【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による建材の製造方法は、網目が相対的に細かい第1の篩シートと網目が相対的に粗い第2の篩シートが併設してなる篩シートユニットを備え、各篩シートを上下に振動自在な振動篩装置と、該振動篩装置の下方で受具を走行させる走行装置と、を準備する第1のステップ、
篩シートユニット上に粉体原料を供給し、各篩シートの振動によって各篩シートの網目より細かい粉体原料を走行する受具の上に順次落下させることによ
り建材用マットを形成する第2のステッ
プを備え、第1のステップは、第1の篩シートが第2の篩シートよりも受具の走行方向に対して高い側となるように篩シートユニットを傾斜させて配設し、第2のステップは、第1の篩シート上で篩分けられた粉体原料を第2の篩シートで更に篩分けして、各篩シートの網目を通過した粉体原料が、走行している受具に順次落下することによって、寸法の異なる粉体原料の層が積層された建材用マットを形成するものである。
【0010】
本発明の製造方法は、原料にエアを吹き付けて篩分けする方法に代わり、寸法の異なる網目を備えた篩シートを上下に振動させて原料の篩分けをおこなう振動篩装置(ジャンピングスクリーン(登録商標))を使用して粉体原料の篩分けをおこないながら、異なる寸法の粉体原料からなる2層以上の
層が積層されてなる建材用マットを形成し、この建材用マットから建材を製造するものである。
【0011】
ジャンピングスクリーンはたとえばウレタン製のスクリーンマットを引っ張ったりたわめたりする、波動運動によって篩分けを実行する装置であり、本来、鉄鋼スラグ等の篩分けに適用されるものであって、建材用マットの形成に適用されることはなかった。
【0012】
本発明では、建材用マットの形成過程でジャンピングスクリーン(振動篩装置)を適用することで、粉体原料にエアを吹き付けて篩分けする際の従来の課題である、設備の大型化、設備の頻繁な清掃、篩の目詰まりの全ての課題を解消可能としている。
【0013】
ここで、振動篩装置において、篩シートは弾性材から形成されて伸縮可能となっている。たとえば篩シートが受具の進行方向と平行な方向に、引張りとたわみを交互に繰り返すように伸縮されることによって上下に振動し、この篩シートの上下振動によって粉体原料の跳ね上げと落下が繰り返される。したがって、粉体原料同士が相互に密着して粗大な塊状になっている場合であっても、上下に振動する篩シートにて粉体原料の上方への跳ね上げと下方落下による衝撃によって塊状の粉体原料がほぐされ、本来の寸法の粉体原料にこなごなに分離され、篩シートを通過できる状態が形成される。
【0014】
振動篩装置の下方には、ベルトコンベア等の走行装置が配設されており、この走行装置にて受具が走行し、走行する受具の上に振動篩装置にて篩分けされた粉体原料が落下堆積してマットを形成する。
【0015】
ここで、「受具」とは、表面に凹凸等を備えた型板(型枠)や、表面が平坦なプレートなどを意味する。また、受具として型板を用いる場合には、凹凸を備えた表面を上にして走行装置により走行させるのがよい。
【0016】
また、篩シートユニットを構成する第1の篩シート、第2の篩シートは、双方がそれぞれ一種類の寸法の網目を有する形態のほかにも、二種類以上の寸法の異なる網目を有する形態であってもよく、たとえば、第1の篩シートと第2の篩シートがともに六種類程度の寸法の異なる網目を有する形態などを挙げることができる。
【0017】
振動篩装置を稼働させることで、網目が相対的に細かい第1の篩シートを通過した相対的に細かい粉体原料からなる
層を受具の上に形成し、第1の篩シートを通過せずに残って第2の篩シートに移動し、第2の篩シートの振動によってここを通過した相対的に粗い粉体原料からなる
層を、既に形成されている
層上に形成する。
【0018】
2層以上の
層が積層されてなる建材用マットが形成されたら、たとえば受具と建材用マットを一緒にプレスし、養生することで、所望の表面仕上げ(表面凹凸の形成、表面模様の形成等)がなされた建材が製造される。なお、建材用マットの上に更に型板(凹凸を備えた表面を下とし、その表面を建材用マットと接触させる)を配設してプレスする形態であってもよい。
【0019】
また、本発明による建材の製造方法の好ましい実施の形態において、第1のステッ
プは、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第2のステッ
プは、第1の篩シートに粉体原料を供給し、第1の篩シートの網目を通過
した粉体原料を走行する受具の上に落下させて
表面層を形成
し、第1の篩シートの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過
した粉体原料を既に形成されている
表面層の上に落下させて
表面層上に芯層を形成するものである。
【0020】
本実施の形態の製造方法では、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第1の篩シートに粉体原料を供給することにより、その下方に走行する受具の上に、
表面層、
芯層の順にこれらを効率的に形成するものである。
【0021】
傾斜の高い側にある第1の篩シートに供給された粉体原料は、その一部が第1の篩シートを通過して受具に落下堆積する。そして、相対的に微細な粉体原料からなる
層は、緻密で耐水性が高い
表面層となる。
【0022】
第1の篩シートを通過できずに残った粉体原料は、傾斜した篩シートユニット上を傾斜方向に移動し(傾斜に沿って自然に転がり落ち)、傾斜の低い側にある第2の篩シートに到達したらここを通過して下方に落下する。ここで、篩シートユニットの傾斜角度は、このように粉体原料が傾斜に沿って自然に転がり落ちる角度に設定されるのがよく、これは使用される粉体原料によっても異なるものである。
【0023】
篩シートユニットの下方では走行装置にて受具が移動しているが、第1の篩シートの下方で粉体原料が落下堆積して
表面層が形成され、これが第2の篩シートの下方まで移動し、ここで
表面層の上に第2の篩シートを通過して落下した粉体原料が堆積して
芯層が形成される。
【0024】
表面層と異なり、
芯層は密度が小さいことから軽量であり、クッション性を有する
層となる。したがって、緻密で耐水性の高い
表面層の内側に軽量でクッション性のある
芯層が形成されることになる。
【0025】
本実施の形態の製造方法では、篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設しただけの簡易な装置構成によって、
表面層と
芯層が積層してなる建材用マットを効率的に形成することができる。なお、本実施の形態において、建材の表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板を用いることにより、型板の凹凸が
表面層に転写された、緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。一般には、いずれの場合であっても受具側が建材の表面となる。
【0026】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第2のステップにおいて
表面層と
芯層からなる2層のマット
を形成した後、受具を走行方向とは逆の方向に逆走させ、既に形成されている
芯層の上に、さらに第2の篩シートの網目を通過
した粉体原料を落下させ
た後、第1の篩シートの網目を通過
した粉体原料を
落下させるものである。
【0027】
本実施の形態の製造方法では、受具の上に
表面層と
芯層の2層構造の建材用マットが形成されたら、走行装置を逆走させることで、
芯層の上に別途の
芯層を形成し、別途の
芯層の上に別途の
表面層を形成することを可能としたものである。
【0028】
すなわち、形成された建材用マットは、表面と裏面に
表面層を有し、その内側に2層の
芯層を有した構成の建材用マットとなる。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。具体的には、受具として型板を用いる場合は、前述した実施の形態と同じであり、一般に受具側が建材の表面となる。受具としてプレートを用いる場合は、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスし、一般に型板側が建材の表面となる。
【0029】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態において、第1のステッ
プは、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第2のステッ
プは、第1の篩シート
に供給された粉体原料を
第1の篩シートから傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過
した粉体原料を走行する受具の上に落下させて
芯層を形成し、第1の篩シートの網目を通過
した粉体原料を既に形成されている
芯層上に落下させて
芯層上に表面層を形成するものである。
【0030】
本実施の形態は、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第1の篩シートに粉体原料を供給することにより、その下方に走行する受具の上に、
芯層、
表面層の順にこれらを効率的に形成するものである。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具としてプレートを用い、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスし、型板側を建材の表面とする。それにより、緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。
【0031】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第1のステップにおいて、
第1の篩シートと第2の篩シートを有する第1の篩シートユニット
、および
網目が相対的に細かい第3の篩シートと網目が相対的に粗い第4の篩シートを有する第2の篩シートユニットを用意し、受具の走行方向の上流側に第1の篩シートユニットを配設し、下流側に第2の篩シートユニットを配設し、第1の篩シートユニットは、第1の篩シートが
第2の篩シートよりも傾斜の高い側となるように
第1の篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第2の篩シートユニットは、第
3の篩シートが
第4の篩シートよりも傾斜の高い側となるように
第2の篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第2のステップにおいて、第1の篩シートユニットの第1の篩シートに粉体原料を供給し、第1の篩シートの網目を通過
した粉体原料を走行する受具の上に落下させて第1の
表面層を形成するとともに、第1の篩シートの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過
した粉体原料を既に形成されている第1の
表面層上に落下させて
第1の表面層上に第1の
芯層を形成し、第2の篩シートユニットの第
3の篩シートに
供給した粉体原料を
、第3の篩シートから傾斜に沿って第
4の篩シートに移動させ、第
4の篩シートの網目を通過
した粉体原料を既に形成されている第1の
芯層上に落下させて
第1の芯層上に第2の
芯層を形成し、第
3の篩シートの網目を通過
した粉体原料を既に形成されている第2の
芯層上に落下させて
第2の芯層上に第2の
表面層を形成するものである。
【0032】
本実施の形態の製造方法は、2つの篩シートユニットを逆ハの字状に配設し、受具をこれら2つの篩シートユニットの下方に連続的に移動させることにより、2つの
表面層(第1、第2の
表面層)と、2つの
芯層(第1、第2の
芯層)からなる建材用マットを形成するものである。
【0033】
本実施の形態の製造方法によれば、表裏2層の
表面層の内側に2層の
芯層が積層してなる建材用マットをより一層効率的に形成することが可能になる。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。
【0034】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第1のステップにおいて、第1の篩シートユニット
の第1の篩シートと第2の篩シートユニット
の第3の篩シートの間に
粉体原料を供給する中央原料供給部を配設し、第2のステップにおいて、
中央原料供給部から供給された粉体原料を受具に落下させた後、第2の篩シートユニットの下に受具を移動させるものである。
【0035】
本実施の形態の製造方法は、逆ハの字状に配設された2つの篩シートユニットの間に篩を具備しない中央原料供給部を配設し、受具をこれら2つの篩シートユニットと中央原料供給部の下方に連続的に移動させることにより、表裏2層の
表面層の内側に3層の
芯層が積層し、中央の
芯層は篩にかけられない粗い粉体原料から形成された建材用マットを形成するものである。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。