(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232248
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】小旋回型のミニショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
E02F9/16 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-217341(P2013-217341)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2015-78567(P2015-78567A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2015年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 浩登
(72)【発明者】
【氏名】石井 芳明
(72)【発明者】
【氏名】吉益 宏次
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−012513(JP,A)
【文献】
特開2011−084876(JP,A)
【文献】
特開2013−170446(JP,A)
【文献】
特開平09−074930(JP,A)
【文献】
特開2006−158376(JP,A)
【文献】
特開2006−063686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18,9/24−9/28
A01G 3/08,23/08
B27B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体の前側に取り付けられた作業装置と、前記本体に設けられた運転席と、この運転席の前方に配置された防護ガードとを備えた車幅内で旋回体が旋回する小旋回型のミニショベルにおいて、
前記防護ガードは、前手摺りを境として上方に配置された上部防護ガードと、下方に配置された下部防護ガードとからなり、
前記下部防護ガードは、網部と、前記網部を保持して前記運転席の前方で固定されるフレームとからなり、
前記下部防護ガードの前記フレームの前面側の側部には、チェーンソーをその長手方向が上下方向に沿うように保持する保持部が備えられていることを特徴とする小旋回型のミニショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂、木材等から運転席を防護する防護ガードを備え、木材の伐採に用いられる伐採装置を搭載した
小旋回型のミニショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えばミニショベルは小回りが利くので、このミニショベルを木々が密集した森における木材の伐採に活用したいという要望が従来からある。この種の従来の建設機械として、特許文献1に示されるものがある。この従来技術は、ミニショベルによって構成されている。このミニショベルは、本体すなわち旋回体と、この旋回体の前側に取り付けられ、木材等の挟持、土砂の掘削等の作業が可能な作業装置と、旋回体に設けた運転席と、この運転席の前方に配置され、土砂、木材等から運転席を防護する防護ガードを備えている。
【0003】
このようなミニショベルにあって、木材の伐採に用いられる伐採装置、例えばチェーンソーが搭載されることがある。この場合、後方小旋回型、超小旋回型などのように、ほぼ車幅内で旋回体が旋回するように形成されたミニショベルのような小型機械では、旋回体上の備品配置空間が非常に狭く、チェーンソーは通常、運転席が設置される床上の運転席の足元付近に置かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−63686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、チェーンソーすなわち伐採装置を運転席の足元付近に置くようにした従来技術では、運転席の足元に操作ペダルが存在することから、伐採装置を置くことによって操作ペダルが動かされ、誤操作を生じる虞がある。また、伐採装置の鋸部分などの接触により伐採装置の周囲に配置されている部品が損傷する懸念もある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実情からなされたもので、その目的は、運転席の足元付近に置くことなく、伐採装置を搭載することができる
小旋回型のミニショベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、本体と、この本体の前側に取り付けられた作業装置と、前記本体に設けられた運転席と、この運転席の前方に配置
された防護ガードとを備えた車幅内で旋回体が旋回する小旋回型のミニショベルにおいて、前記防護ガードは、
前手摺りを境として上方に配置された上部
防護ガードと、下方に配置された下部
防護ガードとからなり、
前記下部防護ガードは、網部と、前記網部を保持して前記運転席の前方で固定されるフレームとからなり、前記下部
防護ガードの
前記フレームの前面側の側部に
は、チェーンソーをその長手方向が上下方向に沿うように保持する保持部
が備え
られていることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、作業装置側である
下部防護ガードの
フレームの前面側
の側部に設けた保持部にチェーンソーを保持させるようにしたことから、備品配置空間に制約を受ける小旋回型のミニショベルにおいて、チェーンソーを運転席の足元付近に置くことなく搭載することができる。これによってチェーンソーが操作ペダルや、運転席の足元付近に配置された周囲部品に接触することを回避できる。また、下部
防護ガードの
フレームの前面側の側部にチェーンソーを保持する保持部を設けたことから、運転席に座ったオペレータの視野がチェーンソーによって遮られることがない。よって、運転席に座ったオペレータの作業装置による作業時等の良好な前方視野を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に
よれば、空間に制約を受ける小旋回型のミニショベルにおいて、チェーンソーが操作ペダル及び運転席の足元付近に配置されている部品に接触することを回避でき、従来生じる虞のあっ
た操作ペダルの誤操作を防止でき、また、運転席の足元付近
を広く確保
できるとともに、運転席に座ったオペレータの
作業時の良好な前方視野を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る
小旋回型のミニショベルの第1実施形態
を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係るミニショベルの旋回体部分を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態の要部を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施形態の要部を構成する旋回体部分を示す斜視図である。
【
図8】第3実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第4実施形態の要部を構成する旋回体部分を示す斜視図である。
【
図10】第4実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る
小旋回型のミニショベルの実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る
小旋回型のミニショベルの第1実施形態
を示す側面図、
図2は第1実施形態に係るミニショベルの旋回体部分を示す斜視図、
図3は
図2の要部拡大斜視図、
図4は第1実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【0020】
本発明の第1実施形態に係る
小旋回型のミニショベルは、
図1に示すように、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2の前側位置に配置され、上下方向に回動可能な作業装置3とを備えている。走行体1と旋回体2は、このミニショベルの本体を構成している。作業装置3は、旋回体2に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に取り付けられ、木材等の挟持が可能な挟持具6とを含んでいる。旋回体2の旋回フレーム2a上には運転席7を配置してある。また、運転席7を覆うように、例えば4柱キャノピ8を設けてある。
【0021】
図2〜4に示すように、運転席7の前方には、土砂、木材等から運転席7を防護する防護ガードを設けてある。この防護ガードは、例えば4柱キャノピ8の一対の前支柱8a,8bのそれぞれに両端が固定される前手摺り8cを境として、それぞれ上下に配置され、上側部分を形成する上部防護ガード10と、下側部分を形成する下部防護ガード11とによって構成されている。
【0022】
上部防護ガード10は、防護体、例えば網部10bと、この網部10bを保持するフレーム10aとから成り、フレーム10aが4柱キャノピ8の前支柱8a,8bのそれぞれに固定されている。同様に、下部防護ガード11も、防護体、例えば網部11bと、この網部11bを保持するフレーム11aとから成り、フレーム11aが4柱キャノピ8の前支柱8a,8bのそれぞれに一体に設けた支持部12,13に、取り付け部14を介して固定されている。
【0023】
この第1実施形態は、作業装置3側である防護ガードの前面側に、例えば下部防護ガード11の前面側に、木材の伐採に用いられる伐採装置、例えばチェーンソー25を保持する保持部20を備えている。
【0024】
図3等に示すように、保持部20は、それぞれコ字状の上部枠体21及び下部枠体22から成り、これらの上部枠体21及び下部枠体22は、下部防護ガード11のフレーム11aに例えば溶接により一体に設けてある。
【0025】
図4に示すように、チェーンソー25は、伐採作業者によって把持される把持部25aと、自動鋸25bとから成り、把持部25aが保持部20の上部枠体21に載置され、自動鋸25bが上部枠体21及び下部枠体22に挿入された状態で保持部20に保持されている。すなわち、保持部20は、チェーンソー25の長手方向が上下方向に沿うようにチェーンソー25を保持するものから成っている。
【0026】
このように構成した第1実施形態は、作業装置3側である下部防護ガード11の前面側に設けた保持部20にチェーンソー25を保持させるようにしたことから、運転席7の足元付近に置くことなく、チェーンソー25を搭載することができる。これによってチェーンソー25が操作ペダルや、運転席7の足元付近の周囲部品に接触することを回避でき、チェーンソー25による操作ペダルの誤操作を防止でき、操作ペダルや、運転席の足元付近に配置されている部品のチェーンソー25による損傷を防止することができる。また、この第1実施形態は、チェーンソー25を搭載したミニショベルに備えられる運転席7の足元付近を広く確保することができる。これにより本発明は、運転席7に座ったオペレータの操作性を向上させることができる。
【0027】
また、この第1実施形態は、大きな強度を有する下部防護ガード11のフレーム11aに保持部20を固定してあるので、長期間にわたってチェーンソー25を安定した状態で保持部20に保持させることができ、信頼性の高いミニショベルを実現させることができる。
【0028】
また、この第1実施形態は、防護ガードの下側部分、すなわち下部防護ガード11に保持部20を固定し、この保持部20でチェーンソー25を保持させたことから、防護ガードの上側部分、すなわち上部防護ガード10にあっては運転席7に座ったオペレータの視界がチェーンソー25によって遮られることがない。したがって、運転席7に座ったオペレータの作業装置3による作業時等の良好な前方視界を確保することができる。
【0029】
図5は、本発明の第2実施形態の要部を示す斜視図である。
【0030】
この
図5に示す第2実施形態は、下部防護ガード11のフレーム11aに取り付けブラケット33a,33bを溶接し、これらの取り付けブラケット33a,33bにボルト34a,34bを介して上部枠体31、及び下部枠体32を着脱可能に設けた構成にしてある。その他の構成は前述した第1実施形態と同等である。
【0031】
このように構成した第2実施形態は、第1実施形態と同等の効果が得られる他、チェーンソー25を保持する必要がない場合などにあっては、保持部30を構成する上部枠体31及び下部枠体32を取り付けブラケット33a,33bから取り外すことによって、運転席7に座ったオペレータの下部防護ガード11を通しての良好な視界を確保することができる。
【0032】
図6は本発明の第3実施形態の要部を構成する旋回体部分を示す斜視図、
図7は
図6の要部拡大斜視図、
図8は第3実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【0033】
これらの
図6〜8に示す第3実施形態は、4柱キャノピ8の前支柱8aに保持部35を構成する上部枠体36、及び下部枠体37を固定し、保持部35はチェーンソー25の長手方向が上下方向に沿うようにチェーンソー25を保持するものから成っている。上部枠体36は、チェーンソー25の自動鋸25bが挿入される筒状部36aと、上部枠体36を前支柱8aに取り付ける取り付け部36bとを含んでいる。同様に、下部枠体37も、チェーンソー25の自動鋸25bが挿入される筒状部37aと、下部枠体37を前支柱8aに取り付ける取り付け部37bとを含んでいる。その他の構成は第1実施形態と同等である。
【0034】
このように構成した第3実施形態は、4柱キャノピ8の前支柱8aに保持部35の上部枠体36及び下部枠体37を固定し、この保持部35でチェーンソー25を保持することから、第1実施形態と同等の効果が得られる他、運転席7に座ったオペレータの視界がチェーンソー25によって遮られることがない。したがって、運転席7に座ったオペレータの作業装置3による作業時等の良好な前方視界を確保することができる。また、大きな強度を有する前支柱8aに保持部35を固定してあるので、備品配置空間に制約を受ける当該ミニショベルにあって、長期間の間、チェーンソー25を安定した状態で搭載することができ、信頼性の高いミニショベルを実現できる。
【0035】
図9は本発明の第4実施形態の要部を構成する旋回体部分を示す斜視図、
図10は第4実施形態に備えられる保持部にチェーンソーを保持させた状態を示す斜視図である。
【0036】
これらの
図9,10に示す第4実施形態は、チェーンソー25を保持する保持部40が、下部防護ガード11のフレーム11aに固定され、チェーンソー25の把持部25aが載置される載置台41と、この載置台41の横方向に並設され、チェーンソー25の自動鋸25bが挿入される第1枠体42及び第2枠体43とを含んでいる。この第4実施形態の保持部40は、チエーンソー25の長手方向が左右方向に沿うように、チェーンソー25を保持するものから成っている。その他の構成は第1実施形態と同等である。このように構成した第4実施形態も、第1実施形態と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
2 旋回体(本体)
2a 旋回フレーム
3 作業装置
7 運転席
8 4柱キャノピ
8a 前支柱
8b 前支柱
8c 前手摺り
10 上部防護ガード
11 下部防護ガード
11a フレーム
11b 網部(防護体)
20 保持部
21 上部枠体
22 下部枠体
25 チェーンソー(伐採装置)
25a 把持部
25b 自動鋸
30 保持部
31 上部枠体
32 下部枠体
33a 取り付けブラケット
33b 取り付けブラケット
34a ボルト
34b ボルト
35 保持部
36 上部枠体
36a 筒状部
36b 取り付け部
37 下部枠体
37a 筒状部
37b 取り付け部
40 保持部
41 載置台
42 第1枠体
43 第2枠体