(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232208
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ブレード湾曲のための形状記憶合金が有効な桁
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20171106BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20171106BHJP
B64C 3/18 20060101ALI20171106BHJP
B64C 3/38 20060101ALI20171106BHJP
B64C 27/473 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F03G7/06 E
F03G7/06 F
B64C1/00 B
B64C3/18
B64C3/38
B64C27/473
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-102787(P2013-102787)
(22)【出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2014-15928(P2014-15928A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2016年5月9日
(31)【優先権主張番号】13/472,695
(32)【優先日】2012年5月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】マドセン, ケイシー リン
(72)【発明者】
【氏名】クリングマン, ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュネル, グレン エス.
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0217170(US,A1)
【文献】
特開昭63−128529(JP,A)
【文献】
特開平09−305233(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0084516(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0153729(US,A1)
【文献】
特開2005−273015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 1/00−99/00
F03G 7/06
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造桁の形状を変えるためのシステムであって、
前記構造桁の側面を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップであって、第1の構造ストリップと、第2の構造ストリップと、前記第1の構造ストリップと前記第2の構造ストリップとの間に隣接して配置された形状記憶合金ストリップとを含んでいる複数の隣接する構造ストリップ、及び
前記形状記憶合金ストリップの温度を制御するための温度制御システム
を備え、
前記温度制御システムが、前記形状記憶合金ストリップに装着され、前記形状記憶合金ストリップの長さに沿って延在する発熱体を含み、
前記発熱体を介して前記形状記憶合金ストリップに印加される熱は、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる、システム。
【請求項2】
前記形状記憶合金ストリップは、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、及びルテニウム−タンタルベース合金のうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記形状記憶合金ストリップは、剪断で所定の形状に整えられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記構造桁は、ローターブレード、航空機の翼又は尾部、並びに接地構造及び地上車両、水上水中構造体、及び車両を含む航空及び非航空構造体、コンポーネント及び構成要素に位置付けられる、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記温度制御システムは、前記形状記憶合金ストリップを加熱し、その後に前記形状記憶合金ストリップを冷却するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
構造桁であって、
前記構造桁の側面を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップであって、第1の構造ストリップと、第2の構造ストリップと、前記第1の構造ストリップと前記第2の構造ストリップとの間に隣接して配置された形状記憶合金ストリップとを含む複数の隣接する構造ストリップ、及び
前記形状記憶合金ストリップに装着され、前記形状記憶合金ストリップの長さに沿って延在する発熱体であって、前記発熱体を介して前記形状記憶合金ストリップに印加される熱が、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる、発熱体
を備える構造桁。
【請求項7】
前記形状記憶合金は、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、及びルテニウム−タンタルベース合金のうちの少なくとも一つを含む、請求項6に記載の構造桁。
【請求項8】
前記形状記憶合金ストリップは、剪断で所定の形状に整えられる、請求項6に記載の構造桁。
【請求項9】
前記構造桁は、ローターブレード、航空機の翼又は尾部、並びに接地構造及び地上車両、水上水中構造体、及び車両を含む航空及び非航空構造体、コンポーネント及び構成要素に位置付けられる、請求項6に記載の構造桁。
【請求項10】
前記発熱体に結合された温度制御システムをさらに備える、請求項6に記載の構造桁。
【請求項11】
前記形状記憶合金ストリップは、第一の温度未満ではマルテンサイト相であり、前記形状記憶合金ストリップが前記第一の温度を上回る第二の温度にあるオーステナイト相では、前記形状記憶合金ストリップの前記オーステナイト相が、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる、請求項6に記載の構造桁。
【請求項12】
ローターブレードを湾曲させる方法であって、
構造桁の側面を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップから構造桁を形成することであって、ストリップの少なくとも一つは形状記憶合金ストリップを含む、形成すること、
前記形状記憶合金ストリップの温度を制御するために、発熱体を前記形状記憶合金ストリップの長さに沿って前記形状記憶合金ストリップに装着すること、及び
前記発熱体を介して、前記構造桁を湾曲させて前記ローターブレードを湾曲させるように前記形状記憶合金ストリップに熱を印加すること
を含む方法。
【請求項13】
前記構造桁の湾曲しない形状に戻るために、前記形状記憶合金ストリップを冷却することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記形状記憶合金ストリップは、第一の温度未満ではマルテンサイト相であり、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップが前記第一の温度を上回る第二の温度にあるオーステナイト相では、前記形状記憶合金ストリップのオーステナイト相は、前記構造桁を湾曲させる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の分野は、概して航空機の翼及びローターブレードの桁に関し、より具体的には、形状記憶合金が有効な桁に関する。
【0002】
形状記憶合金(SMA)は、興味深い熱的特性及び機械的特性を有する金属群である。形状記憶合金は、いくつかの注目すべき温度依存性の相の一つに存在しうる。最も一般的に使用されるこれらの相は、いわゆるマルテンサイト相及びオーステナイト相である。変態温度を通過して形状記憶合金を加熱すると、形状記憶合金は、マルテンサイト相からオーステナイト相へと変化する。
【0003】
たとえば、形状記憶合金材料ニチノールは、マルテンサイト状態(低降伏強度状態)の間に変形され、次いで、形状記憶合金材料がその元の(非変形)形状を取り戻すオーステナイト状態に到達するそれの転移温度まで加熱される。元の形状に戻る速度は、コンポーネントに印加される熱的エネルギーの量及び速度次第である。形状記憶合金材料は冷却されると、マルテンサイト状態及び形状に戻るだろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造桁は、強度のため及び構造体の形状を促進するための非航空宇宙産業構造体だけではなく、航空機の翼、ローターブレードにも使用される。機械的及び/又は電気的作動システムは、桁を含む構造体の形状を変えるために時折使用される。しかしながら、これらの機械的及び/又は電気的作動システムは、複雑であり、場所を取り、さらに重量を増やす。これらの既知の有害な特性を有さない構造桁の形状を変える手段が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様では、構造桁の形状を変えるシステムが提供される。システムは、構造桁を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップを備える。構造ストリップの少なくとも一つは、形状記憶合金から形成される。また、システムは、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を制御するための温度制御システムを備える。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに印加される熱は、構造桁を湾曲させる又は曲げる。
【0006】
別の態様では、構造桁が提供される。構造桁は、構造桁を形成するための複数の隣接する構造ストリップを含む。構造ストリップの少なくとも一つは、形状記憶合金ストリップとする。また、構造桁は、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を変化させるために、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに隣接して位置付けられる少なくとも一つの発熱体を含む。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに印加される熱は、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる。
【0007】
別の態様では、ローターブレードを湾曲させる方法が提供される。方法は、ストリップのうちの少なくとも一つが形状記憶合金ストリップを含む状態で、構造桁を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップから構造桁を形成することを含む。また、方法は、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を制御するために、温度制御システムを構造桁に装着すること、及び構造桁を湾曲させてローターブレードを湾曲させるために、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに熱を印加することを含む。
【0008】
構造桁の形状を変えるためのシステムは、前記構造桁を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップであって、前記構造ストリップの少なくとも一つは形状記憶合金を含む、構造ストリップ;及び前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を制御するための温度制御システムを備え、;前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに印加される熱は、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる。前記形状記憶合金ストリップは、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、及びルテニウム−タンタルベース合金のうちの少なくとも一つを含む。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップは、剪断で所定の形状に整えられる。構造桁は、ローターブレード、航空機の翼又は尾部、並びに接地構造及び地上車両、水上水中構造体、及び車両を含む他の航空及び非航空構造体、コンポーネント及び構成要素に位置付けられる。温度制御システムは、前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップを加熱してその後に前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップを冷却するように構成される。温度制御システムは、前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに近接して位置付けられる発熱体を備える。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップは、第一の温度未満ではマルテンサイト相であり、前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップが前記第一の温度を上回る第二の温度にあるオーステナイト相では、前記オーステナイト相の前記少なくとも一つの記憶ストリップが前記構造桁を湾曲させる又は曲げる。前記少なくとも一つの形状記憶ストリップが前記第一の温度に冷却され、少なくとも一つの形状記憶ストリップがオーステナイト相からマルテンサイト相に変わると、構造桁は湾曲しない形状に戻される。
【0009】
構造桁は、前記構造桁を形成するための複数の隣接する構造ストリップであって、前記ストリップの少なくとも一つは形状記憶合金ストリップを含む、構造ストリップ;及び前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を変化させるために少なくとも一つの形状記憶合金に隣接して位置付けられる少なくとも一つの発熱体であって、前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに印加される熱は、前記構造桁を湾曲させる又は曲げる、少なくとも一つの発熱体を備える。前記形状記憶合金は、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金−カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、及びルテニウム−タンタルベース合金のうちの少なくとも一つを含む。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップは、剪断で所定の形状に整えられる。前記構造桁は、ローターブレード、航空機の翼又は尾部、並びに接地構造及び地上車両、水上水中構造体、及び車両を含む他の航空及び非航空構造体、コンポーネント及び構成要素に位置付けられる。構造桁は、前記少なくとも一つの発熱体に結合された温度制御システムを備える。
【0010】
温度制御システムは、前記少なくとも一つの発熱体の温度を変化させるように構成される。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップは、第一の温度未満ではマルテンサイト相であり、前記第一の温度を上回る第二の温度であるときにはオーステナイト相とされる。オーステナイト相は、構造桁を湾曲させる又は曲げる。
【0011】
本発明は、構造桁を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップから構造桁を形成することであって、ストリップの少なくとも一つは形状記憶合金ストリップを含む、形成すること;少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を制御するために、温度制御システムを構造桁に装着すること;及び構造桁を湾曲させてローターブレードを湾曲するために少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに熱を印加することを含む、ローターブレードを湾曲させる方法を含む。方法は、構造桁の非湾曲形状に戻るように、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップを冷却することを含む。温度制御システムは、前記少なくとも一つの形状記憶合金ストリップへの発熱体とともに構造桁に装着される。形状記憶ストリップは、第一の温度未満ではマルテンサイト相であり、第一の温度を上回る第二の温度であるときにはオーステナイト相とされる。少なくとも一つの形状記憶合金ストリップのオーステナイト相は、前記構造桁を湾曲させる。前記形状記憶合金は、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、及びルテニウム−タンタルベース合金のうちの少なくとも一つを含む。
【0012】
本発明の各構成要素は、桁の性能及び耐性を向上させるように設計される。上述の特徴、機能及び利点は、様々な実行形態において独立に実現することが可能であるか、さらに別の実行形態において組み合わせることが可能であり、これらの実行形態の詳細については、以下の説明及び添付図面を参照してさらに説明が加えられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図2に示されるヘリコプターブレードの斜視図である。
【
図4】
図3に示される桁の一部分の拡大斜視図である。
【
図5】
図4に示される桁の一部分の、湾曲状態にある拡大斜視図である。
【
図6】ローターブレードを湾曲させる方法のブロックフロー図である。
【
図7】二つの形状記憶合金ストリップを含む桁の一部分の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
航空機の翼及びローターのための形状記憶合金が有効な桁について、以下で詳細に述べられる。実施形態の航空機の構造桁の形状を変えるためのシステムは、構造桁を形成するために軸方向に位置合わせされた複数の隣接する構造ストリップを含む。構造ストリップの少なくとも一つは、形状記憶合金から形成される。形状記憶材料は、材料のマルテンサイト相からオーステナイト相への加熱及びオーステナイト相からマルテンサイト相へ戻る冷却の両方の形状転移により特徴づけられる。また、システムは、形状記憶合金ストリップの温度を制御するための温度制御システムを備える。形状記憶合金ストリップに印加される熱は、形状記憶合金ストリップが構造桁を湾曲させる所定の形状に整えられた/モーフィングされた構成(湾曲した構成)に変更されるオーステナイト相に移る。構造桁の湾曲は、たとえば、ヘリコプターブレードを湾曲させる。ローターブレードの湾曲は、空中停止と前進飛行との間の空力的最適化を提供し、揚力能力を向上させる。空中停止と前進飛行との間の空力的最適化は、たとえば、向上した安全運行領域の性能による燃料削減などの経費削減をもたらす。また、ブレード湾曲は、ブレード内の高調波制御技術の統合を可能にする。以下に記載される実施例のヘリコプターローターブレードは、航空機の翼及び航空宇宙応用及び非航空宇宙応用両方の他の構造体でも使用できることが理解されるべきである。
【0015】
図面を参照すると、
図1は、胴体12、胴体12に装着された翼14及び16、並びに翼14及び16にそれぞれ装着されたエンジン18及び20を備える実施例の航空機10の斜視図である。翼14及び16は、上方翼外板22、下方翼外板24、翼付け根26、翼端28、並びに上方翼外板22と下方翼外板24との間の少なくとも一つの桁30を有する。
【0016】
図2は、胴体36、尾部支材38及び複数のローターブレード40を備える実施例のヘリコプター34の斜視図である。ローターブレード40は、ハブ42に結合される。ローターブレード40は、付け根46からローターブレード40の翼端48に延びる少なくとも一つの構造桁44を含む。
【0017】
図3は、構造桁44を有するローターブレード40の実施例を示す斜視図であり、
図4は、構造桁44の一部分の拡大斜視図である。ローターブレード40は、ハブ42(
図2に示される)に結合される付け根46及び翼端48を含む。構造桁44は、ブレード付け根46とブレード翼端48及び周囲の空気力学的な形状の構造外板50との間を長手方向に延在する。構造桁44の形状は略長方形であり、構造外板50の形状は上反りになった翼である。また、構造外板50の他の形状が使用されてもよい。
【0018】
構造桁44は、軸方向に位置合わせされた複数の構造ストリップ52から形成される。少なくとも一又は複数の構造ストリップ52は、形状記憶合金ストリップ54を形成する形状記憶合金から作られる。形状記憶合金ストリップ54の使用は、構造桁44の形状を変えるために、桁の開渠剛性と閉渠剛性との差を活用する。形状記憶合金ストリップ54は、構造桁44の一又は複数の構造ストリップ52に取って代わるために使用される。任意の適切な形状記憶合金は、たとえば、限定されないが、ニッケル−チタンベース合金、ニッケル−チタン−プラチナベース合金、インジウム−チタンベース合金、ニッケル−アルミニウムベース合金、ニッケル−アルミニウム−プラチナベース合金、ニッケル−ガリウムベース合金、銅ベース合金、金−カドミウムベース合金、鉄−プラチナベース合金、鉄−パラジウムベース合金、銀−カドミウムベース合金、インジウム−カドミウムベース合金、マンガン−銅ベース合金、ルテニウム−ニオブベース合金、ルテニウム−タンタルベース合金、チタンベース合金、鉄ベース合金などのうちの少なくとも一つとする。
【0019】
二方向形状記憶材料は、マルテンサイト相からオーステナイト相への加熱及びオーステナイト相からマルテンサイト相へ戻る冷却の両方の形状転移により特徴づけられる。二方向形状記憶効果を表す形状記憶合金構造は、その「記憶された」低温度形状に戻る形状記憶合金構成要素から製造される。二方向形状記憶挙動は、処理を通して形状記憶材料を所定の形状に整えることにより与えられる。そのような処理は、オーステナイト相である間に、並びに制約、荷重及び/又は舷弧下における加熱−冷却の間に、材料の極度な変形を含むことができる。二方向の形状記憶効果を示すために材料が所定の形状に整えられると、低温状態と高温状態との間での形状変化は概して可逆的であり、非常に多数の熱サイクルを介して持続する。
【0020】
形状記憶合金ストリップ54は、所望のオーステナイト(たとえば、湾曲した又は曲がった)形状を変形させるために所定の形状に整えられる。一つの実施形態では、形状記憶合金ストリップ54は、剪断で所定の形状に整えられる。形状記憶合金材料がマルテンサイト相に冷却されると、形状記憶合金ストリップ54は、形状記憶合金ストリップ54の非変形形状に戻る。
【0021】
温度制御システム56は、形状記憶合金ストリップ54の温度を制御するために使用される。温度制御システム56は、軟質フィルム上の又は固定モジュール内の抵抗素子である発熱体58を含む。また、絶縁ニクロムリボンは、発熱体32として使用するのに適している。ニクロムは、ニッケル、クロム、及びしばしば鉄の非磁性合金である。ニクロムは、発熱体として使用される抵抗線又はリボンである。ニクロムリボンは、ニュージャージー州モリソンタウンマディソンアヴェニュのDriver Harris Co.,から市販されている。発熱体58は、形状記憶合金の加熱を促進し、マルテンサイト相から形状記憶合金ストリップ54が湾曲し(又は曲がり)ブレード40を湾曲させる(曲げる)オーステナイト相まで移るように、形状記憶合金ストリップ54に隣接して位置付けられる。形状記憶合金ストリップ54の温度が冷却すると、形状記憶合金材料はマルテンサイト相に戻り、そこで形状記憶合金ストリップ54は非変形形状に戻り、ブレード40を非湾曲(又は曲がっていない)形状に戻す。
【0022】
図5は、湾曲状態の構造桁44の一部分の拡大斜視図である。構造桁44の非湾曲状態は、
図4に示される。非湾曲状態から湾曲状態へ構造桁44を動かすために、温度制御システム56は、電源60から、形状記憶合金ストリップ54に装着された発熱体58を介して電力が流れるようにする。発熱体58を介して流れる電力は、順に形状記憶合金ストリップ54の温度を上昇させる発熱体58の温度を上昇させる。上昇温度により、形状記憶合金ストリップ54の形状記憶合金はマルテンサイト相からオーステナイト相へ移る。先ほど説明したように、形状記憶合金ストリップ54は、所望のオーステナイト(たとえば、湾曲した又は曲がった)形状に変形するために剪断で所定の形状に整えられる。形状記憶合金ストリップ54をオーステナイト相に移すことにより、形状記憶合金ストリップ54は湾曲し、これにより、構造桁44が湾曲し、これによりローターブレード40が湾曲する。形状記憶合金ストリップ54の形状記憶合金をオーステナイト相からマルテンサイト相へ移すために、温度制御システム56は、発熱体58を介して流れる電力量を低下させ、形状記憶合金ストリップ54の温度を低下させることができる。形状記憶合金ストリップ54は、次いで、非湾曲状態に戻り、これにより、ローターブレード40を非湾曲状態に戻す。一つの実施形態では、たわみ監視装置62は、構造桁44のたわみ量を監視するために使用される。たわみ監視装置62は、温度制御システム56に結合され、形状記憶合金ストリップ54の温度を上昇又は低下させ、構造桁44のたわみ量を増加又は減少させるために、信号を温度制御システム56に送信する。
【0023】
図6を参照すると、ローターブレードを湾曲する方法80は、複数の構造桁からローターブレードの構造桁を形成するステップ82を含み、構造ストリップの少なくとも一つは、形状記憶合金ストリップとする。上述された任意の適する形状記憶合金は、形状記憶合金ストリップを形成するために使用される。また、方法80は、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップの温度を制御するために、温度制御システムを構造桁に装着するステップ84を含む。温度制御システムは、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに装着された少なくとも一つの発熱体を備える。さらに、方法80は、構造桁を湾曲させてローターブレードを湾曲させるように、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップに熱を印加するステップ86を含む。形状記憶合金ストリップの加熱により、形状記憶合金がマルテンサイト相からオーステナイト相へ移り、これにより、形状記憶合金ストリップを湾曲させ(又は曲げ)、ローターブレードを湾曲させる(又は曲げる)。また、方法80は、構造桁の非湾曲形状に戻り、ローターブレードの非湾曲形状にローターブレードを戻すように、少なくとも一つの形状記憶合金ストリップを冷却するステップ88を含む。
【0024】
熱の印加により桁を湾曲させるために桁に統合された形状記憶合金の能力を示すために、サンプルの有限要素解析が実行された。
図7は、桁90の対向する側面に位置付けられる二つの形状記憶合金ストリップ92及び94を含む有効な桁90の一部分の拡大斜視図を示す。有効な桁90の特性は、通常の温度並びに有効な桁90を湾曲させる形状記憶合金ストリップ92及び94の上昇温度で測定された。点線96及び98は、基線から有効化された桁までの桁90の移動を示す。点線96は、通常温度での有効な桁90の位置を示し、点線98は、形状記憶合金ストリップ92及び94の上昇温度での有効な桁90の位置を示す。有効な桁90の回転角度Aは、有効な桁90の位置の変化(湾曲)中に点線96と98との間で示される。回転角度Aは、形状記憶ストリップ92及び94の上昇した温度では約4度であった。実施例の有限要素解析において、各12インチの有効な桁90は、有効でない桁と比べると、2度湾曲し、重量が1.5ポンド増す。測定された特性は、以下の表1に示される。
【0025】
上述された形状記憶合金桁44及び90は、航空機の翼又は尾部、ローター、並びに接地構造及び地上車両、水上水中構造体、及び車両を含む他の航空及び非航空構造体、コンポーネント及び構成要素で使用される。桁44及び90の形状記憶合金材料の使用により、桁44及び90を湾曲すること、曲げること、及び他の構成が促進される。桁44及び90の構成を変えることにより、航空機の翼、ローター、及び/又は航空構造体の空力的最適化が促進される。空力的最適化は、たとえば、向上した安全運行領域性能による燃料削減などの経費削減をもたらす。
【0026】
本明細書は、最良の実施形態を含む本発明を開示するために、また、任意のデバイスまたはシステムを作製および使用すること、並びに任意の組み込まれる方法を実行することを含め、当業者が記載される主題を実施できるように例を用いる。本開示の特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義されており、当業者であれば想起される他の実施例も含みうる。このような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文字言語から逸脱しない構造要素を有する場合、あるいは、それらが特許請求の範囲の文字言語との有意でない相違を有する同等の構造要素を含んでいる場合は、特許請求の範囲内にあることを意図している。
【符号の説明】
【0027】
10 航空機
12 胴体
14、16 翼
18、20 エンジン
22 上方翼外板
24 下方翼外板
26 翼付け根
30 桁
32 発熱体
34 ヘリコプター
36 胴体
38 尾部支材
40 ローターブレード
42 ハブ
44 構造桁
46 付け根
48 翼端
50 構造外板
52 構造ストリップ
54 形状記憶合金ストリップ
56 温度制御システム
58 発熱体
60 電源
62 たわみ監視装置
90 有効な桁
92、94 形状記憶合金ストリップ