(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートが備えられ、側方に延在させた前記不透液性裏面シートの一部と前記サイドシートの一部とによって両側部にそれぞれ装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返して使用されるウイング状フラップが形成された吸収性物品において、
前記サイドシートは、幅方向内側が長手方向に沿って設けられた内側接合領域にて前記透液性表面シートに接合されるとともに、幅方向外側が吸収性物品の外形線に沿って設けられた外側接合領域にて不透液性裏面シートに接合され、前記内側接合領域と外側接合領域との間に該サイドシートを幅方向に折り返した折り返し部が長手方向に沿って形成されるとともに、該折り返し部が幅方向に折り畳まれ、この折り畳み部分が長手方向の両端部で該サイドシートに接合され、前記ウイング状フラップを含む長手方向の範囲において、前記内側接合領域と外側接合領域との間に前記サイドシートをいずれの部材にも接合しない非接合領域が形成され、
前記ウイング状フラップを折り返すとともに、前記吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた前記吸収性物品の装着状態で、前記非接合領域において、前記折り返し部のサイドシートが展開され、外方に膨出した中空状のクッション部が形成されるようにし、前記サイドシートには弾性伸縮部材が配設されていないことを特徴とする吸収性物品。
前記非接合領域は、吸収性物品の幅方向に対し、前記ウイング状フラップの基端より内側位置から前記ウイング状フラップにかけて連続して形成されている請求項1記載の吸収性物品。
前記非接合領域は、吸収性物品の長手方向に対し、前記ウイング状フラップの基端部より前側及び後側に長い範囲に形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品。
【背景技術】
【0002】
従来より、前記吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、体液漏れを防止するための手段が種々講じられている。これら体液漏れ防止手段の一つとして、肌当接面側の両側部に横漏れの障壁となる防漏壁を形成する技術が存在する。
【0004】
例えば、下記特許文献1では、縦方向に沿う両側部に、一対の立体ギャザーが、弾性部材を配することによって形成され、一対の前記立体ギャザーのそれぞれは、スパンボンド不織布、又はスパンボンドの層とメルトブローンの層との積層不織布の少なくとも一部を起毛しているシートを用いて形成され、前記起毛しているシートを2層以上に折り返し、折り返されたシート間に縦方向に伸長状態の1本以上の弾性部材を配して形成されている吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、段落[0050]に、サイドシート6a、6bの幅方向内側縁6c、6dは、生理用ナプキン1が着用され、着用者の足の動きによって生理用ナプキン1の中央部Bが変形された場合に、圧縮部30を基点として折れ曲がることにより、中央部Bのサイドシート6a、6bが肌当接面側に立ち上がって防漏壁の役割を果たすことができるようにした吸収性物品が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1、2記載の吸収性物品では、ウイング状フラップにおいて立体ギャザーを構成するサイドシートと裏面シートとがほぼ全面で接合されていると考えられるため、装着時にウイング状フラップを下着のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返した際、サイドシートが外側に引っ張られて立体ギャザーが脚周りの動きに追従しにくくなる問題があった。
【0008】
また、上記特許文献1記載の吸収性物品では、弾性部材を配することによって立体ギャザーが形成されているため、弾性部材が肌に当たるなどして装着時に違和感を生じる場合があった。
【0009】
更に、上記特許文献2記載の吸収性物品では、防漏壁がサイドシートの幅方向内側縁を起立させることによって形成されているため、体液を堰き止めるのに十分な起立高さが得られにくく、防漏壁が肌面に密着せず横漏れを生じる場合があった。また、防漏壁の起立高さがそれほど高くないため、吸収体の両側縁などが肌に当たって吸収体の硬さを感じやすく、装着時の違和感につながるおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、脚周りの動きに追従しやすく、装着時の違和感が低減できるとともに、横漏れ防止効果に優れるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿ってサイドシートが備えられ、側方に延在させた前記不透液性裏面シートの一部と前記サイドシートの一部とによって両側部にそれぞれ装着時に下着のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返して使用されるウイング状フラップが形成された吸収性物品において、
前記サイドシートは、幅方向内側が長手方向に沿って設けられた内側接合領域にて前記透液性表面シートに接合されるとともに、幅方向外側が吸収性物品の外形線に沿って設けられた外側接合領域にて不透液性裏面シートに接合され、前記内側接合領域と外側接合領域との間に該サイドシートを幅方向に折り返した折り返し部が長手方向に沿って形成されるとともに、該折り返し部が幅方向に折り畳まれ、この折り畳み部分が長手方向の両端部で該サイドシートに接合され、前記ウイング状フラップを含む長手方向の範囲において、前記内側接合領域と外側接合領域との間に前記サイドシートをいずれの部材にも接合しない非接合領域が形成され、
前記ウイング状フラップを折り返すとともに、前記吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた前記吸収性物品の装着状態で、前記非接合領域において、前記折り返し部のサイドシートが展開され、外方に膨出した中空状のクッション部が形成されるようにし
、前記サイドシートには弾性伸縮部材が配設されていないことを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明は、肌当接面側の両側部にそれぞれサイドシートを備えるとともに、本体部分の両側部に外方に突出したウイング状フラップが形成された吸収性物品である。前記サイドシートとして、幅方向内側が内側接合領域にて透液性表面シートに接合されるとともに、幅方向外側が外側接合領域にて不透液性裏面シートに接合され、これら内側接合領域と外側接合領域との間に該サイドシートを幅方向に折り返した折り返し部が長手方向に沿って形成されるとともに、該折り返し部が幅方向に折り畳まれ、この折り畳み部分が長手方向の両端部で該サイドシートに接合された構造のものを用いている。また、前記サイドシートは、前記ウイング状フラップを含む長手方向の範囲において、前記内側接合領域と外側接合領域との間に前記サイドシートをいずれの部材にも接合しない非接合領域が形成されている。そして、前記ウイング状フラップを下着のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返すとともに、吸収性物品を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた吸収性物品の装着状態で、前記非接合領域において、前記折り返し部のサイドシートが展開され、外方に膨出した中空状のクッション部が形成されるようにしている。前記クッション部ではサイドシートがいずれの部材にも接合されていないため、前記サイドシートが拘束されず自由に動くことができるので、脚周りの動きに追従しやすく、装着時の違和感が軽減できるようになるとともに、前記クッション部のサイドシートが肌面に密着して横漏れ防止効果に優れるようになる。
【0013】
また、本発明では、サイドシートに弾性伸縮部材を配設していないため、弾性伸縮部材が肌に当たることによる装着時の違和感などが生じなくなる。
【0014】
請求項2に係る本発明として、前記非接合領域は、吸収性物品の幅方向に対し、前記ウイング状フラップの基端より内側位置から前記ウイング状フラップにかけて連続して形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記請求項2記載の発明では、吸収性物品の幅方向に対する前記非接合領域の範囲を示したものであり、ウイング状フラップの基端より内側位置からウイング状フラップにかけて、すなわちウイング状フラップ基端の折り線に対して内側から外側にかけて連続して形成するのが好ましい。これにより、サイドシートが拘束されない範囲がウイング状フラップの基端より内側位置から開始するため、装着時にウイング状フラップを基端部で折り返すことにより、肌当接面側の両側部にそれぞれ前記クッション部が形成されるようになる。
【0016】
請求項3に係る本発明として、前記非接合領域は、吸収性物品の長手方向に対し、前記ウイング状フラップの基端部より前側及び後側に長い範囲に形成されている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記請求項3記載の発明では、吸収性物品の長手方向に対する前記非接合領域の範囲を示したものであり、ウイング状フラップの基端部より前側及び後側に長い範囲に形成することにより、排血口部の両側に配置されるウイング状フラップより前後に長い範囲に前記クッション部が形成されるようになる。
【0018】
請求項4に係る本発明として、前記折り返し部は、幅方向の外側に折り畳まれている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記請求項4記載の発明では、前記サイドシートの折り返し部を幅方向の外側に折り畳んでいる。この場合には、装着時に折り返し部のサイドシートが展開することにより、前記クッション部は、幅方向外側が相対的に大きく膨出した断面形状となり、クッション部の肌側面と肌面との密着性が向上するようになる。
【0020】
請求項5に係る本発明として、前記折り返し部は、幅方向の内側に折り畳まれている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記請求項5記載の発明では、前記サイドシートの折り返し部を幅方向の内側に折り畳んでいる。この場合には、装着時に折り返し部のサイドシートが展開することにより、前記クッション部の幅方向内側に、幅方向内側に傾斜した傾斜壁が形成されるようになるため、体液の堰き止め効果が向上するようになる。
【0022】
請求項
6に係る本発明として、前記サイドシートは、エアスルー不織布からなる請求項1〜
5いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0023】
上記請求項
6記載の発明では、サイドシートによる中空状のクッション部を形成しやすくするととも、クッション部の中空形状を維持しやすくするため、前記サイドシートを比較的剛性が高いエアスルー不織布で構成している。
【0024】
請求項
7に係る本発明として、前記サイドシートは、ポリエチレンテレフタレート繊維を含む不織布からなる請求項1〜
6いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0025】
上記請求項
7記載の発明では、サイドシートによる中空状のクッション部を形成しやすくするとともに、クッション部の中空形状を維持しやすくするため、前記サイドシートとしてポリエチレンテレフタレート繊維を含む不織布で構成している。
【発明の効果】
【0026】
以上詳説のとおり本発明によれば、脚周りの動きに追従しやすく、装着時の違和感が低減できるとともに、横漏れ防止効果に優れた吸収性物品が提供できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0029】
〔第1形態例〕
第1形態例に係る生理用ナプキン1は、
図1〜
図3に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性裏面シート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性表面シート3と、これら両シート2,3間に介在された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、この吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、肌当接面側の両側部にそれぞれ長手方向に沿って配設されたサイドシート7、7とから構成されている。また、前記吸収体4の周囲において、そのナプキン長手方向の前後端縁部では、前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4の側縁よりも側方に延出している前記不透液性裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接着手段によって接合され、外周に吸収体4の存在しない外周フラップ部が形成されている。
【0030】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。
【0031】
次いで、前記透液性表面シート3は、不織布が好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、スパンボンド法はドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法及びエアスルー法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。
【0032】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばパルプ中に高吸水性樹脂を混入したもの、或いはパルプ中に化学繊維を混入させるとともに、高吸水性樹脂を混入したものが使用される。前記吸収体4は、図示のように、形状保持、および経血等を速やかに拡散させるとともに、一旦吸収した経血等の逆戻りを防止するために被包シート5によって囲繞するのが望ましい。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶融パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。また、前記吸収体4として、嵩を小さくできるエアレイド吸収体を用いてもよい。
【0033】
前記吸収体4の厚みは、8mm以下、好ましくは1〜4mm程度とするのが好ましい。本生理用ナプキン1では、後段で詳述するように、肌当接面側の両側部に配設されたサイドシート7によって外方に膨出した中空状のクッション部20を形成しているが、このクッション部20が脚圧などによって潰れたとき、吸収体4の側縁が肌に当たって吸収体4の硬さによる違和感が生じやすくなるため、これを解消する目的で吸収体4の厚みを通常のものに比べて相対的に薄くするのが好ましい。
【0034】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド−バイ−サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0035】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。前記高吸水性樹脂の含有率は吸収体重量の10〜60%とするのが望ましい。高吸水性樹脂含有率が10%未満の場合には、十分な吸収能を与えることができず、60%を超える場合にはパルプ繊維間の絡み合いが無くなり、シート強度が低下し破れや割れ等が発生し易くなる。
【0036】
本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的に透液性表面シート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになる。前記被包シート5がクレープ紙からなる場合には、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。
【0037】
一方、本生理用ナプキン1の肌当接面側の両側部にはそれぞれ、長手方向に沿ってかつナプキン1のほぼ全長に亘ってサイドシート7、7が設けられ、このサイドシート7、7の一部が側方に延在されるとともに、同じく側方に延在された不透液性裏面シート2の一部とによって、本体部分の両側部に外側に突出するウイング状フラップW、Wが形成されている。前記ウイング状フラップW、Wは、装着時に下着30のクロッチ部分を巻き込むように、基端部の折り線RL(
図1)にて外側に折り返して使用され、ウイング状フラップWの不透液性裏面シート2の外面に備えられたズレ止め粘着剤層(図示せず)を下着30の外面に貼着することにより、下着とのズレ止めを図るためのものである。生理用ナプキン1の装着状態で、前記サイドシート7の幅方向内側部分によって肌側に膨出する中空状のクッション部20が形成されるようになっている。このクッション部20については、後段で詳述する。
【0038】
前記サイドシート7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布を用いることが望ましい。また、前記ウイング状フラップW、Wにおける経血等の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるようにすることが望ましい。
【0039】
本生理用ナプキン1では、
図1に示されるように、前記透液性表面シート3の面側には、排血口部Hを囲むように、圧搾溝10を形成するのが好ましい。前記圧搾溝10は、種々の平面パターンで設けることが可能である。本例では、
図1に示されるように、排血口部Hを囲むように、ナプキン長手方向に長い全体として略小判形の閉合形状を有する中央圧搾溝11と、前記中央圧搾溝11より前側に離間して配置され、排血口部H側が開口した略逆U字状の前側圧搾溝12と、前記中央圧搾溝11より後側に離間して配置され、排血口部H側が開口した略U字状の後側圧搾溝13と、前記中央圧搾溝11の両側にそれぞれ、前記中央圧搾溝11より幅方向に離間して配置されるとともに、前記中央圧搾溝11の両側部にほぼ平行する略長手方向に沿った両側圧搾溝14、14とから構成されている。
【0040】
次に、生理用ナプキン1の装着時に、排血口部Hの両側にそれぞれ形成される前記サイドシート7が肌側に膨出した中空状のクッション部20、20について、以下詳細に説明する。
【0041】
前記サイドシート7は、詳細には
図4及び
図5に示されるように、幅方向内側の端部が幅方向外側に折り返されるとともに、この折り返し部分が長手方向に沿って設けられた内側接合領域21にて透液性表面シート3に接合されている。一方、前記サイドシート7の幅方向外側は、生理用ナプキン1の外形線に沿って設けられた外側接合領域22にて不透液性裏面シート2に接合されている。前記内側接合領域21及び外側接合領域22はそれぞれ、ホットメルト接着剤をスプレー、スロットコート、スパイラル、カーテンなどの塗工方法によって塗布した領域であり、ナプキン長手方向のほぼ全長に亘って連続して設けられている。
【0042】
また、前記サイドシート7は、前記内側接合領域21と外側接合領域22との間に該サイドシート7を幅方向に折り返した折り返し部23が長手方向に沿って形成されるとともに、該折り返し部23が幅方向に折り畳まれ、この折り畳み部分が、
図3及び
図5(B)に示されるように、ナプキン長手方向の両端部にそれぞれ設けられた折り畳み部接合領域24、24にて該サイドシート7に接合されている。前記折り返し部23は、サイドシート7の幅方向中間部において、サイドシート7の裏面(不透液性裏面シート2側の面)同士を対面させるように1回だけ折り返した部分である。前記折り返し部23は、前記内側接合領域21と外側接合領域22とを繋ぐサイドシート7に沿った中間位置に形成されており、
図4に示されるように前記内側接合領域21がサイドシート7の幅方向内側の端部を幅方向外側に折り返した部分に設けられる場合には、この折り返したサイドシート7に沿う内側接合領域21と外側接合領域22との中間に形成され、図示例では内側接合領域21の上方に折り返し部23が位置している。
図2〜
図5に示される例では、前記折り返し部23は、幅方向の外側に折り畳まれている。
【0043】
更に、前記サイドシート7は、前記ウイング状フラップWを含むナプキン長手方向の範囲において、前記内側接合領域21と外側接合領域22との間に前記サイドシート7をいずれの部材にも接合しない非接合領域25が形成されている。サイドシート7をいずれの部材にも接合しないとは、サイドシート7が透液性表面シート3や不透液性裏面シート2など他の部材に接合されないとともに、サイドシート7同士も接合されないことを意味している。前記非接合領域25において、前記サイドシート7が接合されていないため、サイドシート7が拘束されることなく、比較的自由に動くことができるようになっている。前記非接合領域25が形成される内側接合領域21と外側接合領域22との間とは、上述と同様に、内側接合領域21と外側接合領域22とを繋ぐサイドシート7に沿った中間位置のことであって、
図4に示されるように前記内側接合領域21がサイドシート7の幅方向内側の端部を幅方向外側に折り返した部分に設けられる場合には、この内側接合領域21によって接合されたサイドシート7の肌側に積層されたサイドシート7の部分も非接合領域25となる。
【0044】
なお、長手方向両端部において、内側接合領域21と外側接合領域22との境界は明確でなくてよく、内側に沿った一定の範囲を内側接合領域21とし、残りの外側部分を外側接合領域22とすることができる。
【0045】
本生理用ナプキン1では、
図6に示されるように、前記ウイング状フラップWを下着30のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返すとともに、生理用ナプキン1を身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた生理用ナプキン1の装着状態で、前記非接合領域25において、前記折り返し部23のサイドシート7が展開され、外方に膨出した中空状のクッション部20が形成されるようになっている。特に、
図6に示される例では、前記折り返し部23が幅方向の外側に折り畳まれているため、ウイング状フラップWを外側に折り返すことにより、サイドシート7が引っ張られて、折り返し部23を形成する2層のサイドシート7のうち下層側のサイドシート7が展開されるのに伴い、上層側のサイドシート7が上方に膨出して中空状のクッション部20が形成されるようになる。また、前記折り返し部23を形成する2層のサイドシート7のうち、上方に膨出する上層側のサイドシート7部分は、内側接合領域21の幅方向内側端縁を基点として幅方向の外側に向けて肌側に傾斜した傾斜面とされるため、この傾斜面が肌面にフィットしやすく、肌との密着性が向上できるようになっている。
【0046】
これによって、前記クッション部20では前記サイドシート7がいずれの部材にも接合されていないため、サイドシート7が拘束されず自由に動くことができるので、脚周りの動きに追従しやすく、装着時の違和感が軽減できるようになるとともに、クッション部20のサイドシート7が肌面に密着しやすく、体液の横漏れ防止効果に優れるようになる。
【0047】
前記クッション部20について更に詳細に説明すると、前記非接合領域25は、
図5(A)に示されるように、生理用ナプキン1の幅方向に対し、ウイング状フラップWの基端より内側位置(幅方向中心側位置)からウイング状フラップWにかけて連続して形成するのが好ましい。つまり、前記非接合領域25は、ウイング状フラップWの基端部の折り線RLに対して、幅方向の内側から外側にかけて連続して設けられている。このとき、前記非接合領域25のナプキン幅方向の長さAは、20〜50mm、好ましくは30〜40mmとするのがよい。前記長さAは、
図4に示される例では、サイドシート7の幅方向内側の端部を幅方向外側に折り返した部分に内側接合領域21が設けられているため、前記内側接合領域21の幅方向内側と外側接合領域22の幅方向内側との間のナプキン幅方向の長さをとっている。
【0048】
前記非接合領域25は、生理用ナプキン1の長手方向に対し、ウイング状フラップWの基端部より前側及び後側に長い範囲に形成するのが好ましい。つまり、前記非接合領域25は、少なくともウイング状フラップWが存在する範囲に設けられている。前記ウイング状フラップWの基端部とは、装着時にウイング状フラップWを折り返すウイング状フラップWの折り線RLの部分である。前記非接合領域25のナプキン長手方向の長さBは、ウイング状フラップWの基端部のナプキン長手方向の長さより長く形成するのが好ましく、具体的には70〜140mm、好ましくは90〜120mmとするのがよい。前記長さBは、
図5(A)に示されるように、サイドシート7を下層側の部材に接合する内側接合領域21及び外側接合領域22においては、内側接合領域21と外側接合領域22とが幅方向に離間し始める位置同士のナプキン長手方向の距離であり、同
図5(B)に示されるように、サイドシート7の折り返し部23を該サイドシート7に接合する折り畳み部接合領域24においては、両端の折り畳み部接合領域24、24間の距離である。
図5においては、これらの距離がほぼ同等に形成されているが、異なる場合には、いずれか短い方の距離を採用すればよい。前記ウイング状フラップWは概ね着用者の排血口部Hの両側に位置しているため、少なくともウイング状フラップWが存在する範囲を非接合領域25とすることにより、排血口部Hの両側に前記クッション部20が形成されるようになり、脚周りの動きに対する追従性及び体液の横漏れ防止効果が向上するようになる。
【0049】
図4に示されるように、前記折り返し部23は、吸収体4の側縁部を基端として形成され、この折り返し部23を幅方向外側に折り畳んだ状態で、折り返し端部が吸収体3の側縁より外側に延在するように形成するのが好ましい。これにより、装着時にウイング状フラップWを下着30のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返した際、前記折り返し部23のサイドシート7が展開して肌側に膨出した中空状のクッション部20が形成されやすくなる。
【0050】
図4に示されるように、前記折り返し部23の折り返し幅Cは、5〜15mm、好ましくは8〜12mmとするのがよい。折り返し幅Cをこの範囲とすることにより、装着時にウイング状フラップWを外側に折り返したとき、折り返し部23のサイドシート7が展開しやすく、中空状のクッション部20が形成されやすくなる。
【0051】
前記サイドシート7の幅方向内側の端部は、
図4に示される例では幅方向外側に折り返して、この折り返し部が内側接合領域21にて透液性表面シート3に接合されるようになっているが、幅方向外側に折り返さずに幅方向内側に延在させサイドシート7の幅方向内側縁が幅方向内側に向いた状態で、透液性表面シート3に接合するようにしてもよい。しかし、前者の方が、前記クッション部20を形成するに当たって、サイドシート7の幅方向内側の端部を幅方向外側に折り返した部分の曲げ復元性が加わることによって、クッション部20の肌当接面となるサイドシート部分が肌側に膨出しやすくなるため、好ましい。なお、前記前記サイドシート7の幅方向内側の端部は、前記内側接合領域21にて、透液性表面シート3を含む範囲に接合されていればよく、前記透液性表面シート3の側縁を越えて不透液性裏面シート2に接合されるようにしても構わない。
【0052】
ところで、本生理用ナプキン1では、前記サイドシート7に弾性伸縮部材を配設しないのが好ましい。本生理用ナプキン1では、装着時にウイング状フラップWを下着のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返すとともに、ナプキンを身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させることにより、肌当接面側の両側部に肌側に膨出する中空状のクッション部20が形成され、弾性伸縮部材によることなく肌側に膨出する中空状部が形成できる点に特徴を有している。弾性伸縮部材を配設しないことにより、弾性伸縮部材が肌に当たるなどの装着時の違和感が解消できるようになる。また、クッション部20がより柔軟に変形できるため、脚周りの動きに対する追従性が良好となり、肌との密着性が高まり、体液の漏れ防止効果が向上するようになる。
【0053】
前記サイドシート7は、エアスルー法、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができるが、エアスルー不織布を用いるのが特に好ましい。エアスルーは、他の加工法に比べ、比較的高い剛性の不織布を得るのに適しており、エアスルー不織布を用いることにより、中空状のクッション部20を形成する際、クッション部20が形成されやすくなるとともに、クッション部20の中空形状が維持されやすくなる。
【0054】
このクッション部20を形成しやすくするとともに、中空形状を維持しやすくするという観点から、前記サイドシート7を構成する繊維の繊度は、2.2dtex以下が好ましく、サイドシート7の目付は、15〜30g/m
2、好ましくは18〜22g/m
2とするのがよい。
【0055】
また、前記サイドシート7は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を含む不織布によって構成するのが好ましい。前記ポリエチレンテレフタレート繊維は、一般的に曲げに対する抵抗力が強く、曲げ復元性が高いとともに、柔軟性に優れた材料である。このため、前記サイドシート7がポリエチレンテレフタレート繊維を含むことにより、装着状態で、折り返し部23のサイドシート7が展開しやすくなり、中空状のクッション部20が形成されやすくなる。前記ポリエチレンテレフタレート繊維の配合割合は任意であるが、30〜100重量%、好ましくは50〜90重量%程度とするのがよい。また、前記サイドシート7を2層以上の多層構造とし、少なくとも肌当接面の層にポリエチレンテレフタレート繊維を含ませるようにすることも可能である。前記ポリエチレンテレフタレート繊維は、ポリエチレンテレフタレートのみからなる繊維でもよいし、ポリエチレンテレフタレートを含む繊維でもよい。
【0056】
〔第2形態例〕
次に、第2形態例に係る生理用ナプキン1Aについて、
図7〜
図10に基づいて説明する。第2形態例に係る生理用ナプキン1Aは、上記第1形態例に係る生理用ナプキン1に比べて、
図7〜
図9に示されるように、前記サイドシート7の折り返し部23が幅方向の内側に折り畳まれている点で相違する。
【0057】
具体的には、
図8及び
図9に示されるように、幅方向内側に向けて延びるサイドシート7の幅方向内側の端部が長手方向に沿って設けられた内側接合領域21にて透液性表面シート3に接合され、前記内側接合領域21の幅方向外側端の直ぐ外側において、サイドシート7が幅方向に折り返された折り返し部23が長手方向に沿って形成されるとともに、該折り返し部23が幅方向の内側に折り畳まれ、この折り畳み部分がナプキン長手方向の両端部の折り畳み部接合領域24で前記サイドシート7に接合されている。
【0058】
本第2形態例に係る生理用ナプキン1Aでは、
図10に示されるように、ウイング状フラップWを下着30のクロッチ部分を巻き込むように外側に折り返すとともに、生理用ナプキン1Aを身体の前後方向の丸みに沿って湾曲させた生理用ナプキン1Aの装着状態で、非接合領域25において、前記折り返し部23のサイドシート7が展開され、外方に膨出した中空状のクッション部20が形成されるようになる。前記クッション部20は、前記ウイング状フラップWを外側に折り返すことにより、サイドシート7が外側に引っ張られ、これに伴い内側に折り畳まれた折り返し部23が起立するとともに、折り返し部23を構成する両側のシート間が離間して中空状に形成されるようになっている。この中空状のクッション部20は、前記折り返し部23を構成する2層のシート部分のうち、幅方向内側のシート部分23aが内側接合領域21の幅方向外側端縁を基端として、肌側に向けて起立するとともに、幅方向内側に傾斜した傾斜壁を形成するようになるので、この傾斜壁部分がポケット状の防漏壁を構成し、外側に向けて流れる体液を効果的に堰き止めることができるようになる。
【0059】
〔他の形態例〕
上記形態例では、ウイング状フラップWがナプキン長手方向のほぼ中央部に設けられた所謂昼用ナプキンについて説明したが、ウイング状フラップWが前側寄り位置に設けられ、ウイング状フラップWの後側に臀部を覆うヒップホールド用フラップが形成された所謂夜用ナプキンについても同様に適用可能である。この場合、前記非接合領域25は、ウイング状フラップWの前側より後側の方が相対的に長手方向に長い範囲に形成するのが好ましい。