(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232293
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】バタフライ弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/22 20060101AFI20171106BHJP
F16K 47/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F16K1/22 R
F16K47/02 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-1259(P2014-1259)
(22)【出願日】2014年1月7日
(65)【公開番号】特開2015-129550(P2015-129550A)
(43)【公開日】2015年7月16日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】堀口 英三
【審査官】
松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−329169(JP,A)
【文献】
特開2008−249151(JP,A)
【文献】
実開昭63−017372(JP,U)
【文献】
特開2013−119867(JP,A)
【文献】
特開2015−102108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00−1/54
F16K 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路の一部となる円筒状の弁箱と、該弁箱の軸線に直交する方向に配置された弁棒と、該弁棒を回動中心として前記弁箱内で流路を遮断する全閉状態から流路に平行な全開状態まで回動可能に設けられた円盤状の弁体とを備えたバタフライ弁において、前記弁体は、前記弁棒の外径寸法より小さな厚さ寸法の平板状に形成された弁体本体部と、該弁体本体部の中央部直径方向に設けられた弁棒挿通用筒状部とを備え、前記弁棒挿通用筒状部の外面から前記弁体本体部の外面に至る弁体外面を双曲面で形成するとともに、前記弁体本体部の外周部に沿う位置に、弁体閉じ方向に向かって突出した閉じ側整流部と、弁体開き方向に向かって突出した開き側整流部とを設け、前記閉じ側整流部は、円弧状に突設した整流板に多数の通孔が設けられ、前記開き側整流部は、複数の突起部をあらかじめ設定された間隔で突出させた櫛歯状に形成されていることを特徴とするバタフライ弁。
【請求項2】
前記複数の突起部の高さは、前記整流板の高さより低く形成されていることを特徴とする請求項1記載のバタフライ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁に関し、詳しくは、弁箱内を横切るように配置した弁体を弁棒で回動させることによって流量調整を行うバタフライ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
バタフライ弁は、流路の一部となる円筒状の弁箱と、該弁箱の軸線に直交する方向に配置された弁棒と、該弁棒を回動中心として回動する円盤状の弁体とを備えており、閉弁時には、弁体が弁箱内を横切る状態となる。従来のバタフライ弁における弁体は、いわゆるレンズ型弁体あるいは複数の補強リブを有する平板型弁体が多く用いられており、弁体におけるオリフィス側の下流部分やノズル側の上流部分などにキャビテーション抑制用の部材を設けたり、加工を施したりしていた(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−157866号公報
【特許文献2】実開平4−13872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来のバタフライ弁は、弁体の構造上、上流側と下流側とが決まってしまうので、管路網などの連絡管や、親子バタフライ弁などの管路充水用として用いる場合、流体の流れ方向によって性能が大きく異なり、弁の設置方向に制約を受けることが多い。
【0005】
そこで本発明は、流体の流れ方向に影響されずに、減圧制御、流量制御を行うことができ、耐キャビテーション性にも優れたバタフライ弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のバタフライ弁は、流路の一部となる円筒状の弁箱と、該弁箱の軸線に直交する方向に配置された弁棒と、該弁棒を回動中心として前記弁箱内で流路を遮断する全閉状態から流路に平行な全開状態まで回動可能に設けられた円盤状の弁体とを備えたバタフライ弁において、前記弁体は、前記弁棒の外径寸法より小さな厚さ寸法の平板状に形成された弁体本体部と、該弁体本体部の中央部直径方向に設けられた弁棒挿通用筒状部とを備え、前記弁棒挿通用筒状部の外面から前記弁体本体部の外面に至る弁体外面を双曲面で形成するとともに、前記弁体本体部の外周部に沿う位置に、弁体閉じ方向に向かって突出した閉じ側整流部と、弁体開き方向に向かって突出した開き側整流部とを設け、前記閉じ側整流部は、円弧状に突設した整流板に多数が通孔を設けられ、前記開き側整流部は、複数の突起部をあらかじめ設定された間隔で突出させた櫛歯状に形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のバタフライ弁によれば、弁体外面の要部を双曲面で形成しているので、弁体の半月部の図心に最大主応力を集中させることができ、弁体の応力分布を均一化することができる。これにより、弁体の薄肉化が図れ、軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。さらに、弁体本体部の外周部に開き側整流部や閉じ側整流部を設けたことにより、流体の流れを円滑にノズル側とオリフィス側とに分散させることができる。また、オリフィス側の弁体下流側面に設けた閉じ側整流部による整流効果によって流れを分散させることにより、弁体下流側の負圧の発生を抑制することができるとともに、閉じ側整流部を通過した流体に発生する渦と弁体外面の双曲面とによって流路に対する流体の渦を弁体に沿って回転力を発生させることにより、弁体下流側の負圧の発生をより確実に抑制できるとともに、キャビテーションの成長も確実に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のバタフライ弁の一形態例を示す正面図である。
【
図3】同じく全閉状態としたバタフライ弁の断面平面図である。
【
図4】同じく半開状態としたバタフライ弁の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1乃至
図4は、本発明のバタフライ弁の一形態例を示すものである。本形態例に示すバタフライ弁は、流路の一部となる円筒状の弁箱11と、該弁箱11の軸線に直交する方向に配置された弁棒12と、該弁棒12を回動中心として回動する円盤状の弁体13とを備えており、弁棒12の下端は、弁箱11の下部を回動可能に貫通して止着部材14によって保持されており、弁棒12の上端は、弁箱11の上部を回動可能に貫通して上方に延出し、開閉器15に連結されている。また、弁箱11の両端外周には、前後の配管に接続するためのフランジ16がそれぞれ設けられており、弁箱11の内周には、円筒状のメタルシート17が装着されている。
【0010】
前記弁体13は、前記弁棒12の外径寸法より小さな厚さ寸法の平板状に形成された弁体本体部21と、該弁体本体部21の中央部直径方向に設けられた弁棒挿通用筒状部22とを備えており、弁棒挿通用筒状部22の上下両端部には、弁棒挿通用筒状部22の内部に挿通した弁棒12と弁体13とを固定するためのリーマボルトを取り付けるリーマボルト取付部23が設けられている。弁棒挿通用筒状部22の外面は、弁体本体部21の外面より突出した状態となっており、リーマボルト取付部23の近傍を除く弁棒挿通用筒状部22の突出した外面部分から弁体本体部21の平面状の外面に至る弁体外面は、弁棒12に直交する断面において、外面側が凹となる双曲面24で形成され、双曲面24の両端は、接線方向に滑らかに繋がるように、弁棒挿通用筒状部22の外面及び弁体本体部21の平面部外面に連続している。
【0011】
この弁体13は、
図3に示す全閉状態から弁棒12を
図3において時計回りに回動させることにより、
図3及び
図4に矢印Oで示す方向に回動して開弁状態となり、
図4に示す半開状態で弁棒12を
図4において反時計回りに回動させることにより、
図4に矢印Cで示す閉弁方向に回動する。
【0012】
弁体13における弁体本体部21の外周部に沿う位置には、弁体閉じ方向(矢印C方向)に向かって突出した閉じ側整流部31と、弁体開き方向(矢印O方向)に向かって突出した開き側整流部32とが設けられている。閉じ側整流部31は、弁体本体部21の外周部に沿って円弧状に突設した整流板33に、多数の通孔34を設けたものであって、整流板33の外面は、小開度の際に弁箱11の内周面に沿う状態の球面に近い形状に形成され、弁棒挿通用筒状部22に近い部分の高さに比べて中央部が高く形成されている。さらに、整流板33の先端縁33aには、複数の溝部35が設けられている。
前記開き側整流部32は、複数の突起部36をあらかじめ設定された間隔で突出させ、各突起部36同士の間にスリット状流路37を形成した櫛歯状に形成されており、突起部36の高さは、前記整流板33の高さより低く形成されている。
【0013】
弁体13が全閉状態から半開状態になるまでの小開度の状態でバタフライ弁を通過する流体は、上流側(一次側)に突出した状態になるオリフィス側では、弁体下流側(二次側)に生じる低圧部に向かって流れる流体が、弁体下流側面に位置する閉じ側整流部31の各通孔34によって整流されて弁体下流側面側に分散するため、弁体下流側の負圧の発生を抑制することができるとともに、閉じ側整流部31を通過した流体に発生する渦と弁体外面の双曲面24とによって流路に対する流体の回転渦を発生させることにより、弁体下流側の負圧の発生をより確実に抑制できるとともに、キャビテーションの成長も確実に抑えることができる。
【0014】
また、オリフィス側で弁体上流側面に突出した状態となる櫛歯状突起38のスリット状流路37を通る流体は、突起部36の後部に微細な渦を形成した状態で弁体上流側面の双曲面24に沿って流れることになり、流体は、微細な渦による流れ抵抗の抑制と相俟ってノズル側に向かって円滑に流れていく。
【0015】
弁体上流側面に突出した状態になるノズル部の上流側に位置する閉じ側整流部31では、上流側から流れてきた流体と弁体上流側面に沿って流れてきた流体とが合流し、各通孔34を通って弁体13の周縁と弁箱11の内周面との間に放射状にガイドされた状態で下流側に向かって円滑に流れる。さらに、弁体13の周縁を通過した流体は、オリフィス側から弁体下流側面側に流れ込んだ流体を吸い込む状態になるが、弁体下流側面の双曲面24に沿って流れてくる流体を、下流側に突出した状態となっている開き側整流部32のスリット状流路37を通して吸い込む状態になるため、流体の流れに大きな乱れが発生することを抑えることができる。
【0016】
このように、各整流部31,32による整流効果及び双曲面24の効果により、バタフライ弁11を通過する流体にキャビテーションが発生することを効果的に抑制することができる。また、弁体13の外面に双曲面24を形成することにより、弁体13の半月部の図心の部分に最大主応力を集中させて応力分布を均一にすることができるので、弁体13の薄肉化による軽量化を図ることができる。さらに、弁体13が対称形であることから、流体の流れ方向によって制御性能が影響されることもなく、弁の設置方向に制約を受けることがなくなる。
【0017】
なお、各整流部の形状は、バタフライ弁が設置される流体管路の状態、すなわち、バタフライ弁の口径、流体圧力、流体の流量調整範囲などの各種条件に応じて適宜選択することができ、通孔の設置数や口径、軸線の方向、突起部の高さやスリット状流路の設置数や幅寸法、流れ方向を最適な状態に設定することにより、キャビテーションの成長を効果的に抑制できるとともに、コストの削減を図ることができる。
【符号の説明】
【0018】
11…弁箱、12…弁棒、13…弁体、14…止着部材、15…開閉器、16…フランジ、17…メタルシート、21…弁体本体部、22…弁棒挿通用筒状部、23…リーマボルト取付部、24…双曲面、31…閉じ側整流部、32…開き側整流部、33…整流板、33a…先端縁、34…通孔、35…溝部、36…突起部、37…スリット状流路