特許第6232218号(P6232218)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232218
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】パネル構造体
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/12 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   F24C15/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-134436(P2013-134436)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-10725(P2015-10725A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年5月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【弁理士】
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】上村 博一
(72)【発明者】
【氏名】野村 耕一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文
【審査官】 宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−264552(JP,A)
【文献】 特開平08−061677(JP,A)
【文献】 特開2007−107795(JP,A)
【文献】 特開2001−311522(JP,A)
【文献】 特開2000−055379(JP,A)
【文献】 特開2010−181062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚のシート材料をプレス成形して形成されるパネル構造体であって、
平坦部と、
前記平坦部の外縁の少なくとも一部から立ち上がる立上部と、
前記立上部の外方端に形成された縁巻部とを備え、
前記シート材料は、アルミニウム製の板材料よりなり、
前記パネル構造体は、調理用油除けを含み、
前記立上部は、前記平坦部の外縁の全周から、前記平坦部が含まれる水平面に直交する方向に立ち上がり、
前記縁巻部は、前記立上部が含まれる垂直面から外方側であって下方に巻き込むように形成され、
前記立上部は、前記平坦部が含まれる水平面から前記縁巻部が離間するような寸法関係に設定され
前記平坦部には凹凸模様が形成され、
前記平坦部は、直角四辺形状に形成されており、
前記凹凸模様の形状の種類は、前記直角四辺形状の四隅に配置されるL字形の凹凸模様と、前記L字形の凹凸模様よりも内方に配置される直角四辺形状の凹凸模様とを含む、パネル構造体。
【請求項2】
前記板材料の厚みは、200〜250μmであり、
前記立上部は、その立上寸法が、1.0〜3.8mmであり、
前記縁巻部は、その外径が、2.0〜3.5mmである、請求項1記載のパネル構造体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパネル構造体に関し、特に調理を行なう際にコンロの周囲やトッププレートの上に立てて調理用油除けとして使用されるパネル構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のアルミ箔で形成されたパネル構造体のビルトインコンロにおける使用状態を示した概略斜視図であり、図7は、図6で示したパネル構造体の正面図であり、図8は、図7で示したVIII−VIIIラインの拡大端面図であって、パネル構造体の縁巻部を示すものである。
【0003】
これらの図を参照して、パネル構造体71は、平板形状のアルミ箔をプレス成形することで形成した平坦部81と、平坦部81の外縁の全周から外方側であって下方に巻き込むように形成された縁巻部83とから一体的に構成される。アルミ箔からなる平坦部81の厚みMは、40〜80μmである。縁巻部83の外縁は、断面視においてほぼ外径Mの円形状になっている。尚、パネル構造体71に隣接するパネル構造体72は、パネル構造体71と基本的な構成は同一であり、パネル構造体71における長辺の長さを短くしたものである。
【0004】
使用に際して、図6を参照して、パネル構造体71の縁巻部83と、パネル構造体72の縁巻部88とを、パネル連結具80a及び80bで接続し、パネル構造体71とパネル構造体72とを平面視逆L字形に設置する。そして、ビルトインコンロ64のトッププレート65、又はビルトインコンロ64が埋め込まれているカウンター66を囲うように、パネル構造体71とパネル構造体72とを載置する。
【0005】
このようにすることで、ビルトインコンロ64のバーナー部67を用いて調理をする際に、パネル構造体71及びパネル構造体72が調理用油除けとして機能し、油はね等からトッププレート65の周囲やカウンター66の汚れを防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のアルミ箔で形成したパネル構造体は、厚みMが40〜80μmであり薄いので、汚れを洗おうとしたり、強度を持たせるための加工をしたりするときに、パネル構造体に力を少し加えただけでも歪が生じ、変形してしまっていた。そのため、使用してきて汚れたら捨てるという、使い捨てのパネル構造体として使用されてしまい、資源の活用の観点から好ましいとは言えない。
【0007】
一方、耐久性の観点から厚みMが300μm以上であるアルミ板や鋼板(スチール)で形成されたパネル構造体が製造されている。このパネル構造体は、力を加えても変形しにくいものである。しかし、厚みMが厚いので、パネル構造体は重く、汚れを洗うときには扱いにくく、持ち運びにも不便であった。
【0008】
又、厚みMが200μmである鋼板で形成されたパネル構造体が製造されている。しかし、アルミ板と比べると、鋼板は重いので、汚れを洗うときにはまだ扱いにくいものであった。又、鋼板で形成されているため、メッキ等が剥がれた場合、洗った水が残っていると、錆が発生する虞もあった。
【0009】
そこで、厚みMが200〜250μmであるアルミ板をプレス成形したパネル構造体が、軽量であるので望まれているが、プレス時に力を加えると曲がり、変形し易いものであった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、プレス成形時の歪が減少し、品質が向上するパネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、1枚のシート材料をプレス成形して形成されるパネル構造体であって、平坦部と、平坦部の外縁の少なくとも一部から立ち上がる立上部と、立上部の外方端に形成された縁巻部とを備え、シート材料は、アルミニウム製の板材料よりなり、パネル構造体は、調理用油除けを含み、立上部は、平坦部の外縁の全周から、平坦部が含まれる水平面に直交する方向に立ち上がり、縁巻部は、立上部が含まれる垂直面から外方側であって下方に巻き込むように形成され、立上部は、平坦部が含まれる水平面から縁巻部が離間するような寸法関係に設定され、平坦部には凹凸模様が形成され、平坦部は、直角四辺形状に形成されており、凹凸模様の形状の種類は、直角四辺形状の四隅に配置されるL字形の凹凸模様と、L字形の凹凸模様よりも内方に配置される直角四辺形状の凹凸模様とを含むものである。
【0012】
このように構成すると、立上部がないものに比べてパネル構造体の曲げ剛性が向上する。又、板材料の板厚を小さくしても歪を抑えることができる。更に、油汚れの拡散が立上部で阻止される。更に、平坦部の曲げ剛性が向上する。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の構成において、板材料の厚みは、200〜250μmであり、立上部は、その立上寸法、1.0〜3.8mmであり、縁巻部は、その外径、2.0〜3.5mmであるものである。
【0016】
このように構成すると、より好ましく油汚れの拡散が立上部で阻止される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、立上部がないものに比べてパネル構造体の曲げ剛性が向上するため、プレス時の歪が減少し、品質が向上する。又、板材料の板厚を小さくしても歪を抑えることができるため、軽量化され、取扱いが容易となる。更に、油汚れの拡散が立上部で阻止されるため、より効果的な調理用油除けになる。更に、平坦部の曲げ剛性が向上するため、より薄いシート材料の使用が可能となる。
【0021】
請求項記載の発明は、請求項記載の発明の効果に加えて、より好ましく油汚れの拡散が立上部で阻止されるため、更に効果的な調理用油除けになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の第1の実施の形態によるパネル構造体のビルトインコンロにおける使用状態を示した概略斜視図であって、図6に対応した図である。
図2図1で示した正面のパネル構造体の正面図であって、図7に対応した図である。
図3図1で示した側面のパネル構造体の正面図であって、図2に対応した図である。
図4図2で示したIV−IVラインの拡大端面図である。
図5図4で示した“X”部分の拡大端面図であって、図8に対応した図である。
図6】従来のアルミ箔で形成されたパネル構造体のビルトインコンロにおける使用状態を示した概略斜視図である。
図7図6で示したパネル構造体の正面図である。
図8図7で示したVIII−VIIIラインの拡大端面図であって、パネル構造体の縁巻部を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、この発明の第1の実施の形態によるパネル構造体のビルトインコンロにおける使用状態を示した概略斜視図であって、図6に対応した図であり、図2は、図1で示した正面のパネル構造体の正面図であって、図7に対応した図であり、図3は、図1で示した側面のパネル構造体の正面図であって、図2に対応した図であり、図4は、図2で示したIV−IVラインの拡大端面図であり、図5は、図4で示した“X”部分の拡大端面図であって、図8に対応した図である。
【0025】
これらの図を参照して、この発明の第1の実施の形態によるパネル構造体11は、1枚の平板形状を有するアルミニウム製の板材料をプレス成形して形成され、調理用油除けとして使用され、矩形状の平坦部21と、平坦部21の外縁の全周から立ち上がる立上部22と、立上部22の外方端に形成された縁巻部23とから構成される。尚、図2及び図3を参照して、側面のパネル構造体12は、正面のパネル構造体11と基本的な構成は同一であり、パネル構造体11における長辺の長さのみ短くなるように形成したものであるので、ここでは説明を繰り返さない。
【0026】
このように構成することで、立上部22がないものに比べてパネル構造体11の平坦部21に対する曲げ剛性が向上する。よって、プレス時の歪が減少し、品質が向上する。又、パネル構造体11を形成する板材料の板厚を小さくしても相対的な歪を抑えることができるようになる。すなわち、パネル構造体11が軽量化され、取扱いが容易となる。
【0027】
図2を参照して、パネル構造体11の平坦部21には、プレス成形時に併せて凹凸模様26(ビード)が形成されている。図2及び図4を参照して、パネル構造体11の凹凸模様26の形状の種類は、略正方形の凹凸模様26a、L字形の凹凸模様26b、略長方形の凹凸模様26cがある。このように形成することで、平坦部21の曲げ剛性が向上することになる。従って、同一歪を前提とすると、より薄いシート材料の使用が可能となる。尚、凹凸模様26の凹凸の差は、0.5〜2.0mmに設定するのが好ましい。その理由は、凹凸の差が0.5mm以下の場合にはしっかりとした強度が得られず、2.0mm以上の場合にはプレス時に歪が発生しやすく、又、油で汚れたときに洗いにくいからである。因みに、凹凸の差が2.0mm以下の場合には、凹凸模様26(ビード)に油汚れが溜まりにくい。
【0028】
図5を参照して、パネル構造体11の厚みLは、200〜250μmである。立上部22は、平坦部21が含まれる水平面に直交する方向に立ち上がると共に、その立上寸法Lは、1.0〜3.8mmである。縁巻部23は、立上部22が含まれる垂直面から外方側であって下方に巻き込むように形成されると共に、その外径Lは、2.0〜3.5mmである。
【0029】
このように構成することで、油汚れの拡散が立上部22で阻止される。従って、立上部22を含まない従来のパネル構造体71(図8参照)に比べて、パネル構造体11が、より効果的な調理用油除けになる。尚、パネル構造体11は、厚みLが200〜250μmで薄いので、細かい形状の凹凸模様26を形成することができ、意匠性も向上する。又、立上寸法Lを1.0〜3.8mmにしたのは、歪を減少させ、且つ、後述する調理での使用時に、載置しやすくするためである。
【0030】
使用に際しては、図1を参照して、パネル構造体11は、パネル連結具40a及び40bを用いて、パネル構造体12と接続している。尚、これらは、図6で示した従来のパネル構造体71及びパネル構造体72のビルトインコンロにおける使用状態と略同一であるので、ここでの説明は繰り返さない。ここでは、図6で示していない点について主に説明する。
【0031】
図1を参照して、パネル構造体11の平坦部21の内面(縁巻部23側の面)は、バーナー部67を囲うようにして設置される。このとき、パネル構造体11は、縁巻部23が平坦部21からバーナー部67側に向くように立ち上がった状態となる。このようにすることで、図5を参照して、図1で示したビルトインコンロ64のバーナー部67を用いて調理をして、油はね等をした際、図5で示した隙間53に油等が入り込みにくくなる。
【0032】
又、パネル構造体11は、200〜250μm厚さのアルミニウム製の板材料から形成されているので、300μm以上のアルミ板や、200μm以上の鋼板に比べて、放熱性があるため、調理において加熱されたパネル構造体11の温度は、調理後下がるのが早い。
【0033】
更に、パネル構造体11は、図6で示したアルミ箔で形成されたパネル構造体71と比べて、厚みLが増しており、更に凹凸模様26も形成されているので、強度が増している。そのため、パネル構造体11を繰り返して、汚れを洗うことが可能となった。
【0034】
更に、パネル構造体11は、アルミニウム製の板材料から形成されているので、同じ厚みLを有する鋼板と比べると、軽量である。そのため、洗うときに扱いやすく、持ち運びにも都合が良い。又、パネル構造体11は、洗った水が残っていても、鋼板と比べて、錆が発生する虞は少ない。
【0035】
更に、パネル構造体11及びパネル構造体12は、上下逆にすることによって、トッププレート65に対して、左右逆に載置することもできる。更に、パネル構造体11において、パネル構造体12と対向する位置に、新たなパネル構造体を加えて接続し、平面視略コの字状で、トッププレート65の周囲を覆うようにして使用することもできる。同様にして、複数のパネル構造体を接続して使用することができる。更に、図示しない保持具を用いて、パネル構造体11を保持することで、パネル構造体11を単独で使用することもできる。
【0036】
更に、パネル構造体11とパネル構造体12とを接続するのにパネル連結具40a及び40bを用いていたが、パネル連結具40a及び40bを用いずに、パネル構造体11とパネル構造体12とが直接係合するように、各々の縁巻部23及び縁巻部33を形成しても良い。
【0037】
尚、上記の実施の形態では、パネル構造体の立上部は、平坦部の外縁の全周から立ち上がるものであるが、平坦部の外縁の少なくとも一部から立ち上がるものであれば良い。
【0038】
又、上記の実施の形態では、パネル構造体は、アルミニウム製の板材料から形成されたものであったが、1枚のシート材料をプレス成形して形成されるものであれば、紙材料等の他の材料であっても良い。
【0039】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体は、調理用油除けとして使用されるものであるが、例えばアルミトレイのような調理用油除け以外として使用されるものであっても良い。
【0040】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の板材料の厚みは、200〜250μmであったが、この特定の範囲外の厚みであっても良い。
【0041】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の立上部の立上寸法は、1.0〜3.8mmであったが、この特定の範囲外の立上寸法であっても良い。
【0042】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の縁巻部の外径は、2.0〜3.5mmであったが、この特定の範囲外の外径であっても良く、又、外径は全周一定でなく位置によって変化しても良い。その場合、曲げ剛性の向上の観点からは立上部の高さは一定であるのが好ましい。
【0043】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の平坦部には特定の凹凸模様が形成されているが、凹凸模様は形成されていなくても良く、又は、他の凹凸模様であっても良い。
【0044】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の立上部は、平坦部が含まれる水平面に直交する方向に立ち上がっていたが、それ以外の方向に立ち上がっていても良い。
【0045】
更に、上記の実施の形態では、パネル構造体の縁巻部は、立上部が含まれる垂直面から外方側であって下方に巻き込むように形成されていたが、立上部の外方端に形成されるものであれば、他の方向や他の巻き込み形状で形成されていても良い。
【符号の説明】
【0046】
11…パネル構造体
12…パネル構造体
21…平坦部
22…立上部
23…縁巻部
26…凹凸模様
31…平坦部
33…縁巻部
36…凹凸模様
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8