【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は添付の特許請求の範囲を参照すれば理解できる。
保護を求める本発明は一側面において、次の構成からなる自動車が提供される。
原動機手段と、
一つ以上の車輪からなる少なくとも第1群および第2群と、
前記原動機手段を前記一つ以上の車輪からなる第1群および第2群に接続するためのドライブラインであって、前記一つ以上の車輪からなる第1群は、前記ドライブラインが第1運転モードにある時に前記原動機手段により駆動されることができ、また前記一つ以上の車輪からなる第2群は、前記ドライブラインが第2運転モードにある時に前記原動機手段により追加的に駆動されることができるように構成されたドライブラインとを備えており、
前記ドライブラインは、前記一つ以上の車輪からなる第2群を接続するための、補助ドライブシャフトと該補助ドライブシャフト及び前記一つ以上の車輪からなる第2群の間の駆動手段とを有する補助部を含み、前記駆動手段は入力部と、リングギヤと、出力部と、前記リングギヤと前記出力部の間に直列に結合される第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段を備え、
前記第1のリリース可能なトルク伝達手段は、入力部と出力部とを有し、前記第1のリリース可能なトルク伝達手段はこれ等両部の間に滑りを許容することにより前記入力部から前記出力部へ伝達されるトルク量を調整するように作動可能であり、
前記第2のリリース可能なトルク伝達手段も、入力部と出力部とを有し、第2のリリース可能なトルク伝達手段は、前記入力部が前記出力部から実質的に隔離される第1条件と、前記入力部が前記出力部に直結されて前記入力部に加えられるトルクが前記出力部へ実質的に直接伝達される第2条件の間で作動可能である、自動車。
【0009】
本発明のある実施形態において、第2のリリース可能なトルク伝達手段が、一つ以上の車輪からなる第2群から補助ドライブシャフトを隔離させるために使用できることである。これは、ドライブラインが第1の運転モードにある時に、第1のリリース可能なトルク伝達手段の入出力部の回転の差速に関連した寄生損失が減じられ或いは実質的に解消されるという特徴を有する。
【0010】
以下に検討する幾つかの構成では、補助ドライブシャフトは、例えば動力伝達ユニット(動力伝達ユニット(PTU)により、原動機手段から隔離でき、それにより一つ以上の車輪からなる第1群のみが駆動している場合に補助ドライブシャフトを休止させることができる。こうして、第1のトルク伝達手段の入力部と出力部もまた、もしも第2のリリース可能なトルク伝達手段の上流側に位置していれば、休止にもたらされ、それにより寄生損失をさらに減じることができる。
【0011】
動力伝達ユニット(PTU)を有し且つ補助ドライブシャフトが傘歯車とリングギヤにより駆動手段に結合される実施形態において、一つ以上の車輪からなる第2群が補助ドライブシャフトから切断され、補助ドライブシャフトが動力伝達ユニット(PTU)により原動機手段から切断されている場合に、傘歯車とリングギヤはいずれも静止状態にもたらされうる。これにより第1運転モード中の損失をさらに減じることができる。
【0012】
この少なくとも一部の理由は、ある構成において比較的大量の予負荷がリングギヤと傘歯車の間に存在しうるためである。
【0013】
第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段がリングギヤと出力部との間に結合されるとは、これ等部材が結合される順序を言うのであって、部材間の物理的な位置関係を限定するものと理解すべきでない。
【0014】
特にこの特徴は、第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段がよりコンパクトな配置で収容しうること、すなわち、第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段のコロケーション(共通位置への配置)によって、以下に述べるように或る構成においては共通のアクチュエータの使用を可能にすることができるという利点を有する。
【0015】
有利には第1のリリース可能なトルク伝達手段はクラッチ手段を含むことができる。
【0016】
より有利にはクラッチ手段は摩擦クラッチ手段を含むことができる。
【0017】
クラッチ手段は湿式クラッチ装置を含むことができる。
【0018】
有利には第2のリリース可能なトルク伝達手段はクラッチ手段を含むことができる。
【0019】
さらに有利には、第2のリリース可能なトルク伝達手段のクラッチ手段は乾式クラッチ装置を含むことができる。
【0020】
これによる利点は、湿式クラッチ装置に関連した作動液の損失が減じるかまたはほぼ解消されうることである。このような損失は湿式クラッチ装置の開閉状態によらず、当該装置が開放状態又は閉鎖状態かで装置内の液体の激しい動き(churning)により生じる可能性がある。
【0021】
第2のリリース可能なトルク伝達手段のクラッチ手段はドッグクラッチ装置を含むことができる。
【0022】
ドッグクラッチ装置を使用すると、入出力部の間の滑りを許容するクラッチと比較して構造が単純になる利点が得られる。多板式湿式クラッチ(MPC)等のある種の他のクラッチに対してはコスト削減も享受できる。
【0023】
別法として、第2のリリース可能なトルク伝達手段のクラッチ手段はローラクラッチ装置を含むことができる。
【0024】
有利には、一つ以上の車輪からなる第2群は複数の車輪から構成できる。
【0025】
駆動手段の出力部は自動車の一対のサイドシャフトの各々にトルクを供給するように構成され、これ等のサイドシャフトはトルクを第2群の車輪のそれぞれ異なった車輪に供給するように構成されている。
【0026】
随意に、デファレンシャルを設けて両サイドシャフトをそれぞれ異なった速度で回転させる。
【0027】
デファレンシャルは駆動手段が備えることができる。
【0028】
第1のリリース可能なトルク伝達手段は第1及び第2のクラッチ手段を含むことができ、各クラッチ手段はそれぞれ上記の一対のサイドシャフトのそれぞれのシャフトにトルクを提供するように作動しうる。
【0029】
この特徴による利点は、一対のサイドシャフトの各々の回転速度の差が第1及び第2のクラッチ手段の滑りにより受け入れられることである。こうして、ある実施形態では異なった回転速度を受け入れるためのデファレンシャル又は他の手段を設ける必要がない。
【0030】
第1のリリース可能なトルク伝達手段の第1及び第2のクラッチ手段はそれぞれ第1及び第2の摩擦クラッチ手段を含むことができる。
【0031】
第2のリリース可能なトルク伝達手段は、前記の一対のサイドシャフトのそれぞれ異なるシャフトにトルクを供給するようにそれぞれ作動可能な第1及び第2のクラッチ手段を含むことができる。
【0032】
有利には、第2のリリース可能なトルク伝達手段の第1及び第2のクラッチ手段は、それぞれ第1及び第2のドッグクラッチ手段から構成しうる。
【0033】
従って、いくつかの実施形態では第1のリリース可能なトルク伝達手段の第1のクラッチ手段が第2のリリース可能なトルク伝達手段の第1のクラッチ手段と直列に設けられ、それにより駆動トルクを一対のサイドシャフトの一方に提供し、また第1のリリース可能なトルク伝達手段の第2のクラッチ手段が第2のリリース可能なトルク伝達手段の第2のクラッチ手段に直列に設けられ、それにより駆動トルクを前記一対のサイドシャフトの他方に提供する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態の利点は、第2のリリース可能なトルク伝達手段が開放されているとき、たとえば第1のリリース可能なトルク伝達手段の一以上の部品に加わる作動液誘起抵抗による、寄生損失が実質的に生じないように、第1のリリース可能なトルク伝達手段が一つ以上の車輪からなる第2群から実質的に隔離されるように構成できることである。こうして第2のリリース可能なトルク伝達手段は、開放状態では第1のリリース可能なトルク伝達手段を第2群の車輪から切り離すことで、自動車の駆動中に作動液の損失が実質的に生じないように作動可能な、少なくとも1つのドッグクラッチ手段を有することができる。
【0035】
有利には駆動手段は補助ドライブシャフトにより駆動されるように構成されたリングギヤを更に有することができ、この駆動手段は、ドライブラインが第1運転モードにあるときにリングギヤを休止状態にもたらすように作動しうる。
【0036】
この特徴は、ドライブラインが第1運転モードにあるときに、リングギヤの回転に関連した損失が実質的に解消できるという利点を有する。
【0037】
さらに有利には、自動車は原動機手段を補助ドライブシャフトにリリース可能に接続するように作動可能な動力伝達装置を有することができ、ドライブラインは第1のモードにあるときであって、原動機手段が第1群の車輪を駆動しているときに補助ドライブシャフトを休止させるように作動可能である。
【0038】
原動機手段は第1及び第2の原動機を含みうる。
【0039】
随意に、第1原動機は一つ以上の車輪からなる第1群を駆動するように、第2原動機は一つ以上の車輪からなる第2群を駆動するように構成できる。動力伝達ユニット(PTU)は一つ以上の車輪からなる第2群を第2原動機に接続するように作動しうる。
【0040】
第1原動機はさらに一つ以上の車輪からなる第2群を駆動するように作動しうる。
【0041】
第2原動機はさらに一つ以上の車輪からなる第1群を駆動するように作動しうる。
【0042】
有利には第1のリリース可能なトルク伝達手段は入力部が出力部から隔離されている第1の条件と、入力部に与えられるトルクが出力部に実質的に直接伝達されるように入力部と出力部が直接結合される第2の条件との間で作動しうる。
【0043】
第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段は分離した別々のアクチュエータにより第1及び第2の条件の間で作動しうる。
【0044】
別法として又はそれに加えて、第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段は共通のアクチュエータにより作動されるように構成されてもよい。
【0045】
保護が求められる本発明の別の一側面においては、駆動力を自動車の複数個の車輪に伝達するための下記の装置が提供される。
原動機と、
一つ以上の車輪からなる少なくとも第1群および第2群と、
前記原動機を前記一つ以上の車輪からなる第1群および第2群に接続するためのドライブラインであって、前記一つ以上の車輪からなる第1群は、前記ドライブラインが第1運転モードにある時に前記原動機手段により駆動され、また前記一つ以上の車輪からなる第2群は、前記ドライブラインが第2運転モードにある時に前記原動機手段により追加的に駆動されるように構成されているドライブラインとを備えた装置であり、
前記ドライブラインは補助ドライブシャフトを含み、当該装置は前記ドライブラインが前記第1モードと第2モードとの間で切り替わる時に前記一つ以上の車輪からなる第2群を前記補助ドライブシャフトへ結合するように作動し、
前記装置は入力部と、出力部と、それらの間に直列に結合された第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段を備え、
前記第1のリリース可能なトルク伝達手段は、入力部と出力部とを有し、前記第1のリリース可能なトルク伝達手段はこれ等両部の間に滑りを許容することにより前記入力部から前記出力部へ伝達されるトルク量を変調するように作動可能であり、
前記第2のリリース可能なトルク伝達手段も入力部と出力部とを有し、前記第2のリリース可能なトルク伝達手段は、前記入力部が前記出力部から実質的に隔離される第1条件と、前記入力部が前記出力部に直結されて前記入力部に加えられるトルクが前記出力部へ実質的に直接伝達される第2条件の間で作動可能であるように構成されている、装置。
【0046】
保護が求められる本発明の更に別の側面においては、自動車の一つ以上の車輪からなる第2群を、補助ドライブシャフトを有するドライブラインにより原動機手段に結合する方法であって、前記補助ドライブシャフトを、リングギヤと第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段とにより前記一つ以上の車輪からなる第2群に結合する工程と(ここで、第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段は直列に結合される。)、
前記第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段を前記リングギヤにより駆動する工程と、
前記第1のリリース可能なトルク伝達手段の入力部と出力部の間に滑りを許容することにより一つ以上の車輪からなる第2群へ伝達されるトルクの量を調整する一方、前記第2のリリース可能なトルク伝達手段はその入力部へ与えられるトルクがその出力部に実質的に直接伝達されるように構成し、そして前記第2のリリース可能なトルク伝達手段により前記一つ以上の車輪からなる第2群から前記第1のリリース可能なトルク伝達手段を、前記第2のリリース可能なトルク伝達手段の入力部と出力部が互いに実質的に隔離されるように、切断する工程、を含む方法が提供される。
【0047】
有利には、第2のリリース可能なトルク伝達手段にはインターフェアレンス型のクラッチ、随意にドッグクラッチを含むことができる。
【0048】
保護が求められる本発明の更に別の側面によると、下記の自動車が提供される。
原動機手段と、
一つ以上の車輪からなる少なくとも第1群および第2群と、
前記原動機手段を前記一つ以上の車輪からなる第1群および第2群に接続するためのドライブラインであって、前記一つ以上の車輪からなる第1群は、前記ドライブラインが第1運転モードにある時に前記原動機手段により駆動され、また前記一つ以上の車輪からなる第2群は、前記ドライブラインが第2運転モードにある時に前記原動機手段により追加的に駆動されるように構成されているドライブラインとを備え、
前記ドライブラインは補助ドライブシャフトと該補助ドライブシャフト及び前記1つ以上の車輪からなる第2群の間の駆動手段とを有する補助ドライブラインを含み、前記駆動手段は、前記ドライブラインが第1モードと第2モードとの間で切り替わる時に前記一つ以上の車輪からなる第2群を前記補助ドライブシャフトへ接続するように作動可能であり、
前記駆動手段は入力部と、出力部と、それらの間に直列に結合された第1及び第2のリリース可能なトルク伝達手段を備え、
前記第1のリリース可能なトルク伝達手段は、入力部と出力部とを有し、前記第1のリリース可能なトルク伝達手段はこれ等両部の間に滑りを許容することにより前記入力部から前記出力部へ伝達されるトルク量を調整するように作動可能であり、
前記第2のリリース可能なトルク伝達手段も入力部と出力部とを有し、前記第2のリリース可能なトルク伝達手段は、前記入力部が前記出力部から隔離される第1条件と、前記入力部が前記出力部に直結されて前記入力部に加えられるトルクが前記出力部へ実質的に直接伝達される第2条件の間で作動可能なように構成されている自動車。
【0049】
本出願の範囲内において、これまでの段落、請求項及び/又はこれからの記述及び図面において記載される種々の側面、実施形態、実施例及び代替物、特にそれらの個々の特徴は、独立に又は任意の組み合わせが想定されている。例えば一つの実施形態に関連して説明した特徴は矛盾しない限りすべての他の実施形態に適用できる。以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。