特許第6232234号(P6232234)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232234建築物修繕工事用メッシュシート及びその連結張囲体
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  • 特許6232234-建築物修繕工事用メッシュシート及びその連結張囲体 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232234
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】建築物修繕工事用メッシュシート及びその連結張囲体
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/74 20060101AFI20171106BHJP
   D06M 11/77 20060101ALI20171106BHJP
   D06M 15/248 20060101ALI20171106BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20171106BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20171106BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20171106BHJP
   E04G 21/24 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   D06M11/74
   D06M11/77
   D06M15/248
   D06M23/08
   A61L9/01 B
   A61L9/16 D
   E04G21/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-185806(P2013-185806)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52186(P2015-52186A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】514041926
【氏名又は名称】株式会社大京建設
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592021984
【氏名又は名称】明治商工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】王子田 貴嗣
(72)【発明者】
【氏名】時永 建輔
(72)【発明者】
【氏名】松下 陽子
(72)【発明者】
【氏名】藤井 治男
(72)【発明者】
【氏名】石原 正志
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 秀逸
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−014093(JP,A)
【文献】 特開2015−004215(JP,A)
【文献】 特開2012−126478(JP,A)
【文献】 特開2010−264137(JP,A)
【文献】 特開2004−137677(JP,A)
【文献】 特開平04−281040(JP,A)
【文献】 特開平08−260360(JP,A)
【文献】 特開2006−263442(JP,A)
【文献】 特開平10−060778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00−16/00
19/00−23/18
E04G21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸条及び緯糸条を要素とする平織物と、この平織物を被覆する軟質塩化ビニル樹脂層とで構成された経被覆糸条及び緯被覆糸条を配置密度20〜30本/25.4mmで含み、それによって充実率65〜80%とする通気性複合体であり、かつ、前記軟質塩化ビニル樹脂層が、軟質塩化ビニル樹脂層の3〜10質量%相当量の臭気吸着粒子を含み、この臭気吸着粒子が、白炭粒子と電気鉱石粒子からなる質量比3:1〜1:3複合焼成物で主構成され、前記白炭粒子が、ウバメガシ、アオガシ、ナラの何れかを1000〜1300℃で炭化させ、素灰を掛けて急冷した硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子、あるいは竹(孟宗竹)を800〜1000℃で炭化させ、素灰を掛けて急冷した硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子であり、かつ、前記電気鉱石粒子が、鉄電気石:NaFeAl(BOSi18(OH)、苦土電気石:NaMgAl(BOSi18(OH)、リシア電気石:Na(Li,Al)Al(BOSi18(OH)、オーレン電気石:Na1−xAlAl(BOSi18(O,OH)、鉄灰電気石:CaFe(AlMg)(BOSi18(OH,F)、灰電気石:CaMg(AlMg)(BOSi18(OH,F)、フォイト電気石:FeAlAl(BOSi18(OH,F)、苦土フォイト電気石:MgAlAl(BOSi18(OH,F)の何れかのトルマリン鉱石であることを特徴とする建築物修繕工事用メッシュシート。
【請求項2】
前記臭気吸着粒子が、さらに黒炭粒子を含み、前記白炭粒子及び前記電気鉱石粒子との総和質量に対して5〜25質量%の前記黒炭粒子を含有する混合物、または複合焼成物を主構成とする請求項1に記載の建築物修繕工事用メッシュシート。
【請求項3】
前記軟質塩化ビニル樹脂層が気泡痕を含み、この気泡痕の含有体積率が前記軟質塩化ビニル樹脂層の体積に対して5〜25体積%である請求項1または2に記載の建築物修繕工事用メッシュシート。
【請求項4】
前記通気性複合体が、幅60〜200cm、長さ300〜600cmの規格であり、その周縁に肉厚補強された幅3〜6cmの周縁帯を有し、かつ、この周縁帯に20〜40cmの等間隔でハトメを有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の建築物修繕工事用メッシュシート。
【請求項5】
前記請求項4に記載の通気性複合体同士を多数連結して建築物全体またはその一部を包囲する連結張囲体、または前記請求項4に記載の通気性複合体と他の通気性複合体とを多数連結して建築物全体またはその一部を包囲する連結張囲体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減臭効果を有する建築物修繕工事用メッシュシートに関する。詳しく述べると、マンション、公団住宅、ビル、公共施設、店舗、住宅などの建造物のコンクリート躯体ひび割れ修繕、外壁タイル補修やタイル貼替工事、外壁塗装のケレン作業や塗装工事(スプレー塗装の飛散防止)、ルーフィングシート張替工事、共有通路・階段のビニルタイル床材張替工事など、複数の修繕を伴う大規模修繕工事の現場張囲に使用し、特に塗装や接着剤を使用するタイル貼替、ビニル床材やルーフィングシートの張替接着工事、ベランダ・バルコニー・共有通路排水部のウレタン塗装に伴う、化学物質臭や有機溶剤臭、さらに工事現場近隣に漂う臭気などを減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能な建築物修繕工事用メッシュシートに関する。
【背景技術】
【0002】
マンションでは住民の快適な生活と、マンションの資産価値を維持するために、10〜12年を目安に大規模修繕工事を行い、老朽化した建築部材の交換や外装の化粧直しを定期的に行っている。最近では築30年を越えるマンションの数が軒並み増加しており、大規模修繕工事の需要が急増の傾向にある。特に今後は高齢化社会への移行に伴い、マンション永住希望者の増加が予測されることで大規模修繕工事に対する意識も日増しに高くなっている。
【0003】
このようなマンションの大規模修繕工事の需要増加に伴い、マンション全体を張囲する養生メッシュシートの需要も増加している。この張囲は工事現場の目隠しと同時に、通行人や近隣に対し、工事で使用する修繕資材や工具などの落下による傷害事故の防止、スプレー塗料の飛散防止などの目的で仮設されるものである。養生メッシュシートとしては、ポリエステル繊維の粗目織物を軟質塩化ビニル樹脂で防炎加工したものが主に使用されている。マンションの修繕工事張囲に養生メッシュシートを使用することで、修繕作業空間として適度な通気性と採光性が確保される。しかし、工事期間中もマンション生活を続ける住民にとっては、窓外の視界全域が養生メッシュシートで奪われる圧迫感、昼間でも薄暗いなど、ストレスとなり、さらに修繕工事に伴う騒音や臭気がストレスを増長させることがあった。
【0004】
マンションの修繕工事には、コンクリート躯体ひび割れ修繕、外壁タイル補修やタイル貼替工事、外壁塗装のケレン作業や塗装工事(スプレー塗装の飛散防止)、屋根防水工事(アスファルト敷設・ウレタン塗工・ルーフィングシート貼付)、共有通路・階段ビニルタイル床材の張替工事、ベランダ・バルコニー・共有通路排水部のウレタン塗装などがあり、これら工事に使用するシーリング材、コーキング材、接着剤、塗料、シンナー、アスファルトシート、ウレタンコート液、ルーフィングシート、ビニル床材などは個々独特の化学物質臭や有機溶剤臭を有している。
【0005】
マンションの塗装工事では特に住民や近隣に配慮してシンナーを含まないエマルジョン塗料を使用することで発生臭気を軽減している。しかし尚もエマルジョン樹脂に含む未反応モノマーや乳化剤などの化学物質臭(例えばアクリル臭、スチレン臭、エポキシ臭、酢酸臭、アンモニア臭など)が塗膜乾燥後にも微弱に長期間発散し続けるものがある。また外壁タイル補修に用いるエポキシ接着剤の臭気、共有通路や階段部に敷設するビニル床材の塩化ビニル樹脂臭や接着剤の溶剤臭(トルエン、メチルエチルケトン、酢酸ブチルなど)なども不快臭の原因となっている。これら複数の化学物質臭気が混在してマンション修繕工事の張囲内に滞留すると、住民の体質や体調によっては頭痛、発疹、食欲不振などの健康障害を引き起こしたり、あるいは近隣に拡散流延することで異臭トラブルを招くことがあった。
【0006】
今までに吸着型やイオン中和型の消臭性物質を用いた家庭用消臭商品が数多く提案されているが、何れも時間の経過と共に臭気分子処理能力が飽和状態に陥り、消臭効果が激減するので、そのサイクルで新しい商品との交換が行われてきた。一方、電気装置を伴う商品による消臭は継続安定的な消臭を可能とするが、電池や電源を必要とする維持管理の不自由があった。このためマンション修繕工事用の建築養生メッシュシートとして、特にタイル貼替、ビニルタイル床材やルーフィングシートの張替接着工事に使用する修繕資材の臭気や、スプレー塗装に用いる塗料やシンナーなどの有機溶剤に起因する発生臭気を減少させる減臭効果と、発生臭気の拡散防止効果とを有し、しかもその効果が修繕工事期間内安定的に持続できるような建築物修繕工事用メッシュシートが切望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−60950号公報
【特許文献2】特開2010−264137号公報
【特許文献3】特開2012−126478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、マンション、公団住宅、ビル、公共施設、店舗、住宅などの建造物の修繕工事現場に使用し、特に塗装や接着剤を使用するタイル貼替、ビニル床材やルーフィングシートの張替接着工事、ベランダ・バルコニー・共有通路排水部のウレタン塗装に伴う、修繕工事資材の化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能な建築物修繕工事用メッシュシートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためには、経糸条及び緯糸条を要素とする平織物と、この平織物を被覆する軟質塩化ビニル樹脂層とで構成された経被覆糸条及び緯被覆糸条を配置密度20〜30本/25.4mmで含み、それによって充実率65〜80%とする通気性複合体において、軟質塩化ビニル樹脂層に、軟質塩化ビニル樹脂層の3〜10質量%相当量の臭気吸着粒子を含み、この臭気吸着粒子を、白炭粒子と電気鉱石粒子からなる質量比3:1〜1:3の複合焼成物で主構成することによって、特に化学物質や有機溶剤に起因する発生臭気を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続する建築物修繕工事用メッシュシートが得られることを見出して本発明を完成するに至った
【0010】
すなわち本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、経糸条及び緯糸条を要素とする平織物と、この平織物を被覆する軟質塩化ビニル樹脂層とで構成された経被覆糸条及び緯被覆糸条を配置密度20〜30本/25.4mmで含み、それによって充実率65〜80%とする通気性複合体であり、かつ、前記軟質塩化ビニル樹脂層が、軟質塩化ビニル樹脂層の3〜10質量%相当量の臭気吸着粒子を含み、この臭気吸着粒子が、白炭粒子と電気鉱石粒子からなる質量比3:1〜1:3の複合焼成物で主構成され、前記白炭粒子が、ウバメガシ、アオガシ、ナラの何れかを1000〜1300℃で炭化させ、素灰を掛けて急冷した硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子、あるいは竹(孟宗竹)を800〜1000℃で炭化させ、素灰を掛けて急冷した硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子であり、かつ、前記電気鉱石粒子が、鉄電気石:NaFeAl(BOSi18(OH)、苦土電気石:NaMgAl(BOSi18(OH)、リシア電気石:Na(Li,Al)Al(BOSi18(OH)、オーレン電気石:Na1−xAlAl(BOSi18(O,OH)、鉄灰電気石:CaFe(AlMg)(BOSi18(OH,F)、灰電気石:CaMg(AlMg)(BOSi18(OH,F)、フォイト電気石:FeAlAl(BOSi18(OH,F)、苦土フォイト電気石:MgAlAl(BOSi18(OH,F)の何れかのトルマリン鉱石であることが好ましい。これによって化学物質臭などの減臭効果、または拡散防止効果を発揮し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能とする。
【0011】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、前記臭気吸着粒子が、さらに黒炭粒子を含み、前記白炭粒子及び前記電気鉱石粒子との総和質量に対して5〜25質量%の前記黒炭粒子を含有する混合物、または複合焼成物を主構成とすることが好ましい。これによって化学物質臭などの減臭効果、または拡散防止効果を発揮し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能とする。
【0012】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、前記軟質塩化ビニル樹脂層が気泡痕を含み、この気泡痕の含有体積率が前記軟質塩化ビニル樹脂層の体積に対して5〜25体積%であることが好ましい。これによって化学物質臭などの減臭効果、または拡散防止効果を発揮することができる。
【0013】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、前記通気性複合体が、幅60〜200cm、長さ300〜600cmの規格であり、その周縁に肉厚補強された幅3〜6cmの周縁帯を有し、かつ、この周縁帯に20〜40cmの等間隔でハトメを有していることが好ましい。これによって本発明の建築物修繕工事用メッシュシート同士を多数連結することができる。
【0014】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシート連結張囲体は、前記通気性複合体同士を多数連結して建築物全体またはその一部を包囲する連結張囲体、または前記通気性複合体と他の通気性複合体とを多数連結して建築物全体またはその一部を包囲する連結張囲体であることが好ましい。これによって修繕工事現場に本発明の建築物修繕工事用メッシュシートによる連結張囲体を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、修繕工事資材の化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能な建築物修繕工事用メッシュシートを得ることができるので、マンション、公団住宅、ビル、公共施設、店舗、住宅などの建造物の修繕工事現場に使用し、特に塗装や接着剤を使用するタイル貼替、ビニル床材やルーフィングシートの張替接着工事、ベランダ・バルコニー・共有通路排水部のウレタン塗装に伴う発生臭気を軽減することができ、さらに工事現場近隣に漂う臭気(排気ガス、調理臭、タバコ臭、ペット臭)の軽減効果にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の建築物修繕工事用メッシュシートの外観と断面の一部を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、経糸条及び緯糸条を要素とする平織物と、この平織物を被覆する軟質塩化ビニル樹脂層とで構成された経被覆糸条及び緯被覆糸条を配置密度20〜30本/25.4mmで含み、それによって充実率65〜80とする通気性複合体で、特に軟質塩化ビニル樹脂層に、軟質塩化ビニル樹脂層の3〜10質量%相当量の臭気吸着粒子を含み、この臭気吸着粒子とは、白炭粒子と電気鉱石粒子からなる質量比3:1〜1:3の複合焼成物で主構成されるものである。
【0018】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートにおいて、軟質塩化ビニル樹脂層は、ペースト塩化ビニル樹脂組成物によるプラスチゾル中に平織物を浸漬し、平織物にプラスチゾルを含浸かつ被覆した後、熱風加熱によりペースト塩化ビニル樹脂組成物をゲル化させて被覆固化物としたもの、あるいはプラスチゾルを平織物の両面に塗工被覆した状態でゲル化被覆固化物としたものである。ペースト塩化ビニル樹脂組成物の組成(量)に特に限定は無いが主に、塩化ビニル樹脂、可塑剤、安定剤、充填剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤などの公知要素の組み合わせで構成され、この構成に臭気吸着粒子(白炭粒子/電気鉱石粒子)を必須要素とするものである。軟質塩化ビニル樹脂層の厚さは0.05〜1.0mm、特に0.1〜0.35mmが好ましく、有機顔料や無機顔料により、ライトブルー、ライトグリーン、ライトグレー、ホワイト、ブラック、シルバーなど任意の着色が可能である。
【0019】
また軟質塩化ビニル樹脂層には気泡痕を含み、この気泡痕の含有体積率が軟質塩化ビニル樹脂層の体積に対して5〜25体積%であることで軟質塩化ビニル樹脂層の表面積が増大し、それによって表面に露出する臭気吸着粒子の総和面積が増大することでより減臭効果を向上させることができる。このような気泡痕の生成はプラスチゾルの機械攪拌による巻き込み空気の残留、または公知の化学発泡剤(熱分解気化型)の方法による。
【0020】
軟質塩化ビニル樹脂層には、白炭粒子/電気鉱石粒子の組み合わせからなる臭気吸着粒子を、軟質塩化ビニル樹脂層の質量に対して3〜10質量%含み、白炭粒子と電気鉱石粒子との配合比が、質量比で3:1〜1:3を構成する複合焼成物で主構成されることが好ましい。白炭粒子は多数の微細孔を有し、その微細孔に臭気分子(化学物質)を吸着する活性炭である。一方、電気鉱石粒子(トルマリン)は太陽光の紫外線及び熱線を受けて微弱電荷を発生することで臭気分子(化学物質)を吸着する機構、あるいはマイナスイオンで臭気分子を中和や還元すると同時に、この微弱電流が白炭粒子の吸着効果を繰り返し再生させる。従って白炭粒子/電気鉱石粒子の特定比による組み合わせを有し、これに太陽光を浴びせ続ける限り、本発明のメッシュシートの減臭効果は吸着飽和状態に陥ること無く、吸着効果が再生されるので安定的して減臭効果が継続される。従って、マンションの修繕工事期間中、本発明のメッシュシートを張囲しておくことで、溶剤臭など臭気分子を吸着し、吸着効果が飽和しても、太陽光の紫外線や熱線を受けて元の状態に還元されることで溶剤臭など、化学物質臭を安定して低減することを可能とする。軟質塩化ビニル樹脂層の質量に対する臭気吸着粒子の含有量が3質量%未満だと十分な減臭効果を得ることができないことがある。また白炭粒子と電気鉱石粒子との質量比3:1〜1:3のバランスを外れると太陽光に晒した時の減臭効果の再生持続性が良好に発現されないことがある。
【0021】
白炭粒子とは、ウバメガシ、アオガシ、ナラなどを原料として1000〜1300℃で炭化させ、これらの赤熱状態に素灰を掛け急冷して出来た光沢のある硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子、あるいは竹(孟宗竹)を800〜1000℃で炭化させ、これらの赤熱状態に素灰を掛け急冷して出来た光沢のある硬質黒炭を、粒子径0.1μm〜30μmに粉砕した活性炭粒子である。1000℃を超える温度で炭化された竹炭は微細孔が収縮して化学物質(臭気物質)の吸着性能が低下することがある。白炭粒子は実質的には黒色であるが、素灰を掛けた外観が白であることから、素灰を掛けない黒炭と区別して「白炭(しろずみ)」という。白炭粒子は素灰を含んだまま粉砕し、その状態で使用することによって、活性炭粒子の外観色が灰色であるものも本発明では使用できる。白炭の例として備長炭、ナラ白炭、カシ白炭、白竹炭が挙げられ、特に本発明においては白竹炭(竹の備長炭)による活性炭粒子が好ましい。
【0022】
電気鉱石粒子とは、鉄電気石:NaFeAl(BOSi18(OH)、苦土電気石:NaMgAl(BOSi18(OH)、リシア電気石:Na(Li,Al)Al(BOSi18(OH)、オーレン電気石:Na1−xAlAl(BOSi18(O,OH)、鉄灰電気石:CaFe(AlMg)(BOSi18(OH,F)、灰電気石:CaMg(AlMg)(BOSi18(OH,F)、フォイト電気石:FeAlAl(BOSi18(OH,F)、苦土フォイト電気石:MgAlAl(BOSi18(OH,F)などのトルマリン鉱石類であり、これらの粒子径は0.1μm〜10μmである。
【0023】
本発明において臭気吸着粒子は、白炭粒子/電気鉱石粒子の組み合わせに、さらに黒炭粒子を含むことができる。黒炭粒子は、クヌギ、コナラ、カシ、椰子などを400〜700℃の低温で炭化させた粒子径0.1μm〜10μmの活性炭である。黒炭粒子の併用量は、白炭粒子と電気鉱石粒子との総和質量に対して5〜25質量%の混合物、または白炭粒子、電気鉱石粒子との複合焼成物である。白炭は酸性物質(臭気)を効果的に吸着し、黒炭はアルカリ性物質(臭気)を効果的に吸着するので白炭と黒炭とを併用することが好ましく、さらに白炭及び黒炭の吸着再生のために、電気鉱石粒子を含み、これらが太陽光を浴びる環境で使用されることが好ましい。
【0024】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートに用いる平織物は、空隙率20〜35%(空隙率は平織物の任意の単位面積領域に占める空隙部の総和面積率)で、平織物を構成する経糸条及び緯糸条とが20〜30本/25.4mmの配置密度で製織された、質量50〜70g/mの粗目平織物である。このような平織物を使用することで適度なフィルター効果(臭気分子との接触)を発揮し、マンションなどの修繕工事に伴う、修繕資材や塗装に起因する発生臭気を効果的に減少させることができる。また経糸条及び緯糸条はポリエステルマルチフィラメント、ポリプロピレンマルチフィラメント、ナイロンマルチフィラメント、またはビニロンマルチフィラメントなどによる、繊度が250(278dtex)デニール〜375(416dtex)デニールのものが適している。
【0025】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、平織物を被覆する軟質塩化ビニル樹脂層とで構成されたもので、経被覆糸条及び緯被覆糸条を配置密度は20〜30本/25.4mm、それによって充実率65〜80%とする質量120〜150g/mの通気性複合体である。このようなメッシュシートを使用することで適度なフィルター効果(臭気分子との接触)を発揮し、マンションなどの修繕工事に伴う、修繕資材や塗装に起因する発生臭気を効果的に減少させることができる。充実率が65%未満(目が開き過ぎ)だと工事現場内のスプレー塗装の飛沫や臭気が近隣に漏れ拡散する懼れがあり、充実率が80%を越える(目合いが詰まり過ぎ)と、日照を遮りマンション居住部への採光を妨げる懼れがある。
【0026】
本発明の建築物修繕工事用メッシュシートは、そのサイズが、幅60〜200cm、長さ300〜600cmの規格であり、その周縁に肉厚補強された幅3〜6cmの周縁帯を有し、かつ、この周縁帯中央部に20〜40cmの等間隔(例えば30cm)でハトメを有していることが好ましい。周縁帯はメッシュシートを幅3〜6cmで折り返し、その間に幅3〜6cmの帯状の、ターポリン(ポリエステル繊維織物の両面に塩化ビニル樹脂フィルムを積層)、テープヤーン熱融着クロス(芯鞘テープヤーン)、テープヤーンクロス積層体(テープヤーンクロスの片面以上にポリエチレンフィルムなどを熱ラミネート)の何れかと、ハトメの係止ロープとを挟み込み、ミシン縫製または高周波溶着により袋綴じを行って形成される。ハトメはメッシュシート同士の連結に使用する、結束バンドまたは結束ロープの通し穴として機能し、ハトメの材質は真鍮製、または樹脂製の何れであってもよい。また、本発明の建築物修繕工事用メッシュシートにはスクリーン印刷やインクジェット印刷などにより、マンションの管理会社名、マンションの工事会社名、文字・絵柄などをプリントして広告効果を附帯させたり、写真画像・イラストを附帯して近隣との環境調和を図ることもできる。
【0027】
本発明において、修繕対象の建築物を包囲する連結張囲体としては、1)本発明の建築物修繕工事用メッシュシート同士を多数連結拡張して建築物全体またはその一部を包囲したもの、2)本発明の建築物修繕工事用メッシュシートと他のメッシュシート(減臭効果を有さない従来品)とを併用連結拡張して建築物全体またはその一部を包囲したものが挙げられる。他のメッシュシート(従来品)を併用する場合、その併用率50%以下とする規則的配置が好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記実施例及び比較例において、試験シートの減臭効果、減臭効果の持続性は下記の試験方法により測定し、評価した。
1)減臭性能
容積5LのTedlar(登録商標)バッグに10cm×10cmサイズの試験シート
を入れ、濃度10ppmに調整した対象ガスを3L注入し、0.5時間後と1時間後の
ガス濃度を検知管で測定した。
a)アンモニア
b)ホルムアルデヒド
c)トルエン
2)持続効果
1)の試験シート(1時間経過)を7月晴天(気温30〜32℃)の屋外に、直射日光の
当たる環境に2時間静置(片面1時間照射)したものを再度ガスバッグ試験に供し、こ
れを4日間に渡り4回繰り返した。
【0029】
[実施例1]
1)ポリエステルのマルチフィラメント糸条250d(278dtex)を経緯糸条として、経糸条26本/インチ、緯糸条28本/インチの打ち込みで製織した粗目平織物(質量60g/m:空隙率30%)を基布に用いた。
2)次に粗目織物を被覆する熱可塑性樹脂層用に下記配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾルを配合調製した。
<配合1;軟質ポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾル組成>
ポリ塩化ビニル樹脂 100質量部
ジオクチルフタレート(可塑剤) 65質量部
エポキシ化大豆油 2質量部
Ba−Zn系複合安定剤 1.5質量部
炭酸カルシウム(充填材) 15質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 10質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.3質量部
酸化チタン(白顔料) 3質量部
白竹炭(臭気吸着粒子:粒子径1〜5μm) 10質量部
※孟宗竹を800〜1000℃で炭化させ、赤熱状態に素灰を掛け急冷して出来た
備長炭
鉄電気石(臭気吸着粒子:粒子径1〜5μm) 5質量部
※白竹炭:鉄電気石=2:1
3)配合1の軟質ポリ塩化ビニル樹脂プラスチゾルの液浴中に粗目平織物を浸漬し、マングルロールで圧搾して余分なゾルを除いた後180℃の熱風炉でゲル化処理して熱可塑性樹脂被覆層を形成し、熱可塑性樹脂被覆層に臭気吸着粒子を7.09質量%含有する、空隙率29%、質量130g/mの白色の養生2類メッシュシートを得た。実施例1のメッシュシートは減臭効果を有し、繰り返し臭気試験によっても初期と同等の減臭効果が発現されるなど、継続安定的な減臭効果が得られるものであった。
【0030】
[実施例2]
実施例1の〈配合1〉に黒炭(臭気吸着粒子:粒子径1〜5μm※コナラを400〜700℃で炭化させた活性炭)2.5質量部追加した以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂被覆層に臭気吸着粒子を8.17質量%含有する、空隙率29%、質量130g/mの白色の養生2類メッシュシートを得た。実施例2のメッシュシートは減臭効果を有し、繰り返し臭気試験によっても初期と同等の減臭効果が発現されるなど、継続安定的な減臭効果が得られるもので、実施例1のメッシュシートよりも減臭効果に優れていた。
※白竹炭:鉄電気石=2:1、白竹炭+鉄電気石:黒炭=6:1(16.6質量%)
【0031】
[実施例3]
実施例1の〈配合1〉に、シリコーンオイル(整泡剤)2.5質量部を追加し、機械攪拌により気泡セルを20体積%含む発泡組成物とした以外は実施例1と同様にして、熱可塑性樹脂被覆層に臭気吸着粒子を7.0質量%含有する質量126g/mの白色の養生2類メッシュシートを得た。両面の被覆層(20体積%発泡)の付着量合計は66g/m、メッシュシートの空隙率は23%であった。実施例3のメッシュシートは減臭効果を有し、繰り返し臭気試験によっても初期と同等の減臭効果が発現されるなど、継続安定的な減臭効果が得られるもので、実施例1のメッシュシートよりも減臭効果に優れていた。※白竹炭:鉄電気石=2:1
【0032】
【表1】
【0033】
[比較例1]
実施例1の〈配合1〉から白竹炭10質量部を全省略した以外は実施例1と同様として、熱可塑性樹脂被覆層に臭気吸着粒子を2.48質量%含有する、空隙率29%、質量128g/mの白色の養生2類メッシュシートを得た。比較例1のメッシュシートは鉄電気石5質量部を含み、それによって減臭効果を有するものであったが、繰り返し臭気試験により減臭効果が薄れ、継続安定的な減臭効果を得ることが出来ないものであった。
【0034】
[比較例2]
実施例1の〈配合1〉から鉄電気石5質量部を全省略した以外は実施例1と同様として、熱可塑性樹脂被覆層に臭気吸着粒子を4.84質量%含有する、空隙率29%、質量129g/mの白色の養生2類メッシュシートを得た。比較例2のメッシュシートは白竹炭10質量部を含み、それによって減臭効果を有するものであったが、繰り返し臭気試験により減臭効果が薄れ、継続安定的な減臭効果を得ることが出来ないものであった。
【0035】
[比較例3]
実施例1の〈配合1〉の白竹炭10質量部を、孟宗竹を1300℃で炭化させた黒炭(赤熱状態に素灰を掛けず、除冷してえた光沢の無い炭)10質量部に変更した以外は実施例1と同様として養生2類メッシュシートを得た。比較例3のメッシュシートは減臭効果を有するものであったが、実施例1のメッシュシートに較べて際立った減臭効果を得ることが出来なかった。
【0036】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により得られる建築物修繕工事用メッシュシートは、修繕工事資材の化学物質臭や有機溶剤臭を減少させる減臭効果、及び発生臭気の拡散防止効果を有し、しかも減臭効果が修繕工事期間中、シート張囲のまま太陽光に晒すだけで良好に持続可能な建築物修繕工事用メッシュシートを得ることができるので、マンション、公団住宅、ビル、公共施設、店舗、住宅などの建造物の修繕工事現場に使用し、特に塗装や接着剤を使用するタイル貼替、ビニル床材やルーフィングシートの張替接着工事、ベランダ・バルコニー・共有通路排水部のウレタン塗装に伴う発生臭気を軽減することができ、さらに工事現場近隣に漂う臭気(排気ガス、調理臭、タバコ臭、ペット臭)の軽減効果にも有効である。
【符号の説明】
【0038】
1:建築物修繕工事用メッシュシート(通気性複合体)
2:平織物
3:熱可塑性樹脂層
4:臭気吸着粒子
4−1:白炭粒子
4−2:電気鉱石粒子
図1