特許第6232333号(P6232333)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232333
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ベランダの排水管用飛散防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20171106BHJP
   E04D 13/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   E04D13/04 J
   E04D13/08 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-85365(P2014-85365)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-206162(P2015-206162A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝口 恭
(72)【発明者】
【氏名】小林 登
【審査官】 津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭51−058424(JP,U)
【文献】 特開昭54−093223(JP,A)
【文献】 実開昭54−161030(JP,U)
【文献】 実開平03−090737(JP,U)
【文献】 実開昭54−177627(JP,U)
【文献】 特開2005−113448(JP,A)
【文献】 実開昭53−034024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベランダの排水管に被嵌させる排水用の飛散防止装置であって、
排水管に被嵌されるとともに前記排水管に対して移動自在な筒体と、
前記排水管の任意の位置に着脱自在に固定される留め具と、
前記筒体の上端部に一端側の端部が固着され他端側の端部が前記留め具に固着され前記筒体と前記留め具とを一体にする所要長さの連結部材と、
前記排水管の任意の位置に着脱自在に固定されるものであって、前記筒体および前記留め具の前記排水管に対する移動を阻止するストッパーと、から構成されること、
を特徴とするベランダの排水管用飛散防止装置。
【請求項2】
筒体の長さは、ベランダの床面と排水管の下端との間の離隔寸法に対応した長さであること、
を特徴とする請求項1に記載のベランダの排水管用飛散防止装置。
【請求項3】
留め具は、二つ割りの分割体であって、そのうちの一つに連結部材の他端側の端部が固着されていること、
を特徴とする請求項1または2に記載のベランダの排水管用飛散防止装置。
【請求項4】
分割体の留め具は、ボルトとナットとで締結され、前記ナットは手で弛緩できるように蝶ナットであること、
を特徴とする請求項3に記載のベランダの排水管用飛散防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、北海道などの寒冷地におけるベランダの排水管用飛散防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、北海道などの寒冷地におけるベランダの排水管は、ドレン金物の取り合う部分を、凍結防止のために下端から約300mm程度上がったところで切断している。これは、冬季において排水管からの排水が凍り、ベランダのドレン金物と排水管とが氷で繋がってしまい、排水機能が損なわれるおそれがあるので、それを防止するためである。
【0003】
一方で、夏季には、ベランダの床などを上階で水洗いすると、排水管と排水枡の間のところに強風が吹き込むことで水が飛散して、下階に干した洗濯物等を汚してしまい、下階住人から苦情が出ることがある。
【0004】
上記ベランダの排水管による水の飛散防止に対しては、単にルーフドレン用の飛散防止対策として、特許文献1に記載したカバーが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−262794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の上記ベランダの飛散防止用のカバーは、排水管の下部の位置がドレン金物に近接していて、その排水管の下部にストレーナが装備されている場合であり、北海道等の寒冷地におけるベランダのように、氷が繋がらないように排水管が切断されている場合の寒冷地に適用できるものではない。
【0007】
そこで、寒冷地における、夏季の水の飛散防止対策として、図6に示すように、例えば、ペットボトル11を使用する対策がある。このペットボトル11の底をカットして、その底から一部切断した排水管10の下部に差込み、ガムテープ(登録商標)12で排水管10とペットボトル11とを接続している。
【0008】
しかし、この従来方法では、夏季は良いが冬季において、前記ペットボトル11を排水管10から取り外すのを忘れると、凍結した氷が排水管10から排水枡9へと繋がることがある。また、前記ペットボトル11を排水管10にガムテープ(登録商標)で取り付けた様子は、ベランダからの見栄えも悪いものである。
本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、ベランダの排水管に被嵌させる排水用の飛散防止装置であって、排水管に被嵌されるとともに前記排水管に対して移動自在な筒体と、前記排水管の任意の位置に着脱自在に固定される留め具と、前記筒体の上端部に一端側の端部が固着され他端側の端部が前記留め具に固着され前記筒体と前記留め具とを一体にする所要長さの連結部材と、前記排水管の任意の位置に着脱自在に固定されるものであって、前記筒体および前記留め具の前記排水管に対する移動を阻止するストッパーと、から構成されることである。
【0010】
前記筒体の長さは、ベランダの床面と排水管の下端との間の離隔寸法に対応した長さであることである。
【0011】
前記留め具は、二つ割りの分割体であって、そのうちの一つに連結部材の他端側の端部が固着されていることである。
【0012】
前記分割体の留め具は、ボルトとナットとで締結され、前記ナットは手で弛緩できるように蝶ナットであることである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベランダの排水管用飛散防止装置によれば、夏季においては排水管からの飛散を防止し、且つ、冬季においては、筒体を上位置に上げておくので、排水管からの氷がドレン金物と繋がることが無い。
留め具における位置固定用のボルト・ナットにおいて、蝶ナットで留め具を手で弛緩できるので、筒体の上下移動が容易になり、手間が掛からないと言う優れた効果を奏するものである
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置1の、夏季の使用状態を示す正面図(A)、同使用状態を示す側面図(B)である。
図2】同本発明のベランダの排水管用飛散防止装置1の平面図(A)、一部拡大した側面図(B)である。
図3】同排水管用飛散防止装置1を、その下方から見た斜視図である。
図4】同排水管用飛散防止装置1の、夏季のベランダにおける使用状態の斜視図である。
図5】同排水管用飛散防止装置1の、冬季のベランダにおける使用状態の斜視図である。
図6】従来例に係る排水管の飛散防止装置として、ペットボトル11を使用した場合の構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置1は、図1に示すように、排水管10の下部10aにおいて夏季と冬季に分けて設置位置を変えられる、上下移動自在な筒体2を設けることで、水の飛散防止対策とするものである。
【実施例1】
【0016】
本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置1は、図1(A),(B)に示すように、ベランダ8の排水管10に被嵌させる排水用の飛散防止装置であって、前記排水管10の下部10aに被嵌されるとともに、前記排水管10に対して上下方向に移動自在な筒体2がある。
【0017】
前記排水管10の任意の位置に着脱自在に固定される留め具3がある。また、前記筒体2の上端部に一端側の端部が固着され他端側の端部が前記留め具3に固着され、前記筒体2と前記留め具3とを連結して一体にする所要長さの連結部材4,4がある。
【0018】
前記排水管10の任意の位置に着脱自在に固定されるものであって、前記筒体2および前記留め具3の、前記排水管10に対する移動を阻止するストッパー5があり、これらから当該排水管用飛散防止装置1が構成される。
【0019】
前記排水管用飛散防止装置1の各構成部品について、詳細に説明する。前記筒体は、図1に示すように、排水管10の外側に、若干の隙間を有して、被せられるステンレス製であって前記排水管10と同形状の筒体である。ここでステンレス製としたのは、錆び防止のためである。
【0020】
更に、前記筒体2の長さは、ベランダ8の床面と排水管10の下端との間の離隔寸法に対応した長さである。例えば、基の排水管10の下端から上に300mm程度切断しているので、少なくとも、その切断寸法分をまかなうだけの長さにした筒体2であれば良い。
【0021】
前記留め具3は、ステンレス製で二つ割りのリング状の分割体であって、図2(A)に示すように、そのうちの一つの分割体に前記連結部材4,4の他端側の端部が、溶接などの固着手段で固着されている。
【0022】
この留め具3の内径の大きさは、排水管10の外径に対応して、若干大きい内径にしておくものである。留め具3に径方向に突出したフランジ部があって、そのフランジ部にボルト6a・ナット6b用の貫通孔が設けられている。
【0023】
また、対向するフランジ同士の間に若干の隙間があって、前記ボルト6a・ナット6bで締め付けられて、排水管10に留め具3が固定されるようになっている。尚、この実施例に限定されることなく、バネ性のある一体金物など、他の公知の留め具であっても良い。
【0024】
前記二分割体の留め具3は、ボルト6aとナット6bとで締結され、前記ナット6bは手で締め付けられるように蝶ナット6bである。手で蝶ナット6bを弛緩できて、留め具3の着脱や、少し緩めて上下移動させる際に、取り扱いやすくなるものである。
【0025】
前記連結部材4、4は、図1及び図3に示すように、前記筒体2と留め具3とを連結して、一体にするものである。実施例では筒体2および留め具3の周方向に対向配置にした、2本の連結部材4によって連結しているが、更に、3本以上でも良い。
【0026】
この連結部材4は、ステンレス製であって、所望幅で、その長さは、例えば、300mm程度で、排水管10を切断した長さ+α程度である。特にその長さを特定するものではない。
【0027】
前記ストッパー5は、図1および図3に示すように、前記留め具3とほぼ同じ構成であって、前記排水管10に取り付け固定する、ステンレス製で二つ割りのリング状の分割体である。
【0028】
このストッパー5は、図1に示すように、排水管10に取り付けた筒体2と留め具3の間で、該排水管10に取り付け固定した状態で、前記連結部材4の内側に配設されるものである。
【0029】
図3に示すように、前記ストッパー5の分割体を、ボルト7a、ナット7bで固定するために、分割体の両端部に径方向に突出したフランジ部5a,5bがあり、そのフランジ部5a,5bにボルト挿通用の貫通孔が設けられている。なお、前記ット7bを、前記留め具3の場合と同様に、蝶ナットにして、手で容易に弛緩できるようにしても良い。
【0030】
そして、このフランジ部5a,5bがあることで、排水管10を上下移動する前記留め具3の一部が前記フランジ部5a,5bに衝突して、当該留め具3の下方向への移動が阻止され、同様に、筒体2の上方向への移動が阻止される。
【0031】
前記ストッパー5は、例えば、図1(A)に示すように、夏季の場合、排水管用飛散防止装置1の留め具3の直ぐ下位置に近接させて、排水管10に取り付けて固定する。そして、夏季から冬季を通してその取り付け位置のままにして、当該ストッパー5は排水管10に固定されるものである。
【0032】
前記排水管用飛散防止装置1の、筒体2、留め具3、連結部材4およびストッパー5は、ステンレス製であり、防錆対策としている。また、そのようにすることで、外観上の見栄えも良い。これに限らず、排水管用飛散防止装置1全体を、他の金属製としたり、硬質の合成樹脂製としたりすることもできる。
【0033】
以上の様に構成されるベランダの排水管用飛散防止装置1を使用するには、図1(a),(b)に示すように、留め具3の一つの分割体と、該分割体に固着されている連結部材4と、筒体2とを、前記筒体2の上部開口を排水管10の下部10aに下方から差し込んで、前記留め具3の一つの分割体を排水管10外周面に当接させる(留め具3を最初からリング状に形成すると、筒体2が排水枡9に衝突して、取り付けできないことがある)。
【0034】
更に、ストッパー5を排水管10と前記連結部材4との間に差し込んで、ボルト7a,ナット7bでリング状にして仮止めする。そして、図1(A)に示す夏季状態の位置で、前記ボルト7a,ナット7bを締め込んで排水管10にストッパー5を位置固定する。
【0035】
前記留め具3の一つの分割体に他の分割体をボルト6a、蝶ナット6bで締め込んでリング状に形成して、排水管10に位置固定する。このようにして、排水管10に排水管用飛散防止装置1を取り付ける。
【0036】
尚、上記取り付け手順に限定せず、ストッパー5を、図1(A)に示す位置を設定して、そこに予めボルト7a,ナット7bで取り付けて固定しておいて、その後に、留め具3の一つの分割体と、連結部材4及び筒体2を取り付けるようにしても良い。
【0037】
その後、使用に当たっては、図4に示すように、夏季において、留め具3の位置をストッパー5に当たるまで下げて、その位置で蝶ナット6bを手で回してボルト6aに締め込んで、当該留め具3を排水管10に止める。
【0038】
図1(A),図4に示すように、筒体2は下がった位置で配設されて、排水管10の下部10aから排水枡9へと水を中継して案内する。前記下部10aから下に垂設される筒体2によって、前記筒体2の下端の位置と、排水枡9との距離が近いので、風が吹いても、階下にまで水が飛散することが無い。
【0039】
また、冬季には、図5に示すように、排水管用飛散防止装置1の前記筒体2を上方へと上げる。これにより、ベランダ8の排水枡9と排水管10の下部10aとの間に、約300mm程の距離が空いており、配管10からの氷が前記排水枡9へと繋がることも無い。こうして、冬季においても、排水管10からの排水機能が確保される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明に係るベランダの排水管用飛散防止装置1は、寒冷地における集合住宅のベランダに広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 排水管用飛散防止装置、
2 筒体、
3 留め具、
4 連結部材、
5 ストッパー、
5a,5b フランジ部、
6a ボルト、 6b 蝶ナット、
7a ボルト、 7b ナット、
8 ベランダ、
9 排水枡、
10 排水管、 10a 下部、
11 ペットボトル、
12 ガムテープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6