【実施例1】
【0023】
[可変動弁機構1の全体構成]
図1〜
図6に示す本実施例1の可変動弁機構1は、内燃機関の排気用のバルブ6を駆動する。その内燃機関は、4サイクルエンジンであって、気筒内の空間が拡大する間の吸気行程iと、その後の前記空間が縮小する間の圧縮行程iiと、その後の前記空間が拡大する間の膨張行程iiiと、その後の前記空間が縮小する間の排気行程ivとの4行程i〜ivでサイクルする。そして、バルブ6に対しては、バルブ6を閉じる方向に付勢するバルブスプリング(図示略)が設けられている。この可変動弁機構1は、次に示す揺動部材20と可変装置40とを備えている。
【0024】
すなわち、揺動部材20は、ファーストカムプロフィールFを備えたカム9と、セカンドフォロア31との間に設けられており、
図2(a)(b)に示すように、ファーストカムプロフィールFに従い所定のリフト方向とその反対の反リフト方向とに揺動する。この揺動部材20は、セカンドカムプロフィールSを備え、そのセカンドカムプロフィールS内には、セカンドフォロア31を押動しないベース円プロフィールSaと、揺動部材20がリフト方向に揺動したときにセカンドフォロア31を押動してバルブ6を開放するリフト用プロフィールSbとが設けられている。
【0025】
また、可変装置40は、
図3(a)に示すように、揺動部材20の揺動範囲の反リフト方向側の端である揺動開始位置αをリフト方向に変更することで、揺動範囲のリフト方向側の端であるリフト位置βもリフト方向に変更して、バルブ6のリフト量Lを増加させる。また、この可変装置40は、
図3(b)に示すように、揺動開始位置αを反リフト方向に変更することで、リフト位置βも反リフト方向に変更して、バルブ6のリフト量Lを減少させる。
【0026】
そして、セカンドカムプロフィールS内の、ベース円プロフィールSaを間に挟むリフト用プロフィールSbの反対側には、逆側リフト用プロフィールScが設けられている。そして、可変装置40は、所定時以外の通常時には、
図3(a)(b)に示すように、揺動開始位置αを所定の通常範囲n内にすることで、逆側リフト用プロフィールScでフォロア31を押動しないようにし、前記所定時には、
図3(c)に示すように、揺動開始位置αを前記通常範囲nよりも反リフト方向側にすることで、逆側リフト用プロフィールScでフォロア31を押動してバルブ6を開放するようにする。
【0027】
言い換えると、揺動部材20には、所定の逆側リフト開始位置xよりも反リフト方向側に揺動したときにバルブ6をリフトして開放する逆側リフト部23を備えている。そして、可変装置40は、所定時以外の通常時には、
図3(a)(b)に示すように、揺動開始位置αを逆側リフト開始位置xよりもリフト方向側にすることで、逆側リフト部23でバルブ6を開放しないようにし、前記所定時には、
図3(c)に示すように、揺動開始位置αを逆側リフト開始位置xよりも反リフト方向側にすることで、逆側リフト部23でバルブ6を開放するようにする。
【0028】
[カム9]
カム9は、前記4行程i〜ivで一回転するカムシャフト8に設けられており、そのカムシャフト8と共に回転する。このカム9は、ベース円9aと、ベース円9aから突出したノーズ9bとを備えている。そして、そのベース円9aとノーズ9bとの外周面が、ファーストカムプロフィールFを構成している。
【0029】
[入力機構10]
カム9と揺動部材20との間には、カム9の駆動力を揺動部材20に伝える入力機構10が介装されている。その入力機構10は、ファーストフォロア11と伝達部材12とを含み構成されている。そのファーストフォロア11は、その外周面がファーストカムプロフィールFに当接したローラであって、可変装置40の第二制御リンク42bに回動可能に支持されている。また、伝達部材12は、ファーストカムフォロア11と同じく、第二制御リンク42bに回動可能に支持されており、揺動部材20に当接している。
【0030】
[揺動部材20]
揺動部材20は、断面形状が円形のベース円21と、ベース円21から突出したノーズ22及び逆側リフト部23とを含み構成されている。そして、ベース円21とノーズ22と逆側リフト部23との外周面が、セカンドカムプロフィールSを構成している。詳しくは、ベース円21の外周面には、ベース円プロフィールSaが設けられ、ノーズ22の外周面には、リフト用プロフィールSbが設けられ、逆側リフト部23の外周面には、逆側リフト用プロフィールScが設けられている。
【0031】
この揺動部材20は、可変装置40の制御シャフト41に相対揺動可能に支持されている。そして、この揺動部材20に対しては、図示しないロストモーションスプリングが設けられており、そのロストモーションスプリングで、揺動部材20及び伝達部材12を介して、ファーストフォロア11をファーストカムプロフィールFに付勢している。
【0032】
そして、この揺動部材20は、前記所定時には、次のようにして、前記4行程i〜iv全てでバルブ6を開放する。すなわち、前記所定時には、排気行程iv以外の3行程i〜iiiでは、反リフト方向側に揺動することで、逆側リフト部23の逆側リフト用プロフィールScでバルブ6をリフトして開放する。その一方、排気行程ivでは、リフト方向側に揺動することで、ノーズ22のリフト用プロフィールSbでバルブ6をリフトして開放する。
【0033】
[出力機構30]
出力機構30は、セカンドフォロア31とロッカアーム35とを含み構成されている。そのセカンドフォロア31は、外周面がセカンドカムプロフィールSに当接したローラであって、ロッカアーム35に回動可能に支持されている。そのロッカアーム35は、ラッシュアジャスタ36に揺動可能に支持されて、バルブ6に当接している。
【0034】
そのラッシュアジャスタ36は、有底筒状のボディ36aと、下部がボディ36aに挿入されて上端部でロッカアーム35を支持したプランジャ36bとを備えている。そして、セカンドフォロア31の外周面とセカンドカムプロフィールSとの間にクリアランスが発生すると、ボディ36aからプランジャ36bが繰り出すことでクリアランスを埋める。また、ロッカアーム35からプランジャ36bに下方に負荷が加わるとボディ36aにプランジャ36bが退入する。
【0035】
詳しくは、プランジャ36bの退入時には、ボディ36aの内部にある高圧油室内の油がプランジャ36bの内部にある低圧油室にリーク路からリークすることで流動抵抗が生じる。そのため、ボディ36aにプランジャ36bが徐々にゆっくりと退入する。また、プランジャ36bの繰出し時には、ボディ36aの内部にあるバネの復元力でボディ36aからプランジャ36bが繰り出される。このとき、低圧油室の油は高圧油室にリーク路よりも広くて逆止弁のついた流路から流れ込む。そのため、プランジャ36bの退入時ほどの流動抵抗は生じず、ボディ36aからプランジャ36bが速やかに繰り出す。
【0036】
[可変装置40]
前記所定時は、内燃機関の始動時と減速時とを含んでいる。そして、可変装置40は、カムシャフト8と平行に延びる制御シャフト41と、制御シャフト41をその周方向に回動させる変位装置(図示略)と、制御シャフト41の力(制御力)を揺動部材20に伝える制御機構42とを含み構成されている。
【0037】
その制御機構42は、第一制御リンク42aと、第二制御リンク42bとを含み構成されている。その第一制御リンク42aは、制御シャフト41からその径方向に延びており、制御シャフト41と共に回動する。また、第二制御リンク42bは、第一制御リンク42aに関節部jを介して相対回動可能に連結されおり、前述の通り、ファーストフォロア11と伝達部材12とを回動可能に支持している。
【0038】
そして、可変装置40は、変位装置(図示略)で制御シャフト41を回動させることで、その力(制御力)を、制御シャフト41 → 第一制御リンク42a → 第二制御リンク42b → 伝達部材12 → 揺動部材20の順に伝えて、揺動部材20の揺動開始位置αを、制御シャフト41の軸線周りに変更する。
【0039】
[可変装置40の具体的機能]
具体的には、
図3(a)に示すように、変位装置(図示略)で制御シャフト41をその軸線回りに一方(揺動部材20の反リフト方向)に回動させることで、揺動部材20の揺動開始位置αを、同じ軸線回りに逆に他方(リフト方向)にシフトさせる。これにより、
図5の「高リフト駆動時(通常時)」に示すように、排気行程ivでのバルブ6のリフト量L及び作用角が増大する。そして、このとき、
図6(b)の「高リフト駆動時(通常時)」に示すように、セカンドカムプロフィールSに対するセカンドフォロア31の当接点tの軌跡を示す矢印は、ベース円プロフィールSa側(同図の左側)からリフト用プロフィールSb側(右側)にシフトする。
【0040】
また、
図3(b)に示すように、変位装置(図示略)で制御シャフト41をその軸線回りに他方(揺動部材20のリフト方向)に回動させることで、揺動部材20の揺動開始位置αを、同じ軸線回りに逆に一方(反リフト方向)にシフトさせる。これにより、
図5の「低リフト駆動時(通常時)」に示すように、排気行程ivでのバルブ6のリフト量L及び作用角が減少する。そして、このとき、
図6(b)の「低リフト駆動時(通常時)」に示すように、セカンドカムプロフィールSに対するセカンドフォロア31の当接点tの軌跡を示す矢印は、リフト用プロフィールSb側(同図の右側)からベース円プロフィールSa側(左側)にシフトする。
【0041】
そして、その状態(低リフト駆動時の状態)から、
図3(c)に示すように、変位装置(図示略)で制御シャフト41をその軸線回りに他方(揺動部材のリフト方向)に更に回動させることで、揺動部材20の揺動開始位置αを、同じ軸線回りに逆に一方(反リフト方向)に更にシフトさせる。これにより、
図5の「所定時」に示すように、排気行程ivでのバルブ6のリフト量L及び作用角が更に減少するとともに、排気行程iv以外の3行程i〜iiiでは、逆側リフト用プロフィールScでバルブ6を所定の逆側リフト量Loだけ開放するようになる。そして、このとき、
図6(b)の「所定時」に示すように、セカンドカムプロフィールSに対するセカンドフォロア31の当接点tの軌跡を示す矢印は、リフト用プロフィールSb側(同図の右側)からベース円プロフィールSa側(左側)に更にシフトする。そして、その当接点tの軌跡を示す矢印のベース円プロフィールSa側の端(左端)が、ベース円プロフィールSaを越えて、逆側リフト用プロフィールSc内に入る。
【0042】
そして、その所定時の状態では、
図4(a)に示すように、セカンドカムプロフィールSに対するセカンドフォロア31の当接点tが、逆側リフト用プロフィールSc内にある間は、逆側リフト用プロフィールScでフォロア31を押動してバルブ6を開放する。また、
図4(b)に示すように、当接点tがベース円プロフィールSa内にある間は、バルブ6が閉じる。また、
図4(c)に示すように、当接点tがリフト用プロフィールSb内にある間は、リフト用プロフィールSbでセカンドフォロア31を押動してバルブ6を開放する。
【0043】
よって、前記所定時の揺動行程内には、
図5に示すように、逆側リフト用プロフィールScでバルブ6をリフトして開放する逆側リフト区間Cと、ベース円プロフィールSaがセカンドフォロア31に当接することでバルブ6が閉じる閉弁区間Aと、リフト用プロフィールSbでバルブ6をリフトして開放するリフト区間Bとの3つの区間A,B,Cがある。
【0044】
[実施例1の効果]
本実施例1によれば、次の[A][B]の効果を得ることができる。
【0045】
[A]内燃機関の始動時や減速時等の所定時には、排気行程iv以外の3行程i〜iiiでは、逆側リフト用プロフィールScでバルブ6を開放することで、気筒内での圧縮抵抗や膨張抵抗が低減される。また、更に、同所定時には、排気行程ivでのリフト用プロフィールSbによるバルブ6のリフト量Lが減少することで、リフト負荷が低減される。よって、前記所定時には、前記4行程i〜ivの全てで負荷が低減される。そのため、前記所定時に負荷を効率的に低減することができ、そのため、燃費も効率的に向上させることができる。
【0046】
具体的には、内燃機関の始動時には、前記4行程i〜ivで負荷が低減されることで、該始動時にモータで加えるべき負荷が低減され、消費電力が抑えられる。そして、このような効果は、前記内燃機関がハイブリッドエンジンやアイドルストップを行うエンジンである場合等、エンジンを始動する頻度が多い場合に特に顕著に現れる。また、内燃機関の減速時には、前記4行程i〜ivで負荷が低減されることで、エンジンブレーキが抑えられ、燃料の消費が節約される。
【0047】
[B]前記所定時の揺動行程内には、閉弁区間Aがあるため、たとえ、前記所定時が続いても、プランジャ36bが負荷され続けることがなく、閉弁区間Aがくる度に、ボディ36aからプランジャ36bが繰り出してプランジャ36bが元の位置に復帰する。よって、プランジャ36bが沈み続ける心配がない。そのため、前記所定時から前記通常時に戻ったときに、プランジャ36bの沈み込みが原因でセカンドフォロア31の外周面とセカンドカムプロフィールSとの間にクリアランスが生じて、ロッカアーム35及びセカンドフォロア31が不安定になる、といった心配もない。
【実施例3】
【0055】
図10〜12に示す本実施例3の可変動弁機構3は、実施例2と比較して、次の点で相違し、その他の点で同様である。
【0056】
[入力機構10]
すなわち、ファーストフォロア11は、揺動部材20に相対回動可能に支持されており、実施例2でいう「伝達リンク19」はない。
【0057】
[揺動部材20]
また、揺動部材20は、カムシャフト8に相対回転を許容しつつ係合した支持部材27に相対揺動可能に支持されており、実施例2でいう「支持シャフト26」はない。また、セカンドカムプロフィールSの逆側リフト用プロフィールSc以外の部分は、一連のメインプロフィールSabとなっており、セカンドフォロア31を押動しないベース円プロフィールSaと、押動するリフト用プロフィールSbとには分かれていない。すなわち、この揺動部材20は、通常時の揺動開始位置αでは、メインプロフィールSabの一端側の所定の開始箇所(可変)でセカンドフォロア31に当接する。そして、この揺動部材20は、揺動開始位置αからリフト方向に揺動し始めたら、前記開始箇所よりも他端側の部分でセカンドフォロア31を押動する。なお、この揺動部材20も、所定時の揺動開始位置αでは、実施例1,2と同様、逆側リフト用カムプロフィールScでセカンドフォロア31に当接する
【0058】
[出力機構30]
また、セカンドフォロア31は、第二揺動部材32に回動可能に支持されており、ロッカアーム35には支持されていない。その第二揺動部材32は、カムシャフト8と平行に延びる支持シャフト33に揺動可能に支持されている。そして、ロストモーションスプリング(図示略)は、揺動部材20に対してではなく、第二揺動部材32に対して設けられており、そのロストモーションスプリングで、第二揺動部材32、セカンドフォロア31及び揺動部材20を介して、ファーストフォロア11をファーストカムプロフィールFに付勢している。そして、ロッカアーム35は、セカンドフォロア31の代わりに、外周面が第二揺動部材32に当接したローラ状のサードフォロア34を回動可能に支持している。
【0059】
[可変装置40]
また、制御機構42は、制御シャフト41からその径方向に延びて揺動部材20に対して自身の長さ方向に相対変位可能に係合した制御リンク42dを備えており、実施例2でいう「制御カム42c」はない。その制御リンク42dは、制御シャフト41と共に回動する。
【0060】
そして、可変装置40は、変位装置(図示略)で制御シャフト41を回動させることで、その力(制御力)を、制御シャフト41 → 制御リンク42d → 揺動部材20の順に伝えて、揺動部材20の揺動開始角度αを、カムシャフト8の軸線回りに変更する。
【0061】
[可変装置40の具体的機能]
その具体的な説明は、実施例1の[可変装置40の具体的機能]での説明と、「
図3」を「
図12」に読み替え、「同じ軸線回り」を「カムシャフト8の軸線回り」に読み替え、「ベース円プロフィールSa側」を「メインプロフィールSabの一端側」に読み替え、「リフト用プロフィールSb側」を「メインプロフィールSabの他端側」に読み替え、「ベース円プロフィールSa内」を「メインプロフィールSabの所定の境界箇所(可変)よりも一端側」に読み替え、「リフト用プロフィールSb内」を「メインプロフィールSabの前記境界箇所よりも他端側」に読み替え、「リフト用プロフィールSbで」を「メインプロフィールSabの前記境界箇所よりも他端側で」に読み替え、「ベース円プロフィールSaが」を「メインプロフィールSabの前記境界箇所よりも一端側が」に読み替えるとともに、
図4〜
図6に関する記載(「
図4(a)に示すように」等)を省いて同様である。
【0062】
[実施例3の効果]
本実施例3でも、実施例1に記載の[A][B]の効果を得ることができる。
【0063】
なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもでき、例えば、可変動弁機構1〜3を吸気用のバルブに対して設置してもよい。
【0064】
1 可変動弁機構(実施例1)
2 可変動弁機構(実施例2)
3 可変動弁機構(実施例3)
6 バルブ
9 カム
20 揺動部材
21 ベース円
22 ノーズ
23 逆側リフト部
30 出力機構(動力伝達系)
31 セカンドフォロア(フォロア)
36 ラッシュアジャスタ
36a ボディ
36b プランジャ
40 可変装置
F ファーストカムプロフィール
S セカンドカムプロフィール
Sa ベース円プロフィール
Sb リフト用プロフィール
Sc 逆側リフト用プロフィール
A 閉弁区間
B リフト区間
C 逆側リフト区間
L リフト量
α 揺動開始位置
n 通常範囲
x 逆側リフト開始位置
i 吸気行程
ii 圧縮行程
iii 膨張行程
iv 排気行程