特許第6232309号(P6232309)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232309ケーブル接続部用高誘電性組成物、およびこれを用いたケーブル接続部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232309
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ケーブル接続部用高誘電性組成物、およびこれを用いたケーブル接続部
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/44 20060101AFI20171106BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20171106BHJP
   H02G 15/064 20060101ALI20171106BHJP
   H02G 15/103 20060101ALI20171106BHJP
   H02G 15/184 20060101ALI20171106BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20171106BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20171106BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01B3/44 J
   H01B1/24 E
   H02G15/064
   H02G15/103
   H02G15/184
   H01B3/44 P
   C08L23/16
   C08K3/04
   C08K7/00
   H01B3/00 A
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-24538(P2014-24538)
(22)【出願日】2014年2月12日
(65)【公開番号】特開2015-153514(P2015-153514A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷本 美穂子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 道朝
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−162708(JP,A)
【文献】 特開平01−217072(JP,A)
【文献】 特開2013−161617(JP,A)
【文献】 特開昭56−011935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/00〜 3/56
C08L 23/00〜23/36
C08K 3/00〜 3/40
7/00〜 7/28
H02G 15/00〜15/196
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、針状単結晶体からなるテトラポット状酸化亜鉛20〜60質量部、およびカーボンブラック30〜70質量部を含有することを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項2】
エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体のジエン成分が、エチリデンノルボルネンであることを特徴とする請求項1記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項3】
エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、テトラポット状酸化亜鉛を30〜50質量部含有することを特徴とする請求項1または2記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項4】
エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、カーボンブラックを40〜60質量部含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項5】
テトラポット状酸化亜鉛が、平均繊維長(針状部分)5〜15μmのものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項6】
比誘電率(JIS K 6249)が5.0以上で、かつ23℃における体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項7】
23℃における比誘電率(JIS K 6249)が5.0以上で、かつ23℃における体積抵抗率(JIS K 6271)が1.0×1010〜1.0×1013Ω・cmであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項記載の高誘電性組成物からなる電界緩和層を有することを特徴とするケーブル接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル接続部の電界緩和層の形成に適した高誘電性組成物、およびこれを用いたケーブル接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル)などのゴム・プラスチック絶縁電力ケーブルの中間接続部や終端接続部においては、切り剥ぎしたケーブル外部半導電層(または遮蔽層)端部における電界緩和対策として、ケーブル絶縁体より高い誘電率をもった誘電体からなる電界緩和層を設けることが行われている。等電位線、電気ストレスが誘電率の異なる物質を通るときに屈折するという原理を利用したものである。
【0003】
従来、この電界緩和層の形成には、絶縁性のゴム・プラスチック組成物に高誘電率のフィラー、例えば、カーボンブラック、酸化亜鉛、チタン酸バリウムなどを配合したものが一般に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、このような従来の組成物においては、誘電率を高めるため、高誘電率フィラーの配合量を多くすると、誘電率とともに電界緩和層にとって重要な要求特性である絶縁性が低下し、さらに機械的特性や加工性も低下するという問題があった。このため、高誘電率で、高い絶縁性を有し、さらに機械的特性や加工性も良好な組成物は未だ得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−162708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、高誘電率で、高い絶縁性を有し、さらに機械的特性や加工性も良好な組成物、およびそのような高誘電性組成物を用いた高信頼性のケーブル接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、特定のエチレン系三元共重合体ゴムに、カーボンブラックとともに、テトラポット状という特定の三次元形状を有する針状単結晶体からなる酸化亜鉛を配合することにより、高誘電率で、高い絶縁性を有し、さらに機械的特性や加工性も良好な組成物、およびこれを用いたケーブル接続部が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、上記目的を解決するため、請求項1に記載された発明は、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、針状単結晶体からなるテトラポット状酸化亜鉛20〜60質量部、およびカーボンブラック30〜70質量部を含有することを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体のジエン成分が、エチリデンノルボルネンであることを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、テトラポット状酸化亜鉛を30〜50質量部含有することを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3にいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、カーボンブラックを40〜60質量部含有することを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0012】
請求項5に記載された発明は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、テトラポット状酸化亜鉛が、平均繊維長(針状部分)5〜15μmのものであることを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、比誘電率(JIS K 6249)が5.0以上で、かつ23℃における体積抵抗率が1.0×10〜1.0×1015Ω・cmであることを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0014】
請求項7に記載された発明は、請求項1乃至5のいずれか1項記載のケーブル接続部用高誘電性組成物において、比誘電率(JIS K 6249)が5.0以上で、かつ23℃における体積抵抗率が1.0×1010〜1.0×1013Ω・cmであることを特徴とするケーブル接続部用高誘電性組成物である。
【0015】
請求項8に記載された発明は、請求項1乃至7のいずれか1項記載の高誘電性組成物からなる電界緩和層を有することを特徴とするケーブル接続部である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高誘電率で、高い絶縁性を有し、さらに機械的特性や加工性も良好な組成物、およびそのような高誘電性組成物を用いた高信頼性のケーブル接続部を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のケーブ接続部の一実施形態の要部構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
まず、本発明のケーブル接続部用高誘電性組成物と、この組成物の物性について説明する。なお、物性の測定方法は下記のとおりである。
(a)比誘電率および誘電正接
JIS K 6249に準拠して測定(試験電圧250V)
(b)体積抵抗率
JIS K 6271に規定する二重リング電極法により測定
(c)引張特性(100%モジュラス、引張強さ、伸び)
【0020】
本発明のケーブル接続部用高誘電性組成物(以下、単に「高誘電性組成物」ともいう)は、(A)エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体と、(B)針状単結晶体からなるテトラポット状酸化亜鉛と、(C)導電性カーボンブラックとを含有するものである。
【0021】
本発明の高誘電性組成物において使用される(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体におけるジエン成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、ビニルノルボル、ネンジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのなかでもエチリデンノルボルネンが信頼性の点から好ましい。このジエン成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体中の含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは15質量%以下であり、15質量%を超えると加工性が低下する。ジエン成分の含有量は1〜12質量%の範囲であることがより好ましい。また、エチレンおよびプロピレンの各単位成分についても特に限定されるものではないが、エチレン含有量は45〜70質量%であることが加工性の点から好ましい。
【0022】
この(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体として好適な市販品を例示すると、住友化学(株)製のエスプレン501A(エチレン含有量:52重量%、ジエン含有量:4.0重量%、ジエン成分:ENB)、同エスプレン502(エチレン含有量:56重量%、ジエン含有量:4.0重量%、ジエン成分:ENB)、三井化学(株)製のEPT#3045(エチレン含有量:56重量%、ジエン含有量:4.7重量%、ジエン成分:ENB)、同EPT#4045(エチレン含有量:45重量%、ジエン含有量:7.6重量%、ジエン成分:ENB)、同EPT#3070(エチレン含有量:58重量%、ジエン含有量:4.7重量%、ジエン成分:ENB)、ダウケミカル社製のノーデルIP4520(エチレン含有量:58重量%、ジエン含有量:4.7重量%、ジエン成分:ENB)、同ノーデルIP4640(エチレン含有量:55重量%、ジエン含有量:4.9重量%、ジエン成分:ENB)(以上、商品名)などが挙げられる。
【0023】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体以外のポリマーを含有させてもよい。そのようなポリマーの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン;ポリプロピレン(PP);ポリイソブチレン;エチレンに、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルなどのビニルエステルを共重合させたエチレン・ビニルエステル共重合体;エチレンに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステルを共重合させたエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレンに、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルなどの不飽和カルボン酸を共重合させたエチレン・不飽和カルボン酸共重合体;エチレンに、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンを共重合させたエチレン・α−オレフィン共重合体;イソブチレン・イソプレン共重合体;エチレンに、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィン、および上述したジエン成分などを共重合させた共重合体などが挙げられる。
【0024】
本発明の高誘電性組成物において使用される(B)成分の酸化亜鉛は、テトラポット状という特殊な三次元形状を有する針状単結晶体からなるもので、比誘電率を高め、絶縁性を向上させる観点からは、特に、針状部分の平均繊維長が5〜15μmの範囲のものが好ましい。(C)成分のテトラポット状酸化亜鉛として好適な市販品を例示すると、例えば、針状部分の平均繊維長が10μmの(株)アムテック製のパナテトラWZ−0501、パナテトラWZ−0511(以上、商品名)などが挙げられる。
【0025】
この(B)成分のテトラポット状酸化亜鉛の配合量は、(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対して、20〜60質量部、好ましくは30〜50質量部、より好ましくは35〜45質量部である。配合量が20質量部未満では、比誘電率が小さくなるとともに、体積抵抗率が大きくなり過ぎて、ケーブル接続部における電界緩和効果が十分に得られなくなる。また、60質量部を超えると、絶縁性が低下(体積抵抗率が低下)するとともに、機械的特性や加工性も低下する。
【0026】
本発明においては、必要に応じて、従来この種のゴム組成物に一般に使用されている微粒子状の酸化亜鉛、例えば、酸化亜鉛1種、酸化亜鉛2種、酸化亜鉛3種などを、上記テトラポット状酸化亜鉛とともに使用してもよい。但し、併用する場合には、テトラポット状酸化亜鉛との合計量が、(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対して60質量部を超えないようにすることが、絶縁性、機械的特性、加工性などの点から好ましい。
【0027】
本発明の高誘電性組成物において使用される(C)成分のカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラックなどが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
この(C)成分のカーボンブラックの配合量は、(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対して、30〜70質量部、好ましくは40〜60質量部、より好ましくは45〜55質量部である。配合量が30質量部未満では、比誘電率が小さくなり、ケーブル接続部における電界緩和効果が十分に得られなくなる。また、70質量部を超えると、絶縁性が低下(体積低効率が低下)するとともに、機械的特性や加工性も低下する。
【0029】
本発明の高誘電性組成物は、被覆後もしくは成形後にポリマー成分を架橋(加硫)させる。架橋方法は、予め組成物に架橋剤を添加しておき、被覆後もしくは成形後に架橋させる化学加硫法や、電子線照射による電子線架橋法などを用いることができるが、架橋剤として有機過酸化物を用いる化学架橋法が特に適している。
【0030】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイドなどが使用される。これらの有機過酸化物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機過酸化物としては、なかでも、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが加工性などの点から好ましく、特に、ジクミルパーオキサイドが好ましい。
【0031】
有機過酸化物は、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対して、通常1〜5質量部、好ましくは2〜4質量部使用される。有機過酸化物の配合量が1質量部未満では、機械的特性や耐熱老化性が低下し、圧縮永久歪みも増大するおそれがある。また5質量部を超えると、スコーチタイムが短くなり、硬さも大きくなる。
【0032】
本発明の高誘電性組成物には、以上説明した成分の他、さらに、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、酸化亜鉛以外の無機充填剤、加工助剤、架橋助剤、難燃剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、中和剤、軟化剤、可塑剤、分散剤、滑剤、その他の添加剤を配合することができる。
【0033】
具体的には、例えば、軟化剤として、各種プロセスオイルを使用することができる。プロセスオイルはパラフィン系プロセスオイルが好ましい。パラフィン系プロセスオイルの市販品を例示すると、例えば、出光興産(株)製のPW−90、PW−150、PW−380(以上、商品名)などが挙げられる。プロセスオイルは、(A)成分のエチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対して、通常10〜30質量部、好ましくは15〜25質量部使用される。プロセスオイルの配合量が10質量部未満では、ムーニー粘度、硬さが大きくなり、また30質量部を超えると、機械的特性などが低下する。
【0034】
本発明の高誘電性組成物は、以上の各成分をバンバリーミキサ、タンブラー、加圧ニーダ、混練押出機、ミキシングローラなどの通常の混練機を用いて均一に混合することにより容易に製造することができる。
【0035】
本発明の目的のためには、本発明の高誘電性組成物は、(a)比誘電率(23℃)が5.0以上で、(b)体積抵抗率(23℃)が1.0×10Ω・cm以上であることが好ましい。より好ましくは、(a)比誘電率(23℃)が5.0〜70.0の範囲であり、(b)体積抵抗率(23℃)が1.0×10〜1.0×1015Ω・cmである。より一層好ましくは、(a)比誘電率(23℃)が9.0〜70.0の範囲であり、(b)体積抵抗率(23℃)が1.0×1010〜1.0×1013Ω・cmである。
【0036】
また、本発明の高誘電性組成物は、(c)引張特性について、100%モジュラスが3.0〜8.0MPaで、引張強さが10.0〜20.0MPaで、伸びが200〜500%であることが好ましく、100%モジュラスが4.0〜7.0MPaで、引張強さが16.0〜20.0MPaで、伸びが300〜450%であることがより好ましい。
【0037】
次に、上記ケーブル接続部用高誘電性組成物を用いた本発明のケーブル接続部について説明する。
本発明のケーブル接続部は、前述した方法で調製した組成物を、段剥ぎしたケーブル接続端部の所要部、例えば外部半導電層上からケーブル絶縁体上に跨って押出し被覆するか、あるいはテープ状またはチューブ状に成形したものを巻回または装着することにより製造される。なお、前述したように、組成物は、被覆後もしくは成形後に架橋させる。
【0038】
図1は、本発明のケーブル接続部の一例を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のケーブル接続部10においては、段剥ぎして露出されたケーブル端部の絶縁体11上から外部半導電層12上に跨って電界緩和層13が形成されている。また、ケール導体(図示なし)には接続端子14が装着され、ケーブルシース15寄りの外部半導電層12上には接地金具16が装着されている。さらに、接地金具16の外周にはACPテープ等の半導電性融着テープ17が巻き付けられ、これらを保護するように、接続端子14上からケーブルシース15上に跨って常温収縮チューブなどからなる保護チューブ18が装着されている。図1中、19は絶縁テープである。
そして、このケーブル接続部10においては、電界緩和層13が前述したケーブル接続部用高誘電性組成物により形成されている。
【0039】
このように構成されるケーブル接続部においては、電界緩和層13が、誘電率が高く、絶縁性に優れ、さらに機械的特性や加工性の良好な高誘電性ゴム組成物で形成されているため、電気特性に優れるとともに、そのような優れた電気特性を長期に亘って安定して維持することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、本発明のケーブル接続部を屋内用ケーブル終端接続部に適用した例であるが、本発明はこのような例に限定されるものではなく、屋外用ケーブル終端接続部をはじめ、ケーブル同士を接続する中間接続部や、幹線ケーブルからのケーブルの分岐に使用する分岐接続部など、各種ケーブル接続部に広く適用可能である。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例および比較例で用いた成分は以下の通りである。
・エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体(EPDM):
三井化学(株)製 商品名 EPT#3045
・酸化亜鉛A:
アムテック(株)製 商品名 パナテトラWZ−0501
・酸化亜鉛B:酸化亜鉛2種
正同化学工業(株)製 商品名 酸化亜鉛2種
・カーボンブラック:
旭カーボン(株)製 商品名 旭50U
・プロセスオイル:
出光興産(株)製 商品名 ダイアナプロセスオイルPW−90
・酸化防止剤:2−メルカプトベンゾイミダゾール
大内新興化学工業(株)製 商品名 ノクラックMB
・滑剤:
新日本理化(株)製 商品名 ステアリン酸300
・加硫剤:ジクミルパーオキサイド;
化薬アクゾ(株)製 商品名 カヤクミルD−40C(40%希釈品)
・加硫助剤:1,3,5−トリアリルイソシアヌレート(TAIC)
日本化成(株)製 商品名 タイク
【0042】
実施例1
EPDM100質量部、酸化亜鉛A22.0質量部、カーボンブラック32.0質量部、プロセスオイル30.0質量部、酸化防止剤1.5質量部、滑剤1.0質量部、加硫剤2.8質量部、および加硫助剤1.5質量部を、加圧ニーダを用いて均一に混練してケーブル接続部用高誘電性組成物を調製した。
【0043】
実施例2〜8、比較例1〜5
配合成分および配合量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にしてケーブル接続部用高誘電性組成物を調製した。
【0044】
上記各実施例および各比較例で得られたケーブル接続部用高誘電性組成物について、下記に示す方法で各種特性を評価した。
[ムーニー粘度]
JIS K 6300−1のムーニー粘度試験に準拠し、測定温度100℃で、L型ロータを用いて測定した。
[スコーチタイムt
JIS K 6300−1のムーニースコーチ試験に準拠し、測定温度125℃で、L型ロータを用いて測定した。
[密度]
JIS K 6268に規定するA法により測定した。
[硬さ]
ケーブル接続部用高誘電性組成物を、180℃で7分間プレス成形して作成した厚さ約12mmのシートについて、JIS K 6253のタイプAデュロメータにより測定した。
[100%モジュラス、引張強さ、伸び]
上記と同様に作製した厚さ約2mmのシートについてJIS K 6251に規定の引張試験(ダンベル状3号形試験片)を行い、100%伸長時の引張応力、引張強さ、および伸びを測定した。
[体積抵抗率]
上記と同様に作製した厚さ約2mmのシートについて、JIS K 6271に規定する二重リング電極法により測定した。測定は23℃および90℃の各温度にて実施した。
[比誘電率、誘電正接]
上記と同様に作製した厚さ約2mmのシートについて、JIS K 6249に準拠して測定した(試験電圧250V)。
【0045】
これらの結果を表1の下欄に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1から明らかなように、実施例に係るケーブル接続部用高誘電性組成物は、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対し、テトラポット状酸化亜鉛(酸化亜鉛A)20〜60質量部、およびカーボンブラック30〜70質量部を含有することにより、比誘電率、体積抵抗率、加工性(ムーニー粘度、ムーニースコーチタイム)、機械的特性(100%モジュラス、引張強さ、伸び)において良好な結果が得られた(実施例1〜8)。
また、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体100質量部に対するテトラポット状酸化亜鉛(酸化亜鉛A)の含有量を30〜50質量部とすることにより、引張強さ、体積抵抗率においてより良好な結果が得られた(実施例3〜6)。
さらに、カーボンブラックの含有量を40〜60質量部とすることにより、比誘電率においてより良好な結果が得られた(実施例4、5)。
【符号の説明】
【0048】
10…ケーブル接続部、11…ケーブル絶縁体、12…ケーブル外部半導電層、13…電界緩和層。
図1