【実施例1】
【0010】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すラッチ装置の分解斜視図である。ここでラッチ装置10は、一端が開口されたハウジング11と、前記ハウジング11内に収納されて進退可能に配置された摺動体12と、前記摺動体12を前記ハウジング11の開口11aから突出する方向へ付勢するばね部材13と、前記摺動体12に対して枢支部14を介して回動自在に支持されると共に、被係脱部材Sが当接した際に回動して先端側の爪部15が前記被係脱部材Sを係止可能にする係止位置及び前記被係脱部材Sを解放する係止解除位置に切り換えられる係合体16と、前記摺動体12が前記ハウジング11から突出する方向へ付勢された待ち受け位置から前記ばね部材13の付勢力に抗して後退し、前記係合体16が係止解除位置から係止位置に切り換えられ、かつ、前記摺動体12を後退後の位置にロックし、後退後の位置で再度押圧すると後退してロック解除するピン部材17とを備えている。
【0011】
ハウジング11は、
図1〜
図5に示すように内部が上下壁18,19と、両側壁20とで区画され、一端側に開口11aを有する有底角筒形に形成されている。また、ハウジング11は、開口11aの外周がフランジ状に張り出していて図外の取付枠に抜け止め可能に挿入される。上下壁18、19には、先端側を外へ張り出している取付用の弾性係止爪21が周囲から切り起こされて設けられている。また、上下壁18、19に内側中央には長手方向に沿って、摺動体12の移動を案内する中央溝18a、19aが形成されている。また、底部には、ピン部材17の基端17aを保持するための、保持部22が形成されている。
【0012】
両側壁20の側面開口部には、開口11a側に後述する係合体16のボス32の案内される溝部25と、この溝部25に連通して形成されたボス当接面26を有している。また、側面開口部は、ハウジング11の被係脱部材Sの挿入側の開口部(開口11a)に向けて延出した溝部25aと連通している。溝部25、25aは、円弧状に形成されており、係合体16が摺動体12の水平軸27を中心に回動する際にボス32が移動する。ボス当接面26は、
図6、7等に示すようにロック状態の係合体16が停止する位置のボス32が当接する点Cを含み、点Cを通過する垂線をLとした場合、垂線Lとボス当接面の成す角度をθ、垂線Lと係合体16を保持する保持力Fの成す角度をθ1となるように構成する。また、ボス当接面26は、係合体16が係止位置でボス32と枢支部側端で当接した状態から、被係脱部材Sを係止位置から引き抜く方向の荷重を掛けて枢支部14を中心に回動させたとき、ボス32の枢支部側端の回転半径の軌跡より外側に設けられている。
このように構成することで、係合体16の側面に設けたボス32をボス当接面26の係止位置に保持すると共に、係合体16に所定の外力が加わった際に回動を許容する角度θを設定することができる。
【0013】
摺動体12は、
図1、
図3、
図5等に示すごとくハウジング11の奥端側に配置される本体12aと、本体12aの前方に突設されて本体12aより幅細に形成された延設部12bとからなる。延設部12bの先端には、係合体16が枢支部14で回動可能に軸支される水平軸27が形成されている。本体12aには、両側に断面がハート形のカム部28と斜面29aを有する突当部29及びカム部28の周囲に配設された誘導溝30a、30bと解放溝31が形成されている。そして、誘導溝30a、30bは、カム部28の端部で解放溝31にそれぞれ連通している。また、摺動体12の両端面には、ガイド溝34が形成されており、ハウジング11の内側に形成された図外の内壁レールと遊嵌して、摺動体12の突出、後退移動を円滑にする。
【0014】
係合体16は、
図1等に示すごとく被係脱部材Sの係止される爪部15と、枢支部である軸孔14及び両側から突出形成された円柱状のボス32とからなる。係合体16は、硬質の合成樹脂等から構成される。爪部15は、上側に突出して形成されており、枢支部14の略上に位置している。また、係合体16の両側には、ボス32より短いガイド突起33が形成されており、ハウジング11の内壁と当接して回動及び摺動する係合体16の動きを安定させる。爪部15は、ハウジング11の開口11aから自在に進入及び退避可能な大きさとなっている。
【0015】
弾性体35は、軟質合成樹脂から構成されており、係合体16に冠着されて一体的に回動する。また、弾性体35は、係合体16と一体的に構成してもよい。弾性体35は、被係脱部材Sが当接した際の衝撃を緩和して、打撃音を減少することができる。
【0016】
ピン部材17は、弾性を有する線材から構成され、
図1のごとく一端の開口した長方形状をしており、基端17aでハウジング11の保持部22に保持される。また、鈎状に曲がった先端17bがカム部28の周囲及び誘導溝30a、30b、解放溝31内をトレースする。
また、ばね部材13は圧縮コイルばねであり、奥端が円柱状の支持軸23に軸装され、先端が後述する摺動体12の凹部24に挿入され、摺動体12をハウジング11から突出する方向に付勢する。
【0017】
以上のように構成されたラッチ装置10を組み立てる場合、先ず、ハウジング11の後方からピン部材17を挿入し、基端17aをハウジング11の保持部22に取付ける。次に、弾性体25を係合体16に挿着した後、係合体16の枢支部14を摺動体12の水平軸27に回動可能に取付ける。更に、ばね部材13を介して摺動体12をハウジング11に挿入する。この際、摺動体12に取付けられた係合体16は、ボス32がハウジング11の溝部25に導かれるように挿入する。また、摺動体12の両端面形成されたガイド溝34は、ハウジング11の内側に形成された図外の内壁レールと遊嵌する。このように組み立てられたラッチ装置10は、例えば、扉に取り付けられた被係脱部材Sに対応した位置の取付枠に挿入され、弾性係止爪21等を介し取り付けられる。
【0018】
この状態で被係脱部材Sが挿入されると、摺動体12及び係合体16は一旦、ばね部材13の付勢力に抗してハウジング11の奥まで後退した後、
図2、3に示す位置まで前進する。この位置で、ピン部材17の鈎状に曲がった先端17bは、カム部28の凹部28aに係止され、摺動体12の前進を規制する。
図2に示すように係合体16のボス32は、ボス当接面26に当接して摩擦力により回動が阻止されている。また、被係脱部材Sは、先端の鈎部が係合体16の爪部15の係合してロックされる。この状態がロック状態である。
【0019】
ロック状態において、被係脱部材Sに過大な引き抜き力が作用した場合を模式的に示すと、
図4〜
図7のように被係脱部材Sを介して係合体16の爪部15の点Aに力Faが作用する。Faは、係合体16を枢支部14(図中でB)周りに回転させようとする。一方、係合体16のボス32は、ボス当接面26に作用点Cで当接しており、当接面から力Fbを受ける。
図6、7において、Aは被係脱部材Sの荷重位置、Bは係合体16の回転中心、Cはボス32とボス当接面26の接点である。
図6において、係合体16を保持する保持力F=作用点AからCに平行移動したFaとFbの合力である。また、Fbは係合体16の回転による荷重である。
【0020】
また、
図7において、ボス32が当接する点Cを含み、点Cを通過する垂線をLとし、Fの当接面26に平行方向の分力をFc、ボス当接面26に垂直な分力をFdとすると、
Fc=Fcos(θ+θ1)、 Fd=sin(θ+θ1)
ここで、θ:垂線Lとボス当接面の成す角度
θ1:垂線Lと保持力Fの成す角度
また、ボス32とボス当接面26との摩擦係数をμとすると、Fc<μFdであれば被係脱部材Sは係合体16により保持されている。Fc>μFdであれば、被係脱部材Sを無理抜きすることができる。
したがって、無理抜き力の調整は、垂線Lとボス当接面26の成す角度θを変更することにより容易に調整できる。
このように本発明は、従来は摩擦力の変化や爪部の微妙な角度に依存しており、コントロールの難しかった無理抜き力をボス当接面の角度と云う機構として調整できる要素により簡単に行うことができる。
【0021】
図4は無理抜き状態を示す側面図、
図5は無理抜き状態を示す断面図である。無理抜き力Fc>μFdとなった場合、ボス32がボス当接面26に沿って上昇し、係合体16が枢支部14を中心に回動して、被係脱部材Sが爪部15から解放される。また、係合体16の回転に伴い、摺動体12が一旦、後退しカム部28の凹部28aに係合していたピン部材17の先端17bが斜面29aに当接することにより、誘導溝30aに導かれて解除される。次に、ばね部材13の付勢力により弾性体35、係合体16、摺動体12が前進すると共に、係合体16のボス32は、溝部25に沿って回転して待機位置となる。
【0022】
本発明のラッチ装置は、プッシュ式のラッチ装置として、車両内部の扉である小物入れ、サングラスホルダー、カップホルダー等の扉に使用することができる。