特許第6232252号(P6232252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232252
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】太陽熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/00 20060101AFI20171106BHJP
   F24J 2/42 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F24H1/00 621E
   F24J2/42 J
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-219907(P2013-219907)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-81731(P2015-81731A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】小粥 正登
(72)【発明者】
【氏名】市野 義裕
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 元巳
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−194983(JP,A)
【文献】 特開2013−079759(JP,A)
【文献】 特開昭59−100357(JP,A)
【文献】 特開昭63−213763(JP,A)
【文献】 特開昭63−207951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24J 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を受光することで熱媒を加熱する集熱装置と、
前記集熱装置にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、
前記蓄熱槽から前記集熱装置を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させるポンプと、
前記集熱装置にて加熱された熱媒の温度を検出する複数の第1温度センサと、
前記蓄熱槽内の蓄熱温度を検出する第2温度センサと、
前記複数の第1温度センサにより検出された熱媒の温度それぞれと前記第2温度センサにより検出された蓄熱温度との差温の平均値が第1所定値以上となった場合に前記ポンプを運転させ、前記平均値が前記第1所定値よりも低い第2所定値以下となった場合に前記ポンプを停止させる制御手段と、を備え、
前記集熱装置は、太陽光を受光することで熱媒を加熱する1又は複数の集熱器によりそれぞれが構成された複数の集熱器群を有し、
前記複数の第1温度センサは、前記複数の集熱器群のうち2以上の集熱器群に対して設けられ、
前記制御手段は、前記ポンプの停止中において前記平均値が前記第1所定値以上でなく、且つ、前記差温のうち一部が前記第1所定値以上となる場合に前記ポンプを所定時間運転させる
ことを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の第1温度センサのうちの1つにより検出された熱媒の温度と、前記1つを除く他の第1温度センサにより検出された熱媒の温度の平均値とが規定値以上の差を有する場合、当該1つの第1温度センサ又は当該1つの第1温度センサが設けられた集熱器群について、異常状態であると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽熱集熱装置に対して熱媒を供給し、太陽光の受光によって加熱された熱媒を利用して蓄熱槽の冷水を加熱し、加熱により得られた温水を家庭内等に供給する太陽熱利用システムが提案されている(特許文献1,2参照)。
【0003】
このような太陽熱利用システムは、熱媒をポンプの駆動により循環させている。ポンプは、太陽熱集熱装置における熱媒温度と蓄熱槽における蓄熱温度の差温が第1所定値以上となった場合に運転が開始し、第1所定値よりも低い第2所定値以下となった場合に運転が停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−213763号公報
【特許文献2】特開昭63−207951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記太陽熱利用システムでは、太陽熱集熱装置からの熱媒温度を正確に計測することが肝要となる。しかし、従来の太陽熱利用システムにおいて、ポンプ停止中における太陽熱集熱装置の熱媒温度は温度センサの取り付け位置によって異なって検出されてしまう傾向がある。特に、太陽熱集熱装置内において集熱器からの熱媒を蓄熱槽側に供給する為の戻り配管に温度センサを設置した場合には、取付場所によって熱媒の検出温度に差が生じやすい傾向がある。
【0006】
なお、熱媒温度は戻り配管に温度センサを設置した場合のみに異なって検出されてしまうのではなく、太陽熱集熱装置の集熱部の汚れなど、種々の要因によって異なって検出されてしまうものである。
【0007】
そして、熱媒温度が低くなる箇所に温度センサが取り付けられていた場合には、上記差温が第1所定値以上になり難く、熱媒の本来の温度からすると差温は第1所定値以上になっているにも拘わらず、ポンプが運転せずに集熱効率の低下を招いてしまうことがある。
【0008】
なお、上記の問題は、蓄熱槽に蓄えられた温水を家庭内等に供給する太陽熱利用システムに限らず、蓄熱槽に蓄熱された熱媒や熱を他の機器の運転等に利用する太陽熱利用システムにおいても共通する問題である。
【0009】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、集熱効率の向上を図ることが可能な太陽熱利用システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の太陽熱利用システムは、太陽光を受光することで熱媒を加熱する集熱装置と、前記集熱装置にて加熱された熱媒を導入して蓄熱する蓄熱槽と、前記蓄熱槽から前記集熱装置を経て再度前記蓄熱槽に熱媒を循環させるポンプと、前記集熱装置にて加熱された熱媒の温度を検出する複数の第1温度センサと、前記蓄熱槽内の蓄熱温度を検出する第2温度センサと、前記複数の第1温度センサにより検出された熱媒の温度それぞれと前記第2温度センサにより検出された蓄熱温度との差温の平均値が第1所定値以上となった場合に前記ポンプを運転させ、前記平均値が前記第1所定値よりも低い第2所定値以下となった場合に前記ポンプを停止させる制御手段と、を備え、前記集熱装置は、太陽光を受光することで熱媒を加熱する1又は複数の集熱器によりそれぞれが構成された複数の集熱器群を有し、前記複数の第1温度センサは、前記複数の集熱器群のうち2以上の集熱器群に対して設けられ、前記制御手段は、前記ポンプの停止中において前記平均値が前記第1所定値以上でなく、且つ、前記差温のうち一部が前記第1所定値以上となる場合に前記ポンプを所定時間運転させることを特徴とする。
【0011】
本発明の太陽熱利用システムによれば、複数の第1温度センサにより検出された熱媒の温度それぞれと第2温度センサにより検出された蓄熱温度との差温のうち、一部が第1所定値以上となる場合にポンプを所定時間運転させる。このため、熱媒はポンプの運転によって撹拌されることとなる。これにより、たとえポンプ停止状態において集熱装置内の熱媒温度に差があったとしても、撹拌によって集熱装置内の熱媒温度は平均化することとなり、第1温度センサの取付位置が影響して本来ならば集熱できるにも拘わらず集熱しないといった事態の発生頻度を抑えることができる。従って、集熱効率の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明の太陽熱利用システムにおいて、前記制御手段は、前記複数の第1温度センサのうちの1つにより検出された熱媒の温度と、前記1つを除く他の第1温度センサにより検出された熱媒の温度の平均値とが規定値以上の差を有する場合、当該1つの第1温度センサ又は当該1つの第1温度センサが設けられた集熱器群について、異常状態であると判断することが好ましい。
【0013】
この太陽熱利用システムによれば、1つの第1温度センサにより検出された熱媒の温度と他の第1温度センサにより検出された熱媒の温度の平均値とが規定値以上の差を有する場合、当該1つの第1温度センサ又は当該1つの第1温度センサが設けられた集熱器群について、異常状態であると判断する。ここで、平均値に対して規定値以上の差を有する場合とは、センサ故障、集熱装置のパネル表面における汚れ、流路の詰まりなどが挙げられる。また、集熱器が真空管式のものである場合には、真空管の破損が挙げられる。よって、このような検出値を示した場合に、異常状態であると判断することができる。
【0014】
なお、上記において平均値とは、平均値そのものに限らず、平均値をさらに演算して得られた値、すなわち平均値を由来とする値を含む概念である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、集熱効率の向上を図ることが可能な太陽熱利用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。
図2図1に示した太陽熱集熱装置の詳細を示す構成図である。
図3】本実施形態に係る制御盤によるポンプ制御を示す図である。
図4】本実施形態に係る蓄熱システムの制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る蓄熱システムの概略構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る蓄熱システム1は、太陽熱を利用して蓄熱を行うものであって、太陽熱集熱装置(集熱装置)11と、蓄熱槽12と、集熱流路13と、集熱ポンプ(ポンプ)14とを備えている。
【0018】
太陽熱集熱装置11は、太陽光を受光することで熱媒を加熱するものであって、例えば屋根の上などの太陽光を受光し易く且つ傾斜を有する位置に設置されるものである。なお、熱媒は、水、不凍液、及びプロピレングリコール水溶液などが用いられる。
【0019】
蓄熱槽12は、太陽熱集熱装置11にて加熱された熱媒を導入して蓄熱するものである。この蓄熱槽12は、熱媒を内部に貯めるタンクである。また、蓄熱槽12は、導入した熱媒の熱を蓄熱材により蓄熱するものであってもよい。この蓄熱槽12は、熱を利用して運転等する熱利用機器(例えば吸収式冷温水機)に接続されており、蓄熱槽12に蓄熱された熱は熱利用機器にて利用される。
【0020】
なお、蓄熱槽12が蓄熱材により蓄熱するものである場合、蓄熱材料は、例えば水酸化マグネシウムが用いられるが特にこれに限られるものではない。さらに、熱媒が水であり、蓄熱槽12が水を内部に貯めるタンクである場合、蓄熱槽12はいわゆる貯湯槽として機能し、家庭等に湯水が供給されるようになっていてもよい。加えて、蓄熱槽12は熱交換機を備えるタイプのものであってもよい。
【0021】
集熱流路13は、蓄熱槽12から太陽熱集熱装置11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる配管である。このうち、蓄熱槽12から太陽熱集熱装置11に向かう流路を第1集熱流路13aと称し、太陽熱集熱装置11から蓄熱槽12に向かう流路を第2集熱流路13bと称する。
【0022】
集熱ポンプ14は、集熱流路13のうち第1集熱流路13aに設けられており、蓄熱槽12から太陽熱集熱装置11を経て再度蓄熱槽12に熱媒を循環させる動力源となるものである。
【0023】
さらに、本実施形態において蓄熱システム1は、複数の集熱装置温度センサ(複数の第1温度センサ)15と、蓄熱槽温度センサ(第2温度センサ)16と、制御盤(制御手段)17とを備えている。
【0024】
複数の集熱装置温度センサ15は、太陽熱集熱装置11にて加熱された熱媒の温度を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号を制御盤17に送信するものである。蓄熱槽温度センサ16は、蓄熱槽12内の熱媒の温度(蓄熱槽12の蓄熱温度)を検出するものであって、熱媒温度に応じた信号を制御盤17に送信するものである。
【0025】
制御盤17は、CPU(Central Processing Unit)を備え、CPUにより蓄熱システム1の全体を制御するものである。特に本実施形態において制御盤17は、複数の集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度と蓄熱槽温度センサ16により検出された蓄熱温度とに基づいて、集熱ポンプ14を制御する。
【0026】
図2は、図1に示した太陽熱集熱装置11の詳細を示す構成図である。図2に示すように、太陽熱集熱装置11は、いわゆるリバースリターン方式の集熱装置であって、複数(3つ)の集熱器群11a〜11cを備えている。
【0027】
複数の集熱器群11a〜11cは、互いに熱媒を並列に導入して加熱するものであって、太陽光を受光することで熱媒を加熱する複数(5つ)の集熱器11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5によりそれぞれが構成されている。
【0028】
より詳細に説明すると、太陽熱集熱装置11は、集熱器群11a〜11cに加えて、往き配管11d、分岐往き配管11e1〜11e3、還り配管11f、及び還り分岐配管11g1〜11g3を備えている。
【0029】
往き配管11dは蓄熱槽12からの熱媒を導入するものである。分岐往き配管11e1〜11e3は、一端が往き配管11dに接続されて、往き配管11dからの熱媒を各集熱器群11a〜11cに液送するための配管である。
【0030】
詳細に第1分岐往き配管11e1は一端が往き配管11dに接続され、他端が第1集熱器群11aに接続されている。また、第2分岐往き配管11e2は一端が往き配管11dに接続され、他端が第2集熱器群11bに接続されると共に、第1分岐往き配管11e1と並列に接続されている。第3分岐往き配管11e3は一端が往き配管11dに接続され、他端が第3集熱器群11cに接続されると共に、第1及び第2分岐往き配管11e1,11e2と並列に接続されている。
【0031】
さらに、第1分岐往き配管11e1の一端は、往き配管11dのうち、他の分岐往き配管11e2,11e3よりも、手前側(すなわち集熱ポンプ14及び蓄熱槽12に近い側)に接続されている。第3分岐往き配管11e3の一端は、往き配管11dの端部に接続されており、第2分岐往き配管11e2の一端は、往き配管11dのうち、中間地点(すなわち第1分岐往き配管11e1及び往き配管11dの接続点と、第3分岐往き配管11e3及び往き配管11dの接続点との間)に接続されている。
【0032】
また、第1集熱器群11aが複数(5つ)の集熱器11a1〜11a5を備えていることから、第1分岐往き配管11e1は、それぞれの集熱器11a1〜11a5に熱媒を並列的に供給するように他端側が複数本(5本)に分岐している。第2及び第3集熱器群11b,11cについても、それぞれ複数(5つ)の集熱器11b1〜11b5,11c1〜11c5を備えていることから、第2及び第3分岐往き配管11e2,11e3は、それぞれの集熱器11b1〜11b5,11c1〜11c5に熱媒を並列的に供給するように他端側が複数本(5本)に分岐している。
【0033】
還り配管11fは、加熱された熱媒を蓄熱槽12側に排出するものである。分岐還り配管11g1〜11g3は、他端が還り配管11fに接続されて、各集熱器群11a〜11cからの熱媒を還り配管11fに液送するための配管である。
【0034】
詳細に第1分岐還り配管11g1は一端が第1集熱器群11aに接続され、他端が還り配管11fに接続されている。また、第2分岐還り往き配管11g2は一端が第2集熱器群11bに接続され、他端が還り配管11fに接続されると共に、第1分岐還り配管11g1と並列に接続されている。第3分岐還り往き配管11g3は一端が第3集熱器群11cに接続され、他端が還り配管11fに接続されると共に、第1及び第2分岐還り配管11g1,11g2と並列に接続されている。
【0035】
さらに、第1分岐還り配管11g1の他端は、還り配管11fの端部に接続されている。第3分岐還り配管11g3の他端は、他の分岐還り配管11g1,11g2よりも、手前側(すなわち蓄熱槽12に近い側)に接続されている。第2分岐還り配管11g2の他端は、還り配管11fのうち、中間地点(すなわち第1分岐還り配管11g1及び還り配管11fの接続点と、第3分岐還り配管11g3及び還り配管11fの接続点との間)に接続されている。
【0036】
また、第1集熱器群11aが複数(5つ)の集熱器11a1〜11a5を備えていることから、第1分岐還り配管11g1は、それぞれの集熱器11a1〜11a5から熱媒を並列的に受け入れるように一端側が複数本(5本)に分岐している。第2及び第3集熱器群11b,11cについても、それぞれ複数(5つ)の集熱器11b1〜11b5,11c1〜11c5を備えていることから、第2及び第3分岐還り配管11g2,11g3は、それぞれの集熱器11b1〜11b5,11c1〜11c5から熱媒を並列的に受け入れるように一端側が複数本(5本)に分岐している。
【0037】
このような構成であるため、複数の集熱器群11a〜11cは、互いに熱媒を並列に導入して加熱することとなる。
【0038】
なお、太陽熱集熱装置11の構成は図2に示したものに限られず、例えばダイレクトリターン方式となるように配管接続されていてもよいし、真空管式の集熱器によって構成されてもよい。特に、太陽熱集熱装置11が真空管式のものである場合、複数の集熱器11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5は真空管式集熱管によって構成されることはいうまでもない。
【0039】
さらに、複数の集熱器群11a〜11cは、集熱器11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5をそれぞれ複数備えているが、これに限らず、1つだけ備える構成であってもよい。
【0040】
以上のような太陽熱集熱装置11において、熱媒温度は集熱温度センサ15の取り付け位置によって異なって検出されてしまう傾向がある。さらに、太陽熱集熱装置11は、集熱器表面の一部のみが汚れている場合には、集熱温度センサ15の取り付け位置に拘わらず、複数の集熱器群11a〜11cで熱媒温度に差が生じてしまうことがある。
【0041】
そこで、本実施形態において複数の集熱装置温度センサ15は、図2に示すように各集熱器群11a〜11cに対して設けられている。具体的に第1集熱装置温度センサ15aは、第1集熱器群11aに対して設けられる第1還り分岐配管11g1の出口側に設けられ、第2集熱装置温度センサ15bは、第2集熱器群11bに対して設けられる第2還り分岐配管11g2の出口側に設けられ、第3集熱装置温度センサ15cは、第3集熱器群11cに対して設けられる第3還り分岐配管11g3の出口側に設けられている。
【0042】
なお、複数の集熱装置温度センサ15は、各集熱器群11a〜11cに対して1つずつ設ける場合に限らず、各集熱器群11a〜11cに対して2つずつなど設けられてもよいし、集熱器群11a〜11c毎に取り付けられるセンサ数は異なっていてもよい。
【0043】
さらに、図2に示す例において、複数の集熱装置温度センサ15は、全ての集熱器群11a〜11cに対して設けられているが、これに限らず、2以上の集熱器群(例えば第1及び第2集熱器群11a,11b)に設けられていればよい。
【0044】
加えて、複数の集熱装置温度センサ15は、それぞれ各集熱器群11a〜11cの同位置に設けられることが好ましい。すなわち、図2に示す例では、複数の集熱装置温度センサ15は、それぞれ還り分岐配管11g1〜11g3の出口側に設けられており、同位置に設けられている。このように同位置に設けることにより、後に説明する処理において、より正確に集熱ポンプ14の運転を行うことができるからである。
【0045】
図3は、本実施形態に係る制御盤17によるポンプ制御を示す図である。まず、集熱ポンプ14が停止しているものとする。この状態において、制御盤17は、複数の集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度それぞれと、蓄熱層温度センサ16により検出された熱媒の温度(蓄熱温度)との差温を算出する。次いで、制御盤17は、差温の平均値を算出する。
【0046】
そして、平均値がT1℃(第1所定値)以上であると判断すると、制御盤17集熱ポンプ14を動作させる。また、集熱ポンプ14の動作中において、差温がT1℃よりも低いT2℃(第2所定値)以下であると判断した場合、制御盤17は集熱ポンプ14を停止させる。
【0047】
以上が制御盤17によるポンプ制御の基本動作となる。さらに、本実施形態において制御盤17は、以下の制御を実行する。
【0048】
図4は、本実施形態に係る蓄熱システム1の制御方法を示すフローチャートである。なお、図4に示す処理は、蓄熱システム1が停止するまで、繰り返し実行される。
【0049】
まず、集熱ポンプ14が停止しているとする。この状態において、図4に示すように制御盤17は、差温の平均値を算出して、平均値がT1℃以上であるかを判断する(S1)。平均値がT1℃以上であると判断した場合(S1:YES)、制御盤17は、集熱ポンプ14の運転を開始させる(S2)。
【0050】
次いで、制御盤17は、複数の集熱装置温度センサ15それぞれの検出温度を参照し、複数の第1温度センサ15のうちの1つにより検出された熱媒の温度と、1つを除く他の第1温度センサ15により検出された熱媒の温度の平均値とが規定値以上の差を有するかを判断する(S3)。より詳細には制御盤17は、第1集熱装置温度センサ15aの検出温度と、第2及び第3集熱装置温度センサ15b,15cの検出温度との差が規定値以上の差を有するかを判断し、次いで、第2集熱装置温度センサ15bの検出温度と、第1及び第3集熱装置温度センサ15a,15cの検出温度との差が規定値以上の差を有するかを判断し、次に、第3集熱装置温度センサ15cの検出温度と、第1及び第2集熱装置温度センサ15a,15bの検出温度との差が規定値以上の差を有するかを判断する。規定値以上の差を有する集熱装置温度センサ15がないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS5に移行する。
【0051】
一方、規定値以上の差を有する集熱装置温度センサ15があると判断した場合(S3:YES)、制御盤17は、規定値以上の差を有する集熱装置温度センサ15又は当該センサ15が設けられる集熱器群11a〜11cについて異常状態であると判断し、その旨の表示や音声を出力する(S4)。ここでの異常は、例えば、規定値以上の差を有する集熱装置温度センサ15の故障、太陽熱集熱装置11の集熱器表面における汚れ、流路の詰まりなどが挙げられる。また、集熱器11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5が真空管式集熱器である場合には、真空管の破損が挙げられる。出力後、処理はステップS5に移行する。
【0052】
ステップS5において、制御盤17は、差温の平均値を算出して、平均値がT2℃以下であるかを判断する(S5)。平均値がT2℃以下であると判断した場合(S5:YES)、制御盤17は、集熱ポンプ14の運転を停止させる(S6)。そして、図4に示す処理はステップS1に移行する。一方、平均値がT2℃以下でないと判断した場合(S5:NO)、処理はステップS2に移行する。
【0053】
ところで、平均値がT1℃以上でないと判断した場合(S1:NO)、制御盤17は、複数の集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度それぞれと、蓄熱槽温度センサ16により検出された熱媒の温度との差温のうち、一部がT1℃以上となっているかを判断する(S7)。
【0054】
全てがT1℃以上となっていないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、一部がT1℃以上となっていると判断した場合(S7:YES)、制御盤17は、集熱ポンプ14の運転を開始させる(S8)。これにより、熱媒を撹拌させ、たとえポンプ停止状態において太陽熱集熱装置11内の熱媒温度に差があったとしても、撹拌によって太陽熱集熱装置11内の熱媒温度は平均化することとなり、集熱装置温度センサ15の取付位置が影響してステップS2における集熱ポンプ14の運転が行われなくなってしまう事態を防止する。
【0055】
次いで、制御盤17は、運転開始からt分経過したかを判断する(S9)。t分経過していないと判断した場合(S9:NO)、処理はステップS8に移行する。一方、t分経過したと判断した場合(S9:YES)、制御盤17は、熱媒の撹拌が完了したと判断し、集熱ポンプ14の運転を停止させる(S6)。そして、図4に示す処理はステップS1に移行する。
【0056】
このようにして、本実施形態に係る蓄熱システム1によれば、複数の集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度それぞれと蓄熱槽温度センサ16により検出された蓄熱温度との差温のうち、一部がT1℃以上となる場合に集熱ポンプ14をt分間運転させる。このため、熱媒は集熱ポンプ14の運転によって撹拌されることとなる。これにより、たとえ集熱ポンプ14の停止状態において太陽熱集熱装置11内の熱媒温度に差があったとしても、撹拌によって太陽熱集熱装置11内の熱媒温度は平均化することとなり、集熱装置温度センサ15の取付位置が影響して本来ならば集熱できるにもかかわらず集熱しないといった事態の発生頻度を抑えることができる。従って、集熱効率の向上を図ることができる。
【0057】
また、1つの集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度と他の集熱装置温度センサ15により検出された熱媒の温度の平均値とが規定値以上の差を有する場合、その1つの集熱装置温度センサ15又は当該集熱装置温度センサ15が設けられた集熱器群11a〜11cについて、異常状態であると判断する。ここで、平均値に対して規定値以上の差を有する場合とは、センサ故障、太陽熱集熱装置11の集熱器表面における汚れ、流路の詰まりなどが挙げられる。また、集熱器11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5が真空管式集熱器である場合には、真空管の破損が挙げられる。よって、このような検出値を示した場合に、異常状態であると判断することができる。
【0058】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…太陽熱利用システム
11…太陽熱集熱装置(集熱装置)
11a〜11c…複数の集熱器群
11a1〜11a5,11b1〜11b5,11c1〜11c5…集熱器
11d…往き配管
11e1〜11e3…分岐往き配管
11f…還り配管
11g1〜11g3…還り分岐配管
12…蓄熱槽
13…集熱流路
14…集熱ポンプ(ポンプ)
15…複数の集熱装置温度センサ(複数の第1温度センサ)
16…蓄熱槽温度センサ(第2温度センサ)
17…制御盤(制御手段)
図1
図2
図3
図4