(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
捲回軸方向の端部に電極の金属箔を露出させた金属箔露出部を有する捲回電極群と、該捲回電極群を収容する電池缶と、該電池缶の開口部を封口する電池蓋と、該電池蓋に配された外部端子と前記捲回電極群の前記金属箔露出部とを電気的に接続する集電板と、を備えた二次電池であって、
前記金属箔露出部で積層された前記電極の金属箔を積層方向に相互に接合することで形成された第1の溶接部と、
前記第1の溶接部が形成された前記金属箔露出部と前記集電板とを超音波溶接により接合することで形成された第2の溶接部と、
を有し、
前記捲回電極群は、少なくとも一対の平面部を有する扁平形状に捲回され、
前記第1の溶接部及び前記第2の溶接部は、前記平面部に設けられ、
前記平面部の平面視で、前記第2の溶接部の面積は、前記第1の溶接部の面積以上の面積であり、
前記平面部の平面視で、前記第1の溶接部と前記第2の溶接部とは、少なくとも一部が重なることを特徴とする二次電池。
捲回軸方向の端部に電極の金属箔を露出させた金属箔露出部を有する捲回電極群と、該捲回電極群を収容する電池缶と、該電池缶の開口部を封口する電池蓋と、該電池蓋に配された外部端子と前記電極群の前記金属箔露出部とを電気的に接続する集電板と、を備えた二次電池の製造方法であって、
前記電極を前記捲回軸の周りに捲回して少なくとも一対の平面部を有する扁平形状に捲回された前記捲回電極群を得る工程と、
前記捲回電極群の前記平面部の前記金属箔露出部で積層された前記電極の金属箔を互いに厚さ方向に接合して第1の溶接部を形成する工程と、
前記捲回電極群の前記平面部の前記金属箔露出部と前記電池蓋の前記集電板とを前記第1の溶接部の面積以上の面積で超音波溶接により接合して少なくとも一部が前記第1の溶接部と重なるように第2の溶接部を形成する工程と、
前記第1の溶接部及び前記第2の溶接部を有する前記捲回電極群を前記電池缶に収容する工程と、
前記電池缶の開口部に前記電池蓋を接合して前記電池缶を封口する工程と、
を有することを特徴とする二次電池の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態である二次電池を説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の外観斜視図である。
図2は、
図1に示すリチウムイオン二次電池の分解斜視図である。リチウムイオン二次電池1は、主に、電池容器2と該電池容器2に収容される捲回電極群3とから構成されている。
【0015】
電池容器2は、開口部11aを有する電池缶11と、該電池缶11の開口部11aを封口する電池蓋21とを有している。本実施形態の電池容器2は直方体形状に形成されている。すなわち、電池容器2は、一対の幅広側面PWと、一対の幅狭側面PNと、底面PBと、電池蓋21とで直方体形状の扁平角形容器を構成する。電池缶11及び電池蓋21は、例えばアルミニウム合金により製作されている。
【0016】
電池容器2は、電池缶11の内面と捲回電極群3との間にシート状の絶縁保護フィルム41が介在するようにして電池缶11の内部に捲回電極群3を収容し、電池缶11の開口部11aに電池蓋21の外縁が例えばレーザ溶接により接合されることで、捲回電極群3を収容する。
【0017】
電池蓋21には、不図示の絶縁部材を介して一対の電極端子である正極端子51と負極端子61とが配設されている。正極端子51及び負極端子61は、電池蓋21の長手方向の互いに離れた位置に配置されている。また、電池蓋21には、電池容器2内の圧力が所定値よりも上昇すると開放されて電池容器2内のガスを排出するガス排出弁71と、電池容器2内に電解液を注入するための注液口72が設けられている。注液口72は、電解液の注入後に注液栓73によって塞がれる。前記の電池蓋21、正極端子51、負極端子61、ガス排出弁71などにより蓋組立体4が構成され、該蓋組立体4と捲回電極群3とにより発電要素組立体5が構成されている。
【0018】
図3は、
図2に示す発電要素組立体5の分解斜視図である。正極端子51及び負極端子61は、電池容器2の外側に配置される外部端子52、62と、該外部端子52、62に電気的に接続され、電池容器2の内側に配置される集電板(接続端子)53、63とを有している。正極側の外部端子52と集電板53は、アルミニウム合金で製作され、負極側の外部端子62と集電板63は、銅合金で製作されている。集電板53、63及び外部端子52、62は、電池蓋21との間に不図示の絶縁部材を介在させることで、電池蓋21から電気的に絶縁されている。
【0019】
集電板53、63は、電池容器2の内面となる電池蓋21の下面から電池缶11の底面PBに向かって下方に延出している。捲回電極群3は捲回軸方向(図のX軸方向)の端部に電極の金属箔を露出させた金属箔露出部3a、3bを有しており、集電板53、63は捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bに接合される。これにより、集電板53、63は、電池蓋21に配された外部端子52、62と捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bとを電気的に接続している。金属箔露出部3a、3bと集電板53、63との接合については、後で詳細に説明する。
【0020】
図4は、
図3に示す捲回電極群3の展開斜視図である。捲回電極群3は、セパレータ35、負極板32、セパレータ33、正極板34をこの順に重ねて、捲回軸である捲回装置の巻き芯周りに捲回することによって構成される。すなわち、捲回電極群3は、電極である正極板34と負極板32との間に、絶縁体であるセパレータ33、35を介在させ、これらを重ね合わせた状態で捲回軸周りに捲回し、その後、扁平形状に成形した構造を有している。
【0021】
捲回電極群3は、最外周にセパレータ35が捲回され、その内側に負極板32が捲回され、さらにその内側にセパレータ33及び正極板34が捲回される。セパレータ33、35は、正極板34と負極板32とを電気的に絶縁している。
【0022】
正極電極である正極板34は、正極集電体である正極金属箔34bと、該正極金属箔34bの両面に正極活物質合剤を塗布することにより形成された正極塗工部34aを有している。正極板34の幅方向、すなわち捲回軸方向(図のX軸方向)の一端には、正極金属箔34bが露出した正極未塗工部が設けられている。
【0023】
負極電極である負極板32は、負極集電体である負極金属箔32bと、該負極金属箔32bの両面に負極活物質合剤を塗布することにより形成された負極塗工部32aを有している。負極板32の幅方向、すなわち捲回軸方向において、正極板34の未塗工部と反対側の端部には、負極金属箔32bが露出した負極未塗工部が設けられている。
【0024】
捲回電極群3の捲回軸方向において、負極板32の負極塗工部32aの幅は、正極板34の正極塗工部34aの幅よりも広い。これにより正極塗工部34aは、必ず負極塗工部32aに挟まれるように構成されている。
【0025】
正極未塗工部と負極未塗工部は、捲回電極群3の捲回軸方向の一端と他端において、負極板32の金属箔32bと正極板34の金属箔34bを露出させた領域である。このように、負極板32の未塗工部と正極板34の未塗工部を捲回軸方向の一端と他端にそれぞれ配置して捲回軸周りに捲回することで、捲回電極群3の捲回軸方向の一端と他端に、金属箔32b、34bが露出した金属箔露出部3a、3bが形成される。
【0026】
尚、捲回軸方向において、セパレータ33、35の幅は、負極塗工部32aの幅よりも広い。しかし、セパレータ33、35は、負極板32及び正極板34の未塗工部を、それぞれ捲回軸方向の一端と他端に露出させる位置に配置される。これにより、捲回電極群3の捲回軸方向の一端と他端において、負極板32の金属箔32bと正極板34の金属箔34bは、セパレータ33、35に覆われずに露出し、金属箔露出部3a、3bが形成される。
【0027】
捲回電極群3は、前記のようにセパレータ33、負極板32、セパレータ35、正極板34をこの順に重ねて捲回軸周りに捲回した後、
図3に示すように、荷重をかけて扁平形状に成形される。すなわち、捲回電極群3は、一対の平面部3cと一対の湾曲部3dを有する扁平形状に捲回される。平面部3cは、負極板32及び正極板34が概ね平坦な状態で積層された領域である。湾曲部3dは、平面部3cの両側に位置し、負極板32及び正極板34が湾曲した状態で積層された領域であり、捲回電極群3のコーナー部を含む。
【0028】
捲回電極群3が電池容器2に収容されると、一対の平面部3cは、電池缶11の一対の幅広側面PWに対向し、電池蓋21と電池缶11の底面PBとの間の上下方向(
図3のY軸方向)に延在する。また、一対の湾曲部3dのうち、上方側の湾曲部3dは電池蓋21の近傍に配置され、下方側の湾曲部3dは電池缶11の底面PBの近傍に配置される。
【0029】
本実施形態の二次電池1は、捲回電極群3の捲回軸方向の一端に設けられた負極側の金属箔露出部3aにおいて、積層された負極板32の金属箔32bを積層方向に相互に接合する第1の溶接部32cを有している。また、二次電池1は、捲回電極群3の捲回軸方向の他端に設けられた正極側の金属箔露出部3bにおいても、積層された正極板34の金属箔34bを積層方向に相互に接合する第1の溶接部34cを有している。ここで、積層方向とは、捲回軸方向に垂直な断面において、捲回軸周りに捲回された負極板32及び正極板34が積層する方向であり、換言すると負極板32及び正極板34の厚さ方向である。
【0030】
負極側の第1の溶接部32cは、捲回電極群3の負極側の金属箔露出部3aにおいて、捲回されて積層された負極板32の金属箔32bが、例えば抵抗溶接、超音波溶接により溶接され、厚さ方向に一体化された部分である。同様に、正極側の第1の溶接部34cは、捲回電極群3の正極側の金属箔露出部3bにおいて、積層された正極板34の金属箔34bが、例えば抵抗溶接、超音波溶接により溶接され、厚さ方向に一体化された部分である。
【0031】
図5は、
図3のA方向すなわち捲回電極群3の捲回軸方向から見た、発電要素組立体5の模式的な断面図である。第1の溶接部32cは、捲回電極群3の負極側の金属箔露出部3aにおいて積層された負極板32の金属箔32bを、積層方向に相互に接合することで、一括して束ねている。なお、二次電池1は、捲回電極群3の正極側の金属箔露出部3bにおいても、
図5に示す負極側の金属箔露出部3aと同様の構成を有している。すなわち、第1の溶接部34cは、捲回電極群3の正極側の金属箔露出部3bにおいて積層された正極板34の金属箔34bを、互いに厚さ方向に接合して一括して束ねている。
【0032】
また、本実施形態の二次電池1は、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bと集電板63、53とを接合し、これらを電気的に接続する第2の溶接部32d、34dを有している。負極側の第2の溶接部32dは、捲回電極群3の負極側の金属箔露出部3aにおいて積層された負極板32の金属箔32bを、銅合金からなる当板64と集電板63とで挟持し、例えば超音波溶接によりこれらを一体的に接合することにより形成されている。正極側の第2の溶接部34dは、捲回電極群3の正極側の金属箔露出部3bにおいて積層された正極板34の金属箔34bを、アルミニウム合金からなる当板54と集電板53とで挟持し、例えば超音波溶接によりこれらを一体的に接合することにより形成されている。
【0033】
本実施形態において、第1の溶接部32c、34c及び第2の溶接部32d、34dは、捲回電極群3の平面部3cに設けられている。
【0034】
また、本実施形態において、第1の溶接部32c、34cは抵抗溶接により形成され、第2の溶接部32d、34dは超音波溶接により形成されている。そして、第2の溶接部32d、34dの面積は、第1の溶接部32c、34cの面積よりも大きくなっている。ここで、第1の溶接部32c、34cの面積とは、捲回電極群3の平面部3cの平面視における個々の溶接スポットの面積である。また、第2の溶接部32d、34dの面積とは、捲回電極群3の平面部3cの平面視において、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bと接合される、集電板63、53の領域の面積を意味する。
【0035】
また、本実施形態において、第1の溶接部32c、34cは、第2の溶接部32d、34dと重なるように形成されている。
【0036】
なお、第1の溶接部32c、34cは、第2の溶接部32d、34dと同様に、超音波溶接により形成してもよい。また、第1の溶接部32c、34cの一部が、第2の溶接部32d、34dと重なるようにしてもよい。この例を、
図6に示す。
【0037】
図6は、捲回電極群3の模式的な平面図であり、平面部3cの平面視における第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとの関係を示している。なお、
図6では、捲回電極群3と集電板53、63以外の構成は、図示を省略している。図において、右上がりの破線ハッチングで示す領域が、第1の溶接部32c、34cであり、右下がりの点線ハッチングで示す領域が、第2の溶接部32d、34dである。
【0038】
図6に示す例においては、第1の溶接部32c、34cの一部が、第2の溶接部32d、34dと重なっている。しかし、この例においても、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとが完全に重なっていてもよいし、或いは、外縁が接するように隣接していてもよい。第1の溶接部32c、34cの一部が第2の溶接部32d、34dと重なる場合には、例えば、第1の溶接部32c、34cの面積の50%以上かつ100%以下の面積が、第2の溶接部32d、34dと重なるようにしてもよい。
【0039】
また、
図6に示す例のように、捲回電極群3の平面部3cの平面視において、第2の溶接部32d、34dの面積は、第1の溶接部32c、34cの面積と同等になるように形成されていてもよい。なお、
図6に示す例では、第1の溶接部32c、34cも、第2の溶接部32d、34dと同様に、超音波溶接により形成されている。ここで、第1の溶接部32c、34cの面積とは、金属箔32b、34bが積層方向に互いに接合されている個々の領域の面積、すなわち、
図6に示す捲回電極群3の平面部3cの平面視において、破線のハッチングで示す個々の領域の面積を意味する。同様に、
図6において、第2の溶接部32d、34dの面積とは、点線のハッチングで示す個々の領域の面積を意味する。
【0040】
捲回電極群3は、前記の第2の溶接部32d、34dにより、
図3に示す蓋組立体4の集電板63、53に対して金属箔露出部3a、3bが支持固定されることで、蓋組立体4と共に発電要素組立体5を構成する。
【0041】
次に、本実施形態の二次電池1の作用について説明する。本実施形態の二次電池1が備える捲回電極群3においては、負極板32及び正極板34が捲回軸周りに捲回され、コーナー部を含む湾曲部3dにおいて負極板32及び正極板34が湾曲している。そのため、湾曲部3dにおいて、負極板32及び正極板34の弾性力、すなわちスプリングバックによって、負極板32及び正極板34の積層間隔を拡大させるような力が発生する。一方、捲回電極群3の軸心側、すなわち捲回軸に近い部分では、負極板32及び正極板34の自重により、負極板32及び正極板34の積層間隔を縮小させるような力が発生する。
【0042】
そのため、例えば前記特許文献1に記載のように、捲回された正負極板を有する従来の二次電池では、正負極板の未塗工部を外部端子に接続された接続部材に対して、例えば超音波溶接により接合するまでの間に、正負極板間に捲回方向のずれが生じ、捲回された正負極板に巻き弛みが発生する可能性がある。或いは、例えば搬送時の振動などにより、捲回された正負極板に捲回軸方向の巻きずれが発生する虞がある。
【0043】
前記の巻き弛みは、例えば、捲回された正負極板を積層方向に浮き上がらせるような事象を生じさせ、電極極間距離が不均一となる要因となり、電池特性を劣化させる可能性がある。また、前記の巻きずれは、例えば、捲回された正負極板がらせん状、或いは竹の子状に解けるような事象を生じさせ、正極と負極とが互いに対向する面積を減少させる要因となり、二次電池の歩留まりを低下させる懸念がある。
【0044】
これに対して、本実施形態のリチウムイオン二次電池1は、前記のように捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bで積層された負極板32及び正極板34の金属箔32b、34bを積層方向に相互に接合する第1の溶接部32c、34cを有している。そのため、前記のように負極板32及び正極板34の積層間隔を拡大させるような力が発生しても、第1の溶接部32c、34cによって積層間隔を保持し、積層間隔の拡大を防止することができる。
【0045】
これにより、例えば、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bを集電板63、53に対して接合するまでの間に、負極板32及び正極板34の捲回方向のずれを防止し、前記の巻き弛み及び巻きずれを防止することができる。したがって、捲回電極群3の電極極間距離を均一に維持し、従来よりも電池特性を向上させることができる。また、負極板32と正極板34とが互いに対向する面積を維持し、従来よりも二次電池の歩留まりを向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態の二次電池1は、捲回電極群3が一対の平面部3cを有する扁平形状に捲回され、第1の溶接部32c、34c及び第2の溶接部32d、34dは、平面部3cに設けられている。これにより、湾曲部3dに、第1の溶接部32c、34c及び第2の溶接部32d、34dを設ける場合よりも溶接が容易になり、生産性が向上すると共に、溶接の信頼性が向上する。
【0047】
また、本実施形態の二次電池1において、捲回電極群3の平面部3cの平面視で、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとは、少なくとも一部が重なるように設けられている。これにより、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとが重ならない場合と比較して、第2の溶接部32d、34dによる、集電板63、53と捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bとの接合をよりし易く、より確実にすることができる。
【0048】
また、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとを重ねることにより、例えば、捲回電極群3の高さが小さくなり、平面部3cの面積が減少した場合においても、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dの各々の溶接面積を確保することが出来る。したがって、捲回電極群3の寸法に縛られることなく、所望の効果を得ることができる。
【0049】
また、本実施形態の二次電池1は、捲回電極群3の平面部3cの平面視で、第2の溶接部32d、34dの面積が、第1の溶接部32c、34cの面積以上の面積とされている。これにより、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bの集電板63、53に対する接合をより確実にすることができる。また、第1の溶接部32c、34cを形成した後に、第1の溶接部32c、34cの少なくとも一部に第2の溶接部32d、34dを重ねて形成する場合に、第2の溶接部32d、34dが第1の溶接部32c、34cと重複しない領域が形成される。これにより、金属箔32b、34bの損傷を防止して、集電板63、53と捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bとの接合を、より容易かつ確実にすることができる。
【0050】
(実施形態2)
次に、本発明の別の実施の形態である二次電池について、
図1、2及び4を援用し、
図7及び8を用いて説明する。
図7は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の発電要素組立体5Aの分解斜視図である。
図8は、
図7に示すA方向から見た発電要素組立体5Aの模式的な断面図である。
【0051】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、発電要素組立体5Aの構成が、実施形態1のリチウムイオン二次電池1と異なっている。具体的には、本実施形態の発電要素組立体5Aは、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとが重ならない点で、実施形態1の発電要素組立体5と異なっている。また、本実施形態の発電要素組立体5Aは、捲回電極群3Aの構成が実施形態1の発電要素組立体と異なっている。具体的には、本実施形態の捲回電極群3Aは、第1の溶接部32c、34cがそれぞれ複数設けられている点で、実施形態1の二次電池1の捲回電極群3と異なっている。本実施形態のリチウムイオン二次電池のその他の点は、実施形態1のリチウムイオン二次電池1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0052】
捲回電極群3Aは、平面部3cの上下方向(図のY軸方向)において、第1の溶接部32c、34cがそれぞれ複数設けられている。これにより、積層された負極板32及び正極板34をより確実に保持し、前記の巻き弛み及び巻きずれをより効果的に防止することができる。したがって、捲回電極群3Aの電極極間距離を均一に維持し、従来よりも電池特性を向上させることができる。また、負極板32と正極板34とが互いに対向する面積を維持し、従来よりも二次電池の歩留まりを向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の発電要素組立体5Aにおいては、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dは、互いに重ならないように設けられている。すなわち、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dとは、捲回電極群3Aの平面部3cの平面視で、互いに離間するように設けられている。これにより、第1の溶接部32c、34cと第2の溶接部32d、34dを形成した場合であっても、捲回電極群3Aの金属箔露出部3a、3bにおける負極板32及び正極板34の金属箔32b、34bが二重に溶接されることを回避できる。したがって、負極板32及び正極板34の金属箔32b、34bに強度が比較的弱い材料を使用した場合であっても、金属箔32b、34bが損傷することを防止できる。換言すると、より薄い金属箔32b、34bを用いて負極板32及び正極板34を形成することができ、負極板32及び正極板34の捲回量を増加させて、二次電池の容量を増加させることができる。したがって、二次電池の電池特性を向上させ、歩留まりを向上させることができる。
【0054】
(実施形態3)
次に、本発明の別の実施の形態である二次電池について、
図1、2及び4を援用し、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の捲回電極群3Bの斜視図である。
図10は、
図9に示す捲回電極群3BをA方向から見た、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の発電要素組立体5Bの模式的な断面図である。
【0055】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、蓋組立体4Bの構成が実施形態1のリチウムイオン二次電池1と異なっている。より詳細には、
図10に示すように、本実施形態の蓋組立体4Bは、捲回電極群3Bの負極側の金属箔露出部3aを挟持するように対向する一対の集電板63A、63Bと、正極側の金属箔露出部3bを挟持するように対向する一対の集電板53A、53Bを有している。負極側の集電板63A、63Bは、実施形態1の集電板63と同様の構成を有し、外部端子62に電気的に接続されている。正極側の集電板53A、53Bは、実施形態1の集電板53と同様の構成を有し、外部端子52に電気的に接続されている。
【0056】
また、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、捲回電極群3Bの構成が実施形態1のリチウムイオン二次電池1と異なっている。より詳細には、
図9に示すように、本実施形態の捲回電極群3Bは、負極側及び正極側の金属箔露出部3a、3bにおいて、金属箔32b、34bが、それぞれ捲回軸に沿う空洞部を挟んで厚さ方向に2つに分割して束ねられている。そして、負極側及び正極側で束ねられた各部分に第1の溶接部32c、34cを有している。また、負極側で2つに分化して束ねられた金属箔32bの各部分は、実施形態1の当板64と同様の当板64A、64Bと集電板63A、63Bとによってそれぞれ挟持され、例えば超音波溶接により一体的に接合されている。同様に、正極側で2つに分化して束ねられた金属箔34bの各部分は、実施形態1の当板54と同様の当板54A、54Bと集電板53A、53Bとによってそれぞれ挟持され、例えば超音波溶接により一体的に接合されている。その他の点は、実施形態1と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0057】
本実施形態では、前記のように捲回電極群3Bの負極側及び正極側の金属箔露出部3a、3bにおいて、金属箔32b、34bが2つに分割して束ねられ、各部分に第1の溶接部32c、34bを有している。そのため、負極板32及び正極板34は、金属箔32b、34bが束ねられた各部分において、第1の溶接部32c、34bにより保持される。これにより、積層された負極板32及び正極板34をより確実に保持し、前記の巻き弛み及び巻きずれをより効果的に防止することができる。
【0058】
したがって、捲回電極群3Bの電極極間距離を均一に維持し、従来よりも電池特性を向上させることができる。また、負極板32と正極板34とが互いに対向する面積を維持し、従来よりも二次電池の歩留まりを向上させることができる。また、本実施形態によれば、捲回電極群3Bの金属箔露出部3a、3bにおいて、金属箔32b、34bを分割して集電する必要がある大型のリチウムイオン電池においても、前記の効果を有効に得ることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、捲回電極群3Bの金属箔露出部3a、3bの二つに分割された部分の双方に第1の溶接部32c、34cを形成したが、分割された部分のいずれか一方に第1の溶接部32c、34cを設けるようにしてもよい。
【0060】
(実施形態4)
次に、本発明の別の実施の形態である二次電池について、
図1、2及び4を援用し、
図11を用いて説明する。
図11は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の発電要素組立体5Cの模式的な断面図である。
【0061】
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、発電要素組立体5Cの構成が実施形態1のリチウムイオン二次電池1と異なっている。より詳細には、本実施形態の発電要素組立体5Cは、捲回電極群3C及び蓋組立体4Cの構成が、実施形態1の捲回電極群3及び蓋組立体4と異なっている。
【0062】
具体的には、蓋組立体4Cは、集電板63が電池蓋21の下面から電池缶11の底面PBに向けて延出する長さが、第一の実施形態の蓋組立体4よりも短くされ、集電板63、53の下端63a、53aは、捲回電極群3Cの平面部3cの上下方向の中間部分の近傍またはその上方に位置している。
【0063】
捲回電極群3の第1の溶接部32c、34cは、集電板63、53の下端63a、53aよりも下方に設けられている。これにより、第2の溶接部32d、34dは、捲回電極群3Cの平面部3cの平面視において、第1の溶接部32c、34cと重ならない位置に、第1の溶接部32c、34cと離間して設けられている。本実施形態のリチウムイオン電池のその他の構成は、実施形態1のリチウムイオン二次電池1の構成と同一であるので、同一の部分には同一の符号を付して説明は省略する。
【0064】
本実施形態のリチウムイオン二次電池によれば、第1の溶接部32c、34cを形成することで、実施形態1と同様の効果が得られる。また、第1の溶接部32c、34cは、集電板63、53の下端よりも下方に設けられ、第2の溶接部32d、34dと離間して設けられるので、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0065】
さらに、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、実施形態1のリチウムイオン二次電池1よりも集電板63、53が短いため、電池缶11への発電要素組立体5Cの挿入を容易にすることができる。
【0066】
また、集電板63、53が短い所謂ティアドロップ型では、リチウムイオン二次電池の充放電後に捲回電極群3Cの下端が膨らむなどして巻き弛みが生じやすい。しかし、本実施形態のリチウムイオン二次電池によれば、第1の溶接部32c、34cは、集電板63、53の下端よりも下方に設けられるので、捲回電極群3Cの下端の巻き弛みを効果的に防止することが可能になる。
【0067】
なお、
図11に示す例では、第1の溶接部32c、34cを抵抗溶接により形成し、第2の溶接部32d、34dを超音波溶接により形成する。しかし、第1の溶接部32c、34cは超音波溶接により形成してもよい。この例を、
図12に示す。
【0068】
図12は、本実施形態の捲回電極群3Cの模式的な平面図である。なお、
図12では、捲回電極群3Cと集電板53、63以外の構成は、図示を省略している。
図12に示すように、第1の溶接部32c、34cを超音波溶接により形成する場合には、第1の溶接部32c、34cの面積を、第2の溶接部32d、34dの面積と同等の面積とすることができる。
【0069】
(二次電池の製造方法)
次に、前記の実施形態1において説明したリチウムイオン二次電池1の製造方法について説明する。
図13は、リチウムイオン二次電池の製造工程の一例を示すフロー図である。
【0070】
まず、準備段階として、負極板32および正極板34を製作する。負極板32に関しては、負極活物質として非晶質炭素粉末100重量部に対して、結着剤として10重量部のポリフッ化ビニリデン(以下、PVDFという。)を添加し、これに分散溶媒としてN−メチルピロリドン(以下、NMPという。)を添加、混練した負極合剤を作製する。この負極合剤を厚さ10μmの銅箔(負極電極箔)の両面に集電部(負極未塗工部)を残して塗布する。その後、乾燥、プレス、裁断して銅箔を含まない負極活物質塗布部の厚さが70μmの負極板32を得る。なお、負極活物質に非晶質炭素を用いる場合について例示したが、これに限定されるものではなく、リチウムイオンを挿入、脱離可能な天然黒鉛や、人造の各種黒鉛材、コークスなどの炭素質材料やSiやSnなどの化合物(例えば、SiO、TiSi
2等)、またはその複合材料でもよく、その粒子形状においても、鱗片状、球状、繊維状、塊状等、特に制限されるものではない。
【0071】
正極板34に関しては、正極活物質としてマンガン酸リチウム(化学式LiMn
2O
4)100重量部に対し、導電材として10重量部の鱗片状黒鉛と結着剤として10重量部のPVDFとを添加し、これに分散溶媒としてNMPを添加、混練した正極合剤を作製する。この正極合剤を厚さ20μmのアルミニウム箔(正極電極箔)の両面に無地の集電部(正極未塗工部)を残して塗布する。その後、乾燥、プレス、裁断してアルミニウム箔を含まない正極活物質塗布部の厚さが例えば90μmの正極板34を得る。正極活物質にマンガン酸リチウムを用いる場合について例示したが、スピネル結晶構造を有する他のマンガン酸リチウムや一部を金属元素で置換又はドープしたリチウムマンガン複合酸化物や層状結晶構造を有すコバルト酸リチウムやチタン酸リチウムやこれらの一部を金属元素で置換またはドープしたリチウム-金属複合酸化物を用いるようにしてもよい。また、正極板34、負極板32における塗工部の結着材としてPVDFを用いる場合について例示したが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、多硫化ゴム、ニトロセルロース、シアノエチルセルロース、各種ラテックス、アクリロニトリル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、フッ化プロピレン、フッ化クロロプレン、アクリル系樹脂などの重合体およびこれらの混合体などを用いることができる。
【0072】
次に、第1の工程として、セパレータ35、負極板32、セパレータ33、正極板34の順に重ねて、捲回軸である捲回装置の巻き芯周りに扁平状に捲回することによって捲回電極群3を作製する。次に、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bで積層された負極板32及び正極板34の金属箔32b、34bを集束して、例えば抵抗溶接により互いに厚さ方向に接合して第1の溶接部32c、34cを形成する。
【0073】
次に、第二の工程として、電池蓋21に絶縁部材を介して正極端子51と負極端子61を取り付けて蓋組立体4を作製する。その後、蓋組立体4の負極端子61の集電板63と正極端子51の集電板53に、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bを、例えば超音波溶接により接合して導通接続することで第2の溶接部32d、34dを形成し、発電要素組立体5を作製する。
【0074】
次に第3の工程として、捲回電極群3と蓋組立体4が一体となった発電要素組立体5を、電池缶11の内面との間に絶縁保護フィルム41を介在した状態で電池缶11の中に挿入する。その後、レーザ溶接により電池缶11の開口部11aに電池蓋21を接合する。そして、注液口72から電解液を注液し、注液栓73と注液口72をレーザにより溶接して封止し、外部発電電力によって充電することによって、リチウムイオン二次電池1を製造する。
【0075】
前記のリチウムイオン二次電池1の製造方法によれば、前記のように捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bで積層された負極板32及び正極板34の金属箔32b、34bを積層方向に相互に接合する第1の溶接部32c、34cを形成する。そのため、前記のように負極板32及び正極板34の積層間隔を拡大させるような力が発生しても、第1の溶接部32c、34cによって積層間隔を保持し、積層間隔の拡大を防止することができる。
【0076】
これにより、例えば、捲回電極群3の金属箔露出部3a、3bを集電板63、53に対して接合するまでの間に、負極板32及び正極板34の捲回方向のずれを防止し、前記の巻き弛み及び巻きずれを防止することができる。したがって、捲回電極群3の電極極間距離を均一に維持し、従来よりも電池特性を向上させることができる。また、負極板32と正極板34とが互いに対向する面積を維持し、従来よりも二次電池の歩留まりを向上させることができる。
【0077】
以上説明したように、前述の実施形態のリチウムイオン二次電池1及びその製造方法によれば、捲回された負極板32及び正極板34の巻き弛み及び巻きずれが防止され、特性の安定化及び歩留まりの向上が可能になる。
【0078】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。前述の実施形態は本発明を解りやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されない。
【0079】
例えば、前述の実施形態においては、捲回電極群が電池缶の一対の幅広側面に対向する左右の平面部を有する場合について説明したが、捲回電極群の上下に電池蓋および電池缶の底面に対向する一対の平面部をさらに有していてもよい。この場合、捲回電極群の左右の平面部と上下の平面部との間にコーナー部を含む湾曲部が形成される。
【0080】
また、前述の実施形態においては、第1の溶接部及び第2の溶接部が捲回電極群の平面部に設けられる場合について説明したが、第1の溶接部及び第2の溶接部の少なくとも一方を捲回電極群の平面部以外に設けてもよい。例えば、第1の溶接部及び第2の溶接部の少なくとも一方を、捲回電極群の湾曲部に設けてもよい。
【0081】
また、前述の実施形態においては、第1の溶接部のみが平面部の上下方向に複数設けられる構成について説明したが、第2の溶接部のみが平面部の上下方向に複数設けられていてもよく、第1の溶接部及び第2の溶接部の双方が、平面部の上下方向に複数設けられていてもよい。