特許第6232251号(P6232251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232251
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】吸収式冷温水システム
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/02 20060101AFI20171106BHJP
   F25B 27/00 20060101ALI20171106BHJP
   F25B 15/00 20060101ALI20171106BHJP
   F24J 2/42 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F25B27/02 K
   F25B27/00 L
   F25B15/00 301E
   F24J2/42 P
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-219903(P2013-219903)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81728(P2015-81728A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512033383
【氏名又は名称】テクノ矢崎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】小粥 正登
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 元巳
(72)【発明者】
【氏名】鷲尾 了
【審査官】 関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−55658(JP,A)
【文献】 特開昭56−64257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/02
F24J 2/42
F25B 15/00
F25B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、前記蓄熱槽から前記集熱器を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させる第1ポンプと、を有する第1システムと、
前記蓄熱槽内の熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷温液を得る吸収式冷温水機と、前記蓄熱槽から前記吸収式冷温水機の前記再生器を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させる第2ポンプと、を有する第2システムと、
を備えた吸収式冷温水システムであって、
前記集熱器から前記蓄熱槽までの流路上に設けられた切替弁と、
前記蓄熱槽から前記吸収式冷温水機に熱媒を供給する流路と前記切替弁とを接続するバイパス流路と、
前記集熱器からの熱媒の温度を検出する第1温度センサと、
前記蓄熱槽内の熱媒の温度を検出する第2温度センサと、
前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高い場合に、前記切替弁を制御して前記バイパス流路を通じて前記集熱器からの熱媒を前記吸収式冷温水機の再生器に供給させる制御手段と、
を備えることを特徴とする吸収式冷温水システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度以下である場合、前記切替弁を制御して前記集熱器からの熱媒を前記蓄熱槽に供給させ、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高くなく、且つ、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度以下でない場合、前記切替弁を現在の状態で維持する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収式冷温水システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が、吸収式冷温水機に供給すべき適正温度である熱媒許容温度の上限値以上である場合、前記切替弁を制御して前記集熱器からの熱媒を前記蓄熱槽に供給させる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の吸収式冷温水システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記バイパス流路を通じて前記集熱器からの熱媒を前記吸収式冷温水機の再生器に供給する場合、前記第2ポンプを動作させず、前記第1ポンプを動作させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収式冷温水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収式冷温水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光の受光によって熱媒を加熱する太陽熱集熱器と、太陽熱集熱器にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、を備えた太陽熱利用システムが提案されている。また、このような太陽熱利用システムには、蓄熱槽と吸収式冷温水機との間を配管接続し、これらの間で熱媒を循環させることにより、吸収式冷温水機の再生器において希溶液の加熱に利用する吸収式冷温水システムについても提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この吸収式冷温水システムによれば、太陽熱という再生可能エネルギーを利用して希溶液を加熱することができ、希溶液の加熱に要する燃料費を削減することができる。さらに、太陽熱集熱器と吸収式冷温水機との間には蓄熱槽が介在することとなり、これがバッファの役目をするため、日射量に左右されることなく、蓄熱槽から比較的高温の熱媒を吸収式冷温水機に供給することができる。すなわち、日射量が小さい場合に、太陽熱集熱器から吸収式冷温水機に直接熱媒を供給すると、温度が低い熱媒が吸収式冷温水機に供給されることとなり、効率の良い運転を行うことができなくなってしまうが、蓄熱槽を備えることにより安定的な温度の熱媒を吸収式冷温水機に供給できるため、効率の良い運転を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−127574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、吸収式冷温水システムでは、日射量が大きい場合、太陽熱集熱器からの熱媒が蓄熱槽からの熱媒よりも高温となる。このため、太陽熱集熱器から直接吸収式冷温水機に熱媒を供給した方が吸収式冷温水機において効率の良い運転を行うことができる。
【0006】
しかし、従来の吸収式冷温水システムでは、日射量が大きい場合であっても、蓄熱槽からの熱媒を吸収式冷温水機の再生器に供給することとなるため、効率面において向上の余地があるものであった。
【0007】
なお、上記問題は、太陽熱利用システムにより熱媒を加熱する方式に限らず、排熱を利用して熱媒を加熱して蓄熱するシステムや、地熱やバイオマスなどの再生可能エネルギーを利用して熱媒を加熱して蓄熱するシステムを有する吸収式冷温水システムにおいても共通する問題である。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より運転効率の向上を図ることが可能な吸収式冷温水システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸収式冷温水システムは、機器からの排熱又はエネルギー源として永続的に利用可能な再生可能エネルギーにより熱媒を加熱する集熱器と、前記集熱器にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、前記蓄熱槽から前記集熱器を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させる第1ポンプと、を有する第1システムと、前記蓄熱槽内の熱媒を導入して再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷温液を得る吸収式冷温水機と、前記蓄熱槽から前記吸収式冷温水機の前記再生器を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させる第2ポンプと、を有する第2システムと、を備えた吸収式冷温水システムであって、前記集熱器から前記蓄熱槽までの流路上に設けられた切替弁と、前記蓄熱槽から前記吸収式冷温水機に熱媒を供給する流路と前記切替弁とを接続するバイパス流路と、前記集熱器からの熱媒の温度を検出する第1温度センサと、前記蓄熱槽内の熱媒の温度を検出する第2温度センサと、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高い場合に、前記切替弁を制御して前記バイパス流路を通じて前記集熱器からの熱媒を前記吸収式冷温水機の再生器に供給させる制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の吸収式冷温水システムによれば、第1温度センサにより検出された熱媒温度が第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高い場合に、切替弁を制御してバイパス流路を通じて集熱器からの熱媒を吸収式冷温水機の再生器に供給させるため、集熱器からの熱媒が蓄熱槽からの熱媒よりも高温となる状況において、集熱器から直接吸収式冷温水機に熱媒を供給することとなり、吸収式冷温水機においてより効率の良い運転を行うことができる。従って、より運転効率の向上を図ることが可能な吸収式冷温水システムを提供することができる。
【0011】
また、本発明の吸収式冷温水システムにおいて、前記制御手段は、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度以下である場合、前記切替弁を制御して前記集熱器からの熱媒を前記蓄熱槽に供給させ、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高くなく、且つ、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が前記第2温度センサにより検出された熱媒温度以下でない場合、前記切替弁を現在の状態で維持することが好ましい。
【0012】
この吸収式冷温水システムによれば、第1温度センサにより検出された熱媒温度が第2温度センサにより検出された熱媒温度以下である場合、集熱器からの熱媒を蓄熱槽に供給させる。さらに、第1温度センサにより検出された熱媒温度が第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高くなく、且つ、第1温度センサにより検出された熱媒温度が第2温度センサにより検出された熱媒温度以下でない場合、切替弁を現在の状態で維持する。このように、切替弁の制御には、温度ヒステリシスを設けることとなり、頻繁に切替弁が切り替わってしまうことを防止することができる。
【0013】
また、本発明の吸収式冷温水システムにおいて、前記制御手段は、前記第1温度センサにより検出された熱媒温度が、吸収式冷温水機に供給すべき適正温度である熱媒許容温度の上限値以上である場合、前記切替弁を制御して前記集熱器からの熱媒を前記蓄熱槽に供給させることが好ましい。
【0014】
この吸収式冷温水システムによれば、第1温度センサにより検出された熱媒温度が、吸収式冷温水機に供給すべき適正温度である熱媒許容温度の上限値以上である場合、切替弁を制御して集熱器からの熱媒を蓄熱槽に供給させる。このため、たとえ第1温度センサにより検出された熱媒温度が第2温度センサにより検出された熱媒温度よりも所定温度以上高く、バイパス流路を通じて集熱器からの熱媒を吸収式冷温水機の再生器に供給させている状況であっても、第1温度センサにより検出された熱媒温度が熱媒許容温度の上限値以上である場合には、熱媒を蓄熱槽に供給させることとなる。これにより、再生器において濃溶液が濃くなりすぎるなど、吸収式冷温水機にダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0015】
また、本発明の吸収式冷温水システムにおいて、前記制御手段は、前記バイパス流路を通じて前記集熱器からの熱媒を前記吸収式冷温水機の再生器に供給する場合、前記第2ポンプを動作させず、前記第1ポンプを動作させることが好ましい。
【0016】
この吸収式冷温水システムによれば、バイパス流路を通じて集熱器からの熱媒を吸収式冷温水機の再生器に供給する場合、第2ポンプを動作させず、第1ポンプを動作させるため、2つのポンプのうち一方のみを動作させることにより、集熱器からの熱媒を吸収式冷温水機の再生器に供給することができる。
【0017】
なお、上記において、「再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷温液を得る」とは、再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器による冷房サイクルにより冷却液を得る場合と、再生器、蒸発器、及び吸収器による暖房サイクルによる加熱液を得る場合(すなわち凝縮器を用いない場合)との双方を含む概念である。
【0018】
さらに、上記において吸収式冷温水機とは、冷却液を得るのみの吸収式冷凍機を含む概念である。従って、冷温液とは冷却液のみを意味することもあり、且つ、吸収式冷温水システムは吸収式冷凍システムを意味することもある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、より運転効率の向上を図ることが可能な吸収式冷温水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る吸収式冷温水システムの概略構成図である。
図2】吸収式冷温水機の一例を示す概略構成図である。
図3】本実施形態に係る吸収式冷温水システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る吸収式冷温水システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1は、太陽熱を利用して吸収式冷温水機21の希溶液を加熱するものであって、第1システム10と、第2システム20とを備えている。
【0022】
第1システム10は、太陽熱を利用して熱媒を加熱するものであって、太陽熱集熱器(集熱器)11と、蓄熱槽12と、集熱流路13と、集熱ポンプ(第1ポンプ)14とを備えている。なお、本実施形態において第1システム10は、太陽熱を利用して熱媒を加熱するものであるが、これに限らず、排熱を利用して熱媒を加熱するものであってもよいし、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギー(エネルギー源として永続的に利用可能なもの)を利用して熱媒を加熱するものであってもよい。
【0023】
太陽熱集熱器11は、太陽光を受光することで熱媒を加熱するものであって、例えば屋根の上などの太陽光を受光し易い位置に設置されるものである。なお、熱媒は、水、不凍液、及びプロピレングリコール水溶液などが用いられる。
【0024】
蓄熱槽12は、太陽熱集熱器11にて加熱された熱媒を導入して蓄熱するものである。この蓄熱槽12は、熱媒を内部に貯めるタンクである。
【0025】
集熱流路13は、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11に向かう流路を第1集熱流路13aと称し、太陽熱集熱器11から蓄熱槽12に向かう流路を第2集熱流路13bと称する。
【0026】
集熱ポンプ14は、集熱流路13のうち第1集熱流路13aに設けられており、蓄熱槽12から太陽熱集熱器11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0027】
このような第1システム10では、集熱ポンプ14が動作することにより、集熱流路13を熱媒が循環する。熱媒は太陽熱集熱器11によって加熱され、第2集熱流路13bを通じて蓄熱槽12に至り、蓄熱槽12において貯められることとなる。
【0028】
第2システム20は、蓄熱槽12に貯められている熱媒を吸収式冷温水機21に供給するものであって、吸収式冷温水機21と、熱媒流路22と、熱媒ポンプ(第2ポンプ)23とを備えている。
【0029】
吸収式冷温水機21は、再生器における希溶液を加熱し、当該再生器、凝縮器、蒸発器、及び吸収器の循環サイクルによって冷媒を冷却するものである。
【0030】
図2は、吸収式冷温水機21の一例を示す概略構成図である。具体的に、再生器101は、例えば冷媒となる水(以下、冷媒が蒸気化したものを冷媒蒸気と称し、冷媒が液化したものを液冷媒と称する)と、吸収液となる臭化リチウム(LiBr)とが混合された希溶液(吸収液の濃度が低い溶液)を加熱するものである。この再生器101には熱媒配管22が配置されており、熱媒配管22上に希溶液が散布され加熱される。再生器101は、この加熱により希溶液から蒸気を放出させることにより、冷媒蒸気と濃溶液(吸収液の濃度が高い溶液)とを生成する。
【0031】
凝縮器102は、再生器101から供給された冷媒蒸気を液化させるものである。この凝縮器102内には、第1冷水伝熱管102aが挿通されている。第1冷水伝熱管102aには冷却塔などから冷却水が供給されており、蒸発した冷媒蒸気は第1冷水伝熱管102a内の冷却水によって液化する。さらに、凝縮器102にて液化した液冷媒は蒸発器103に供給される。
【0032】
蒸発器103は、液冷媒を蒸発させるものである。この蒸発器103内には、室内機等に接続される第2冷水伝熱管103aが設けられている。この第2冷水伝熱管103aは、例えば室内機と接続されており、室内機による冷却によって暖められた水が流れている。また、蒸発器103内は、真空状態となっている。このため、冷媒である水の蒸発温度は約5℃となる。よって、第2冷水伝熱管103a上に散布された液冷媒は第2冷水伝熱管103aの温度によって蒸発することとなる。また、第2冷水伝熱管103a内の水は、液冷媒の蒸発によって温度が奪われる。これにより、第2冷水伝熱管103aの水は冷水(冷温液の一例)として室内機に供給され、室内機は冷水を利用して冷風を室内に供給することとなる。
【0033】
吸収器104は、蒸発器103において蒸発した冷媒を吸収するものである。この吸収器104内には再生器101から濃溶液が供給され、蒸発した冷媒は濃溶液によって吸収され、希溶液が生成される。また、吸収器104には、第3冷水伝熱管104aが挿通されている。第3冷水伝熱管104aには冷却水が流れており、濃溶液の冷媒の吸収により生じる吸収熱は、第3冷水伝熱管104aの冷却水により除去される。なお、この第3冷水伝熱管104aは、第1冷水伝熱管102aと接続されている。また、吸収器104は、冷媒の吸収により濃度が低下した希溶液をポンプ104bによって再生器101に供給する。
【0034】
なお、上記では冷房運転を説明したが、吸収式冷温水機21は暖房運転も可能である。ここで、暖房運転を行う場合には、図示しない切替弁を切り替えることとなる。そして、切替弁を切り替えた場合には第2冷水伝熱管103aには温水(冷温液の一例)が流れ、室内機にて温水をもとに暖房効果が得られることとなる。
【0035】
また、上記において第2冷水伝熱管103aは室内機に接続されているが、これ限らず、工業用の冷却装置等と接続されていてもよい。
【0036】
再度図1を参照する。熱媒流路22は、蓄熱槽12から吸収式冷温水機21の再生器101を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から吸収式冷温水機21の再生器101に向かう流路を第1熱媒流路22aと称し、吸収式冷温水機21の再生器101から蓄熱槽12に向かう流路を第2熱媒流路22bと称する。
【0037】
熱媒ポンプ23は、熱媒流路22のうち第1熱媒流路22aに設けられており、蓄熱槽12から吸収式冷温水機21の再生器101を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0038】
さらに、本実施形態において吸収式冷温水システム1は、切替弁31と、バイパス流路32と、集熱器温度センサ(第1温度センサ)33と、蓄熱槽温度センサ(第2温度センサ)34と、逆止弁35と、システムコントローラ(制御手段)36とを備えている。
【0039】
切替弁31は、太陽熱集熱器11から蓄熱槽12までの流路、すなわち第2集熱流路13b上に設けられた三方弁である。バイパス流路32は、蓄熱槽12から吸収式冷温水機21に熱媒を供給する流路、すなわち第1熱媒流路22aと、切替弁31を接続する配管である。切替弁31はシステムコントローラ36によって制御され、太陽熱集熱器11によって加熱された熱媒を第2集熱流路13bのみを通じて蓄熱槽12に供給させたり、バイパス流路32を通じて蓄熱槽12を介することなく吸収式冷温水機21の再生器101に供給したりする。
【0040】
集熱器温度センサ33は、太陽熱集熱器11からの熱媒の温度を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号をシステムコントローラ36に送信するものである。蓄熱槽温度センサ34は、蓄熱槽12内の熱媒の温度を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号をシステムコントローラ36に送信するものである。
【0041】
逆止弁35は、第1熱媒流路22とバイパス流路32との接続点Aよりも上流側、かつ、熱媒ポンプ23よりも下流側に設けられて熱媒の逆流を防止するものである。
【0042】
システムコントローラ36は、CPU(Central Processing Unit)を備え、集熱器温度センサ33により検出される熱媒温度と、蓄熱槽温度センサ34により検出される熱媒温度とに応じて、切替弁31を制御するものである。
【0043】
システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度よりも所定温度以上高い場合に、切替弁31を制御してバイパス流路32を通じて太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給させる。これにより、太陽熱集熱器11からの熱媒が蓄熱槽12からの熱媒よりも高温となる状況において、太陽熱集熱器11から直接吸収式冷温水機21に熱媒を供給することとなり、吸収式冷温水機21においてより効率の良い運転を行わせることとなる。
【0044】
また、システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度以下である場合、切替弁31を制御して太陽熱集熱器11からの熱媒を蓄熱槽12に供給させる。よって、日射環境が悪く、太陽熱集熱器11からの熱媒の温度が蓄熱槽12からの熱媒の温度以下となる状況においては、太陽熱集熱器11から直接吸収式冷温水機21に熱媒を供給させることなく、効率が低下してしまう事態を防止することとなる。
【0045】
なお、システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度よりも所定温度以上高くなく、且つ、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度以下でない場合、切替弁31を現在の状態で維持する。すなわち、切替弁31の制御には、温度ヒステリシスを設けることとなり、頻繁に切替弁31が切り替わってしまうことを防止することとなる。
【0046】
また、システムコントローラ36は、バイパス流路32を通じて太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給する場合、熱媒ポンプ23を動作させず、集熱ポンプ14を動作させる。これにより、2つのポンプ14,23のうち一方のみを動作させて、太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給することとなる。
【0047】
次に、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の切替弁31の制御方法を説明する。図3は、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1の制御方法を示すフローチャートである。なお、図3に示す処理は、吸収式冷温水システム1が停止するまで、繰り返し実行される。また、図3においては集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度をT1(平均値はT1ave)と示し、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度をT2(平均値はT2ave)と示す。
【0048】
まず、図3に示すように、システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が、吸収式冷温水機21に供給すべき適正温度である熱媒許容温度の上限値以上であるかを判断する(S1)。上限値以上であると判断した場合(S1:YES)、システムコントローラ36は、切替弁31を蓄熱槽12側に切り替える(S2)。そして、図3に示す処理は終了する。このとき、両ポンプ14,23は双方が運転状態となっている。
【0049】
一方、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が上限値以上でないと判断した場合(S1:NO)、システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1の移動平均温度T1aveが、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2の移動平均温度T2aveよりも所定温度ΔT以上高いかを判断する(S3)。
【0050】
そして、所定温度ΔT以上高いと判断した場合(S3:YES)、システムコントローラ36は、切替弁31をバイパス流路32側に切り替える(S4)。そして、図3に示す処理は終了する。このとき、集熱ポンプ14は運転状態であるが、熱媒ポンプ23は停止状態となる。
【0051】
また、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1の移動平均温度T1aveが、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2の移動平均温度T2aveよりも所定温度ΔT以上高くないと判断した場合(S3:NO)、システムコントローラ36は、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1の移動平均温度T1aveが、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2の移動平均温度T2ave以下であるかを判断する(S5)。
【0052】
集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1の移動平均温度T1aveが、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2の移動平均温度T2ave以下であると判断した場合(S5:YES)、システムコントローラ36は、切替弁31を蓄熱槽12側に切り替える(S2)。そして、図3に示す処理は終了する。このとき、両ポンプ14,23は双方が運転状態となる。
【0053】
一方、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1の移動平均温度T1aveが、蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2の移動平均温度T2ave以下でないと判断した場合(S5:NO)、システムコントローラ36は、切替弁31を現在の状態で維持する(S6)。そして、図3に示す処理は終了する。このとき、両ポンプ14,23の状態も維持されることとなる。
【0054】
このようにして、本実施形態に係る吸収式冷温水システム1によれば、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2よりも所定温度ΔT以上高い場合に、切替弁31を制御してバイパス流路32を通じて太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給させるため、太陽熱集熱器11からの熱媒が蓄熱槽12からの熱媒よりも高温となる状況において、太陽熱集熱器11から直接吸収式冷温水機21に熱媒を供給することとなり、吸収式冷温水機21においてより効率の良い運転を行うことができる。従って、より運転効率の向上を図ることが可能な吸収式冷温水システム1を提供することができる。
【0055】
また、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2以下である場合、太陽熱集熱器11からの熱媒を蓄熱槽12に供給させる。さらに、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2よりも所定温度ΔT以上高くなく、且つ、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2以下でない場合、切替弁31を現在の状態で維持する。このように、切替弁31の制御には、温度ヒステリシスを設けることとなり、頻繁に切替弁31が切り替わってしまうことを防止することができる。
【0056】
また、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が、吸収式冷温水機21に供給すべき適正温度である熱媒許容温度の上限値以上である場合、切替弁31を制御して太陽熱集熱器11からの熱媒を蓄熱槽12に供給させる。このため、たとえ集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が蓄熱槽温度センサ34により検出された熱媒温度T2よりも所定温度ΔT以上高く、バイパス流路32を通じて太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給させている状況であっても、集熱器温度センサ33により検出された熱媒温度T1が熱媒許容温度の上限値以上である場合には、熱媒を蓄熱槽12に供給させることとなる。これにより、再生器101において濃溶液が濃くなりすぎるなど、吸収式冷温水機21にダメージを与えてしまうことを防止することができる。
【0057】
また、バイパス流路32を通じて太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給する場合、熱媒ポンプ23を動作させず、集熱ポンプ14を動作させるため、2つのポンプ14,23のうち一方のみを動作させることにより、太陽熱集熱器11からの熱媒を吸収式冷温水機21の再生器101に供給することができる。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0059】
例えば、上記実施形態では吸収式冷温水機21を含む吸収式冷温水システム1を例示したが、特に吸収式冷温水機21に限らず、吸収式冷凍機であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…吸収式冷温水システム
10…第1システム
11…太陽熱集熱器(集熱器)
12…蓄熱槽
13…集熱流路
14…集熱ポンプ(第1ポンプ)
20…第2システム
21…吸収式冷温水機
22…熱媒流路
23…熱媒ポンプ(第2ポンプ)
31…切替弁
32…バイパス流路
33…集熱器温度センサ(第1温度センサ)
34…蓄熱槽温度センサ(第2温度センサ)
35…逆止弁
36…システムコントローラ(制御手段)
図1
図2
図3