(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2部材および前記第1部材が相対回転する際、前記複数の転動体は、前記第1板部および前記第2板部から摩擦を受けて公転および自転が可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のロータリージョイント。
前記第2部材は、径方向外向きに張り出して前記第1板部に当接する板状のフランジ部と、前記フランジ部から延出して外部に突出する第1軸部と、前記フランジ部から前記第1軸部と同軸に延出して前記第1板部と前記第2板部とを貫通する第2軸部と、を有し、
前記第1部材には、前記第1軸部を回転可能に支持する第1軸受部と、第2軸部を回転可能に支持する第2軸受部が設けられることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のロータリージョイント。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施形態のロータリージョイント10の斜視図である。ロータリージョイント10は、外部入出力装置と外部回転装置との電気接続を実現するジョイントである。なお、実施形態のロータリージョイントは、電気接続を行うジョイントであるため、エレクトリカルロータリージョイントと呼ぶ場合もある。外部入出力装置としては、たとえば、電源装置や信号の授受を行う制御装置などを含む固定体であり、外部回転装置としては、たとえばセンサを備えた駆動装置を含む回転体であり、ターンテーブル、レーダーアンテナ、半導体製造装置、フィルム製造装置などがある。
【0012】
実施形態のロータリージョイント10は、外部入出力装置に接続可能な第1外部接続部20を有する基部16と、この基部16に対して相対回転可能に設けられる、外部回転装置の回転体とともに回転可能な回転軸18と、を備える。基部16は、固定体に電気接続される第1部材として機能し、回転軸18は、回転体に電気接続され、第1部材に対して相対回転可能な第2部材として機能する。
【0013】
基部16と回転軸18とは、基部16の内部にて所定の部材により導電経路が形成されて電気接続される。基部16は、第1基部12および第2基部14により、有底筒状に形成された内部収容空間を有する。回転軸18は、基部16の開口40から突出し、回転体に接続可能な第2外部接続部22を有する。第2外部接続部22には、回転体からトルクを受ける平面が形成される。
【0014】
図2は、ロータリージョイント10の分解立体図である。
図3は、ロータリージョイント10の内部構造を説明するための図である。
図3(a)および(b)は
図1に示すロータリージョイント10の線分A−Aの断面斜視図である。なお
図3(a)では第1軸受部34、第2軸受部36および第1外部接続部20は、そのまま斜視図として示し、
図3(b)では第1軸受部34および第2軸受部36を除いて示す。
【0015】
図3(b)に示すように、第1基部12および第2基部14は、ボルトにより固定されて一体であり、内部収容空間を有する。第1軸受部34、第1板部24、ボール26、スペーサ28、第2板部30、リング体32および第1軸受部34は、回転軸18を挿通した状態で、基部16の内部収容空間に収容される。第1板部24、ボール26、第2板部30およびリング体32は、回転軸18と基部16とを電気接続する導電経路の構成部材として機能する。回転軸18からの電流は、順に第1板部24、複数のボール26、第2板部30、リング体32を通って第2基部14に伝達される。
【0016】
第1基部12は、第1軸受部34を収容する第1軸受孔42を有する。第2基部14は、第1基部12に連通する連通孔44、連通孔44を縮径するように形成された環状段部46、第2軸受部36を収容する第2軸受孔48、および内部収容空間の底面49を有する。有底筒状の第2基部14が、貫通した筒状の第1基部12に連通して、基部16の内部収容空間が形成される。
【0017】
図2に示すように、回転軸18は、径方向外向きに張り出す円板状のフランジ部56と、フランジ部56から軸方向に延出して外部に突出する第1軸部52と、フランジ部56から第1軸部52と同軸且つ逆向きに延出する第2軸部54を有する。第1軸部52は第1軸受部34に挿通され、第2軸部54は、第1板部24、スペーサ28、第2板部30、リング体32および第2軸受部36に挿通される。各部材を回転軸18に挿通させることで、組立時の各部材の位置合わせが容易となる。
【0018】
図3(a)に示すように、第1軸受部34および第2軸受部36は、回転軸18を回転可能に支持するラジアル軸受であり、基部16に外周面が固定される。第1軸受部34は、第1軸部52を支持し、第2軸受部36は第2軸部54を支持する。2箇所で回転軸18を支持することで回転軸18の軸ぶれを抑えることができる。また、導電経路の構成部材を2つの軸受部の間に配置することで回転時の接触状態を安定させることができる。
【0019】
図3(b)に示すように第1板部24および第2板部30は、ボール26およびスペーサ28を挟んで配置される。ボール26は、スペーサ28により周方向に等間隔に離間して配置される。ボール26は導体であり、スペーサ28は絶縁体である。ボール26は、第1板部24と第2板部30を導通させるための転動体である。
【0020】
リング体32は、導電性細径ワイヤを巻回してコイルを形成し、このコイルの両端を接続して形成される。
図3(b)に示すようにリング体32は、第2基部14の環状段部46と、第2板部30に挟まれた位置に設けられる。リング体32は、中心軸方向の上下から第2基部14の環状段部46と第2板部30とに押圧された状態で配設される。
【0021】
リング体32は、第2基部14の環状段部46と第2板部30とに当接して、第2板部30を第1板部24に向かって付勢する付勢部として機能し、第2板部30とボール26と第1板部24をフランジ部56に向かって付勢する。また、リング体32は、第2基部14と第2板部30を導通させるための部材である。この導電経路を構成する各部材について詳細に説明する。
【0022】
図4は、回転軸18の側面図である。回転軸18は、棒状に形成され、第1軸部52および第2軸部54の間にフランジ部56を有する。第1軸部52には第1軸受部34の内周面と嵌合する円柱状の第1支持部58が形成され、第2軸部54には第2軸受部36の内周面と嵌合する円柱状の第2支持部60が形成される。第1支持部58は、回転軸18の軸方向の中央部分に位置する。第1支持部58は、第1軸部52の先端側で外部に露出する第2外部接続部22より大径に設けられ、フランジ部56に連設する。大径の第1支持部58を第1軸受部34で支持することで、回転軸18の回転時の軸ぶれを抑える。
【0023】
フランジ部56は、第2軸部54側に第1板部24と当接する当接面56aを有する。第2軸部54は第1軸部52より小径に形成される。これにより、第2軸部54側に形成される当接面56aの面積を広くできる。
【0024】
図5は、第1板部24および第2板部30を説明するための図である。
図5(a)は第1板部24および第2板部30の正面図であり、
図5(b)は
図5(a)に示す第1板部24および第2板部30の線分C−Cの断面図である。
図5(b)では、第1板部24および第2板部30を
図5(a)の第1板部24および第2板部30より拡大して示す。第1板部24および第2板部30は、同様の形状であり、第1板部24と重複する第2板部30の説明は省略する。
【0025】
第1板部24は、中央に挿通孔62が形成された円板形状をなす。第1板部24は、外径側に形成される複数の第1周溝66と、内径側に形成される複数の第2周溝68と、第1周溝66と第2周溝68の間に形成される第2凹部64を有する。
【0026】
第1周溝66および第2周溝68は、ロータリージョイント10の組立時や経時的な使用で生じた摩耗粉を収めることができる。第2凹部64は、湾曲するよう凹んで周状に形成され、ボール26が離れないようにガイドするとともに、ボール26の動きを安定させて摩耗を抑えることができる。
【0027】
第2凹部64の裏側の面には、周状突部70が形成され、第2凹部64より径方向外側に形成される。第1板部24において、周状突部70はフランジ部56の当接面56aに当接する。周状突部70により第1板部24をフランジ部56に確実に当接させて、回転軸18とともに回転させることができる。
【0028】
リング体32は、周状突部70の径方向内側で第2板部30に当接する。第2板部30において周状突部70はリング体32の位置決めとして機能し、リング体32の径方向のズレを抑えるとともに、リング体32の周方向の接触圧力を安定させることができる。
【0029】
図6は、スペーサ28を説明するための図である。
図6(a)はスペーサ28の正面図であり、
図6(b)は
図6(a)に示すスペーサ28の線分D−Dの断面図である。
【0030】
スペーサ28は、中央に挿通孔78が形成された円板形状をなす。スペーサ28には周方向に等間隔に離れた複数のボール孔80が形成される。
図6(b)に示すようにボール孔80は、内周面の中央がボール26に応じて凹んで形成され、回転するボール26の接触による摩耗を抑える。
【0031】
スペーサ28の板厚はボール26の直径より薄く、ボール孔80に入れたボール26はボール孔80の開口からはみ出る。ボール孔80の中央の内径は、ボール26の直径より大きく、ボール孔80の表裏の開口の直径は、ボール26の直径より少しだけ小さくてよい。つまり、ボール26がボール孔80に遊嵌される。
【0032】
図7は、
図1に示すロータリージョイント10の線分A−Aの断面図である。なお、回転軸18と第1外部接続部20とボール26は側面を示す。回転軸18は、第1軸受部34および第2軸受部36により基部16に回転可能に支持されるが、基部16に直接接触しておらず、回転軸18と基部16の摺動は生じない。
【0033】
第2基部14の環状段部46と、第2板部30は対向して配置され、その間にリング体32が押圧された状態で設けられる。リング体32のコイル外径は、環状段部46と第2板部30の対向間隔より大きく、リング体32は、環状段部46と第2板部30に当接して付勢する。リング体32は、第2板部30を第1板部24およびフランジ部56に向かって付勢する。
【0034】
リング体32は、導電性細径ワイヤを複数回巻回して形成されるため、接触箇所をコイルの巻回数に対応し増大させることができる。接触箇所を多数確保することで接触状態を安定させることができる。
【0035】
第2板部30、ボール26および第1板部24はリング体32に付勢されて、当接面56aに押しつけられる。第1板部24、ボール26、第2板部30およびリング体32は、導体であり順に接触して導電経路を形成する。具体的には、第1外部接続部20から順に第2基部14、第2基部14の環状段部46からリング体32、第2板部30、ボール26、第1板部24、回転軸18の当接面56aから第2外部接続部22という導電経路が形成されている。
【0036】
回転時のロータリージョイント10の動作について説明する。回転軸18の回転に連動して、回転軸18のフランジ部56に係合する第1板部24も回転する。複数のボール26は、第1板部24からの摩擦を受けて公転および自転をする。
【0037】
第1板部24が回転軸18とともに回転しても、ボール26を介することで第2板部30はあまり回転しない状態となり、第2板部30とリング体32の摺動量を低減できる。これにより、付勢手段であるリング体32が第2板部30および環状段部46と摺動により摩耗することを抑えることができる。複数のボール26を用いて導通させることで、回転体と固定体の摺動による摩耗を抑えることができる。また、転動体として使用するボール26は加工が容易であり、製造コストを低減できる。
【0038】
第1板部24とフランジ部56の静摩擦係数は、第2板部30とリング体32の静摩擦係数より大きく、第1板部24とボール26の静摩擦係数より大きい。そのため、回転軸18が回転する際に、第1板部24とフランジ部56は、第2板部30とリング体32より摺動しづらく、実際にはほぼ摺動しないように設けられる。第1板部24とフランジ部56とが摺動しないように、第1板部24とフランジ部56とを係止する手段を設けてもよい。
【0039】
リング体32は、複数のボール26の中心26aを通る仮想的な円と、略同軸に配置される。これにより、リング体32の付勢力を各ボール26に均等に伝達することができ、ボール26による第1板部24および第2板部30の導通を安定させることができる。
【0040】
複数のボール26の中心26aを通る仮想的な円の直径は、リング体32の最外径R1から最内径R2の間に収まる。複数のボール26とリング体32が第2板部30を挟んで対向する位置に配置される。これにより、ボール26とリング体32を通る導電経路を短くすることができ、電力の損失を抑え、ロータリージョイント10の伝達効率を向上することができる。
【0041】
図8は、変形例のロータリージョイント100を説明するための図である。
図8では、多極を有するロータリージョイント100の断面を示す。この変形例のロータリージョイント100は、5つの電極を有する。各導電経路を構成する部分は、回転軸118の軸方向に積層するように設けられ、絶縁されている。
【0042】
基部は、第1基部112、第2基部114、第3基部115および第4基部を含んで一体に設けられる。第2基部114は導電性部材であり、第1基部112は絶縁部材である。回転軸118は、一端側が第1軸受部134に回動可能に軸支され、他端側が第2軸受部136に軸支される。回転軸118は、各基部に対して相対回転可能に設けられる。
【0043】
第1軸受部134はラジアル軸受であり、第2軸受部136はスラスト軸受である。第1軸受部134は、第3基部115に保持され、第2軸受部136は、第4基部117に保持される。第2軸受部136の円板部136aは、回転軸118に固定され、ロータリージョイント100の一端に位置する。
【0044】
第2基部114は、第1外部接続部120に連結される。回転軸118に形成された軸孔118aには、各導電経路に電気接続される第2外部接続部122が配線される。第2外部接続部122は、表面が絶縁された導線部材であり、軸孔118aから外部に引き出される。回転軸118は、径方向外向きに張り出す複数のフランジ部156を有し、フランジ部156は、第1軸受部34や各導電経路の構成部材のストッパや位置決めとして機能する。
【0045】
有底円柱形状の第1基部112の開口を支持盤123で区切って収容空間を画成し、その収容空間に導電経路の構成部材が収容される。導電経路の構成部材は、第1板部124、ボール126、スペーサ128、第2板部130およびリング体132を有し、それらの構成は
図2に示すロータリージョイント10と同様であるため説明を省略する。このように、第1基部112と支持盤123によりユニット化された導電経路の構成部材が軸方向に積層される。ロータリージョイント100は、第1板部124、ボール126、スペーサ128、第2板部130およびリング体132と、それらを囲う第1基部112および支持盤123で構成されるユニットを軸方向に積層して互いに絶縁することで多極にすることができる。
【0046】
第1板部124は、有底円筒形状の支持盤123により支持される。支持盤123は、絶縁体であり、フランジ部156に固定される。第2外部接続部122は、第1板部124に電気接続される。
【0047】
リング体132は、第2基部114と第2板部130に当接して導通し、第2板部130を第1板部124に向かって付勢する。隣り合う導電経路の構成部材と第2基部114との間に位置する第1基部112の底部112aは、軸方向に対向する他の導電経路の構成部材と絶縁をする。
【0048】
図8に示す矢印102は、第1外部接続部120から第2外部接続部122までの導電経路を示す。第1外部接続部120から第2基部114、リング体132、第2板部130、ボール126、第1板部124を通り、第2外部接続部122に伝達される。これらの動作は、
図7で説明した1極のロータリージョイント10と同様である。多極のロータリージョイント100であっても、複数のボール126を用いて導通させることで、回転体と固定体の摺動による摩耗を抑えることができる。
【0049】
また、別の変形例として、導電経路の構成部材を径方向に積層して多極のロータリージョイントを構成することも可能である。軸方向に積層して多極のロータリージョイント100を構成することで細長い形状にすることができるのに対し、径方向に積層して多極のロータリージョイントを構成することで、薄型に形成することができる。
【0050】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0051】
例えば、実施形態では回転軸18が回転体に接続され、基部16が固定体に接続される態様を示したが、この態様に限られない。基部16および回転軸18のうち、いずれが回転側であっても固定側であってもよく、基部16が回転体、回転軸18が固定体に接続されてよい。
【0052】
また、実施形態のスペーサ28は環状の円板部材に複数のボール孔80を形成した態様を示したが、この態様に限られない。複数のボール26を周方向に離間させて、互いに非接触である態様であればよく、例えば、各ボール26の間に絶縁体のボールを配置して複数のボール26を互いに絶縁してもよい。スペーサとして絶縁体のボールを用いても、リング体32から付勢された荷重を周方向に偏りを抑えることができる。
【0053】
また、実施形態では、第1板部24および第2板部30に挟まれる複数の転動体としてボール26を用いる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、第1板部24と第2板部30を相対回転させる複数の転動体として円柱を用いてよい。複数の円柱は、その軸が放射状になるように、周方向に等間隔に離れて配置される。円柱を遊嵌可能なスペーサが用いられる。
【0054】
また、実施形態では第2板部30を第1板部24に向かって付勢する付勢部としてリング体32を用いる態様を示したが、この態様に限られない。例えば、円環状のバネ座金や皿バネにより第2基部14の環状段部46と第2板部30を付勢しつつ、導通してよい。
【0055】
また、実施形態では、回転軸18がフランジ部56から延出する第2軸部54を有する態様を示したが、この態様に限られない。例えば、回転軸18は、第1軸部52およびフランジ部56を有するが、第2軸部54を有しない態様であってよい。この場合、第1板部24、スペーサ28、第2板部30は挿通孔の無い円板形状に形成される。また、回転軸18は、基部16に対して回転可能であれば棒状体に限られず、円板状であってもよい。
【0056】
また、実施形態では、別体の第1板部24を設ける態様を示したが、この態様に限られず、第1板部24はフランジ部56と一体であってもよい。つまり、第1板部24は、回転軸18に連設され、回転軸18に連動して回転する。