(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の付着防止方法では、粉粒物質と付着防止物質とを分離する分離装置が必要になる。この場合、細かく砕けた付着防止物質が分離されずに粉粒物質に混入した状態になる可能性もあり、混入物の有無の検査工程が別途必要になる。また、特許文献3に提案されているように、原料を予熱することにより、結露する量を減らすことはできるが、原料を均一に加熱する装置が別途必要となる。加えて、原料によっては加熱により原料の香りが飛んだり、変性を招いたりする。
【0006】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、工程や装置を増やすことなく、粉粒体の加熱部への付着を防止できる加熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の加熱処理装置は、凝縮性気体と粉粒体の混合気体を流速200m/秒以下で加熱部に流動させ、粉粒体を凝縮性気体により加熱処理する加熱処理装置であって、前記加熱部の内周面は、非粘着性材料で形成されており、前記非粘着性材料は、水との接触角が90度以上であることを特徴とする。この構成によれば、加熱部の内周面は、離型性や撥水性が高くなり、加熱部の内周面への粉粒体の付着防止を図ることができる。このことにより、加熱部に粉粒体が付着して生じる塊や焦げによる品質劣化や異物混入を防止できるとともに、加熱部を構成する加熱管の断面積の縮小による加熱処理条件の変化を防止できる。加えて、加熱管の閉塞による運転の中断を防止でき、連続運転が可能になる。この構成では、工程や装置を増やすことなく、加熱部の内周面の仕様により粉粒体の付着防止を図ることができる。また、離型性や撥水性が高まることにより、洗浄が容易になる。さらに、凝縮性気体と粉粒体の混合気体は流速200m/秒以下で加熱部を流動するので、流速が遅くなることにより生じ易くなる粉粒体の付着を防止する効果が有効に発揮されるとともに、粉粒体の滞留時間を確保するための加熱部の長さを抑えることができ、装置の大型化を防ぐことができる。
【0008】
前記本発明の加熱処理装置においては、前記水との接触角は120度以下であることが好ましい。この構成は、内周面を凹凸のある粗面とせず、平滑面の状態でも粉粒体の付着防止が実現可能である。内周面が平滑面であれば、粗面の凸部の摩耗により水との接触角が減少することもない。
【0009】
前記非粘着性材料がフッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂は、離型性や撥水性が高く、100度以上の水との接触角を確保できる。
【0010】
前記加熱部は、非粘着性材料単体で形成されていることが好ましい。この構成によれば、被覆層を追加する加工が不要になり、剥離が生じないため、耐久性が高くなる。特に、非粘着性材料をフッ素樹脂とした場合は、耐食性が高くなる上、断熱性も高くなる。断熱性が高くなれば、放熱によるエネルギーロスを抑えることができ、ランニングコストが抑えられる。また、追加部材の組立工程が不要になり、製造が容易になる。
【0011】
前記加熱部は、非粘着性材料の本体が補強材で覆われて形成されていることが好ましい。この構成によっても、被覆層を追加する加工が不要になり、剥離が生じないため、耐久性が高くなり、補強材を有することにより、耐久性がさらに高まる。非粘着性材料の本体をフッ素樹脂とした場合は、加熱部を非粘着性材料単体で形成した場合と同様に、耐食性が高くなる上、断熱性が高くなり、ランニングコストが抑えられる。また、強度が高まることにより、本体の外径を小径化できるのでコスト削減に有利になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加熱部の内周面の離型性や撥水性が高くなり、加熱部の内周面への粉粒体の付着防止を図ることができる。このことにより、加熱部に粉粒体が付着して生じる塊や焦げによる品質劣化や異物混入を防止できるとともに、加熱部を構成する加熱管の断面積の縮小による加熱処理条件の変化を防止できる。加えて、加熱管の閉塞による運転の中断を防止でき、連続運転が可能になる。また、この構成では、工程や装置を増やすことなく、加熱部の内周面の仕様により粉粒体の付着防止を図ることができる。また、離型性や撥水性が高まることにより、洗浄が容易になる。さらに、凝縮性気体と粉粒体の混合気体は流速200m/秒以下で加熱部を流動するので、流速が遅くなることにより生じ易くなる粉粒体の付着を防止する効果が有効に発揮されるとともに、粉粒体の滞留時間を確保するための加熱部の長さを抑えることができ、装置の大型化を防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る加熱処理装置1の概略構成図である。加熱処理装置1は、粉粒体10を加熱処理して殺菌又は変性するための装置である。粉粒体10は特に限定されないが、例えば、小麦粉、米粉等の穀物粉、糠、海藻粉、魚粉、野菜粉、野菜チップ粉、茶葉粉末、胡椒等の香辛料粉末、各種添加物の粉末、医薬品粉末、化粧品粉末、各種飼料の粉末が挙げられる。本発明は、加熱部4の内周面への粉粒体10の付着防止を図るものである。このため、付着が生じ易い粉粒体、例えばとうがらしなどの糖分や油分が多い原料や、増粘剤などの吸水して粘着性が高くなる原料を加熱対象とするときに、特に本発明の効果が発揮される。加熱処理装置1による加熱工程を経ることにより、加熱処理と共に微生物や害虫等の有害な生物の繁殖を防止することができる。
【0015】
加熱処理装置1の加熱部4は、加熱管2とサイクロン3とで構成している。凝縮性気体供給源5から供給される凝縮性気体は、凝縮性気体供給路6を経て加熱管2に供給される。凝縮性気体は、例えば水蒸気であり、飽和水蒸気、過熱水蒸気のいずれもよく、各種溶剤の蒸気であってもよい。
【0016】
粉粒体10の供給部であるホッパー7には、粉粒体10が充填される。ホッパー7からの粉粒体10は、スクリューフィーダ8及び原料供給路9を経て加熱管2に流入する。スクリューフィーダ8により、粉粒体10が加熱管2に定量供給される。
【0017】
加熱管2の入口部11において、凝縮性気体供給路6から供給された凝縮性気体と原料供給路9から供給された粉粒体10とが混合される。この混合より、凝縮性気体と粉粒体10との混合気体が生成され、加熱管2内をサイクロン3に向かって流動する。加熱管2及びサイクロン3において、粉粒体10は凝縮性気体により加熱処理される。加熱管2を通過した粉粒体10は、サイクロン3内に供給される。サイクロン3内で凝縮性気体と粉粒体10とが分離される。凝縮性気体は排気路12を経て排気され、凝縮性気体から分離された粉粒体10は、回収路13を経て回収される。
【0018】
粉粒体10が凝縮性気体中に投入されると、粉粒体10と凝縮性気体との温度差により、粉粒体10の表面に結露が生じる。結露により熱が粉粒体10に伝達し、短時間で粉粒体10が加熱される。一方、結露すると粉粒体10が加熱部4の内周面に付着し易くなる。例えば、加熱部4の内周面がステンレスで形成されていれば、この内周面に粉粒体10が付着し易くなる。前記のとおり、粉粒体10が加熱部4の内周面に付着し、付着物の塊や焦げが剥離して気流中へ混入すると、品質劣化や異物混入の原因になる。また、加熱部4のうち、特に加熱管2の内周面への付着が進行すると、加熱管2の断面積が小さくなり、流速が変化し加熱処理条件が変化してしまう。さらに付着が進行すると加熱管2が閉塞し、運転が中断してしまう。
【0019】
本実施形態では、加熱部4の内周面を非粘着性材料で形成し、この非粘着性材料の水との接触角を90度以上とすることにより、加熱部4の内周面への粉粒体10の付着防止を図っている。
図2は、加熱部4のうち、加熱管2の第1の例についての断面図を示しており、
図1のAA線における断面図に相当する。本図の例は、表面処理により、加熱管2の内周面を非粘着性材料で形成した例である。加熱管2は基体15がステンレス管で構成され、内周側に非粘着性材料で形成された被覆層16を形成している。非粘着性材料とは、粘着物に対しても離型し易い性質を有する材料のことである。本実施形態で用いる非粘着性材料は、水との接触角が90度以上の材料である。非粘着性材料は、フッ素樹脂が好ましく、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピレン共重合体)である。これらは、いずれも水との接触角は100度以上となる。
【0020】
図3は、水との接触角を説明する側面図である。水との接触角は、付着の程度の指標であり、固体(試験片20)、液体(水滴21)及び空気の接する部位(A点)から、水滴21の曲面に接線を引いたときに、この接線と試験片20の表面とのなす角度θである。r(mm)を水滴21の試験片20に接している面の半径、h(mm)を試験片20の表面(B点)から水滴21の頂点(C点)までの高さとすると、次の式(1)が成り立つ。
式(1) θ=2tan
−1(h/r)
したがって、r及びhを測定することにより、水滴21の接触角θを求めることができる。また、水滴21の輪郭を球(円)の一部と見なすと、幾何の定理よりθ/2=∠BACが成り立つため、光学的読取装置を用いて、θ/2法によりθ/2を直読し、接触角θを求めてもよい。
【0021】
図4は、フッ素樹脂で形成した被覆層25上に水滴26を静置した状態を示している。
図4では水との接触角θは90度よりも大きくなっており、水滴26の離型性や撥水性が高くなる。したがって、
図2の加熱管2の構成では、水との接触角を90度よりも大きくした被覆層16により、加熱管2の内周面への粉粒体10の付着防止を図ることができる。このことにより、加熱部4に粉粒体10が付着して生じる粉粒体10の塊や焦げによる品質劣化や異物混入を防止できるとともに、加熱管2の断面積の縮小による加熱処理条件の変化を防止できる。加えて、加熱管2の閉塞による運転の中断を防止でき、連続運転が可能になる。この構成では、工程や装置を増やすことなく、加熱部4の内周面の仕様により粉粒体10の付着防止を図ることができる。また、離型性や撥水性が高まることにより、洗浄が容易になる。
【0022】
本実施形態では、被覆層16の水との接触角θは90度以上であるが、前記の水との接触角の定義から水との接触角は上限が180度である。離型性や撥水性を高める観点からは、水との接触角は大きいほどよく、100度以上がより好ましい。120度より大きい水との接触角は、対象面を凹凸のある粗面とすることにより実現できる。しかし、対象面を凹凸のある粗面にすると、凸部の摩耗により水との接触角が減少する場合がある。一方、120度以下の水との接触角は、対象面を凹凸のある粗面とせず、平滑面の状態でも粉粒体の付着防止が実現可能である。また、後に示す実施例は、水との接触角を114度程度としたが、粉粒体10の付着防止の効果を確認できた。このため、水との接触角θは120度以下が好ましい。
【0023】
ここで、本実施形態に係る加熱処理装置1では、凝縮性気体と粉粒体10との混合気体が流速200m/秒以下で流れるように設定されている。また、流速が200m/秒よりも大きいと、粉粒体10の流れも速くなり、粉粒体10が付着しにくくなり、付着防止対策の必要性が薄れてくる。すなわち、本実施形態は、粉粒体10の付着防止の効果が有効に発揮される構成である。このことにより、粉粒体の滞留時間を確保するための加熱管2の長さを抑えることができ、装置の大型化を防ぐことができる。
【0024】
加熱管2は、
図2の構成に限るものではなく、以下の各種構成としてもよい。
図5は、加熱管2の第2の例についての断面図を示している。本図では、加熱管2は、非粘着性材料単体で形成しており、非粘着性材料は前記のとおり、フッ素樹脂が好ましい。本図の構成によれば、被覆層を追加する加工が不要になり、剥離が生じないため、耐久性が高くなる。特に、非粘着性材料をフッ素樹脂とした場合は、耐食性が高くなる上、断熱性も高くなる。断熱性が高くなれば、放熱によるエネルギーロスを抑えることができ、ランニングコストが抑えられる。また、後に説明する補強材を追加する構成と比べると管同士の組立工程が不要になり、製造が容易になる。一方、
図5の構成であっても強度確保は可能であり、強度を高めるには、例えば肉厚を厚くしたり、別途補強材を追加すればよい。
【0025】
図6は、加熱管2の第3の例についての断面図を示している。本図の例は、非粘着性材料で形成された本体31の外周面を補強材30で覆った構成である。本体31は、フッ素樹脂が好ましい。本図の構成は、
図5の構成と同様の効果が得られることに加えて、補強材30を有することにより、耐久性がさらに高まる効果が得られる。また、強度が高まることにより、本体31の外径を小径化できるのでコストを削減することができる。本体31の小径化によるコスト削減の効果は、本体31を高価なフッ素樹脂とした場合には、特に大きくなる。
【0026】
補強材30は、強度又は硬度が高く、耐熱性も高い材料が適している。例えば、ステンレス、鉄、炭素繊維強化プラスチック、セラミックが好ましい。また、補強材30は本体31の外周面の全面を覆ってもよく、部分的に覆ってもよい。補強材30と本体31との接着の有無はどちらでもよい。
【0027】
以上、加熱管2の第2の例及び第3の例を説明したが、これらの構成によっても、
図2の加熱管2の第1の例と同様に、粉粒体10の付着防止を図ることができる。また、工程や装置を増やすことなく、加熱管2の仕様により粉粒体10の付着防止を図ることができる点、洗浄が容易になる点も
図2の加熱管2の第1の例と同様である。
【0028】
以上、加熱部4のうち加熱管2について説明したが、サイクロン3内においても、凝縮性気体と粉粒体10の混合気体が流動する。このため、サイクロン3の内周面にも、粉粒体10の付着が生じ得る。
図1の本実施形態では、加熱管2と同様に、サイクロン3の内周面を非粘着性材料としている。サイクロン3の内周面を非粘着性材料とするには、
図2に示した加熱管2の構成と同様に、サイクロン3の内周面を表面処理し、非粘着性材料の被覆層16を形成すればよい。
【0029】
また、
図5に示した加熱管2の構成と同様に、サイクロン3を非粘着性材料単体で形成してもよい。さらに、
図6に示した加熱管2の構成と同様に、サイクロン3の本体を非粘着性材料で形成し、この本体の外周面を補強材で覆った構成としてもよい。
【0030】
図7は、本発明の別の実施形態に係る加熱処理装置1の概略構成図である。
図1と同一構成のものは、同一符号を付してその説明は省略する。
図7の構成では、加熱管2とサイクロン3’との間に、冷却管37が介在している。この構成では、冷却管37内で凝縮性気体と粉粒体10との混合気体は冷却されるので、冷却管37及びこれに続くサイクロン3’は加熱部4には含まれない。冷却管37には、加熱管2からの凝縮性気体と粉粒体10との混合気体が供給される。さらに、送風手段であるブロア35からの非凝縮性気体が、送風路36を経て供給される。非凝縮性気体は、例えば空気、酸素、窒素、二酸化炭素であり、冷えても凝縮しない気体である。冷却管37において、凝縮性気体と粉粒体10との混合気体は、ブロア35からの非凝縮性気体により冷却されて、サイクロン3’に供給される。このことにより、粉粒体10の温度をサイクロン3’に供給する前に、所定の温度に下げることができる。
【0031】
図7の構成では、冷却管37及びサイクロン3’内においては、粉粒体10の温度が強制的に下げられているので、粉粒体10は、冷却管37及びサイクロン3’の内周面に付着しにくい。このため、冷却管37及びサイクロン3’については、
図2、
図5及び
図6に示したような粉粒体10の付着防止構造を省くことができる。すなわち、本発明は凝縮性気体と粉粒体10との混合気体の流路の全体に亘り、内周面を非粘着性材料とした構成に限るものではなく、部分的に内周面を非粘着性材料とした構成であってもよい。
【0032】
以上、
図1及び
図7の加熱処理装置1について説明したが、これらは一例であり、加熱処理装置1は、粉粒体10を凝縮性気体により加熱処理する加熱部4を備えたものであればよい。加熱部4の形状、大きさ、断面積は任意であり、配置も特に限定されさない。
【0033】
図8は、本発明のさらに別の実施形態に係る加熱処理装置1の概略構成図である。
図1と同一構成のものは、同一符号を付してその説明は省略する。
図1では加熱管2は水平方向に配置されているが、
図8では加熱管2は垂直方向に配置されている。この構成においても、加熱管2及びサイクロン3に、前記の粉粒体10の付着防止構造を採用すれば、
図1の構成と同様の粉粒体10の付着防止効果が得られる。また、加熱処理装置1は、
図7のように冷却管37を備えた構成において、加熱管2及び冷却管37を垂直方向に配置した構成であってもよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例を参照しながら、本発明をさらに具体的に説明する。実施例は、
図7に示した加熱処理装置1と同様の構成である。加熱管2の断面構造は、
図6の構造を採用した。実験条件は次のとおりである。
補強材30:ステンレス管
本体31:フッ素樹脂(PTFE)管(水との接触角は114度程度)
内径30mm
粉粒体10:小麦粉、とうがらし
水蒸気圧:0.4MPa
処理時間:1時間
運転後、加熱管2内を確認したところ、小麦粉、とうがらしのいずれにおいても、付着、焦げ及び閉塞は確認されなかった。比較のために、本体31を用いず、加熱管2を内径30mmのステンレス管のみ(被覆層も無し)で構成し、これ以外は実施例と同じ構成の比較例で実験確認した。比較例では、小麦粉は5分後、とうがらしは3分後から徐々に処理量が減って部分的に焦げが混ざり始めた。いずれの場合も、この2分後には加熱管2は完全に閉塞した。加熱管2内を確認したところ、加熱管2内のステンレス表面に原料が付着して焦げ、管内が閉塞していた。この比較実験により、本発明による粉粒体10の付着防止効果を確認できた。
【0035】
本実施形態では、加熱処理装置1は、サイクロン3又はサイクロン3’を備えた構成で説明したが、サイクロン3又はサイクロン3’を省いた構成であってもよい。