(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の期間に第1の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第1の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得するとともに、上記所定の期間に上記第1の車両とは別の第2の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第2の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得手段と、
上記指標値取得手段が取得した上記第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変したタイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻と略同一の時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置と略同一の位置において、上記第1の車両にて計測された上記センサー計測値から算出された上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去手段と、
上記指標値除去手段によって上記除去された後の上記第1の車両のタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記第1の車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段と、
を備えることを特徴とするタイヤ状態判定装置。
所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得手段と、
上記指標値取得手段が取得した各タイヤ状態判定指標値について、タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報に基づいて、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を含むルートを特定するルート特定手段と、
上記ルート特定手段によって同一のルートが特定されたタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段と、
を備え、
上記ルート特定手段が特定したルートに応じて、上記指標値取得手段が取得したタイヤ状態判定指標値が複数に分類された場合、上記タイヤ状態判定手段は、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超える変化が、所定数以上のルートについて発生しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定する
ことを特徴とするタイヤ状態判定装置。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における天候を示す天候情報である
ことを特徴とする請求項6に記載のタイヤ状態判定装置。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における道路舗装工事の状況を示す道路舗装情報である
ことを特徴とする請求項6または7に記載のタイヤ状態判定装置。
所定の期間に第1の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第1の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得するとともに、上記所定の期間に上記第1の車両とは別の第2の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第2の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得ステップと、
上記指標値取得ステップにおいて取得された上記第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変したタイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻と略同一の時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置と略同一の位置において、上記第1の車両にて計測された上記センサー計測値から算出された上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去ステップと、
上記指標値除去ステップにおいて上記除去された後の上記第1の車両のタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記第1の車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定ステップと、
を含むことを特徴とするタイヤ状態判定方法。
所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得ステップと、
上記指標値取得ステップにおいて取得された各タイヤ状態判定指標値について、タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報に基づいて、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を含むルートを特定するルート特定ステップと、
上記ルート特定ステップにおいて同一のルートが特定されたタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定ステップと、
を含み、
上記ルート特定ステップにおいて特定されたルートに応じて、上記指標値取得ステップにおいて取得されたタイヤ状態判定指標値が複数に分類された場合、上記タイヤ状態判定ステップでは、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超える変化が、所定数以上のルートについて発生しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定することを特徴とするタイヤ状態判定方法。
上記所定の期間の最初から1または複数の上記タイヤ状態判定指標値に基づいて決定される初期値より所定値だけ離れた値に、上記閾値を設定する閾値設定ステップを含み、
上記閾値設定ステップでは、上記緩徐判定ステップにおいて上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、上記急変が生じた時点において、上記閾値を再設定する
ことを特徴とする請求項15に記載のタイヤ状態判定方法。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における天候を示す天候情報である
ことを特徴とする請求項18に記載のタイヤ状態判定方法。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における道路舗装工事の状況を示す道路舗装情報である
ことを特徴とする請求項18または19に記載のタイヤ状態判定方法。
所定の期間に第1の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第1の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得するとともに、上記所定の期間に上記第1の車両とは別の第2の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第2の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得ステップと、
上記指標値取得ステップにおいて取得された上記第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変したタイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻と略同一の時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置と略同一の位置において、上記第1の車両にて計測された上記センサー計測値から算出された上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去ステップと、
上記指標値除去ステップにおいて上記除去された後の上記第1の車両のタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記第1の車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定ステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるためのタイヤ状態判定プログラム。
所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得ステップと、
上記指標値取得ステップにおいて取得された各タイヤ状態判定指標値について、タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報に基づいて、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を含むルートを特定するルート特定ステップと、
上記ルート特定ステップにおいて同一のルートが特定されたタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定ステップと、
を含み、
上記ルート特定ステップにおいて特定されたルートに応じて、上記指標値取得ステップにおいて取得されたタイヤ状態判定指標値が複数に分類された場合、上記タイヤ状態判定ステップでは、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超える変化が、所定数以上のルートについて発生しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定する
処理をコンピュータに実行させるためのタイヤ状態判定プログラム。
上記所定の期間の最初から1または複数の上記タイヤ状態判定指標値に基づいて決定される初期値より所定値だけ離れた値に、上記閾値を設定する閾値設定ステップを含み、
上記閾値設定ステップでは、上記緩徐判定ステップにおいて上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、上記急変が生じた時点において、上記閾値を再設定する
ことを特徴とする請求項23に記載のタイヤ状態判定プログラム。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における天候を示す天候情報である
ことを特徴とする請求項26に記載のタイヤ状態判定プログラム。
上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における道路舗装工事の状況を示す道路舗装情報である
ことを特徴とする請求項26または27に記載のタイヤ状態判定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。説明の便宜上、各実施形態に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0019】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、
図1から
図18に基づいて説明すれば以下のとおりである。
【0020】
(タイヤ空気圧警報システムの概略)
まず、
図2を用いて、本実施形態に係るタイヤ空気圧警報システム1の構成の概略について説明する。
図2に示すようにタイヤ空気圧警報システム1は、減圧警報サーバ10、天候情報提供サーバ11a、道路舗装情報提供サーバ11b、車両V
1〜車両V
n、および携帯端末X(V
1)を含む構成である。そして、減圧警報サーバ10、天候情報提供サーバ11a、道路舗装情報提供サーバ11b、車両V
1〜車両V
nおよび携帯端末X(V
1)は、通信ネットワークNを介して相互に通信可能に接続されている。なお、車両V
1〜車両V
nと、減圧警報サーバ10とは、テレマティクスにより相互に通信してもよい。
【0021】
車両V
1〜車両V
nは、例示的に、4輪車両であり、それぞれ、4つのタイヤの車輪速などを計測するセンサーを搭載している。そして、車両V
1〜車両V
nは、センサー計測値に基づいて、タイヤの減圧を判定するための減圧判定指標値情報を生成することができる。車両V
1〜車両V
nは、生成した減圧判定指標値情報を減圧警報サーバ10に送信する。なお、以下では、車両V
1〜車両V
nのそれぞれを区別する必要がない場合、単に車両Vと表記する。
【0022】
携帯端末X(V
1)は、車両V
1の運転手が所有する携帯端末である。なお、
図2では、例示的に、携帯端末X(V
1)のみを示しているが、これに限られず車両V
2〜車両V
nの運転手が所有する携帯端末がタイヤ空気圧警報システム1の構成要素として含まれていてもよい。
【0023】
天候情報提供サーバ11aは、車両Vの走行経路における天候を示す天候情報を提供する。天候情報提供サーバ11aは、例えば、天気ニュース提供サービスを提供する民間企業が管理するサービス提供用サーバである。天候情報提供サーバ11aは、例示的に、減圧警報サーバ10に対して、定期的に天気情報を配信するものとするが、減圧警報サーバ10からの要求に応じて天気情報を送信しても構わない。
【0024】
道路舗装情報提供サーバ11bは、減圧警報サーバ10からの要求に応じて、各地域における道路舗装工事の状況を示す道路舗装情報を提供する。道路舗装情報提供サーバ11bは、定期的または不定期的に道路舗装情報を配信するよう構成されていても構わない。
【0025】
なお、天候情報提供サーバ11aおよび道路舗装情報提供サーバ11bは、外部サーバ11と総称する場合がある。
【0026】
減圧警報サーバ10は、車両Vから取得した減圧判定指標値情報に基づいて、車両Vのタイヤ空気圧の減圧を判定する。具体的には、まず、減圧警報サーバ10は、随時、車両Vから減圧判定指標値情報を取得し、外部サーバ11から天候情報および道路舗装情報を取得する。また、減圧警報サーバ10は、所定のタイミングで、天候情報提供サーバ11aから取得した天候情報、および、道路舗装情報提供サーバ11bから取得した道路舗装情報に基づいて、天候や道路舗装工事の状況などの外乱の影響を受けていると推測される減圧判定指標値情報を除去する。そして、減圧警報サーバ10は、外乱の影響を受けていると推測される減圧判定指標値情報を除去した後の減圧判定指標値情報に基づいて、車両Vのタイヤ空気圧の減圧を判定する。
【0027】
以下では、説明の便宜上、減圧警報サーバ10が車両V
1のタイヤ空気圧の減圧を判定する例について説明する。減圧警報サーバ10は、車両V
1のタイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定した場合、車両V
1の車載装置200(
図2においては記載を省略している。
図3および
図4を参照)または車両V
1の所有者の携帯端末X(V
1)に対して、減圧警報メッセージを送信する。なお、所有者の携帯端末X(V
1)に対して減圧警報メッセージを送信しない場合、携帯端末X(V
1)は省略することができる。
【0028】
(車両について)
次に、
図3および
図4を用いて、車両Vの構成について説明する。
図3は、車両Vの構成の概略を示す図であり、
図4は、車両Vが備える車載装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0029】
図3に示すように、車両Vは、車載装置200を備える構成である。車載装置200は、左前輪(FLW)、右前輪(FRW)、左後輪(RLW)、および右後輪(RRW)の4つのタイヤの回転速度を検出するため、各タイヤに設けられた車輪速センサーSと接続されている。車輪速センサーSからの信号は車載装置200が備える制御部220(後述)に供給される。車輪速センサーSのサンプリング間隔は任意である。以下では、説明のため、例示的に、1秒ごとに車輪速センサーSがサンプリングを行うものとする。
【0030】
図4に示すように、車載装置200は、制御部220と、タイマー230と、GPS装置240と、通信インターフェース250と、報知器260とを備えている。
【0031】
タイマー230は、現在時刻を示す時刻情報を生成するものである。なお、以下では、「時刻情報」には、時分秒とともに、日付を含むものとする。
【0032】
GPS(Global Positioning System)装置240は、車両Vの現在位置を示す位置情報を取得するものである。以下では例示のため、位置情報を経緯表示により表わすこととするが、これに限られず他の任意の形式が採用可能である。なお、位置情報を取得するのにGPS装置240を用いるのは一例であり、その他例えば、他の衛星測位システムや、通信に用いる基地局情報を利用した測位システム(携帯会社がGPS非対応携帯電話の位置を測位する方法など)を用いてもよい。
【0033】
通信インターフェース(図面では、“通信I/F”と略記している。以下同様)250は、通信ネットワークNを介した通信を可能にするためのネットワークインターフェースである。
【0034】
報知器260は、インジケータによる表示によって、タイヤが減圧していることを運転手に報知するためのものである。例えば、報知器260は、液晶表示素子、プラズマ表示素子またはCRTなどからなる表示装置により構成することができる。なお、これに限定されず、報知器260は、スピーカにより構成され、音声出力によってタイヤの減圧を運転手に報知してもよい。
【0035】
制御部220は、車輪速センサーS等の外部装置との信号の受け渡しに必要なI/Oインターフェース220aと、演算処理の中枢として機能するCPU220bと、該CPU220bの制御プログラムが格納されたROM220cと、CPU220bによって制御動作中にデータが一時的に書き込まれたり、読み出されたりするRAM220dとから構成されている。
【0036】
なお、図示していないが、車載装置200において、タイヤを交換したとき、またはタイヤの空気圧を基準内圧(正常空気圧)に調節したときに、計測をやり直すための初期化スイッチを設けてもよい。本発明は減圧判定指標値の緩徐的変化をモニターしているため初期化スイッチを押し忘れても警報することができるが、初期化スイッチを設けることで、上記のようなタイミングで計測をやり直せるという更なる効果がある。
【0037】
次に、
図5を用いて、制御部220の機能的構成について説明する。
図5は、車載装置200の構成を示すブロック図である。
【0038】
図5では、車両Vの各種センサーが含まれるセンサー部210を示している。以下では、センサー部210が、車輪速センサーSを含む例について説明する。しかしながら、これに限られず、センサー部210は、タイヤ空気圧の減圧判定のための指標値である減圧判定指標値(後述)の種類に応じて、適宜、ブレーキ圧センサーや、ヨーレートセンサー等の車載されたセンサー類、モータ、アクチュエータなど駆動装置からの信号を含んでいてもよい。
【0039】
また、
図5に示すように、制御部220は、機能ブロックとして、減圧判定指標値算出部221と、送信データ生成部222と、メッセージ受信部223とを備える。これらの各機能ブロックは、例えば、CPU220bが、不揮発性の記憶装置(ROM220c)に記憶されているプログラムをRAM220dに読み出して実行することで実現できる。
【0040】
減圧判定指標値算出部221は、車輪速センサーSが計測した車輪速センサー計測値からタイヤ空気圧の減圧判定のための指標値である減圧判定指標値を算出する。減圧判定指標値としては、例えば特許文献1に記載されているような前後輪速度比を採用することができる。しかしながら、減圧判定指標値の種類は特に限定されず、DLR、RFM等、あるいは任意の指標値(例えば、特許文献2)を採用することができる。また、減圧判定指標値算出部221が、センサー部210から取得するセンサー計測値は、車輪速センサー計測値に限られない。減圧判定指標値算出部221は、減圧判定指標値の種類に応じて、減圧判定指標値の算出に必要なセンサー計測値(ブレーキ圧センサーや、ヨーレートセンサーの計測値等)をセンサー部210から取得すればよい。
【0041】
減圧判定指標値算出部221が減圧判定指標値を算出する間隔は、任意であるが、以下では、説明の便宜のため、例示的に車輪速センサーSの検出間隔と同様、1秒毎とする。しかしながら、これに限られず、減圧判定指標値を算出する間隔は、車輪速センサーSのサンプリング間隔と異なっていてもよい。減圧判定指標値算出部221は、算出した減圧判定指標値に、車輪速センサーSの計測時刻を付与して、送信データ生成部222に供給する。
【0042】
送信データ生成部222は、減圧判定指標値情報を生成する。減圧判定指標値情報は、減圧警報サーバ10がタイヤの減圧を判定するために用いる情報であり、具体的には、以下のように生成される。送信データ生成部222は、まず、GPS装置240から位置情報を取得するとともに、減圧判定指標値算出部221から減圧判定指標値を取得する。そして、送信データ生成部222は、減圧判定指標値に、対応する付加情報、具体的には、車両を特定するための識別情報(車両識別情報)、測定日時、位置情報を付加して減圧判定指標値情報を生成する。なお、以下において、減圧判定指標値に対応する位置情報が示す位置のことを、減圧判定指標値のサンプル位置と表記する。また、減圧判定指標値に対応する測定日時が示す時刻のことを減圧判定指標値のサンプル時刻と表記する。そして、送信データ生成部222は、生成した減圧判定指標値情報を、通信I/F250を介して減圧警報サーバ10に送信する。
【0043】
メッセージ受信部223は、減圧警報サーバ10から減圧警報メッセージを通信I/F250を介して受信する。減圧警報メッセージは、送信データ生成部222が減圧警報サーバ10に対して送信する減圧判定指標値に基づいて、減圧警報サーバ10が減圧判定を行った結果に応じて減圧警報サーバ10から送信される。メッセージ受信部223は、減圧警報メッセージを受信すると、タイヤが減圧している旨の報知を行うよう報知器260に指示する。
【0044】
(減圧警報サーバについて)
次に、
図6および
図1を用いて、減圧警報サーバ10の構成について説明する。
図6は、減圧警報サーバ10のハードウェア構成を示すブロック図であり、
図1は、減圧警報サーバ10の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0045】
図6に示すように、減圧警報サーバ10は、CPU10a、RAM10b、ROM10c、ディスプレイ10e、入力装置10f、補助記憶装置10g、通信I/F110、およびこれらを相互に接続するバス10dを備える。
【0046】
CPU10aは、演算処理の中枢として機能する。
【0047】
RAM10bは、読み書き可能なメモリであり、例えば、前記CPU10aが制御動作を行う際にデータなどが一時的に書き込まれたり、その書き込まれたデータが読み出されたりする。
【0048】
ROM10cは、読み出し専用メモリであり、例えば、該CPU10aの制御プログラムが格納される。
【0049】
ディスプレイ10eは、液晶表示素子、有機EL(Electro-Luminescence)素子、プラズマ表示素子またはCRTなどで構成された表示装置である。
【0050】
入力装置10fは、例えば、マウスや、キーボードなど、減圧警報サーバ10の管理者が入力操作を行うための装置である。
【0051】
補助記憶装置10gは、ハードディスクや、フラッシュメモリなど、非一時的な記憶媒体である。
【0052】
通信I/F110は、通信ネットワークNを介した通信を可能にするための通信インターフェースである。
【0053】
図1に示すように、減圧警報サーバ10は、ハードウェア構成としては、通信I/F110、制御部120、記憶部130を備えている。
【0054】
通信I/F110については、既に説明済みであるので、ここではその説明を省略する。
【0055】
制御部120は、CPU10aによる制御動作によって、減圧警報サーバ10を統括的に制御する。制御部120は、CPU10aおよびCPU10aを制御するためのプログラムや、命令を格納したRAM10bおよびROM10cにより実現される。なお、制御部120の機能の詳細については後述する。
【0056】
記憶部130には、減圧警報サーバ10にて実行される各処理において用いられるデータが記憶される。記憶部130は、揮発性の記憶媒体であるRAM10bや、不揮発性の記憶媒体であるROM10c、補助記憶装置10gなどにより実現される。ここで、
図7〜10を用いて、記憶部130に記憶される各データについて説明する。記憶部130には、減圧判定指標値情報131(
図7)、天候情報132(
図8)、道路舗装情報133(
図9)、閾値決定情報134(不図示)、および、宛先情報135(
図10)が記憶される。
【0057】
減圧判定指標値情報131は、車両V
1〜車両V
nから送信される減圧判定指標値情報である。減圧判定指標値情報131は、車両識別情報に応じて車両ごとに記憶される。
図1では、車両V
1の減圧判定指標値情報を“131(V
1)”と表している。
図7に、ある車両についての減圧判定指標値情報のデータ構造を示す。
図7に示すように、減圧判定指標値情報は、「測定日時」、「位置情報」、「減圧判定指標値」を含むデータ構造を有する。なお、
図7に示すとおり、位置情報は、“北緯”・“東経”の形式の経緯表示にて示しているが、前述のとおり別の形式を採用することも可能である。また、以下で説明する天候情報132(
図8)および道路舗装情報133(
図9)の位置情報についても同様である。
【0058】
天候情報132は、ある時点において車両Vの走行経路付近にて観測された天候を示す情報である。天候情報132は、例えば、
図8に示すように、観測された日時を示す「観測日時」と、地域を特定するための「位置情報」と、観測時点の「天候」とを含むデータ構造を有する。「天候」には、例えば、“晴天”、“曇天”、“雨天”、“豪雨”、“降雪”などの天候が設定される。なお、天候情報132は、
図8に示すとおり、「気温」および「湿度」を含んでいてもよい。ここでは、例示的に、「気温」の単位を“℃”とし、「湿度」の単位を“%”としている。
【0059】
道路舗装情報133は、車両Vの走行経路の道路舗装工事の状況を示す情報である。道路舗装情報133は、例えば、
図9に示すように、道路舗装工事の「開始日時」および「終了日時」と、道路舗装工事の区間を示す「位置情報」と、工事の状況を示す「道路舗装状況」とを含むデータ構造を有する。
【0060】
閾値決定情報134は、タイヤ空気圧の減圧判定に用いられる閾値を決定するための情報である。閾値決定情報134は、例えば、タイヤ空気圧の減圧判定に用いられる減圧判定指標値の種類と、当該減圧判定指標値の種類に応じた設定値と、当該設定値に対応する減圧の程度を示す情報とを含む。
【0061】
宛先情報135は、タイヤ空気圧が所定値以上減圧している場合に送信する減圧警報メッセージの宛先を定める情報である。宛先情報135は、例えば、
図10に示すように、車両を特定するための「車両識別情報」および警報メッセージの宛先を示す「宛先」を対応付けた情報である。宛先が“車両”であれば、警報メッセージは車両の車載装置に送信される。
【0062】
また、宛先として、車両の運転手が所有する携帯端末のメールアドレス(キャリアメールアドレス等)が登録されている場合、あるいは、携帯端末のメッセンジャー機能の宛先(例えば、電話番号)が登録されている場合、警報メッセージは携帯端末に送信される。なお、宛先として“車両”および“メールアドレス”の両方を指定できるようになっていてもよい。
【0063】
(制御部の詳細)
さらに、
図1を参照しながら、減圧警報サーバ10の制御部120の具体的構成について説明する。
【0064】
制御部120は、具体的には、機能ブロックとして、車両情報取得部121、サーバ情報取得部122、ルート分類部123、異常指標値除去部124、緩徐判定部125、閾値判定部126、およびメッセージ生成部127を備える。これらの各機能ブロックは、例えば、CPU10aが、不揮発性の記憶装置(ROM10c)に記憶されているプログラムをRAM10bに読み出して実行することで実現できる。
【0065】
車両情報取得部121は、車両V
1〜車両V
nから送信される減圧判定指標値情報を、通信I/F110を介して取得し、車両ごとに記憶部130に記憶する。
【0066】
サーバ情報取得部122は、通信I/F110を介して、外部サーバ11から取得した情報を記憶部130に記憶する。具体的には、サーバ情報取得部122は、天候情報提供サーバ11aから定期的に配信される天候情報を取得して記憶部130に記憶する。また、サーバ情報取得部122は、道路舗装情報提供サーバ11bから道路舗装情報を取得して記憶部130に記憶する。
【0067】
ルート分類部123は、減圧判定指標値情報131に含まれる位置情報に基づいて、減圧判定に用いる減圧判定指標値を、該減圧判定指標値の算出に用いられた車輪速センサー計測値が計測された位置を含むルートを特定する。これにより、ルート分類部123は、減圧判定に用いる減圧判定指標値を、ルートごとに分類する(以下、「ルート分類」と称する)。
【0068】
ルート分類部123は、減圧判定指標値を、走行経路において、路面状況が同じであると考えられる区間(以下、「ルート」と称する)ごとに分類することができる。例えば、ルートは、車両の走行経路を、一定時間で区切ることで得られる。また、ルートは、車両の走行経路を、走行速度ごとに区切ることで得てもよい。なお、ルート分類部123におけるルート分類は、種々の観点から行うことができ、任意のクラスタリング、分類手法を用いることができる。
【0069】
ここで、
図11を用いて、ルート分類部123におけるルート分類の一例を説明すると以下のとおりである。
図11は、自宅(地点P)から会社(地点Q)までの走行経路のように日々利用する道路において得られた減圧判定指標値をルート分類する例について示している。
【0070】
以下の例では、運転手が、通勤などで、日々、PQ間を車両V
1で走行するものとし、記憶部130には、PQ間で得られた減圧判定指標値情報が記憶されているものとする。また、車両V
1は、道路ST1では、約30km/hで走行し、道路ST2では、約60km/hで走行し、道路ST3では、約30km/hで走行していたとする。また、減圧判定指標値のサンプリング間隔は、上述のとおり、1秒毎とすることができる。なお、同図では、説明のため、黒丸にてサンプリング位置を示しているが、これはサンプリングの粗密を模式的に表したものであり、実際のサンプリング数を示すものではない。このような場合、ルート分類部123は、走行速度(言い換えれば、単位距離または単位時間あたりの減圧判定指標値のサンプル数;サンプル数の疎密)を基準に減圧判定指標値のルート分類を行ってもよい。
【0071】
具体的には、例えば、ルート分類部123は、PQ間の通勤においてサンプリングされた減圧判定指標値を次のようにしてルート分類すればよい。まず、地点PT
1の前後でサンプルの間隔が密から疎に変化する(すなわち、速度が増加する)。また、地点PT
2の前後で、サンプルの間隔が疎から密に変化する(すなわち、速度が減少する)。このように、サンプルの間隔に応じてPQ間の走行経路を3分割することができる。
【0072】
そこで、ルート分類部123は、サンプルの間隔に応じて、区間PT
0−PT
1でサンプリングされた減圧判定指標値をルートD1に分類し、区間PT
1−PT
2でサンプリングされた減圧判定指標値をルートD2に分類し、区間PT
2−PT
3でサンプリングされた減圧判定指標値をルートD3に分類することができる。
【0073】
異常指標値除去部124は、ルートごとに分類された減圧判定指標値について、異常判定を行い、外乱により影響を受けている(異常値となっている)と考えられる減圧判定指標値を、減圧判定に用いる減圧判定指標値から除去する。なお、この除去処理では、減圧判定指標値を減圧判定に用いなくするだけでよく、減圧判定指標値を記憶部130から削除しなくてもよい。
【0074】
異常指標値除去部124が行う異常値の除去処理には、例えば、以下に説明するように、(1)悪天候時に関するものや(2)道路舗装工事時に関するものなどがある。
【0075】
(1)悪天候時における減圧判定指標値の除去
異常指標値除去部124は、減圧判定指標値のサンプル時において、当該サンプル位置での天候が“豪雨”または“降雪”である場合、当該減圧判定指標値を、減圧判定に用いる減圧判定指標値から除去する。
【0076】
具体的には、異常指標値除去部124は、以下のようにして悪天候のため異常と考えられる減圧判定指標値を除去する。まず、異常指標値除去部124は、減圧判定指標値に対応付けられた位置情報および測定日時に対応する天候情報132を、記憶部130から読み出す。異常指標値除去部124は、例えば、減圧判定指標値のサンプル位置から最寄りの位置で、かつ、サンプル時刻から所定範囲(例えば前後30分程度)の時刻に観測された天候を示す天候情報を、当該減圧判定指標値に対応する天候情報として抽出すればよい。
【0077】
そして、異常指標値除去部124は、減圧判定指標値に対応する天候情報の「天候」が“豪雨”または“降雪”などの悪天候を示す場合、当該減圧判定指標値を除去する。これにより、道路が冠水していたり、雪氷により路面が覆われていたりすると推定される位置および日時にサンプリングされた減圧判定指標値を除去することができる。
【0078】
(2)道路舗装工事時における減圧判定指標値の除去
異常指標値除去部124は、減圧判定指標値のサンプル時において、当該サンプル位置において、道路舗装工事が行われていた場合、当該減圧判定指標値を、減圧判定に用いる減圧判定指標値から除去する。
【0079】
具体的には、異常指標値除去部124は、以下のようにして道路舗装工事のため異常と考えられる減圧判定指標値を除去する。
【0080】
まず、異常指標値除去部124は、減圧判定指標値に対応付けられた位置情報および測定日時に対応する道路舗装情報133を、記憶部130から読み出す。
【0081】
異常指標値除去部124は、例えば、減圧判定指標値のサンプル位置から所定範囲内の位置で、かつ、サンプル時刻直近の所定期間(例えば半年程度前から同時刻まで)に行われた道路舗装工事を示す道路舗装情報を、当該減圧判定指標値に対応する道路舗装情報として抽出すればよい。
【0082】
異常指標値除去部124は、減圧判定指標値に対応する道路舗装情報が存在する場合、当該減圧判定指標値を除去する。その結果、各ルートについて、道路舗装工事前にサンプリングされた減圧判定指標値が維持される。
【0083】
ここで、道路舗装工事が完了して路面が整えられると、路面状態が以前より良好になる。路面の状態が変化するため、道路舗装工事前後で、減圧判定指標値の判定基準は変化する場合がある。そこで、異常指標値除去部124は、上記のように、道路舗装工事後にサンプリングされた減圧判定指標値を除去することで、減圧判定にて用いられる減圧判定指標値のバラツキを抑制する。なお、上記に限られず、異常指標値除去部124は、道路舗装工事前にサンプリングされた減圧判定指標値を除去しても構わない。
【0084】
緩徐判定部125は、ルートごとに、異常指標値が除去された減圧判定指標値の群について、判定値を用いて減圧判定指標値の変化の傾向に急変が生じたか否かを判定する緩徐判定を行う。
【0085】
本実施形態では、判定値が、減圧判定指標値の移動平均である場合について説明する。減圧判定指標値の移動平均は、一例として、ある注目サンプルおよびの当該注目サンプルより前の直近9サンプル(あわせて10サンプル)の減圧判定指標値の平均を求めることで得ることができる。
【0086】
すなわち、緩徐判定部125は、減圧判定指標値の移動平均の時系列データの変化の傾向に急変が生じたか否かを判定する。なお、本明細書において、(時)系列データの変化の傾向に急変が生じていない状態を、「推移が緩徐的である」と表現する。
【0087】
緩徐な推移であるか否かは、例えば、ある注目サンプルを基準として得られた減圧判定指標値の移動平均と、当該注目サンプルの直前のサンプルを基準として得られた減圧判定指標値の移動平均とが、所定値以上乖離しているか否かに応じて判定できる。すなわち、以下において、「変化の傾向」といった場合、“減圧判定指標値の推移”および“減圧判定指標値から算出された判定値の推移”のいずれをも含み得る。よって、変化の傾向が急変したか否かは、減圧判定指標値および減圧判定指標値から算出された判定値のいずれを用いて行ってもよい。
【0088】
減圧判定指標値の移動平均の時系列データが緩徐な推移を示していない場合(すなわち、減圧判定指標値の変化の傾向が急変した場合)、緩徐判定部125は、減圧判定指標値の変化の傾向が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去することで、減圧判定にて用いられる減圧判定指標値のバラツキを抑制する。
【0089】
なお、以下では、緩徐判定部125は、サンプル時刻順に整列された減圧判定指標値の移動平均を用いて緩徐判定を行うものとしているが、これに限られない。緩徐判定部125は、減圧判定指標値の種類に応じて、例えば、車両の走行距離順に対応付けて整列された減圧判定指標値の移動平均を用いて緩徐判定を行ってもよい。また、走行距離は、例えば、減圧判定指標値のサンプル位置間の距離を累積することで求めることができる。
【0090】
また、このように、緩徐判定部125が判定値として移動平均を用いて緩徐判定を行うのは、ある程度の減圧判定指標値の変動を平滑化して傾向を把握するためである。しかしながら、緩徐判定に用いる判定値は、減圧判定指標値の移動平均に限られず、減圧判定指標値自体であってもよい。また、緩徐判定部125は、減圧判定指標値の移動平均が、一時的に急変しただけであれば、緩徐推移を示しているとみなしてもよい。
【0091】
閾値判定部126は、減圧判定指標値または減圧判定指標値から算出される判定値と閾値とを比較することで、タイヤ空気圧の減圧幅が所定値以上となっているか否かを判定する。
【0092】
以下では、閾値判定部126が閾値比較に用いる判定値は、上述の緩徐判定部125の場合と同様、移動平均とするが、これに限られず、減圧判定指標値に基づいて算出できる統計値などであればよい。例えば、減圧判定指標値の所定サンプル数の移動平均などである。閾値判定部126は、具体的には、各ルートにおいて、減圧判定指標値の所定サンプル数の移動平均が、基準となる正常内圧時の減圧判定指標値から、閾値決定情報134において規定される設定値以上増減したか否かを判定する。また、移動平均を得るためのサンプル数は例えば“10”とすることができる。
【0093】
タイヤ空気圧の減少に伴い、減圧判定指標値が増加するか、それとも減少するかは、減圧判定指標値の種類によって異なる。以下では、説明の便宜上、タイヤ空気圧の減少に伴い、減圧判定指標値が減少する例について説明する。
【0094】
また、閾値の決定の際、正常内圧時の減圧判定指標値に設定値を加えるか、正常内圧時の減圧判定指標値から設定値を減じるかは、減圧判定指標値の種類によって異なる。タイヤ空気圧の減少に伴い、減圧判定指標値が減少する場合、正常内圧時の減圧判定指標値から設定値を減じて閾値を決定すればよい。一方、タイヤ空気圧の減少に伴い、減圧判定指標値が増加する場合、正常内圧時の減圧判定指標値に設定値を加えて閾値を決定すればよい。以下では、閾値判定部126が、正常内圧時の減圧判定指標値から、閾値決定情報134において規定される設定値を減じた値を閾値として決定し、減圧判定指標値の移動平均が、閾値を下回っているか否かを判定する例について説明する。
【0095】
また、正常内圧時の減圧判定指標値としては、例えば、それぞれのルートにおける最初の10サンプルの減圧判定指標値の平均値を採用することができる。しかしながらこれに限られず、基準となる指標値をそれぞれのルートにおける最初の減圧判定指標値とすることも可能である。
【0096】
なお、閾値決定情報134の設定値は、上述のとおり、減圧判定指標値の種類に応じて設定される。例えば、特許文献1に記載されているような前後輪速度比を減圧判定指標値として採用する場合、減圧判定指標値が0.0009減少したとき、25%の減圧と判定することができる。この場合、閾値決定情報134の設定値は、0.0009と設定することができる。
【0097】
いずれかのルートにおいて、減圧判定指標値の移動平均が、閾値を下回っている場合、閾値判定部126は、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定する。一方、すべてのルートにおいて、減圧判定指標値の移動平均が、閾値を下回っていない場合、閾値判定部126は、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していないと判定する。
【0098】
なお、閾値判定部126は、すべてのルートにおいて、減圧判定指標値の移動平均が、閾値を下回っている場合、閾値判定部126は、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定してもよい。また、閾値判定部126は、2以上の所定個数のルートにおいて、減圧判定指標値の移動平均が、閾値を下回っている場合、閾値判定部126は、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定してもよい。
【0099】
また、以上では、閾値判定部126は、減圧判定指標値の移動平均と、基準となる減圧判定指標値とを比較する構成について説明したが、これに限られない。閾値判定部126は、減圧判定指標値の移動平均ではなく、個々の減圧判定指標値と、基準となる減圧判定指標値とを比較してもよい。また、タイヤ空気圧の減少に伴い、減圧判定指標値が増加する場合、閾値判定部126は、減圧判定指標値の移動平均が、正常内圧時の減圧判定指標値に設定値を加えて得られる閾値を超えるか否かを判定すればよい。また、減圧判定指標値には、緩徐変化する状態が正常で、値が一定となった場合(飽和、saturate)、タイヤ状態の異常であると判定できるものもあり得る。このような減圧判定指標値の場合、警報の判断基準は、値が一定であることが所定期間継続しているか否かとなる。
【0100】
メッセージ生成部127は、閾値判定部126において、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定されたときに、宛先情報135の設定に従って、車両V
1の車載装置200または携帯端末X(V
1)に対して減圧警報メッセージを送信する。具体的には、メッセージ生成部127は、宛先情報135に“車両”のみが設定されている場合、車両V
1の車載装置200のみに、減圧警報メッセージを送信する。また、メッセージ生成部127は、宛先情報135に“メールアドレス”のみが設定されている場合、携帯端末X(V
1)のみに、減圧警報メッセージを送信する。また、また、メッセージ生成部127は、宛先情報135に“車両”および“メールアドレス”の両方が設定されている場合、車両V
1の車載装置200および携帯端末X(V
1)の両方に減圧警報メッセージを送信する。なお、減圧警報メッセージには、窒素ガスの充填や、タイヤ交換などを促すための広告類が含まれていても構わない。
【0101】
(処理の流れ)
次に、
図12および
図13を用いて、タイヤ空気圧警報システム1における処理の流れについて説明する。
図12は、タイヤ空気圧警報システム1におけるデータ取得処理の一例を示すフローチャートであり、
図13は、減圧警報サーバ10における減圧判定処理の一例を示すフローチャートである。以下、データ取得処理および減圧判定処理の順で説明する。
【0102】
[データ取得処理]
[減圧判定指標値情報の取得処理]
データ取得処理では、車両V
1〜V
nにおいて、減圧判定指標値算出部221が、所定の間隔で取得された車輪速センサー計測値から減圧判定指標値を算出する(S101)。
【0103】
次に、送信データ生成部222が、算出された減圧判定指標値に位置情報、測定時刻および車両識別情報等を対応付けて減圧判定指標値情報として、減圧警報サーバ10に送信する(S102)。減圧警報サーバ10では、車両V
1〜V
nから送信される減圧判定指標値情報を車両識別情報に応じて記憶部130に記憶する(S301)。
【0104】
[天候情報の取得処理]
減圧警報サーバ10では、サーバ情報取得部122が、天候情報提供サーバ11aから定期的に配信(S201)される天候情報を受信し、受信した天候情報を記憶部130に記憶する(S302)。
【0105】
[道路舗装情報の取得処理]
減圧警報サーバ10では、サーバ情報取得部122が、道路舗装情報提供サーバ11bに対して道路舗装情報の送信を要求する(S303)。これに応じて、道路舗装情報提供サーバ11bは、道路舗装情報をサーバ情報取得部122に送信する(S202)。減圧警報サーバ10では、サーバ情報取得部122が、受信した道路舗装情報を記憶部130に記憶する(S304)。
【0106】
なお、減圧判定指標値情報の取得処理(S101、S102、S301)、天候情報の取得処理(S201、S302)、道路舗装情報の取得処理(S303、S202、S304)の実行順序は、
図11に示すものに限られず、任意である。
【0107】
例えば、天候情報の取得処理の後に道路舗装情報の取得処理を実行しても構わない。また、サーバ情報取得部122が、定期的に、天候情報提供サーバ11aへ天候情報の送信要求を行ってもよい。道路舗装情報提供サーバ11bから道路舗装情報が減圧警報サーバ10に対してプッシュ配信されるように構成されてもよい。
【0108】
[減圧判定処理]
以下では、減圧警報サーバ10が、車両V
1についてタイヤ空気圧の減圧判定処理を行う例について説明する。減圧判定処理の頻度は、タイヤ空気圧の自然リークを判定するものであることに鑑みて、例えば、1日1回などとすることができる。減圧判定処理では、まず、ルート分類部123が、車両V
1の減圧判定に用いる減圧判定指標値131(V
1)を記憶部130から読み出し、減圧判定指標値131(V
1)をルートごとに分類する(S311)。
【0109】
次に、異常指標値除去部124が、各ルートの減圧判定指標値の異常判定を行い異常な減圧判定指標値を、減圧判定に用いる減圧判定指標値から除去する(S312)。異常指標値除去部124は、例えば、上述のとおり、各ルートについて、悪天候による影響、および、道路舗装工事による影響を受けたと考えられる減圧判定指標値を除去する。
【0110】
次に、緩徐判定部125が、各ルートの減圧判定指標値の移動平均の時系列変化が緩徐かどうかを判定する。減圧判定指標値の移動平均の時系列データが緩徐な推移を示していない場合、緩徐判定部125は、減圧判定指標値の移動平均が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去する。
【0111】
次に、閾値判定部126が、閾値決定情報134の設定値を用いて閾値を決定し、当該閾値を用いてタイヤ空気圧の減圧判定を行う(S314)。具体的には、閾値判定部126は、決定した閾値と、減圧判定指標値または閾値判定部126から算出される判定値とを比較することによりタイヤ空気圧の減圧判定を行う。
【0112】
閾値判定部126が、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定した場合(S315においてYES)、メッセージ生成部127が、宛先情報135において設定された宛先に減圧警報メッセージを送信する。閾値判定部126が、タイヤ空気圧が所定値以上減圧していないと判定した場合(S315においてNO)、処理は終了する。
【0113】
(具体例)
次に、
図14〜
図18を用いて、減圧判定処理の具体例について説明する。
図14〜
図18は、それぞれ、減圧判定指標値と、計測開始時からの経過日数との関係を示すグラフである。減圧判定指標値としては、前述のとおり、特許文献1の前後輪速度比を採用している。なお、この減圧判定指標値は、路面が粗いと値が低くなる傾向がある。また、以下において説明する値は、例示のための概算値であり、厳密なものではない。
【0114】
図14は、計測開始後に得られたすべての減圧判定指標値をグラフにプロットした比較例である。
図14に示す減圧判定指標値は、ルートA、ルートBおよびルートCからなる走行経路上でサンプリングされている。正常内圧時の減圧判定指標値のレベルK1(一点鎖線)は、計測開始時の最初の減圧判定指標値であり、その値は、1.0004である。
【0115】
また、正常内圧時の減圧判定指標値から、減圧判定指標値が、0.0009減少した場合、25%の減圧状態と判定する。従って、閾値のレベルT1(破線)は、0.9995である。
【0116】
図14において、計測開始後すぐの位置にある楕円E1において、閾値のレベルT1を下回るサンプルが現れている。また、その後しばらくして、同じ時期にサンプリングされた他の減圧判定指標値よりもかなり低いレベルの減圧判定指標値(以下、「減圧判定指標値E2」と称する)が現れている。
【0117】
減圧判定指標値E1、E2は、各ルート間での道路状況のバラツキや外乱の影響を受けていると考えられる。閾値のレベルT1よりも小さい値の減圧判定指標値が現れたときに“減圧状態”と判定する判定方法を採用した場合、減圧判定指標値E1、E2は、閾値のレベルT1よりも小さい値であるので、減圧状態と判定されてしまう。よって、比較例では、実際には、減圧量が1%に満たないレベルでも、25%減圧状態と判定されてしまうおそれがある。
【0118】
図15、
図16および
図17は、それぞれ、ルート分類部123により、走行経路においてサンプリングされた減圧判定指標値を、ルートA、ルートB、およびルートCの3つのルートに分類したグラフである。なお、ルート分類部123は、前述の減圧判定指標値E1をルートCに分類している。
【0119】
また、ルートA、ルートB、およびルートCのグラフでは、それぞれ、異常指標値除去部124が、悪天候時および工事舗装工事時の減圧判定指標値を除去している。例えば、異常指標値除去部124は、減圧判定指標値E2を除去している。なお、
図18に、異常指標値除去部124が除去した減圧判定指標値をプロットしたグラフを示す。
【0120】
また、ルートA、ルートB、およびルートCのグラフでは、計測開始時からの10サンプルの平均値を正常内圧時の減圧判定指標値とし、正常内圧時の減圧判定指標値から、減圧判定指標値が、0.0009減少したレベルを閾値として設定している。また、10サンプルの移動平均の推移を移動平均線mにて表している。以下、各ルートにおける正常内圧時の減圧判定指標値および閾値を示す。
【0121】
<<ルートA>>
正常内圧時の減圧判定指標値のレベルK11≒1.0004
閾値T11=0.9995
<<ルートB>>
正常内圧時の減圧判定指標値のレベルK12≒1.0000
閾値T12=0.9991
<<ルートC>>
正常内圧時の減圧判定指標値のレベルK13≒0.9997
閾値T13=0.9988
本具体例では、移動平均の時系列的変化が緩徐的であり、かつ移動平均が閾値を下回った場合、25%の減圧状態と判定する。
【0122】
ルートA、ルートB、およびルートCのグラフでは、いずれにおいても、移動平均線mは緩徐的に推移している。
【0123】
また、ルートA、ルートB、およびルートCのグラフでは、それぞれ、200日から250日の間において移動平均が閾値T11、T12、およびT13を下回っている。
【0124】
ルートAにおいて、最も早く移動平均が閾値を下回っているため、閾値判定部126は、ルートAにおいて、移動平均が閾値を下回った時点で、25%減圧状態と判定してもよい。また、閾値判定部126は、ルートA、ルートB、およびルートCうち、2つ以上のルート、または、すべてのルートで移動平均が閾値を下回った時点で、25%減圧状態と判定してもよい。
【0125】
(変形例)
(1)本実施形態では、車両Vにおいて車載装置200が減圧判定指標値を算出する構成について説明したが、これに限られず、減圧警報サーバ10が、減圧判定指標値を算出する構成としてもよい。
【0126】
減圧警報サーバ10が、減圧判定指標値を算出する場合、車両Vにおいて車載装置200が、車輪速センサーSから取得した車輪速センサー計測値を、車両Vの車両識別情報、計測時刻および位置情報とともに、減圧警報サーバ10に送信すればよい。また、減圧警報サーバ10において、車両Vから送信される車輪速センサー計測値に基づいて、減圧判定指標値を算出し、算出した減圧判定指標値と、車両Vの車両識別情報と、計測時刻と、位置情報とを対応付けて記憶部130に記憶すればよい。
【0127】
(2)本実施形態では、ルート分類部123が、走行速度に基づいてルート分類を行う構成について説明したがこれに限られない。ルート分類部123は、サンプリングされた減圧判定指標値を、出発点(例えば、
図11における自宅P)から所定の時間間隔で区切ることで、ルート分類してもよい。
【0128】
また、減圧警報サーバ10において予め道路の位置や形状を特定できるような地図情報を取得し、ルート分類部123が、当該地図情報に基づいて、減圧判定指標値のサンプリング位置がいずれのルート(道路)に属するかを判定することで、ルート分類を行ってもよい。なお、通信に用いる基地局情報を利用した測位システムにより位置情報を取得する場合には、通信位置を位置情報として用いることができる。この場合、位置情報は、数百メートル単位の精度になる。
【0129】
また、センサー部210から、センサー測定値として、ヨーレート、速度、ブレーキ情報の時系列データを取得している場合、取得したヨーレート、速度、ブレーキ情報の時系列データから、同一ルートであるか否かを推測することができる。例えば、10分間60km/hで直線走行後に、ブレーキがかかり800Rを50km/hで左旋回後、再び60km/hで直線走行した場合、これらの走行過程において得られたサンプルは同一のルートのものと推測できる。
【0130】
(3)本実施形態では、異常指標値除去部124が、道路舗装情報133に基づいて、減圧判定指標値を除去する構成について説明したがこれに限られない。異常指標値除去部124が道路舗装工事後の減圧判定指標値を除去するのではなく、閾値判定部126が、閾値を再設定しても構わない。
【0131】
例えば、
図15に示すルートAのグラフにおいて、100日目あたりでは、減圧判定指標値の移動平均は、およそ1.0000であり、正常内圧時の減圧判定指標値から、略0.0004減少している。ここで、100日目以降で、減圧判定指標値が大きく変化しており、かつ道路舗装情報が減圧判定指標値のサンプル位置付近において100日目に道路舗装工事が終了していることを示していた場合について検討する。また、100日目以降の10サンプルの移動平均が、0.9988であるとする。このような場合、閾値判定部126は、0.9988を新たな基準値として設定する。また、閾値判定部126は、これまでの減少分を考慮して、閾値を再設定すればよい。すなわち、閾値判定部126は、閾値決定情報134の設定値0.0009からこれまでの減少分0.0004を差し引いた差分“0.0005”を計算し、基準値0.9988から差分0.0005を減じた“0.9983”を新たな閾値として設定すればよい。このようにして閾値を再設定した場合、閾値判定部126は、減圧判定指標値が“0.9983”となる時点で25%の減圧と判定する。
【0132】
(4)本実施形態では、緩徐判定部125が、減圧判定指標値が緩徐的に推移していない場合、減圧判定指標値の変化の傾向が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去する構成について説明したがこれに限られない。緩徐判定部125が減圧判定指標値を除去する代わりに、減圧判定指標値の変化の傾向が急変した時点において、閾値判定部126が、閾値を再設定しても構わない。また、緩徐判定部125は、あるルートについて減圧判定指標値が緩徐的に推移している場合においても、所定期間内における減圧判定指標値のバラツキが大きい場合、当該ルート自体を減圧判定の対象から除外してもよい。減圧判定指標値のバラツキは、例えば、減圧判定指標値の分散などを求めることで判定してもよい。
【0133】
(5)本実施形態では、異常指標値除去部124が道路舗装工事後の減圧判定指標値を除去する構成について説明した。また、緩徐判定部125が、減圧判定指標値が緩徐的に推移していない場合、減圧判定指標値の変化の傾向が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去する構成について説明した。
【0134】
あるルートについて、道路舗装工事後あるいは減圧判定指標値の変化の傾向が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去しても、閾値判定のためのデータ数が不足しなかった場合、減圧判定指標値が閾値を超えていれば、減圧警報サーバ10は警報を出せばよい。
【0135】
あるルートについて、道路舗装工事後あるいは減圧判定指標値の変化の傾向が急変してからサンプリングされた減圧判定指標値を除去することで、閾値判定のためのデータ数が不足した場合(減圧判定指標値の移動平均が閾値を超えなかった場合)、そのルートについての減圧判定指標値の時系列データでは減圧判定できないため、減圧警報サーバ10は他のルートのデータで減圧判定すればよい。
【0136】
(6)本実施形態では、異常指標値除去部124が、天候情報132および道路舗装情報133に基づいて、外乱により影響を受けていると考えられる減圧判定指標値を除去する構成について説明したがこれに限られない。車両V
1以外の車両V
2〜V
n(あるいは、車両V
1を含む車両V
1〜V
n)の減圧判定指標値情報131に基づいて、減圧判定指標値を除去してもよい。具体的に説明すると次のとおりである。
【0137】
異常指標値除去部124は、車両V
2〜V
nの減圧判定指標値の変化の傾向が、特定の位置で、ある日時を境に急変しているか否かを判定する。急変しているか否かの判定は、上述した緩徐判定と同様の方法で行うことができる。車両V
2〜V
nの減圧判定指標値が、特定の位置で、ある日時を境に急変している場合は、当該位置において、当該日時以降に、路面状況または減圧判定指標値に影響を与える不特定因子が存在することが推測される。よって、異常指標値除去部124は、減圧判定指標値の変化の傾向が急変した日時以後の減圧判定指標値を除去してもよい。また、減圧判定指標値の変化の傾向が急変した日時以後、上記(3)で説明したように、閾値判定部126が閾値を再設定してもよい。
【0138】
また、さらに、ルート分類部123は、車両V
2〜V
nの減圧判定指標値に対して、ルート分類を行ってもよく、異常指標値除去部124は、ルート分類処理が施された車両V
2〜V
nの減圧判定指標値について、異常値の除去処理を行ってもよい。
【0139】
また、緩徐判定部125は、ある位置について車両V
2〜V
nの減圧判定指標値が緩徐的に推移している場合においても、所定期間内における車両V
2〜V
nの減圧判定指標値のバラツキが大きい場合、同時期に当該ある位置においてサンプリングされた車両V
1の減圧判定指標値を、減圧判定に用いる減圧判定指標値から除去してもよい。減圧判定指標値のバラツキは、例えば、減圧判定指標値の分散などを求めることで判定してもよい。
【0140】
すなわち、本変形例に係る減圧警告サーバ10は、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの減圧状態を判定するための減圧状態判定指標値と、該減圧判定指標値に付された測定時刻(サンプル時刻)および位置情報(サンプル位置)とを取得するとともに、上記所定の期間に車両V
1とは別の車両V
2〜V
nにて計測されたセンサー計測値から算出された、車両V
2〜V
nのタイヤの減圧状態を判定するための減圧状態判定指標値と、該減圧判定指標値に付された測定時刻(サンプル時刻)および位置情報(サンプル位置)とを取得する車両情報取得部121と、車両情報取得部121が取得した車両V
2〜V
nの減圧判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変した減圧判定指標値のサンプル時刻と略同一の時刻に、該減圧判定指標値のサンプル位置が示す位置と略同一の位置において、車両V
1にて計測された上記センサー計測値から算出された上記減圧判定指標値を除去する異常指標値除去部124と、異常指標値除去部124によって上記除去された後の車両V
1の減圧判定指標値を用いて、上記減圧判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、車両V
1のタイヤの減圧状態を判定する閾値判定部126と、を備える構成である。
【0141】
車両V
2〜V
nの減圧判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたときには、車両V
2〜V
nの減圧判定指標値が不測の外乱要因を受けている可能性がある。
【0142】
上記構成によれば、車両V
2〜V
nが不測の外乱要因を受けている可能性があると判明した場合に、車両V
2〜V
nと略同時刻、略同位置に居合わせた車両V
1も、不測の外乱要因を受けている可能性があると考えることができる。
【0143】
このため、不測の外乱要因を受けている可能性がある車両V
2〜V
nの減圧判定指標値と同じような状況から得られた車両V
1の減圧判定指標値を除去することにより、車両V
1の減圧判定指標値に係る車輪速センサー計測値が計測されたときの路面状況をそろえることができる。よって、車両V
1のタイヤの状態を判定する精度を向上させることができる。
【0144】
(7)本実施形態では、減圧警報サーバ10の制御部120が、ルート分類部123、異常指標値除去部124、および緩徐判定部125のすべてを備える構成であったが、このような構成に限られない。制御部120は、ルート分類部123、異常指標値除去部124、および緩徐判定部125の少なくとも一つを備える構成であればよい。また、ルート分類部123、異常指標値除去部124、および緩徐判定部125の処理順序も特に限定されない。
【0145】
さらに言えば、異常指標値除去部124における除去処理を行ってから、緩徐判定部125における緩徐判定を行うことは、既知の特定の外乱要因の影響を異常指標値除去部124における除去処理により取り除いてから、未知の不足の外乱要因の影響を緩徐判定部125における緩徐判定により取り除いているということもできる。
【0146】
緩徐判定部125における緩徐判定を単独で行う場合、当該緩徐判定により、悪天候や、道路舗装工事の影響を受けたと考えられる減圧判定指標値を取り除くことも可能である。
【0147】
(作用・効果)
以上のように、本実施形態に係る減圧警告サーバ10によれば、センサー計測値から算出される“減圧状態を判定するための減圧判定指標値”が路面状況から受けるバラツキの影響を排除することにより減圧判定の精度の向上を図ることができる。具体的に説明すると次のとおりである。
【0148】
まず、本実施形態に係る減圧警告サーバ10は、第1の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの減圧状態を判定するための減圧判定指標値と、減圧判定指標値に付された位置情報(サンプル位置)とを取得する車両情報取得部121と、車両情報取得部121が取得した各減圧判定指標値について、減圧判定指標値のサンプル位置に基づいて、該サンプル位置を含むルートを特定するルート分類部123と、ルート分類部123によって同一のルートが特定された減圧判定指標値を用いて、減圧判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両の減圧状態を判定する閾値判定部126と、を備える構成である。
【0149】
上記構成によれば、ルートの違いによる路面状況のバラツキの影響を排除できる。
【0150】
なお、減圧警告サーバ10は、ルート分類の前に減圧判定指標値を記憶部130に格納しており、ルート分類の際に記憶部130から減圧判定指標値を取得する構成である。
【0151】
ここで、減圧判定指標値の記憶部130への格納については、車両Vにおいて減圧判定指標値が算出される場合には、車両Vより取得した減圧判定指標値が記憶部130に格納される。一方、車両Vより車輪速センサー計測値を取得し、減圧警告サーバ10において減圧判定指標値を算出する場合には、車両Vより取得した車輪速センサー計測値から算出した減圧判定指標値を記憶部130に格納する。
【0152】
また、本実施形態に係る減圧警告サーバ10は、第2の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの減圧状態を判定するための減圧判定指標値と、減圧判定指標値に付された測定時刻(サンプル時刻)および位置情報(サンプル位置)とを取得する車両情報取得部121と、車両情報取得部121が取得した各減圧判定指標値について、減圧判定指標値のサンプル時刻に、該減圧判定指標値のサンプル位置において、路面状況に影響を与える外乱要因があったか否かを判定するための外乱情報(天候情報および道路舗装情報)を取得するサーバ情報取得部122と、サーバ情報取得部122が取得した上記外乱情報に基づいて、上記外乱要因があった時刻を示す時刻情報および位置を示す位置情報に対応する上記減圧判定指標値を除去する異常指標値除去部124と、異常指標値除去部124によって上記除去された後の上記減圧判定指標値を用いて、上記減圧判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの減圧状態を判定する閾値判定126と、を備える構成である。
【0153】
上記構成によれば、路面状況に影響を与える外乱要因(悪天候や道路舗装工事など)があったか否かを判定するための外乱情報に基づいて減圧判定指標値が外乱要因の影響を受けていると考えられるような、路面状況のバラツキの影響を排除できる。
【0154】
本実施形態に係る減圧警告サーバ10は、第3の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの減圧状態を判定するための減圧判定指標値を、該減圧定指標値の算出に用いられた上記車輪速センサー計測値が計測された日時順に整列された時系列データとして取得する車両情報取得部121と、車両情報取得部121が取得した減圧判定指標値の上記所定の期間における変化の傾向に急変が生じたか否かを判定する緩徐判定部125と、緩徐判定部125によって上記変化の傾向に急変が生じていないと判定された場合、減圧判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの減圧状態を判定する閾値判定部126と、を備える構成である。
【0155】
上記構成によれば、減圧判定指標値が不測の外乱要因の影響を受けていないことで、路面状況のバラツキが少ないか否かを判定することができる。
【0156】
また、一般的に、車載装置200は、減圧警報サーバ10よりも、ハードウェア上の制約が大きく、計算処理能力や記憶容量に制限がある。よって、以上で説明したタイヤ空気圧警報システム1のように、減圧警報サーバ10側で、減圧判定指標値を記憶し、減圧判定を行ったほうが、長期間のスパンで多数のデータを取得、記憶し、その変化の推移から減圧判定を行ううえで有利である。
【0157】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図19に基づいて説明すると次のとおりである。
図19は、車載装置200Aの構成を示すブロック図である。前記実施形態1(
図1)で説明したタイヤ空気圧警報システム1は、減圧警報サーバ10において、車両V
1のタイヤ空気圧の減圧判定を行う構成であったが、本実施形態においては、車両Vが備える車載装置200Aにおいて減圧判定を行う。車載装置200Aのハードウェア的な制約が許せば、このような車両単独で、減圧判定を行うシステムも構築してもよい。
【0158】
図19に示すように、車載装置200Aは、
図5に示した車載装置200において、さらに記憶部270を追加した構成となっている。記憶部270は、車載装置200Aにおいて使用される各データを格納するためのものである。記憶部270に格納されるデータは、減圧判定指標値情報、天候情報、道路舗装情報、および閾値決定情報である。減圧判定指標値情報、天候情報、道路舗装情報、および閾値決定情報は、それぞれ、
図1に示した減圧警報サーバ10の記憶部130に記憶されるデータのうち、減圧判定指標値情報131(V
1)、天候情報132、道路舗装情報133、および閾値決定情報134と同様のデータ構造を有するため、ここではその説明を省略する。ただし、記憶部270に格納される減圧判定指標値では、車両V
1のデータのみを格納するため車両識別情報は省略可能である。
【0159】
また、車載装置200Aの制御部220は、機能ブロックとして、減圧判定指標値算出部221、減圧判定指標値情報生成部224、データ登録部225、および減圧判定部226を備える構成である。
【0160】
減圧判定指標値算出部221については、前記実施形態1において説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0161】
減圧判定指標値情報生成部224は、減圧判定指標値情報を生成する。具体的には、減圧判定指標値情報生成部224は、まず、減圧判定指標値算出部221から減圧判定指標値情報を取得するとともに、GPS装置240から位置情報を取得する。そして、減圧判定指標値情報生成部224は、減圧判定指標値に、対応する付加情報、具体的には、車両識別情報、測定日時、位置情報を付加して減圧判定指標値情報を生成する。減圧判定指標値情報生成部224は、生成した減圧判定指標値情報をデータ登録部225に供給する。
【0162】
データ登録部225は、減圧判定を行うための各データを記憶部270に格納する。具体的には、データ登録部225は、減圧判定指標値情報生成部224から供給される減圧判定指標値情報、ならびに、外部サーバ11から通信I/F250を介して取得した天候情報および道路舗装情報を記憶部270に格納する。
【0163】
減圧判定部226は、記憶部270に格納されている減圧判定指標値情報に基づいて、車両Vのタイヤ空気圧の減圧判定を行う。減圧判定部226の機能は、前記実施形態1(
図1)において説明したルート分類部123、異常指標値除去部124、緩徐判定部125および閾値判定部126により実現することができる。よって、ここでは、減圧判定部226の詳しい説明は省略する。
【0164】
また、減圧判定部226は、車両Vのタイヤ空気圧が所定値以上減圧していると判定した場合、タイヤが減圧している旨の報知を行うよう報知器260に指示する。
【0165】
以上に説明した構成によっても、上記実施形態1と同様、タイヤの減圧状態を判定するための減圧判定指標値のバラツキを抑制することにより、減圧判定の精度の向上を図ることができる。
【0166】
〔実施形態3〕
本発明のさらに他の実施形態について、
図20〜
図30に基づいて説明すると次のとおりである。
【0167】
(タイヤ摩耗警報システムの概略)
まず、
図20を用いて、本実施形態に係るタイヤ摩耗警報システム2の構成の概略について説明する。前記実施形態1において説明したタイヤ空気圧警報システム1では、タイヤ空気圧の減圧状態を判定し、タイヤ空気圧の減圧状態を検知した場合に、減圧警告メッセージを送信するものであったのに対して、本実施形態のタイヤ摩耗警報システム2では、タイヤのタイヤトレッド部の摩耗状態を判定し、タイヤトレッド部が摩耗していると判定した場合に、摩耗警告メッセージを送信する。
【0168】
図20に示すように、タイヤ摩耗警報システム2は、タイヤ空気圧警報システム1において、減圧警報サーバ10を、摩耗警報サーバ12に置き換えた構成である。そして、車両V
1〜車両V
nは、センサー計測値に基づいて、タイヤトレッド部の摩耗(以下、単に「タイヤの摩耗」と略記する)を判定するための摩耗判定指標値情報を生成することができるように構成を変更している。
【0169】
車両V
1〜車両V
nは、生成した摩耗判定指標値情報を摩耗警報サーバ12に送信する。
【0170】
摩耗警報サーバ12は、車両V
1〜車両V
nのタイヤの摩耗状態を判定する。より具体的には、摩耗警報サーバ12は、車両V
1〜車両V
nから取得した摩耗判定指標値情報、天候情報提供サーバ11aから取得した天候情報、および、道路舗装情報提供サーバ11bから取得した道路舗装情報に基づいて、車両V
1〜車両V
nのタイヤの摩耗状態を判定する。なお、説明の便宜上、以下では、摩耗警報サーバ12が車両V
1のタイヤの摩耗状態を判定する例について説明する。摩耗警報サーバ12は、車両V
1のタイヤの摩耗状態が所定値以上進行していると判定した場合、車両V
1の車載装置200Bまたは車両V
1の所有者の携帯端末X(V
1)に対して、摩耗警報メッセージを送信する。なお、所有者の携帯端末X(V
1)に対して摩耗警報メッセージを送信しない場合、携帯端末X(V
1)は省略することができる。
【0171】
車両V
1〜車両V
nおよび摩耗警報サーバ12以外の構成については、タイヤ空気圧警報システム1と同様であるので、ここでは、その詳細な説明を省略する。
【0172】
(車両について)
次に、
図21を用いて、車両Vが備える車載装置200Bの機能的構成について説明する。
図21は、車載装置200Bの制御部220の機能的構成について示した機能ブロック図である。
【0173】
車両Vの構成、および、車両Vが備える車載装置200Bのハードウェア構成については、報知器260の構成は、タイヤが摩耗していることを運転手に報知するように変更する以外は、
図3および4を用いて説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0174】
図21に示す制御部220は、
図5に示す制御部220において、減圧判定指標値算出部221、送信データ生成部222およびメッセージ受信部223を、それぞれ、摩耗判定指標値算出部221A、送信データ生成部222Aおよびメッセージ受信部223Aに変更したものである。
【0175】
摩耗判定指標値算出部221Aは、車輪速センサーSが計測した車輪速センサー計測値からタイヤの摩耗判定のための指標値を算出する。そして、摩耗判定指標値算出部221Aは、車輪速センサー計測値に基づき摩耗判定指標値を算出する。摩耗判定指標値としては、例えば、特許文献3に記載されている指標値を採用することができる。しかしながら、採用できる摩耗判定指標値の種類は特に限定されず、任意の指標値を採用することができる。
【0176】
摩耗判定指標値算出部221Aが摩耗判定指標値を算出する間隔は、減圧判定指標値算出部221の場合と同様、例示的に、1秒毎とする。摩耗判定指標値算出部221Aは、算出した摩耗判定指標値に、車輪速センサーの計測時刻を付与して、送信データ生成部222Aに供給する。
【0177】
送信データ生成部222Aは、摩耗警報サーバ12に送信するための摩耗判定指標値情報を生成する。摩耗判定指標値情報は、減圧判定指標値情報において、減圧判定指標値を、摩耗判定指標値に置き換えたデータ構造を有する。
【0178】
すなわち、送信データ生成部222は、位置情報、減圧判定指標値、測定日時、車両識別情報から減圧判定指標値情報を生成する構成であるのに対して、送信データ生成部222Aは、位置情報、摩耗判定指標値、測定日時、車両識別情報から摩耗判定指標値情報を生成する構成である。このように、送信データ生成部222と送信データ生成部222Aとの相違点は、減圧判定指標値を用いるか、摩耗判定指標値を用いるかの違いでしかないため、送信データ生成部222Aの詳細な説明は省略する。
【0179】
メッセージ受信部223Aは、通信I/F250を介して、摩耗警報サーバ12から摩耗警報メッセージを受信すると、タイヤが摩耗している旨の報知を行うよう報知器260に指示する。
【0180】
(摩耗警報サーバについて)
次に、
図22を用いて、摩耗警報サーバ12の構成について説明する。
図22は、摩耗警報サーバ12の機能的構成を示す機能ブロック図である。なお、摩耗警報サーバ12のハードウェア構成については、
図6を用いて説明したとおりであるので、その詳細な説明を省略する。
【0181】
図22に示す摩耗警報サーバ12は、実施形態1にて説明した減圧警報サーバ10の制御部120および記憶部130において、以下の構成に変更を施したものである。
【0182】
まず、摩耗警報サーバ12の記憶部130では、実施形態1の減圧警報サーバ10の減圧判定指標値情報131および閾値決定情報134を、摩耗判定指標値情報131Aおよび閾値決定情報134Aに置き換えている。
【0183】
摩耗判定指標値情報131Aは、車両V
1〜車両V
nから送信される摩耗判定指標値情報である。摩耗判定指標値情報131Aは、車両識別情報に応じて車両ごとに記憶される。
【0184】
図23に、ある車両についての摩耗判定指標値情報131Aのデータ構造を示す。前述したとおり、車両Vにおいて生成される摩耗判定指標値情報は、減圧判定指標値情報において、減圧判定指標値を、摩耗判定指標値に置き換えたものであるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0185】
閾値決定情報134Aは、タイヤの摩耗判定に用いられる閾値を決定するための情報である。閾値決定情報134Aは、例えば、タイヤの摩耗判定に用いられる摩耗判定指標値の種類と、当該摩耗判定指標値の種類に応じた設定値と、当該設定値に対応する摩耗の程度を示す情報とを含む。
【0186】
また、摩耗警報サーバ12の制御部120では、実施形態1の減圧警報サーバ10の車両情報取得部121、ルート分類部123、異常指標値除去部124、緩徐判定部125、閾値判定部126、およびメッセージ生成部127を、それぞれ、車両情報取得部121A、ルート分類部123A、異常指標値除去部124A、緩徐判定部125A、閾値判定部126A、およびメッセージ生成部127Aに置き換えている。
【0187】
車両情報取得部121Aは、車両V
1〜車両V
nから送信される摩耗判定指標値情報を、通信I/F110を介して取得し、車両ごとに記憶部130に記憶する。
【0188】
ルート分類部123Aおよび異常指標値除去部124Aは、処理の対象が、摩耗判定指標値である以外は、実施形態1のルート分類部123および異常指標値除去部124と同様であるので、その説明は省略する。
【0189】
緩徐判定部125Aは、異常指標値が除去された摩耗判定指標値について、ルートごとに、摩耗判定指標値のデータが緩徐な推移を示しているか否かを判定する。なお、緩徐判定部125Aは、例示的に、走行距離に対応付けて摩耗判定指標値のデータについて緩徐判定を行うものとする。また、走行距離は、例えば、摩耗判定指標値のサンプル位置間の距離を累積することで求めることができる。
【0190】
閾値判定部126Aは、摩耗判定指標値または摩耗判定指標値から算出される判定値(移動平均など)と閾値とを比較することで、タイヤが所定の状態以上に摩耗しているか否かを判定する。閾値判定部126Aは、各ルートにおいて、摩耗判定指標値の移動平均が、基準となる正常時の摩耗判定指標値から設定値以上変化(摩耗の進行に合わせて想定される方向へ増加あるいは減少)したか否かを判定する。閾値判定部126は、記憶部130に記憶されている閾値決定情報134Aを参照し、閾値決定情報134Aの設定に従って、正常時の摩耗判定指標値に設定値を反映させることで閾値を算出する。
【0191】
また、上記設定値は、上述のとおり、摩耗判定指標値の種類に応じて設定される。特許文献3に記載されている指標値を採用する場合、摩耗判定指標値が0.6増加したとき、タイヤが60%摩耗していると判定することができる。
【0192】
閾値判定部126Aは、閾値判定部126と同様、各ルートについての閾値判定に応じて、タイヤが所定の状態以上に摩耗しているか否かを判定する。
【0193】
メッセージ生成部127Aは、閾値判定部126Aにおいて、タイヤが所定の状態以上に摩耗していると判定されたときに、宛先情報135の設定に従って、車両Vの車載装置200Bまたは携帯端末Xに対して摩耗警報メッセージを送信する。
【0194】
(処理の流れ)
次に、
図24および
図25を用いて、タイヤ摩耗警報システム2における処理の流れについて説明する。
図24は、タイヤ摩耗警報システム2におけるデータ取得処理の一例を示すフローチャートであり、
図25は、摩耗警報サーバ12における摩耗判定処理の一例を示すフローチャートである。以下、データ取得処理および摩耗判定処理の順で説明する。
【0195】
[データ取得処理]
[摩耗判定指標値情報の取得処理]
データ取得処理では、車両V
1〜V
nにおいて、摩耗判定指標値算出部221Aが、所定の間隔で取得された車輪速センサー計測値から摩耗判定指標値を算出する(S121)。
【0196】
次に、送信データ生成部222Aが、算出された摩耗判定指標値に位置情報および車両識別情報を対応付けて摩耗判定指標値情報として、摩耗警報サーバ12に送信する(S122)。摩耗警報サーバ12では、車両V
1〜V
nから送信される摩耗判定指標値情報を車両識別情報ごとに記憶部130に記憶する(S321)。
【0197】
[天候情報および道路舗装情報の取得処理]
天候情報の取得処理(S201、S302)、道路舗装情報の取得処理(S303、S202、S304)については、
図12を用いて既に説明しているので、ここでは、その詳細な説明は省略する。
【0198】
[摩耗判定処理]
以下では、摩耗警報サーバ12が、車両V
1についてタイヤの摩耗判定処理を行う例について説明する。摩耗判定処理では、まず、ルート分類部123Aが記憶部130に記憶されている車両V
1の摩耗判定指標値をルートごとに分類する(S331)。
【0199】
次に、異常指標値除去部124Aが、各ルートの摩耗判定指標値の異常判定を行い異常な摩耗判定指標値を除去する(S332)。
【0200】
次に、緩徐判定部125Aが、各ルートの摩耗判定指標値の系列データの変化が緩徐かどうかを判定する。
【0201】
次に、閾値判定部126Aが、閾値を用いてタイヤの摩耗判定を行う(S334)。閾値判定部126Aが、タイヤが所定の状態以上に摩耗していると判定した場合(S335においてYES)、メッセージ生成部127Aが、宛先情報135において設定された宛先に摩耗警報メッセージを送信する。閾値判定部126Aが、タイヤが所定の状態以上に摩耗していないと判定した場合(S335においてNO)、処理は終了する。
【0202】
なお、摩耗警報メッセージには、タイヤ点検サービス・タイヤ交換などを促すための広告類が含まれていても構わない。
【0203】
(具体例)
次に、
図26〜
図30を用いて、摩耗判定処理の具体例について説明する。
図26〜
図30は、それぞれ、摩耗判定指標値と、計測開始時からの走行距離(km)との関係を示すグラフである。摩耗判定指標値としては、前述のとおり、特許文献3の指標値を採用している。なお、以下の値は、例示のための概算値であり、厳密なものではない。
【0204】
図26は、計測開始後に得られたすべての摩耗判定指標値をグラフにプロットした比較例である。
図26に示す摩耗判定指標値は、ルートD、ルートEおよびルートFからなる走行経路上でサンプリングされている。正常時の摩耗判定指標値のレベルK2(一点鎖線)は、計測開始時の最初の摩耗判定指標値であり、その値は、1である。
【0205】
また、正常時の摩耗判定指標値から、摩耗判定指標値が、0.6増加した場合、60%の摩耗状態と判定する。従って、閾値のレベルT2(破線)は、1.6である。
【0206】
図27、
図28および
図29は、それぞれ、ルート分類部123Aにより、ルートD、ルートE、およびルートFの3つのルートに分類された摩耗判定指標値をプロットしたグラフである。なお、ルートD、ルートE、およびルートFのグラフでは、それぞれ、異常指標値除去部124Aが、悪天候時および道路舗装工事時の摩耗判定指標値を除去している。
図30に異常指標値除去部124Aが除去した摩耗判定指標値をプロットしたグラフを示す。
【0207】
また、ルートD、ルートE、およびルートFのグラフでは、計測開始時からの20サンプルの平均値を正常時の摩耗判定指標値とし、正常時の摩耗判定指標値から、摩耗判定指標値が、0.6増加したレベルを閾値として設定している。また、20サンプルの移動平均の推移を移動平均線mにて表している。以下、各ルートにおける正常時の摩耗判定指標値および閾値を示す。
【0208】
<<ルートD>>
正常時の摩耗判定指標値のレベルK21≒1.00
閾値T21≒1.60
<<ルートE>>
正常時の摩耗判定指標値のレベルK22≒1.50
閾値T22≒2.10
<<ルートF>>
正常時の摩耗判定指標値のレベルK23≒1.23
閾値T23≒1.83
本具体例では、移動平均mの値の変化が緩徐的であり、かつ移動平均が閾値を超えた場合、60%の摩耗状態と判定する。
【0209】
ルートD、ルートE、およびルートFのグラフでは、いずれにおいても、移動平均線mは緩徐的に推移している。
【0210】
また、ルートD、ルートE、およびルートFのグラフでは、それぞれ、3万km前後において移動平均が閾値T21〜T23を上回っている。
【0211】
ルートFにおいて、最も早く移動平均が閾値を超えているため、閾値判定部126Aは、ルートFにおいて、移動平均が閾値を超えた時点で、60%摩耗状態と判定してもよい。
【0212】
[変形例]
以上では、車両Vにおいて摩耗判定指標値を算出する構成について説明したが、これに限られない。車両Vにおいて車載装置200Bが、車輪速センサーSから取得した車輪速センサー計測値を、車両Vの車両識別情報、計測時刻および位置情報とともに、摩耗警報サーバ12に送信する構成としてもよい。
【0213】
上記構成を採用する場合、摩耗警報サーバ12において、車両Vから送信される車輪速センサー計測値に基づいて、摩耗判定指標値を算出し、算出した摩耗判定指標値と、車両Vの車両識別情報と、計測時刻と、位置情報とを対応付けて記憶部130に記憶すればよい。
【0214】
また、本実施形態においても、実施形態1の“変形例”の項で説明した変形例を適用することが可能である。この場合、実施形態1の“変形例”の項における「減圧」に係る記載を、「摩耗」と読み替えればよい。
【0215】
(作用・効果)
以上に示したように、本実施形態に係る摩耗警告サーバ12は、第1の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの摩耗状態を判定するための摩耗判定指標値と該摩耗判定指標値に付された位置情報(サンプル位置)とを取得する車両情報取得部121Aと、車両情報取得部121Aが取得した各摩耗判定指標値について、摩耗判定指標値のサンプル位置に基づいて、該サンプル位置を含むルートを特定するルート分類部123Aと、ルート分類部123Aによって同一のルートが特定された摩耗判定指標値を用いて、摩耗判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの摩耗状態を判定する閾値判定部126Aと、を備える構成である。
【0216】
また、本実施形態に係る摩耗警告サーバ12は、第2の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの摩耗状態を判定するための摩耗判定指標値と、摩耗判定指標値に付された測定時刻(サンプル時刻)および位置情報(サンプル位置)とを取得する車両情報取得部121Aと、車両情報取得部121Aが取得した各摩耗判定指標値について、摩耗判定指標値のサンプル時刻に、該摩耗判定指標値のサンプル位置において、路面状況に影響を与える外乱要因があったか否かを判定するための外乱情報(天候情報および道路舗装情報)を取得するサーバ情報取得部122と、サーバ情報取得部122が取得した上記外乱情報に基づいて、上記外乱要因があった時刻を示す時刻情報および位置を示す位置情報に対応する上記摩耗判定指標値を除去する異常指標値除去部124Aと、異常指標値除去部124Aによって上記除去された後の上記摩耗判定指標値を用いて、上記摩耗判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの摩耗状態を判定する閾値判定部126Aと、を備える構成である。
【0217】
本実施形態に係る摩耗警告サーバ12は、第3の観点から言えば、所定の期間に車両V
1にて計測された車輪速センサー計測値から算出された、車両V
1のタイヤの摩耗状態を判定するための摩耗判定指標値を、該摩耗判定指標値の算出に用いられた上記車輪速センサー計測値が計測された日時順に整列された時系列データとして取得する車両情報取得部121Aと、車両情報取得部121Aが取得した摩耗判定指標値の上記所定の期間における変化の傾向に急変が生じたか否かを判定する緩徐判定部125Aと、緩徐判定部125Aによって上記変化の傾向に急変が生じていないと判定された場合、摩耗判定指標値の移動平均が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの摩耗状態を判定する閾値判定部126Aと、を備える構成である。
【0218】
上記構成によれば、タイヤの摩耗状態の判定に用いる摩耗判定指標値について、該摩耗判定指標値の算出に使用されたセンサー計測値が計測された路面状況をなるべくそろえることができ、摩耗判定の精度の向上を図ることができる。
【0219】
〔実施形態4〕
本発明のさらに他の実施形態について、
図31に基づいて説明すると次のとおりである。
図31は、車載装置200Cを搭載した車両Vの構成について例示する機能ブロック図である。上述のタイヤ摩耗警報システム2は、摩耗警報サーバ12において、車両V
1のタイヤ摩耗の摩耗判定を行う構成であったが、本実施形態においては、車両Vが備える車載装置200Cにおいて摩耗判定を行う。
【0220】
図31に示すように、車載装置200Cは、
図21に示した車載装置200Bにおいて、さらに記憶部270を追加した構成となっている。記憶部270は、車載装置200Cにおいて使用される各データを格納するためのものである。記憶部270に格納されるデータは、摩耗判定指標値、天候情報、道路舗装情報、および閾値決定情報である。摩耗判定指標値、天候情報、道路舗装情報、および閾値決定情報は、それぞれ、
図22に示した摩耗警報サーバ12の記憶部130に記憶されるデータのうち、摩耗判定指標値情報131A、天候情報132、道路舗装情報133、および閾値決定情報134と同様のデータ構造を有するため、ここではその説明を省略する。ただし、記憶部270に格納される摩耗判定指標値では、車両識別情報は省略可能である。
【0221】
また、車載装置200Cの制御部220は、摩耗判定指標値算出部221A、摩耗判定指標値情報生成部224A、データ登録部225A、および摩耗判定部226Aを備える構成である。
【0222】
摩耗判定指標値算出部221Aについては、実施形態3において説明したとおりであるので、ここではその説明を省略する。
【0223】
摩耗判定指標値情報生成部224Aは、摩耗判定指標値情報を生成する。具体的には、摩耗判定指標値情報生成部224Aは、まず、GPS装置240から位置情報を取得するとともに、摩耗判定指標値算出部221Aから摩耗判定指標値を取得する。そして、摩耗判定指標値情報生成部224Aは、摩耗判定指標値情報に、対応する付加情報、具体的には、車両識別情報、測定日時、位置情報を付加して摩耗判定指標値情報を生成する。摩耗判定指標値情報生成部224Aは、生成した摩耗判定指標値情報をデータ登録部225Aに供給する。
【0224】
データ登録部225Aは、摩耗判定を行うための各データを記憶部130に格納する。具体的には、データ登録部225Aは、摩耗判定指標値情報生成部224Aから供給される摩耗判定指標値情報、および、外部サーバ11から通信I/F250を介して取得した天候情報、道路舗装情報を記憶部270に格納する。
【0225】
摩耗判定部226Aは、記憶部270に格納されている摩耗判定指標値情報に基づいて、車両Vのタイヤの摩耗判定を行う。摩耗判定部226Aの機能は、
図22に示したルート分類部123A、異常指標値除去部124A、緩徐判定部125Aおよび閾値判定部126Aにより実現することができる。よって、ここでは、摩耗判定部226Aの詳しい説明は省略する。
【0226】
また、摩耗判定部226Aは、車両Vのタイヤが所定の状態以上に摩耗していると判定した場合、タイヤが摩耗している旨の報知を行うよう報知器260に指示する。
【0227】
以上に説明した構成によっても、上記実施形態3と同様、タイヤの摩耗状態を判定するための摩耗判定指標値のバラツキを抑制し、摩耗判定の精度の向上を図ることができる。
【0228】
〔ソフトウェアによる実現例〕
車両Vの車載装置200A、200C、減圧警報サーバ10、12の制御ブロックは、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0229】
後者の場合、車両Vの車載装置200A〜200C、減圧警報サーバ10、12は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0230】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0231】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るタイヤ状態判定装置(減圧警報サーバ10)は、所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値を、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された日時順に整列された時系列データとして取得する指標値取得手段(車両情報取得部121、121A、対応する処理はS301、S321)と、
上記指標値取得手段が取得した上記タイヤ状態判定指標値の上記所定の期間における変化の傾向に急変が生じたか否かを判定する緩徐判定手段(緩徐判定部125、125A、対応する処理はS313、S333)と、
上記緩徐判定手段によって上記変化の傾向に急変が生じていないと判定された場合、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段(閾値判定部126、126A、対応する処理はS314、S334)と、
を備える。
【0232】
上記構成によれば、緩徐判定により、タイヤ状態判定指標値の変化の傾向が急変しているか否かが判断できる。また、上記構成では、タイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変がないと判定された場合に、タイヤの状態を判定する。
【0233】
タイヤ状態判定指標値の変化の傾向が急変した場合、当該タイヤ状態判定指標値が「何らかの外乱要因の影響を受けている」可能性があるといえる。例えば、タイヤ状態判定指標値は、路面の粗さに影響を受けることがあるため、路面の粗さが変化することにより、得られるタイヤ状態判定指標値の変化の傾向が急変する場合がある。
【0234】
一方、タイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変がなければ(推移が緩徐的と判定されたら)、外乱要因の影響はない、と判断できる。
【0235】
つまり、外乱要因に影響されてないタイヤ状態判定指標値(すなわち、ばらつきが少ないタイヤ状態判定指標値)に基づいて、タイヤの状態を判定できる。よって、タイヤの状態判定の精度の向上を図ることができる。
【0236】
本発明の態様2に係るタイヤ状態判定装置は、上記態様1において、上記緩徐判定手段によって上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、上記急変が生じた時点以後の上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去手段(緩徐判定部125、125A)を備え、
上記タイヤ状態判定手段は、上記指標値除去手段によって上記除去された後の上記タイヤ状態判定指標値を用いて、タイヤの状態を判定してもよい。
【0237】
上記構成によれば、上記タイヤ状態判定指標値の上記所定の期間における変化の傾向に急変が生じているときは、上記急変が生じた時点以後の上記タイヤ状態判定指標値を除去することができる。このため、外乱要因の影響を受けたと考えられるタイヤ状態判定指標値を除去することができる。これにより、タイヤ状態判定指標値を算出するのに使用されたセンサー計測値が測定された路面状況のバラツキの影響を抑えることができ、タイヤの状態判定の精度の向上を図ることができる。
【0238】
本発明の態様3に係るタイヤ状態判定装置は、上記態様1または2において、上記所定の期間の最初から1または複数の上記タイヤ状態判定指標値に基づいて決定される初期値より所定値だけ離れた値に、上記閾値を設定する閾値設定手段(閾値判定部126、126A)を備え、
上記閾値設定手段は、上記緩徐判定手段によって上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、上記急変が生じた時点において、上記閾値を再設定してもよい。
【0239】
上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、上記急変が生じた時点より前に設定された閾値をタイヤの状態判定において使用し続けると誤判定につながる場合がある。上記構成によれば、上記変化の傾向に急変が生じていると判定された場合、適正な閾値を再設定できるため、上記のような誤判定を避けることができる。
【0240】
本発明の態様4に係るタイヤ状態判定装置は、所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得手段(車両情報取得部121、121A、対応する処理はS301、S321)と、
上記指標値取得手段が取得した各タイヤ状態判定指標値について、タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置において、路面状況に影響を与える外乱要因があったか否かを判定するための外乱情報を取得する外乱情報取得手段(サーバ情報取得部122、対応する処理はS302、S304)と、
上記外乱情報取得手段が取得した上記外乱情報に基づいて、上記外乱要因があった時刻を示す時刻情報および位置を示す位置情報に対応する上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去手段(異常指標値除去部124、124A、対応する処理はS312)と、
上記指標値除去手段によって上記除去された後の上記タイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、タイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段(閾値判定部126、126A、対応する処理はS314、S334)と、
を備える。
【0241】
上記構成によれば、路面状況に影響を与える外乱要因があったか否かを判定するための外乱情報に基づいて、上記外乱要因があった時刻を示す時刻情報および位置を示す位置情報に対応する上記タイヤ状態判定指標値を除去する。
【0242】
このため、外乱要因が起こった時刻、起こった位置にて計測されたセンサー計測値に基づいて得られたタイヤ状態判定指標値は、除去され、タイヤの状態判定に使用されない。
【0243】
すなわち、外乱要因に影響されてないタイヤ状態判定指標値(バラツキが少ない指標値)に基づいて、タイヤの状態を判定できる。
【0244】
これにより、タイヤ状態判定指標値を算出するのに使用されたセンサー計測値が測定された路面状況のバラツキを抑えることができ、タイヤの状態判定の精度の向上を図ることができる。
【0245】
本発明の態様5に係るタイヤ状態判定装置は、上記態様4において、上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における天候を示す天候情報であってもよい。
【0246】
上記構成によれば、外乱要因として、路面状況に影響を与え得るような天候(例えば、豪雨や降雪などの悪天候)があったかどうかを判定することができる。それゆえ、このような、悪天候の影響を受けたと考えられるタイヤ状態判定指標値を除去することができる。
【0247】
本発明の態様6に係るタイヤ状態判定装置は、上記態様4または5において、上記外乱情報は、上記タイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻の、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置における道路舗装工事の状況を示す道路舗装情報であってもよい。
【0248】
上記構成によれば、外乱要因として、路面状況に影響を与え得るような道路舗装工事があったかどうかを判定することができる。それゆえ、このような、道路舗装工事による影響を受けたと考えられるタイヤ状態判定指標値を除去することができる。
【0249】
本発明の態様7に係るタイヤ状態判定装置は、所定の期間に第1の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第1の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得するとともに、上記所定の期間に上記第1の車両とは別の第2の車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該第2の車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された時刻を示す時刻情報と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得手段(車両情報取得部121、121A、S301、S321)と、
上記指標値取得手段が取得した上記第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変したタイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻と略同一の時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置と略同一の位置において、上記第1の車両にて計測された上記センサー計測値から算出された上記タイヤ状態判定指標値を除去する指標値除去手段(異常指標値除去部124、124)と、
上記指標値除去手段によって上記除去された後の上記第1の車両のタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記第1の車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段(閾値判定部126、126A、S314、S334)と、
を備える。
【0250】
第1の車両とは別の第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出された場合、第2の車両のタイヤ状態判定指標値が不測の外乱要因を受けている可能性がある。
【0251】
上記構成によれば、第1の車両とは別の第2の車両のタイヤ状態判定指標値の変化の傾向に急変が検出されたとき、当該急変したタイヤ状態判定指標値に対応する上記時刻情報が示す時刻と略同一の時刻に、該タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報が示す位置と略同一の位置において、上記第1の車両にて計測された上記センサー計測値から算出された上記タイヤ状態判定指標値を除去することができる。
【0252】
つまり、第2の車両が不測の外乱要因を受けている可能性があると判明した場合に、その第2の車両と略同時刻、略同位置に居合わせた別の車両(第1の車両)も、不測の外乱要因を受けている可能性があると考えることができる。ここで、「略同一」とは、あらかじめ定めた範囲内という意味である。
【0253】
このため、不測の外乱要因を受けている可能性がある第2の車両のタイヤ状態判定指標値と同じような状況から得られた第1の車両のタイヤ状態判定指標値を除去することにより、第1の車両のタイヤ状態判定指標値に係るセンサー計測値の路面状況をそろえることができる。よって、第1の車両のタイヤの状態を判定する精度を向上させることができる。
【0254】
本発明の態様8に係るタイヤ状態判定装置は、所定の期間に車両にて計測されたセンサー計測値から算出された、該車両のタイヤの状態を判定するためのタイヤ状態判定指標値と、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を示す位置情報とを取得する指標値取得手段(車両情報取得部121、121A、対応する処理はS301、S321)と、
上記指標値取得手段が取得した各タイヤ状態判定指標値について、タイヤ状態判定指標値に対応する上記位置情報に基づいて、該タイヤ状態判定指標値の算出に用いられた上記センサー計測値が計測された位置を含むルートを特定するルート特定手段(ルート分類部123、123A、対応する処理はS311、S331)と、
上記ルート特定手段によって同一のルートが特定されたタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定するタイヤ状態判定手段(閾値判定部126、126A、対応する処理はS314、S334)と、
を備える。
【0255】
「ルート」とは、車両の走行経路において、路面状況が同じであると考えられる区間のことをいう。
【0256】
上記構成によれば、同一のルートが特定されたタイヤ状態判定指標値を用いて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、車両のタイヤの状態を判定することができる。
【0257】
同一のルートにおけるタイヤ状態判定指標値は、同じような路面状況において得られたものと考えることができる。このため、タイヤ状態判定指標値を算出するのに使用されたセンサー計測値が測定された路面状況のバラツキの影響を抑えることができ、タイヤの状態判定の精度の向上を図ることができる。
【0258】
本発明の態様9に係るタイヤ状態判定装置では、上記態様8において、上記ルート特定手段が特定したルートに応じて、上記指標値取得手段が取得したタイヤ状態判定指標値が複数に分類された場合、上記タイヤ状態判定手段は、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超える変化が、所定数以上のルートについて発生しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定してもよい。
【0259】
上記構成によれば、複数のルートについて、ルートごとに閾値を超えているか否かを判定する。また、所定数以上のルートについて、上記タイヤ状態判定指標値または上記タイヤ状態判定指標値から算出された判定値が所定の閾値を超えて変化しているか否かに応じて、上記車両のタイヤの状態を判定する。
【0260】
このため、1つのルートによる判定よりも高い精度で車両のタイヤの状態を判定することができる。
【0261】
本発明の態様10に係るタイヤ状態判定装置では、上記態様1から9のいずれかにおいて、上記タイヤ状態判定指標値は、タイヤの空気圧の減圧状態を示すものであり、
上記タイヤ状態判定手段は、タイヤの空気圧の減圧状態を判定してもよい。
【0262】
上記構成によれば、タイヤの状態とは、タイヤの空気圧の減圧状態のことであり、タイヤの空気圧の減圧状態の判定を精度よく行うことができる。
【0263】
本発明の態様11に係るタイヤ状態判定装置では、上記態様1から9のいずれかにおいて、上記タイヤ状態判定指標値は、タイヤの摩耗状態を示すものであり、
上記タイヤ状態判定手段は、タイヤの摩耗状態を判定してもよい。
【0264】
上記構成によれば、タイヤの状態とは、タイヤの摩耗状態のことであり、タイヤの摩耗状態の判定を精度よく行うことができる。
【0265】
また、上記態様1から11のタイヤ状態判定装置(車載装置200B、200C)は、上記車両に搭載されるものであってもよい。
【0266】
また、上記態様1から11のいずれかのタイヤ状態判定装置は、サーバ装置(減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12)に備えられる構成とすることも可能であり、該サーバ装置が上記車両と通信可能に接続されていてもよい。
【0267】
なお、本発明の各態様に係る車両Vの車載装置200、200A、200C、減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12の各部が実行する処理の方法についても本発明の範疇に入る。
【0268】
また、本発明の各態様に係る車両Vの車載装置200、200A、200C、減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記車両Vの車載装置200、200A、200C、減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12が備える各部として動作させることにより上記車両Vの車載装置200、200A、200C、減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12をコンピュータにて実現させる車両Vの車載装置200、200A、200C、減圧警報サーバ10、摩耗警報サーバ12の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。