【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に記載された範囲に限定されるものではない。
[測定方法および評価試験方法]
本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験方法は以下の通りである。
【0089】
<無機酸化物微粒子の測定>
(1)平均粒子径の測定方法
無機酸化物微粒子(シリカ系微粒子および結晶性無機酸化物微粒子の平均粒子径は、次のように測定した。まず、無機酸化物微粒子を含む分散液(または混合液)を水分散ゾルの場合は蒸留水で、メタノール分散ゾルの場合はメタノールにて約1,000倍希釈してコロジオン膜付金属グリッド(応研商事(株))に塗布し250Wランプにて30分間照射して溶媒を飛散し測定用サンプルを調製した。この測定用サンプルを用いて、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)((株)日立ハイテクノロジーズ製S−5500)を用いて、加速電圧30kVの条件下、倍率25万倍でSEM写真を撮影し、この写真に撮影された任意の100個以上の無機酸化物微粒子の粒子径についてそれぞれ目視で観察し、それらの平均をとることにより求めた。
【0090】
(2)比表面積の測定方法
無機酸化物微粒子を含む分散液を乾燥させて得られた粉体を磁製ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、300℃の温度で2時間乾燥後、デシケータに入れて室温まで冷却し、測定用サンプルを得た。次に、このサンプルを1g取り、全自動表面積測定装置(湯浅アイオニクス社製、マルチソーブ12型)を用いて、粒子の比表面積(m
2/g)をBET法にて測定した。
【0091】
(3)無機酸化物微粒子の組成分析方法
<チタニウム、ケイ素、スズの含有量>
固形分濃度10重量%の無機酸化物微粒子を含む水分散液3gを容量30mlの蓋付きジルコニアボールに採取し、乾燥(200℃、20分)させ、焼成(700℃、5分)した後、Na
2O
2 2gおよびNaOH 1gを加えて15分間溶融した。さらに、HCl 50mlと水200mlを加えて溶解したのち、純水で500mlになるよう希釈して試料とした。得られた試料について、ICP装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を用いて、チタニウム、スズ、ケイ素の含有量を酸化物換算基準(TiO
2、SnO
2、SiO
2)で測定した。
【0092】
<アルミニウム、ジルコニウム、ナトリウム、カリウムの含有量>
固形分濃度10重量%の無機酸化物微粒子を含む水分散液9gを容量100mlの白金皿に採取し、サンドバス上で200℃、20分間加熱して乾燥させた後、バーナーで700℃、5分間加熱して有機物を除去後、HF 10mlおよびH
2SO
4 5mlを加えて白煙が出るまで加熱した。さらに、これを100mlとなるように純水で希釈した後、アルミニウムジルコニウムはICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100、解析ソフトウェアICPS−8000)を用いて酸化物換算基準(Al
2O
3、ZrO
2)で測定し、ナトリウムおよびカリウムは原子吸光装置((株)日立製作所製、Z−5300、ソフトウェアZ−2000)を用いて酸化物換算基準(Na
2O、K
2O)で測定した。
【0093】
(3−2)pHの測定方法
試料50mlを入れたセルに、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、pH4、7および9の標準液で更正が完了したpHメータ(堀場製作所製、F22)のガラス電極を挿入して、pH値を測定した。
【0094】
このとき、無機酸化物微粒子の分散液の分散媒が水である場合には、前記水分散液を試料とし、前記分散媒が有機溶媒である場合には、無機酸化物微粒子の有機溶媒分散液を蒸留水で10倍に希釈したものを試料とした。
【0095】
(4)結晶性の測定方法
無機酸化物微粒子の分散液を磁製ルツボ(B−2型)に約30ml採取し、110℃で12時間加熱して乾燥させた後、デシケータに入れて室温まで冷却した。次に、冷却物を乳鉢で15分間粉砕した後、X線回折装置(理学電気(株)製、RINT−2100、Cu−Kα線、40kV、30mA)を用いて結晶形態を測定した。なお、本発明でいう結晶形態は、この測定結果から判定された形態(たとえば、ルチル型など)を示す。
【0096】
<硬化塗膜の測定>
(5)塗膜の膜硬度(Bayer値)の測定方法
磨耗試験機BTM(米コルツ社製)およびヘーズ値測定装置(NIPPON DENSHOKU製NDH2000)を使用し、プラスチックレンズ基板(後述する試験片。以下「被試験レンズ」ともいう。)と基準レンズとのヘーズ値の変化に基づいてBayer値を算出した。基準レンズとしては、市販のプラスチックレンズ基材CR−39基材(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、PPG社製モノマー使用、基材の屈折率1.60)を使用した。
【0097】
具体的には、まずそれぞれのレンズのヘーズ値を測定し、基準レンズの初期ヘーズ値をD(std0)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(test0)とした。それぞれのレンズを上記磨耗試験機のパンに設置し、その上に研磨材(専用砂)500gを充填し、パンを600回左右に振動させた。振動後のレンズのヘーズ値を測定し、基準レンズのヘーズ値をD(stdf)、被試験レンズのヘーズ値をD(testf)とした。Bayer試験値(R)を以下の数式から算出した。
R=[D(stdf)−D(std0)]/[D(testf)−D(test0)]
【0098】
(6)塗膜の外観(干渉縞)の評価方法
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、蛍光灯の光をプラスチックレンズ基板(後述する試験片)のハードコート層または反射防止膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様(干渉縞)の発生を目視にて確認し、以下の基準で評価した。
S:干渉縞が殆ど無い
A:干渉縞が目立たない
B:干渉縞が認められるが、許容範囲にある
C:干渉縞が目立つ
D:ぎらつきのある干渉縞がある。
【0099】
(7)塗膜の外観(曇り)の評価方法
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、プラスチックレンズ基板(後述する試験片)を蛍光灯の直下に、ハードコート層側または反射防止膜側を蛍光灯に向けて置き、これらの透明度(曇りの程度)をヘーズメーター(NIPPON DENSHOKU製NDH2000)にて確認し、以下の基準で評価した。
A:ヘーズ値が0.3%未満
B:ヘーズ値が0.3%以上〜1.0%未満
C:ヘーズ値が1.0%以上〜5.0%未満
D:ヘーズ値が5.0%以上
【0100】
(8)塗膜の耐擦傷性の評価方法
プラスチックレンズ基板(後述する試験片)のハードコート層側または反射防止膜側の表面を、#0000スチールウール(日本スチールウール(株)製)を用い、荷重1kg/cm
2で幅1cm、3cmの距離を50往復/100秒の条件で擦った後、スチールウール摺動面積に対する傷自体の面積の割合を目視にて判定し、以下の基準で評価した。
評価基準:
A:2%未満
B:2%以上〜30%未満
C:30%以上〜60%未満
D:60%以上
【0101】
(9)塗膜の密着性の評価方法
プラスチックレンズ基板(後述する試験片)のハードコート層側または反射防止膜側の表面に、ナイフで縦横1mmの間隔でそれぞれ11本の平行な傷を付けて100個の升目を作り、これにセロハンテープを接着し、次いで、セロハンテープを90度方向へ急激に引っ張り、この操作を合計5回行い、塗膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の2段階に分類することによって密着性を評価した。
評価基準:
残存升目の数95個以上 :○
残存升目の数95個未満 :×
【0102】
(10)塗膜の耐候的な密着性(耐候的密着性)の評価方法
プラスチックレンズ基板(後述する試験片)をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験した後、外観の確認および前記の密着性の評価と同様の評価を行い、以下の基準で評価した。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は250時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とした。
○:剥離していないマス目の数が95個以上
×:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0103】
(11)塗膜ハードコート層の耐光性の評価方法
プラスチックレンズ基板(後述する試験片)に退色試験用水銀ランプ(東芝(株)製H400−E)により紫外線を50時間照射し、照射前後に塗膜プラスチックレンズ基板の透過率測定(日本電子(株)製、V−550)を行い、照射前後での透過率変化((照射前の透過率−照射後の透過率)/照射前の透過率×100(%))を以下の基準で耐光性を評価した。なお、ランプと塗膜プラスチックレンズ基板との距離は、70mmとし、ランプの出力は、塗膜プラスチックレンズ基板の表面温度が45±5℃となるように調整した。また、この試験は、反射防止膜をハードコート層の表面に設けた塗膜プラスチックレンズ基板を対象として行った。
○:透過率変化が5%未満
△:透過率変化が5%以上〜10%未満
×:透過率変化が10%以上
【0104】
(12)塗膜の膜厚および屈折率の測定方法
顕微分光測定機(OLYMPUS製USPM−RU)を用いて、プラスチック基板の反射率から、塗膜の膜厚および屈折率を測定した。
【0105】
(13)フォトクロミック性の評価方法
プラスチックレンズ基板(後述する試験片)に色試験用紫外線ランプ(アズワン製SLUV−6)により紫外線を5分間照射し、照射前後にプラスチックレンズ基板の透過率測定(富士光電工業(株)製、STS−4)を行い、照射前後での透過率変化((照射前の透過率−照射後の透過率)/照射前の透過率×100(%))を以下の基準で評価した。なお、ランプとプラスチックレンズ基板との距離は、100mmとした。さらに、耐光性試験前後のプラスチックレンズ基板についても上記と同様な評価を実施しフォトクロミック性が保持されているかを評価した。
○:透過率変化が50%以上
△:透過率変化が20%以上〜50%未満
×:透過率変化が20%未満
【0106】
[製造例1]
シリカ系微粒子の水分散液(AS−1)の調製
珪素成分の含有量をSiO
2換算基準で表し、ナトリウム成分の含有量をNa
2O換算基準で表し、アルミニウム成分の含有量をAl
2O
3換算基準で表したとき、SiO
224.0重量%、SiO
2/Na
2Oモル比3.0、Al
2O
3/SiO
2モル比0.0006のケイ酸ソーダ溶液(AGCエスアイテック社製3号ケイ酸ソーダ)を、イオン交換水で希釈して、珪素成分をSiO
2換算基準で4.8重量%含む希ケイ酸ソーダ溶液を調製した。
【0107】
次いで、この希ケイ酸ソーダ溶液を陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオン(登録商標)、SK1BH)が充填されたカラムに通過させて、珪素成分をSiO
2換算基準で4.6重量%含む、pH2.8の酸性ケイ酸液を得た。
【0108】
次に、還流器、攪拌機、加熱部及び二つの注液口を備えた300Lのステンレス製容器に、前記ケイ酸ソーダ溶液1.3kgをイオン交換水21.6kgで希釈したものを仕込み、これを85℃に加熱した。この温度を保持しつつ、一方の注液口から前記の酸性ケイ酸液を165.9kg、別の注液口からアルミン酸ソーダ溶液(Al
2O
3として1.0重量%、Na
2Oとして0.77重量%)を5.4kgそれぞれ一定流量で同時に15時間かけて添加した。
【0109】
さらに、添加終了後、85℃の温度を1時間保持した後、減圧蒸発法により、珪素成分の含有量がSiO
2換算基準で22.0重量%になるまで濃縮してアルカリ性シリカゾル(BS−1)を得た。
【0110】
次に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオン、SK1BH)6Lを充填した流通式イオン交換カラムに、前記アルカリ性シリカゾル(BS−1)約30Lを液空間速度10Hr
-1で1回通過させて脱アルカリを行い、一次脱アルカリ処理したシリカゾルを得た。この一次脱アルカリゾルを陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオン、SA10A)を充填した流通式イオン交換カラムに液空間速度4.0Hr
-1で通過させた。次いで、加熱器、温度調節機および還流器を備えた50Lのステンレス製容器に、この1次脱アルカリゾル30Lを入れて80℃の温度に保温し、これを同温度に維持された5Lの陽イオン交換樹脂を充填した流通式イオン交換カラムに、液空間速度13.5Hr
-1で通過させながら、一定時間循環する方式で二次脱アルカリ処理を行い、珪素成分の含有量がSiO
2換算基準で20重量%含む酸性シリカゾル(シリカ系微粒子の水分散液)(AS−1)を得た。
【0111】
このようにして得られた酸性シリカゾル(AS−1)中に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は、12nmであった。また、25℃の温度で測定したときの前記酸性シリカゾルのpHは2.3であった。
【0112】
また、前記酸性シリカゾル(AS−1)は、ナトリウム成分をNa
2O換算基準で0.07重量%含んでおり、Na
2O/SiO
2モル比が0.0014であった。さらに該ゾル中に含まれるシリカ系微粒子中は、シリカ成分をSiO
2で表し、アルミニウム成分をAl
2O
3で表したとき、Al
2O
3/SiO
2モル比が0.0020となるような割合でアルミニウム成分を含んでいた。
【0113】
[製造例2]
シリカ系微粒子の水分散液(AS−2)の調製
前述の「シリカ系微粒子の水分散液(AS−1)の調製」において、アルミン酸ソーダ溶液(Al
2O
3として1.0重量%、Na
2Oとして0.77重量%)5.4kgを一定流量で15時間かけて添加するかわりに、アルミン酸ソーダ溶液(Al
2O
3として1.0重量%、Na
2Oとして0.77重量%)2.43kgを一定流量で15時間かけて添加して、珪素成分の含有量がSiO
2換算基準で20重量%含む酸性シリカゾル(シリカ系微粒子の水分散液)(AS−2)を得た。
【0114】
このようにして得られた酸性シリカゾル(AS−2)中に含まれるシリカ微粒子の平均粒子径は12nmであった。また、25℃の温度で測定したときの前記酸性シリカゾルのpHは2.5であった。
【0115】
また、前記酸性シリカゾル(AS−2)は、ナトリウム成分をNa
2O換算基準で0.03重量%含んでおり、Na
2O/SiO
2モル比が0.0009であった。さらに該ゾル中に含まれるシリカ系微粒子は、シリカ成分をSiO
2で表し、アルミニウム成分をAl
2O
3で表したとき、Al
2O
3/SiO
2モル比が0.0009となるような割合でアルミニウム成分を含んでいた。
【0116】
[製造例3]
シリカ系微粒子の水分散液(AS−3)の調製
工程(1)
球状のコロイド状シリカ微粒子が分散した市販のアルカリ性シリカゾル(商品名カタロイド(登録商標)SI−40、日揮触媒化成(株)製、SiO
2濃度40重量%、Na
2O濃度0.40重量%、pH9.5、平均粒子径17nm、Al
2O
3/SiO
2(モル比)=0.0006)4000gを撹拌機と加熱装置を備えた内容積13リットルのSUS製反応容器に供して、温度25℃で撹拌しながらAl
2O
3換算基準で0.9重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2712gを1.0時間かけて一定速度で添加して混合溶液を得た。この時、Al
2O
3/SiO
2(混合モル比)は0.009であり、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加速度は1.5×10
-2g/Hrであった。
【0117】
工程(1.1)
得られた混合溶液を攪拌しながら、95℃に加熱したのち、温度を95℃に保ちながら6.0時間撹拌を続けた。この混合液のpHは10.9、SiO
2換算基準の固形分濃度は24.2重量%、Al
2O
3換算基準の固形分濃度は0.36重量%であった。
【0118】
工程(1.2)
上記工程で得られた混合溶液に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株) ダイヤイオン SK1BH)を投入してそのpHを9に調整した。
【0119】
工程(2)
上記工程で得られた混合溶液から樹脂を分離除去したのち、オートクレーブにて165℃で1時間加熱処理して、アルカリ性のシリカ系微粒子の水分散ゾルを得た。
【0120】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたアルカリ性のシリカ系微粒子の水分散ゾルを室温まで冷却した後に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株) ダイヤイオン SK1BH)を投入して、そのpH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。
【0121】
その後、陽イオン交換樹脂を分離除去し、SiO
2換算基準で固形分濃度 24.2重量%、pH4.9のシリカ系微粒子水分散ゾルを得た。
上記で得られたシリカ系微粒子水分散ゾルを、限外ろ過膜を用いて濃縮し、固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子の水分散液(ゾル)(AS−3)5400gを得た。該ゾル中に含まれるシリカ系微粒子の平均粒子径は17nmであった。さらに、該シリカ系微粒子は、シリカ成分をSiO
2で表し、アルミニウム成分をAl
2O
3で表したとき、Al
2O
3/SiO
2モル比が0.0084となるような割合でアルミニウム成分を含んでいた。
【0122】
[製造例4]
結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)の調製
<工程(1)>
(操作1.1)チタニウムを主成分とする複合酸化物微粒子(コア粒子)の調製
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジーズ(株)製)をTiO
2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液93.7kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)36.3kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ72.6kgを得た。
【0123】
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)83.0kgと純水411.4kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらに純水159.0kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO
2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を726.0kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0124】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液72.9kgに、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)3.5kgを混合して、さらにスズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO
2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液9.1kgを撹拌下で徐々に添加した。
【0125】
次に、得られた混合物に、カリウムイオンなどを取り込んだ前記陽イオン交換樹脂を分離した後、平均粒子径が7nmのシリカ微粒子を15重量%含むシリカゾル(日揮触媒化成(株)製)0.8kgおよび純水18.0kgを混合し、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)中で165℃の温度で18時間、加熱することにより、チタニウムを主成分とする複合酸化物微粒子(コア粒子)の水分散液を得た。
【0126】
得られた水分散液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%の水分散液(チタニウムを主成分とするコア粒子を含む水分散液(C−1))10.0kgを得た。
【0127】
この水分散液(C−1)の中に含まれるコア粒子はルチル型の結晶構造を有し、このコア粒子に含まれる金属元素の含有量(酸化物換算値)を測定したところ、TiO
2が75.2重量%、SnO
2が9.3重量%、SiO
2が12.2重量%、K
2Oが3.3重量%であった。またこのコア粒子の平均粒子径は18nmであった。
【0128】
(操作1.2)コアシェル型結晶性無機酸化物微粒子の水分散液(P−1)の調製
オキシ塩化ジルコニウム(太陽鉱工(株)製)をZrO
2換算基準で2重量%含むオキシ塩化ジルコニウム水溶液26.3kgに、アンモニアを15重量%含むアンモニア水を撹拌下で徐々に添加して、pH8.5のスラリー液を得た。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、ジルコニウム成分をZrO
2に換算基準で10重量%含むケーキ5.26kgを得た。
【0129】
次に、このケーキ200gに純水1.80kgを加え、さらに水酸化カリウム(関東化学(株)製)を10重量%含む水酸化カリウム水溶液120gを加えてアルカリ性にした後、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水400gを加えて、50℃の温度に加熱してこのケーキを溶解した。さらに、純水1.48kgを加えて、過酸化ジルコン酸をZrO
2換算基準で0.5重量%含む過酸化ジルコン酸水溶液(1)4.0kgを得た。なお、この過酸化ジルコン酸水溶液のpHは、12.2であった。
【0130】
また、市販の水ガラス(AGCエスアイテック(株)製)を純水にて希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)を用いて脱アルカリして、珪酸をSiO
2換算基準で2重量%含む珪酸水溶液(1)を得た。なお、この珪酸水溶液液のpHは、2.3であった。
【0131】
<工程(2)>
次に、上記操作1.1で得られた、チタニウムを主成分とするコア粒子を含む水分散液(C−1)3.0kgに純水12.0kgを加えて固形分含有量を2重量%としたものを90℃の温度に加熱した後、これに前記過酸化ジルコン酸水溶液(1)3.7kgおよび珪酸水溶液(1)2.8kgを同時に徐々に添加し、添加終了後、さらに90℃の温度に保ちながら攪拌下で1時間熟成を行い、混合液(1c)を得た。ここで、過酸化ジルコン酸水溶液(1)中に含まれるジルコン酸をZrO
2で表し、珪酸水溶液(1)中に含まれる珪酸をSiO
2で表したとき(以下の重量比の式では「SiO
2-(1)」と表す。)、これらのモル比(ZrO
2/SiO
2-(1))は14/86であった。また、混合液(1c)中の無機酸化物微粒子に含まれる金属の重量を酸化物(TiO
2、SnO
2、SiO
2(以下の重量比の式では「SiO
2-(2)」と表す。))の重量に換算すると、重量比((ZrO
2+SiO
2-(1))/(TiO
2+SnO
2+SiO
2-(2)))は25/100であった。
【0132】
<工程(3)>
次いで、この混合液(1c)をオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、50L)に入れて、160℃の温度で18時間、加熱処理を行なったのち、室温まで冷却して、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、SIP−1013)を用いて固形分含有量10重量%に濃縮することにより、チタニウムを主成分とするコア粒子の表面を、ジルコニウムおよびケイ素を含む複合酸化物からなるシェルで被覆してなる結晶性無機酸化物微粒子(1)の透明乳白色水分散液(以下、「P−1」ともいう。)3.8gを調製した。
【0133】
以下、上記水分散液(P−1)を「結晶性無機酸化物微粒子の水分散液(P−1)」ともいう。
この結晶性無機酸化物微粒子(1)のX線回折では結晶性ピークが検出され、結晶構造はルチル型であった。
【0134】
(操作1.3)結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)の調製
上記操作1.2で得られた結晶性無機酸化物微粒子の水分散液(P−1)1470gに陽イオン交換樹脂を混合して脱イオン処理した後、前記イオン交換樹脂を分離して得られた分散液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)2940gに表面処理剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)133.6gを溶解させたメタノール溶液を撹拌下で添加した後、60℃の温度で20時間、加熱した。
【0135】
次に、得られた混合液を室温まで冷却してから、限外濾過膜(旭化成(株)製濾過膜、SIP−1013)を用いて分散媒を水からメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)に置換した。
【0136】
得られた無機酸化物微粒子のメタノール分散液(以下「MP−1」という)の水分含有量は約0.5重量%、固形分濃度は20.5重量%であった。
この無機酸化物微粒子の平均粒子径は12nmであり、この微粒子の比表面積は220m
2/gであった。以下、上記分散液(MP−1)を「結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)」ともいう。
【0137】
このメタノール分散液(MP−1)中の結晶性無機酸化物微粒子に含まれる金属成分の割合(酸化物換算値)を測定したところ、TiO
2が57.51重量%、SnO
2が6.83重量%、SiO
2が27.95重量%、ZrO
2が5.17重量%、K
2Oが2.54重量%であった。
【0138】
[製造例5]
結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−2)の調製
(コア粒子の調製)
四塩化チタン(大阪チタニウムテクノロジ-ズ(株)製)をTiO
2換算基準で7.75重量%含む四塩化チタン水溶液12.1kgと、アンモニアを15重量%含むアンモニア水(宇部興産(株)製)4.7kgとを混合し、pH9.5の白色スラリー液を調製した。次いで、このスラリーを濾過した後、純水で洗浄して、固形分含有量が10重量%の含水チタン酸ケーキ9.9kgを得た。
【0139】
次に、このケーキに、過酸化水素を35重量%含む過酸化水素水(三菱瓦斯化学(株)製)11.3kgと純水20.0kgとを加えた後、80℃の温度で1時間、撹拌下で加熱し、さらに純水57.52kgを加えて、過酸化チタン酸をTiO
2換算基準で1重量%含む過酸化チタン酸水溶液を98.7kg得た。この過酸化チタン酸水溶液は、透明な黄褐色でpHは8.5であった。
【0140】
次いで、前記過酸化チタン酸水溶液98.7kgに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)4.7kgを混合して、これに、スズ酸カリウム(昭和化工(株)製)をSnO
2換算基準で1重量%含むスズ酸カリウム水溶液12.3kgを撹拌下で徐々に添加した。
【0141】
次に、カリウムイオンなどを取り込んだ陽イオン交換樹脂を分離した後、オートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、120L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱した。
【0142】
次に、得られた混合水溶液を室温まで冷却した後、限外濾過膜装置(旭化成(株)製、ACV−3010)で濃縮して、固形分含有量が10重量%のチタンおよびスズを含む複合酸化物微粒子(チタン系微粒子)を含む混合水溶液9.9kgを得た。
【0143】
このようにして得られた混合水溶液中に含まれる固形物を上記の方法で測定したところ、ルチル型の結晶構造を有する、チタン系微粒子であった。さらに、このチタン系微粒子中に含まれる金属成分の含有量を測定したところ、各金属成分の酸化物換算基準で、TiO
2が87.2重量%、SnO
2が11.0重量%、およびK
2Oが1.8重量%であった。また、該混合水溶液のpHは10.0であった。
【0144】
前記チタン系微粒子を含む混合水溶液7.00kgに、水酸化カリウム水溶液でpHを7.0に調整しながらZrO
2重量換算で3.6%濃度のオキシ塩化ジルコニウム八水和物水溶液1.53kgを徐々に添加し、40℃にて1時間で攪拌混合してジルコニウムで表面処理された金属酸化物微粒子の水分散液を得た。このとき、ジルコニウムの量は核微粒子中に含まれる金属元素に対して酸化物換算基準で5.0モル%であった。
【0145】
次いで、前記チタン系微粒子を含む混合水溶液9.00kgをスプレードライヤー(NIRO社製NIRO ATOMIZER)に供して噴霧乾燥(入口温度:260℃、出口温度:55℃)した。これにより、平均粒子径が約2μmの複合酸化物粒子からなる乾燥粉体0.63kgを得た。
【0146】
次に、上記で得られたチタン系微粒子の乾燥粉体0.63kgを、空気雰囲気下、700℃の温度にて1時間焼成して、チタン系微粒子の焼成粉体0.59kgを得た。
次に、得られたチタン系微粒子の焼成粉体0.17kgを純水250.4gに分散させ、これに10重量%濃度の水酸化カリウム水溶液24.8gを添加してpH11.0に調整した。次いで、この混合水溶液に粒子径0.1mmのアルミナビーズ(大明化学工業(株)製 高純度アルミナビーズ)1.27kgを加えて、これを湿式粉砕機(カンペ(株)製バッチ式卓上サンドミル)に供して180分間、前記チタン系微粒子の粉砕処理を行った。その後、石英ビーズを目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、さらに純水840.0gを添加して撹拌し、固形分含有量が11重量%の水分散ゾル1.17kgを得た。
【0147】
このように粉砕して得られたチタン系微粒子を含む水分散ゾルは乳白色であった。また、この水分散ゾル中に含まれる前記チタン系微粒子の平均粒子径は106nmであり、さらに100nm以上の粒子径を有する粗大粒子の分布頻度は59.1%であった。
【0148】
次いで、この固形分含有量が11重量%の水分散ゾル1.17kgに純水0.12kgを添加して、固形分濃度が10重量%の水分散ゾルとし、さらに陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)0.29kgを混合して15分間攪拌した。次に、前記陰イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)39.4gを混合して15分間攪拌した。次いで、前記陽イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、この水分散ゾルを遠心分離機(日立工機(株)製CR−21G)に供して12,000rpmの速度で1時間処理して、100nm以上の粒子径を有する粗大粒子を分級して取り除いた。これにより、固形分含有量が6.4重量%の水分散ゾル1.13kgを得た。
【0149】
次いで、この固形分含有量が6.4重量%の水分散ゾル1.13kgに、純水2.49kgを混合して、固形分含有量が2.0重量%の水分散ゾル3.62kgを得た。次に、この水分散ゾルをオートクレーブ(耐圧硝子工業(株)製、5L)に入れて、165℃の温度で18時間、加熱処理した。
【0150】
次に、オートクレーブから取り出して室温まで冷却された水分散ゾルに、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)0.14kgを混合して15分間攪拌した。次いで、前記陰イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去したのち、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製)9.5gを混合して15分間攪拌した。さらに、前記陽イオン交換樹脂を目開き44μmのステンレス製フィルターを用いて分離・除去して、脱イオンされた固形分含有量が2.0重量%のチタン系微粒子(コア粒子)を含む水分散液(C−2)3.52kgを得た。
【0151】
さらに、前記と同様な操作を4回繰返し固形分含有量が2.0重量%のチタン系微粒子(コア粒子)を含む水分散液(C−2)17.6kgを得た。
(コアシェル型結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−2)の調製)
製造例4の<工程2>において、チタニウムを主成分とするコア粒子を含む水分散液(C−1)3.0kgを用いる代わりに、上記のチタン系微粒子(コア粒子)を含む水分散液(C−2)15.0kgを用いた以外は製造例4と同様の操作を行い、固形分濃度20.5重量%のコアシェル型結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−2)を得た。
【0152】
[製造例6]
コアシェル型でない結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MF−1)の調製
製造例4の(操作1.3)において、結晶性無機酸化物微粒子の水分散液(P−1)1470gを使用するかわりに、製造例4の(操作1.1)で得られたチタニウムを主成分とするコア粒子を含む水分散液(C−1)1470gを使用した以外は製造例4の(操作1.3)と同様の操作を行い、コアシェル型でない結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MF−1)を調製した。
【0153】
[実施例1]
ハードコート層形成用塗料組成物(H1)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0154】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例1で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−1)303.3gおよび製造例4で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)339.68g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H1)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0155】
[実施例2]
ハードコート層形成用塗料組成物(H2)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0156】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例1で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−1)336.8gおよび製造例5で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−2)306.2g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H2)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0157】
[実施例3]
ハードコート層形成用塗料組成物(H3)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0158】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例2で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−2)303.3gおよび製造例4で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)339.68g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H3)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0159】
[実施例4]
ハードコート層形成用塗料組成物(H4)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0160】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例3で調製した固形分濃度30重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−3)202.2gおよび製造例4調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)339.68g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H4)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0161】
[
参考例5]
ハードコート層形成用塗料組成物(H5)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0162】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例1で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−1)214.4gおよび製造例4で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)428.7g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H5)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0163】
[実施例6]
ハードコート層形成用塗料組成物(H6)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0164】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例1で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−1)413.4gおよび製造例4で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)229.7g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(H6)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0165】
[比較例1]
ハードコート層形成用塗料組成物(C1)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0166】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)226.2g、市販のアルカリ性球状シリカ微粒子の水分散液(日揮触媒化成(株)製カタロイドSI−30、平均粒子径12nm、固形分濃度30%)428.7g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(C1)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0167】
[比較例2]
ハードコート層形成用塗料組成物(C2)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0168】
次いで、この加水分解液に、前述の「シリカ微粒子(SA−1)の調製」で調製した固形分濃度20重量%のシリカ微粒子の水分散液(SA−1)303.3gおよび前述の「結晶性無機酸化物微粒子(MF−1)の調製」製造例6で調製した固形分濃度20重量%のコアシェル型ではない結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MF−1)954.0g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1g、ジシアンジアミド(キシダ化学(株)製、一級)9.9gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(C2)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0169】
[比較例3]
ハードコート層形成用塗料組成物(C3)の調製
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Momentive Performance Materals Inc.製SILQUEST A−186 SILANE)160.1g、トリメトキシシラン(信越化学(株)製KBM−13)30.7gの混合液中に、混合液を攪拌しながら0.01Nの塩酸水溶液110.6gを滴下した。更に、この混合液を液温10℃で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行い、加水分解液を得た。
【0170】
次いで、この加水分解液に、メタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)11.9g、製造例1で調製した固形分濃度20重量%のシリカ系微粒子の水分散液(AS−1)303.3gおよび製造例4で調製した固形分濃度20重量%の結晶性無機酸化物微粒子のメタノール分散液(MP−1)339.68g、イタコン酸(キシダ化学(株)製、特級)28.1gおよびレベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7604)5.7gを加え、室温で一昼夜攪拌して、ハードコート層形成用塗料組成物(C3)を調製した。塗料組成物の構成は表3に示した。
【0171】
[製造例7]
(フォトクロミック層形成用塗料組成物の調製)
メラミン・ホルムアルデヒド重縮合体水溶液(昭和電工(株)製ミルベンレジンSM850)195.6gおよびポリオールポリエステルポリマー(日本ポリウレタン工業(株)製ニッポラン131)244.5gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル(ダウケミカル製ダワノールPM)525.3gに添加し撹拌した。ついで、その溶液にp−トルエンスルホン酸・一水和物(東京化成工業(株)製)6.3g、レベリング剤としてのシリコーン系界面活性剤を10重量%に調整したメタノール溶液(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)6.3gを加え、室温で一昼夜攪拌した後、市販のフォトクロミック化合物(東京化成工業(株)製、1,3,3−トリメチルインドリノ−6‘−ニトロベンゾピリロピラン)13.2gを添加し撹拌しながら超音波分散させフォトクロミック化合物含有塗料組成物(U1)を調製した。
【0172】
試験用プラスチックレンズ基板(試験片)の作製および評価
<プラスチックレンズ基板(試験片)の作製>
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
市販のプラスチックレンズ基材「モノマー名:MR−8」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.60)を、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗したのち、十分に乾燥させた。
【0173】
(2)フォトクロミック層の形成
前処理を行ったプラスチックレンズ基材の凸面にスピンコート法でフォトクロミック層形成用塗料組成物を塗布して塗膜を形成した。
【0174】
次に、前記塗膜を100℃で10分間、加熱処理して、塗膜(フォトクロミック層)の予備硬化を行った。
このようにして形成された前記フォトクロミック層の予備硬化後の膜厚は、概ね10〜20μmであった。
【0175】
(3)ハードコート層の形成
前記前処理を行ったプラスチックレンズ基材、またはフォトクロミック層を形成したプラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート層形成用の塗料組成物を塗布して塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法を用いて行った。
【0176】
次に、前記塗膜を90℃で10分間、乾燥させた後、110℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。この際、前記フォトクロミック層の本硬化も同時に行った。
このようにして形成された前記ハードコート層の硬化後の膜厚は、概ね3.0〜3.5μmであった。
【0177】
(4)反射防止膜の形成
前記ハードコート層の表面に、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させた。ここでは、ハードコート層側から大気側に向かって、SiO
2:0.06λ、ZrO
2:0.15λ、SiO
2:0.04λ、ZrO
2:0.25λ、SiO
2:0.25λの順序で積層された反射防止膜の層を形成した。また、設計波長λは、520nmとした。
【0178】
<プラスチックレンズ基板(試験片)の評価>
実施例1〜
4、参考例5、実施例6、比較例1〜3で得られたハードコート層形成用の塗料組成物H1〜H6、C1〜C3と、フォトクロミック層形成用塗料組成物U1とを用いて、表6に示す組み合わせで、前処理を行ったプラスチックレンズ基材上にプライマー層膜およびハードコート層を形成して試験片1〜16を作製した。
【0179】
このようにして得られた試験片1〜16について、上記の評価試験法を用いて、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性、耐光性、屈折率、フォトクロミック性を試験して評価した。その結果を表4に示す。
【0180】
この結果から明らかなように、実施例で作成した塗料組成物を塗布して得られた試験片では耐擦傷性および膜硬度が非常に高いとともに、曇りがなく透明度が高く、さらに密着性、耐候的密着性、耐光性も高かった。
【0181】
【表1】
【0182】
【表2】
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】