(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車両用シートは、シートバック本体及びヘッドレスト部を一体に備えたシートバックを有しており、前記シートパッド及び前記シートカバーは、前記シートバックに設けられており、前記シートカバーは、前記シートバック本体と前記ヘッドレスト部との間の縫製部が、シート左右方向に延びる横延部と、該横延部の左右両端部からシート上方側へ延びる左右の縦延部とを有しており、当該左右の縦延部のそれぞれに前記吊り込み部材が縫製されている請求項1又は請求項2に記載のシートカバーの吊り込み構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如きシートカバーの固定構造では、吊り込みワイヤが必要であるため、吊り込みワイヤの部品費や、吊り込みワイヤを吊り込み袋に挿入するための工程が必要になる。このため、シートカバーの吊り込みのためのコストを低減する観点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、シートカバーの吊り込みのためのコストの低減に寄与するシートカバーの吊り込み構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るシートカバーの吊り込み構造は、車両用シートのシートパッドに被せられたシートカバーと、長尺矩形状の外側部及び前記外側部の長手方向両端部又は長手方向一端部から延出された内側部を備えた長尺帯状の
布材が、前記外側部と前記内側部との間で幅方向に延びる一又は一対の幅方向折れ線に沿って折り畳まれると共に、長手方向に延びる一の長手方向折れ線に沿い且つ前記内側部を内側にして折り畳まれて形成され、前記長手方向折れ線とは反対側で一方の長辺縁部が前記シートカバーに
縫製された吊り込み部材と、を備え、前記吊り込み部材は、前記外側部に前記長手方向折れ線を跨いだ複数の係止穴が形成され、前記内側部の展開状態での幅方向両端側に切欠部又は穴が形成されて複数の横断部が形成され、前記複数の横断部が前記複数の係止穴を前記長手方向に横断しており、前記複数の係止穴に挿入された複数のホグリングによって前記複数の横断部が前記シートパッドのインサートワイヤに係止されている。
【0007】
請求項1に記載の発明では、長尺帯状の
布材が折り畳まれて形成された吊り込み部材は、一方の長辺縁部側がシートカバーに
縫製されている。この吊り込み部材には、その長手方向に並んだ複数の係止穴が形成されており、これらの係止穴に挿入された複数のホグリングを用いて吊り込み部材がシートパッドのインサートワイヤに係止されている。上記の吊り込み部材では、
布材として安価なもの(例えば、不織布)を用いる場合でも、それらの
布材が折り畳まれて重ね合わされることにより、剛性が向上する。このため、吊り込み荷重が比較的低い吊り込み箇所であれば、吊り込みワイヤを省略した構成であっても、シートカバーの吊り込みを成立させることができる。これにより、シートカバーの吊り込みのためのコストの低減に寄与することができる。
【0009】
また、この発明では、吊り込み部材において、外側部と内側部とが、吊り込み部材の長手方向に延びる長手方向折れ線に沿い且つ内側部を内側にして折り畳まれている。これにより、吊り込み部材が外側部と内側部との二重の袋体の如き構造になると共に、長手方向折れ線に沿った折れ目(稜線と谷線)が外側部及び内側部に形成されるため、単に複数枚の
布材を重ね合わせただけの構成と比較して、吊り込み部材の剛性を向上させることができる。しかも、外側部を貫通した複数の係止穴を、内側部に設けられた複数の横断部が横断しており、当該複数の横断部が複数のホグリングによってインサートワイヤに係止されている。このように、ホグリングによる係止部である横断部が内側部のみに設けられているため、ホグリングを横断部に引っ掛ける作業を容易にすることができ、ホグリング作業の作業性を良好にすることができる。
【0011】
また、この発明では、吊り込み部材の外側部と内側部とを幅方向折れ線に沿って折り畳んだ後に、更に長手方向折れ線に沿って折り畳む。そして、長手方向折れ線とは反対側で吊り込み部材をシートカバーに
縫製する。これにより、1枚の
布材によって吊り込み部材を製作することができるので、吊り込み部材の製作を容易なものにすることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明に係るシートカバーの吊り込み構造は、車両用シートのシートパッドに被せられたシートカバーと、長尺矩形状の外側部及び前記外側部の長手方向両端部又は長手方向一端部から延出された内側部を備えた長尺帯状の
布材が、前記外側部と前記内側部との間で幅方向に延びる一又は一対の幅方向折れ線に沿って折り畳まれると共に、長手方向に延びる一の長手方向折れ線に沿い且つ前記内側部を内側にして折り畳まれて形成され、前記長手方向折れ線とは反対側で一方の長辺縁部が前記シートカバーに
縫製された吊り込み部材と、を備え、前記吊り込み部材は、前記外側部及び前記内側部にそれぞれ形成された複数の係止穴が重ね合わされることにより、前記長手方向折れ線において折り畳まれた状態の複数の細幅部が前記外側部及び前記内側部にそれぞれ形成されており、前記複数の係止穴に挿入された複数のホグリングによって前記複数の細幅部が前記シートパッドのインサートワイヤに係止されている。
【0013】
請求項2に記載の発明では、長尺帯状の
布材によって形成された吊り込み部材は、一方の長辺縁部側がシートカバーに
縫製されている。この吊り込み部材には、その長手方向に並んだ複数の係止穴が形成されており、これら複数の係止穴に挿入された複数のホグリングを用いて吊り込み部材がシートパッドのインサートワイヤに係止されている。上記の吊り込み部材では、
布材として安価なもの(例えば、
不織布)を用いる場合でも、吊り込み荷重が比較的低い吊り込み箇所であれば、吊り込みワイヤを省略した構成であっても、シートカバーの吊り込みを成立させることができる。それにより、シートカバーの吊り込みのためのコストの低減に寄与することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明に係るシートカバーの吊り込み構造は、請求項1又は請求項2に記載のシートカバーの吊り込み構造において、前記車両用シートは、シートバック本体及びヘッドレスト部を一体に備えたシートバックを有しており、前記シートパッド及び前記シートカバーは、前記シートバックに設けられており、前記シートカバーは、前記シートバック本体と前記ヘッドレスト部との間の縫製部が、シート左右方向に延びる横延部と、該横延部の左右両端部からシート上方側へ延びる左右の縦延部とを有しており、当該左右の縦延部のそれぞれに前記吊り込み部材が
縫製されている。
【0015】
請求項3に記載の発明では、シートバック本体及びヘッドレスト部を一体に備えたシートバックのシートカバーにおいて、シートバック本体とヘッドレスト部との間の縫製部が、シート左右方向に延びる横延部と、該横延部の左右両端部からシート上方側へ延びる左右の縦延部とを有している。これら左右の縦延部には、それぞれ前述した吊り込み部材が
縫製されており、前述した吊り込み構造が適用されている。上記左右の縦延部は、車両用シートの他の部位と比較して、シートカバーの吊り込み荷重が低い部位であり、吊り込み部材に要求される剛性も低いため、前述した吊り込み構造を適用するのに好適である。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係るシートカバーの吊り込み構造では、シートカバーの吊り込みのためのコストの低減に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、
図1〜
図4を用いて、本発明の実施形態に係るシートカバーの吊り込み構造10(以下、単に「吊り込み構造10」という)について説明する。
【0019】
(構成)
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係る吊り込み構造10は、ヘッドレスト一体シートバック12に適用されている。このヘッドレスト一体シートバック12は、車両用シート14(ここではフロントシート)の構成要素であり、図示しないシートクッションの後端部に周知のリクライナ機構を介して連結されている。
【0020】
このヘッドレスト一体シートバック12は、シートクッションに着座した乗員の背凭れとなるシートバック本体12Aと、該シートバック本体12Aの上端部に一体に設けられて乗員の頭部を支持するヘッドレスト部12Bとを備えている。このヘッドレスト一体シートバック12が、請求項5に記載の「シートバック本体及びヘッドレスト部を一体に備えたシートバック」に相当する。なお、
図1及び
図2に示される矢印FRおよび矢印RHは、車両用シートの前方および右方を示しており、
図1に示される矢印UPは、車両用シートの上方を示している。
【0021】
このヘッドレスト一体シートバック12は、クッション材であるシートパッド20を備えている。このシートパッド20は、ウレタンフォーム等の発泡体によって形成されており、ヘッドレスト一体シートバック12の骨格である図示しないシートバックフレームに支持されている。このシートパッド20には、後述するシートカバー16の縫製部に沿った溝21(
図2参照)が形成されると共に、インサートワイヤ22(
図2に一部のみ図示)が埋設されている。このシートパッド20は、シートバック本体12Aのクッション材を構成するシートバックパッド部20Aと、ヘッドレスト部12Bのクッション材を構成するヘッドレストパッド部20Bとを一体に備えている。このシートパッド20には、ヘッドレスト一体シートバック12の表皮であるシートカバー(トリムカバー)16が被せられている。
【0022】
シートカバー16は、シートバックパッド部20Aを覆うシートバックカバー部16Aと、ヘッドレストパッド部20Bを覆うヘッドレストカバー部16Bとを一体的に備えている。シートバックカバー部16Aは、フロント表皮上部24と、フロント表皮下部26と、左右一対のフロントサイド表皮28と、左右一対のサイド表皮30(
図1では右側のサイド表皮30は図示省略)と、図示しないリヤ表皮とが縫製(縫着)されて形成されている。フロント表皮上部24及びフロント表皮下部26は、シートバック本体12Aの前面を構成しており、左右一対のフロントサイド表皮28は、シートバック本体12Aの前面の左右両側部を構成しており、左右一対のサイド表皮30は、シートバック本体12Aの側面を構成しており、リヤ表皮は、シートバック本体12A及びヘッドレスト部12Bの背面を構成している。
【0023】
また、ヘッドレストカバー部16Bは、フロント表皮32と、サイド表皮34と、上記のリヤ表皮とが縫製されて形成されている。フロント表皮32は、ヘッドレスト部12Bの前面を構成しており、下端部及び左右両端部の下部側がフロント表皮上部24の上端部と縫製されている。サイド表皮34は、ヘッドレスト部12Bの上面及び左右の側面を構成しており、前端部がフロント表皮32と縫製され、左右の下端部が左右のサイド表皮30の上端部と縫製され、後端部がリヤ表皮と縫製されている。
【0024】
フロント表皮上部24とフロント表皮下部26との縫製部S2は、シート左右方向に延びている。この縫製部S2には、シートカバー16の裏面側(シートパッド20側)において、吊り込み袋36が縫い付けられている。この吊り込み袋36には、図示しない吊り込みワイヤが内装されており、シートパッド20のインサートワイヤ22と上記吊り込みワイヤとが図示しないホグリングによって固定されている。これにより、シートカバー16が縫製部S2においてシートパッド20側へ吊り込まれている。
【0025】
また、フロント表皮32とフロント表皮上部24との縫製部S1は、シート左右方向に延びる横延部S11と、横延部S11の両端部から略シート上下方向に延びる左右一対の縦延部S12とによって構成されている。横延部S11には、シートカバー16の裏面側において、吊り込み袋38が縫い付けられており、左右の縦延部S12には、シートカバー16の裏面側において、吊り込み部材40が縫い付けられている。吊り込み袋38には、図示しない吊り込みワイヤが内装されており、シートパッド20のインサートワイヤ22と上記吊り込みワイヤとが図示しないホグリングによって固定されている。これにより、シートカバー16が縫製部S1の横延部S11、すなわちフロント表皮32の下端部においてシートパッド20側へ吊り込まれている。
【0026】
一方、左右の吊り込み部材40は、シートカバー16と共に本実施形態に係る吊り込み構造10を構成している。各吊り込み部材40は、
図2及び
図3に示されるように、面状に形成された面状材である布材(ここでは不織布)が折り畳まれて(折り返されて)重ね合わされることにより長尺状に形成されており、一方の長辺縁部側が縦延部S12において縫製部S1の縫糸41によりシートカバー16に縫い付けられて固定されている。各吊り込み部材40には、2つの係止穴42が長手方向に並んで形成されている。これらの係止穴42は、ホグリング46(係止部材:
図2参照)に対応している。以下、上記の吊り込み部材40について詳細に説明する。
【0027】
上記の吊り込み部材40を製作するに際しては、先ず不織布を
図4(A)に示される形状に切り出して、長尺帯状の基布48を製作する。この基布48は、長尺矩形状の外側部40Aと、外側部40Aの長手方向両端部から延出された一対の内側部40Bとを備えている。外側部40Aには、長手方向両端側にそれぞれ円形の係止穴42が形成されている。これら2つの係止穴42は、外側部40Aの長手方向に並んでいる。
【0028】
また、一対の内側部40Bの幅方向両端側には、それぞれ切欠部50が形成されている。これらの切欠部50は、各内側部40Bの長手方向中央部で切込深さが階段状に深くなっており、凸字状に形成されている。これらの切欠部50が形成されることにより、各内側部40Bの長手方向中央部には、細幅な横断部(細幅部)52が形成されている。この基布48では、外側部40Aと一対の内側部40Bとの間に、それぞれ基布48の幅方向に延びる第1折れ線(幅方向折れ線)L1が設定されている。また、この基布48には、幅方向中央部に沿って長手方向に延びる第2折れ線(長手方向折れ線)L2が設定されている。この第2折れ線L2は、一対の係止穴42の中央及び一対の横断部52の幅方向中央を通るように設定されている。
【0029】
上記の基布48は、
図4(B)に示されるように、一対の第1折れ線L1に沿って折り畳まれる。それにより、一対の内側部40Bがそれぞれ外側部40Aに重ね合わされると共に、一対の横断部52がそれぞれ一対の係止穴42に重ね合わされる。その結果、一対の横断部52が、一対の係止穴42を吊り込み部材40の長手方向に横断した状態になる。次いで、
図4(C)に示されるように、互いに重ね合わされた一対の内側部40Bと外側部40Aとが、第2折れ線L2に沿い且つ内側部40Bを内側にして折り畳まれる。これにより、吊り込み部材40の折り畳みが完了する。折り畳みが完了した吊り込み部材40は、外側部40Aと内側部40Bとの二重の袋体の如き構造(従来の吊り込み袋が二重にされたような構成)になる。また、折り畳みが完了した吊り込み部材40では、第2折れ線L2を跨いで外側部40Aに形成された一対の係止穴42が、第2折れ線L2側で開口した状態になると共に、一対の係止穴42の各開口部を、一対の横断部52が、吊り込み部材40の長手方向に横断した状態になる。
【0030】
折り畳みが完了した吊り込み部材40は、一対の係止穴42とは反対側の縁部である一方の長辺縁部が、
図4(C)に二点鎖線で示される縫製ラインL3に沿ってシートカバー16に縫い付けられる。具体的には、フロント表皮32とフロント表皮上部24とを縫製する際に、
図3に示される如く、吊り込み部材40がフロント表皮32及びフロント表皮上部24に重ね合わされて、縫製部S1の縫製が行われる。これにより、吊り込み部材40が、シートカバー16に固定される。なお、フロント表皮32とフロント表皮上部24との縫製部S1とは別に、吊り込み部材40をフロント表皮32及びフロント表皮上部24に縫製するための専用の縫製部を設定してもよい。
【0031】
シートカバー16に固定された吊り込み部材40は、
図2に示されるように、一対の係止穴42が形成された他方の長辺縁部側が一方の長辺縁部側へ折り返されると共に、各係止穴42にホグリング46が挿入され、各横断部52がホグリング46によってインサートワイヤ22に係止される。これにより、シートカバー16が、左右の縦延部S12すなわちフロント表皮32の左右両端部において、シートパッド20側へ吊り込まれている。
【0032】
つまり、本実施形態では、吊り込み部材40は、外側部40Aと一対の内側部40Bとの間に位置する第1折れ線L1に沿って折り畳まれると共に、吊り込み部材40の長手方向に延びる第2折れ線L2に沿い且つ一対の内側部40Bを内側にして折り畳まれている。この吊り込み部材40は、第2折れ線L2とは反対側でシートカバー16に固定されており、第2折れ線L2を跨いで外側部40Aに形成された一対の係止穴42を、内側部40Bに設けられた2つの横断部52が上記長手方向に横断している。そして、当該2つの横断部52が2つのホグリング46によってインサートワイヤ22に係止されている。なお、係止穴42、横断部52及びホグリング46の数は、複数(2つ以上)であればよく、その数は適宜変更可能である。また、吊り込み部材40の材料は、不織布に限らず、織られた布材、合成皮革、可撓性を有する樹脂シート等を用いることができる。
【0033】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0034】
上記構成の吊り込み構造10では、不織布が重ね合わされて長尺状に形成された吊り込み部材40は、一方の長辺縁部側がシートカバー16に固定されている。この吊り込み部材40には、その長手方向に並んだ2つ係止穴42が形成されており、これらの係止穴42に挿入された2つホグリング46を用いて吊り込み部材40がシートパッド20のインサートワイヤ22に係止されている。
【0035】
上記の吊り込み部材40では、材料として安価な不織布が用いられていても、当該不織布が重ね合わされることにより、剛性が向上している。このため、吊り込み荷重が比較的低い吊り込み箇所であれば、当該吊り込み箇所を所謂点引きにならないように均一に吊り込むことが可能であり、吊り込み部材40が吊り込み荷重によって不用意に破断しないようにすることができる。それにより、吊り込みワイヤを省略した構成であっても、シートカバー16の吊り込みを成立させることができるので、シートカバー16の吊り込みのためのコストの低減に寄与することができる。
【0036】
つまり、本実施形態では、シートカバー16のフロント表皮32とフロント表皮上部24との縫製部S1における左右の縦延部S12に吊り込み部材40が固定されている。この縫製部S1では、横延部S11に固定された吊り込み袋38が吊り込みワイヤを介してインサートワイヤ22に固定されているため、当該吊り込み袋38が主として吊り込み荷重を受けることにより、左右の吊り込み部材40に加わる吊り込み荷重が低減される。したがって、吊り込みワイヤを省略した吊り込み構造10によって、左右の縦延部S12の吊り込みを成立させることができる。それにより、シートカバー16における縫製部S1の周辺の浮き皺を安価な構成で防止又は抑制することができ、車両用シート14の見栄えを低コストで良好にすることができる。
【0037】
しかも、本実施形態では、ホグリング46を挿入するための係止穴42が予め吊り込み部材40に形成されており、ホグリング箇所が決められているため、吊り込み位置を安定させることができる。それにより、吊り込み量が安定すると共に、ホグリング作業の作業性が改善されるので、シートカバー16を不用意に深く吊りこんでしまうことの防止に寄与することができる。さらに、不織布からなる吊り込み部材40がホグリング46によってインサートワイヤ22に係止されるため、異音の発生を防止又は抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、吊り込み部材40において、互いに重ね合わされた外側部40Aと一対の内側部40Bとが、吊り込み部材40の長手方向に延びる第2折れ線L2に沿い且つ一対の内側部40Bを内側にして折り畳まれている。これにより、吊り込み部材40が外側部40Aと内側部40Bとの二重の袋体の如き構造になると共に、第2折れ線L2に沿った折れ目(稜線)が外側部40A及び内側部40Bに形成されるため、単に複数枚の不織布を重ね合わせただけの構成と比較して、吊り込み部材40の剛性を向上させることができる。
【0039】
しかも、外側部40Aに形成された2つの係止穴42を、内側部40Bに設けられた2つの横断部52が横断しており、当該2つの横断部52が2つのホグリング46によってインサートワイヤ22に係止されている。このように、ホグリング46による係止部である横断部52が内側部40Bのみに設けられているため、ホグリング46を横断部52に引っ掛ける作業を容易にすることができ、ホグリング作業の作業性を良好にすることができる。また、横断部52が設けられた内側部40Bが外側部40Aによって外側から支持されるので、吊り込み荷重に対する剛性を確保する観点でも好適である。
【0040】
さらに、本実施形態では、吊り込み部材40は、外側部40Aと一対の内側部40Bとの間に位置する第1折れ線L1に沿って折り畳まれると共に、第2折れ線L2に沿って折り畳まれている。これにより、1枚の不織布によって吊り込み部材40を形成することができるので、吊り込み部材40の製造を容易なものにすることができる。
【0041】
(吊り込み部材の変形例)
次に、吊り込み部材の各種変形例について説明する。なお、前記実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、前記実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0042】
前記実施形態では、吊り込み部材40の内側部40Bにおける幅方向両端側に凸字状の切欠部50が形成されることにより、横断部52が形成された構成にしたが、
本発明はこれに限るものではなく、横断部52の形成の仕方は適宜変更可能である。例えば、
図5(A)及び
図5(B)に示される第1変形例のように、内側部40Bにおける幅方向両端側に矩形状の切欠部54を形成することにより、横断部52を形成してもよい。また例えば、
図6(A)及び
図6(B)に示される第2変形例のように、内側部40Bにおける幅方向両端側に台形状の切欠部56を形成することにより、横断部52を形成してもよい。また例えば、
図7(A)及び
図7(B)に示される第3変形例のように、内側部40Bにおける幅方向両端側に長穴58を形成することにより、横断部52を形成してもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、吊り込み部材40の基布48において、外側部40Aの長手方向両端側にそれぞれ内側部40Bが設けられた構成にしたが、
本発明はこれに限るものではない。つまり、
図8に示される第4変形例のように、外側部40Aの長手方向一端側のみに内側部40Bが設けられた構成にしてもよ
い。
【0044】
また、前記実施形態では、吊り込み部材40の基布48において、内側部40Bのみに横断部52(細幅部:ホグリング46との係合部)が設けられた構成にしたが、
本発明はこれに限るものではない。つまり、
図9(A)〜
図9(C)に示される第5変形例のように、外側部40A及び内側部40Bにそれぞれ横断部60、52を設ける構成にしてもよい。この第5変形例では、基布48が第1折れ線L1に沿って折り畳まれた状態(
図9(B)図示状態)において、外側部40Aの横断部60と内側部40Bの横断部52とが重なるように構成されている。これにより、
図9(C)に示される基布48の折り畳み完了状態では、互いに重ね合わされた横断部60、52が第2折れ線L2において折り畳まれた状態になる。なお、この第5変形例では、各横断部60、52の両側にホグリング46を通すための矩形の係止穴62を形成しているが、係止穴の形状などは適宜変更可能である。また、この第5変形例では、折り畳み前の基布48に係止穴62を形成しているが、基布48の折り畳みが完了した後で係止穴62を形成する構成にしてもよい。
【0046】
(実施形態の補足説明)
前記実施形態では、シートカバー16のフロント表皮32とフロント表皮上部24との縫製部S1における左右の縦延部S12に吊り込み部材40が固定された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、フロント表皮上部24とフロントサイド表皮28との縫製部S3に吊り込み部材40が固定される構成(縫製部S3に吊り込み構造10が適用される構成)にしてもよい。また例えば、シートクッションのシートカバーに吊り込み構造10が適用される構成にしてもよい。
【0047】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態や上記各変形例に限定されないことは勿論である。