特許第6232288号(P6232288)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232288生物学的に活性な放射性標識されたCry1Faおよび受容体結合アッセイ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232288
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】生物学的に活性な放射性標識されたCry1Faおよび受容体結合アッセイ方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/325 20060101AFI20171106BHJP
   G01N 33/60 20060101ALI20171106BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20171106BHJP
【FI】
   C07K14/325ZNA
   G01N33/60 Z
   !C12N15/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-544801(P2013-544801)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-503536(P2014-503536A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】US2011065322
(87)【国際公開番号】WO2012083099
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】61/423,844
(32)【優先日】2010年12月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501035309
【氏名又は名称】ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンズ,スティーブン,エル.
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジアンクアン
(72)【発明者】
【氏名】シーツ,ジョエル,ジェイ.
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−194384(JP,A)
【文献】 Luo K et al.,Toxicity, binding, and permeability analyses of four Bacillus thuringiensis Cry1 delta-endotoxins using brush border membrane vesicles of Spodoptera exigua and Spodoptera frugiperda.,Appl Environ Microbiol.,1999年 2月,Vol.65, No.2,457-464
【文献】 Michael Palmer et al.,Cysteine-Specific Radioiodination of Proteinswith Fluorescein Maleimide,ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,1997年,Vol.253,175-179
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/325
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cry1FaホロトキシンおよびCry1Faコア毒素からなる群から選択されるタンパク質であって、前記タンパク質はC205(205位のシステイン残基)において放射性ヨウ素化フルオレセイン−5−マレイミドで標識されており、前記標識されたタンパク質は、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)およびツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)の中腸から調製される刷子縁膜小胞内の受容体に選択的に結合する能力を保持する、タンパク質。
【請求項2】
Cry1Faホロトキシンである、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項3】
Cry1Faコア毒素である、請求項1に記載のタンパク質。
【請求項4】
所与の昆虫種の中腸における受容体に対するCry1Faコア毒素の結合活性を決定するための飽和型結合アッセイ方法であって、
a)前記昆虫種の中腸から単離した既知の濃度の刷子縁膜小胞を含有する懸濁液を調製する工程と、
b)別の容器において、漸増量の請求項3に記載の標識されたCry1Faを、標識されたCry1Faが刷子縁膜小胞における受容体に結合できる時間および緩衝液条件下で、一定量の刷子縁膜小胞懸濁液に添加する工程と、
c)刷子縁膜小胞における受容体に結合している標識されたCry1Faから未結合の標識されたCry1Faを分離する工程と、
d)刷子縁膜小胞に結合している標識されたCry1Faから放射される放射性シグナルを計数する工程とを含む、方法。
【請求項5】
交差反応性を決定するための競合結合アッセイ方法であって、
a)昆虫種の中腸から単離した刷子縁膜小胞を含有する懸濁液を調製する工程と、
b)請求項3に記載の標識されたCry1Faを、標識されたCry1Faおよび標識されていないタンパク質が刷子縁膜小胞における受容体に結合できる時間および緩衝液条件下で、過剰の異なる標識されていないタンパク質および刷子縁膜懸濁液と混合する工程と、
c)結合している刷子縁膜小胞を、未結合の標識されたCry1Faおよび未結合の標識されていないタンパク質混合物から単離する工程と、
d)結合している刷子縁膜小胞画分から放射される放射能を、未結合の混合物画分から放射される放射能と比較する工程とを含む、方法。
【請求項6】
標識されていないタンパク質がCryタンパク質である、請求項5に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年12月16日に出願された米国仮特許出願第61/423,844号の利益を主張し、その開示は、全ての図面、表およびアミノ酸または核酸配列を含むその全体が本明細書に参照として組み込まれる。
【0002】
本発明の一般的な分野は、生命科学、特に農業科学および試験方法の領域である。詳細には、本発明の分野は、生化学ならびにバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)結晶(Cry)エンドトキシンの作用機構および昆虫Cry毒素受容体とのそれらの相互作用である。
【背景技術】
【0003】
Cry殺虫タンパク質は、異なる土壌型において広範に分布して見られるグラム陽性菌である、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)(Bt)により産生されるエンドトキシンである。種々のクラスのCryタンパク質は特定の害虫に対して選択的に毒性がある。エンドトキシンは典型的に、細菌の大きな封入体中に位置する結晶タンパク質の形態で見出される。Cry毒素はかなりの配列多様性を有する(Crickmoreら、1998、de Maagdら、2003)が、鱗翅目害虫に対して活性を有する大多数の毒素は、3ドメイン活性コア毒素構造を有する130kDaのプロトキシンである(de Maagdら、上記)。
【0004】
本発明の対象は、3ドメインCryタンパク質である、Cry1Fa毒素に関する。この毒素は、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(J. E. Smith)(フォールアーミーワーム(fall armyworm))およびヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)(Hubner)(ヨーロピアンコーンボーラー(European corn borer))(それらはトウモロコシの最も経済的に重要な害虫のうちの2つである)を含む、種々の鱗翅目昆虫に対して実証されている殺虫活性を有する。Cry1Faは、トウモロコシにおけるイベントTC1507(HERCULEX(登録商標))および綿におけるイベント281−24−236(WIDESTRIKE(登録商標))として知られている、2つのUSDAにより規制撤廃されているトランスジェニック植物が組み込まれた殺虫剤の毒素成分である。
【0005】
他の3ドメインCry毒素のようなCry1Fa完全長ホロトキシンタンパク質は、その殺虫活性を活性化するためにN末端およびC末端の両方においてタンパク質分解的切断を必要とする。鱗翅目昆虫の中腸は、完全長ホロトキシンを約68kDaのサイズを有するコア毒素構造に処理する種々のトリプシンおよびキモトリプシン様プロテアーゼを含有する(Christellerら、1992、Gatehouseら、1997、Bernardiら、1996)。処理は、N末端から約28アミノ酸およびC末端から約530アミノ酸(プロトキシン部分)の除去を含み、得られたコア毒素部分は放出され、昆虫の消化管内に位置する特異的受容体に結合する。
【0006】
昆虫は、Cryタンパク質コア毒素に結合する中腸に局在化した受容体の変化を介してCryタンパク質毒素の活性に対する耐性を発生させることができる(Heckelら、2007、Van Rieら、1990b)。さらに、プロトキシンの減少した活性化、昆虫の中腸のCry受容体の数の変化、および昆虫の死の一因となる膜の細孔の形成による毒素に反応する能力の喪失を含む、耐性発生の他の機構が実証されている(GriffittsおよびAroian、2005、ならびにVan Rieら、1990bを参照のこと)。
【0007】
本発明より前に、Cry1Faコア毒素タンパク質の異なる昆虫受容体への結合を特徴付けるための研究は報告されていなかった。その理由は、Cry1Fa毒素内のチロシン残基と反応する酸化ヨウ素同位体に関する伝統的な放射性標識法は、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)およびツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(Luoら、1999)の中腸から調製された刷子縁膜小胞(BBMV)内の受容体に結合するその能力を喪失した放射性標識されたコア毒素タンパク質を産生したためであった。さらに、伝統的な方法で放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質は、その殺虫活性を喪失し、これらのスポドプテラ属(Spodoptera)種に対して食餌バイオアッセイにおいて不活性化したことが見出された。蛍光標識などのタンパク質標識の他の方法、および等温熱量測定法などのリガンド−受容体結合を測定するための他の方法が試みられているが、いずれも感受性がなさすぎるか、または昆虫BBMVの微粒子特性に起因して使用することが非常に困難である光学的方法であると見出されている。
【0008】
Palmerら(1997)は、システイン残基において特異的なタンパク質の放射性標識の間接的な方法を記載していた。この方法において、中間体化合物であるフルオレセイン−5−マレイミドがまず、放射性ヨウ素と反応し、次いで放射性標識されたフルオレセイン−5−マレイミドが、利用可能なシステイン残基においてタンパク質を化学的に修飾するために使用される。本発明は、Cry1Faコア毒素のドメイン1に位置する単一のシステイン残基(C205)を標的化することにより、Cry1Faタンパク質を放射性標識するための非常に特異的なPalmerらの方法の使用を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を提供する。
[1]Cry1FaホロトキシンおよびCry1Faコア毒素からなる群から選択されるタンパク質であって、上記タンパク質はヨウ素の放射性同位体で標識されており、上記標識されたタンパク質は、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua)およびツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)の中腸から調製される刷子縁膜小胞内の受容体に選択的に結合する能力を保持する、タンパク質。
[2]Cry1Faホロトキシンである、上記[1]に記載のタンパク質。
[3]Cry1Faコア毒素である、上記[1]に記載のタンパク質。
[4]所与の昆虫種の中腸における受容体に対するCry1Faコア毒素の結合活性を決定するための飽和型結合アッセイ方法であって、
a)上記昆虫種の中腸から単離した既知の濃度の刷子縁膜小胞を含有する懸濁液を調製する工程と、
b)別の容器において、漸増量の上記[3]に記載の標識されたCry1Faを、標識されたCry1Faが刷子縁膜小胞における受容体に結合できる時間および緩衝液条件下で、一定量の刷子縁膜小胞懸濁液に添加する工程と、
c)刷子縁膜小胞における受容体に結合している標識されたCry1Faから未結合の標識されたCry1Faを分離する工程と、
d)刷子縁膜小胞に結合している標識されたCry1Faから放射される放射性シグナルを計数する工程と
を含む、方法。
[5]交差反応性を決定するための競合結合アッセイ方法であって、
a)昆虫種の中腸から単離した刷子縁膜小胞を含有する懸濁液を調製する工程と、
b)上記[3]に記載の標識されたCry1Faを、標識されたCry1Faおよび標識されていないタンパク質が刷子縁膜小胞における受容体に結合できる時間および緩衝液条件下で、過剰の異なる標識されていないタンパク質および刷子縁膜懸濁液と混合する工程と、
c)結合している刷子縁膜小胞を、未結合の標識されたCry1Faおよび未結合の標識されていないタンパク質混合物から単離する工程と、
d)結合している刷子縁膜小胞画分から放射される放射能を、未結合の混合物画分から放射される放射能と比較する工程と
を含む、方法。
[6]標識されていないタンパク質がCryタンパク質である、上記[5]に記載の方法。
最も驚くべきことに、この立体的に扱いにくい放射性標識された5−マレイミドの、この方法によって調製されたCry1Faコア毒素タンパク質内への導入は、その受容体への結合の喪失を生じない、または毒素不活性化を引き起こさないことが見出された。結果として、この非伝統的な方法で放射性標識されたCry1Faコア毒素は、その殺虫活性および種々の昆虫由来のBBMV調製物内の受容体に特異的に結合するその能力の両方を保持するのに十分なタンパク質の三次構造を維持した。
【0010】
非伝統的な方法で放射性標識されたCry1Faタンパク質は、飽和可能な様式で受容体に結合することが見出され、他のCry毒素がその結合と競合するかどうかを決定するために競合結合アッセイにおいて使用された。このアッセイを使用することにより、プエルトリコにおいて収集したツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)の集団において発生したCry1Fa毒素に対する圃場抵抗性が、Cry1Faコア毒素タンパク質に結合するこれらの昆虫のBBMV内の受容体の能力の喪失に起因することが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)幼虫に対するトリプシン切断型(trypsin-truncated)のCry1Faおよびフルオレセイン−5−マレイミド標識されたトリプシン切断型のCry1Faのバイオアッセイである。図は、本発明の方法によって調製したヨウ素化(非放射性)Cry1Faコア毒素タンパク質を使用してツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)新生幼虫を用いた昆虫食餌バイオアッセイの結果をまとめている。
図2】ヨーロピアンコーンボーラー(ECB)BBMVに対する放射性ヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質の飽和結合曲線を示す。図は、ヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)幼虫中腸から調製したBBMVに対する本発明の方法によって調製した放射性ヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質の飽和結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
配列同定の簡単な説明
配列番号1はCry1Faホロトキシンをコードする合成DNA配列である。
【0013】
配列番号2はCry1Faホロトキシンである。
【0014】
Cry1Faタンパク質の3つの構造ドメインは、さらなるトリプシン消化に耐性がある「トリプシンコア」内に位置する。ドメインIは、昆虫中腸の膜内に挿入し、細孔様構造を形成すると考えられる7個のα−ヘリックスから構成される(Ballesterら、1999)。ドメインIIは3個の逆平行β−シートからなり、ドメインIIIはβ−サンドイッチ構造を形成する(PigottおよびEllar、2007)。ドメインIIおよびIIIの露出領域は、昆虫中腸の管腔表面上に位置する特異的受容体と相互作用し、これらの受容体に強く結合すると考えられる(Bravoら、2007、de Maagdら、1996、de Maagdら、1999、Gomezら、2006、Herreroら、2004、Leeら、1999)。受容体に対する毒素の結合は、殺虫活性のための必要条件であり、毒素の特異性および選択性を提供する(PigottおよびEllar、2007、Rausellら、2004)。異なる昆虫種に対する異なるCryタンパク質の活性の特異性は、異なる昆虫に見出される受容体の相違に部分的に関連することが示されている(Gomezら、2003、Gomezら、2007、Van Rieら、1990a)。
【0015】
定量的生化学アッセイは、Cry毒素と、昆虫中腸に見出される受容体タンパク質との相互作用を測定するための手段を提供する。飽和型の結合アッセイにおいて、標識されたCry毒素タンパク質(リガンド)を、昆虫受容体タンパク質に対するCry毒素タンパク質の結合を促進する緩衝液中でインキュベートする。飽和結合アッセイの一実施形態において、一定量の昆虫受容体タンパク質(一般に、昆虫中腸から調製した刷子縁膜小胞)を、ヨウ素化Cry毒素タンパク質の量を増加させながら、(別の管中で)混合し、一定の時間の間、反応させる。未結合のCryタンパク質(すなわち、昆虫受容体タンパク質に結合していない)を種々の方法のうちの1つによって結合しているタンパク質から分離し、結合しているタンパク質画分の放射能の量は、昆虫受容体に結合しているCryタンパク質の量の指標を与える。生化学の分野の当業者は、ほとんどまたは全く結合していない放射能の観測が、受容体調製が行われた昆虫種において研究されている特定のCry毒素の受容体が欠如していることを示すことを理解するだろう。
【0016】
結合アッセイの第2の実施形態は競合アッセイである。競合結合アッセイにおいて、放射性Cry毒素タンパク質を過剰の第2の非放射性Cryタンパク質と混合し、Cryタンパク質を、標準的な条件下で昆虫受容体タンパク質に結合させる。第2の非放射性Cry毒素タンパク質が昆虫受容体に対する結合について放射性Cry毒素タンパク質と競合できる場合、放射性タンパク質は受容体結合部位で置き換えられ、結合状態において放射能はほとんど回収されない。非放射性および放射性Cry毒素タンパク質が異なる昆虫受容体タンパク質に結合する場合、それらは同じ昆虫受容体タンパク質に結合する際に互いに競合しない。この例において、結合しているタンパク質画分中で回収される放射能の量は、非放射性の第2のCry毒素タンパク質が結合反応に存在しない場合と同じ、またはほぼ同じである。種々の方法が、結合しているタンパク質画分中の放射能の量を定量化するのに利用可能である。
【0017】
125I−Cry1Faコア毒素タンパク質および非放射性Cry1Faコア毒素タンパク質(対照反応)またはCry1Abコア毒素タンパク質のいずれかを使用する競合結合アッセイにより、非放射性コアCry毒素タンパク質の両方が、ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)由来のBBMV内のその受容体部位で、標識されたCry1Faコア毒素を置き換えることができることが実証された。対照的に、競合結合アッセイにより、Cry1Caコア毒素タンパク質がCry1Faコア毒素結合と競合しないことが実証された。これらの結合アッセイの結果により、プエルトリコで収集したツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)の集団の現地調査において観測されたCry1Fa毒素に対する昆虫耐性は、これらの昆虫由来の刷子縁膜小胞内の受容体がCry1Faコア毒素に結合できないことにより説明できることが実証される。
【0018】
本明細書で参照または引用される全ての特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明確な教示と矛盾しない程度でその全体が参照により組み込まれる。
【0019】
核酸配列は標準的な5’から3’方向に提示され、タンパク質配列は標準的なアミノ(N)末端からカルボキシ(C)末端方向に提示される。
【0020】
具体的に示されるか、または示唆されない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」という用語は、本明細書で使用する場合、「少なくとも1つの」を表す。
【0021】
以下は本発明を実施するための手順を例示する実施例である。これらの実施例は限定と解釈されるべきではない。全ての割合は重量であり、全ての溶媒混合物の比率は、他に記さない限り、体積である。全ての温度はセ氏温度である。
【実施例1】
【0022】
Cry1Fa毒素タンパク質をコードする発現プラスミドの構築および細菌宿主における発現
標準的なクローニング方法(例えば、Sambrookら、(1989)およびAusubelら、(1997)、ならびにそれらの更新情報により提供されている)を、植物に最適化されたコード配列(CDS、配列番号1)によりコードされている、Cry1Faコア毒素部分(アミノ酸1〜603)およびCry1Abプロトキシン部分(アミノ酸604〜1148)から構成されるキメラ毒素タンパク質(本明細書においてCry1Fa毒素(配列番号2)と称する)を産生するように操作したシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(Pf)発現プラスミドである、pDAB1817の構築に使用した。
【0023】
pDAB1817はpMYC1803(米国特許第7338794号)由来である。基本的なクローニング戦略は、SpeIおよびKpnI制限酵素認識部位に隣接し、Cry1Fa毒素CDSを含有しているDNA断片を、SpeIおよびKpnI制限酵素を用いてpMYC1803DNAを切断することにより調製した大きな断片のpMYC1803にライゲーションすることを必要とした。プラスミドpMYC1803は、RSF1010ベースのプラスミドpTJS260(米国特許第5169760号を参照のこと)由来の中間コピープラスミドであり、調節されたテトラサイクリン耐性マーカーならびにRSF1010プラスミド由来の複製および動員遺伝子座を保有する。このようにして、Cry1Fa毒素CDSを、プラスミドpKK223−3(PL Pharmacia、Milwaukee、WI)由来のPtacプロモーターおよびrrnBT1T2ターミネーターの発現制御下に置いた。発現プラスミドpDAB1817で、テトラサイクリンに対する耐性についての選択を用いて、エレクトロポレーションによりP.フルオレッセンス(P. fluorescens)株MB217(株MB101の誘導体、P.フルオレッセンス(P. fluorescens)次亜種I)を形質転換した。ミニプレッププラスミドDNAの制限酵素消化により組換えコロニーを識別した。
【0024】
発酵装置内での増殖および発現分析:生化学操作および昆虫バイオアッセイのためのCry1Fa毒素タンパク質の産生を、発酵槽で増殖させたP.フルオレッセンス(P. fluorescens)発現単離株DR1649により達成した。種培養を、15μg/mLのテトラサイクリンを追加した600mLのPs20培地を含有する振盪フラスコ中で32°にて20時間増殖させ(最終光学密度600nm=14にて)、20Lの発酵槽タンク(New Brunswick Scientific BioFlo4500、Edison、NJ)中でテトラサイクリンを含む6.6LのDGMp2.2培地を接種するために使用した。発酵は200〜1000rpmにて攪拌しながら32°で実施した。P.フルオレッセンス(P. fluorescens)についての微生物操作の詳細は、本明細書に参照により組み込まれる、Squiresら(2004)、米国特許出願公開第20060008877号、米国特許第7681799号、米国特許出願公開第20080058262号、およびHuangら(2007)で得られる。グリセロールを溶存酸素濃度に応じて10gm/Lにて定期的にバッチ供給した。PtacプロモーターによるCry1Fa毒素CDSの発現は、イソプロピル−β−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加により誘導した。細胞密度、標的遺伝子発現のレベル、および他のパラメータを決定するために誘導後の発酵時間の全体にわたって培養を監視した。SDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)およびイムノブロット解析のために、全発酵ブロスの0.1mLのアリコートをその後の分析のために凍結した。IPTG誘導から48時間後の最後の時点(光学密度600nm=222にて、最終培養体積=13.5L)で、4Lの培養物から細胞を、90分間、10000×gでの遠心分離により収集した。細胞ペレットをさらなる処理のために−20°または−80°にて凍結した。
【0025】
発酵試料のSDS−PAGE分析:凍結した発酵槽の細胞ブロス(0.1mL)を冷水で5倍に希釈し、20単位の一定出力で1/8インチ直径のマイクロチップを使用したBranson 250 Sonifier(Branson Ultrasonics、Danbury CT)を使用して、200μLを氷中で10分間、超音波処理した。溶解物を20分間(4°)、14000rpmにて遠心分離し、上清を除去した(可溶性画分)。次いでペレットを200μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、11.9mMのNaHPO、137mMのNaCl、2.7mMのKCl、pH7.4、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)に再懸濁した。元の発酵ブロスの20倍までの等価物の可溶性および不溶性画分の両方のさらなる希釈をPBS中で実施した。次いでこれらの画分を、5%のβ−メルカプトエタノールを含有するLaemmli試料緩衝液(Bio−Rad Inc.、Hercules、CA)と1:1で混合し、MOPS緩衝液(Bio−Rad Inc.)を含む基準の10%Bis−Trisゲル上に10μL〜20μLを負荷する前に5分間沸騰した。製造業者のプロトコールに従ってSimply Blue SafeStain(商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いてゲルを染色した。
【0026】
免疫ブロット法:標準的な生化学的方法(例えば、Sambrookら、(1989)およびAusubelら、(1997)、ならびにそれらの更新情報により提供されている)をタンパク質単離およびイムノブロット解析のために使用した。試料を調製し、電気泳動を変性させるために製造業者の提案したプロトコール(Invitrogen)に従ってMESランニング緩衝液中でNuPAGE4〜12%Bis−Trisゲルを用いた電気泳動によりタンパク質を分離した。タンパク質をNuPAGE移動緩衝液中で80分間、30Vにてニトロセルロース膜上に移した。ブロットを5%ミルク/PBST(0.05%Tween−20を含むPBS)中で室温にて1時間ブロッキングし、次いで一次抗体(Cry1Faコア毒素部分に対して特異的)を用いて調べ、次いで各抗体の間でPBST中で15分間すすぎ、ブロッキング溶液中で室温にて各々1時間、二次抗体を用いて調べた。製造業者のプロトコール(Thermo Fisher Scientific、Rockford、IL)に従ってPierceのECLウェスタンブロッティング基質を使用してブロットの展開を行った。
【実施例2】
【0027】
シュードモナス属(Pseudomonas)により産生された封入体からのCry1Faコア毒素タンパク質の精製
封入体調製:SDS−PAGEおよびMALDI−MS(マトリクス支援レーザー脱離イオン化質量分析(Matrix Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry))により実証されるように不溶性Cry1Fa毒素タンパク質を含有するP.フルオレッセンス(P. fluorescens)DR1649細胞からタンパク質封入体(IB)を調製した。Micromass(Milford、MA)製のMALDI−R(リフレクトロン)質量分析計を、製造業者の指示した方法および推奨に従ってペプチド質量を測定するために使用した。凍結した細胞ペレットを室温の水浴中で解凍した。細胞を溶解緩衝液(50mMのTris HCl、pH7.5、200mMのNaCl、5%グリセロール、2mMのEDTA二ナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸)、0.5%のTriton X−100、および1mMのDTT(ジチオスレイトール−使用直前に加えた))中で10%w/vに再懸濁した。25mLのプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich)を、全ての100gmの処理した細胞ペーストに対して加えた。12000+psiにてMicrofluidics Microfluidizer(Microfluidics Intern.Corp.、Newton、MA)にスラリーを2回通過させた。溶解物を18000×gにて4°で30分間遠心分離し、上清を保持した。スパチュラまたは機械的ミキサーを使用して(約10%w/vの固体に)穏やかに均質化することによって、細菌の臭いが残らなくなるまで(通常2または3回の洗浄)、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含まない溶解緩衝液中で封入ペレットを洗浄し、記載したように遠心分離した。得られた上清および最終ペレットを保持し、−20°で保存した。各試料の少しのアリコートを取り、SDS−PAGE分析のために微小遠心管中に保存した。次いで封入体調製ペレットを、2日間、周囲棚温度および最大真空吸引にてVirtis Advantage凍結乾燥機(Viopharma Process Systems LTD、Winchester、UK)を使用して凍結乾燥した。次いで得られた粉末を分析するまで−20°で保存した。
【0028】
SDS−PAGE分析およびIB調製物の定量:25mgのIBペレットを、1mLのHTS緩衝液(20mMのTris HCL、pH7.5、50mMのNaCl、5%v/vのグリセロール、10mMのEDTA二ナトリウム塩、0.5%v/vのTriton X−100)に再懸濁し、氷上で1分間、上記のように超音波処理した。次いで再懸濁した試料を、0.2MのDTTを含有するLaemmli試料緩衝液中で1:1で希釈した。次いで試料を、DTTを含まないLaemmli試料緩衝液中で10倍および20倍に希釈し、1×NuPAGE MES緩衝液(Invitrogen)を流した基準18ウェル10%Bis−Trisゲル(Bio−Rad Inc.)上に10μLを負荷した。100Vにて5分間、次いで200Vにて45分間、ゲルを流した。ゲルをすすぎ、20分間、水中で洗浄し、Simply Blue SafeStain(商標)で染色した。同じゲルに流した一連のウシ血清アルブミン(BSA)標準試料に対するバンドについての濃度測定値を比較することによって標的バンドの定量を行い、濃度測定標準曲線を生成するために走査した。
【0029】
Cry1Faコア毒素タンパク質の切断および精製:精製した封入体を滅菌水で洗浄し、次いで室温にて1時間、タンパク質溶液を振盪することによって、10mMのDTTを含有する20mMのCAPS、pH11(3−(シクロヘキサアミノ)1−プロパンスルホン酸)中で可溶化した。遠心分離(4°にて30分間、30000×g)により不溶性物質を除去した後、0.5%(w/v)トシルフェニルアラニルクロロメチルケトン(TPCK)(Sigma−Aldrich)で処理したトリプシンを上清に添加した。この溶液を、室温にて1時間、混合しながらインキュベートし、濾過し、Amicon Ultra−15で再生したセルロース遠心フィルター装置(30000 Molecular Weight Cutoff、Millipore)を使用して5倍に濃縮し、次いで20mMのCAPS pH10.5で平衡化したPharmacia Mono Q1010カラム上に負荷した。2カラム体積の緩衝液で負荷したカラムを洗浄した後、1.0mL/分の流速にて15カラム体積の20mMのCAPS pH10.5中の0〜0.5MのNaClの線形勾配を使用して切断毒素タンパク質を溶出した。精製したトリプシン切断型のCry1Faコア毒素を約0.2M〜0.3MのNaClで溶出した。クマシーブリリアントブルー染色(以下)を使用して可視化してSDS−PAGEによりタンパク質の純度を調べた。一部の場合、精製した毒素の合わせた画分を濃縮し、Superose6カラム(1.6cm直径、60cm長、GE Healthcare Life Sciences)上に負荷し、サイズ排除クロマトグラフィーによりさらに精製した。切断コア毒素(約68kDa)の単量体サイズに対応する単一ピークを含む画分を合わせ、濃縮し、SDS−PAGEにより判断して約68kDaの分子量を有するタンパク質について95%超均質な調製物を得た。
【0030】
精製したCry1Faコア毒素のSDS−PAGE分析:トリプシン切断型のCry1Fa毒素タンパク質のSDS−PAGE分析を、Laemmliの方法(Sambrookらによる、上記)により還元および変性条件下で行った。5%のβ−メルカプトエタノールを使用してタンパク質の還元を達成し、2%SDSの存在下で90°にて5分間、熱変性を実施した。タンパク質を4%〜20%のTris−グリシンポリアクリルアミドゲル(Invitrogen)のウェルに負荷し、200ボルトで60分間、分離した。クマシーブリリアントブルーR−250(Bio−Rad)で1時間、タンパク質バンドを染色し、次いでセルローススポンジの存在下で7%酢酸中の5%メタノールの溶液で脱染した。Quantity One(商標)画像化ソフトウェアを備えたBio−Rad Fluro−S Multi Imager(商標)を使用してゲルを画像化し、分析した。タンパク質バンドの相対分子量を、ゲルの1つのウェル中のBenchMark(商標)タンパク質ラダー(Life Technologies、Rockville、MD)またはSee Blue(商標)で予め染色した分子量マーカー(Invitrogen)の試料を含むことによって決定した。
【実施例3】
【0031】
特異的に放射性ヨウ素化したCry1Faコア毒素タンパク質の調製
Cry1Faコア毒素タンパク質のヨウ素化:以前の研究により、Cry1Fa毒素タンパク質のヨウ素化が、昆虫刷子縁膜小胞(BBMV)内のその受容体(複数可)に結合するヨウ素化タンパク質の能力、同様にタンパク質の昆虫毒性を破壊することが実証されている(Luoら、1999)。その研究において、標準的なヨウ素化ビーズ法(Pierce Iodination Beads、Thermo Fisher Scientific)を使用してCry1Fa毒素タンパク質を放射性ヨウ素化し、結合研究により、タンパク質が、シロイチモジヨトウ(S. exigua)およびツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)由来のBBMV内の受容体(複数可)に特異的に結合するその能力の全てを喪失することが明らかにされた。さらに、放射性標識されていないNaIを、ヨウ素化ビーズ法を利用してCry1Fa毒素タンパク質をヨウ素化するために使用した場合、ヨウ素化したCry1Faが食餌バイオアッセイにおいてスポドプテラ属(Spodoptera)幼虫に対してその殺虫活性を喪失することが見出された。
【0032】
ヨウ素化ビーズプロトコールによるタンパク質のヨウ素化は、オルト位においてチロシン上のヒドロキシル基に対して行われ、モノ−またはジ−置換が起こり得る。したがって、ヨウ素化の位置は対象のタンパク質内のチロシン残基の配置に依存し、複数のヨウ素化はタンパク質の構造および/または機能の崩壊の結果を招き得る。Cry1Faコア毒素部分は、ヨウ素化標的として機能し得る20個のチロシン残基を含むことに留意されたい。
【0033】
この実施例は、放射性ヨウ素を用いてCry1Faコア毒素タンパク質を標識するための代替の方法を教示している。後の実施例は、放射性標識されたコア毒素タンパク質が、昆虫BBMVに結合すること、およびヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質が、昆虫食餌バイオアッセイにおいて活性であることを教示している。さらに、これらの実施例は、トリプシン切断型のCry1Faコア毒素タンパク質が、フルオレセイン−5−マレイミドを使用してCry1Fa毒素タンパク質のC205残基に対応するシステインにおいて特異的に蛍光標識され得ること、および蛍光標識されたタンパク質が生物学的に活性であり、標識されていない、トリプシン切断型のCry1Faコア毒素のものと等しい用量で昆虫死を引き起こすことを教示している。
【0034】
Cry1Faコア毒素部分は、9、14、および205位において3つのシステインアミノ酸残基を含有する。トリプシン処理によるタンパク質の切断はC9およびC14を除去し、C205残基に対応するシステインを保持するコア毒素部分を与える。Palmerら(1997)は、フルオレセイン−5−マレイミドのフェニル環が放射性ヨウ素化でき、次いでスルフヒドリル基(例えば遊離システイン残基により与えられる)を含有するタンパク質と反応でき、その結果、タンパク質内の遊離システインのアルキル化を生じ、それにより、放射性標識されたタンパク質を与えることを実証した。トリプシン切断型のCry1Faコア毒素はC205に対応する位置に単一のシステイン残基を含有し、それにより、単一(特異的)部位においてタンパク質のアルキル化および放射性標識のための基質を与える。
【0035】
F5−Mのモル吸光係数(68,000M−1cm−1)により決定した、フルオレセイン−5−マレイミド(F5−M)をDMSO(ジメチルスルホキシド)中に10mMで溶解し、次いでリン酸緩衝生理食塩水(PBS、20mMのリン酸ナトリウム、0.15MのNaCl、pH7.5)中で1mMに希釈した。2個のPierceヨウ素化ビーズ(Thermo Fisher Scientific)を含有するPBSの70μL溶液に、0.5mCiのNa125Iを鉛遮蔽体の後ろに加えた。((ヨウ素化され、非放射性の)蛍光標識されたCry1Faコア毒素タンパク質を調製するために非放射性NaIを使用して同様の手順を実施した。)その溶液を室温にて5分間混合し、次いで10μLの1mMのF5−M溶液を加えた。10分間反応させた後、その溶液をピペット操作によりヨウ素化から除去し、PBS中の2μgの高度に精製されたトリプシン切断型のCry1Faコア毒素タンパク質をその溶液に加えた。14mMの最終濃度までβ−メルカプトエタノールを加えることにより反応が終了した場合、タンパク質をヨウ素化F5−M溶液と共に4°で48時間インキュベートした。20mMのCAPS、150mMのKCl、pH9中で平衡化したZebra(商標)スピンカラム(Invitrogen)に反応混合物を加え、タンパク質から未反応のヨウ素化染料を分離するために1500×gで2分間遠心分離した。125I放射性標識したフルオレセイン−Cry1Faコア毒素タンパク質を、その特異的放射能を決定するためにガンマカウンタで計数し、入力毒素タンパク質の80%回収と想定した。
【0036】
放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質の比放射能は約1.1μCi/μgタンパク質であった。この比放射能は、ヨウ素化ビーズ手順を使用して同様にサイズ合わせされたタンパク質を標識する典型的な予想されるレベルと比較して低かった。これはおそらく、標識している単一部位(C205に対応する)、および(Cry1Aaタンパク質の比較結晶構造を使用した局在化に基づいて)コア毒素部分のドメインI内に深く位置すると推定される、(起こり得る)その部位の相対的な接近不可能性に起因する。
【0037】
放射性標識されたタンパク質をまた、SDS−PAGEにより特徴付け、測定した放射能がCry1Faコア毒素タンパク質と共有結合していることを検証するために蛍光体イメージング(phosphor-imaging)により可視化した。放射性ヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質の放射性純度(およびそのBBMV受容体に結合したCry1Faのその後の検出)を、SDS−PAGE、蛍光体イメージングおよびガンマ計数により決定した。クマシー染色したSDS−PAGEゲルを、それらをMylar(商標)フィルム(12μm厚)中で覆い、Molecular Dynamics(Sunnyvale、CA)保存蛍光体スクリーン(35cm×43cm)下に1時間、それらを曝露することにより画像化した。Molecular Dynamics Storm 820蛍光体イメージャ(phosphor-imager)を使用してプレートを現像し、ImageQuant(商標)ソフトウェアを使用して画像を分析した。バンドの真上および真下の領域と共に放射性バンドを、かみそりの刃を使用してゲルから切断し、ガンマカウンタで計数した。Cry1Faコア毒素タンパク質バンド内およびバンドの下の領域内で放射能を検出した。Cry1Faコア毒素タンパク質バンドの上のゲル領域において放射能は検出されなかった。一部の放射能は、Cry1Faコア毒素タンパク質バンド(すなわち、Cry1Faコア毒素タンパク質より小さい断片)の下のゲル領域内で検出可能であった。これらの放射能汚染はCry1Faコア毒素タンパク質の分解産物を表している可能性がある。
【0038】
このように調製した蛍光標識された(非放射性の、ヨウ素化された)Cry1Faコア毒素タンパク質を、昆虫毒性に影響を与えないかを実証するために昆虫食餌供給バイオアッセイにおいて使用し、放射性ヨウ素化された(蛍光標識された)Cry1Faコア毒素タンパク質を、受容体結合活性に影響を与えないかを実証するためにBBMV調製物を用いた結合研究において使用した。
【実施例4】
【0039】
昆虫食餌供給バイオアッセイ
非放射性ヨウ素フルオレセイン−5−マレイミドで標識した、または標識していないいずれかのトリプシン切断型のCry1Faコア毒素タンパク質を、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)(フォールアーミーワーム、FAW)の幼虫に対する最大負荷の食餌バイオアッセイにおいてそれらの殺虫活性について個々に試験した。FAWの幼虫は、商業的な昆虫飼育場(Benzon Research Inc.、Carlisle、PA)によって維持されたコロニーから得た卵から孵化した。
【0040】
バイオアッセイは、昆虫バイオアッセイのために特別に設計した128ウェルプラスチックトレイ(C−D International、Pitman、NJ)で行った。各ウェルは0.5mLの複数種の鱗翅目の食餌(Southland Products、Lake Village、AR)を含有した。10mMのCAPS、pH10.5中で種々の濃度に希釈した精製したCry1Faコア毒素タンパク質の40μLのアリコート、または40μLの対照溶液を、各ウェルの食餌表面(26.7μL/cm)上にピペットにより送達した。1つの試料につき16個のウェルを試験した。陰性対照はタンパク質を含有しないCAPS緩衝溶液ブランクであった。陽性対照は完全長のCry1Fa毒素の調製物を含んだ。食餌表面上の液体が蒸発または食餌内に吸収されるまで、処理したトレイはドラフト中に保持した。Cry1F毒素タンパク質の食餌濃度を、ウェル(1.5cm)中の表面積の1平方センチメートル当たりのCry1F毒素タンパク質の量(ng)として算出した。
【0041】
孵化の数時間以内に、個々の幼虫を湿らせたラクダの毛のブラシを用いて取り、1つのウェルごとに処理した食餌上に1匹の幼虫を置いた。次いで寄生されたウェルを、ガス交換を可能にする通気する透明プラスチックの接着シート(C−D International、Pitman、NJ)で密閉した。バイオアッセイトレイを、制御された環境条件(28°、約40%相対湿度、16:8(明:暗))の下に5日間保持し、その時間の後、各タンパク質試料に曝露した昆虫の全数、死んだ昆虫の数、および生存している昆虫の体重を記録した。各処理についての死亡率および増殖阻害率を算出した。増殖阻害(GI)は以下のように算出した:
GI=[1−(TWIT/TNIT)/(TWIBC/TNIBC)]
式中、TWITは処理における昆虫の全重量であり、
TNITは処理における昆虫の全数であり、
TWIBCはバックグランドチェック(緩衝液対照)における昆虫の全重量であり、
TNIBCはバックグランドチェック(緩衝液対照)における昆虫の全数である。
GI50は、GI値が50%である、すなわちCry1Faを含有する食餌での昆虫の増殖が、上記で算出した場合、Cry1Faタンパク質を有さない食餌での昆虫のものの半分のみである、食餌中のCry1Fa毒素タンパク質の濃度であると決定した。LC50(50%致死濃度、試験昆虫の50%が死滅した食餌中のCry1Fa毒素タンパク質の濃度として算出する)は、5日の実験の期間の間に死がほとんど観測されなかったので、決定しなかった。JMPソフトウェア(SAS、Cary、NC)を使用して統計的解析(一元配置分散分析(One-way ANOVA))を行う。
【0042】
標識された、および標識されていないCry1Faコア毒素タンパク質は、ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)の幼虫の増殖阻害においてほぼ同様の活性であり、33ng/cmから100ng/cmの間の濃度にて50%の増殖阻害を引き起こす(図1)。この結果は、ヨウ素化フルオレセイン−5−マレイミドでのトリプシン切断型のCry1Faコア毒素タンパク質の標識が殺虫活性の喪失を生じないことを示す。
【実施例5】
【0043】
刷子縁膜小胞(BBMV)の調製
可溶化BBMVの調製:ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)およびヨーロッパアワノメイガ(Ostrinia nubilalis)(ヨーロピアンコーンボーラー)の終齢幼虫を、一晩食餌を与えずに保持し、次いで15分間、氷上で冷却した後に解剖した。中腸組織を体腔から取り出し、外皮に付着している後腸は残しておいた。供給者により推奨されるように希釈したプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma−Aldrich P−2714)を追加した、9倍の体積の氷冷均質化緩衝液(17mMのTris塩基、pH7.5、300mMのマンニトール、および5mMのEGTA(エチレングリコール四酢酸))中に中腸を入れた。カクテル成分の最終濃度(μM)はAEBSF(500)、EDTA(250)、ベスタチン(32)、E−64(0.35)、ロイペプチン(0.25)、およびアプロチニン(0.075)であった。15ストロークのガラス繊維ホモジナイザーを用いて組織を均質化した。Wolfersberger(1993)のMgCl沈殿法によりBBMVを調製した。簡潔に述べると、等量の24mMのMgCl溶液を中腸ホモジネートと混合し、5分間攪拌し、氷上に20分間静置した。その溶液を2500×g、4°にて15分間、遠心分離した。上清を保存し、ペレットを0.5倍体積の均質化緩衝液内に懸濁し、再び遠心分離した。2つの上清を合わせ、BBMV画分を形成するために27000×g、4°にて30分間、遠心分離した。ペレットを、約3mg/mLタンパク質の濃度でBBMV保存緩衝液(10mMのHEPES pH7.4(4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸)、130mMのKCl、10%のグリセロール)中に懸濁した。基準物としてBSAを用いるBradford法(Bradford、1976)を使用することによってタンパク質濃度を決定した。アミノペプチダーゼN決定のためのロイシン−p−ニトロアニリドアッセイを、製造業者の指示書に従ってSigma−Aldrichアッセイキットを使用して試料を凍結する前に行った。BBMV画分中のこのマーカー酵素の比放射能は典型的に、中腸のホモジネート画分に見出されたものと比較して7倍増加した。BBMV調製物を250μLの試料中に分配し、液体窒素中で急速冷凍し、−80°で保存した。
【実施例6】
【0044】
BBMVに対するヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質結合アッセイ
BBMVに対する125I−Cry1Faコア毒素タンパク質の結合:競合結合アッセイに使用する最適量のBBMVタンパク質を決定するために、飽和曲線を生成した。125Iで放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質(0.5nM)を、結合緩衝液(8mMのNaHPO、2mMのKHPO、150mMのNaCl、0.1%のBSA、pH7.4)中に0〜500μg/mLの範囲の濃度でヨーロッパアワノメイガ(O. nubilalis)(ECB)BBMVタンパク質と共に28°で1時間インキュベートした。全体積は0.5mLであった。結合した125I−Cry1Faコア毒素タンパク質を、3連で150μLの反応混合物をサンプリングし、室温にて8分間、14000×gで試料を遠心分離することにより未結合の物質から分離した。上清を穏やかに除去し、ペレットを氷冷結合緩衝液で3回洗浄した。ペレットを含有する遠心管の底を切断し、13×75−mmガラス培養管内に入れた。各試料をガンマカウンタで10分間計数した。カウント毎分(CPM)−バックグランド(タンパク質を加えていない反応)の値をBBMVタンパク質濃度に対してプロットした。各結合反応に使用するためのBBMVタンパク質の最適範囲は100μg/mL〜150μg/mLであると決定した。
【0045】
結合反応速度:結合反応速度を決定するために、飽和曲線を生成した。簡潔に述べると、150μg/mLのECB BBMVタンパク質を、漸増濃度(0.5nM〜20nMの範囲)の125I−Cry1Faコア毒素タンパク質と共に28°で1時間、インキュベートした。3連で150μLの各濃度をサンプリングし、続いて遠心分離し、上記のように計数することによって全ての結合を決定した。3連の値を平均化した。非特異的結合を、1,000nMの非放射性(競合相手)Cry1Faコア毒素タンパク質を添加して、同じように決定した。この濃度は、使用した放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質の最も高い濃度より少なくとも50倍高かったので、それは、放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質を置き換えながら、全ての利用可能な受容体部位に結合すると予想される。全結合と非特異的結合との間のCPM(マイナスバックグランド)の差として特異的結合を算出した。125I−Cry1Faコア毒素タンパク質が、ECB BBMVタンパク質の11nMのKおよび37fmole/mgのBmaxで飽和可能な様式でECB BBMVタンパク質に特異的に結合することを決定した(図2)。非特異的結合のレベルは全結合のほぼ70%であったが、特異的結合のレベルは明らかに飽和し、相互作用が受容体媒介性結合反応であることを示す。
【実施例7】
【0046】
BBMVとの競合結合アッセイ
放射性標識されたCry1Faコア毒素タンパク質と他の(標識されていない)Cry毒素タンパク質との間の受容体部位への結合に対する競合の量を決定するために「プルダウン」型の受容体アッセイを使用した。このアッセイにおいて、受容体に対する結合リガンドの相対分子サイズをSDS−PAGEによる分離により特徴付け、BBMV受容体に結合した放射性標識されたリガンドの量を、蛍光体イメージングによるゲル内の放射能の検出により測定した。100μg/mLまたは150μg/mLのBBMVタンパク質(種々の昆虫源由来)および0.5nMまたは2.5nMの125I−Cry1Faコア毒素タンパク質を使用して相同および異種競合結合アッセイを行った。競合リガンド(すなわち1000nMの放射性標識されていないCry毒素タンパク質)を、正確な競合結合相互作用を保証するために放射性リガンドと同時に反応混合物に加えた。インキュベーションを28°にて1時間実施し、そのBBMV受容体(複数可)に結合した125I−Cry1Faコア毒素タンパク質を、上記の反応混合物を遠心分離することにより未結合タンパク質から分離した。ペレットを氷冷結合緩衝液で3回洗浄し、次いで5%のβ−メルカプトエタノールを含む25μLの2×Laemmli緩衝液を加えることにより可溶化し、95°にて10分間、試料を急速に混合した。その試料を遠心分離し、2連の試料を4%〜20%のTrisグリシンポリアクリルアミドゲル上に負荷し、SDS−PAGEにより分離した。受容体に結合した125I−Cry1Faコア毒素タンパク質の量を、ゲルの蛍光体イメージングおよびプレートの3日間曝露後の放射性Cry1Faコア毒素タンパク質に対応するバンドの濃度測定により測定した。
【0047】
対照反応において、0.5nMの125I−Cry1Faコア毒素タンパク質を、ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)(FAW)BBMVタンパク質と共に1時間インキュベートし、BBMVに結合した125I−Cry1Faタンパク質の量を、SDS−PAGEおよび上記の蛍光体イメージングにより測定した。1000nMの標識されていないCry1Faコア毒素タンパク質を加えた同時実験により、この標識されていないCry1Faコア毒素タンパク質の2000倍の過剰な濃度の添加が、放射性標識されたCry1Faタンパク質の結合を完全に除去したことが実証された。これらの結果により、このアッセイが、そのFAW BBMV受容体(複数可)に対してCry1Faコア毒素タンパク質の結合を置き換えるCry毒素タンパク質の能力を効果的に測定することが実証された。同様に、1000nMのCry1Abコア毒素タンパク質が、FAW BBMVタンパク質に対する125I−Cry1Faコア毒素タンパク質の結合を完全に除外したことが決定された。この結果は、Cry1Ab毒素タンパク質およびCry1Fa毒素タンパク質が、類似の受容体結合部位を共有することを示している他の報告(Banksら、2001、HernandezおよびFerre、2005)と一致する。
【0048】
さらに、1000nMのCry1Caコア毒素タンパク質と0.5nMの125I−Cry1Faコア毒素タンパク質との間のFAW BBMV受容体への結合に対する競合が存在しないことが見出され、Cry1Caタンパク質が、Cry1Fa受容体(複数可)と異なる受容体に結合することが示される。この結果は、ジアトラエア・サッカラリス(Diatraea saccharalis)(サトウキビ害虫(sugarcane borer))BBMVを用いて行った他の研究と一致し、その研究において、過剰なCry1Faタンパク質は、その受容体(複数可)でビオチン化Cry1Caタンパク質を置き換えないことが見出された。
【実施例8】
【0049】
Cry1Fa毒素に耐性があるFAW昆虫から調製したBBMVに対するCry1Faコア毒素の結合
摂取したCry1Fa毒素による中毒に耐性がある昆虫の幼虫から調製したBBMVを使用してプルダウン競合結合アッセイを実施した。ツマジロクサヨトウ(S. frugiperda)(rFAW))のCry1Fa−耐性幼虫を、所有者のコロニー(Dow AgroSciences LLC、Indianapolis、IN)から採取した卵から孵化した。rFAW幼虫は、Cry1Fa毒素の毒性に対して30倍より多くの耐性がある。BBMVは、それらのCry1Fa−感受性相対物からと同じようにrFAW幼虫から調製した。
【0050】
上に示したように、野生型(すなわちCry1Fa−感受性)FAW幼虫由来のBBMVは125I−Cry1Faに結合し、その結合は、2000倍の標識されていないCry1Faタンパク質の添加により置き換えることができた。対照的に、rFAW幼虫から調製し、2.5nMの125I−Cry1Faを用いて100μg/mLにてプルダウン結合アッセイに使用したBBMVは、125I−Cry1Faコア毒素タンパク質のいずれにも結合しなかった。これらの結果により、rFAWにおけるCry1Fa毒素に対する耐性が、BBMV内のCry1Fa受容体(複数可)がCry1Faコア毒素タンパク質に結合できないことに起因し得ることが示される。あるいは、耐性は昆虫由来の受容体が存在しない結果であり得る。いずれの場合でも、これらのrFAW幼虫内のCry1Fa毒素に対する耐性の機構は受容体に基づいているようである。
【実施例9】
【0051】
Cry1Fa毒素に耐性があるECB昆虫から調製したBBMVに対するCry1Faコア毒素の結合
摂取したCry1Fa毒素による中毒に対して耐性がある昆虫の幼虫から調製したBBMVを使用してプルダウン競合結合アッセイを実施した。ヨーロッパアワノメイガ(O. nubilalis)(rECB)のCry1Fa−耐性幼虫を、所有者のコロニー(Dow AgroSciences LLC、Indianapolis、IN)から採取した卵から孵化した。rECB幼虫はCry1Fa毒素の毒性に対して30倍より多くの耐性がある。BBMVは、それらのCry1Fa−感受性相対物からと同じようにrECB幼虫から調製した。
【0052】
野生型ECB幼虫(すなわちCry1Fa−感受性)およびCry1Fa−耐性(rECB)幼虫から調製した100μg/mLのBBMVを使用し、および2.5nMの125I−Cry1Faコア毒素タンパク質を使用してプルダウン実験を行った。放射性ヨウ素化タンパク質はECB幼虫由来のBBMVに結合したが、FAW幼虫由来のBBMVに対する結合について見られたものよりも少ない程度であった。放射性標識されていない(競合相手)Cry1Faタンパク質は、ECB BBMVに対する125I−Cry1Faの結合と競合したが、その競合はFAW BBMVを使用した競合実験において測定したものより少なかった。
【0053】
rECB BBMVに対する125I−Cry1Faの一部の結合を検出し、結合の量は、ECB BBMVを使用して測定したものより低かった。放射性標識されていない(競合相手)Cry1Faタンパク質は、rECB BBMVへの結合に対して125I−Cry1Faコア毒素タンパク質と完全に競合しなかった。これらのデータにより、ECBおよびrECB由来のBBMVを使用して表面プラズモン共鳴により行われた以前のCry1Fa結合研究が支持される。それらの研究により、ヨウ素化されていないCry1Fa毒素タンパク質が、ECBまたはrECB幼虫のいずれかから調製したBBMV画分に結合できたが、ECB BBMVからの毒素の解離は、rECB BBMVからのその解離より緩やかであったことが示された。本明細書に記載したプルダウン型アッセイにおいて検出した125I−Cry1Faコア毒素タンパク質結合は、結合親和性を測定するのに十分な量ではないが、Cry1Fa毒素タンパク質はかなりの程度、rECB BBMVに結合することが示される。したがって、rECBにおけるCry1Fa毒素に対する耐性は、影響を受けやすい幼虫の受容体に対する結合と比較して、rECB BBMV受容体(複数可)に対するCry1Faコア毒素タンパク質の効率の悪い結合に起因し得る。これは、毒素が受容体に残っている時間が、影響を受けやすい昆虫よりも短いので、膜の細孔形成に関する低い有効性として現れ得る。
【0054】
表1は、種々の昆虫源由来のBBMV調製物と共に放射性ヨウ素化Cry1Faコア毒素タンパク質を使用したアッセイの相対結合結果をまとめている。パーセンテージは、非放射性競合リガンドを有する、および有さない、BBMVに対する放射性結合の相対量を示す。100%の値は等しい数を表さず、ECB BBMVは、FAW BBMVより少ない全Cry1Faタンパク質に結合する。
【0055】
【表1】
【0056】
本発明は、驚くべきことに、Cry1Faコア毒素タンパク質を、125I標識されたフルオレセイン−5−マレイミドを使用して放射性標識し、殺虫活性および受容体結合能力を維持しながら特異的にシステイン残基をアルキル化することができることを実証する。Cry1Faコア毒素のトリプシン切断型の形態は、放射性標識部位を含まなければならない単一のシステイン残基(Cry1FaのドメインI内のC205に対応する)のみを含有する。この領域は、タンパク質の孔構造の一部を構成し、受容体結合に関与しないと考えられる。タンパク質生化学および構造の分野の当業者は、マレイミド官能基に結合したフェノール環を含有する、フルオレセイン−5−マレイミドと同様の分子が、クロラミン化学によりヨウ素化でき、Cry1Faなどのタンパク質内の特異的システイン残基をヨウ素化するために使用できることを理解するであろう。特に、フルオレセイン−5−マレイミドより小さい類似体は、Cry1Faコア毒素の内部により接近可能であり得るので、標識タンパク質のより高い比放射能を生じ得る。
【0057】
本発明において産生されるシステインアルキル化Cry1Faタンパク質はFAW幼虫に対して殺虫活性がある。標識されていないCry1Caタンパク質ではなく、標識されていないCry1Faタンパク質および標識されていないCry1Abタンパク質は、FAW BBMV由来の放射性標識されたCry1Faタンパク質の結合を置き換えることができる。バイオアッセイデータにより、Cry1Caが、FAWおよびrFAW幼虫の両方に対して活性があるが、Cry1AbはrFAW幼虫に対して活性が低いことが実証される。したがって、FAWおよびrFAW幼虫に対するCry1Fa、Cry1Ab、およびCry1Caタンパク質の生物活性は、BBMV結合アッセイ結果によって都合良く説明され、予測される。したがって、昆虫管理戦略に有用なCryタンパク質の組合せが、本発明の方法により放射性標識されたCry1Faタンパク質を利用する競合結合アッセイを使用して予測できることは、本発明の一態様である。
【0058】
(参考文献)



図1
図2
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]