特許第6232400号(P6232400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232400
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】建材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 1/16 20060101AFI20171106BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20171106BHJP
   B28B 3/02 20060101ALI20171106BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B28B1/16
   B07B1/28 Z
   B28B3/02 J
   B28B1/30
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-125814(P2015-125814)
(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公開番号】特開2017-7229(P2017-7229A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年4月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大越 昌良
(72)【発明者】
【氏名】高山 智志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良明
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−015628(JP,A)
【文献】 特開平08−244020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/16
B07B 1/28
B28B 1/30
B28B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網目が相対的に細かい第1の篩シートと網目が相対的に粗い第2の篩シートが併設してなる篩シートユニットを備え、前記各篩シートを上下に振動自在な振動篩装置と、前記振動篩装置の下方で受具を走行させる走行装置と、を準備する第1のステップ、
前記篩シートユニット上に粉体原料を供給し、前記各篩シートの振動によって前記各篩シートの網目より細かい前記粉体原料を走行する前記受具の上に順次落下させることにより建材用マットを形成する第2のステップをえ、
前記第1のステップは、前記第1の篩シートが前記第2の篩シートよりも前記受具の走行方向に対して高い側となるように前記篩シートユニットを傾斜させて配設し、
前記第2のステップは、前記第1の篩シート上で篩分けられた前記粉体原料を前記第2の篩シートで更に篩分けして、前記各篩シートの網目を通過した前記粉体原料が、走行している前記受具に順次落下することによって、寸法の異なる前記粉体原料の層が積層された前記建材用マットを形成する、
建材の製造方法。
【請求項2】
前記第1のステップは前記第1の篩シートが傾斜の高い側となるように前記篩シートユニットを前記受具の前記走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、
前記第2のステップは前記第1の篩シートに前記粉体原料を供給し、前記第1の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を走行する前記受具の上に落下させて表面層を形成し、前記第1の篩シートの上に残った前記粉体原料を前記傾斜に沿って前記第2の篩シートに移動させ、前記第2の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を既に形成されている前記表面層の上に落下させて前記表面層上に芯層を形成する、請求項1に記載の建材の製造方法。
【請求項3】
前記第2のステップにおいて前記表面層前記芯層からなる2層のマットを形成した後、前記受具を前記走行方向とは逆の方向に逆走させ、
既に形成されている前記芯層の上に、さらに前記第2の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を落下させた後前記第1の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を落下させる、請求項2に記載の建材の製造方法。
【請求項4】
前記第1のステップは前記第1の篩シートが傾斜の高い側となるように前記篩シートユニットを前記受具の前記走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、
前記第2のステップは前記第1の篩シートに供給された前記粉体原料を前記第1の篩シートから前記傾斜に沿って前記第2の篩シートに移動させ、前記第2の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を走行する前記受具の上に落下させて芯層を形成し、前記第1の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を既に形成されている前記芯層上に落下させて前記芯層上に前記表面層を形成する、請求項1に記載の建材の製造方法。
【請求項5】
前記第1のステップにおいて、
前記第1の篩シートと前記第2の篩シートを有する第1の篩シートユニットおよび網目が相対的に細かい第3の篩シートと網目が相対的に粗い第4の篩シートを有する第2の篩シートユニットを用意し、前記受具の前記走行方向の上流側に前記第1の篩シートユニットを配設し、下流側に前記第2の篩シートユニットを配設し、
前記第1の篩シートユニットは、前記第1の篩シートが前記第2の篩シートよりも傾斜の高い側となるように前記第1の篩シートユニットを前記受具の前記走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、
前記第2の篩シートユニットは、前記の篩シートが前記第4の篩シートよりも傾斜の高い側となるように前記第2の篩シートユニットを前記受具の前記走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、
前記第2のステップにおいて、
前記第1の篩シートユニットの前記第1の篩シートに前記粉体原料を供給し、前記第1の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を走行する前記受具の上に落下させて第1の表面層を形成するとともに、前記第1の篩シートの上に残った前記粉体原料を前記傾斜に沿って前記第2の篩シートに移動させ、前記第2の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を既に形成されている前記第1の表面層上に落下させて前記第1の表面層上に第1の芯層を形成し、
前記第2の篩シートユニットの前記の篩シートに供給した前記粉体原料を、前記第3の篩シートから前記傾斜に沿って前記の篩シートに移動させ、前記の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を既に形成されている前記第1の芯層上に落下させて前記第1の芯層上に第2の芯層を形成し、前記の篩シートの網目を通過した前記粉体原料を既に形成されている前記第2の芯層上に落下させて前記第2の芯層上に第2の表面層を形成する、請求項1に記載の建材の製造方法。
【請求項6】
前記第1のステップにおいて、
前記第1の篩シートユニットの前記第1の篩シート前記第2の篩シートユニットの前記第3の篩シートの間に前記粉体原料を供給する中央原料供給部を配設し、
前記第2のステップにおいて、
前記中央原料供給部から供給された前記粉体原料を前記受具に落下させた後、前記第2の篩シートユニットの下に前記受具を移動させる、請求項5に記載の建材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁や内壁を構成する建材として、窯業系サイディングボードやパーティクルボード等の繊維板、セラミックボード等の焼成板、樹脂板などが挙げられる。
【0003】
上記各種ボードを製造する方法として、特許文献1で開示されるように、粉体原料を散布する際に篩とエアを用いて、細かい粉体原料から堆積させながら建材用マットを形成する、いわゆる乾式製法が一般に適用されている。
【0004】
より具体的には、底部に搬送ベルトコンベア、上部に供給ベルトコンベアを備えたフォーミングチャンバーにおいて、チャンバー内に傾斜した篩枠が配設され、チャンバーの側方に送風機が配設された製造装置を使用する。セメントと木質補強材が混合された原料混合物を供給ベルトコンベアを介してチャンバー内に落下させ、送風機にて落下する原料混合物に対してエアを吹付け、篩枠で篩分けされた微細な原料を搬送ベルトコンベアで搬送されている下型枠上に落下堆積させ、篩枠上で残存した粗大な原料を微細な原料表面に落下させるものである。
【0005】
この装置を適用した乾式方法によれば、表面が均一かつ緻密で機械的強度の大きな無機質成形板(窯業系サイディングボード)を製造することが可能になる。
【0006】
しかしながら、送風機にて原料を飛ばして篩分けすることから、設備の規模が往々にして大型化し、また、原料を設備内で吹き飛ばす方法故に頻繁な設備の清掃作業が避けられない。さらに、エアで吹き飛ばされた原料を篩に通すことから、篩が目詰まりし易く、篩のメンテナンスに時間と手間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−124926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記する問題に鑑みてなされたものであり、大きな設備や頻繁な設備の清掃を不要とし、篩の目詰まりの生じ難い装置を使用しながら、機械的強度に優れた建材を良好な生産性の下で製造することのできる、建材の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成すべく、本発明による建材の製造方法は、網目が相対的に細かい第1の篩シートと網目が相対的に粗い第2の篩シートが併設してなる篩シートユニットを備え、各篩シートを上下に振動自在な振動篩装置と、該振動篩装置の下方で受具を走行させる走行装置と、を準備する第1のステップ、篩シートユニット上に粉体原料を供給し、各篩シートの振動によって各篩シートの網目より細かい粉体原料を走行する受具の上に順次落下させることにより建材用マットを形成する第2のステップを備え、第1のステップは、第1の篩シートが第2の篩シートよりも受具の走行方向に対して高い側となるように篩シートユニットを傾斜させて配設し、第2のステップは、第1の篩シート上で篩分けられた粉体原料を第2の篩シートで更に篩分けして、各篩シートの網目を通過した粉体原料が、走行している受具に順次落下することによって、寸法の異なる粉体原料の層が積層された建材用マットを形成するものである。
【0010】
本発明の製造方法は、原料にエアを吹き付けて篩分けする方法に代わり、寸法の異なる網目を備えた篩シートを上下に振動させて原料の篩分けをおこなう振動篩装置(ジャンピングスクリーン(登録商標))を使用して粉体原料の篩分けをおこないながら、異なる寸法の粉体原料からなる2層以上のが積層されてなる建材用マットを形成し、この建材用マットから建材を製造するものである。
【0011】
ジャンピングスクリーンはたとえばウレタン製のスクリーンマットを引っ張ったりたわめたりする、波動運動によって篩分けを実行する装置であり、本来、鉄鋼スラグ等の篩分けに適用されるものであって、建材用マットの形成に適用されることはなかった。
【0012】
本発明では、建材用マットの形成過程でジャンピングスクリーン(振動篩装置)を適用することで、粉体原料にエアを吹き付けて篩分けする際の従来の課題である、設備の大型化、設備の頻繁な清掃、篩の目詰まりの全ての課題を解消可能としている。
【0013】
ここで、振動篩装置において、篩シートは弾性材から形成されて伸縮可能となっている。たとえば篩シートが受具の進行方向と平行な方向に、引張りとたわみを交互に繰り返すように伸縮されることによって上下に振動し、この篩シートの上下振動によって粉体原料の跳ね上げと落下が繰り返される。したがって、粉体原料同士が相互に密着して粗大な塊状になっている場合であっても、上下に振動する篩シートにて粉体原料の上方への跳ね上げと下方落下による衝撃によって塊状の粉体原料がほぐされ、本来の寸法の粉体原料にこなごなに分離され、篩シートを通過できる状態が形成される。
【0014】
振動篩装置の下方には、ベルトコンベア等の走行装置が配設されており、この走行装置にて受具が走行し、走行する受具の上に振動篩装置にて篩分けされた粉体原料が落下堆積してマットを形成する。
【0015】
ここで、「受具」とは、表面に凹凸等を備えた型板(型枠)や、表面が平坦なプレートなどを意味する。また、受具として型板を用いる場合には、凹凸を備えた表面を上にして走行装置により走行させるのがよい。
【0016】
また、篩シートユニットを構成する第1の篩シート、第2の篩シートは、双方がそれぞれ一種類の寸法の網目を有する形態のほかにも、二種類以上の寸法の異なる網目を有する形態であってもよく、たとえば、第1の篩シートと第2の篩シートがともに六種類程度の寸法の異なる網目を有する形態などを挙げることができる。
【0017】
振動篩装置を稼働させることで、網目が相対的に細かい第1の篩シートを通過した相対的に細かい粉体原料からなるを受具の上に形成し、第1の篩シートを通過せずに残って第2の篩シートに移動し、第2の篩シートの振動によってここを通過した相対的に粗い粉体原料からなるを、既に形成されている上に形成する。
【0018】
2層以上のが積層されてなる建材用マットが形成されたら、たとえば受具と建材用マットを一緒にプレスし、養生することで、所望の表面仕上げ(表面凹凸の形成、表面模様の形成等)がなされた建材が製造される。なお、建材用マットの上に更に型板(凹凸を備えた表面を下とし、その表面を建材用マットと接触させる)を配設してプレスする形態であってもよい。
【0019】
また、本発明による建材の製造方法の好ましい実施の形態において、第1のステップは、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第2のステップは、第1の篩シートに粉体原料を供給し、第1の篩シートの網目を通過した粉体原料を走行する受具の上に落下させて表面層を形成、第1の篩シートの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過した粉体原料を既に形成されている表面層の上に落下させて表面層上に芯層を形成するものである。
【0020】
本実施の形態の製造方法では、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第1の篩シートに粉体原料を供給することにより、その下方に走行する受具の上に、表面層芯層の順にこれらを効率的に形成するものである。
【0021】
傾斜の高い側にある第1の篩シートに供給された粉体原料は、その一部が第1の篩シートを通過して受具に落下堆積する。そして、相対的に微細な粉体原料からなるは、緻密で耐水性が高い表面層となる。
【0022】
第1の篩シートを通過できずに残った粉体原料は、傾斜した篩シートユニット上を傾斜方向に移動し(傾斜に沿って自然に転がり落ち)、傾斜の低い側にある第2の篩シートに到達したらここを通過して下方に落下する。ここで、篩シートユニットの傾斜角度は、このように粉体原料が傾斜に沿って自然に転がり落ちる角度に設定されるのがよく、これは使用される粉体原料によっても異なるものである。
【0023】
篩シートユニットの下方では走行装置にて受具が移動しているが、第1の篩シートの下方で粉体原料が落下堆積して表面層が形成され、これが第2の篩シートの下方まで移動し、ここで表面層の上に第2の篩シートを通過して落下した粉体原料が堆積して芯層が形成される。
【0024】
表面層と異なり、芯層は密度が小さいことから軽量であり、クッション性を有するとなる。したがって、緻密で耐水性の高い表面層の内側に軽量でクッション性のある芯層が形成されることになる。
【0025】
本実施の形態の製造方法では、篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設しただけの簡易な装置構成によって、表面層芯層が積層してなる建材用マットを効率的に形成することができる。なお、本実施の形態において、建材の表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板を用いることにより、型板の凹凸が表面層に転写された、緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。一般には、いずれの場合であっても受具側が建材の表面となる。
【0026】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第2のステップにおいて表面層芯層からなる2層のマットを形成した後、受具を走行方向とは逆の方向に逆走させ、既に形成されている芯層の上に、さらに第2の篩シートの網目を通過した粉体原料を落下させた後、第1の篩シートの網目を通過した粉体原料を落下させるものである。
【0027】
本実施の形態の製造方法では、受具の上に表面層芯層の2層構造の建材用マットが形成されたら、走行装置を逆走させることで、芯層の上に別途の芯層を形成し、別途の芯層の上に別途の表面層を形成することを可能としたものである。
【0028】
すなわち、形成された建材用マットは、表面と裏面に表面層を有し、その内側に2層の芯層を有した構成の建材用マットとなる。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。具体的には、受具として型板を用いる場合は、前述した実施の形態と同じであり、一般に受具側が建材の表面となる。受具としてプレートを用いる場合は、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスし、一般に型板側が建材の表面となる。
【0029】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態において、第1のステップは、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第2のステップは、第1の篩シートに供給された粉体原料を第1の篩シートから傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過した粉体原料を走行する受具の上に落下させて芯層を形成し、第1の篩シートの網目を通過した粉体原料を既に形成されている芯層上に落下させて芯層上に表面層を形成するものである。
【0030】
本実施の形態は、第1の篩シートが傾斜の高い側となるように篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第1の篩シートに粉体原料を供給することにより、その下方に走行する受具の上に、芯層表面層の順にこれらを効率的に形成するものである。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具としてプレートを用い、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスし、型板側を建材の表面とする。それにより、緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。
【0031】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第1のステップにおいて、第1の篩シートと第2の篩シートを有する第1の篩シートユニットおよび網目が相対的に細かい第3の篩シートと網目が相対的に粗い第4の篩シートを有する第2の篩シートユニットを用意し、受具の走行方向の上流側に第1の篩シートユニットを配設し、下流側に第2の篩シートユニットを配設し、第1の篩シートユニットは、第1の篩シートが第2の篩シートよりも傾斜の高い側となるように第1の篩シートユニットを受具の走行方向に対して下方に傾斜させて配設し、第2の篩シートユニットは、第の篩シートが第4の篩シートよりも傾斜の高い側となるように第2の篩シートユニットを受具の走行方向に対して上方に傾斜させて配設し、第2のステップにおいて、第1の篩シートユニットの第1の篩シートに粉体原料を供給し、第1の篩シートの網目を通過した粉体原料を走行する受具の上に落下させて第1の表面層を形成するとともに、第1の篩シートの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シートに移動させ、第2の篩シートの網目を通過した粉体原料を既に形成されている第1の表面層上に落下させて第1の表面層上に第1の芯層を形成し、第2の篩シートユニットの第の篩シートに供給した粉体原料を、第3の篩シートから傾斜に沿って第の篩シートに移動させ、第の篩シートの網目を通過した粉体原料を既に形成されている第1の芯層上に落下させて第1の芯層上に第2の芯層を形成し、第の篩シートの網目を通過した粉体原料を既に形成されている第2の芯層上に落下させて第2の芯層上に第2の表面層を形成するものである。
【0032】
本実施の形態の製造方法は、2つの篩シートユニットを逆ハの字状に配設し、受具をこれら2つの篩シートユニットの下方に連続的に移動させることにより、2つの表面層(第1、第2の表面層)と、2つの芯層(第1、第2の芯層)からなる建材用マットを形成するものである。
【0033】
本実施の形態の製造方法によれば、表裏2層の表面層の内側に2層の芯層が積層してなる建材用マットをより一層効率的に形成することが可能になる。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。
【0034】
また、本発明による建材の製造方法の他の実施の形態は、第1のステップにおいて、第1の篩シートユニットの第1の篩シートと第2の篩シートユニットの第3の篩シートの間に粉体原料を供給する中央原料供給部を配設し、第2のステップにおいて、中央原料供給部から供給された粉体原料を受具に落下させた後、第2の篩シートユニットの下に受具を移動させるものである。
【0035】
本実施の形態の製造方法は、逆ハの字状に配設された2つの篩シートユニットの間に篩を具備しない中央原料供給部を配設し、受具をこれら2つの篩シートユニットと中央原料供給部の下方に連続的に移動させることにより、表裏2層の表面層の内側に3層の芯層が積層し、中央の芯層は篩にかけられない粗い粉体原料から形成された建材用マットを形成するものである。なお、本実施の形態において、表面を平坦とする場合は、受具としてプレートを用いるのがよい。また、表面に凹凸模様を設ける場合は、受具として型板、プレートのいずれを用いてもよく、いずれを用いた場合でも緻密で耐水性の高い表面層を有する建材を製造することができる。
【発明の効果】
【0036】
以上の説明から理解できるように、本発明の建材の製造方法によれば、寸法の異なる網目を備えた篩シートを上下に振動させて原料の篩分けをおこなう振動篩装置を使用して粉体原料の篩分けをおこないながら、異なる寸法の粉体原料からなる2層以上のマットが積層されてなる建材用マットを形成し、これをプレスし、養生して建材を製造することにより、粉体原料にエアを吹き付けて篩分けする従来の製造方法の課題である、設備の大型化や設備の頻繁な清掃、篩の目詰まりの全ての課題を解消しながら、効率的に多層構造の建材用マットからなる建材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の建材の製造方法の実施の形態1,2の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
図2】振動篩装置を詳細に説明した図である。
図3】篩シートの上下振動と粉体原料の動きを説明した模式図である。
図4】(a)、(b)はそれぞれ、建材の製造方法の実施の形態1、実施の形態2の第1、第2のステップで形成された建材用マットの断面図である。
図5】建材の製造方法の実施の形態2の第3のステップを経て製造された建材を示した模式図である。
図6】建材の製造方法の実施の形態3の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
図7】建材の製造方法の実施の形態3の第1、第2のステップで形成された建材用マットの断面図である。
図8】建材の製造方法の実施の形態4の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
図9】建材の製造方法の実施の形態5の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
図10】建材の製造方法の実施の形態5の第1、第2のステップで形成された建材用マットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の建材の製造方法の実施の形態を説明する。
【0039】
(建材の製造方法の実施の形態1)
図1は本発明の建材の製造方法の実施の形態1,2の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図であり、図2は振動篩装置を詳細に説明した図であり、図3は篩シートの上下振動と粉体原料の動きを説明した模式図である。
【0040】
製造方法の第1のステップとして、図示する振動篩装置10と振動篩装置10の下方に配設された走行装置20を準備する。
【0041】
振動篩装置10は、弾性材から形成されて伸縮可能であって網目が相対的に細かい第1の篩シート2Aと、網目が相対的に粗い第2の篩シート2Bが併設してなる篩シートユニット2、第1の篩シート2Aに粉体原料を供給する原料供給部3を備え、各篩シート2A,2Bが上下に振動自在となっている(Y2方向)。
【0042】
振動篩装置10はジャンピングスクリーンとも称され、図2で示すように、2本の併設されたクロスビーム1,1のそれぞれが所定間隔で多数の網目2aを備えたウレタン製の篩シート2A(2B)を支持している。各クロスビーム1,1が不図示のアクチュエータにて相互に反対方向にスライドすることによって(X2方向)、各クロスビーム1,1で支持された篩シート2A(2B)は、その一部がたわむと同時にその他部が引っ張られることになる。なお、各クロスビーム1,1のうち、一方のクロスビーム1のみがアクチュエータにて往復動される形態であってもよい。
【0043】
図3上図で示すように、引っ張られた状態の篩シート2A上に粉体原料Fが載置された状態で、次に図3中図で示すように、篩シート2Aがたわむことで(Y2方向)粉体原料Fが下方へ落ち込む。次に、図3下図で示すように、篩シート2Aが再度引っ張られて持ち上げられることにより(Y2方向)、下方へ落ち込んでいた粉体原料Fが上方に跳ね上げられる。
【0044】
このように、篩シート2A(2B)の上下運動(波動運動)により、粉体原料Fを粉々にして、網目2aを通過可能な寸法の粉体原料Fのみを下方へ落下させることができる。
【0045】
篩シート2A(2B)が上下運動しながら粉体原料Fの篩分けをおこなうことより、網目2aは目詰まりし難く、また、従来の篩分け方法のように粉体原料にエアを吹き付ける必要がないことから、設備の小型化を図ることができ、設備の頻繁な清掃は不要となる。
【0046】
図1に戻り、振動篩装置10の下方に配設された走行装置20は、主回転ローラ21と副回転ローラ22の回転にて移動するベルトコンベア23から構成されており、このベルトコンベア23の移動によってその上に載置された受具4が連続的に一定速度で一定方向に走行自在となっている(X1方向)。なお、受具4に関し、製造される建材の表面を平坦とする場合は受具4としてプレートを用い、建材の表面に凹凸模様を設ける場合は受具として型板を用いる。
【0047】
篩シートユニット2は、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように受具4の走行方向(X1方向)に対して下方に傾斜させて配設されている(傾斜角度θ)。ここで、篩シートユニット2の傾斜角度θは、粉体原料Fが傾斜に沿って自然に転がり落ちる角度に設定されるのがよく、これは使用される粉体原料によっても異なるものの、たとえば、12度〜21度の範囲に設定することができる。
【0048】
建材の製造方法の第2のステップでは、振動篩装置10と走行装置20を稼働させ、移動する受具4の上に建材用マットを形成する。
【0049】
具体的には、まず、原料供給部3から粉体原料を上下振動している(Y2方向)第1の篩シート2Aに落下させる(Y1方向)。
【0050】
本発明の製造方法の製造対象である建材は、窯業系サイディングボードや、パーティクルボード、インシュレーションボード、ハードボード等の繊維板、セラミックボード等の焼成板、樹脂板などである。窯業系サイディングボードを取り上げると、粉体原料は、水硬性材料と混和材、補強材の混合材料からなる。ここで、水硬性材料としては、ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等のセメントや、無水石膏、半水石膏、二水石膏等の石膏、高炉スラグ、転炉スラグ等のスラグが挙げられる。また、混和材としては、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、フライアッシュ、製紙スラッジ焼却灰、パーライト、シリカフューム、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、バーミキュライト、セピオライト、ゾノトライト、珪藻土、カオリナイト、ゼオライト、ワラストナイト等が挙げられる。さらに、補強材としては、木片、竹片、木粉、故紙、針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の木質補強材や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、ロックウール等が挙げられる。
【0051】
上下振動している(Y2方向)第1の篩シート2Aに供給された粉体原料の一部は、第1の篩シート2Aの網目2aを通過し、走行する受具4の上に落下して(Y3方向)マット状に堆積する。
【0052】
ここで、図4aは、第1、第2のステップで形成された建材用マットの断面図である。同図で示すように、受具4の上には、第1の篩シート2Aの網目2aを通過した寸法の相対的に小さな粉体原料からなる表面層用マット5が形成される。
【0053】
図1に戻り、第1の篩シート2Aを通過できずにその上に残った粉体原料は、篩シートユニット2の傾斜(角度θ)に沿って第2の篩シート2Bへ自然に転がり落ち、上下振動している(Y2方向)第2の篩シート2Bの網目を通過し、走行する受具4の上に落下して(Y4方向)マット状に堆積する。
【0054】
具体的には、図4aで示すように、受具4の上に既に形成されている表面層用マット5の上に、第2の篩シート2Bの網目を通過した寸法の相対的に大きな粉体原料からなる芯層用マット6が形成され、表面層用マット5と芯層用マット6からなる建材用マット7が形成される。
【0055】
表面層用マット5は緻密で耐水性が高いマットであり、芯層用マット6は密度が小さいことから軽量であり、クッション性を有するマットとなる。そのため、緻密で耐水性の高い表面層用マット5の内側に軽量でクッション性のある芯層用マット6が形成された建材用マット7が形成される。
【0056】
第2のステップにおいて図4aで示すように建材用マット7が形成されたら、第3のステップでは、形成された建材用マット7と受具4をプレスし、養生することによって不図示の建材が製造される。
【0057】
このように、振動篩装置10とその下方で受具4を移動させる走行装置20を使用して受具4の上に建材用マット7を形成することで、効率的に建材用マット7を形成でき、もって効率的に建材を製造することができる。また、受具4として型板を用いると、凹凸模様面が緻密で、耐水性が高い建材を製造することができる。
【0058】
(建材の製造方法の実施の形態2)
実施の形態2にかかる製造方法は、図1において、受具4が第2の篩シート2Bの端部まで到達して図4aで示す表面層用マット5と芯層用マット6の積層構造を形成したら、次に、走行装置20を逆走させ、受具4を逆方向に移動させて(X1’方向)さらに多層構造の建材用マットを形成するものである。なお、受具4に関し、製造される建材の表面を平坦とする場合は受具4としてプレートを用い、建材の表面に凹凸模様を設ける場合は受具4として型板、プレートのいずれも用いることができる。
【0059】
具体的には、受具4が第2の篩シート2Bの直下を再度通過することにより、図4bで示すように芯層用マット6の上に別途の芯層用マット6が形成される。
【0060】
さらに受具4が第1の篩シート2Aの直下を通過することで、図4bで示すように別途の芯層用マット6の上に別途の表面層用マット5が形成され、表裏面にある表面層用マット5の間に2層の芯層用マット6が形成された建材用マット7Aが形成される。
【0061】
第3のステップにて建材用マット7Aと受具4をプレスし、養生することにより、図5で示す建材30が製造される。なお、建材の表面に凹凸模様を設ける場合で、受具4としてプレートを用いる場合は、形成された建材用マット7Aの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスすると、凹凸模様面が緻密で、耐水性が高い建材を製造することができる。この場合、型板側が建材の表面となる。
【0062】
(建材の製造方法の実施の形態3)
図6は建材の製造方法の実施の形態3の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
【0063】
実施の形態3にかかる製造方法では、図1で示す振動篩装置10と傾斜方向が異なる振動篩装置10Aを使用し、建材用マットを形成するものである。
【0064】
具体的には、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように篩シートユニット2を受具4の走行方向(X1方向)に対して上方に傾斜させて配設する。
【0065】
原料供給部3から上下振動している(Y2方向)第1の篩シート2Aに粉体原料を落下させ(Y1方向)、第1の篩シート2Aの網目2aを通過した粉体原料を下方に落下させ(Y3方向)、第1の篩シート2A上に残った粉体原料は第1の篩シート2Aに沿って傾斜方向に転がり落ち、第2の篩シート2Bの網目を通過して下方に落下している(Y4方向)。
【0066】
この状態で受具4を移動させることにより(X1方向)、図7で示すように、受具4には最初に芯層用マット6が形成され、その上に表面層用マット5が形成され、芯層用マット6と表面層用マット5からなる建材用マット7Bが形成される。なお、実際には、複数の受具4が連続的に走行しており、各受具4に対して粉体原料が常に供給されている。この場合、受具4としてプレートを用いる。
【0067】
第3のステップでは、建材用マット7Bと受具4をプレスし、養生することによって不図示の建材が製造される。なお、建材の表面に凹凸模様を設ける場合、形成された建材用マット7Bの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスする。この場合、型板側が建材の表面となる。
【0068】
(建材の製造方法の実施の形態4)
図8は建材の製造方法の実施の形態4の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
【0069】
実施の形態4にかかる製造方法では、2つの第1の篩シートユニット2’と第2の篩シートユニット2”を備えた振動篩装置10Cを使用して建材用マットを製造する。
【0070】
より具体的には、受具4の走行方向(X1方向)の上流側に第1の篩シートユニット2’を配設し、下流側に第2の篩シートユニット2”を配設する。なお、建材の表面を平坦とする場合は受具4としてプレートを用い、建材の表面に凹凸模様を設ける場合は受具4として型板、プレートのいずれも用いることができる。
【0071】
第1の篩シートユニット2’は、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように篩シートユニット2’を受具4の走行方向(X1方向)に対して下方に傾斜させて配設し、第2の篩シートユニット2”は、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように篩シートユニット2”を受具4の走行方向(X1方向)に対して上方に傾斜させて配設し、双方の篩シートユニット2’、2”を逆ハの字状に配設する。
【0072】
第1の篩シートユニット2’の第1の篩シート2Aに粉体原料を供給し、第1の篩シート2Aの網目を通過する粉体原料を走行する受具4の上に落下させることにより(Y3方向)、図4bで示すように受具4の上に表面層用マット5を形成する。そして、第1の篩シート2Aの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シート2Bに移動させ(Z方向)、第2の篩シート2Bの網目を通過する粉体原料を既に形成されている表面層用マット5上に落下させることにより(Y4方向)、図4aで示すように芯層用マット6を形成する。
【0073】
受具4は走行装置20によって第2の篩シートユニット2”に移動する。第2の篩シートユニット2”では、第1の篩シート2Aに粉体原料が供給され、第1の篩シート2Aの網目を通過する粉体原料を下方に落下させ(Y3方向)、通過せずに第1の篩シート2A上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シート2Bに転がり落とし、第2の篩シート2Bの網目を通過する粉体原料を下方に落下させる(Y4方向)。
【0074】
第2の篩シートユニット2”に移動した受具4には、まず、第2の篩シート2Bの網目を通過した粉体原料が落下し、図4bで示すように既に形成されている芯層用マット6上に別途の芯層用マット6が形成される。
【0075】
さらに受具4が移動し、第1の篩シート2Aの直下を通過する過程で第1の篩シート2Aの網目を通過した粉体原料が落下し、図4bで示すように既に形成されている別途の芯層用マット6上に別途の表面層用マット5が形成される。
【0076】
実施の形態4にかかる製造方法によれば、表裏2層の表面層用マット5の内側に2層の芯層用マット6が積層してなる建材用マット7Aをより一層効率的に形成することが可能になる。
【0077】
第3のステップでは実施の形態2と同様に、建材用マット7Aと受具4の組み合わせ(一組)を複数組積み重ねてプレスし、養生することによって図5で示す建材30が製造される。なお、建材の表面に凹凸模様を設ける場合で、受具4としてプレートを用いる場合は、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスする。
【0078】
(建材の製造方法の実施の形態5)
図9は建材の製造方法の実施の形態5の第1のステップ、第2のステップを説明した模式図である。
【0079】
実施の形態5にかかる製造方法では、実施の形態4の製造方法で使用した振動篩装置10Cの中央位置、より詳細には、第1の篩シートユニット2’と第2の篩シートユニット2”の間に、篩を具備しない中央原料供給部8が配設された振動篩装置10Dを使用して建材用マットを製造する。なお、建材の表面を平坦とする場合は受具4としてプレートを用い、建材の表面に凹凸模様を設ける場合は受具4として型板、プレートのいずれも用いることができる。
【0080】
受具4が第1の篩シートユニット2’を通過する過程で、図10で示すように受具4の上に表面層用マット5と芯層用マット6が形成され、次に中央原料供給部8の下方を通過する過程で別途の芯層用マット6Aが形成される。
【0081】
この芯層用マット6Aは、篩を通過せずに中央原料供給部8から直接供給された(Y5方向)粉体原料から形成されることより、既に形成されている芯層用マット6に比して相対的により大きな寸法の粉体原料が混在している。
【0082】
受具4が第2の篩シートユニット2”に到達し、ここを通過する過程で、別途の芯層用マット6と別途の表面層用マット5が形成され、表裏2層の表面層用マット5の内側に3層の芯層用マット6,6A,6が積層してなる建材用マット7Cが形成される。
【0083】
第3のステップでは実施の形態2,4と同様に、建材用マット7Cと受具4の組み合わせ(一組)を複数組積み重ねてプレスし、養生することによって不図示の建材が製造される。なお、建材の表面に凹凸模様を設ける場合で、受具4としてプレートを用いる場合は、形成された建材用マットの上に型板(凹凸を備えた面が下)を配設してプレスする。
【0084】
なお、図示を省略するが、その他の振動篩装置の形態として、受具の進行方向の上流側から順に、図1で示す振動篩装置10が1基、図6で示す振動篩装置10Aが2基並んだ振動篩装置や、図1で示す振動篩装置10が2基、図6で示す振動篩装置10Aが1基並んだ振動篩装置などを適用してもよい。
【0085】
(効果確認実験とその結果)
本発明者等は、本発明の建材の製造方法における効果確認実験をおこなった。実施例にかかる振動篩装置を5種類用意した。実施例1は図8で示す振動篩装置10Cで、受具が型板であり、実施例2は図9で示す振動篩装置10Dで、受具がプレートである。また、実施例3は受具の進行方向の上流側から順に図1で示す振動篩装置10が1基、図6で示す振動篩装置10Aが2基並んだ振動篩装置で、受具が型板であり、実施例4は受具の進行方向の上流側から順に図1で示す振動篩装置10が2基、図6で示す振動篩装置10Aが1基並んだ振動篩装置で、受具がプレートである。さらに、実施例5は図1で示す振動篩装置10、受具が型板で受具を往復走行させるものである。一方、比較例は特許文献1で開示される、エアにて粉体原料を吹き飛ばして篩分けする装置で、受具が型板である。なお、実施例2、4においては、形成された建材用マットの上に型板を、凹凸を備えた面が下(建材用マットと接触する側)となるよう配設し、プレスした。
【0086】
粉体原料は、ポルトランドセメントを30質量%、フライアッシュを30質量%、木片を15質量%とリジェクト(木質系セメント板を粉砕した再利用原料)を25質量%含有する原料混合物に、硬化促進剤としてギ酸カルシウムを5質量%、水を30質量%外添し、実施例1〜5と比較例にて、厚みが16mmの木質系セメント板を製造した。ここで、建材用マットと型板のプレス圧は4.5MPaとし、養生は165℃、0.6MPaで6時間のオートクレーブ養生をおこなった。なお、比較例において使用する粉体原料は実施例のものと原料組成は同じであるが、表裏の表面層用マット用原料では粒径が3mm以下の木片を使用し、芯層用マット用原料では粒径が3mm以上の木片を使用した。実験の結果を以下の表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
物性に関する評価基準に関し、意匠性に関しては、エンボス深さ7mmで立ち上がり角度60度の凸部を有するレンガ柄の型板にてプレス成形した際に、成形された板表面に問題がない場合を○、凸部の角などに巣穴や割れが見られる場合を×とした。また、曲げ強度に関しては、7×20cmのサイズに切断した試験体に3点曲げ強度試験をおこない、曲げ強度が12N/mm2より大きい場合を◎、12〜8N/mm2の場合を○、8N/mm2より小さい場合を△とした。また、耐凍性に関しては、板の端部からフェルトを介して水を吸収させ、気中での凍結を16時間、気中での融解を8時間おこなうことを1サイクルとし、100サイクルおこなった際の板厚の膨潤率が2%未満の場合を○、2%以上の場合を×とした。さらに、寸法安定性に関し、50×150mmのサイズに切断した試験体を水中で吸水させ、14日経過した後、辺の長さの変化率が0.1%未満の場合を◎、0.1〜0.2%の場合を○、0.2%よりも大きい場合を×とした。
【0089】
一方、物性以外の評価基準に関し、省エネ性に関しては、比較例を基準として、消費電力が5割よりも大きく削減される場合を◎、2〜5割削減される場合を○、それ以外を△とした。また、作業環境性に関しては、設備稼働中に粉塵計により周囲4箇所を測定し、その相対濃度(1分あたりの粉塵カウント数)が比較例の1/4未満の場合を◎、1/4以上で1/2以下の場合を○、それ以外を△とした。
【0090】
表1より、成形される板材の物性に関しては、比較例、各実施例ともに良好な結果となっている。
【0091】
一方、省エネ性に関しては、各実施例は設備として篩を振動させるだけであることより、送風を要する比較例に比して消費エネルギが大きく低下する結果となっており、篩の基数が少ない実施例5はその効果が一層顕著である。
【0092】
さらに、作業環境性に関しては、各実施例は比較例のようにエアの吹付けがないことから粉塵が舞うことがなく、作業環境が大きく改善する結果となっている。
【0093】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…クロスビーム、2…篩シートユニット、2’…第1の篩シートユニット、2”…第2の篩シートユニット、2A…第1の篩シート、2B…第2の篩シート、2a…網目、3…原料供給部、4…受具、5…表面層用マット、6,6A…芯層用マット、7,7A,7B,7C…建材用マット、8…中央原料供給部、10,10A,10B,10C,10D…振動篩装置、20…走行装置、21…主回転ローラ、22…副回転ローラ、30…建材、F…粉体原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10