(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232316
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】飽和インク量の測定方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/205 20060101AFI20171106BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B41J2/205
B41J2/01 451
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-41244(P2014-41244)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2015-166155(P2015-166155A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067758
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 綾雄
(72)【発明者】
【氏名】津久井 克幸
(72)【発明者】
【氏名】浅見 義雄
【審査官】
村石 桂一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−231179(JP,A)
【文献】
特開2010−203825(JP,A)
【文献】
特開2001−099711(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02062734(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に単位面積あたりに対するインク吐出量を段階的に変化させたインクパッチチャートを印刷し、該インクパッチチャートのそれぞれをセンサで読み取り、該読み取りデータに基づいて飽和インク量を測定するようにした飽和インク量の測定方法において、前記センサの光通過部の形状と、前記インクパッチチャートの形状とを同一として、前記光通過部とインクパッチチャートの描画領域とが対向したとき、前記光通過部の輪郭とインクパッチチャートの輪郭とが一致するようにしたことを特徴とする飽和インク量の測定方法。
【請求項2】
前記光通過部の形状と前記インクパッチチャートの形状とを円形としたことを特徴とする請求項1に記載の飽和インク量の測定方法。
【請求項3】
前記センサが、光源から出た光をケースの開口部から被測定物の表面に当て、該表面を反射した反射光を前記開口部から光センサに導いて反射光を検出する測色器であり、前記センサの光通過部が前記測色器のケースの開口部であることを特徴とする請求項1に記載の飽和インク量の測定方法。
【請求項4】
前記センサが、光源から出た光をケースの開口部から被測定物の表面に当て、該表面を反射した反射光を前記開口部から光センサに導いて反射光を検出する分光光度計であり、前記センサの光通過部が前記分光光度計のケースの開口部であることを特徴とする請求項1に記載の飽和インク量の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタにおける用紙の印字範囲におけるインクの印字飽和量を決めるための飽和インク量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の4色のインク等を印刷媒体に吐出してカラー画像を印刷する。使用される媒体とインクの組み合わせにより、媒体にインクが吸収される速度や乾燥する速度などが個々に違うため、必要以上にインクを単位面積あたりに多く吐出するとインク量過多により滲みが発生したり打ち込まれたインクが印刷媒体の裏面に染み出てしまう裏抜けが発生したり、その他種々の不都合な現象が生じ、印刷の品質を著しく低下させてしまうことがある。
このようなことを防止するため、インクと印刷媒体に対する単一もしくは組み合わせた場合のインクの飽和量を知る必要があり、従来は、センサで読みとれる十分な広さをもったインクパッチチャートを印刷して、このインクパッチチャートのインクの濃度を測定して、インク飽和量を決定している。その場合、印刷されるインクパッチチャートはセンサの読み取り口より十分広い四角形のものが一般的に用いられている(例えば特許文献1
図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−231179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飽和インク量の測定に際し、四角形のインクパッチチャートを読み取るセンサのパッチからの反射光の
光通過部が、円形の場合、
図9Aに示すように、インクパッチチャート2のセンサによる読み取り範囲Eがパッチ2より小さくなる。パッチ2のインクが少ない場合は問題ないが、インクが飽和状態になってくると、
図9Bに示すように印字された範囲でインクパッチチャート2の端部や内部のある一部などだけがインクが盛り上がり、インクの濃い部分2aが形成される場合がある。その場合、インクパッチチャート2をセンサで読む場合に、インクの濃い部分2aが、センサの読み取り範囲Eから外れたり、又、インクの濃い部分2aが読み取り範囲Eに多く入ったりするなど偏ったインク塗布部分を読みとることになるので、センサの読み取りデータが印刷したインク量の状態を正確に表していない場合がある。
本発明の主たる目的は、センサの口径(
光通過部)の形と、印刷したインクパッチチャートの形を同一とすることで、インクパッチチャートのほぼ全域のみを偏ったインクの部分も含めて読み取ることができるようにし、センサの検出データから飽和インク量を正確に測定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、印刷媒体に単位面積あたりに対するインク吐出量を段階的に変化させたインクパッチチャートを印刷し、該インクパッチチャート
のそれぞれをセンサで読み取り、該読み取りデータに基づいて飽和インク量を測定するようにした飽和インク量の測定方法において、前記センサの
光通過部の形状と、前記インクパッチチャートの形状とを同一として、
前記光通過部とインクパッチチャートの描画領域とが対向したとき、前記光通過部の輪郭とインクパッチチャートの輪郭とが一致するようにしたことを特徴とする。
また本発明は、前記
光通過部の形状と前記インクパッチチャートの形状とを円形としたことを特徴とする。
また本発明は、前記センサが、光源から出た光をケースの開口部から被測定物の表面に当て、該表面を反射した反射光を前記開口部から光センサに導いて反射光を検出する測色器であり、前記センサの
光通過部が前記測色器のケースの開口部であることを特徴とする。
また本発明は、前記センサが、光源から出た光をケースの開口部から被測定物の表面に当て、該表面を反射した反射光を前記開口部から光センサに導いて反射光を検出する分光光度計であり、前記センサの
光通過部が前記分光光度計のケースの開口部であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、印刷媒体に対するインク量が多くなった部分においても正確な値が読み取れるため、正確なインクの飽和量の値を把握することができる。そのためインクジェットプリンタでの印刷媒体に対するインク吐出量の決定やRIP(ラスタイメージプロセッサー)などの画像処理において正確なデータで行うことが可能となるのでより色再現精度の高い印刷をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】インクジェットプリンタの一部の外観図である。
【
図7】インクパッチチャートの測定データを示すグラフである。
【
図8】インクパッチチャートの測定データを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図4は、インクジェットプリンタの全体概略外観図を示している。脚体1を備えたプリンタ4は、プリンタ機体3に用紙などの印刷媒体6を機体の前後方向(副走査方向)に案内するプラテンなどの搬送路板8とインクジェット型印字ヘッド10を横方向(主走査方向)に案内するY軸レール12が取り付けられている。前記プリンタ機体3には、前記Y軸レール12の前方を遮蔽するためのカバー14が開閉自在に取り付けられている。
【0009】
カバー14は通常は閉じられているが、カバー14の内側を図示するため、
図4はカバー14を開いた状態を示している。インクジェットプリンタ4のコントローラは、コンピュータ16と接続し、コンピュータ16から入出力インターフェースを介してイメージデータを受信し、印字ヘッド10からインクを吐出して印刷媒体6に印刷処理をする。コンピュータ16は、印刷出力すべき原カラーイメージデータを生成する。プリンタ4の機体に、床面に対して水平に支持されたY軸レール12には、キャリッジを介して、インク吐出ノズルを備えた印字ヘッド10が移動可能に取り付けられている。
【0010】
プリンタ4の機体側には、駆動ローラとピンチローラが配備され、前記搬送路板8上の印刷媒体6がプリント時、駆動ローラと複数のピンチローラとで挟持され、駆動ローラの回転によって副走査方向に搬送されるように構成されている。プリンタ4の機体の一側部には、メンテナンスボックス18が設けられ、該ボックス18の前面の上面部分には、コントローラに接続する制御パネル18aが配設されており、操作者は、プリンタ装置に対する指示をこの制御パネルから行うことができる。
【0011】
機体の他方側には、印字領域と対面する側が開放された、印字ヘッド10の維持・管理・保守のために使用されるメンテナンスボックス20が設けられ、該ボックス20は、メンテナンスボックス20内を前方に開放する開閉カバー22を備えている。メンテナンスボックス20では測色器24で白基準色の読み取りを行うため、カバー22が閉じられた状態においては、カバー22の隙間等から外からの光が入り込まないような構造に成っており、場所として暗室とし、安定した状態を提供できる機能を有している。
【0012】
メンテナンスボックス20内には、
図5に示すように、台26が設けられ、これにプレートホルダー27が固設されている。プレートホルダー27には、基準合わせ(キャリブレーション)用の白基準色が着色された白基準着色面28aを有するプレート28が脱着可能に保持されている。前記印字ヘッド10は、搬送路板8上の印字領域と、メンテナンスボックス18内の印字ヘッド待機非印字領域と、メンテナンスボックス20内の非印字領域に移動できるように前記Y軸レール12にキャリッジを介して支持されている。
【0013】
前記印字ヘッド10には、測色器取り付け部が設けられ、測色器24のコネクタ部と脱着可能に接続するためのコネクタ部が設けられている。印字ヘッド10の前面と測色器24との間には、ピンとそれに対応するピン穴とからなる脱着可能な結合手段が設けられている。本実施形態でセンサとして使用される測色器24は、
図6に示すように手でもって操作できる手操作用の測色器としても使用できるように構成されている。
【0014】
測色器24は、手操作用のグリップ30のピン32を、測色器24側のピン穴に差し込み、測色器24側のピン31をグリップ30側のピン穴に差し込むことで、互いに脱着可能に結合し、この結合で測色器24のコネクタ部とグリップ30のコネクタ部が接続し、グリップ30に設けられたコネクタ部が測色器24のコネクタ部を介して測色器24の内部回路に接続する。グリップ30のコネクタ部に接続するコードには、コンピュータ用のコネクタ部が接続し、このコネクタ部をコンピュータに差し込むことで、測色器24をコンピュータに接続することができる。
【0015】
測色器24の読取部24aには、被測定物からの反射光を受け入れる円形の開口部が設けられている。プリンタ4のコントローラに接続するコンピュータ16の記憶装置には、インクジェットプリンタ4で印刷を行うために必要な画像データの処理を行うことが出来るプログラムや、カラーインクパッチチャートの印字データの作成やカラーインクパッチチャートの印字データの送信を行うためのプログラムや、飽和インク量の測定を行うためのプログラム等がインストールされている。
【0016】
次に、測色器の構成について
図1を参照して説明する。
図1は、測色器24の用途に使用している分光光度計の内部構造の説明である。本実施形態では、分光光度計を測色器として使用している。CPU、メモリ、入出力インターフェース、ドライバ、受信回路などの回路が形成された回路基板34に発光ダイオード(LED)からなる光源36が複数個、円周上に等間隔で配列して取り付けられている。複数個の光源36は、カバー38内部に下向きに被測定物に向けて突出して配置されている。
【0017】
光源36の光を遮蔽するための遮光仕切体42の内部には、被測定物の表面から反射し、カバー38の開口部44からカバー38のチャンバー内に入ってくる光を方向決めして集束するように設計されている光路幾何学形状変換器を構成するフィルタ46を備えたジオメトリーコンバータ48が配置されている。また、遮光仕切体42の内部には、ジオメトリーコンバータ48の上方に光センサ、エタロン、フェースプレートから構成される検出部52が配置され、回路基板34の回路部の受信回路に電気的に接続している。
【0018】
検出部52は、回路基板34に取り付けられ、ジオメトリーコンバータ48は遮光仕切体42に保持されている。カバー38の開口部44は、光源からの測定光を被測定物に均一に照射できるように円形に構成されている。
次に、印刷媒体6に印刷したインクパッチチャート54を、測色器24で読み取る動作について説明する。
プリンタ4は、印刷媒体6に
図2に示すように、インクパッチチャート54を印刷する。
【0019】
インクパッチチャート54は、測色器24の開口部44と同一の形状に印刷される。測色器24を、
図1に示すように、インクパッチチャート54の上方に移動すると、測色器24の開口部44とインクパッチチャート54の描画全領域とが対向し、インクパッチチャート54の平面に対して垂直な軸線上で、開口部44の円形空間の輪郭とインクパッチチャート54の円形描画領域の輪郭とが一致する。該対向状態において光源36からの光はカバー38の開口部44を出て、インクパッチチャート54の表面に当たる。
【0020】
インクパッチチャート54の描画全領域の反射光は、開口部44に入り、開口部44を経て、ジオメトリーコンバータ48を通過し、検出部52に入光して、検出部52により、インクパッチチャート54の表面のスペクトルが検出される。印刷媒体6の飽和インク量を測定する場合には、印刷媒体6に
図2に示すように、測色器24の円形の開口部44と同一形状の円形のインクパッチチャート54を、インク単色もしくは必要に応じてこれらを組み合わせて複数印刷する。
【0021】
各色のインクパッチチャート54は、主走査方向に、各色のインク及び組み合わせたインクの単位面積あたりに対する吐出量を段階的に変化させることにより濃度を変化させ等間隔で配置されている。印刷される数は任意に決めれば良いが、例えば0から200%までの範囲で印刷するのであれば、5%ごととか10%ごととに変化をさせる。
図2のインクパッチチャート54は横方向には吐出量を変化させたもの、縦方向は色が違うものを印刷している。プリンタ4は測色器24をこれらのインクパッチチャート54の上に順次自動的に移動し、測色器24でインクパッチチャート54を読み取る。この読み取りデータに基づき、コンピュータ16によって飽和インク量を測定する。本実施形態では、測色器24の検出した色測定数値データに基づき、インクパッチチャート54間のインク吐出量のレベルの差分を算出することで、インクパッチチャート54間の色の値の傾きを算出し、予め定めた係数より小さいところをインク量が飽和した点として決定する。
【0022】
図2において、インクパッチチャート54の外側の円マークMは、測色器24を手でもって、手動でインクパッチチャート54を読み取るときの測色器24の読取部24aの開口部44とインクパッチチャート54の輪郭を合わせるためのサポート用の位置合わせガイド図である。手操作でインクパッチチャート54を読み取る場合には、位置あわせの誤差を考慮して開口部44の径よりも、インクパッチチャート54の径を少し大きめにしても良い。
【0023】
図7は、従来の四角形のインクパッチチャート2を使用して、ある特定の色を測色器24で、測色したLab値測定データをバツ印で示し、円形のインクパッチチャート54を使用したときの測定データを丸印で示している。図から明らかなように四角形のパッチチャートは、パッチ間の測定値がある部分以降は段階的に変化せず、データ値の密集した状態が現れている。
【0024】
これは、測色器24で読み取った値がある一定の場所以降においてパッチの印刷された部分に対する総インク量を正確に測定できていないことを示している。これに対して円形のパッチの場合は、測定データに、四角形のパッチチャートでは先に密集してくる部分以降においてもパッチ間の段階的変化に対応した適宜な間隔が見られ、測定値の正確度を示している。
図8は、飽和インク量決定の参照データであり、測色器24で測定したスペクトル波長の変化量を正規化した値を記したものをグラフの一部分を拡大して示している。実線で示されたグラフは、円形パッチの測色測定データを示し、破線で示されたグラフは、四角のパッチの測色測定データを示している。
【0025】
横軸は測定値より順次求めたパッチ間の計算結果の番号を示しており、縦軸は計算結果を示している。
図8のデータに基づき、コンピュータは、横ばいのグラフの状態から飽和インク量を推定する。縦軸0の部分は飽和した場所を表す部分であるが、四角形のパッチデータを表す破線より、円形のパッチデータを表す実線の方が先に0に到達していることが分かる。これは
図9などで四角形のパッチの一部を読み取る場合には形状外の部分で省かれてしまったデータが影響していると思われる。しかし全体を読み取り対象にしている円形パッチとの組み合わせにおいては、読み取り部分から外れる場所がないため先に飽和量に達したと推測できるようになっており、このようにより正確な飽和量の推定が可能となる。
【符号の説明】
【0026】
2 インクパッチチャート
2a 部分
4 プリンタ
6 印刷媒体
8 搬送路板
10 印字ヘッド
12 Y軸レール
14 カバー
16 コンピュータ
18 メンテナンスボックス
20 メンテナンスボックス
22 開閉カバー
24 測色器
26 台
28 プレート
30 グリップ
32 ピン
34 回路基板
36 光源
38 カバー
40 被測定物
42 遮光仕切体
44 開口部
46 フィルタ
48 ジオメトリーコンバータ
50 光センサ
52 検出部
54 インクパッチチャート