特許第6232443号(P6232443)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232443
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】新規な医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20171106BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20171106BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   A61K31/519
   A61P35/00
   A61K9/14
   A61K9/08
   A61K47/40
   A61K47/38
【請求項の数】13
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-545165(P2015-545165)
(86)(22)【出願日】2013年11月26日
(65)【公表番号】特表2016-501874(P2016-501874A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】US2013071816
(87)【国際公開番号】WO2014085371
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】61/731,597
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591002957
【氏名又は名称】グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100162617
【弁理士】
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル,ゴセット
(72)【発明者】
【氏名】エンリケス,フランシスコ
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−201788(JP,A)
【文献】 特開平11−240833(JP,A)
【文献】 特表2010−516626(JP,A)
【文献】 特表2011−509925(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/088033(WO,A2)
【文献】 新・薬剤学総論,1987年,改訂第3版,p.111
【文献】 薬剤学マニュアル,1989年,第1版,p.80
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、および可溶化剤
を含む、粉末製剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、およびヒプロメロースから選択される、
粉末製剤。
【請求項2】
前記可溶化剤が、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンである、請求項1に記載の粉末製剤。
【請求項3】
前記可溶化剤が、約60重量%より多い量で存在する、請求項1に記載の粉末製剤。
【請求項4】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、緩衝剤、および甘味剤
を含む、粉末製剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、およびヒプロメロースから選択され、
c)前記薬物の粒度分布が、粒子の少なくとも90%が1〜20ミクロンである、
粉末製剤。
【請求項5】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、緩衝剤、および甘味剤
を含む、粉末製剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、およびヒプロメロースから選択され、
c)前記薬物の粒度分布が、粒子の少なくとも90%が1〜20ミクロンである、
粉末製剤。
【請求項6】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、および水性ビヒクル
を含む、経口液剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、またはヒプロメロースから選択される、
経口液剤。
【請求項7】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、および水性ビヒクル
を含む、経口液剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、またはヒプロメロースから選択される、
経口液剤。
【請求項8】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、香料、および水性ビヒクル
を含む、経口液剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、またはヒプロメロースから選択される、
経口液剤。
【請求項9】
a)ある量のN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物である薬物、可溶化剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、界面活性剤、香料、および水性ビヒクル
を含む、経口液剤であって、
b)前記可溶化剤が、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとスルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとの組合せ、ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンとヒプロメロースとの組合せ、またはヒプロメロースから選択される、
経口液剤。
【請求項10】
ヒトにおいて、癌の治療に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
ヒトにおいて、MEKの阻害に使用するための、請求項1から5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
ヒトにおいて、癌の治療に使用するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の液剤。
【請求項13】
ヒトにおいて、MEKの阻害に使用するための、請求項6から9のいずれか一項に記載の液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラメチニブジメチルスルホキシドであるMekinist(登録商標)ジメチルスルホキシド(GSK1120212Bであり、これ以降、化合物Aとも呼ぶ)として公知の、以下の式(I)によって表される、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシド溶媒和物を含む、経口液剤のための粉末剤(POS)に関する。
【0002】
【化1】
【背景技術】
【0003】
非溶媒和化合物としての、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミド(これ以降、化合物B)は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、国際出願日が2005年6月10日、国際公開番号がWO2005/121142および国際公開日が2005年12月22日である、国際出願番号PCT/JP2005/011082において、特に癌の治療における、MEK活性の阻害剤として有用なものとして、薬学的に許容されるその塩および溶媒和物と共に開示され、特許請求されている化合物である。化合物Bは、実施例4−1の化合物である。化合物Bは、国際出願番号PCT/JP2005/011082に記載されている通り、調製することができる。化合物Bは、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、2006年1月19日公開の米国特許公開番号US2006/0014768において記載されている通り、調製することができる。化合物Bは、実施例4−1の化合物である。
【0004】
好適には、化合物Bは、ジメチルスルホキシド溶媒和物、または化合物Aすなわちトラメチニブジメチルスルホキシドの形態にある。これ以降、「トラメチニブ」とは、トラメチニブジメチルスルホキシドを意味する。好適には、化合物Bは、水和物、酢酸、エタノール、ニトロメタン、クロロベンゼン、1−ペンタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、および3−メチル−1−ブタノールから選択される溶媒和物の形態にある。溶媒和物および塩の形態は、例えば、国際出願番号PCT/JP2005/011082または米国特許公開番号US2006/0014768中の説明から、当業者により調製することができる。化合物Aは、米国特許公開番号US2006/0014768の実施例4−149において調製されている。
【0005】
固形の経口医薬剤形は、医薬活性化合物を調剤化するために普及している有用な医薬形態である。様々なこうした形態は、錠剤、カプセル剤、ペレット剤、ロゼンジ剤、および散剤を含め、公知である。
【0006】
しかし、商業規模で許容される固形の経口用医薬剤形の製剤化は、容易ではない。各医薬化合物は、インビボ投与された場合、治療的薬物レベルの点で独特に作用する。さらに、医薬活性化合物、特に抗癌性化合物は、毒性(例えば、遺伝毒性、催奇形性)などの望ましくない副作用、および望ましくない物理的または心的症状を伴うことが多い。薬物に固有の化学的特性と添加剤の特性とをバランスさせる他に、薬物は、所望の治療的薬物レベルをもたらすのに十分な特定量ではあるが、許容されない副作用プロファイルを示す量未満、またはそうした特定の薬物に対する治療可能時間の範囲内で、投与しなければならない。さらに、製剤化および製造過程は、使用されるまでその完全性を維持する一体剤形を提供するようなものでなければならない。本剤形はまた、使用時に所望のプロファイルを提供するよう、許容される溶出特性および崩壊特性も有していなければならない。溶解度が低い、および/または溶媒和物形態の医薬活性化合物は、高品質の剤形を調製する点で、特定の難題を示す恐れがある。これらの難題には、インビボ投与時における不十分かつ変動する暴露、および不良な薬力学的特性を示し得る非溶媒和化合物を放出する脱溶媒和化が含まれる。
【0007】
化合物Aは、複数のタイプの腫瘍において評価されており、最近の第III相試験において、BRAF V600変異陽性転移性黒色腫を有する対象で、抗腫瘍活性を示した。化合物Aは、現在、単独療法として、ならびに細胞毒性薬物および小分子標的阻害剤を含めた他の抗癌医薬との組合せの両方で、開発が行われている。化合物A0.5mg、1.0mg、および2.0mg錠剤の承認を求める新薬申請(NDA)が、FDAに提出された。化合物Aの固形剤形、具体的には0.5mg、1.0mgおよび2.0mg錠剤が、国際出願日が2011年12月20日、国際公開番号がWO2012/088033、および国際公開日が2012年6月28日である、国際出願番号PCT/US2011/066021において開示され、特許請求されている。
【0008】
開示された錠剤は、成人における使用には許容されるが、この錠剤は、子供または錠剤を飲み込むのが困難な個体に化合物Aを投与するには好ましくない。小児集団では、薬物が、経口懸濁液または溶液に再構成される粉末剤として入手可能であるのが望ましいことが多い。そのような粉末剤には、良好な流動特性および内容物の均質性を有する粉末ブレンドを提供することを期待して、活性物質を含む様々な添加剤を乾燥ブレンドする試みが必要である。
【0009】
小児用製剤中で化合物Aを使用することに関して、いくつかのさらなる難題が存在する。例えば、高い湿度または水性環境では、この薬品の性質は、ジメチルスルホキシド溶媒和物から脱溶媒和物形態へと変換されるのが有利であり、その結果、標準的な製剤では、適切な物理的安定性および水溶解度を提供することができない。さらに、化合物Aは、光に対して非常に敏感であり、したがって、包装には、該剤形の安定性が懸念される。さらに、該薬物は、苦味を呈することがわかった。
【0010】
これらの懸念の深刻な認識は、化合物Aのインビボ投与に対して副作用があることであろう。
【0011】
小児集団への投与に適した製剤中に化合物Aを提供することが望ましいと思われる。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、水を用いた再構成に適した、化合物Aの経口液剤のための粉末剤(POS)に関する。本発明はまた、調製済み水溶液、製剤、特に水性ビヒクルと混合されている化合物Aを含む安定な経口医薬製剤にも関する。さらに、本発明は、これらの製剤を調製する方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】様々な可溶化剤の存在下での、トラメチニブの水溶解度を示すグラフである。
図2】トラメチニブの初期濃度1mg/mLからの、時間とCavitron濃度の両方の関数としての、濃度プロファイルを示すグラフである。
図3】トラメチニブの初期濃度1mg/mLからの、水溶解度に対するHPMCおよび様々な可溶化剤の効果を示すグラフである。
図4】様々な可溶化剤を使用した場合における、時間の関数としての、0.05mg/mLにおける化合物Bの溶解度プロファイルを示すグラフである。
図5】異なる香料系を使用したトラメチニブ溶液の、活性剤とマッチングプラセボとの間の距離の値およびそれらの識別指数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一実施形態では、本発明は、化合物Aを含有する経口用医薬剤形を対象とし、好適には、該剤形は、粉末形態であり、好適には該剤形は、商業規模で製造される。これらの粉末形態は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0015】
一実施形態では、本発明は、調製済み水性製剤、好適には、添加剤および水性ビヒクルと混合されている化合物Aを含む、安定な経口用水性医薬製剤を対象とする。これらの調製済み水性形態は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「経口液剤のための粉末剤(POS)」とは、医薬添加剤および化合物Aを含有する医薬製剤を意味する。
【0017】
添加剤と混合されている化合物Aの直接ブレンド粉末剤は、経口液剤のための粉末剤(POS)と称される。POSは、投与前に水性ビヒクルにより再構成され、透明またはわずかに着色している液剤を形成する。この液剤は、患者の体重または体表面積に基づいて投与される。
【0018】
化合物Aは、光不安定性があり得ることが、見いだされた。許容されないレベルの光分解が起こる可能性は、光触媒による分解生成物が潜在的に毒性となり得るので、特に重要である。
【0019】
一実施形態では、本発明は、約0.1%w/w、好適には0.1%w/w未満、好適には約0.043%w/wから選択される量で、化合物Aを含有する経口液剤のための粉末剤(POS)を対象としている。これらの製剤は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0020】
一実施形態では、本発明は、化合物Aを含む経口液剤のための粉末剤(POS)であって、可溶化剤と化合物Aの比が、100対1より大きい、好適には1000対1より大きい、好適には1500対1より大きい、好適には約1771対1より大きい、粉末剤を対象とする。これらの製剤は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0021】
化合物Aは、取り扱い中および製剤化中に脱溶媒和を受けて、非溶媒和化合物Bを形成し得ることが見いだされた。化合物Bは、化合物Aよりもかなり溶解性に乏しく、医薬組成物から放出されると、その薬力学に負の影響を及ぼす。好適には、本発明の製剤は、化合物Aに比べて、30%を超えない量、好適には25%を超えない量、好適には20%を超えない量、好適には15%を超えない量、好適には10%を超えない量、好適には5%を超えない量、好適には2%を超えない量の脱溶媒和されている化合物Bを含有している。こうした製剤は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0022】
化合物Aは、インビボ投与されると、不良な暴露および吸収を示し得る。好適には、本発明の経口液剤のための粉末剤(POS)は、マイクロ化された化合物Aを含有しており、化合物Aの粒子の少なくとも90%は、1〜20ミクロン、好適には2.2〜10.5ミクロンであり、こうした製剤は、許容される暴露/吸収プロファイルを提供する。好適には、本発明の経口液剤のための粉末剤(POS)は、マイクロ化された化合物Aを含有しており、化合物Aの粒子の少なくとも50%は、1〜6ミクロン、好適には1.5〜4.3ミクロンであり、こうした製剤は、許容される暴露/吸収プロファイルを提供する。好適には、本発明の経口液剤のための粉末剤(POS)は、マイクロ化された化合物Aを含有しており、化合物Aの粒子の少なくとも10%は、0.01〜3.0ミクロン、好適には0.77〜1.3ミクロンであり、こうした製剤は、許容される暴露/吸収プロファイルを提供する。こうした製剤は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0023】
一実施形態では、本発明の経口液剤のための粉末剤(POS)中の化合物Aの非マイクロ化粒子の粒度分布は、化合物Aの粒子の90%が、140ミクロン以下、好適には120ミクロン以下である。こうした製剤は、許容される暴露/吸収プロファイルを提供する。こうした製剤は、安全かつ有効な治療を提供する一助となる。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「特性の改善」およびその派生語は、本発明の態様を利用しない製剤と比較した場合に、本発明の態様を利用するPOSに由来する化合物Aのインビボ放出の薬物動態プロファイルに対し、いくつかの利点を予期するものであり、好適には、該製剤は商業規模で製造される。特性の改善の例には、経口バイオアベイラビリティの向上、物理的および化学的安定性の改善、光安定性の改善、不変な薬物動態プロファイル、薬物動態プロファイルの改善、不変な溶出速度、およびPOSを水性ビヒクルと混合した場合の経口医薬製剤の安定性が含まれる。
【0025】
本明細書で使用する場合、用語「薬物」または「活性成分」およびその派生語は、特に定義しない限り、化合物AすなわちN−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドジメチルスルホキシドを意味する。
【0026】
本明細書で使用する場合、用語「化合物B」およびその派生語は、遊離化合物、または塩を形成していない化合物および非溶媒和化合物としての、N−{3−[3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨード−フェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロ−2H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−1−イル]フェニル}アセトアミドを意味する。化合物Bはまた、ある量の化合物Aにおける、遊離化合物、または塩を形成していない化合物および非溶媒和化合物の量を指す。
【0027】
用語「商業規模」およびその派生語とは、本明細書で使用する場合、POS約20kg超、好適には50kg超、好適には75kg超の回分規模の調製、または少なくとも約10,000のPOS用量、好適には少なくとも25,000用量、好適には少なくとも50,000用量を調製するのに適した回分サイズを意味する。
【0028】
用語「有効量」およびその派生語は、例えば、研究者または臨床医によって求められている組織、系、動物またはヒトの生物学的または医療的応答を誘発することになる薬物あるいは活性成分の量を意味する。さらに、「治療有効量」という用語は、そのような量を摂取しない対応する対象と比較すると、疾患、障害、または副作用の治療、治癒、予防、または寛解が改善する、あるいは疾患または障害の進行速度が低下するいずれかの量を意味する。この用語はまた、正常な生理学的機能を増強するために有効な量もその範囲内に含む。
【0029】
用語「共投与」とは、本明細書で使用する場合、化合物Aおよび癌の治療に有用であることが公知のさらなる1種以上の活性剤(化学療法および放射線治療を含む)を含有する固形または液体の経口用医薬剤形の、同時投与または個別に連続投与するいずれかの態様を意味する。さらなる1種以上の活性剤という用語は、本明細書で使用する場合、癌の治療を必要とする患者に投与すると、有利な特性が得られることを知られているか、または有利な特性を示すいずれかの化合物または治療剤を含む。本明細書で使用する場合、「さらなる1種以上の活性剤」は、さらなる1種以上の抗癌剤と互換的に使用される。好ましくは、投与が同時ではない場合、本化合物は、互いに近接している近い時間に投与される。さらに、化合物が同じ剤形で投与される場合、例えば、ある化合物が注射により投与されることがあること、および別の化合物が経口投与されることがあることは、問題ではない。好適には、「共投与」は、化合物Aと、さらなる活性剤を含有する第2の医薬剤形とを含有する液体経口用医薬剤形から本質的になることになろう。好適には、「共投与」は、化合物Aと、さらなる活性剤を含有する第2の医薬剤形と、さらなる別の活性剤を含有する第3の医薬剤形とを含有する液体経口用医薬剤形から本質的になることになろう。
【0030】
通常、治療されている感受性の高い腫瘍に対して活性を有するいずれかの抗癌剤が、本発明における癌の治療において、共投与され得る。そのような薬剤の例は、V.T. Devita および S. Hellman(編)による、Cancer Principles and Practice of Oncology(第6版(2001年2月15日)、Lippincott Williams & Wilkins Publishers)において見いだすことができる。当業者は、関与する薬物および癌の特定の特徴に基づいて、薬剤のどんな組合せが有用であるかを認識することができると思われる。本発明における有用な典型的な抗癌剤には、以下に限定されないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドなどの抗微小管剤、白金配位錯体、ナイトロジェンマスタード、オキサアザホスホリン、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、およびトリアゼンなどのアルキル化剤、アントラサイクリン、アクチノマイシンおよびブレオマイシンなどの抗生剤、エピポドフィロトキシンなどのトポイソメラーゼII阻害剤、プリンおよびピリミジンアナログおよび抗葉酸化合物などの代謝拮抗薬、カンプトテシンなどのトポイソメラーゼI阻害剤、ホルモンおよびホルモンアナログ、シグナル伝達経路阻害剤、非受容体チロシンキナーゼ血管新生阻害剤、免疫療法剤、アポトーシス促進剤、細胞周期シグナル伝達阻害剤、プロテアソーム阻害剤、および癌代謝の阻害剤が含まれる。
【0031】
本発明の医薬剤形と組み合わせて使用するための、またはそれと共投与される、さらなる1種以上の活性剤(抗癌剤)の例は、化学療法剤である。
【0032】
抗微小管剤または抗有糸分裂剤は、細胞周期のM期すなわち有糸分裂期中、腫瘍細胞の微小管に対して活性な周期特異性薬剤である。抗微小管剤の例には、以下に限定されないが、ジテルペノイドおよびビンカアルカロイドが含まれる。
【0033】
天然源由来のジテルペノイドは、細胞周期のG/M期に作用する周期特異性抗癌剤である。ジテルペノイドは、微小管のβ−チューブリンサブユニットを、このタンパク質に結合することによって安定化すると考えられている。その後生じるタンパク質の分解が、有糸分裂の停止に伴い阻害され、その後細胞死が生じるように思われる。ジテルペノイドの例には、以下に限定されないが、パクリタキセルおよびそのアナログであるドセタキセルが含まれる。
【0034】
パクリタキセルである(2R,3S)−N−ベンゾイル−3−フェニルイソセリンとの5β,20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサ−ヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4,10−ジアセテート2−ベンゾエート13−エステルは、タイヘイヨウイチイの木であるセイヨウイチイ(Taxus brevifolia)から単離された天然のジテルペン生成物であり、注射剤のTAXOL(登録商標)として市販されている。それは、テルペンのタキサンファミリーのメンバーである。パクリタキセルは、米国で、難治性卵巣癌および乳癌の治療において臨床使用するために承認されている。
【0035】
ドセタキセルである(2R,35)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステルの5β−20−エポキシ−1,2α,4,7β,10β,13α−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾエートとの13−エステルの三水和物は、注射剤として、TAXOTERE(登録商標)として市販されている。ドセタキセルは、乳癌の治療に適用される。ドセタキセルは、ヨーロッパイチイの木の針条葉から抽出される、天然の前駆体である10−デアセチル−バッカチンIIIを使用して調製されるパクリタキセル(その項目を参照)の半合成誘導体である。ドセタキセルの用量制限毒性は、好中球減少である。
【0036】
ビンカアルカロイドは、ツルニチニチソウを由来とする、周期特異性抗癌剤である。ビンカアルカロイドは、チューブリンに特異的に結合することにより、細胞周期のM期(有糸分裂)において作用する。その結果、結合したチューブリン分子は、微小管内に重合することができない。有糸分裂が分裂中期に停止され、細胞死を次に伴うと考えられている。ビンカアルカロイドの例には、以下に限定されないが、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンが含まれる。
【0037】
ビンブラスチン、すなわち硫酸ビンカレウコブラスチンは、注射剤として、VELBAN(登録商標)として市販されている。ビンブラスチンは、様々な固形腫瘍の第2選択療法として可能性ある効能を有するが、主として、精巣癌、ならびにホジキン病を含む様々なリンパ腫、ならびにリンパ芽球性リンパ腫および組織球性リンパ腫の治療において適用される。骨髄抑制は、ビンブラスチンの用量制限副作用である。
【0038】
ビンクリスチン、すなわち22−オキソ−ビンカレウコブラスチン硫酸塩は、注射剤として、ONCOVIN(登録商標)として市販されている。ビンクリスチンは、急性白血病の治療に適用されており、ホジキンおよび非ホジキン悪性リンパ腫に対する治療レジメンにも使用されている。脱毛および神経学的影響が、ビンクリスチンの最も一般的な副作用であり、骨髄抑制および胃腸粘膜炎の影響は、それほど起こらない。
【0039】
ビノレルビン、すなわちビノレルビン酒石酸塩(NAVELBINE(登録商標))の注射剤として市販されている、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−C’−ノルビンカロイコブラスチン[R−(R,R)−2,3−ジヒドロキシブタンジオエート(1:2)(塩)]は、半合成ビンカアルカロイドである。ビノレルビンは、様々な固形腫瘍、特に非小細胞肺癌、進行性乳癌、およびホルモン不応性前立腺癌の治療において、単剤として、またはシスプラチンなどの他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制は、ビノレルビンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0040】
白金配位錯体は、DNAと相互作用する非周期特異性抗癌剤である。白金錯体は、腫瘍細胞に入り込み、アクア化(aquation)を受けて、DNAと鎖内および鎖間架橋を形成し、腫瘍に対して生物学的な悪影響を引き起こす。白金配位錯体の例には、以下に限定されないが、シスプラチン、およびカルボプラチンが含まれる。
【0041】
シスプラチン、すなわちcis−ジアンミンジクロロ白金は、注射剤として、PLATINOL(登録商標)として市販されている。シスプラチンは、転移性睾丸癌および卵巣癌、ならびに進行性膀胱癌の治療において主に適用される。シスプラチンの主要な用量制限副作用は、水分補給および利尿により制御することができる腎毒性、および聴器毒性である。
【0042】
カルボプラチン、すなわちジアンミン[1,1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2−)−O,O’]白金は、注射剤として、PARAPLATIN(登録商標)として市販されている。カルボプラチンは、進行性卵巣癌の第1および第2選択治療において、主に適用されている。骨髄抑制(bone marrow suppression)は、カルボプラチンの用量制限毒性である。
【0043】
アルキル化剤は、非周期特異性抗癌剤および強力な求電子剤である。通常、アルキル化剤は、リン酸エステル基、アミノ基、スルヒドリル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、およびイミダゾール基などのDNA分子の求核性の部位によるDNAへのアルキル化によって、共有結合を形成する。そのようなアルキル化により、核酸機能が撹乱され、細胞死に至る。アルキル化剤の例には、以下に限定されないが、シクロホスファミド、メルファラン、およびクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード、ブスルファンなどのスルホン酸アルキルエステル、カルムスチンなどのニトロソ尿素、およびダカルバジンなどのトリアゼンが含まれる。
【0044】
シクロホスファミド、すなわち2−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]テトラヒドロ−2H−1,3,2−オキサザホスホリン2−オキシド一水和物は、注射剤または錠剤として、CYTOXAN(登録商標)として市販されている。シクロホスファミドは、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、および白血病の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。脱毛、吐き気、嘔吐および白血球減少は、シクロホスファミドの最も一般的な用量制限副作用である。
【0045】
メルファラン、すなわち4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]−L−フェニルアラニンは、注射剤または錠剤として、ALKERAN(登録商標)として市販されている。メルファランは、多発性骨髄腫および卵巣の切除不可能な上皮性癌の対症療法に適用される。骨髄抑制は、メルファランの最も一般的な用量制限副作用である。
【0046】
クロラムブシル、すなわち4−[ビス(2−クロロエチル)アミノ]ベンゼンブタン酸は、LEUKERAN(登録商標)錠剤として市販されている。クロラムブシルは、リンパ肉腫、巨大濾胞性リンパ腫、およびホジキン病などの慢性リンパ性白血病および悪性リンパ腫の対症療法に適用される。骨髄抑制は、クロラムブシルの最も一般的な用量制限副作用である。
【0047】
ブスルファン、すなわち1,4−ブタンジオールジメタンスルホネートは、MYLERAN(登録商標)錠剤として市販されている。ブスルファンは、慢性骨髄性白血病の対症療法に適用される。骨髄抑制は、ブスルファンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0048】
カルムスチン、すなわち1,3−[ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソ尿素は、バイアル入りの単一の凍結乾燥物としてBiCNU(登録商標)として、市販されている。カルムスチンは、単剤として、または脳腫瘍、多発性骨髄腫、ホジキン病、および非ホジキンリンパ腫向けの他の薬剤と組み合わせて、対症療法に適用される。遅延型骨髄抑制は、カルムスチンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0049】
ダカルバジン、すなわち5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)−イミダゾール−4−カルボキサミドは、バイアル入りの単一の物質として、DTIC−Dome(登録商標)として市販されている。ダカルバジンは、転移性悪性黒色腫の治療に適用され、また、ホジキン病の第2選択治療のための他の薬剤と組み合わせて適用される。吐き気、嘔吐および食欲不振は、ダカルバジンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0050】
抗生物質の抗癌剤は、DNAに結合またはインターカレートする非周期特異性薬剤である。通常、そのような作用は、安定なDNA複合体またはDNA鎖の切断をもたらし、これにより、核酸の通常の機能が撹乱されて、細胞死に至る。抗生物質の抗癌剤の例には、以下に限定されないが、ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン、ダウノルビシンおよびドキソルビシンなどのアントラサイクリン(anthrocyclins)、およびブレオマイシンが含まれる。
【0051】
アクチノマイシンDとしても知られるダクチノマイシンは、COSMEGEN(登録商標)として、注射剤形で市販されている。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍および横紋筋肉腫の治療に適用される。吐き気、嘔吐および食欲不振は、ダクチノマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0052】
ダウノルビシン、すなわち(8S−cis−)−8−アセチル−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン塩酸塩は、リポソームの注射剤形として、DAUNOXOME(登録商標)として、または注射剤として、CERUBIDINE(登録商標)として市販されている。ダウノルビシンは、急性非リンパ球性白血病および進行性のHIV関連性カポジ肉腫の治療における、寛解導入に適用される。骨髄抑制は、ダウノルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0053】
ドキソルビシン、すなわち(8S,10S)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキソピラノシル)オキシ]−8−グリコロイル,7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−1−メトキシ−5,12ナフタセンジオン塩酸塩は、注射剤として、RUBEX(登録商標)として、またはADRIAMYCIN RDF(登録商標)として市販されている。ドキソルビシンは、急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病の治療に主に適用されるが、ある固形腫瘍およびリンパ腫の治療における有用な構成要素でもある。骨髄抑制は、ドキソルビシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0054】
ブレオマイシン、すなわちストレプトマイセス・ベルティキルス(Streptomyces verticillus)の株から単離された細胞毒性グリコペプチド抗生物質の混合物は、BLENOXANE(登録商標)として市販されている。ブレオマイシンは、単剤としてまたは他の薬剤と組み合わせて、扁平上皮癌、リンパ腫、および睾丸癌の対症療法として適用される。肺および皮膚毒性は、ブレオマイシンの最も一般的な用量制限副作用である。
【0055】
トポイソメラーゼII阻害剤には、以下に限定されないが、エピポドフィロトキシンが含まれる。
【0056】
エピポドフィロトキシンは、マンドレイク植物に由来する、周期特異性抗癌剤である。エピポドフィロトキシンは、通常、トポイソメラーゼIIおよびDNAと三成分複合体を形成することにより、細胞周期のS期およびG期における細胞に作用し、DNA鎖の切断を引き起こす。鎖の切断が蓄積され、続いて細胞死が生じる。エピポドフィロトキシンの例には、以下に限定されないが、エトポシドおよびテニポシドが含まれる。
【0057】
エトポシド、すなわち4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−エチリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射剤またはカプセル剤として、VePESID(登録商標)として市販されており、またVP−16として一般に公知である。エトポシドは、睾丸癌および非小細胞肺癌の治療において、単剤としてまたは他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制は、エトポシドの最も一般的な副作用である。白血球減少の発生率は、血小板減少よりも深刻となる傾向がある。
【0058】
テニポシド、すなわち4’−デメチル−エピポドフィロトキシン9[4,6−0−(R)−テニリデン−β−D−グルコピラノシド]は、注射剤として、VUMON(登録商標)として市販されており、またVM−26として一般に公知である。テニポシドは、小児における急性白血病の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制は、テニポシドの最も一般的な用量制限副作用である。テニポシドは、白血球減少と血小板減少の両方を誘発する恐れがある。
【0059】
代謝拮抗癌剤は、DNA合成を阻害することによって、またはプリンもしくはピリミジン塩基合成を阻害することによって、細胞周期のS期(DNA合成)に作用し、これによりDNA合成を制限する、周期特異性抗癌剤である。その結果、S期が進まず、その後細胞死が生じる。代謝拮抗癌剤の例には、以下に限定されないが、フルオロウラシル、メトトレキセート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、およびゲムシタビンが含まれる。
【0060】
5−フルオロウラシル、すなわち5−フルオロ−2,4−(1H,3H)ピリミジンジオンは、フルオロウラシルとして市販されている。5−フルオロウラシルの投与により、チミジル酸合成の阻害が生じ、それがRNAとDNAの両方に組み込まれる。この結果は、通常、細胞死である。5−フルオロウラシルは、胸部、結腸、直腸、胃および膵臓の癌の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制および粘膜炎は、5−フルオロウラシルの用量制限副作用である。他のフルオロピリミジンアナログには、5−フルオロデオキシウリジン(フロクスウリジン)および5−フルオロデオキシウリジンモノホスフェートが含まれる。
【0061】
シタラビン、すなわち4−アミノ−1−β−D−アラビノフラノシル−2(1H)−ピリミジノンは、CYTOSAR−U(登録商標)として市販されており、Ara−Cとして一般に公知である。シタラビンは、成長中のDNA鎖へのシタラビンの末端取り込みによりDNA鎖の伸長が阻害されることによって、S期において細胞周期特異性を示すと考えられている。シタラビンは、急性白血病の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。他のシチジンアナログには、5−アザシチジンおよび2’,2’−ジフルオロデオキシシチジン(ゲムシタビン)が含まれる。シタラビンは、白血球減少、血小板減少、および粘膜炎を誘発する。
【0062】
メルカプトプリン、すなわち1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオン一水和物は、PURINETHOL(登録商標)として市販されている。メルカプトプリンは、現在のところいまだ特定されていない機序によりDNA合成を阻害することによって、S期において細胞周期特異性を示す。メルカプトプリンは、急性白血病の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制および胃腸粘膜炎は、高用量のメルカプトプリンの副作用であることが予期される。有用なメルカプトプリンアナログは、アザチオプリンである。
【0063】
チオグアニン、すなわち2−アミノ−1,7−ジヒドロ−6H−プリン−6−チオンは、TABLOID(登録商標)として市販されている。チオグアニンは、現在のところいまだ特定されていない機序によりDNA合成を阻害することによって、S期において細胞周期特異性を示す。チオグアニンは、急性白血病の治療において、単剤として、または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。白血球減少、血小板減少、および貧血を含めた、骨髄抑制は、チオグアニン投与の最も一般的な用量制限副作用である。しかし、胃腸の副作用が起こり、用量を制限し得る。他のプリンアナログには、ペントスタチン、エリスロヒドロキシノニルアデニン、フルダラビンホスフェート、およびクラドリビンが含まれる。
【0064】
ゲムシタビン、すなわち2’−デオキシ−2’,2’−ジフルオロシチジン一塩酸塩(β−異性体)は、GEMZAR(登録商標)として市販されている。ゲムシタビンは、S期において細胞周期特異性を示し、これは、G1/S境界において細胞の進行を阻止することによる。ゲムシタビンは、局所進行性非小細胞肺癌の治療においてシスプラチンと組み合わせて、および局所進行性膵臓癌の治療において単独で適用される。白血球減少、血小板減少、および貧血を含めた、骨髄抑制は、ゲムシタビン投与の最も一般的な用量制限副作用である。
【0065】
メトトレキセート、すなわちN−[4[[(2,4−ジアミノ−6−プテリジニル)メチル]メチルアミノ]ベンゾイル]−L−グルタミン酸は、メトトレキセートナトリウムとして市販されている。メトトレキセートは、プリンヌクレオチドおよびチミジル酸の合成に必要とされるジヒドロ葉酸レダクターゼ(dyhydrofolic acid reductase)の阻害により、DNA合成、修復および/または複製を阻害することによって、S期において特異的に、細胞周期作用を示す。メトトレキセートは、絨毛癌、髄膜白血病、非ホジキンリンパ腫、ならびに胸部、頭部、頸部、卵巣および膀胱の癌の治療において、単剤または他の化学療法剤と組み合わせて適用される。骨髄抑制(白血球減少、血小板減少、および貧血)および粘膜炎は、メトトレキセート投与の予期される副作用である。
【0066】
トポイソメラーゼI阻害剤として、カンプトテシンおよびカンプトテシン誘導体を含むカンプトテシンが入手可能であるか、または開発中である。カンプトテシンの細胞毒性活性は、そのトポイソメラーゼI阻害活性に関連すると考えられている。カンプトテシンの例には、以下に限定されないが、イリノテカン、トポテカン、および以下に記載する7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20−カンプトテシンの様々な光学形態が含まれる。
【0067】
イリノテカンHCl、すなわち(4S)−4,11−ジエチル−4−ヒドロキシ−9−[(4−ピペリジノピペリジノ)カルボニルオキシ]−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14(4H,12H)−ジオン塩酸塩は、注射剤のCAMPTOSAR(登録商標)として市販されている。
【0068】
イリノテカンは、その活性代謝産物であるSN−38と共にトポイソメラーゼI−DNA複合体に結合するカンプトテシンの誘導体である。細胞毒性は、トポイソメラーゼI:DNA:イリノテカンまたはSN−38三成分複合体と複製酵素との相互作用によって引き起こされる修復不可能な二重鎖切断の結果として起こると考えられている。イリノテカンは、結腸または直腸の転移性癌の治療に適用される。イリノテカンHClの用量制限副作用は、好中球減少を含む骨髄抑制、および下痢を含むGI作用である。
【0069】
トポテカンHCl、すなわち(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル]−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’,6,7]インドリジノ[1,2−b]キノリン−3,14−(4H,12H)−ジオン一塩酸塩は、注射剤のHYCAMTIN(登録商標)として市販されている。トポテカンは、トポイソメラーゼI−DNA複合体に結合してDNA分子のねじれ歪みに応答するトポイソメラーゼIによって引き起こされる一本鎖切断の再ライゲーションを防ぐカンプトテシンの誘導体である。トポテカンは、卵巣の転移性癌および小細胞肺癌の第2選択治療に適用される。トポテカンHClの用量制限副作用は、骨髄抑制、主に好中球減少である。
【0070】
同様に、7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R,S)−カンプトテシン(ラセミ体混合物)または7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(R)−カンプトテシン(R鏡像異性体)または7−(4−メチルピペラジノ−メチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン(S鏡像異性体)という化学名により公知の、以下の式Aのカンプトテシン誘導体(ラセミ混合物(R,S)形態、およびRとSの鏡像異性体を含む)
【0071】
【化2】

も、興味深い。こうした化合物および関連化合物は、作製方法を含め、米国特許第6,063,923号、同第5,342,947号、同第5,559,235号、および同第5,491,237号において記載されている。
【0072】
ホルモンおよびホルモンアナログは、ホルモンと、癌の増殖および/または増殖の欠如との間に関係性のある癌を治療するのに有用な化合物である。癌治療に有用なホルモンおよびホルモンアナログの例には、以下に限定されないが、小児における悪性リンパ腫および急性白血病の治療に有用なプレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイド、エストロゲン受容体を含む副腎皮質癌およびホルモン依存性乳癌の治療に有用な、アナストロゾール、レトラゾール、ボラゾール、およびエキセメスタンなどのアミノグルテチミドおよび他のアロマターゼ阻害剤、ホルモン依存性乳癌および子宮内膜癌の治療に有用な酢酸メゲストロールなどのプロゲストリン、前立腺癌および良性の前立腺肥大の治療に有用な、エストロゲン、アンドロゲン、ならびにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、酢酸シプロテロンおよび、フィナステリドおよびデュタステリドなどの、5α−レダクターゼなどの抗アンドロゲン剤、ホルモン依存性乳癌および他の発症しやすい癌の治療に有用な、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェンなどの抗エストロゲン剤、ならびに米国特許第5,681,835号、同第5,877,219号、および同第6,207,716号に記載されているものなどの選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMS)、ならびに前立腺癌の治療のための黄体形成ホルモン(leutinizing hormone)(LH)および/または卵胞刺激ホルモン(FSH)の放出を刺激する生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)およびそのアナログ、例えば、酢酸ゴセレリンおよびルプロリドなどのLHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(antagagonist)が含まれる。
【0073】
シグナル伝達経路阻害剤は、細胞内の変化を誘発する化学過程を阻止または阻害する阻害剤である。本明細書で使用する場合、この変化は、細胞増殖または分化である。本発明において有用なシグナル伝達(tranduction)経路阻害剤には、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ、SH2/SH3ドメイン遮断薬、セリン/トレオニンキナーゼ、ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ、ミオイノシトールシグナル伝達、およびRas発癌遺伝子の阻害剤が含まれる。
【0074】
いくつかのタンパク質チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与する様々なタンパク質において、特定のチロシル残基のリン酸化反応を触媒する。そのようなタンパク質チロシンキナーゼは、受容体または非受容体キナーゼとして、広く分類することができる。
【0075】
受容体チロシンキナーゼは、細胞外リガンド結合ドメイン、膜貫通ドメイン、およびチロシンキナーゼドメインを有する、膜貫通タンパク質である。受容体チロシンキナーゼは、細胞増殖の調節に関与しており、一般に成長因子受容体と称される。例えば、過剰発現または変異により、これらのキナーゼの多くの不適切または制御されない活性化、すなわち異常なキナーゼ成長因子受容体活性により、細胞増殖が制御されないことが示されている。したがって、そのようなキナーゼの異常活性は、悪性の組織増殖にリンクする。したがって、そのようなキナーゼの阻害剤は、癌治療方法を提供することができる。成長因子受容体には、例えば、上皮成長因子受容体(EGFr)、血小板由来成長因子受容体(PDGFr)、erbB2、erbB4、血管内皮細胞成長因子受容体(VEGFr)、免疫グロブリン様および上皮成長因子相同性ドメインを有するチロシンキナーゼ(tyrosine kinase with immunoglobulin-like and epidermal growth factor homology domain)(TIE−2)、インスリン成長因子−I(IGFI)受容体、マクロファージコロニー刺激因子(cfms)、BTK、ckit、cmet、線維芽細胞成長因子(FGF)受容体、Trk受容体(TrkA、TrkB、およびTrkC)、エフリン(eph)受容体、およびRET癌原遺伝子が含まれる。成長受容体の阻害剤のいくつかは開発中であり、リガンドアンタゴニスト、抗体、チロシンキナーゼ阻害剤、およびアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。成長因子受容体機能を阻害する成長因子受容体および薬剤は、例えば、Kath, John C.、Exp. Opin. Ther. Patents (2000年)10巻(6号)、803〜818頁、Shawverら、DDT、2巻、2号、1997年2月、およびLofts, F. J.ら「Growth factor receptors as targets」、New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy、Workman, PaulおよびKerr, David(編)、CRC press 1994年、Londonにおいて記載されている。
【0076】
成長因子受容体キナーゼではないチロシンキナーゼは、非受容体チロシンキナーゼと称される。抗癌薬物の標的または潜在的な標的となる、本発明において使用される非受容体チロシンキナーゼには、cSrc、Lck、Fyn、Yes、Jak、cAbl、FAK(焦点接着キナーゼ)、ブルトン型チロシンキナーゼ、およびBcr−Ablが含まれる。非受容体チロシンキナーゼ機能を阻害する、このような非受容体キナーゼおよび薬剤は、Sinh,SおよびCorey, S.J.、(1999年)Journal of Hematotherapy and Stem Cell Research 8巻(5号)、465〜80頁、およびBolen, J. B.、Brugge, J. S.、(1997年)Annual review of Immunology.、15巻、371〜404頁において記載されている。
【0077】
SH2/SH3ドメイン遮断薬は、PI3−K p85サブユニット、Srcファミリーキナーゼ、アダプター分子(Shc、Crk、Nck、Grb2)、およびRas−GAPを含む、様々な酵素またはアダプタータンパク質における、SH2またはSH3ドメイン結合を撹乱する薬剤である。抗癌薬の標的としてのSH2/SH3ドメインは、Smithgall, T.E.(1995年)、Journal of Pharmacological and Toxicological Methods. 34巻(3号)、125〜32頁において議論されている。
【0078】
MAPキナーゼカスケード遮断薬を含むセリン/トレオニンキナーゼの阻害剤は、Rafキナーゼ(rafk)、マイトジェンまたは細胞外調節キナーゼ(MEK)、および細胞外調節キナーゼ(ERK)の遮断薬;PKC(アルファ、ベータ、ガンマ、イプシロン、ミュー、ラムダ、イオタ、ゼータ)の遮断薬を含むタンパク質キナーゼCファミリーメンバーの遮断薬を含む。IkBキナーゼファミリー(IKKa、IKKb)、PKBファミリーキナーゼ、aktキナーゼのファミリーメンバー、PDK1、およびTGFベータ受容体キナーゼ。こうしたセリン/トレオニンキナーゼおよびその阻害剤は、Yamamoto,T.、Taya,S.、Kaibuchi,K.(1999年)、Journal of Biochemistry.126巻(5号)799〜803頁、Brodt, P、 Samani, A.およびNavab, R.(2000年)、Biochemical Pharmacology、60巻、1101〜1107頁、Massague, J.、Weis-Garcia, F.(1996年)、Cancer Surveys.27巻、41〜64頁、Philip, P. A.およびHarris, A. L.(1995年)、Cancer Treatment and Research.78巻、3〜27頁、Lackey, K.ら、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters、(10巻)、2000年、223〜226頁、米国特許第6,268,391号、Pearce, L. Rら、Nature Reviews Molecular Cell Biology(2010年)、11巻、9〜22頁、ならびにMartinez-Iacaci, L.ら、Int. J. Cancer(2000年)88巻(1号)、44〜52頁に記載されている。
【0079】
好適には、本発明の医薬活性化合物は、B−Raf阻害剤と組み合わせて使用される。好適には、N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドまたは薬学的に許容されるその塩が、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、国際出願日が2009年5月4日である国際出願番号PCT/US2009/042682において開示され、特許請求されている。N−{3−[5−(2−アミノ−4−ピリミジニル)−2−(1,1−ジメチルエチル)−1,3−チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル}−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドは、国際出願番号PCT/US2009/042682において記載されている通り、調製することができる。
【0080】
好適には、本発明の医薬活性化合物は、Akt阻害剤と組み合わせて使用される。好適には、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−4−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−2−フランカルボキサミドまたは薬学的に許容されるその塩は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、国際出願日が2008年2月7日、国際公開番号WO2008/098104、および国際公開日が2008年8月14日である国際出願番号PCT/US2008/053269に開示され、特許請求されている。N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3,4−ジフルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−4−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−2−フランカルボキサミドは、国際出願番号PCT/US2008/053269中の実施例224の化合物であり、これに記載されている通り、調製することができる。
【0081】
好適には、本発明の医薬活性化合物は、Akt阻害剤と組み合わせて使用される。好適には、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−4−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−2−チオフェンカルボキサミドまたは薬学的に許容されるその塩は、その全開示が参照により本明細書に組み込まれている、国際出願日が2008年2月7日、国際公開番号WO2008/098104、国際公開日が2008年8月14日である国際出願番号PCT/US2008/053269に開示され、特許請求されている。N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−4−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−2−チオフェンカルボキサミドは、国際出願番号PCT/US2008/053269中の実施例96の化合物であり、そこに記載されている通り調製することができる。好適には、N−{(1S)−2−アミノ−1−[(3−フルオロフェニル)メチル]エチル}−5−クロロ−4−(4−クロロ−1−メチル−1H−ピラゾール−5−イル)−2−チオフェンカルボキサミドは、塩酸塩の形態にある。この塩の形態は、国際出願日が2010年1月28日である国際出願番号PCT/US2010/022323における説明から、当業者により調製することができる。
【0082】
PI3−キナーゼ、ATM、DNA−PK、およびKuの遮断薬を含めたホスファチジルイノシトール−3キナーゼのファミリーメンバーの阻害剤も本発明において有用であり得る。このようなキナーゼは、Abraham, R. T.(1996年)、Current Opinion in Immunology.8巻(3号)412〜8頁、Canman, C. E.、Lim, D. S.(1998年)、Oncogene 17巻(25号)3301〜3308頁、Jackson, S. P.(1997年)、International Journal of Biochemistry and Cell Biology.29巻(7号)、935〜8頁、およびZhong,H.ら、Cancer res、(2000年)60巻(6号)、1541〜1545頁において議論されている。
【0083】
ホスホリパーゼC遮断薬およびミオイノシトールアナログなどのミオイノシトールシグナル伝達阻害剤も本発明において興味深い。このようなシグナル阻害剤は、Powis, G.およびKozikowski A.(1994年)New Molecular Targets for Cancer Chemotherapy、Paul WorkmanおよびDavid Kerr(編)、CRC press 1994年、Londonに記載されている。
【0084】
別の群のシグナル伝達経路阻害剤は、Ras発癌遺伝子の阻害剤である。このような阻害剤には、ファルネシルトランスフェラーゼ、ゲラニル−ゲラニルトランスフェラーゼ、およびCAAXプロテアーゼの阻害剤、ならびにアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムおよび免疫療法が含まれる。このような阻害剤は、野生型変異体rasを含有する細胞においてras活性化を遮断し、これにより抗増殖剤として作用することが示されている。Ras発癌遺伝子の阻害は、Scharovsky, O. G.、Rozados, V. R.、Gervasoni, S. I. Matar, P.(2000年)、Journal of Biomedical Science.7巻(4号)、292〜8頁、Ashby, M. N.(1998年)、Current Opinion in Lipidology.9巻(2号)、99〜102頁、およびBioChim. Biophys. Acta、(19899)、1423巻(3号)、19〜30頁において議論されている。
【0085】
上記の通り、受容体キナーゼリガンド結合に対する抗体アンタゴニストは、シグナル伝達阻害剤としての役割も果たし得る。この群のシグナル伝達経路阻害剤には、受容体チロシンキナーゼの細胞外リガンド結合ドメインに対するヒト化抗体の使用が含まれる。例えばImclone C225 EGFR特異的抗体(Green, M. C.ら、Monoclonal Antibody Therapy for Solid Tumors、Cancer Treat. Rev.、(2000年)26巻(4号)、269〜286頁を参照されたい)、Herceptin(登録商標)erbB2抗体、および2CB VEGFR2特異的抗体(Brekken, R. A.ら、Selective Inhibition of VEGFR2 Activity by a monoclonal Anti-VEGF antibody blocks tumor growth in mice、Cancer Res.(2000年)60巻、5117〜5124頁を参照されたい)である。
【0086】
非受容体キナーゼ血管新生阻害剤も、本発明において有用となり得る。血管新生に関連するVEGFRおよびTIE2の阻害剤は、シグナル伝達阻害剤(受容体の両方とも受容体チロシンキナーゼである)に関して上で議論されている。erbB2およびEGFRの阻害剤は、血管新生、主にVEGF発現を阻害することが示されているので、血管新生は、一般に、erbB2/EGFRシグナル伝達にリンクしている。したがって、非受容体チロシンキナーゼ阻害剤は、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる。例えば、VEGFR(受容体チロシンキナーゼ)を認識しないが、リガンドに結合する抗VEGF抗体、血管新生を阻害するインテグリン(アルファ ベータ)の低分子阻害剤、エンドスタチンおよびアンジオスタチン(非RTK)も、開示化合物と組み合わせると有用であることを証明することができる。
【0087】
免疫療法レジメンにおいて使用される薬剤も、式(I)の化合物と組み合わせて有用となり得る。免疫応答を生じさせる、いくつかの免疫学的戦略が存在する。これらの戦略は、一般に、腫瘍ワクチン接種の領域にある。免疫学的手法の有効性は、低分子阻害剤を使用する、シグナル伝達経路との組合せ阻害によって、非常に増強されることがある。erbB2/EGFRに対する免疫学的/腫瘍ワクチン手法の議論は、Reilly RTら、(2000年), Cancer Res. 60巻: 3569〜3576頁、およびChen Y, Hu D, Eling DJ, Robbins J, and Kipps TJ. (1998年), Cancer Res. 58巻: 1965〜1971頁に見いだされる。
【0088】
アポトーシス促進レジメンで使用される薬剤(例えば、bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチド)も、本発明の組合せにおいて使用することができる。タンパク質のBcl−2のファミリーメンバーは、アポトーシスを遮断する。したがって、bcl−2の上方調節は、化学療法抵抗性にリンクしている。研究により、上皮成長因子(EGF)が、bcl−2のファミリーの抗アポトーシス性メンバー(すなわち、mcl−1)を刺激することが示された。したがって、腫瘍におけるbcl−2の発現を下方調節するよう設計された戦略は、臨床的利益を示し、すなわち、これはGenta’s G3139 bcl−2アンチセンスオリゴヌクレオチドである。bcl−2に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド戦略を用いるこのようなアポトーシス促進戦略は、Water JSら(2000年), J. Clin. Oncol. 18巻: 1812〜1823頁、およびKitada Sら(1994年), Antisense Res. Dev. 4巻:71〜79頁において議論されている。
【0089】
細胞周期シグナル伝達阻害剤は、細胞周期の制御に関与する分子を阻害する。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)と呼ばれるタンパク質キナーゼのファミリー、およびそれらとサイクリンと呼ばれるタンパク質のファミリーとの相互作用は、真核細胞周期の進行を制御する。異なるサイクリン/CDK複合体の協調的な活性化および不活化は、細胞周期の正常な進行にとって必要である。細胞周期シグナル伝達の阻害剤がいくつか開発中である。例えば、CDK2、CDK4、およびCDK6を含めたサイクリン依存性キナーゼ、およびそれらに関する阻害剤の例は、例えば、Rosaniaら、Exp. Opin. Ther. Patents(2000年)10巻(2号)、215〜230頁に記載されている。さらに、p21 WAF1/CIP1は、サイクリン依存性キナーゼ(Cdk)の強力かつ普遍的な阻害剤として記載されている(Ballら、Progress in Cell Cycle Res., 3巻: 125号(1997年))。p21 WAF1/CIP1の発現を誘発することが知られている化合物は、細胞増殖の抑制、および腫瘍抑制活性を有するものとして関与し(Richonら、Proc. Nat Acad. Sci. U.S.A. 97巻(18号): 10014〜10019頁(2000年))、細胞周期シグナル伝達阻害剤として含まれる。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、p21WAF1/CIP1(Vigushinら、Anticancer Drugs, 13巻(1号): 1〜13頁(2002年1月))の転写活性化に関与し、本明細書において使用される適切な細胞周期シグナル伝達阻害剤である。
【0090】
そのようなHDAC阻害剤の例には、以下が含まれる。
1.ボリノスタット(薬学的に許容されるその塩を含む)。Marksら、Nature Biotechnology 25巻, 84〜90頁(2007年); Stenger, Community Oncology 4巻, 384〜386頁(2007年)。
【0091】
ボリノスタットは、以下の化学構造および名称
【0092】
【化3】

を有する。
【0093】
2.ロミデプシン(薬学的に許容されるその塩を含む)。Vinodhkumarら、Biomedicine&Pharmacotherapy 62巻(2008年) 85〜93頁。
【0094】
ロミデプシンは、以下の化学構造および名称
【0095】
【化4】

を有する。
【0096】
3.パノビノスタット(薬学的に許容されるその塩を含む)。Drugs of the Future 32巻(4号): 315〜322頁(2007年)。
【0097】
パノビノスタットは、以下の化学構造および名称
【0098】
【化5】

を有する。
【0099】
4. バルプロ酸(薬学的に許容されるその塩を含む)。Gottlicherら、EMBO J.20巻(24号):6969〜6978頁(2001年)。
【0100】
バルプロ酸は、以下の化学構造および名称
【0101】
【化6】

を有する。
【0102】
5. モセチノスタット(MGCD0103)(薬学的に許容されるその塩を含む)。Balasubramanianら、Cancer Letters 280巻:211〜221頁(2009年)。
【0103】
モセチノスタットは、以下の化学構造および名称
【0104】
【化7】

を有する。
【0105】
こうしたHDAC阻害剤のさらなる例は、Bertrand European Journal of Medicinal Chemistry 45巻, (2010年) 2095〜2116頁、特に、以下に示されている通り、その中の表3の化合物に含まれている。
【0106】
【表A】
【0107】
プロテアソーム阻害剤は、p53タンパク質のような、タンパク質を破壊する細胞複合体である、プロテアソームの作用を遮断する薬物である。いくつかのプロテアソーム阻害剤が市販されているか、または癌の治療において研究中である。本明細書において使用するのに適したプロテアソーム阻害剤には、以下が含まれる。
1.ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))(薬学的に許容されるその塩を含む)。Adams J, Kauffman M (2004年), Cancer Invest 22巻(2号): 304〜11頁。
【0108】
ボルテゾミブは、以下の化学構造および名称
【0109】
【化8】

を有する。
【0110】
2.ジスルフィラム(薬学的に許容されるその塩を含む)。Boumaら(1998年)。J.Antimicrob. Chemother. 42巻(6号):817〜20頁。
【0111】
ジスルフィラムは、以下の化学構造および名称
【0112】
【化9】

を有する。
【0113】
3.エピガロカテキンガレート(EGCG)(薬学的に許容されるその塩を含む)。Williamsonら、(2006年12月)、The Journal of Allergy and Clinical Immunology 118巻(6号):1369〜74頁。
【0114】
エピガロカテキンガレートは、以下の化学構造および名称
【0115】
【化10】

を有する。
【0116】
4.サリノスポラミドA(薬学的に許容されるその塩を含む)。Felingら(et at)、(2003年), Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 42巻(3号): 355〜7頁。
【0117】
サリノスポラミドA、以下の化学構造および名称
【0118】
【化11】

を有する。
【0119】
癌代謝の阻害剤−多くの腫瘍細胞は、正常組織のそれとは著しく異なる代謝を示す。例えば、グルコースをピルビン酸に変換する代謝過程である糖分解の速度が向上し、生成ピルビン酸は、トリカルボン酸(TCA)サイクルを経て、ミトコンドリア中でさらに酸化されるよりも、乳酸に還元される。この効果は、好気性条件下でさえ見られることが多く、ワールブルク効果として知られている。
【0120】
筋肉細胞において発現されるラクテートデヒドロゲナーゼのアイソフォームである、ラクテートデヒドロゲナーゼA(LDH−A)は、ピルビン酸から乳酸への還元を行うことにより、腫瘍細胞の代謝において極めて重要な役割を果たしており、この乳酸は、次に、細胞から運び出される。酵素は、多くの腫瘍タイプにおいて、上方調節されることが示されている。ワールブルク効果において記載されているグルコース代謝の変化は、癌細胞の成長および増殖にとって重要であり、RNAiを使用してLDH−Aをノックダウンすることにより、異種移植片モデルにおいて、細胞増殖および腫瘍成長の低下をもたらすことが示された。
【0121】
D. A. Tennantら、Nature Reviews、2010年、267頁。
P. Lederら、Cancer Cell、2006年、9巻、425頁。
【0122】
LDH−Aの阻害剤を含む、癌代謝の阻害剤は、本発明の製剤と組み合わせて使用するのに適している。
【0123】
可溶化剤、界面活性剤、緩衝剤、保存剤、甘味剤、および香料の例は、当技術分野において理解されており、こうした構成要素は、一般に、例えば、Martindale-The Extra Pharmacopoeia Pharmaceutical Press, London (1993年)、およびMartin (編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、およびHandbook of Pharmaceutical Excipientsに記載されている。
【0124】
本明細書で使用する場合、「可溶化剤」とは、薬物を溶液中に均質に分散および溶解しているのを維持する一助となる、物質(液体または固体)である。可溶化剤は、溶液から溶解している薬物が再結晶化および沈殿するのを防止する。本発明において使用する場合、適切な可溶化剤には、以下に限定されないが、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン(Captisol)およびヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン(Cavitron)が含まれる。可溶化剤の組合せも、使用することができる。例えば、ヒプロメロースおよびヒドロキシプロピルB−シクロデキストリンは、化合物Aの良好な水溶解度を与えた。ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールは、これらの可溶化剤中では、化合物Aの水溶解度が非常に低いことにより、欠点があることがわかった。好適には、本発明による製剤中の可溶化剤の量は、最終生成物の約30〜95重量%、好適には約50〜80重量%、好適には約65〜75重量%から選択されよう。好適には、本発明による製剤中の可溶化剤の量は、最終生成物の約30重量%、好適には約35重量%、好適には約40重量%、好適には約45重量%、好適には約50重量%、好適には約55重量%、好適には約60重量%、好適には約65重量%、好適には約70重量%、好適には約75重量%、好適には約80重量%、好適には約85重量%、好適には約90重量%、および好適には約95重量%から選択されよう。
【0125】
本明細書で使用する場合、「界面活性剤」とは、液体の表面張力、2種の液体間の界面張力、および液体と固体の間の界面張力を低下させる表面活性剤であり、これにより、薬物粒子の湿潤性が高まり、溶解が一層容易になる。例えば、適切な界面活性剤には、以下に限定されないが、ヒプロメロース(HPMC)、ポリソルベート80、ポリソルベート20、およびラウリル硫酸ナトリウム(SLS)が含まれる。好ましい界面活性剤はヒプロメロースであり、なぜなら、この場合、界面活性剤と可溶化剤の両方として作用することが見いだされているからである。好適には、本発明による製剤中の界面活性剤の量は、最終生成物の約0〜5重量%、好適には約0.5〜4重量%、好適には約0.5〜2重量%から選択されよう。好適には、存在する場合、本発明による製剤中の界面活性剤の量は、最終生成物の約0.5重量%、好適には約1重量%、好適には約1.5重量%から選択されよう。
【0126】
本明細書で使用する場合、「緩衝剤」とは、少量の酸または塩基の添加によるpH変化を阻止するために使用される、弱酸とその共役塩基、または弱塩基とその共役酸の混合物である。本明細書において使用するのに適した緩衝剤には、クエン酸一水和物、および無水第二リン酸ナトリウム、またはそれらの組合せが含まれる。好適には、本発明による製剤中の緩衝剤の総量は、最終生成物の約5〜25重量%、好適には約8〜20重量%、好適には約10〜20重量%から選択されよう。好適には、本発明による製剤中の緩衝剤の総量は、最終生成物約5重量%、好適には約10重量%、好適には約15重量%、好適には約20重量%から選択されよう。
【0127】
本明細書で使用する場合、「保存剤」とは、液体製剤中の細菌および/または真菌の増殖を予防するために使用される。例えば、適切な保存剤には、以下に限定されないが、パラベン(メチル、エチル、プロピル、およびブチル)、パラベンナトリウム塩、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、およびソルビン酸が含まれる。好適には、本発明による製剤中の保存剤の総量は、最終生成物の約0.5〜4重量%、好適には約1〜3重量%、好適には約1〜2.5重量%から選択されよう。好適には、本発明による製剤中の保存剤の総量は、最終生成物の約0.5重量%、好適には約1重量%、好適には約1.5重量%、好適には約2重量%から選択されよう。
【0128】
本明細書で使用する場合、「甘味剤」とは、製剤の嗜好性を改善するために使用される物質(固体または液体)である。例えば、適切な甘味剤には、以下に限定されないが、xylitab、キシリトール、マンニトール、スクロース、スクラロース、サッカリン、グリセリリチン酸アンモニウムおよびグリセリリチン酸ナトリウム(ammonium and sodium glyceryrhizinate)、アスパルテーム、およびソルビトールが含まれる。好適には、本発明による製剤中の甘味剤の量は、最終生成物の約5〜25重量%、好適には約8〜20重量%、好適には約10〜20重量%から選択されよう。好適には、本発明による製剤中の甘味剤の量は、最終生成物の約5重量%、好適には約10重量%、好適には約15重量%、好適には約20重量%から選択されよう。
【0129】
本明細書で使用する場合、「香料」とは、製剤に別個の味および芳香をもたらす物質(液体または固体)である。香料は、製剤の嗜好性を改善する一助にもなる。好適には、香料はストロベリー香料である。好適には、本発明による製剤中の香料の量は、最終生成物の約0.5〜4重量%、好適には約1〜3重量%、好適には約1〜2.5重量%から選択されよう。好適には、本発明による製剤中の香料の量は、最終生成物の約0.5重量%、好適には約1重量%、好適には約1.5重量%、好適には約2重量%から選択されよう。
【0130】
本明細書で使用する場合、「ビヒクル」とは、粉末剤を経口懸濁液または溶液に再構成するために使用される液体である。ビヒクルは、製剤と相溶することが必要であり、その結果、安定性を得て維持することができる。例えば、適切なビヒクルには、以下に限定されないが、精製水、注射用滅菌水、および灌注用滅菌水が含まれる。一実施形態によれば、ビヒクルは、精製水または滅菌水である。
【0131】
トラメチニブの溶解度
ヒドロキシプロピルB−シクロデキストリン(Cavitron)、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリン(Captisol)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびプロピレングリコール製剤に添加したトラメチニブの水溶解度を、図1に示す。Cavitronは、最も溶解度が高く、次いでcaptisolである。トラメチニブは、PEGまたはプロピレングリコール溶液では、一般に可溶性を示さなかった。
【0132】
トラメチニブの濃度
トラメチニブの溶解度に対するcavitronの濃度および時間の影響を図2に示す。この実験では、トラメチニブの初期濃度は1mg/mLであり、5日後のトラメチニブ濃度は、初期濃度の約7〜10%に低下している。図2の結果は、化合物Bの開始濃度が約0.05mg/mLである場合、その中で利用される条件下では、かなりの量の薬物が溶液から沈殿することはないことを示している。
【0133】
HPMCの添加
図3は、cavitron溶液中にHPMCを存在させることにより、溶液からのトラメチニブの沈殿が阻害され、トラメチニブ溶液の安定性が増加することを示す。
【0134】
トラメチニブの溶解度プロファイル
図4は、時間の関数としての、cavitronおよびcaptisol溶液中のトラメチニブの溶解度プロファイルを示す。いずれの可溶化剤も、25℃および相対湿度60%の保存条件において、30日間、溶解度を維持し、かつ該溶液を安定化することができた。
【0135】
続いて、抗菌性の有効性試験により、トラメチニブの存在下、cavitronは、真菌(かび)の増殖を促進し、菌安定性のために、一層高いレベルの保存剤が必要であることを示した。
【0136】
香料
トラメチニブの味は、苦いものとされている。溶液製剤の味覚認識は、Astree(登録商標)電子舌(e−tongue)によって評価した。この電子舌は、活性懸濁製剤とそのマッチングプラセボとの間の味の相対割り当て(relative repartition)および近接度を測定してマッピングするものである。電子舌の測定値は、主要構成要素分析(PCA)によって分析される。プラセボは、苦味活性構成要素が存在しないので、理想的な「目標」味プロファイルを表すと見なされる。したがって、苦味のマスキングまたは味の近接度は、PCAマップ上の活性製剤とプラセボ製剤との間のユークリッド距離を用いて定量化され、距離がより短いことは、マスキングが上手に行われており、したがって活性剤とプラセボの電子舌「フィンガープリント」が互いにより近い香料であることを示している。識別指数(DI(%))は、各製剤ペアについて出力される検出値の重心間の差異、およびこれらの製剤について出力される検出値内のばらつきを考慮に入れる。識別指数の値が大きい(100%に近い)ほど、製剤間の類似性は低く、マスキングがそれほど行われていないことになる。
【0137】
異なる5種の香料(ストロベリー、バニラ、レモン、グレープ、およびチェリー)を、トラメチニブジメチルスルホキシド溶液製剤、およびそのマッチングプラセボ中、0.3%にて試験し、それらのマスキング効率を評価した。結果を図5に示している。すべての香料が、マスキングされていないトラメチニブジメチルスルホキシド溶液の距離を低下させたわけではなかった。具体的には、製剤4(レモン風味)および5(グレープ風味)は、距離と識別指数の両方が増加することを示し、したがって、該溶液の味のマスキングにはそれほど有効ではないと考えられる。製剤1(ストロベリー)、2(バニラ)、および6(チェリー)は、風味付けしていない製剤(F0)と比べ、より小さな距離の値および識別指数を示し、このことは、活性溶液の味が改善されたことを示している。製剤F1、F2、およびF6に関する識別指数は、20%未満であり、これら3種の製剤の味マスキング有効性に類似点があることを示唆している。これらの結果に基づくと、これらの香料は、トラメチニブジメチルスルホキシド溶液に対する味マスキング有効性の点で、バニラ>チェリー>ストロベリーとして、ランク付けすることができる。ストロベリー香料は、その高い芳香のために、追加的な利点を有する。味のヒト評価は、質問表により、相対的なバイオアベイラビリティ研究において評価し、総合的な回答は、該製剤は許容可能であり、その味は苦くはない、というものであった。
【0138】
一実施形態では、<1.0w/w%、好ましくは0.04%w/w未満のミクロン化した5N−(3−{3−シクロプロピル−5−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−1(2H)−イル}フェニル)アセトアミドジメチルスルホキシド、可溶化剤として50.0〜80.0w/w%のスルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、緩衝剤として約4.9w/w%のクエン酸および約4.2w/w%のリン酸ナトリウム、甘味剤として5.0〜15.0w/w%のスクラロース、抗菌性保存剤として0.2〜2.0w/w%のメチルパラベン、抗菌性保存剤として1.0〜3.0w/w%ソルビン酸カリウム、および1.0〜5.0w/w%のストロベリー香料からなる直接ブレンド粉末製剤が提供される。
【0139】
直接ブレンド粉末剤の構成要素は、任意の順序で、個別に、または予め混合されているブレンドの2種以上の構成要素を一緒に、混合することができる。一実施形態によれば、スルホブチルエーテルB−シクロデキストリンおよびスクラロースを混合し、他の成分と組み合わせる前に、予め混合乾燥する。一実施形態によれば、添加剤をすべて一緒に混合し、次に、活性医薬成分(API)を事前ブレンドしたミックスの中間部に置く。
【0140】
一実施形態では、5N−(3−{3−シクロプロピル−5−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−1(2H)−イル}フェニル)アセトアミドジメチルスルホキシド、可溶化剤としてスルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、緩衝剤としてクエン酸およびリン酸ナトリウム、抗菌性保存剤としてメチルパラベンおよびソルビン酸カリウム、甘味剤としてスクラロース、ストロベリー香料、および水を含む、経口液剤が提供される。
【0141】
一実施形態では、5N−(3−{3−シクロプロピル−5−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−1(2H)−イル}フェニル)アセトアミドジメチルスルホキシド、可溶化剤としてスルホブチルエーテルB−シクロデキストリン、緩衝剤としてクエン酸およびリン酸ナトリウム、可溶化剤および界面活性剤としてヒプロメロース、抗菌性保存剤としてメチルパラベンおよびソルビン酸カリウム、甘味剤としてスクラロース、ストロベリー香料、および水を含む、経口液剤が提供される。
【0142】
本発明の経口液剤のための粉末剤(POS)は、例えば、上記で参照されている国際出願番号PCT/JP2005/011082および米国特許公開番号US2006/0014768において記載されている、疾患状態を治療または予防するために、治療有効量で投与することができる。
【0143】
ヒトにおいてMEK活性を阻害する本発明の方法は、こうした活性を必要とする対象に、治療有効量の本発明の直接ブレンド粉末製剤を投与するステップを含む。
【0144】
本発明は、本発明の直接ブレンド粉末製剤の製造における、化合物Aの使用も提供する。
【0145】
本発明は、癌の治療に使用するための、本発明の直接ブレンド粉末製剤の製造における、化合物Aの使用も提供する。
【0146】
本発明は、MEKの阻害に使用するための、本発明の直接ブレンド粉末製剤の製造における、化合物Aの使用も提供する。
【0147】
本発明は、化合物Aおよび本発明の薬学的に許容される担体を含む、MEK阻害剤として使用するための直接ブレンド粉末製剤も提供する。
【0148】
本発明は、化合物Aおよび本発明の薬学的に許容される担体を含む、癌の治療に使用するための直接ブレンド粉末製剤も提供する。
【0149】
本発明は、化合物Aおよび本発明の薬学的に許容される担体を含む、MEK阻害に使用するための直接ブレンド粉末製剤も提供する。
【0150】
当業者は、さらなる詳細な説明がなくとも、上記の説明を使用し、本発明をその最も完全な程度に利用することができると思われる。したがって、以下の実施例は、単なる例示と解釈され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0151】
本明細書において利用される添加剤はすべて、当業者に周知の様々な製造業者から入手可能な、標準的な医薬グレードの添加剤である。
【実施例】
【0152】
本明細書で使用する場合、これらの過程、スキーム、および実施例において使用される記号および規則は、現代の科学文献、例えば、Journal of the American Chemical SocietyまたはJournal of Biological Chemistryにおいて使用されているものと一致する。特に示さない限り、温度はすべて、℃(摂氏)で表される。
【0153】
実施例1
製剤調製
(i)再構成用製剤に関するトラメチニブ粉末ブレンド(実施例、回分サイズは10,000グラム)
溶液製剤への再構成用粉末剤について、4工程の二次製造プロセスを使用し、このプロセスには、ブレンド、ミル粉砕、ブレンド、および充填が含まれる。1番目のプロセス工程はブレンドであり、このプロセスの段階中に、添加剤をすべて、20メッシュのふるいによりふるいにかけ、トラメチニブを35メッシュのふるいによりふるいにかけ、Servolift 50Lビンブレンダーなどの適切なブレンダーに移した。トラメチニブを除くすべての材料を20+/−3rpmで10分間ブレンドした。第2のプロセス工程はミル粉砕であり、この単位操作は、032C Conidurふるい(2A032C02916)を組み立てたQuadro(登録商標)Co−mil(登録商標)を2000rpmで使用し、ブレンドを砕塊(delump)し、粒度分布を狭めた。第3工程では、この粉塊した材料をブレンダーに戻し入れ、20+/−3rpmにて10分間ブレンドした。続いて、ブレンドしたミックスの中間部にトラメチニブを加えて、20+/−3rpmにて40分間ブレンドすると、薬品および添加剤の均質な分布が達成される。
【0154】
実施例1の方法により、表1に示されている以下の組成を有する組成物が得られた。
【0155】
目標量13.126グラムの粉末剤を90mLのビヒクル(滅菌水または精製水)により再構成して、化合物B)の最終濃度が0.05mg/mLとなるよう設計する。
【0156】
【表1】
【0157】
実施例2
製剤調製
表2は、実施例1と質的に同様の製剤を示している。いずれの製剤も、同一の単位操作および加工パラメータを使用して製造した。実施例2では、CaptisolをCavitronで置きかえる。
【0158】
実施例2の方法により、表2に示されている組成を有する製剤が得られた。
【0159】
【表2】
【0160】
実施例3
製剤調製
表3は、実施例1と質的に同様の製剤を示している。いずれの製剤も、同一の単位操作および加工パラメータを使用して製造した。実施例3では、CaptisolをCavitronおよびヒプロメロース(HPMC)で置きかえる。
【0161】
実施例3の方法により、表3に示されている組成を有する製剤が得られた。
【0162】
【表3】
【0163】
実施例4
製剤調製
表4は、実施例1と質的に同様の製剤を示している。いずれの製剤も、同一の単位操作および加工パラメータを使用して製造した。実施例4では、保存剤を使用せず、Captisolを5gのCavitronで置きかえる。
【0164】
実施例4の方法により、表4に示されている組成を有する製剤が得られた。
【0165】
【表4】
【0166】
本発明の好ましい実施形態は、上記によって例示されているが、本発明は本明細書において開示されている正確な指示に限定されるものではないこと、および以下の特許請求の範囲内に含まれるすべての修飾に対する権利が確保されていることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5