(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
供給経路に沿って被巻線部材へ線材を供給し、前記被巻線部材に前記線材を巻き付けながら、前記線材に対してスライド可能に取り付けられた略円筒状の絶縁管を、複数の壁面を有する絶縁管ストッパーにより所望の箇所に配置する巻線方法であって、
a)前記供給経路の上流側に、前記絶縁管を配置する工程と、
b)前記工程a)の後に、前記線材と前記絶縁管ストッパーとの間の位置関係を、前記複数の壁面の内の少なくとも一つと前記線材との間の距離が、前記線材の直径と前記絶縁管の直径との差よりも小さい接近状態とし、かつ、前記絶縁管の下流側の端部を、前記絶縁管ストッパーに接触させる工程と、
c)前記工程b)の後に、前記被巻線部材に線材を巻き付ける工程と、
d)前記工程c)の後に、前記線材と前記絶縁管ストッパーとの間の位置関係を、前記複数の壁面の内の少なくとも一つと前記の距離が、前記線材の直径よりも大きい、退避状態とする工程と、
e)前記線材とともに前記絶縁管を下流側へ送り出す工程と、
を含む巻線方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
<1.巻線装置の構成について>
図1および
図2は、本発明の第一の実施形態に係る巻線装置1の概要図である。この巻線装置1は、モータの製造工程において、電機子のコイルを形成するための装置である。巻線装置1は、コイルの磁芯となる一対の分割コア81,82に、線材である導線91を巻き付けて、コイルを形成する。コイル形成後は、一対の分割コア81,82が巻線装置1から取り出され、当該一対の分割コア81,82が複数組み合わされて、1つの円環状のコアとなる。
【0015】
巻線装置1は、一対の分割コア81,82に対して、連続的に導線91を巻き付ける。このため、
図2に示すように、一対の分割コア81,82の間には、導線91の渡り部911が生じる。この巻線装置1は、導線91に対してスライド可能に取り付けられた略円筒状の絶縁管92を、当該渡り部911に配置する機能を有する。絶縁管92の材料には、例えば、樹脂等の絶縁材料が使用される。導線91の渡り部911は、絶縁管92により保護される。これにより、渡り部911の損傷や、渡り部911と分割コア81,82との電気的導通が、防止される。
【0016】
図1および
図2に示すように、本実施形態の巻線装置1は、繰り出し部10、ガイドユニット20、駆動ステージ30、回転保持部40、および制御部50を有する。以下では、説明の便宜のため、導線91の供給経路に沿って繰り出し部10側を「上流側」、回転保持部40側を「下流側」、とそれぞれ称する。
【0017】
繰り出し部10は、略円筒状のリール11を有する。リール11は、その中心軸を中心として回転可能に設置されている。リール11の外周面には、未使用の導線91が巻き付けられている。繰り出し部10は、後述する回転保持部40の回転に連動して、リール11を回転させる。これにより、リール11から導線91が繰り出される。繰り出された導線91は、ガイドユニット20へ送られる。
【0018】
ガイドユニット20は、繰り出し部10から繰り出された導線91を、回転保持部40側へ案内する機構である。ガイドユニット20は、繰り出し部10と回転保持部40との間において、導線91の供給経路80を画定している。また、ガイドユニット20は、絶縁管92を一時的に待機させるとともに、所望のタイミングで供給経路80の下流側へ絶縁管92を送り出す機構を有する。ガイドユニット20の詳細な構成については、後述する。
【0019】
駆動ステージ30は、ガイドユニット20を支持しながら、ガイドユニット20を三次元に移動させる機構である。駆動ステージ30は、ガイドユニット20を支持する支持台31と、支持台31を、上下方向、左右方向、および前後方向に移動させる支持台移動機構32とを有する。支持台移動機構32は、制御部50から受信する制御信号に基づいて、支持台31を移動させる。これにより、導線91の供給経路80の位置が、調整される。支持台移動機構32は、例えば、モータの回転駆動を、ボールねじを介して直進運動に変換する機構を、複数組み合わせることにより、実現できる。
【0020】
回転保持部40は、一対の分割コア81,82を保持しながら、一対の分割コア81,82を回転させる機構である。
図1および
図2に示すように、回転保持部40は、コアホルダ41およびホルダ回転機構42を有する。一対の分割コア81,82は、コアホルダ41に保持される。コアホルダ41に保持された一対の分割コア81,82は、ホルダ回転機構42の回転軸421に沿って、横並びに配置される。また、コアホルダ41には、導線91の先端を固定する掛止部(図示省略)が設けられている。
【0021】
ホルダ回転機構42は、導線91の供給経路80に直交する回転軸421を中心として、コアホルダ41を回転させる。コアホルダ41が回転すると、コアホルダ41に保持された一対の分割コア81,82も、回転軸421を中心として回転する。ホルダ回転機構42は、例えば、モータの駆動により実現できる。
【0022】
制御部50は、上述した繰り出し部10、支持台移動機構32、およびホルダ回転機構42と、それぞれ電気的に接続されている。また、制御部50は、後述するガイド開閉機構22、クランパー駆動機構25、およびストッパー移動機構27とも、電気的に接続されている。制御部50は、CPU等の演算処理部やメモリを有するコンピュータにより構成されていてもよく、あるいは、電子回路基板により構成されていてもよい。制御部50は、予め設定されたプログラムまたは外部からの入力信号に基づいて、上記の各部を制御する。これにより、巻線装置1における巻線処理が進行する。
【0023】
<2.ガイドユニットの構成について>
続いて、ガイドユニット20のより詳細な構成について、説明する。
図3〜
図5は、ガイドユニット20の斜視図である。
図3〜
図5に示すように、本実施形態のガイドユニット20は、ガイド21、ガイド開閉機構22、筐体23、絶縁管クランパー24、クランパー駆動機構25、絶縁管ストッパー26、およびストッパー移動機構27を有する。
【0024】
ガイド21は、3つのガイド部材211を有する。3つのガイド部材211は、導線91の供給経路80の周囲に、略等間隔に配置されている。なお、
図5においては、絶縁管ストッパー26を明示するために、2つのガイド部材211の図示が、省略されている。各ガイド部材211は、それぞれの先端が供給経路80に接近する集合状態と、それぞれの先端が供給経路80から離れる開放状態との間で、回動可能に支持されている。集合状態においては、各ガイド部材211の先端により、供給経路80を取り囲む孔が形成される。導線91は、当該孔を通って、供給経路80の下流側へ搬送される。これにより、供給経路80に直交する方向への導線91の位置ずれが、制限される。
【0025】
なお、ガイド21は、2つの部材により構成されていてもよく、あるいは、4つ以上の部材により構成されていてもよい。
【0026】
ガイド開閉機構22は、3つのガイド部材211を連動して回転させる機構である。本実施形態のガイド開閉機構22は、エアシリンダ221の駆動力を、連結板222を介して回転運動に変換し、3本のシャフト223を連動して回転させる。そうすると、3本のシャフト223にそれぞれ固定された3つのガイド部材211が、連動して回転する。その結果、ガイド21の集合状態と開放状態とが切り替えられる。
【0027】
ただし、ガイド開閉機構22は、3つのガイド部材211を連動して回転させ得るものであれば、他の構成であってもよい。例えば、ガイド開閉機構22は、モータを駆動源とするものであってもよい。
【0028】
筐体23は、ガイド21と連結板222との間に、配置されている。すなわち、筐体23は、ガイド21に対して、導線91の供給源である繰り出し部10側に、供給経路80に沿って配置されている。3本のシャフト223およびストッパー移動機構27は、筐体23に支持されている。導線91の供給経路80は、連結板222および筐体23を貫通して、ガイド21側へ延びている。3本のシャフト223は、導線91の供給経路80に沿って、筐体23を貫通している。また、筐体23の内部には、絶縁管92を一時的に収容する収容空間231が、設けられている。
【0029】
絶縁管クランパー24は、導線91に対して、供給経路80に沿ってスライド移動可能に取り付けられた絶縁管92を、保持する機構である。絶縁管クランパー24は、導線91の供給経路80に対して垂直な方向に配置された一対のクランプ部材241を有する。一対のクランプ部材241は、互いに接近および離間可能に構成されている。絶縁管92は、互いに接近した一対のクランプ部材241により、挟まれて保持される。
【0030】
クランパー駆動機構25は、絶縁管クランパー24を、供給経路80に沿って移動させる機構である。クランパー駆動機構25の駆動源には、例えば、エアシリンダを用いることができる。クランパー駆動機構25を動作させると、絶縁管92を保持した絶縁管クランパー24が、ガイド21より回転保持部40側の位置(
図3の位置)から、筐体23内の位置(
図4の位置)まで、移動する。これにより、筐体23内部の収容空間231に、絶縁管92が配置される。
【0031】
絶縁管ストッパー26は、ガイド21と筐体23との間に配置された略板状の部材である。絶縁管ストッパー26の材料には、例えば、鉄等の金属が使用される。
図3〜
図5に示すように、本実施形態の絶縁管ストッパー26は、供給経路80の近傍から、筐体23のガイド21側の面に沿って、斜め上方へ延びている。また、
図5に示すように、絶縁管ストッパー26の供給経路80側の先端には、切り欠き261が設けられている。切り欠き261は、供給経路80へ向けて開いている。
【0032】
ストッパー移動機構27は、絶縁管ストッパー26を移動させる機構である。ストッパー移動機構27は、筐体23のガイド21側の面に、固定されている。本実施形態のストッパー移動機構27は、エアシリンダを用いて構成されている。ただし、エアシリンダに代えて、モータ等の他の駆動源が使用されていてもよい。
【0033】
ストッパー移動機構27を駆動させると、絶縁管ストッパー26は、導線91の供給経路80に接近する接近状態(
図5の状態)と、導線91の供給経路80から離れた退避状態(
図4の状態)との間で、供給経路80に直交する方向に移動する。接近状態においては、導線91が、切り欠き261内を通過する。一方、退避状態においては、導線91が、切り欠き241の開口端の外側を通過する。
【0034】
図6は、接近状態における絶縁管ストッパー26、導線91、および絶縁管92を、供給経路80の下流側から見た図である。
図6に示すように、本実施形態では、導線91が通過する位置における切り欠き261の幅d1が、導線91の外径d2より大きく、かつ、絶縁管92の外径d3より小さい。このため、接近状態においては、導線91が切り欠き261内を通過可能であり、かつ、絶縁管92が切り欠き261を通過不能となる。
【0035】
このため、絶縁管ストッパー26を接近状態にすれば、導線91の供給中に、絶縁管92の下流側の端部が、絶縁管ストッパー26に接触する。これにより、絶縁管92を停止させることができる。また、所望のタイミングで絶縁管ストッパー26を退避位置に移動させることにより、絶縁管92を、導線91とともに、供給経路80の下流側へ送り出すことができる。これにより、導線91の所望の箇所に絶縁管を配置できる。
【0036】
また、本実施形態では、板状の部材である絶縁管ストッパー26に、切り欠き261が設けられている。そして、当該切り欠き261によって、導線91の通過を許容しながら絶縁管ストッパー26の通過を禁止する空間が、実現されている。このため、仮に、絶縁管ストッパー26の位置決めに僅かな誤差が生じたとしても、切り欠き261自体の幅d1は、変動しない。このため、複数の部材を接近させて絶縁管92を停止させる場合より確実に、絶縁管92を停止させることができる。
【0037】
なお、切り欠き261の深さ方向の位置によって、切り欠き261の幅d1が異なっていてもよい。少なくとも一部の切り欠き261の幅d1が、導線91の外径より大きく、かつ、絶縁管92の外径より小さければよい。
【0038】
図6に示すように、本実施形態では、導線91の供給経路80の上流側または下流側から見て、絶縁管ストッパー26の切り欠き261の形状が、略U字状となっている。略U字状の切り欠き261は、略V字状の切り欠きと比べて、切り欠き261の幅d1が一定となる部分が大きい。また、略U字状の切り欠き261は、矩形状の切り欠きのような角がない。このため、略U字状の切り欠き261を採用すれば、V字状や矩形状の切り欠きと比べて、絶縁管92の下流側の端部に当たる絶縁管ストッパー26の面積を、広くとることができる。また、略U字状の切り欠き261を採用すれば、絶縁管ストッパー26の切り欠き261を構成する面を、研磨および清掃する作業が、容易となる。
【0039】
ただし、本発明の切り欠きは、略U字状の切り欠き261には限定されない。本発明の切り欠きは、上述した切り欠きの幅、導線の外径、および絶縁管の外径の大小関係を満たせば、V字状の切り欠きや矩形状の切り欠きであってもよい。
【0040】
また、
図6に示すように、本実施形態の絶縁管ストッパー26は、切り欠き261の開口端に、一対のテーパ面262を有する。一対のテーパ面262の間隔は、導線91の供給経路80側へ向かうにつれて、拡大している。このため、絶縁管ストッパー26を、退避状態から接近状態に移動させるときに、切り欠き261と導線91との相対位置が多少ずれていたとしても、導線91は、テーパ面262に沿って切り欠き261の内部へ案内される。したがって、切り欠き261の内部に、導線91をより確実に配置できる。
【0041】
また、
図5に示すように、本実施形態では、ガイド21と、絶縁管ストッパー26とが、供給経路80に沿った隣り合う位置に、配置されている。このため、絶縁管クランパー24による絶縁管92の移動距離、すなわち、
図3の状態から
図4の状態までの絶縁管92の移動距離が、短くて済む。したがって、巻線装置1をより小型化できる。また、ガイド21の近傍においては、導線91の位置が安定する。したがって、切り欠き261の内部に、導線91を精度よく配置できる。その結果、絶縁管92の停止位置を、精度よく定めることができる。
【0042】
また、
図1および
図5に示すように、本実施形態では、絶縁管ストッパー26で絶縁管92を停止させたときに、筐体23内の収容空間231に、絶縁管92が配置される。そして、筐体23よりさらに供給経路80の上流側に、ガイド開閉機構22のシャフト223以外の部分が、配置される。このため、絶縁管ストッパー26により停止される絶縁管92と、ガイド開閉機構22とが、干渉する虞はない。
【0043】
また、本実施形態では、導線91の供給経路80を中心として、絶縁管クランパー24と絶縁管ストッパー26とが、互いに異なる位置に配置されている。また、絶縁管ストッパー26が、切り欠き261の開いた向きに沿って、供給経路80に直交する方向に移動する。このため、退避位置における絶縁管ストッパー26の切り欠き261は、絶縁管クランパー24の移動軌跡から外れた場所に位置する。このようにすれば、退避位置における絶縁管ストッパー26と、絶縁管クランパー24とが、接触しない。したがって、導線91の供給経路80の近くに、退避位置の絶縁管ストッパー26を配置して、絶縁管ストッパー26の移動距離を短くすることができる。絶縁管ストッパー26の移動距離を短くすれば、絶縁管ストッパー26の剛性を得やすい。
【0044】
<3.巻線時の動作について>
図7は、巻線装置1において、一対の分割コア81,82に導線91を巻き付けるときの動作手順を示したフローチャートである。この巻線装置1では、予め、ユーザが、コアホルダ41に一対の分割コア81,82をセットする。また、供給経路80に沿ってガイド21の下流側へ引き出された導線91の端部を、絶縁管92に挿入する。これにより、導線91に対して絶縁管92を、スライド移動可能に取り付けておく。なお、絶縁管92に導線91の先端を挿入する作業は、ユーザが手動で行ってもよく、別途用意された自動挿入機構により行ってもよい。また、巻線装置1のユーザは、導線91の下流側の端部を、コアホルダ41の掛止部に固定する。
【0045】
その後、巻線装置1のユーザは、制御部50に対して、巻線動作を開始する旨のコマンドを入力する。すると、制御部50が、繰り出し部10、支持台移動機構32、ホルダ回転機構42、ガイド開閉機構22、クランパー駆動機構25、およびストッパー移動機構27を制御することにより、以下の一連の処理が進行する。
【0046】
まず、ガイド21より供給経路80の下流側において、絶縁管クランパー24の一対のクランプ部材241が、絶縁管92を保持する(ステップS1)。次に、ガイド開閉機構22が動作し、3つのガイド部材211が開放状態とされる。続いて、クランパー駆動機構25が動作し、絶縁管92を保持した一対のクランプ部材241が、供給経路80に沿って上流側へ、移動する。その結果、絶縁管ストッパー26より供給経路80の上流側に、絶縁管92が配置される(ステップS2)。すなわち、筐体23内の収容空間231に、絶縁管92が配置される。
【0047】
絶縁管92が収容空間231に配置されると、再びガイド開閉機構22が動作し、3つのガイド部材211が、集合状態とされる。これにより、供給経路80に対する導線91の位置ずれが、抑制される。
【0048】
次に、ストッパー移動機構27が動作し、絶縁管ストッパー26が、導線91の供給経路80に接近する。すなわち、絶縁管ストッパー26が、接近状態とされる(ステップS3)。これにより、導線91が切り欠き261内を通過する状態となる。その後、一対のクランプ部材241が、接近状態から離間状態に切り替えられる。これにより、絶縁管92の保持が解除される。
【0049】
この状態で、ホルダ回転機構42、ホルダ移動機構43、およびリール11を動作させると、導線91は、供給経路80に沿って分割コア81,82側へ供給される。ただし、絶縁管92は、絶縁管ストッパー26の切り欠き261を通過することができない。したがって、絶縁管92の下流側の端部は、絶縁管ストッパー26の上流側の面に、接触して停止する。すなわち、導線91を分割コア81,82側へ供給しながら、絶縁管ストッパー26の上流側に、絶縁管92を停止させることができる。
【0050】
図1に示すように、分割コア81,82側へ供給された導線91は、まず、一方の分割コア(第1分割コア)81に巻き付けられる(ステップS4)。そして、第1分割コア81への導線91の巻き付けが完了するのに応じたタイミングで、ストッパー移動機構27が動作し、絶縁管ストッパー26の切り欠き261が、導線91の供給経路80から離れる。すなわち、絶縁管ストッパー26が、退避状態とされる(ステップS5)。そうすると、導線91とともに絶縁管92が、供給経路80の下流側へ送り出される(ステップS6)。その結果、導線91の渡り部911に、絶縁管92が配置される。
【0051】
その後、ホルダ回転機構42、ホルダ移動機構43、およびリール11の動作をさらに継続する。これにより、
図2に示すように、他方の分割コア(第2分割コア)82に、導線91が巻き付けられる(ステップS7)。
【0052】
<4.第二の実施形態>
次に、本発明の第二の実施形態に係る巻線装置について詳述する。
【0053】
絶縁管ストッパー26は、ガイド21と筐体23との間に配置された略板状の部材である。絶縁管ストッパー26の材料には、例えば、鉄等の金属が使用される。
図8、
図9に示すように、本実施形態の絶縁管ストッパー26は、供給経路80の近傍から、筐体23のガイド21側の面に沿って、斜め上方へ延びている。また、
図8、
図9に示すように、絶縁管ストッパー26は、複数の壁面281,282と、複数の壁面281,282の間に位置する空隙29を含む。複数の壁面28は何れも導線91の側面に対向する。
【0054】
本実施形態において、複数の壁面として、絶縁管ストッパー26は、第1壁面281および第2壁面282を備える。第1壁面281は水平方向に伸びる、第2壁面282は、第1壁面281の一端部に接続し、垂直方向に伸びる。より一般的には、第1壁面281は一の方向に伸び、第2壁面282は一の方向とは異なる他の方向に伸びていれば良い。本実施形態においては、一の方向と他の方向は90度の角度を成す。しかし、本発明の他の実施形態においては、この角度を90以外の角度としても良い。
【0055】
本実施形態の第1移動機構であるストッパー移動機構27は、絶縁管ストッパー26を移動させる機構である。ストッパー移動機構27は、筐体23のガイド21側の面に、固定されている。本実施形態のストッパー移動機構27は、エアシリンダを用いて構成されている。ただし、エアシリンダに代えて、モータ等の他の駆動源が使用されていてもよい。なお、第1移動機構は、絶縁管ストッパー26の複数の壁面28と供給経路80との相対位置を変更可能であればよい。つまり、第1移動機構は、絶縁管ストッパー26を移動させる機構であってもよく、供給経路80を移動させる機構であってもよい。
【0056】
ストッパー移動機構27を駆動させると、絶縁管ストッパー26は、供給経路80の伸びる方向とは交わる方向に沿って移動し、少なくとも接近状態と退避状態との二つの状態を取ることができる。接近状態においては、複数の壁面28の少なくとも一つと導線91との間の距離が、導線91の直径と絶縁管92の直径との差よりも小さい。退避状態においては、複数の壁面28の何れについても、導線91との間の距離が、導線91の直径よりも大きい。ここで、複数の壁面28の内の少なくとも1つとは、第1壁面281もしくは第2壁面282の少なくとも1つである。
【0057】
図10は、接近状態における絶縁管ストッパー26、導線91、および絶縁管92を、供給経路80の下流側から見た図である。
図10に示すように、本実施形態では、複数の壁面28の少なくとも一つである第2壁面282と導線91との間の距離d4が、導線91の直径d5と絶縁管92の直径d6との差d7より小さい。このため、接近状態においては、導線91が絶縁管ストッパー26の空隙29内を通過可能であり、かつ、絶縁管92が絶縁管ストッパー26の空隙29を通過し難い。更に、壁面28と導線91との間の距離d4を絶縁管92の厚さよりも小さくすれば、絶縁管92の通過阻止はより確実になる。
【0058】
このため、絶縁管ストッパー26を接近状態にすれば、導線91の供給中に、絶縁管92の下流側の端部が、絶縁管ストッパー26に接触する。これにより、絶縁管92を停止させることができる。また、所望のタイミングで絶縁管ストッパー26を退避状態とすることにより、絶縁管92を、導線91とともに、供給経路80の下流側へ送り出すことができる。これにより、導線91の所望の箇所に絶縁管92を配置できる。
【0059】
また、本実施形態では、板状の部材である絶縁管ストッパー26に、切り欠き261が設けられている。そして、当該切り欠き261の内側に複数の壁面281,282が現れている。これら複数の壁面281,282利用することで、導線91の通過を許容しながら絶縁管92の通過を防ぐ機能が、実現されている。この機能が実現されるためには、絶縁管ストッパー26が導線91に対して接近した状態に保たれていればよい。このため、仮に、絶縁管ストッパー26の位置決めに僅かな誤差が生じたとしても、絶縁管92が通り抜けることは無い。複数の部材を接近させて絶縁管92を停止させる場合には、各部材の位置決め誤差を小さく抑えざるを得ないため、本願発明の方法を採用する場合に比して、絶縁管92を停止させることは、より難しくなる。
【0060】
図8に示すように、本実施形態では、導線91の供給経路80の上流側または下流側から見て、絶縁管ストッパー26の切り欠き261の形状が、略L字状となっている。ただし、本発明の切り欠きは、略L字状の切り欠き261には限定されない。本発明で必要とするものは、複数の壁面28とその間の空隙29であって、複数の壁面が対になって配置されていれば、本発明の作用を実現することは可能である。よって、切り欠きの形状は、V字、U字、或いは矩形であっても良い。
【0061】
絶縁管ストッパー26が、本発明の第1の実施形態のように、
図11に示されるU字形状である場合を説明する。絶縁管ストッパー26は、複数の壁面28として、第3壁面283、第4壁面284および第5壁面285を含む。第3壁面283と、第4壁面284とは、空隙29を介して対向する。第5壁面285は、空隙29の少なくとも一部を横切る方向に伸びる。なお、第5壁面285は、第3壁面283と第4壁面284とを接続していることが好ましい。
【0062】
<5.第2実施形態にかかる巻線機の巻線時の動作について>
以下では、本発明の第2実施形態にかかる巻線機の巻線時の動作について説明する。なお、第1実施形態にかかる巻線機と共通の部位については
図1〜6を適宜参照して説明する。
【0063】
図12は、第2実施形態にかかる巻線装置1において、一対の分割コア81,82に導線91を巻き付けるときの動作手順を示したフローチャートである。この巻線装置1では、予め、ユーザが、コアホルダ41に一対の分割コア81,82をセットする。また、供給経路80に沿ってガイド21の下流側へ引き出された導線91の端部を、絶縁管92に挿入する。これにより、導線91に対して絶縁管92を、スライド移動可能に取り付けておく。なお、絶縁管92に導線91の先端を挿入する作業は、ユーザが手動で行ってもよく、別途用意された自動挿入機構により行ってもよい。また、巻線装置1のユーザは、導線91の下流側の端部を、コアホルダ41の掛止部に固定する。
【0064】
その後、巻線装置1のユーザは、制御部50に対して、巻線動作を開始する旨のコマンドを入力する。すると、制御部50が、繰り出し部10、支持台移動機構32、ホルダ回転機構42、ガイド開閉機構22、クランパー駆動機構25、およびストッパー移動機構27を制御することにより、以下の一連の処理が進行する。
【0065】
まず、ガイド21より供給経路80の下流側において、絶縁管クランパー24の一対のクランプ部材241が、絶縁管92を保持する(ステップS1)。次に、ガイド開閉機構22が動作し、3つのガイド部材211が開放状態とされる。続いて、クランパー駆動機構25が動作し、絶縁管92を保持した一対のクランプ部材241が、供給経路80に沿って上流側へ、移動する。その結果、絶縁管ストッパー26より供給経路80の上流側に、絶縁管92が配置される(ステップS2)。すなわち、筐体23内の収容空間231に、絶縁管92が配置される。
【0066】
次に、ストッパー移動機構27が動作し、絶縁管ストッパー26が、導線91の供給経路80に接近する。すなわち、絶縁管ストッパー26が、接近状態とされる(ステップS3)。これにより、導線91が切り欠き261内を通過する状態となる。その後、一対のクランプ部材241が、接近状態から離間状態に切り替えられる。これにより、絶縁管92の保持が解除される。
【0067】
絶縁管ストッパー26が接近状態となると、再びガイド開閉機構22が動作し、3つのガイド部材211が、集合状態となる。これにより、供給経路80に対する導線91の位置ずれが、起きにくくなる。
【0068】
この状態で、ホルダ回転機構42、ホルダ移動機構43、およびリール11を動作させると、導線91は、供給経路80に沿って分割コア81,82側へ供給される。ただし、絶縁管92は、絶縁管ストッパー26の壁面281,282の部分で、絶縁管ストッパー26の上流側の面に接触するため、絶縁管ストッパー26を通過することができない。すなわち、導線91を分割コア81,82側へ供給しながら、絶縁管ストッパー26の上流側に、絶縁管92を停止させることができる。
【0069】
図13に示すように、分割コア81,82側へ供給された導線91は、まず、一方の分割コア(第1分割コア)81に巻き付けられる(ステップS4)。そして、第1分割コア81への導線91の巻き付けが完了するのに応じたタイミングで、ストッパー移動機構27が動作し、絶縁管ストッパー26が、導線91の供給経路80から離れる。すなわち、絶縁管ストッパー26が、退避状態とされる(ステップS5)。そうすると、導線91とともに絶縁管92が、供給経路80の下流側へ送り出される(ステップS6)。その結果、導線91の渡り部911に、絶縁管92が配置される。
【0070】
その後、ホルダ回転機構42、ホルダ移動機構43、およびリール11の動作をさらに継続する。これにより、
図2に示すように、他方の分割コア(第2分割コア)82に、導線91が巻き付けられる(ステップS7)。
【0071】
その後、
図13に示すように、支持台移動機構32が支持台31を移動させる。導線91が真っ直ぐに第2分割コア82に到達している状態を中立状態とする場合、上記における支持台31の移動方向は、ガイド部材211を境として導線91の下流側(第2分割コア82側)において、絶縁管ストッパー26が有る側に偏向させる方向である。これにより導線91が壁面282に近づく方向に曲げられる(ステップS8)。これにより、次に絶縁管ストッパー26が接近状態となった際に、導線91が壁面28により位置決めされ、ガイド部材211が集合状態となったときに、位置ズレが更に起きにくくなる。この時、ガイド部材211は集合状態である。即ち、支持台移動機構32は、本実施形態における第2移動機構である。
【0072】
なお、ステップS8において、支持台31を移動させる方向は上記に限らない。例えば、
図13において支持台31を第2分割コアに対して、相対的に下方(図の奥行き方向)に移動させる構成としても良い。その場合、導線91は壁面281に近づけられることになる。つまり、ステップS8は、第2移動機構である支持台移動機構32により、被巻線部材である分割コアと、供給経路80の相対位置を変化させ、導線91を少なくとも複数の壁面28の何れか一つに近づける工程である。
【0073】
なお、
図11のように、絶縁管ストッパー26が第5壁面285を含む場合、支持台31の移動方向として、導線91を第5壁面285に近づける方向を選択することも出来る。
【0074】
<6.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上記の実施形態では、支持台31に対して相対的に静止した導線91の供給経路80に対して、絶縁管ストッパー26を移動させていたが、支持台31に対して絶縁管ストッパー26を相対的に静止させ、当該絶縁管ストッパー26に対して導線91の供給経路80を移動させるようにしてもよい。すなわち、巻線装置1は、供給経路80と絶縁管ストッパー26とを相対移動させる移動機構を、有していればよい。
【0076】
ただし、複数の部材により画定される供給経路80を移動させるより、単一の部材である絶縁管ストッパー26を移動させる方が、移動機構の構造がシンプルとなり、巻線装置1をより小型化できる。
【0077】
また、本発明の被巻線部材は、必ずしも分割コア81,82そのものでなくてもよい。例えば、分割コアに装着される樹脂製のインシュレータが、被巻線部材であってもよい。また、本発明の巻線装置は、必ずしもモータのコイルを形成するための装置でなくてもよい。例えば、発電機や変圧器の製造工程において、被巻線部材である鉄心の周りに、線材である導線を巻き付けるものであってもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、絶縁管ストッパー26が略水平方向に移動していたが、絶縁管ストッパー26の移動方向は、必ずしも水平方向でなくてもよい。例えば、絶縁管ストッパー26は、供給経路80の上方位置から、下向きに供給経路80へ接近してもよい。また、絶縁管ストッパー26は、回転運動によって、円弧状の軌跡を描きながら、供給経路80へ接近してもよい。
【0079】
また、接近状態の絶縁管ストッパー26により停止する絶縁管92は、必ずしもその全体が筐体23内に配置されていなくてもよい。すなわち、絶縁管92の少なくとも一部分が、筐体23内に配置されていればよい。例えば、停止した絶縁管92の一部分が、ガイド開閉機構22と干渉しない範囲で、筐体23の外に配置されていてもよい。
【0080】
また、各部材の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。