(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232263
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】発熱機器の排熱構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20171106BHJP
G07G 1/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H05K7/20 G
G07G1/00 301Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-235645(P2013-235645)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2015-95612(P2015-95612A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋田 基晴
(72)【発明者】
【氏名】村岡 至紘
(72)【発明者】
【氏名】藤井 厚志
【審査官】
石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−131649(JP,A)
【文献】
特開2012−253191(JP,A)
【文献】
特開2010−086450(JP,A)
【文献】
特開2011−081751(JP,A)
【文献】
特開平10−247793(JP,A)
【文献】
米国特許第06400567(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
G07G 1/00−5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な予め定める設置面上に設置されるハウジングであって、発熱を伴う電気部品または電子部品である複数の発熱部品が収容される内部空間を有し、外気を取込むための吸気孔と、該ハウジングが前記予め定める設置面上に設置された状態で、前記吸気孔よりも上方に配設される排気孔とが形成されるハウジングと、
前記ハウジング内に配設され、前記内部空間の前記吸気孔の高さ位置よりも下方の下層空間と、前記排気孔の高さ位置よりも上方の上層空間との間の中層空間を、前記発熱部品が配置される収容空間と、前記発熱部品が配置されない未収容空間とに仕切る仕切部材であって、前記上層空間に近接する部分に、前記収容空間と前記未収容空間とを連通する透孔が形成される仕切部材と、
前記仕切部材に設けられ、前記収容空間内の発熱部品の発熱によって生じた上昇気流を、前記透孔を介して前記未収容空間に導くダクトと、を含み、
前記複数の発熱部品は、前記上昇気流を生じる前記ダクト内の発熱部品と、前記ダクト外に設けられ、前記ダクトを経由しない上昇気流を生じる発熱部品とを含む
ことを特徴とする発熱機器の排熱構造。
【請求項2】
前記ダクトは、前記仕切部材の前記透孔よりも上方の高さ位置で、該仕切部材から前記収容空間に突出する天板部を有することを特徴とする請求項1記載の発熱機器の排熱構造。
【請求項3】
前記ダクトは、前記仕切部材の前記透孔よりも上方の高さ位置で、該仕切部材から前記収容空間に突出する天板部と、前記天板部の周縁部から下方に延びる周壁部とを有することを特徴とする請求項1記載の発熱機器の排熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給油所などに備えられる販売時点情報管理システム(Point of Sales;略称POS)などのオプション機器、たとえば非接触ICカードリーダライタ、磁気カードリーダライタ、プリペイドカードリーダライタ、二次元バーコードリーダおよび小型釣銭機などを選択的に搭載することができる発熱機器の排熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、給油所用販売時点情報管理システム(以下、「POS」と略記する)は、顧客の要望に応じて、非接触ICカードリーダライタ、磁気カードリーダライタ、プリペイドカードリーダ、二次元バーコードリーダおよび小型釣銭機などの各種のオプション機器を取付ける必要がある。
【0003】
このようなオプション機器を搭載するに際して、オプション機器毎に個別の電源を装置本体内に搭載しなければならない場合があり、装置本体に当初から搭載されている電源部のほかに、追加されるオプション機器の電源部が増加し、このような電源部が追加されるたびに発熱量が多くなるため、装置本体の空気の対流だけによって放熱している発熱機器には、装置本体内の温度を下げる効果が次第に低下し、充分な排熱を行うことができないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決する従来技術は、たとえば特許文献1に開示されている。この従来技術では、発熱機器としての加熱調理器の本体外郭内に設けられる加熱コイルなどの熱源の発熱によって、本体外郭内で温度の上昇した空気を外部へ排出して排熱するために、本体外郭内に設けられるファンと、このファンが設けられるファンケースと、ファンケースの上部に設けられるダクトとを備え、本体外郭の上部には排気口が設けられ、本体外郭には、吸気口が設けられている。
【0005】
このような加熱調理器において、ファンが駆動されると、吸引口から外気が吸引され、ファンによる送風によって本体外郭内に設けられる回路基板に実装された発熱部品の発熱によって温度が上昇した内部の空気を、加熱コイルによって温度が上昇した上部の空気とともに、排気口から外部へ放出し、またダクトによってファンの送風の一部を天面操作部に設けられる操作基板に導いて、その操作基板に実装される発熱部品を冷却するように構成されている。
【0006】
他の従来技術は、たとえば特許文献2に開示されている。この従来技術では、発熱機器としての画像形成装置の排熱構造が提案されている。この画像形成装置は、記録媒体を加熱して該記録媒体に画像を定着する定着装置を備え、外部から空気を吸入するための吸入口と、吸入口から吸入された空気を定着装置の周囲に配設された装置へ案内する仕切部材としての熱遮蔽部材とを有し、定着装置と熱遮蔽部材との間に該定着装置からの熱によって温度が上昇した空気を上方へ導く流路を形成し、該定着装置と前記熱遮蔽部材を介して対峙する光学ユニットへの熱を遮断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−3372号公報
【特許文献2】特開2012−14102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の特許文献1,2に開示される各従来技術では、オプション機器として他の装置を搭載したとき、該他の装置の電源部などの発熱を伴う発熱部品の発熱によって温度が上昇した空気は、もとから搭載されている発熱部品の熱によって温度が上昇した空気と混合し、装置の内部空間において対流しながら装置の内部空間を循環し、装置上部の排気口から外部へ放出される。したがって装置の内部空間の温度が上昇し、もとから装備されている電気部品および電子部品などの既設部品に大きな熱負荷を与え、耐熱温度を超えてしまうおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、熱源となる発熱部品が新設部品として追加されても、装備される既設部品の熱負荷が大きくなることを抑制することができる発熱機器の排熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、水平な予め定める設置面上に設置されるハウジングであって、発熱を伴う電気部品または電子部品である複数の発熱部品が収容される内部空間を有し、外気を取込むための吸気孔と、該ハウジングが前記予め定める設置面上に設置された状態で、前記吸気孔よりも上方に配設される排気孔とが形成されるハウジングと、
前記ハウジング内に配設され、前記内部空間の前記吸気孔の高さ位置よりも下方の下層空間と、前記排気孔の高さ位置よりも上方の上層空間との間の中層空間を、前記発熱部品が配置される収容空間と、前記発熱部品が配置されない未収容空間とに仕切る仕切部材であって、前記上層空間に近接する部分に、前記収容空間と前記未収容空間とを連通する透孔が形成される仕切部材と、
前記仕切部材に設けられ、前記収容空間内の発熱部品の発熱によって生じた上昇気流を、前記透孔を介して前記未収容空間に導くダクトと、を含
み、
前記複数の発熱部品は、前記上昇気流を生じる前記ダクト内の発熱部品と、前記ダクト外に設けられ、前記ダクトを経由しない上昇気流を生じる発熱部品とを含む
ことを特徴とする発熱機器の排熱構造である。
【0011】
また本発明は、前記ダクトは、前記仕切部材の前記透孔よりも上方の高さ位置で、該仕切部材から前記収容空間に突出する天板部を有することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記ダクトは、前記仕切部材の前記透孔よりも上方の高さ位置で、該仕切部材から前記収容空間に突出する天板部と、前記天板部の周縁部から下方に延びる周壁部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハウジング内の内部空間が仕切部材によって発熱部品が収容される収容空間と発熱部品が配置されない未収容空間とに仕切られ、この仕切部材には透孔が形成されるとともにダクトが設けられ、収容空間内で発熱部品の発熱によって生じた上昇気流を前記透孔を介して未収容空間に導くように構成されるので、発熱部品の発熱に伴う収容空間内の温度上昇が抑制され、収容空間内に装備される各種の部品の熱負荷が増加することが防がれ、オプション機器の増設などに伴う熱源の増加に対して、容易に対処することができる。
【0014】
また本発明によれば、仕切部材の透孔よりも上方の高さ位置で収容空間に突出する天板部を有するので、発熱部品の発熱によって生じた上昇気流を天板部によって透孔へ導き、該上昇気流を収容空間から未収容空間へ確実に導いて、収容空間内の温度上昇を抑制することができる。
【0015】
また本発明によれば、ダクトが天板部と周壁部とを有するので、発熱部品の発熱によって生じた上昇気流が収容空間内に分散して流れ込むことが防がれ、より確実に透孔を介して未収容空間に導き、より確実に収容空間内の温度上昇を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の発熱機器の排熱構造を適用したPOSシステム1の操作端末装置2a,2bの構成を簡略化して示す断面図である。
【
図2】ダクト3が設けられた仕切部材4を示す斜視図である。
【
図3】ハウジング内の気流の変化を説明するための図であり、
図3(1)は一方の発熱部品M1の発熱によって生じた気流を示し、
図3(2)は2つの発熱部品M1,M2の発熱によって生じた気流を示し、
図3(3)は透孔20を有する仕切部材4にダクト7を設けた場合の気流を示す。
【
図4】本発明の第2実施形態の操作端末装置22を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の発熱機器の排熱構造を適用したPOSシステム1の操作端末装置2a,2bの構成を簡略化して示す断面図であり、
図2はダクト3が設けられた仕切部材4を示す斜視図である。ガソリンスタンドなどの給油所には、車両にガソリンおよび軽油などの燃料油を給油するための給油機が設置され、給油機による燃料油の販売および代金の支払いなどを管理するために、販売時点情報管理システム(Point of Sales;略称POS)が装備されている。
【0018】
このPOSシステム1は、排熱機器である操作端末装置2a,2bが前記給油機または該給油機に隣接して設置される外設機の予め定める設置面である棚5に背中合せにかつ水平に設置され、両側(
図1の左右方向)から入力操作を行うことができるように構成されている。
【0019】
このような操作端末装置2a,2b(以下、総称する場合には、添え字a,bは省略する)は、発熱を伴う電気部品または電子部品であるマイクロコンピュータ、電源ユニットなどの複数の発熱部品M1,M2が収容される内部空間Sを有するハウジング6と、ハウジング6内に配設される仕切部材4と、仕切部材4に設けられるダクト3とを含む。
【0020】
ハウジング6は、棚5に水平に配置される底板8、底板8の上方で該底板8と平行に配置される天板9、一対の側板10、前面板11および背面板12を有する。背面板12の下部、すなわち底板8寄りの部分には、内部空間Sに外気を取り込むための吸気孔13が形成される。背面板12の上部、すなわち天板9寄りの端部には排気孔14が形成される。排気孔14は、吸気孔13よりも上方に配設される。
【0021】
ハウジング6の内部空間Sは、吸気孔13の高さ位置、すなわち背面板12の吸気孔13に臨む内周面の最上位を含む仮想一平面よりも下方の下層空間S1と、排気孔14の高さ位置、すなわち背面板12の排気孔14を規定する内周面の最下位を含む水平な仮想一平面よりも上方の上層空間S2と、下層空間S1および上層空間S2の間の中層空間S3との3層に、気流の流れによって分けることができる。中層空間S3は、仕切部材4によって発熱部品M1,M2が配置される収容空間S3
Aと、発熱部品M1,M2が配置されない未収容空間S3
Bとに仕切られる。
【0022】
前記ダクト3は仕切部材4に対して垂直に配置される上壁部15、仕切部材4に垂直に配置される一対の端壁部16,17、および仕切部材4から離反した位置で水平に配置される側壁部18を有する。これらの上壁部15、各端壁部16,17および側壁部18は、矩形の板状体から成り、互いに直角に側縁部が連なって形成される。このようなダクト3は、仕切部材4の収容空間S3
Aに臨む一方の主面に、透孔20を覆うように一体的に、または接着剤などによって固定される。
【0023】
ダクト3が仕切部材4に固定された状態では、ダクト3の下方には、オプション機器の追加によって収容空間S3
Aに収容される電源装置などの発熱部品S2が基板21に実装された状態で配置される。
【0024】
発熱部品M2の発熱によって生じた上昇気流は、ダクト3によって案内され、透孔20を介して未収容空間S3
Bに導かれ、上層空間S2を流れる気流とともに、排気孔14から外部へ放出されるとともに、下方の吸気孔13から温度の低い外気が流れ込み、こうして一方の発熱部品M1の発熱によって生じた気流と、他方の発熱部品M2の発熱によって生じた気流とを個別に流下させ、他方の発熱部品M2の発熱によって生じた温度の上昇した空気が収容空間S3
A内で滞留することを防止し、内部温度の上昇を抑制して、各種の部品の温度負荷を低減することができる。
【0025】
図3は、ハウジング内の気流の変化を説明するための図であり、
図3(1)は一方の発熱部品M1の発熱によって生じた気流を示し、
図3(2)は2つの発熱部品M1,M2の発熱によって生じた気流を示し、
図3(3)は透孔20を有する仕切部材4にダクト3を設けた場合の気流を示す。なお、同図において、発熱部品M1,M2は模式的に示されている。
【0026】
操作端末装置2が標準装備で1つの発熱部品M1だけを備えている場合には、
図3(1)に示すように、発熱部品M1の発熱によって周囲の空気が温められると、収容空間S3
A内で自然対流が生じ、温度上昇した比重の低い空気は上層空間S2へ上昇して排気孔14から外部へ排出されるとともに、吸気孔13から外気が取り込まれ、このような自然対流によってハウジング6内の各種の部品は冷却され、耐熱温度以下に維持されている。
【0027】
このような操作端末装置2に、新たなオプション機器を追加し、発熱部品M2が増加すると、
図3(2)に示すように、一方の発熱部品M1の発熱による温度上昇に加えて他方の発熱部品M2の発熱による気流が生じて収容空間S3
A内の温度が上昇する。
【0028】
これに対して仕切部材4にダクト3を設けて発熱部品M2の発熱によって生じた気流を収容空間S3
Aから未収容空間S3
Bへ導くことによって、各発熱部品M1,M2によって生じた気流を
図3(3)に示すように、収容空間S3
A内で混じることなく、別経路を経て上層空間S2へ導き、排気孔14を経て外部へ排気することができる。これによって収容空間S3
A内の温度上昇を抑制し、収容空間S3
A内に装備される各種の部品への熱負荷の上昇を抑制することができる。
【0029】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態の操作端末装置22を示す断面図である。なお、前述の第1実施形態と対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明は省略する。本実施形態の操作端末装置22は、仕切部材24の素材をプレス加工などによって透孔25と同時にダクト26が形成される。このダクト26は、他方の発熱部品M2の上方で、収容空間S3
A側に斜め下方へ傾斜して突出する天板27と、天板27の下端に連なって下方へ延びる側板31と、透孔25に下方から臨み、未収容空間S3
B側に突出する案内板28とを含んで構成される。
【0030】
天板27と案内板28とは平行であってもよく、仕切部材24に対する角度θ1,θ2が異なるように構成されてもよい。天板27と仕切部材24との成す角度θ1は、30度以上90度以下に選ばれ、好ましくは30度以上60度以下に選ばれる。
【0031】
また案内板28と仕切部材24との成す角度θ2は5度以上90度以下に選ばれ、好ましくは15度以上45度以下に選ばれる。
【0032】
このような案内板28を設けることによって、発熱部品M2の発熱による上昇気流によって、仕切部材24の未収容空間S3
Bに臨む表面を含む仮想一平面と案内板28との間に挟まれた略三角柱状の空間29の圧力を、その周囲の圧力よりも低下させ、仕切部材24および側板31の下部に形成された開口40を介して、下層の温度の低い空気が未収容空間S3
B側へ引き込まれ、いわば積極的に上昇気流を発生させて、より確実に一方の発熱部品M1の発熱によって生じた気流と分離して排熱し、収容空間S3
Aに収容される各種の部品への熱負荷を軽減することができる。
【0033】
(第3実施形態)
本発明のさらに他の実施形態として、前述の透孔25の開口面積を、仕切部材24と側板31とによって外囲される未収容空間S3
Bの流路断面積よりも大きく形成してもよい。これによって未収容空間S3
B内における上昇気流の滞留が生じることを防止し、円滑に発熱部品M2の熱を透孔25から排出することができる。
【0034】
本発明は、上記の実施形態1,2のPOSシステム1に用いられる操作端末装置2a,2b;22に限るものではなく、その他の発熱機器、たとえば量販店などに設置される金銭登録機およびパーソナルコンピュータなどの強制排熱を要する発熱機器に好適に実施することができ、熱源の増加による各種部品への熱負荷を軽減することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 POSシステム
2a,2b;22 操作端末装置
3,7,26 ダクト
4,24 仕切部材
6 ハウジング
9,27 天板
10 側板
11 前面板
12 背面板
13 吸気孔
14 排気孔
20 透孔
28 案内板
29 空間
M1,M2 発熱部品
S 内部空間
S1 下層空間
S2 上層空間
S3 中層空間
S3
A 収容空間
S3
B 未収容空間