオンの反応性を調節するためにエンドキャッピング剤が使用され、その後で、第2のブロックの重合が開始されて、所望の多分散指数を有するブロックコポリマーを形成する。このブロックコポリマーは以下に示される多くの様々な方法によって製造されうる。
【0024】
別の典型的な実施形態においては、コポリマーの第1のブロックおよびコポリマーの第2のブロックが別々に重合されて、次いで共有結合によって化学的に一緒に連結される。この方法においては、コポリマーの第1のブロックおよびコポリマーの第2のブロックは異なる重合方法を用いて合成されうる。さらに別の実施形態においては、ブロックコポリマーは制御されたフリーラジカル重合技術を用いた逐次的モノマー付加によって製造されうる。この逐次的モノマー付加ストラテジーは制御されたフローラジカル技術、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)、可逆的付加開裂連鎖移動重合 (reversible addition fragmentation chain transfer polymerization;RAFT)、および他の制御された重合方法と組み合わせられうる。要するに、ブロックコポリマーは、相補的な鎖末端官能基を含むそれぞれのポリマー(すなわち、コポリマーの第1のブロックおよびコポリマーの第2のブロック)の合成、そしてその後でこれらを反応させてブロックコポリマーを形成することによって製造されてもよい。
【0025】
ブロックコポリマーはマルチブロックコポリマーであり得る。ある実施形態においては、このマルチブロックには、ジブロック、トリブロック、テトラブロックなどが挙げられうる。このブロックは線状コポリマー、枝が骨格上にグラフトされている分岐コポリマー(これらコポリマーは場合によっては「櫛型コポリマー」とも称される)、星型コポリマーなどの部分であってよい。ある典型的な実施形態においては、ブロックコポリマーは線状ジブロックコポリマーである。
【0026】
コポリマーの第1のブロックはビニル芳香族モノマーから生じたブロックである。ブロックコポリマーのコポリマーの第1のブロックを生じさせるために重合されうるビニル芳香族モノマーはアルキルスチレンである。適するアルキルスチレンの例は、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、4−tert−ブチルスチレンなど、または前述のアルキルスチレンモノマーの少なくとも1種を含む組み合わせである。典型的なアルキルスチレンモノマーは4−tert−ブチルスチレンである。コポリマーの典型的な第1のブロックはポリ(4−tertブチルスチレン)である。ある実施形態においては、コポリマーの第1のブロックは、4−tert−ブチルスチレンから生じたものではないビニル芳香族種を約2〜約10重量パーセント含むことができる。
【0027】
第1のブロックの重量平均分子量(M
w)は約2kg/モル〜約200kg/モル、具体的には約5kg/モル〜約100kg/モル、より具体的には約7kg/モル〜約50kg/モル(THFを移動相として使用し、1ミリリットル/分(mL/分)の流量で、多角度レーザー光散乱(MALLS)ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置によって測定したモルあたりのグラム数)である。
【0028】
第1のブロックの多分散指数は、移動相としてクロロホルムを用いて、(35℃で、かつ1mL/分の流量で)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定される場合には、約1.20以下、具体的には約1.10以下、具体的には約1.08以下である。
【0029】
第1のブロックは、コポリマーの全容積の約20〜約80容積パーセント、具体的には約40〜約60容積パーセント、より具体的には約45〜約55容積パーセントを構成する。ある典型的な実施形態においては、第1のブロックはコポリマーの全容積の約50モル容積パーセントを構成する。
【0030】
コポリマーの第2のブロックはアクリラートモノマーから生じたブロックである。ある実施形態においては、第1の繰り返し単位(すなわち、アクリラートモノマー)は式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である)
で表されるモノマーから生じた構造を有する。第1の繰り返しモノマーの例は、アクリラートおよびアルキルアクリラート、例えば、α−アルキルアクリラート、メタクリラート、エタクリラート、プロピルアクリラートなど、または前述のアクリラートの少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0031】
ある実施形態においては、第1の繰り返し単位は式(2)
【化2】
(式中、R
1は水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、およびR
2はC
1−10アルキル、C
3−10シクロアルキル、またはC
7−10アラルキル基である)で表される構造を有するモノマーから生じた構造を有する。アルキル(α−アルキル)アクリラートの例は、メタクリラート、エタクリラート、プロピルアクリラート、メチルメタクリラート、メチル エチルアクリラート、メチル プロピルアクリラート、エチル エチルアクリラート、メチル アリールアクリラートなど、または前述のアクリラートの少なくとも1種を含む組み合わせである。用語「(α−アルキル)アクリラート」は、他に特定されない限りは、アクリラートまたは(α−アルキル)アクリラートのいずれかが意図されることを意味する。
【0032】
上述のように、第2の繰り返し単位は、少なくとも1つのフッ素原子置換基を有し、かつ式(3)
【化3】
(式中、R
1は水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基であり、およびR
3はC
2−10フルオロアルキル基である)によって表された構造を有するモノマーから生じる。式(3)の構造を有する化合物の例はトリフルオロエチルメタクリラートおよびドデカフルオロヘプチルメタクリラートである。コポリマーの第2のブロックに典型的なモノマーはメチルメタクリラートである。コポリマーの典型的な第2のブロックはポリメチルメタクリラートである。コポリマーの第2のブロックは、メチルメタクリラートから生じたものではないアクリラート種を約2〜約5重量パーセント含むことができることに留意されたい。
【0033】
第2のブロックの重量平均分子量(M
w)は、THFを移動相として使用し、1ミリリットル/分(mL/分)の流量で、多角度レーザー光散乱(MALLS)ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置によって測定したモルあたりのグラム数で、約2kg/モル〜約200kg/モル、具体的には約5kg/モル〜約100kg/モル、より具体的には約7kg/モル〜約50kg/モルである。第2のブロックの多分散指数は、移動相としてクロロホルムを用いて、(35℃で、かつ1mL/分の流量で)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定される場合には、約1.20以下、具体的には約1.15以下、具体的には1.10以下である。多分散指数は、要望通りに、ブロックコポリマー全体の、またはそれぞれのブロックの数平均分子量を決定するために使用される。重量平均分子量を数平均分子量に変換するために、THFを移動相として使用し、1ミリリットル/分(mL/分)の流量で、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置によって測定した重量平均分子量を、移動相としてクロロホルムを用いて、(35℃で、かつ1mL/分の流量で)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定される多分散指数によって割る。
【0034】
第2のブロックはコポリマーの全容積の約20〜約80容積パーセント、具体的には約40〜約60容積パーセント、より具合的には約45〜約55容積パーセントを構成する。ある典型的な実施形態においては、第2のブロックはコポリマーの全容積の約50容積パーセントを構成する。
【0035】
ブロックコポリマーの多分散指数は、移動相としてクロロホルムを用いて、(35℃で、かつ1mL/分の流量で)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって決定される場合に、約1.20以下、具体的には約1.15以下、具体的には約1.10以下である。
【0036】
ブロックコポリマーの重量平均分子量は、多角度レーザー光散乱ゲル浸透クロマトグラフィと多分散指数とを用いて決定した場合に、約3〜約150、具体的には約7.5〜約120、具体的には約10〜約100、より具体的には、約15〜約70キログラム/モルである。ある典型的な実施形態においては、ブロックコポリマーが役3〜約120キログラム/モルの重量平均分子量を有することが望ましい。
【0037】
ブロックコポリマーはX線小角散乱によって測定した場合に、約40ナノメートル以下、具体的には約32ナノメートル以下、より具体的には25ナノメートル以下、より具体的には約20ナノメートル以下のドメイン間隔を有する。
【0038】
ブロックコポリマーはバッチプロセスまたは連続プロセスで製造されうる。バッチプロセスまたは連続プロセスは1つまたは複数の反応器、単一または複数種の溶媒、および単一または複数種の触媒(開始剤とも称される)を伴うことができる。ある実施形態においては、ブロックコポリマーを製造する一方法においては、第1のモノマーは、第1の溶媒および第1の開始剤の存在下で第1の反応器内でアニオン重合されてコポリマーの第1のブロックを形成する。次いで、第1の反応器内のアニオン反応をクエンチし、かつ望まれない副反応を妨げるために、この第1の反応器に第1のエンドキャッピング剤が導入される。第2のモノマーが、第2の溶媒および第2の開始剤の存在下でアニオン重合されて、コポリマーの第2のブロックとなる。この第2のブロックは第2の反応器内で重合されてもよい。第2のブロックが望ましい分子量に到達したときに、第2のエンドキャッピング剤を使用してこの反応はクエンチされうる。第1のブロックおよび第2のブロックは次いで共有結合されて、ブロックコポリマーを形成する。ある実施形態においては、第1のブロックと第2のブロックとは、次いで、共重合されて(すなわち、化学的に(共有)結合されて)第1の反応器または第2の反応器内でブロックコポリマーを形成する。第1の反応器、第1の溶媒および第1の開始剤は第2の反応器、第2の溶媒および第2の開始剤と同じであってよいしまたは異なっていてもよい。
【0039】
ある典型的な実施形態においては、第1の反応器は第2の反応器と同じであり、第1の溶媒は第2の溶媒と同じであり、並びに第1の開始剤は第2の開始剤と同じである。ある実施形態においては、第1のモノマーは第1の反応器内で、第1の溶媒および第1の開始剤の存在下でアニオン重合されてコポリマーの第1のブロックを形成する。次いで、第1の反応器内でのこのアニオン反応の反応性を低減させ、かつ望まれない副反応を妨げるために、第1の末端反応性減衰剤が第1の反応器に導入される。別の実施形態においては、第1の反応器内でのアニオン反応の速度を増大させるために、反応性促進剤が第1の反応器に導入されうる。
【0040】
ある実施形態においては、(第1のブロックの)反応速度を、第2のブロックについての反応速度の値に近い値に制御するために、反応性減衰剤または反応性促進剤が反応器に入れられる。
【0041】
次いで、第2のモノマーが第1の反応器内に導入され、そしてアニオン重合されて第2のブロックを形成し、それが結果的にブロックコポリマーの形成をもたらす。第2のブロックを形成するためのアニオン重合は第1の溶媒および第1の開始剤の存在下で行われる。ある典型的な実施形態においては、追加の第1の開始剤が第1の反応器に添加されない。この共重合方法は逐次重合と称される。次いで、コポリマーを末端キャッピングするために、末端キャッピング剤が第1の反応器に導入される。
【0042】
この反応を行うのに適する溶媒は、極性溶媒、非極性溶媒、またはこれらの組み合わせである。溶媒の例は、非プロトン性極性溶媒、極性プロトン性溶媒、または非極性溶媒である。ある実施形態においては、非プロトン性極性溶媒、例えば、プロピレンカルボナート、エチレンカルボナート、ブチロラクトン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、ニトロメタン、ニトロベンゼン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなど、または前述の溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが使用されうる。別の実施形態においては、極性プロトン性溶媒、例えば、水、メタノール、アセトニトリル、ニトロメタン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど、または前述の極性プロトン性溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが使用されてもよい。他の非極性溶媒、例えば、ベンゼン、アルキルベンゼン(例えば、トルエンまたはキシレン)、塩化メチレン、四塩化炭素、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど、または前述の溶媒の少なくとも1種を含む組み合わせが使用されてもよい。溶媒の膨潤力を調節しそれにより反応速度を調節するために、少なくとも1種の非プロトン性極性溶媒および少なくとも1種の非極性溶媒を含む共溶媒が使用されてもよい。ある典型的な実施形態においては、第1の溶媒はテトラヒドロフランである。
【0043】
溶媒:第1のモノマーの重量比は約5:1〜約20:1、具体的には約7:1〜約15:1、より具体的には約8:1〜約12:1である。
【0044】
コポリマーの第1のブロックを形成させるための第1のモノマーの重合を開始させるために、ビニル芳香族化合物のアニオン重合を開始させることができる第1の開始剤を使用することが望ましい。第1の開始剤は、脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルキル金属化合物など、または前述の第1の開始剤の少なくとも1種を含む組み合わせである。
【0045】
アルカリ金属の例には、リチウム、ナトリウム、カリウムなど、または前述のアルカリ金属の少なくとも1種を含む組み合わせが挙げられる。ある典型的な実施形態においては、有機アルカリ金属化合物には、1〜約20個の炭素原子を含む脂肪族および/または芳香族炭化水素リチウム化合物、1つの分子内に1つのリチウム原子を含む化合物、または1つの分子内に複数のリチウム原子を含むジリチウム、トリリチウムおよびテトラリチウム化合物が挙げられる。
【0046】
ある典型的な実施形態においては、第1の開始剤は、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム;ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物;ジビニルベンゼンと、sec−ブチルリチウムと、少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物;など、または前述の第1の開始剤の少なくとも1種を含む組み合わせである。ある典型的な第1の開始剤はsec−ブチルリチウムである。
【0047】
ある実施形態においては、第1の開始剤は、第1のモノマーのモルあたり約20〜約2000モルの量で使用される。ある典型的な実施形態においては、第1の開始剤は、第1のモノマーのモルあたり約70〜約300モルの量で使用される。
【0048】
第1のモノマーは、コポリマーの第1のブロックを形成するために、約−100℃〜約150℃、具体的には約−80℃〜約100℃の温度で反応させられる。副反応を最小限にしかつ狭い分散度のポリマーを提供するために、その重合化学のために反応温度が選択される。この反応は真空下または高圧下で行われうる。ある実施形態においては、反応容器内の圧力は約0.05〜約10キログラム/平方センチメートル、具体的には約0.07〜約2キログラム/平方センチメートルである。加圧された不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素などを使用することによって、この圧力が反応器に適用されうる。
【0049】
ブロックコポリマーを形成するための第2のモノマーの重合を開始させるために、ビニル芳香族化合物のあらかじめ形成されたポリマーアルカリ金属化合物に第2のモノマーを添加することが望ましい。ある実施形態においては、第2のモノマーは開始剤のモルあたり約20〜約2000モルの量で使用される。ある典型的な実施形態においては、第2のモノマーは、開始剤のモルあたり約70〜約300モルの量で使用される。
【0050】
ある実施形態においては、コポリマーの第2のブロックを形成するための反応は、約−100℃〜約150℃、具体的には約−85℃〜約100℃の温度で行われる。この反応は真空下または高圧下で行われうる。ある実施形態においては、反応容器内の圧力は約0.05〜約10キログラム/平方センチメートル、具体的には約0.07〜約2キログラム/平方センチメートルである。加圧された不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素などを使用することによって、この圧力が反応器に適用されうる。所望の場合には、この反応は真空下で行われる。
【0051】
第2のブロックコポリマーを形成するための第2のモノマーの重合を開始させるために、ビニル芳香族化合物のアニオン重合を開始させることができる第2の開始剤を使用することが望ましい。第2の開始剤は任意であり、すなわち、ブロックコポリマーの第1のおよび第2のブロックの双方を重合するために第1の開始剤が使用されうる。適する開始剤の例は、アルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムまたはフランシウムの有機アルカリ金属化合物である。ある実施形態においては、有機アルカリ土類金属化合物はアルカリ土類金属、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムまたはラジウムの有機金属化合物である。
【0052】
第2の開始剤の例はn−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、ジフェニルメチルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、フルオレニルリチウム、トリフェニルメチルリチウム、α−リチウムメチルイソブチラート、オリゴスチリルリチウム、ポリスチリルリチウム、オリゴ−α−メチルスチリルリチウム、ポリ−α−メチルスチリルリチウム、オリゴブタジエニルリチウム、ポリブタジエニルリチウム、オリゴイソプレニルリチウム、ポリイソプレニルリチウムおよび他の一価有機リチウム化合物;ジフェニルメチルカリウム、トリフェニルメチルカリウム、ジフェニルメチルナトリウム、トリフェニルメチルナトリウム、臭化フェニルマグネシウム、塩化フェニルマグネシウム、臭化t−ブチルマグネシウム、塩化t−ブチルマグネシウムなど、または前述の第2の開始剤の少なくとも1種を含む組み合わせである。典型的な第2の開始剤は1,1−ジフェニルヘキシルリチウムである。
【0053】
ある実施形態においては、第2の開始剤は、第1のモノマーのモルあたり、約0〜約2000モルの量で使用される。ある典型的な実施形態においては、第2の開始剤は第1のモノマーのモルあたり、約70〜約300モルの量で使用される。
【0054】
上述のように、コポリマーの第1のブロックの重合後に、望まれない副反応を妨げるために第2のモノマーを添加する前に反応性減衰剤を添加することが望ましい場合がある。次いで、ポリマーアルカリ金属化合物の反応性を調節するために、反応性減衰剤が反応器に添加される。典型的な反応性減衰剤は、1,1−ジフェニルエチレンである。反応性減衰剤は開始剤のモルあたり約1〜約10モルの量で反応器に入れられる。ある典型的な実施形態においては、反応性減衰剤は、開始剤のモルあたり、約1.2〜約1.5モルの量で使用される。ポリマーの多分散度を向上させるために、LiClのような金属塩をはじめとする添加剤も添加されてよい。
【0055】
ある実施形態においては、コポリマーの第2のブロックが所望の分子量に到達したときに、その反応をクエンチすることが望ましい。このクエンチングはプロトン性化合物の添加によって達成される。ある好ましい実施形態においては、クエンチング剤は脱ガスされたメタノールである。クエンチング剤は、開始剤のモルあたり、約25〜約1,000,000モルの量で反応器に入れられる。ある典型的な実施形態においては、第1のエンドキャッピング剤が、コポリマーのモルあたり、約500〜約20,000モルの量で使用される。
【0056】
ある実施形態においては、それぞれのブロックポリマーは、ブロックコポリマーを形成するために反応させられる前に様々な方法によって精製されてもよい。それぞれのブロックポリマーの精製は任意である。別の実施形態においては、反応物質、それぞれのブロックポリマー、およびブロックコポリマーは反応の前および後で精製されてもよい。精製には、洗浄、濾過、沈殿、デカンテーション、遠心分離、蒸留など、または前述の精製方法の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられうる。
【0057】
ある典型的な実施形態においては、溶媒、開始剤およびエンドキャッピング剤をはじめとする全ての反応物質は反応の前に精製される。純度約99重量%以上、具体的には純度約99.5重量%以上、より具体的には純度約99.9重量%以上の量まで精製された反応物質、溶媒および開始剤を使用することが一般的には望ましい。別の典型的な実施形態においては、ブロックコポリマーの逐次重合の後で、ブロックコポリマーが、洗浄、濾過、沈殿、デカンテーション、遠心分離、または蒸留をはじめとする方法による精製にかけられることができる。実質的に全ての金属不純物および金属触媒不純物を除去する精製が行われてもよい。不純物の低減は、ブロックコポリマーがアニールされる際の配向欠陥を低減させる。
【0058】
ある実施形態においては、ブロックコポリマーは酸化防止剤、オゾン劣化防止剤(anti−ozonant)、離型剤、熱安定化剤、平滑化剤、粘度調節剤、フリーラジカルクエンチング剤、他のポリマーまたはコポリマー、例えば、耐衝撃性改良剤などを含むことができる。
【0059】
精製後のブロックコポリマーは溶媒に溶解させられることができ、次いで基体の表面に配置されて、そのブロックが基体の表面に対して垂直に配向しているブロックコポリマーフィルムを形成することができる。ある実施形態においては、基体の表面は、基体の表面上にブロックコポリマーを配置する前に、基体上に配置された表面修飾層を含んでいても良い。この表面修飾層はブロックコポリマー、ランダムコポリマー、ホモポリマーのブレンドであることができ、並びに基体の表面上にブラシを形成することができる。基体は、いくつかの領域が垂直配向を生じさせ、それと同時に、他の領域が平行配向のブロックコポリマードメインを含むようにパターン形成されていてもよい。いくつかの領域が選択的にブロックコポリマーのドメインに相互作用しまたはそのドメインを固定してブロックコポリマー形態の秩序およびレジストレーションを誘導するように、基体はパターン形成されていてもよい。基体はブロックコポリマーのドメインの1以上の整列およびレジストレーションを誘導する形状を有していてもよい。基体上に配置された後の本発明のブロックコポリマーは、場合によっては、350℃までの温度に最大4時間まで加熱されて、溶媒を除去し、かつアニーリングプロセスにおけるドメインを形成する。ブロックコポリマーのアニーリングはシリンダ状および/またはラメラドメインのドメイン間隔(すなわち、周期)を変えるために使用されうる。ドメインのサイズもアニーリングによって変えられうる。
【0060】
ブロックコポリマーのドメインは基体に対して垂直に生じ、かつ第1のブロックは基体上で「固定用(pinning)」フィーチャに対して第1のドメインで作成されるパターンを整列させ、かつ第2のブロックは基体上で第1のドメインに隣接して整列した第2のドメインを形成する。パターン形成された基体がまばらなパターンを形成している場合には、よって表面修飾層領域は第1および第2のドメインの間隔よりも大きな距離で離されているので、追加の第1および第2のドメインが表面修飾層上に生じて、このまばらなパターンの間の空間を埋める。この追加の第1のドメインは、整列させるための固定用領域なしで、その代わりに、あらかじめ形成された垂直配向誘導表面修飾層に対して垂直に整列し、そして追加の第2のドメインが追加の第1のドメインに対して整列する。
【0061】
次いで、(コポリマーの第1のブロックまたはコポリマーの第2のブロックから形成される)ブロックコポリマーのドメインの一方が好ましくはエッチング除去されうる。次いで、第1または第2のドメインを除去することによってレリーフパターンが形成され、表面修飾層の下地部分を露出させる。ある実施形態においては、除去はウェットエッチ方法、現像、またはプラズマ、例えば、酸素プラズマを使用するドライエッチ方法によって達成される。次いで、この少なくとも1つのドメインが除去されたブロックコポリマーが、エレクトロニクス、半導体などの分野に使用されうる他の表面を装飾または製造するためのテンプレートとして使用される。
【0062】
本発明は、以下の非制限的な実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0063】
実施例1
この実施例はブロックコポリマーを製造する方法を実証するために行われた。ここで製造されたポリマーはアニオン重合される。逐次アニオン重合を用いて、様々なモル質量および狭いモル質量分布を有する一連の対称ポリ(4−tert−ブチルスチレン−ブロック−メチルメタクリラート)(PtBS−b−PMMA)ジブロックコポリマーが製造された。低周波動的力学スペクトル測定(DMS)と可変温度X線小角散乱(SAXS)との組合わせを用いて全重合度Nに応じた秩序無秩序転移(ODT)温度が決定され、セグメント−セグメント相互作用パラメータについての平均場表示(mean−field expression)χ=(41.2±0.9)/T−(0.044±0.002)をもたらした。この材料は、ポリスチレン−b−PMMAよりも、より大きな値のχおよびかなりより大きな温度感受性によって特徴付けられ、容易に到達されうる温度で14ナノメートル(nm)までラメラ周期(ピッチ)を下げるように調節可能なアクセスを提供する。
【0064】
4−tert−ブチルスチレン(tBS)(93%)、メチルメタクリラート(MMA)(>98.5%)、1,1−ジフェニルエチレン(DPE)(97%)、無水メタノール、sec−ブチルリチウム(s−BuLi)(ヘキサン中1.4モル濃度(M))、ジブチルマグネシウム(DBMg)(ヘキサン中1M)、n−ブチルリチウム(n−BuLi)(ヘキサン中2.5M)、トリオクチルアルミニウム(TOA)(ヘキサン中25重量%)、および水素化カルシウム粉体がシグマアルドリッチから購入された。重水素化クロロホルム(CDCl
3)はケンブリッジアイソトープラボラトリーズから購入された。テトラヒドロフラン(THF)は溶媒精製システムを通されたが、そのシステムは窒素ガスの正圧下で操作された活性化アルミナのカラムおよびモレキュラーシーブのカラムを含んでいた。アニオン重合を停止させるために使用された無水メタノールは溶存酸素を除去するために、使用前に、30分間にわたって乾燥窒素でスパージされた。
【0065】
tBSの逐次アニオン重合、そのPtBSブロックのDPEでのエンドキャッピング、その後のMMAの重合、そして脱酸素化無水メタノールを用いたこの重合の最終的な停止を用いて、線状ジブロックコポリマーが合成された。重合は5つのねじ山付きポート備えた1リットル(L)のガラス加圧反応容器内で、〜20グラム(g)の全モノマー、および200〜250ミリリットル(mL)のTHF溶媒のスケールで行われた。このポートのうちの3つに、精製されたTHF、tBSおよびMMA(全てアルゴン下)を収容したPTFEストッパー付きフラスコが取り付けられた。第4のポートには、マニホルドへのカジョン(Cajon)チューブアタッチメントを介して、容器内の雰囲気を高真空(約25ミリトル)から5ポンド/平方インチ(psi)(0.35キログラム/平方センチメートル)の乾燥アルゴンまで変えることができる移動/注入アームが取り付けられた。このアームは2つの別の入口も含んでおり、1つは試薬のシリンジ注入のための密封隔壁を収容しており、もう一方には圧力をモニタリングするための圧力ゲージに取り付けられている。第5のポートはねじ山付きポリテトラフルオロエチレンストッパーで塞がれていた。この組立てられたアニオン反応容器は25mトルの高真空で脱気され、そして過剰に火力乾燥させられ、その後、アルゴンでの再充填、最脱気および再度の火力乾燥を反復した。この容器が充分に乾燥させられかつ脱ガスされた後で、次いで、5psi(0.35キログラム/平方センチメートル)の動圧のアルゴンが適用された。
【0066】
反応の温度は、この重合全体にわたって、ドライアイス/アセトン浴の使用によって−78℃に維持された。代表的な重合手順は以下の通りである:上述の重合容器の適切な準備の後で、THF溶媒フラスコのストッパーが開放されそして約200mLがこのフラスコに入れられ、そしてポリテトラフルオロエチレンで覆われた卵形の攪拌磁石および攪拌プレートを用いて攪拌された。このTHFは次いで−78℃に冷却された。冷却された後で、所望の分子量の目標ポリマーに適する所定の量のsec−ブチルリチウムが、容器の注入ポートアームを介して、エアタイトシリンジを用いて、この冷THFに注入された。
【0067】
15分間にわたって攪拌した後で、次いで、8.998g(56.1mmol)のtBSモノマーがこの反応容器にゆっくりと入れられた。全てのモノマー添加後に、この溶液が−78℃で1時間にわたって攪拌された。次いで、使用されたsec−ブチルリチウム開始剤のモル数の約1.5倍のDPEが、注入隔壁を介してこの容器に注入され、そしてこの重合溶液が橙色から深紅色に変化した。
【0068】
過剰のDPEの投与は、全ての鎖がキャップされることとなるのを確実にする。立体的制約のせいでDPEは伝播することができないので、DPEの1単位だけが付加可能である。15分の攪拌の後で、長針シリンジを用いて1〜2mLのアリコートがこの容器から取り出され、そして〜15〜20mLの脱酸素化メタノールに注入されて停止させ、そして分析のためにDPEキャップされたPtBSホモポリマーの少量のサンプルを沈殿させた。最終的に、バルク反応のために、MMA11.386g(113.7mmol)がゆっくりと添加され、そしてアニオン溶液が直ちに無色になった。このMMA添加は1時間にわたって攪拌された。この重合は1〜2mLの脱ガスメタノールの注入によって停止させられた。この容器は減圧され、室温まで暖められ、バラバラにされ、そしてその内容物がロングステム漏斗を介してメタノールの攪拌溶液(2L、使用されたTHFの容積の約10倍)に注ぎ込まれた。白色ポリマーの沈殿が起こり、濾過され、集められ、そして大部分のメタノールを除去するために空気乾燥させられた。次いで、それは200〜300mLのTHFに溶解させられた。次いで、この沈殿および濾過手順が繰り返された。次いで、さらなる分析の前に、真空オーブン内での40℃での3日間にわたるポリマーの最終的な乾燥が行われた。97%を超えるポリマー収率で全ての場合において回収された。
【0069】
分散度(D)は、HP1100シリーズコンポーネント、3連続Varian PLgel Mixed−Cカラムを用いて、移動相としてクロロホルムを用いて(35℃でかつ1mL/分の流量で)サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって、そしてHP1047A RI検出器を用いて溶出物をモニターして決定された。値は、ポリマーラボラトリーズから購入されたポリスチレン標準を用いた10点キャリブレーションカーブに基づいて決定された。
【0070】
重量平均分子量(Mw)は、分離ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置を用いて、移動相としてTHFを用いて、1mL/分の流量で決定された。GPCは、ワイアットオプティラボ(Wyatt Optilab)EX RI検出器に加えて、ワイアットテクノロジー(Wyatt Technology)DAWN DSP多角度レーザー光散乱(MALLS)検出器を備えている。サイズ排除は、3連続フェノメネックスフェノゲル(Phenomenex Phenogel)−5カラムを用いて行われ、Mw値は文献に報告されているPtBS(0.129mL/g)ホモポリマーのdn/dc値から決定された。それぞれのブロックの容積分率(f)はバリアンINOVA500MHzスペクトロメータにおいてCDCl
3中での
1H−NMRによって、0.00ppmでのテトラメチルシランを参照とした化学シフトを用いて決定されたモルブロック分率から計算された。モル分率はPtBSアリールプロトン対PMMAメトキシプロトンの積分値比較から得られた。
【0071】
ガラス転移温度(Tg)は、TAインスツルメンツディスカバリーDSCにおいて、T−ゼロアルミニウム皿を用いて示差走査熱量測定(DSC)を用いて決定された。全てのBCPサンプルは20℃/分で220℃に加熱され、20℃/分で0℃に冷却され、次いで、20℃/分での第2の加熱の際にTgが決定された。パーキンエルマーダイアモンドTG/DTAにおいて、窒素雰囲気下で、10℃/分の加熱速度で、熱力学的分析(TGA)が行われた。
【0072】
D間隔(D−spacing)値は、アルゴンヌ国立研究所のセクタ5−ID−Dビームラインでのアドバンストフォトンソース(Advanced Photon Source;APS)において行われた25℃でのSAXS分析から得られた。このソースは0.73Åの波長のX線を生じさせる。
【0073】
散乱強度はMar165mm直径のCCD検出器によって、2048×2048の解像度で検出された。ブルカーハイスター(Bruker Hi−Star)マルチワイアエリア検出器、(単色波長=1.54Åの銅kα放射x線での)リガクウルトレックス(Rigaku Ultrex)18キロワット(kW)発生装置、およびサンプルステージへの熱電対の直接取り付けを伴った25〜200℃の温度にアクセス可能な熱制御サンプルチャンバーを備えた2メートル装置で、可変の温度(VT)−SAXS分析が行われた。
【0074】
PtBS−b−PMMAブロックコポリマーについて得られる特性は表1に詳述される。全重合度(N)の計算は298°KでのPtBS(0.95g/cm
3)およびPMMA(1.18g/cm
3)の密度値、および118Å
3の参照容積v
0を用いて行われた。各ブロックコポリマーについては、PtBSブロックのMwはその場で採取されたホモポリマーのアリコートから、MALLS−GPCを用いて決定され、そして分散度Dを用いてM
nに変換された。次いで、1H−NMR分析によってモル比から全ブロックコポリマーM
nが決定された。ブロックコポリマーの全てについて、組成(容積分率fPtBS)は0.50〜0.55の間にあり、Dは約1.20以下である。PtBS−b−PMMAの熱安定性は、N
2下で、30から600℃まで10℃/分で加熱するTGAによって試験された(
図2)。これら材料は325℃まで安定性を示し、350℃まで5%未満の重量損失しかなかった。DSCは125〜145℃の範囲内で両方のブロックのT
gの重複を示した(
図3)。低いN値では1つだけのガラス転移が観察されるが、より高い分子量では2つの転移が現われる。
【0075】
【表1】
【0076】
aPtBS−PMMA(Y,Z)=Y(kg/モル)の全分子量、およびPtBSブロックの容積分率Zを有するPtBS−b−PMMA。
bPtBSホモポリマーの多角度レーザー光散乱ゲル浸透クロマトグラフィ(MALLS−GPC)およびそれぞれのブロックの
1H−NMRモル比を用いて決定された。
cSEC分析によって決定された分散度。
d25℃密度ρ(PtBS)=0.94g/cm
3およびρ(PMMA)=1.18g/cm
3を用いて決定されたPtBS容積分率。
e118Å
3参照容積(i0)に基づいた全重合度。
fD=2π/q
*である、25℃SAXS主ラメラ散乱ピークq
*を用いて決定された。
g無秩序形態を示す。
【0077】
表1におけるデータは、15キログラム/モル未満のブロックの分子量を有するサンプル1および2については、これらサンプルは無秩序形態を有している。15キログラム/モルより大きな分子量においては、ブロックコポリマーはラメラ/シリンダで秩序化された構造を有する。基体上に薄フィルムとしてキャストされた場合には、これらラメラ/シリンダは周期的であり、かつ基体の表面に対して垂直である。よって、これらサンプルは高度な半導体パターニングのために使用されうる。
【0078】
図2は熱力学的分析(TGA)を用いて得られたサンプル4の熱分解データを描くグラフである。TGAにおける加熱は10℃/分の加熱速度で窒素下で行われた。
図2に示されたTGAサーモグラムは、サンプルが約350℃の分解温度を有することを示し、それと同時に、このグラフ(挿入されたもの)は、重量損失が350℃までで5重量%未満であったことを示す。
【0079】
図3は、表1に示された組成物の全てについての示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを描くグラフである。このDSCトレースは20℃/分の加熱速度で得られた。
図3はこれらサンプルが両方のブロックについて125〜145℃のガラス転移温度を示す。両方の個々のブロックについてのガラス転移温度は重複しているが、2つの層の転移はNの値が400を超えると別々に解像されうる。
【0080】
25℃で得られたSAXSの結果が
図4に示される。ドメイン間隔D=2π/q
*がそれぞれの標本について決定され、ここでq
*は主(一次)SAXSピークの位置である。より低いM
nのサンプルはバルクブロックコポリマーを、190℃で4日間にわたってアニーリングすることにより調製された。2つの最も高いM
nのブロックコポリマーは190℃での溶融プレスにおけるチャンネルダイの使用によってせん断整列させられた。SAXS分析中のサンプル温度は25℃であったが、マイクロドメインの観察されたピッチは、アニーリング後のサンプルの素早い冷却およびガラス化のせいで190℃でのものと近いと考えられる。
【0081】
q
*に関してより高い秩序の散乱ピークの位置は、予想されたラメラ形態について計算されたもの(黒三角)に一致する。PtBS−PMMA(12.5、0.55)およびPtBS−PMMA(14.3、0.53)についての単一ブロード主ピークの観察は、この材料が190℃で無秩序化されることを示唆する。PtBS−b−PMMA(17.6、0.53)についての秩序化ラメラ形態は、同等の温度でのミクロ相分離を得るために30kg/モルでのM
nが必要とされる対称ポリスチレン−ブロック−ポリメチルメタクリラート(PS−b−PMMA)ジブロックコポリマーと比較したときに、より大きなχを示す。2q
*に位置する二次散乱ピークはほとんど見えず、ほぼ等しい容積の各ブロックを含むラメラ形態についての消滅条件と一致する。
【0082】
実施例2
この実施例はポリスチレンおよびポリメチルメタクリラートを含むブロックコポリマー(PS−b−PMMA)とポリ(4−tert−ブチル−スチレン)およびポリメチルメタクリラートを含むブロックコポリマー(PtBS−b−PMMA)との間の差を示す。それは、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリラートを含むブロックコポリマー(PS−b−PMMA)を超えるポリ(4−tert−ブチル−スチレン)およびポリメチルメタクリラートを含むブロックコポリマーの利点も示す。
【0083】
20nmピッチまで小さくなったライン/スペースパターンを形成するために、現在の複数のパターン形成技術が使用されうるが、サブ20nmピッチでこれらパターンを形成するための実際の方法は存在していない。PS−PMMAは、25nmまで小さくなったピッチでこれらパターンを形成することが示されてきたが、その比較的低いχのせいで、PS−PMMAは21nm未満のピッチで自己組織化しないであろう。このデータにより示されるように、PtBS−PMMAは14nmの小ささで自己組織化構造を形成することができ、よって、産業界が現在解決を望んでいる小さなピッチまで拡張可能であるという点で、PS−PMMAの一つの重要な商業化の問題を解決する。
【0084】
界面領域を最小限にするシステムについての熱力学的駆動によって部分的にはブロックコポリマー形態が形成される。欠陥は増大した界面領域を生じさせる。χがより高い場合には、界面領域を最小限にする駆動はより強く、よって欠陥を除去する駆動もより高く、すなわち、より高いχは平衡においてより少しの欠陥しかもたらさない。
【0085】
所定のピッチにおいて、材料がより高いχNを有する場合には、パターンに関連する多くの他の特徴、例えば、ラインエッジラフネスなども向上されるであろう。以下はPS−PMMAとPtBS=PMMAについての25nmピッチでの界面幅とラインエッジラフネスの比較である。周期性のような関連する数値は、より高いχのせいで、(PS−b−PMMAと比較した場合に)PtBS−PMMAについてかなり低い。
【0086】
いくつかの報告は自己組織化プロセスがライン幅変動およびラインエッジラフネス(LER)を向上させうることを示す。しかし、理論的および実験的な証拠は、PS−PMMAブロックコポリマーシステムの本来的なラインエッジラフネスが23nmノードでの半導体製造に許容できないことを示唆する。この分析においては、LERは、PS−PMMAによって形成されたライン/スペースパターンからの透過軟X線回折(SoXRD)を使用して決定され、そして界面幅および界面分散の予想値と比較された。
【0087】
界面幅Δの大きさは以下のように計算された:
【数2】
ここで、Nは全重合度であり、χはフローリー相互作用パラメータであり、およびa
xは統計的セグメント長さである。界面の位置の分散<δ
x2>も以下のように計算された:
【数3】
ここで、νはモノマー容積であり、かつdはラメラ間隔またはピッチ(周期とも称される)である。変動が増大化された界面についての説明のために、明らかな界面幅Δ
aも以下の式に従って決定されうる:
【数4】
【0088】
これらの式から、これらのパラメータがPS−b−PMMAと、PtBS−b−PMMAについて比較されうる。d=25nmのPS−b−PMMAについては、界面幅はΔ≒4.2nmであると推定されることができ、一方で、界面位置の分散は<δ
x2>≒0.9nm
2であると予想される。これらの値は組み合わせられることができΔ
a≒4.9nmの明らかな界面幅をもたらしうる。これに対して、d=25nmのPtBS−b−PMMAは、かなり狭い界面幅(Δ≒1.6nm)および界面位置の分散(<δ
x2>≒0.6)を有し、わずか2.6nmの明らかな界面幅Δ
aを与えると予想される。これらの計算には以下の物理的パラメータが使用された:PS−b−PMMA:Mn=42.4kg/モル、χ=0.037(240℃で)、α=0.54nm、特性比(C
∞)=9.3、密度(ρ)=0.962g/cc、ν=0.118nm
3、およびN=620;PtBS−b−PMMA:Mn=41.6kg/モル、χ=0.128(240℃で)、α=0.59nm、C
∞=10.3、ρ=1.051g/cc、ν=0.118nm
3、およびN=557。
【0089】
この情報は、PtBS−b−PMMAコポリマーについての大きなchiパラメータのせいで、周期が約20ナノメートル以下まで、具体的には約15ナノメートル以下まで小さくされうる。これはPS−b−PMMAブロックコポリマーを用いて達成できない。PS−b−PMMAと比べてPtBS−b−PMMAコポリマーについてのより大きなchiパラメータは、よりシャープなブロック界面(すなわち、より小さな界面幅)およびより低いラインエッジラフネスも有する材料をもたらす。
【0090】
上記データから、chiパラメータ(χ)が約0.05以上、具体的には約0.075以上、具体的には約0.1以上、より具体的には約0.12以上である場合には、得られるブロックコポリマーが約25ナノメートル以下、具体的には約20ナノメートル以下のラメラまたはシリンダ状ドメイン間隔(すなわち周期)を有しうることが認められうる。