特許第6232270号(P6232270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232270光ファイバプリフォーム製造用に中空ガラス基材チューブの内面を活性化する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232270
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】光ファイバプリフォーム製造用に中空ガラス基材チューブの内面を活性化する方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/018 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   C03B37/018 B
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-252922(P2013-252922)
(22)【出願日】2013年12月6日
(65)【公開番号】特開2014-114209(P2014-114209A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】2009962
(32)【優先日】2012年12月11日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】507112468
【氏名又は名称】ドラカ・コムテツク・ベー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】イゴール ミリセビク
(72)【発明者】
【氏名】マテーウス ヤコブス ニコラース ファン ストラーレン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス アントーン ハルトサイカー
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−315349(JP,A)
【文献】 特開2009−013053(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0004404(US,A1)
【文献】 特開2003−012338(JP,A)
【文献】 特開2006−016299(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0284184(US,A1)
【文献】 特開昭58−190833(JP,A)
【文献】 米国特許第04493721(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00 − 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバプリフォームの製造用に中空ガラス基材チューブの内面を活性化する方法であって、
前記活性化は、蒸着プロセス開始前の前記中空ガラス基材チューブの前処理であり、
i)PCVDプロセスによって中空基材チューブの内面上に多数の活性化ガラス層を蒸着するステップであって、活性化ガラス層の厚さが最小で10マイクロメートル且つ最大で250マイクロメートルであるステップと、
ii)エッチングプロセスによってステップi)で蒸着された前記活性化ガラス層を少なくとも部分的に取り除くステップであって、凹凸のない滑らかな内面を有する中空基材チューブを形成するために、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも30%且つ最大で99%の範囲まで取り除かれるステップと、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
エッチングプロセスはエッチングガスを用いたプラズマエッチングであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッチングガスは、フッ素含有のエッチングガスであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エッチングガスは、CCl,CF,C,SF,FおよびSO,またはそれらの組み合わせで構成されるグループから選択され、且つ随意に、キャリアガスは、酸素(O),窒素(N),またはアルゴン(Ar)で構成されるグループから選択されることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
フッ素含有のエッチングガスは、少なくともOおよびC及び/又はSFの混合物であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
非ドープガラスフォーミングガスがステップi)のPCVDプロセスで用いられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ステップi)で蒸着された活性化ガラス層の厚さは、少なくとも25マイクロメートルであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップi)で蒸着された活性化ガラス層は、最大で125マイクロメートルであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも40%の範囲まで取り除かれることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が最大で100%の範囲まで取り除かれることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバプリフォーム製造用に中空ガラス基材チューブの内面を活性化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ製造方法の一つは、ガラスの多薄膜または多薄層(例えばガラス層)を(中空の)基材チューブの内面上に蒸着することを含む。実質的に、前記基材チューブは、コアロッドを形成するために崩壊される。コアロッドは、光ファイバが線引きされる光ファイバプリフォームを形成するために随意にスリーブまたはオーバークラッドされるものである。
【0003】
ガラス層は、ガラスフォーミングガス(例えばドープまたは非ドープ反応ガス)を一端から基材チューブの内部に導入することにより、基材チューブの内面上に形成される。ドープまたは非ドープガラス層は、基材チューブの内面上に蒸着される。ガスは、基材チューブの他端(すなわち基材チューブの排出側)から、随意に真空ポンプを用いて排出または除去される。真空ポンプは、基材チューブの内部に減圧を生じさせる効果を有する。
【0004】
PCVD(plasma chemical vapour deposition)プロセスの間にはプラズマが生成される。通常、マイクロ波発振器からのマイクロ波が導波路を介してアプリケータへ向けられる。アプリケータは、ガラス基材チューブを取り囲んでおり、高周波エネルギーをプラズマに結合する。さらに、アプリケータおよび基材チューブは、通常、蒸着プロセスの間に基材チューブの温度を900〜1300℃に維持するよう加熱炉で囲まれる。アプリケータ(ひいてはアプリケータが形成するプラズマ)は、基材チューブの長手方向において相互に移動する。アプリケータのストロークまたは通過ごとに、薄いガラス層が基材チューブの内面上に蒸着される。
【0005】
従って、アプリケータは、周囲の加熱炉の境界内で基材チューブの長さにわたって平行に移動する。このアプリケータの平行移動とともに、プラズマも同じ方向に移動する。アプリケータが基材チューブの一端の近くで加熱炉の内壁に到達すると、アプリケータの移動が反転し(この点が反転点である)、アプリケータは加熱炉の他方の内壁(もう一つの反転点)に向かって基材チューブの他端に移動する。アプリケータひいてはプラズマは、基材チューブの長さに沿って往復運動する。それぞれの往復運動は、「パス」または「ストローク」と呼ばれる。各パスごとに、ガラスの薄層が基材チューブの内面上に蒸着される。
【0006】
通常、プラズマは基材チューブの一部においてのみ発生する(例えばマイクロ波アプリケータにより囲まれた部分)。典型的には、マイクロ波アプリケータの寸法は、加熱炉および基材チューブのそれぞれの寸法よりも小さい。プラズマの位置でのみ、反応ガスが個体ガラスに変換され、基材チューブの内面に蒸着される。
【0007】
パスは、これらの薄膜の累積厚さ(すなわち蒸着物)を増大させ、残りの基材チューブの内径を減少させる。言い換えると、基材チューブ内部の空洞は、各パスごとに徐々に小さくなる。
【0008】
このプラズマは、基材チューブ内に供給されるガラスフォーミングガス(O、SiClおよび例えばドーパントガスGeClまたは他のガス)の反応を生じさせる。ガラスフォーミングガスの反応により、Si(シリコン)、O(酸素)および例えばドーパントGe(ゲルマニウム)を反応させて、基材チューブの内側に例えばGeドープSiOxの直接蒸着を生じさせることができる。
【0009】
蒸着が完了したとき、基材チューブは巨大なコアロッドに熱的に崩壊する。これは、最終のファイバにおけるドープシリカの量に対する非ドープシリカの量を増大させるために、光ファイバの線引き工程の前に、例えば、外部蒸着プロセスによってシリカを塗布するか、またはプリフォームロッドをいわゆるジャケットチューブ(またはスリーブ)(非ドープシリカから成る)中に設置することにより、随意に追加のガラス層で外部からコーティングすることができる。光ファイバプリフォームは、このようにして得られる。プリフォームの先端が加熱されて溶融した場合、薄いガラスファイバがロッドから引き出され、リールに巻かれる。その結果、前記光ファイバは、プリフォームのコア部分とクラッド部分に対応する相対的な寸法および屈折率のコア部分とクラッド部分を有する。ファイバは、例えば光通信信号の伝搬で用いる導波路としての機能を果たすことができる。
【0010】
注目すべきは、基材チューブを通じて流されるガラスフォーミングガスは他の成分を含んでもよいことである。C等のドーパントをガラスフォーミングガスに添加することで、シリカの屈折率値の低減がもたらされる。
【0011】
通信の目的での光ファイバの使用は、光ファイバが実質的に欠陥(例えばドーパントのパーセンテージの相違や、望ましくない断面楕円率など)が無いことを必要とする。なぜなら、光ファイバの長い長さを考えたとき、そのような欠陥は、伝送される信号の相当な減衰を引き起こす可能性があるからである。従って、蒸着PCVD層の品質が最終的にファイバの品質を決定するので、非常に均一且つ再現可能なPCVDプロセスを実現することが重要である。
【0012】
基材チューブの内壁に良好な初期ガラス層を付着するとともに、この初期ガラス蒸着層中での泡の形成を防止するために、プリフォーム製造業者は、蒸着プロセスを開始する前に、中空基材チューブの内部に前処理を施す必要がある。これは、プラズマ研磨段階またはプラズマエッチング段階とも呼ばれる。従って、通常、基材チューブ内でガラス層の蒸着を開始する前に、良好な付着を実現するため及び/又は基材チューブの出発ガラス物質中に存在する汚染からの望ましくない影響を防ぐために、初期基材チューブの内面は前処理または活性化される。この前処理または活性化は、通常、エッチングによって行われる。このエッチングは、通常、基材チューブを通じてエッチングガス−例えばフロン(C)および随意に酸素(O)などのキャリアガス−を流す間に、基材チューブ中でプラズマを往復させることにより実行される。このような処理は、基材チューブの内部からガラス物質をエッチ除去する。ガラスフォーミングガスとのガス混合においてフロンが使用されるとき、フロンからのフッ素が蒸着ガラス層中に組み込まれる。このような場合、フロンはエッチングガスとして機能しない。
【0013】
本発明者は、このような内部エッチング処理後の基材チューブの内面が、均一にエッチングされていないこと、すなわち、エッチ除去された物質量の大きな相違が、さまざまな半径位置及び/又は長手位置で存在していること、を見いだした。本発明者は、この不均一なエッチングは、基材チューブ(バッチ)間で異なる可能性がある基材チューブの選択的エッチングに起因するものであることを見いだした。
【0014】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、本発明者は、基材チューブの内面に材料不均一性があり、ある部分が他の部分よりも大きな範囲までエッチングされていると推測する。選択的エッチングは、前記光ファイバプリフォームを形成する後続のPCVDプロセスにおいて蒸着されるガラス中に局所的擾乱を生じさせるであろう。これらの局所的擾乱は、小さなくぼみまたは孔となって現れる可能性がある。この一様でないエッチングプロセスの影響は、中空基材チューブの内面の粗さを増大させるであろう。つまり、くぼみや孔が増大する。
【0015】
上記のようにこのような局所的擾乱は望ましくない。というのは、局所的擾乱が製造される光ファイバの品質を低下させる可能性があるからである。これは、基材チューブの初期表面が凹凸を有している場合に、ガラス層の蒸着が大抵の場合に初期粗さを増大するという事実のためである。本発明者は、基材チューブのエッチングによる従来の活性化ステップが実行されるとき、ガラスチューブの内部のくぼみが、その後に堆積されるガラス層中における液滴または突起の形成をもたらすことに気づいた。
【0016】
この現象のため、ガラス層の内部蒸着のプロセスでは、蒸着ガラス物質の量が増大すると、この初期粗さが最終生産物、すなわち光導波路に障害を引き起こす。これは、マルチモード光ファイバにとって特に厳しい。というのは、屈折率プロファイルも変更され、品質、すなわち均一の光学特性の劣化をもたらすからである。従来の活性化方法では、長手方向の所望の屈折率からの偏差が観測される。すなわち、屈折率が長手方向において安定しておらず、これは望ましくない。
【0017】
いくつかの特許文献がこの観点に関係している。
【0018】
欧州特許第2008987A1号は、中空ガラスチューブ内面のガラス層の蒸着方法に関し、この方法では、ガラス層の蒸着が中間ステップを実行することにより妨げられ、該中間ステップは、フッ素含有のエッチングガスを中空基材チューブ中に供給することを含む。この中間ステップは、ガラス蒸着領域の外側に堆積した煤、すなわちプラズマゾーンの外側に堆積した煤を除去する。この出願は、基材チューブの小部分におけるエッチングプロセスに関する。
【0019】
米国特許第4,493,721号は、光ファイバを製造する方法に関し、この方法では、実際の蒸着プロセスが開始される前に、基材チューブの内面がフッ素化物でエッチングされる。エッチングステップの後、最初のガラス層が蒸着される。
【0020】
特許第62021724A号は、ガラスチューブ中で生成されたプラズマ炎を用いたガラスチューブの内面の研磨方法に関する。
【0021】
極めて危険な物質であるフッ化水素酸を用いて中空基材チューブ内を洗浄することによりるエッチング方法は、環境と安全性の観点から望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、内面の凹凸の増加を引き起こさない基材チューブの内面の活性化方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、ガラス層中での泡の形成が最小限に低減される内部蒸着プロセスを用いて、光ファイバ用のプリフォームの製造方法を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、中空基材チューブの内側への初期ガラス層の付着が、蒸着されたガラス層におけるクラックの形成が最小限に低減されるようなものである内部蒸着プロセスを用いて、光ファイバ用のプリフォームの製造方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、中空基材チューブの内側の粗さがエッチングステップ実行後に実質的に増加しない内部蒸着プロセスを用いて、光ファイバ用のプリフォームの製造方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、出発の中空基材チューブの内面の粗さが、邪魔な凹凸を形成するガラス層が存在しないようなものである内部蒸着プロセスを用いて、光ファイバ用のプリフォームの製造方法を提供することである。
【0027】
このように、後で蒸着されるガラス層の均一性を高めるために内面の滑らかさを向上する基材チューブの前処理または活性化を有する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第1の態様は、光ファイバプリフォームの製造用に中空ガラス基材チューブの内面を活性化する方法に関する。前記方法は、
i)PCVDプロセスによって前記中空基材チューブの前記内面上に多数の活性化ガラス層を蒸着するステップであって、活性化ガラス層の厚さが最小で10マイクロメートル且つ最大で250マイクロメートルであるステップと、
ii)エッチングプロセスによってステップi)で蒸着された前記活性化ガラス層を少なくとも部分的に取り除くステップであって、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも30%の範囲まで取り除かれるステップと、
を備える。
【0029】
本方法のある実施形態では、エッチングプロセスはエッチングガスを用いたプラズマエッチングである。
【0030】
本方法の別の実施形態では、前記エッチングガスは、フッ素含有のエッチングガスである。
【0031】
本方法のさらに別の実施形態では、前記エッチングガスは、水素を含まないフッ素化物とキャリアガスを備える。
【0032】
本方法のさらに別の実施形態では、前記エッチングガスは、CCl,CF,C,SF,FおよびSO,またはそれらの組み合わせで構成されるグループから選択される。
【0033】
本方法のさらに別の実施形態では、前記キャリアガスは、酸素(O),窒素(N),またはアルゴン(Ar)で構成されるグループから選択される。
【0034】
本方法のさらに別の実施形態では、前記フッ素含有のエッチングガスは、少なくともOおよびC及び/又はSFの混合物である。
【0035】
本方法のさらに別の実施形態では、非ドープガラスフォーミングガスがステップi)のPCVDプロセスで用いられる。
【0036】
本方法のさらに別の実施形態では、前記非ドープガラスフォーミングガスとして少なくともOおよびSiClの混合物が用いられる。
【0037】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層の厚さは、少なくとも25マイクロメートルである。
【0038】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層の厚さは、少なくとも50マイクロメートルである。
【0039】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層は、最大で125マイクロメートルである。
【0040】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)で蒸着された活性化ガラス層は、最大で75マイクロメートルである。
【0041】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも40%の範囲まで取り除かれる。
【0042】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも50%の範囲まで取り除かれる。
【0043】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が最大で100%の範囲まで取り除かれる。
【0044】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が最大で90%の範囲まで、または随意に95%又はさらに99%の範囲まで取り除かれる。
【0045】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が最大で80%の範囲まで取り除かれる。
【0046】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)の間のガラス蒸着は、中空基材チューブの長さに沿って行われる。
【0047】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップi)の間のガラス蒸着は、中空基材チューブの長さの少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%に沿って行われる。
【0048】
本発明者は、本発明の目的の一つ以上が本方法によって達成されることを見いだした。
【0049】
(本明細書で使用される際の定義)
本明細書および特許請求の範囲では、本願の発明の内容を規定するために以下の定義が用いられる。下記で言及されていない他の用語は、当技術分野で一般に認められている意味を有することを意図されている。
・「活性化」は、本明細書で中空基材チューブと組み合わせて用いられるとき、蒸着プロセス開始前、通常、中空基材チューブ内での従来のCVD(chemical vapor deposition)プロセス開始前の中空基材チューブの前処理を意味する。活性化は、基材チューブの初期の(initial)又は元の(original)又は最初の(virgin)表面上で起こる。注目すべきは、本発明に係る活性化の間に複数の活性化層が蒸着されることである。最初の層のみが、初期の又は元の又は最初の基材チューブ表面と直接接触する。しかしながら、複数の活性化層の蒸着の全部のプロセスが「活性化」と見なされる。
・「内面」は、本明細書で用いられるとき、中空基材チューブの内部表面または内側表面を意味する。
・「中空基材チューブ」は、本明細書で用いられるとき、内部にキャビティ(空洞)を有する細長いチューブを意味する。通常、前記チューブの内側には、プリフォームの製造の間に複数のガラス層が設けられる(またはコーティングされる)。
・「中空基材チューブの長さ」は、本明細書で用いられるとき、全中空基材チューブの実効長を意味する。これは、プラズマが発生し且つガラスの蒸着が起こる基材チューブの長さである。
・「キャビティ」は、基材チューブの壁によって囲まれた空間を意味する。
・「ガラス」または「ガラス物質」は、本明細書で用いられるとき、蒸着プロセスによって蒸着される結晶質またはガラス質(ガラス状)の酸化物材料−例えばシリカ(SiO)またはさらに石英−を意味する。
・「シリカ」は、本明細書で用いられるとき、化学量論を問わず、そして結晶質または非結晶質を問わず、SiOxの形をとる任意の物質を意味する。
・「活性化ガラス層」は、本明細書で用いられるとき、中空基材チューブの内面を活性化させるために用いられるガラス物質の層を意味する。複数の活性化層が蒸着される。最初の層のみが、初期の又は元の又は最初の基材チューブ表面と直接接触する。しかしながら、ステップi)の間に蒸着される全ての層が活性化層と見なされる。「エッチングプロセス」は、本明細書で用いられるとき、化学作用を通じてガラス物質を取り除くプロセスを意味する。
・「エッチングガス」は、本明細書で用いられるとき、エッチングプロセスの間に用いられるガス状のエッチング化合物を意味する。エッチングガスは、適切な条件(例えば温度および濃度)の下で化学作用を通じてガラス物質を取り除くことができるガスである。
・「プラズマエッチング」は、本明細書で用いられるとき、エッチングガスに必要なエッチング条件がプラズマ中で生成または改善されるエッチングプロセスを意味する。
・「フッ素含有エッチングガス」は、本明細書で用いられるとき、フッ素及び/又は一つ以上のフッ素化物を含有するエッチングガスを意味する。
・「フッ素化物」は、本明細書で用いられるとき、少なくとも一つの結合されたフッ素原子を含む化合物、例えばフッ素化炭化水素を意味する。
・「水素を含まないフッ素化物」は、本明細書で用いられるとき、ペルフルオロ化合物、水素原子が存在しないフッ素化物、例えば全ての水素原子がフッ素原子で置換されたフッ素化炭化水素、を意味する。
・「キャリアガス」は、本明細書で用いられるとき、エッチングガスと直接反応せずにエッチングガスの濃度を希釈するガスを意味する。
・「ガラスフォーミングガス」は、本明細書で用いられるとき、蒸着プロセスの間にガラス層を形成するために用いられる反応ガスを意味する。
・「非ドープガラスフォーミングガス」は、本明細書で用いられるとき、基本的に純粋な石英ガラスに反応可能な意図的にドーパントが付加されていないガスを意味する。
・「活性化ガラス層の除去の範囲」は、本明細書で用いられるとき、取り除かれる活性化ガラス層のパーセンテージを意味する。これは、例えば、除去前後の活性化ガラス層の厚さの差分によって計算可能である。または、蒸着されたガラスと除去されたガラスの重さにより計算可能である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明は、上述したように、光ファイバプリフォームの製造に用いられる中空基材チューブを活性化する方法に関する。(薄い)ガラス層(いくつかの活性化ガラス層の形をとる)が蒸着され、その後にエッチングにより部分的に又は完全に取り除かれる。
【0051】
本発明者は、エッチングステップ−良好な付着を得るために必要とされる−がいくつかのマイナスの副作用を有していることを見いだした。本発明者は、供給される基材チューブ(すなわち元の基材チューブ)は例えば組成が不均一であり得ることを発見した。この不均一性は、選択的エッチング、すなわち基材チューブの内面の異なる部分には別の作用を及ぼす物質のエッチング、を引き起こす。
【0052】
つまり、基材チューブの内面にわたってエッチングが不均一である。この不均一性は、蒸着ステップの間に深刻な問題を引き起こす。本発明者は、初期基材チューブそれ自体の代わりにPCVD蒸着層にエッチングステップを行うことにより、エッチングプロセスの利点(すなわち、改善された付着)が維持される一方で、エッチングのマイナスの副作用(表面不均一性の生成)が減少又はさらには完全に排除されることを見いだした。
【0053】
本発明者は、PCVD蒸着活性化ガラス層がエッチ除去されるとき、得られる基材チューブの内面が、予備ガラス層の蒸着およびそのエッチング前の基材チューブの初期(すなわち元又は最初)の面よりも滑らか且つ均一になると考える。
【0054】
本方法によれば、活性化(又は予備)ガラス層の形成は本発明の重要なプロセスステップであり、これらの活性化ガラス層の蒸着は、実際の蒸着プロセスが行われる前に行われることを理解しなければならない。
【0055】
これらの活性化ガラス層は、上述のエッチングステップによって中空基材チューブの内側から(部分的に又は好ましくは殆ど完全に)取り除かれる。そして、これらの活性化ガラス層の除去後、ガラス層の実際の蒸着プロセス、すなわち特定の屈折率プロファイルを有するプリフォームをもたらす内側ガラス層の形成、が行われる。活性化ガラス層は、所望の屈折率プロファイルに寄与しない。これらの活性化ガラス層は、実際の蒸着プロセスが行われる前に、(部分的又は完全に)取り除かれる。これらの活性化ガラス層の除去機能は、所望の特性の屈折率プロファイルを生成するために、不要な凹凸および擾乱を生ずることなく且つその後のガラス層の蒸着用の面として適した、滑らかな基材チューブ内面を作り出すことである。
【0056】
本発明のステップi)において実行されるPCVDプロセスの間に、通常はいくつかのステップが実行される。これらのステップは、以下の
a)内面を有する中空ガラス基材チューブを設けるステップ、
b)前記中空基材チューブを少なくとも1000℃(摂氏温度)の温度に加熱するステップ、
c)一つ以上のガラスフォーミングガスが前記中空基材チューブ内に供給するステップ、
d)多数の活性化ガラス層を前記中空基材チューブの前記内面上に蒸着するステップ、
e)前記中空基材チューブ内へのガラスフォーミングガスの供給を終了するステップ、
である。
【0057】
通常、前記中空基材チューブは、供給側と排出側を有する。前記中空基材チューブは、キャビティを囲む壁から構成されると考えられる。言い換えると、前記中空基材チューブの内側にキャビティが存在している。
【0058】
前記中空基材チューブは、外面(言い換えば、前記中空基材チューブの壁の外面)と、内面(言い換えれば、前記中空基材チューブの前記壁の内面)を有すると考えられる。前記基材チューブの前記内面は、基材チューブの内側に存在する前記キャビティと接触している。一実施形態では、前記中空基材チューブは円筒形状であり、従って円筒キャビティ(円筒空洞)を提供する(又は囲む)。
【0059】
通常、前記一つ以上のガラスフォーミングガスが、前記中空基材チューブ内にその供給側を介して導入される。前記ガスは、前記中空基材チューブの内側に存在する前記キャビティ中に導入される。
【0060】
言い換えれば、前記中空基材チューブの肉厚が増大する。肉厚の増大は、活性化ガラス層の数および厚さに関係する。さらに言い換えれば、前記中空基材チューブ内に存在するキャビティはサイズが減少する。この減少は、活性化ガラス層の数および厚さに関係する。蒸着は、通常、前記中空基材チューブの少なくとも一部で特定の温度条件を作り出すことにより起こる。好ましくは、反応ゾーン(またはプラズマゾーン)は、前記中空基材チューブ内に存在する。前記反応ゾーンは、ガラスの蒸着が起こるゾーンまたは部分として定義される。言い換えれば、前記反応ゾーンでは、ガラス層の蒸着に適した温度条件が作り出される。好ましくは、前記反応ゾーンは、中空基材チューブの長さのほんの一部の長さを有する。このような実施形態では、中空基材チューブの全長に沿ってガラス蒸着を得るために、前記反応ゾーンは、前記中空基材チューブの長手方向軸に沿って−好ましくは前後に−移動する。好ましくは、前記中空基材チューブの供給側近傍の反転点と排出側近傍の反転点との間を移動する。
【0061】
終了ステップは、前記中空基材チューブ内へのガラスフォーミングガスの供給を中断又は停止することを意味する。これは、蒸着プロセスを停止する。言い換えれば、このステップe)は、活性化ガラス層の蒸着を終了するステップとして説明することもできる。
【0062】
本方法のステップii)のエッチングプロセスは、好ましくは、前記中空基材チューブ内にエッチングガス(又はいくつかのエッチングガス)を供給するステップを備える。このエッチングガスは、それ自体が周知のプロセスによって蒸着された活性化ガラス層と反応する。これは、上記のようにステップi)で蒸着された活性化ガラス層(の一部)の除去である。
【0063】
このエッチングステップは、上述したように、前記中空基材チューブの内部を通じて、好ましくはその供給側を通って、ガス状エッチング化合物を通過させるステップである。このステップにより、前もって蒸着された活性化ガラス層の少なくとも一部又は全部が確実に除去される。この除去は、エッチングによって実行される。本発明に係る方法の結果は、上記のように活性化された内面を有する中空基材チューブである。
【0064】
本発明は、さらに、内部蒸着プロセスを用いて光ファイバ用プリフォームを製造するプロセスに関する。この方法は、
活性化された内面を有する中空ガラス基材チューブを設けるステップ、
活性化された内面を有する中空基材チューブ内に(好ましくはその供給側を介して)ドープ及び/又は非ドープガラスフォーミングガスを供給するステップ、
中空基材チューブ内に多数のガラス層を蒸着するステップ、
このようにして得られた基材チューブを光ファイバプリフォームに崩壊(コラプス)又は形成するステップ、
を備える。
【0065】
本発明の以下の実施形態は、本発明の全態様に適用可能である。
【0066】
本発明の一実施形態では、本発明はフッ素含有のエッチングガスが使用される。
【0067】
別の実施形態では、前記フッ素含有のエッチングガスは、水素を含まないフッ化炭素およびキャリアガスを含む。この利点は、水素原子がないことにより、蒸着プロセス間の水酸基の導入が防止されることである。これらの水酸基は、活性化された基材チューブから作られる光ファイバプリフォームから形成される光ファイバの減衰を増大させる。
【0068】
エッチングガスは、好ましくは、CCl,CF,C,SF,FおよびSO,またはそれらの組み合わせで構成されるグループから選択される。
【0069】
好ましくは、前記エッチングガスは、酸素、窒素またはアルゴンなどのキャリアガスの存在下で用いられる。
【0070】
フッ化炭素化合物(フッ素化炭素化合物)がエッチングガスとして用いられるとき、元素炭素の蒸着が起こる可能性がある。理論に縛られることを望むものではないが、本発明者は、エッチングガスのフッ素原子がエッチングプロセスを処理し、エッチングガスの炭素原子が基材チューブの内面に蒸着されることを提案する。場合によっては、黒膜の形成が見られる。フッ化炭素化合物が用いられるとき、キャリアガスとして酸素(O)の使用が推奨される。本発明者により、酸素がエッチングガスの炭素部分と反応し、炭素(C)の蒸着が防止されることが見いだされた。
【0071】
好適なエッチングガスの例は、CF,SF,NF,C,C,CHF,CClF,CCl,CClF,SiFおよびそれらの組み合わせを含むがこれらに限定されず、特に好適なエッチングガスのファミリーは、フッ素ベースのガス化合物である。さらに好ましくは、最初のエッチングガスは、CF,SF,NF,C,C,CHF,SiFおよびそれらの組み合わせから構成されるグループから選択される。
【0072】
エッチングガスの濃度およびガスが中空基材チューブの内部に存在する酸化物材料の表面を横切って流れる温度は、エッチングガスによる蒸着された酸化物材料および/または汚染領域の除去速度に影響を及ぼす。好ましくは、温度とエッチングガス濃度の組み合わせは、蒸着された酸化物材料の高いエッチング速度を可能にさせるのに十分であり、これは最も有利に基材チューブの処理時間の減少をもたらす。エッチングステップの温度は、約1300℃未満、より好ましくは約1250℃未満、および最も好ましくは約1200℃未満である。
【0073】
高いエッチング速度によって、酸化物材料がエッチングにより除去されるのより速く、フッ素が残りの蒸着酸化物材料中に拡散される傾向がある。これは、フッ素の蒸着酸化物材料中に汚染層を作り出し、これは次々に残りの酸化物材料、ひいては得られたプリフォーム、そして詰まるところこの材料から線引きされる光ファイバの屈折率を変化させる。そのような汚染層は、エッチングステップの間に取り除かれなければならない。
【0074】
本方法の一実施形態では、フッ素含有のエッチングガスは、CとOの組み合わせである。この組み合わせの利点は上述されている。
【0075】
好適な実施形態では、非ドープガラスフォーミングガスがステップi)で用いられる。このようにして蒸着されたガラス層は、ファイバの最終的な光学特性に何の影響も及ぼさない。さらに、非ドープガラスフォーミングガスの基礎上に形成された予備的なガラス層は、エッチングステップによって容易に取り除くことができる。好適な例は、SiClとOの混合物である。
【0076】
活性化層は、少なくとも10マイクロメートル、好ましくは少なくとも25マイクロメートル、さらに好ましくは50マイクロメートルの最小厚を有する。この最小厚により、確実にエッチングプロセスから恩恵を受けられる。従ってエッチングは、望ましくは、十分な効果を得るために少なくとも10マイクロメートルの厚さを超えて行われるべきである。
【0077】
活性化層は、最大で250マイクロメートル、好ましくは最大で125マイクロメートル、さらに好ましくは最大で75マイクロメートルの最大厚を有する。この最大厚は、エッチングプロセスに対してさらに厚さを増大させる利益がなく、そしてさらなる厚さの増大は追加の材料費、装置の摩耗、人件費につながるといった理由のため、選択される。
【0078】
このように、一方では技術的効果のための最小厚と他方ではコストの理由のための最大厚とのバランスを取る活性化層の厚さの最適な範囲がある。
【0079】
活性化層は、部分的または完全にエッチ除去される。エッチングステップの間に基材チューブ自体が決してエッチ除去さらないことは、本発明においては非常に重要である。言い換えれば、活性化層のみがエッチングされる。
【0080】
ステップi)で蒸着された活性化層は、少なくとも30%の範囲まで取り除かれる。
【0081】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が少なくとも40%の範囲まで取り除かれ、さらに好ましくは少なくとも50%の範囲まで取り除かれる。
【0082】
本方法のさらに別の実施形態では、ステップii)の間にステップi)で蒸着された活性化ガラス層が最大で100%、好ましくは最大で99%、またはさらに95%、より好ましくは最大で90%、またはさらに最大で85%または80%の範囲まで取り除かれる。
【0083】
活性化層は、このように完全にエッチ除去され得るが、基材チューブはエッチングプロセスによって影響されないことに注意すべきである。
【0084】
蒸着された活性化ガラス層の全量が除去されない場合、いくつかのガラス層が中空基材チューブの内面に残ることになる。このような状況では、従って、残りのガラス層が、最終的な屈折率プロファイル、すなわち非ドープガラス成形材料から形成されるガラス層に影響を及ぼさない組成を有することが望ましい。
【0085】
活性化ガラス層の蒸着の間に、中空基材チューブの供給側近傍の反転点と排出側近傍の反転点との間で反応ゾーンが往復することが望ましい。この移動により、多数の活性化ガラス層の蒸着に対し一様な反応ゾーンがもたらされる。
【0086】
反応ゾーンは、好ましくはプラズマ発生器である。該プラズマ発生器において、プラズマパワーは、特に基材チューブの溶融が防止されるよう、好ましくは1kW〜10kWの間の値に設定される。
【0087】
本方法は、一つ以上の実施例において説明される。これらの実施例は、説明を目的として提供されているだけであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0088】
(実施例1)
石英から成る中空基材チューブが、本出願人の名称によるオランダ特許第NL1023438号から周知である標準のPCVDプロセスを用いて製造された。
【0089】
供給側と排出側を有する中空基材チューブは、加熱炉内に置かれた。該加熱炉内には、アプリケータが存在する。該アプリケータは、加熱炉内で中空基材チューブの長さに沿って前後に移動可能である。中空基材チューブの内部にプラズマ条件を作り出すために、マイクロ波エネルギーが導波路を通じてアプリケータに供給された。該プラズマ条件は、中空基材チューブの内面上にガラス層を蒸着する働きをする。アプリケータによって生成されたプラズマは、アプリケータによって取り囲まれた領域のわずかに外側に存在してもよい。
【0090】
中空石英基材チューブは、1120℃の温度に加熱された。初期ガラス層の蒸着は、SiClとOの混合物を基材チューブの供給側に供給することにより開始された。加熱段階は、数分間:3〜10分間続く。
【0091】
基材チューブの十分な加熱が開始された後、非ドープシリカ層の蒸着が2.5グラム/分の速度で起こる。この蒸着の間、アプリケータの全通過長が用いられた。これは、加熱炉内で中空基材チューブの長さに沿ってアプリケータが行ったり来たりする長さである。この非ドープ予備ガラス層の蒸着は、およそ5分間実行された。蒸着物の全量は、約100マイクロメートルの厚さで約12.5グラムである。
【0092】
非ドープ予備ガラス層の蒸着後、CおよびOの組み合わせであるフッ素含有エッチングガスを中空基材チューブ内に供給することにより、エッチングステップが実行される。
【0093】
このエッチングステップの間に、チューブの内面から蒸着された予備ガラス層が90%の範囲まで除去される。エッチング段階の継続時間は約9分であり、所望の特性の屈折率プロファイルを作り出すことを目的としたガラス層のさらなる蒸着のための、基材チューブ面の十分な活性化および準備がもたらされた。
【0094】
本発明に係るエッチング段階の後、標準のPCVD蒸着プロセスが実行された。このような内部化学蒸着プロセスは、20m/minの速度で、加熱炉の内側に配置された中空基材チューブの長さに沿ってプラズマを前後に移動させることにより、実行された。加熱炉は、1000℃の温度に設定され、9kWのプラズマパワーが用いられた。このように配置された中空基材チューブの内側へのガラス層(SiOに基づく)の蒸着速度は、3.1g/minであり、中空基材チューブ内の圧力は、合計約10mbarになった。O,SiCl,GeClおよびCで構成されるガス組成が、中空基材チューブの内部に供給された。このようにして得られた基材チューブは、固体プリフォームに崩壊する準備ができた。
【0095】
(実施例2)
実施例1に係る手順が続けられた。相違点は、エッチングステップの間に、蒸着された予備ガラス層がチューブの内面から45%の範囲まで除去されることである。このエッチング段階の継続時間は、約4.5分であった。
【0096】
実施例2と実施例1の差は、活性化の全所要時間が低減され、一つの装置からのコアロッドの生産量が増加することである。
【0097】
実施例1または実施例2に係る独創的なプロセスで製造されたコアロッドは、従来技術に係るプラズマエッチング(すなわち基材チューブ自体のプラズマエッチング)を受けた基材チューブで製造されたコアロッドよりも、泡、クラックまたはその他の不均一性が少ない。
【0098】
従って、本発明に係るプロセスは、プリフォームの不良品発生率の低減をもたらし、これは有利な点である。
【0099】
実施例1または実施例2に係る独創的なプロセスでマルチモード光ファイバ用のコアロッドが製造されるとき、結果として生じるマルチモードファイバの屈折率プロファイルは、従来技術に係るプラズマエッチング(すなわち基材チューブ自体のプラズマエッチング)を受けた基材チューブで製造されたコアロッドから得られる光ファイバよりも、理想的なプロファイルからの乱れ又は偏差が少ない。
【0100】
従って、本発明のプロセスは、OM−3又はOM−4マルチモードファイバのようなハイエンドのマルチモードファイバに対し、多収量をもたらす。