(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、散水の妨げとなる天井の梁など障害物等がある部分にヘッドを設置する場合には、感熱部を備えたヘッド接続用の放水継手を用いるようにしている。
【0003】
図5は従来の放水継手の一例を示す。
図5に示すように、放水継手100は、1次側給水接続口102、2次側ヘッド接続口103、感熱部接続口104を有する。
放水継手100内には、弁部107、隔壁108、弁口109、弁体110を設けている。
【0004】
感熱部接続口104には火災時の熱により分解する感熱ヘッド112が接続され、弁体110を弁口109を塞いだ状態で支持している。火災発生時には、放水継手100の感熱ヘッド112が熱分解し、弁体110の支持がなくなると、弁体110の移動により弁口109が開口し、2次側ヘッド接続口103より消火水を流出して,配管接続した図示しない消火用ヘッドから放出する。
【0005】
しかしながら、このような放水継手にあっては、感熱ヘッド112と2次側ヘッド接続口103に配管接続される消火用ヘッドとの中心軸線の位置が異なっており、感熱ヘッド112と消火用ヘッドの防護半径が同一である場合は、感熱ヘッド112の中心軸線の位置に消火用ヘッドの中心軸線を一致させるための配管を必要とし、2次側ヘッド接続口103からの配管が複雑となって施工が困難な場合がある。
【0006】
この問題は
図6に示す放水継手の構造により解消可能である。
図6に示すように、
放水継手120は、感熱部接続口(感熱ポート)126を天井方向に向けて設置すれば、1次側給水接続口124は水平方向を向き、2次側ヘッド接続口(2次ポート)123は床面方向を向く様に構成しており、2次側ヘッド接続口123に配管接続される図示しない消火用ヘッドと感熱ヘッド122の中心軸線の位置を一致させることができる。
【0007】
放水継手120内には、アングル状弁部127を設けている。アングル状弁部127は、アングル状弁体130と係止部131を備え、感熱ヘッド122によってピストン132及び係止部131を介してアングル状弁体130を弁口128を塞いだ状態で支持している。
【0008】
火災発生時には、感熱ヘッド122の熱分解によりアングル状弁体130の支持がなくなると、消火水の給水圧によりピストン132を押し上げながら軸止部129を軸として回動し、弁口128が開口して2次側ヘッド接続口123から消火水が流出し、配管を介して接続した消火用ヘッドから放出する。また、アングル状弁体130は、感熱部接続口126側を閉鎖し、感熱ヘッド122から水が流出することを防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、
図6に示した従来の放水継手にあっては、感熱ヘッド122によってピストン132及び係止部131を介してアングル状弁体130を弁口128に押圧して閉鎖した所謂バタフライ弁構造であり、しかもアングル状弁体130を軸止部129で回動自在に支持した片持ち支持構造としているため、放水継手の設置工事が済んで最初に放水継手120の1次側配管に加圧消火用水を急速充水する場合、アングル状弁体130が消火用水の充水による圧力上昇を受けて動き、2次側ヘッド接続口123から一時的に消火用水を誤放水してしまう問題がある。
【0011】
また、火災発生時に開放したアングル状弁体130が感熱部接続口126側を閉鎖して感熱ヘッド122からの流出を防止しているが、感熱部接続口126側にアングル状弁体130の回動を受けて流路を閉鎖するような弁座構造は設けておらず、感熱部接続口126側から流出を抑制できるが閉鎖は困難であり、熱分解した感熱ヘッド
122から不必要に消火用水が流出する問題がある。
【0012】
本発明は、加圧消火用水を急速充水しても弁体が開かないようにして誤放水を確実に防止すると共に火災による作動した場合の感熱ヘッド側からの流出も確実に防止する放水継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は放水継手に於いて、
加圧消火用水
が供給
される1次ポート、散水用ヘッドが接続される2次ポート及び感熱ポートを備え、感熱ポート
及び2次ポートを
通る共通軸心線
が略垂直方向に配置
されると共に1次ポートの軸心線
が共通軸心線に略直交して配置
され、1次ポートと2次ポート
とを仕切る隔壁に共通軸心線と同軸に弁穴
が形成
された継手本体と、
感熱ポートに装着されて
当該感熱ポートを閉鎖し、熱気流を受けた際に分解して感熱ポートを開放する感熱分解部と、
共通軸心線と同軸に移動自在に配置され、
一端に弁穴を開閉する弁体部
が形成
されたジスク部材と、
を
備え、
感熱ポートが閉鎖された状態では、弁体部に作用する加圧消火用水の圧力により、ジスク部材が弁穴を開放させる方向に付勢されるが、ジスク部材の他端が感熱分解部に当接して移動を規制されて弁穴の閉鎖状態を維持し、
感熱分解部が熱気流を受けて分解して感熱ポートが開放された場合に、ジスク部材の移動により
、弁体部が弁穴を開放して1次ポートと2次ポート
との間を連通すると共に、弁体部
が感熱ポートの閉鎖部位に当接して
停止する構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジスク部材は一端に弁体部を形成し、他端を感熱ポートに接続した感熱分解部の閉鎖部位に当接して閉鎖する簡単な構造であり、加圧された消火用水を急速充水した場合、2次ポート側からの誤放水を確実に防止できる。
【0015】
また、火災による熱気流を受けて感熱分解部が分解して感熱ポートが開放された場合に、ジスク部材の移動により、ジスク部材の弁体部が弁穴を開放して1次ポートと2次ポートの間を連通すると共に、弁体部を感熱ポートの閉鎖部位に当接して閉鎖するため、熱分解により開放した感熱ポートからの不必要な消火用水の流出を確実に防止可能とする。
【0016】
また、継手本体は、感熱ポートを上向きに配置した場合、2次ポートは下向きに配置され、これに直交する横方向に1次ポートが位置することとなり、2次ポートに配管を介して放水ヘッドを接続した場合、感熱ポートに接続した感熱分解部と2次ポートに配管を介して接続した放水ヘッドの水平面で見た中心位置が一致し、放水ヘッドを直線配管で簡単に接続するだけで、感熱分解部と放水ヘッドの防護半径が同じ場合に、両者の防護区画を簡単に一致させることを可能とする。
【0017】
また、閉鎖型スプリンクラーヘッドにおける感熱部の応答性能が得られる範囲(感熱範囲)とヘッドの防護性能が得られる範囲(散水範囲)は互いに依存関係にあるため、感熱部とヘッドの軸心線がずれることによって両者を包含する防護区画が減少することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[放水継手の第1実施形態]
(放水継手の構成)
図1は本発明による放水継手の第1実施形態を示した断面図である。
図1に示すように、放水継手10の継手本体12は左側に1次ポート14を形成し、1次ポート14の軸心線Aと直交する共通軸心線Bと同軸に下向きに2次ポート16を形成すると共に上向きに感熱ポート18を形成して横T字形の継手としている。1次ポート14に対し2次ポート16と感熱ポート18は隔壁22で分離し、また、感熱ポート18と2次ポート16は内部流路15により直接連通している。
【0020】
1次ポート14には消火ポンプ設備からの給水配管11を接続し、加圧された消火用水の供給を受けるようにしている。2次ポート16にはヘッド配管21を介して散水用ヘッドであるヘッド20を接続している。ヘッド20は開放型でも閉鎖型でも良い。更に感熱ポート18には感熱分解部28をねじ込み固定している。
【0021】
感熱分解部28は、ボディ30、フレーム32、スライダ34、ボール36、バランサ38、感熱板40、断熱材42、ヒューズ(低温溶融半田)44及びピストン46の組み立て構造を備え、火災による熱気流を受けてヒューズ44が溶融すると、組付け荷重による固定維持が解除され、スライダ34、ボール36、バランサ38、感熱板40、断熱材42、ヒューズ44及びピストン46が分解して飛散脱落し、感熱ポート18を開放状態とする。
【0022】
継手本体12の1次ポート14と2次ポート16を仕切る内部には隔壁22が形成され、感熱ポート18と2次ポート16を通る共通軸心線Bが通る隔壁22の上側の位置に弁穴24を形成している。
【0023】
弁穴24およびこれと同軸に配置された感熱ポート18側のボディ30の通し穴30aに対してはジスク部材48を軸方向に摺動自在に組み込んでいる。ジスク部材48は下側の一端に弁体部50を形成し、その下側にシート26を配置して弁穴24の段部にシート26を当接して弁穴24を閉鎖している。またジスク部材48の上端には嵌合受け部52を形成し、ボディ30の通し穴30aを介してピストン46の下側を嵌合し、組立荷重による押圧力を受けて
弁体部50による弁穴
24の閉鎖を維持している。
【0024】
ここで、2次ポート16と感熱ポート18は共通軸心線Bに中心が一致する同軸配置となるように継手本体12に形成しており、このため感熱ポート18に装着した感熱分解部28の防護範囲(感熱分解部28を中心とした所定半径の範囲)と2次ポート16にヘッド配管21を介して接続したヘッド20の防護範囲(ヘッド20を中心とした所定半径の範囲)が同じ場合、直線的なヘッド配管21によりヘッド20を接続するという簡単な配管構成により、両者の防護範囲を一致させることができる。
【0025】
(急速充水に対する動作)
次に
図1の実施形態に加圧消火用水を急速充水した際の動作を説明する。
図1に示した放水継手10の設置工事が完了すると、消火ポンプ設備を起動して配管に加圧消火用水を供給し、このとき本実施形態の放水継手10については、消火用水を急速充水しても開放型ヘッドから誤放水を起こすことがない。
【0026】
図1において、放水継手10の1次ポート14に給水配管
11から加圧消火用水が急速充水されると、消火用水はジスク部材48の下端面を加圧し、急速充水による加圧を受けてジスク部材48は上方に押される。
【0027】
しかしながら、ジスク部材48の先端の嵌合受け部52は感熱ポート18を閉鎖している感熱分解部28のピストン46に当接して移動が規制されており、消火用水の急速充水でジスク部材48は移動しないため、弁穴24は開放されずに閉鎖状態を維持している。
【0028】
このため、本実施形態の放水継手10に加圧消火用水を急速充水しても、弁開放状態となることはなく、2次ポート16のヘッド配管21に接続しているヘッド20から誤放水してしまうことを確実に防止できる。
【0029】
(火災による放水動作)
図2は
図1の状態で火災による熱気流を受けた感熱分解部が分解して放水する動作を示した説明図である。
図2に示すように、通常の監視状態で火災による熱気流を感熱分解部28で受けると、ヒューズ44が溶融してピストン46による組立維持が解除され、スライダ34、ボール36、バランサ38、感熱板40、断熱材42、ヒューズ44及びピストン46が分解して飛散脱落し、感熱ポート18を開放状態とする。
【0030】
感熱ポート18が開放されると、ジスク部材48は1次ポート14側の加圧充水の力を受けて上方側に移動し、これによって弁穴24を開いて1次ポート14から弁穴24及び内部流路15を介して2次ポート16に消火用水を流し、ヘッド配管21により接続しているヘッド20から放水させる。
【0031】
また、1次側からの加圧消火用水の力を受けて移動したジスク部材48は、弁体部50の上端が感熱ポート18にねじ込み固定しているボディ30に形成した通し穴
30aの下側開口に当接して閉鎖し、感熱ポート18から消火用水が漏れるのを阻止する。
【0032】
[放水継手の第2実施形態]
図3は本発明による放水継手の第2実施形態を示した断面図であり、本実施形態にあっては、急速充水によりジスク部材に加わる力が直接に感熱分解部に加わらないようにしたことを特徴とする。
【0033】
図3に示すように、放水継手10の継手本体12は左側に1次ポート14を形成し、1次ポート
14の軸心線Aと直交する共通軸心線Bと同軸に下向きに2次ポート16を形成すると共に上向きに感熱ポート18を形成し、感熱ポート18と2次ポート16は内部流路15により直接連通している。
【0034】
1次ポート14には消火ポンプ設備からの給水配管11を接続し、2次ポート16にはヘッド配管21を介して散水用ヘッドであるヘッド20を接続している。
【0035】
感熱分解部28は、
図1に示したボディ30、フレーム32、スライダ34、ボール36、バランサ38、感熱板40、断熱材42、ヒューズ(低温溶融半田)44、ピストン46に加え、更にプランジャ56を設けた組み立て構造を備え、火災による熱気流を受けてヒューズ44が溶融すると、組付け荷重による固定維持が解除され、スライダ34、ボール36、バランサ38、感熱板40、断熱材42、ヒューズ44、ピストン46及びプランジャ56が分解して飛散脱落し、感熱ポート18を開放状態とする。
【0036】
継手本体12の1次ポート14と2次ポート16を仕切る内部には隔壁22が形成され、感熱ポート18と2次ポート16を通る共通軸心線Bが通る隔壁22の上側の位置に弁穴24を形成している。
【0037】
弁穴24およびこれと同軸に配置された感熱ポート18側のボディ30の通し穴30aに対してはジスク部材48を軸方向に摺動自在に組み込んでいる。
【0038】
ジスク部材48は下側の一端に弁体部50を形成し、
弁体部50は大径部に続いて小径部を形成した段付形状であり、小径部にOリング58を装着して弁穴24に挿入して閉鎖している。
【0039】
またジスク部材48の上端には当接部50aを形成し、ボディ30の通し穴30aに設けたOリング60を通して先端をプランジャ56に対し隙間を開けて相対配置している。
【0040】
ジスク部材48の弁体部50とボディ30の間にはコイル状のばね62を組み込み、ジスク部材48を図示の初期位置に保持している。
【0041】
ジスク部材48はばね62による初期位置で弁体部
50のOリング58を弁穴24の中に位置し、1次ポート14と2次ポート16を切り離した閉鎖状態としている。1次ポート14と2次ポート16を連通して弁を開放するために必要なジスク部材48の移動量は、Oリング58の中心から弁穴24の2次ポート16側の開口までのリフト量L1となる。即ち、図示の初期位置からジスク部材48がリフト量L1だけ上方に移動すると、弁穴24が開放し、1次ポート14と2次ポート16を連通する弁開放状態となる。
【0042】
一方、ジスク部材48の先端となる当接部50aは図示の初期位置で感熱分解部28のプランジャ56に対し所定の隙間を空けて相対しており、当接部50aが感熱分解部28のプランジャ56に当接するためには、両者の間隔となるリフト量L2だけ上方に移動する必要がある。
【0043】
本実施形態にあっては、ジスク部材48の弁体部50を開放するために必要なリフト量L1と、当接部50aが感熱分解部28のプランジャ56に当接するために必要なリフト量L2とについては、リフト量L1に対しリフト量L2を小さくするように、即ち
L1>L2
となるように設定している。
【0044】
このため、給水配管11から加圧消火用水の急速充水を受けてジスク部材48が移動しても、当接部50aが感熱分解部28のプランジャ56に当接して移動を規制されたリフト量L2だけ移動するだけであり、弁体部50を開放するために必要なリフト量L1を超えないことから、ジスク部材48が上方に動いても弁体部50は開くことがない。したがって、本実施形態の放水継手10に加圧消火用水を急速充水しても、弁開放状態となることはなく、2次ポート
16にヘッド配管
21により接続しているヘッド20から誤放水してしまうことを確実に防止できる。
【0045】
また、放水継手
10の1次側に対する急速充水が完了すると、ジスク部材48の下端面に加わった圧力は安定し、これに伴いばね62によりジスク部材48は初期位置側に押し戻され、先端の当接部
50aがプランジャ56から離れるか、離れなくともプランジャ56に対する押圧力が低下する。
【0046】
このためジスク部材48を開放方向に常時押圧している訳ではないので、感熱分解部28を破壊するような悪影響を及ぼすことがない。
【0047】
一方、感熱分解部28が熱気流を受けて分解して開放されると、ジスク部材48は開放した感熱ポート18の開口部を通って外側に移動し、これに伴い弁体部50はリフト量L1を超えて下方へ移動することで弁穴24を開放し、1次ポート14と2次ポート16を連通させることができる。
【0048】
また、ジスク部材48が上方へ移動しても、ボディ30の通し穴30aに設けたOリング60によるシールが維持され、感熱ポート18から消火用水の漏れを阻止する。
【0049】
[放水継手の第3実施形態]
図4は本発明による放水継手の第3実施形態を示した断面図であり、本実施形態にあっては、感熱分解部にグラスバルブを用いたことを特徴とする。
【0050】
図4に示すように、放水継手10の継手本体12は、1次ポート14、2次ポート16、感熱ポート18を備え、1次ポート14には給水配管11を接続し、2次ポート16にヘッド配管21を介して散水用ヘッドであるヘッド20を接続しており、この点は
図1の実施形態と同様である。
【0051】
感熱分解部28は支持フレーム
63の内部にグラスバルブ64を配置し、グラスバルブ64は感熱ポート18側に位置するジスク部材48の先端の嵌合受け部52により一端を支持し、反対側の他端は支持フレーム
63にインプレスねじ66をねじ込んで支持している。
【0052】
グラスバルブ64は、内部にアルコールなどの感熱膨張溶液を充填しており、熱気流を受けて所定温度に上昇すると熱膨張により破壊され、ジスク部材48の保持を解除して感熱ポート18を開放状態とする。
【0053】
これ以外の構造及び動作は、
図1の実施形態と同様であることから、説明を省略する。
【0054】
[本発明の変形]
図1及び
図4の実施形態にあっては、ジスク部材
48の先端側を、感熱分解部28に設けたボディ30の通し穴30aに貫通しているが、通し穴30aの中に、
図3の実施形態と同様、Oリング60を配置してシールすることで、弁部材50の開放に伴う感熱ポート18からの消火用水を漏れ出しを確実に防止することを可能とする。
【0055】
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。