(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232466
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】圧電素子を備えたチューンドマスダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20171106BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20171106BHJP
F03G 7/08 20060101ALI20171106BHJP
E01D 1/00 20060101ALI20171106BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20171106BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20171106BHJP
H01L 41/053 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
F16F15/02 C
H02N2/18
F03G7/08 Z
E01D1/00 Z
E04H9/02 341A
H01L41/113
H01L41/053
【請求項の数】23
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-90302(P2016-90302)
(22)【出願日】2016年4月28日
(65)【公開番号】特開2017-145956(P2017-145956A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2016年4月28日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0019665
(32)【優先日】2016年2月19日
(33)【優先権主張国】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2015年10月31日にウェブサイト(http://db.koreascholar.com/article.aspx?code=308330)で公開された、「韓国構造物診断維持管理工学会 2015年秋季 学術発表会論文集 第409−410頁」にて、「電力生産が可能なチューンドマスダンパーの検証のためのプロトタイプ提案」について公開
(73)【特許権者】
【識別番号】516128706
【氏名又は名称】コングッグ ユニヴァーシティ インダストリアル コーペレーション コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100081318
【弁理士】
【氏名又は名称】羽切 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100132458
【弁理士】
【氏名又は名称】仲村 圭代
(72)【発明者】
【氏名】ハ、ドン ホ
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−246585(JP,A)
【文献】
特開2002−021916(JP,A)
【文献】
実開平06−056535(JP,U)
【文献】
特開2002−262584(JP,A)
【文献】
特開昭62−242153(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3060608(JP,U)
【文献】
特開2013−119897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
H02N 2/18
F03G 7/08
E01D 1/00
E04H 9/02
H01L 41/113
H01L 41/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量体と、
前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、
前記質量体を支持し、移動をガイドするガイド部と、
前記質量体の移動による打撃力、振動力によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含み、
前記電気エネルギー発生部は、
前記質量体に相互離隔して配置される複数の第1の加振板と、
前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられた圧電素子と、
前記質量体の複数の第1の加振板が設けられた面と対向する支持フレーム又は筐体の内側面に設けられ、前記複数の第1の加振板に対応して設けられた複数の第2の加振板と、
前記第2の加振板に取り付けられた圧電素子とを含むこと
を特徴とする圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項2】
前記質量体は、移動方向と平行な面に相互離隔して配置される複数の第1の加振板と、前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられる圧電素子とを含むことを特徴とする請求項1に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項3】
前記弾性部材は、バネからなり、前記質量体と前記構造物の間、又は前記質量体の支持腕と前記構造物の間に連結されることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項4】
前記ガイド部は、
両端部が構造物又は筐体内に固定されるガイドレールと、
前記質量体の進行を阻止するストッパとを備え、
前記質量体には、ローラが設けられ、前記ガイドレールで摺動するように構成されること
を特徴とする請求項1に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項5】
前記ガイド部のガイドレールは、棒状のレール、又は断面がT字状又はフック状のレールであり、
前記ローラは、前記棒状のレールに挟まれる中空の円筒状のローラ、T字状のレールに挟まれるフック状のローラ、又はフック状のレールに挟まれるT字状のローラであること
を特徴とする請求項4に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項6】
前記第1の加振板と第2の加振板とは、それぞれの末端が重畳して設けられ、前記質量体の移動によって、前記第1の加振板は前記第2の加振板に、前記第2の加振板は前記第1の加振板に、打撃力又は振動力を与えることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項7】
前記第1の加振板又は前記第2の加振板のいずれか1つに圧電素子が取り付けられておらず、圧電素子が取り付けていない第1の加振板又は前記第2の加振板は、打撃体となることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項8】
質量体と、
前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、
前記質量体を支持し、移動をガイドするガイド部と、
前記質量体の移動による打撃力、振動力によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含み、
前記ガイド部は、平面上に同一の高さに配置される直線状のガイドレール、又は高さ差を有した傾斜する直線状のガイドレール、又は高さ差を有した半放物線状のガイドレールのいずれか1つを備えること
を特徴とする圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項9】
前記電気エネルギー発生部は、
前記質量体に相互離隔して配置された複数の第1の加振板と、
前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられた圧電素子と、
前記質量体の複数の第1の加振板が設けられた面と対向する支持台の面に設けられ、前記複数の第1の加振板に対応して設けられた複数の第2の加振板と、
前記第2の加振板に取り付けられた圧電素子とを含むこと
を特徴とする請求項8に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項10】
前記ガイド部に設けられたガイドレールの形状に対応して、前記支持台の形状、及び前記支持台に設けられる複数の第2の加振板の配列が構成されることを特徴とする請求項9に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項11】
前記支持台は、前記支持台に取り付けられた第2の加振板と、前記質量体に取り付けられた第1の加振板の末端とが互いに重畳するように、位置が調節されることを特徴とする請求項9に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項12】
前記第1の加振板及び前記第2の加振板の少なくともいずれか1つは、柔軟なプラスチック又はブラシで構成されることを特徴とする請求項1又は請求項9に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項13】
質量体と、
前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、
前記質量体に相互離隔して配置される柔軟な複数の第1の加振板と、
前記第1の加振板が設けられた前記質量体の面と離隔して対向配置される移動プレートと、
前記移動プレートに設けられ、末端が前記第1の加振板の少なくともいずれか1つと重畳して位置する少なくとも1つの金属板と、
前記構造物と前記移動プレートの間、又は前記構造物上に設けられる固定プレートと前記移動プレートの間に設けられる圧電素子に与えられる変形力によって、電気エネルギーが発生する電気エネルギー発生部とを含むこと
を特徴とする圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項14】
前記柔軟な複数の第1の加振板は、柔軟なプラスチック又はブラシで構成されることを特徴とする請求項13に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項15】
前記電気エネルギー発生部は、
前記構造物と前記移動プレートの間、又は前記固定プレートと前記移動プレートの間に複数設けられる柔軟な第2の加振板と、
前記第2の加振板のそれぞれに設けられる圧電素子とを含むこと
を特徴とする請求項13に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項16】
前記質量体の移動によって、前記第1の加振板が前記金属板を打撃して前記移動プレートが移動され、複数の前記圧電素子が同一の方向に撓み変形して、電気エネルギーを発生させることを特徴とする請求項13に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項17】
前記第2の加振板に結合される圧電素子の位置によって、前記移動プレートと前記第2の加振板のそれぞれは、剛結又はピン連結されることを特徴とする請求項16に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項18】
質量体と、
前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、
一側端のそれぞれが前記質量体に相互離隔して配置される柔軟な複数の加振板と、
前記加振板のそれぞれに設けられる圧電素子と、
前記加振板の他側端のそれぞれに設けられ、前記質量体の移動に連動して移動される補助質量体とを含み、
前記質量体と前記補助質量体の移動によって、前記加振板に設けられる前記圧電素子に変形力が与えられて、電気エネルギーが発生すること
を特徴とする圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項19】
更に、前記加振板の他側端のそれぞれに設けられる前記補助質量体のそれぞれを相互連結する結合プレートを含み、
前記質量体の移動によって前記結合プレートが移動して、複数の前記圧電素子が同一の方向に撓み変形して、電気エネルギーを発生させること
を特徴とする請求項18に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項20】
前記加振板に結合される圧電素子の位置によって、前記結合プレートと前記加振板のそれぞれは、剛結又はピン連結されることを特徴とする請求項19に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項21】
振子運動をする質量体と、
前記質量体の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含み、
前記電気エネルギー発生部は、
前記質量体自体、又は前記質量体に取り付けられた打撃体と、
前記質量体自体、又は打撃体によって打撃されるように所定の位置に設けられた加振板と、前記加振板に取り付けられた圧電素子とを備えること
を特徴とする圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項22】
前記質量体は、構造物に連結されたケーブルにより振子運動をするか、又は構造物内に曲面のガイド溝が設けられたガイド部に沿って移動しながら、振子運動をすることを特徴とする請求項21に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【請求項23】
前記電気エネルギー発生部は、
前記質量体自体、又は前記質量体に取り付けられた打撃体と、
前記質量体自体、又は打撃体によって打撃されるように、前記ガイド溝の底面、側面、又は前面に設けられた複数の加振板と、
前記加振板に取り付けられた圧電素子とを備えること
を特徴とする請求項22に記載の圧電素子を備えたチューンドマスダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューンドマスダンパーに関し、より詳しくは、構造物の垂直振動又は水平振動を減らすために、構造物の振動部に配設して、構造物で発生する振動を低減させるチューンドマスダンパー内に、従来の減衰器の代わりに、複数の圧電素子と加振板を設けることにより、構造物の振動を低減すると共に、構造的特性の変化をモニタリングし、振動エネルギーを電気エネルギーに最大限変換して活用する圧電素子を備えたチューンドマスダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、現在社会においての電気は、生活の一部となった必須エネルギーの形態であるが、資源の枯渇とエネルギー生産の限界性、発電システムによって伴う環境汚染など、多い問題点を抱いている。そこで、近年、このような問題点を認識した各国は、代替エネルギーの開発に関する投資を増加しつつある実情であり、代表的に重点開発している代替エネルギーは、太陽光を用いた太陽電池である。
【0003】
しかし、太陽電池を用いた電力の生産は、低い効率と、光量によって発電量の差が大きく、夜間には生産できないという不都合があり、主エネルギー源としての役目は果たせず、補助的又は試験的なエネルギー源となるしかない。
【0004】
また、潮力と風力、水力発電によるエネルギー生成装置は、自然条件が適した地域でのみ補助電源として使用することができ、また、初期施設投資の費用が莫大であって、一般的とは言えない。
【0005】
これにより、代替エネルギー源として、エネルギーのリサイクルに対する研究と関心は高まっており、このようなエネルギーリサイクルの一環の1つが、橋梁や高層構造物で発生する振動エネルギーを電気エネルギーに変換させることである。
【0006】
全国の橋梁は、約30,000個であって、前記橋梁の数は、益々増加するはずであり、漸次的にその規模及び長さも大きくなっている実情である。また、63ビル、テクノマートのような高層建物も急激に増加している。
【0007】
このような橋梁と高層建物などの構造物は、風、車両、人間、機械などによって、常時振動が発生しているので、使用者に不安感を与え、各構造物に疲労損傷を生じて、使用寿命を短縮している。最近の例では、2014年、懸垂橋である李舜臣大橋で振動が発生して、通行が制限されたことがあり、2011年、テクノマートの上層部でも振動が発生して、人々が逃げるなどの問題が発生したことがある。
【0008】
このような構造物の振動を減らすために、チューンドマスダンパー(TMD)、減衰器(damper)など、様々な装置が使用されており、この中でも、チューンドマスダンパーが多く使用され、その作動原理について考察してみる。
【0009】
図1及び
図2は、従来のチューンドマスダンパーが装着された構造物システムを概略してモデリングしたものであって、地盤に建設されている橋梁、土木及び建築構造物、又は機械装置のような主構造物を、質量弾性体から見てこれをモデリングして概念的に示すと、
図1に示しているように、所定の質量(M
1)を有する主構造物質量体、そして、所定の弾性係数(K
1)を有する弾性バネと、所定の減衰係数(C
1)を有する減衰器として示すか、
図2に示しているように、所定の質量(M
1)を有する主構造物質量体、そして、所定の弾性係数(K
1)を有する弾性バネとして示すことができる。
【0010】
また、チューンドマスダンパーは、主構造物に装着され、所定の質量(M
2)の付加質量体と、所定の弾性係数(K
2)を有するバネ部材と、所定の減衰係数(C
2)を有する減衰器とから構成され、それぞれの構成部材(付加質量体、バネ部材、減衰器)自体、及びこれらの具体的な機械的な結合関係は、公知である。
図1及び
図2におけるX
1、X
2はそれぞれ、主構造物質量体と付加質量体の変位方向を示している。
【0011】
地震荷重のような振動荷重が主構造物に加わることになると、主構造物質量体は、X又はX
1方向に動いて振動することになる。これにより、付加質量体も、X
2方向に振動することになるが、主構造物質量体の変位と付加質量体の変位の間に所定の位相差が生じると、付加質量体によって反力が作用することで、主構造物質量体の変位が抑制されて、振動が減少することになる。チューンドマスダンパーは、このような原理によって、主構造物質量体、すなわち、主構造物の振動を制御することになる。
【0012】
従来は、このようなチューンドマスダンパーにより、構造物に及ぶ衝撃力による振動を減少しているだけで、発生する振動エネルギーをリサイクルすることができず、無駄にしているのが実情であった。更に、構成部材のうち、減衰器は、一般にシリンダとピストンからなる高価な部材であって、振動エネルギーを熱エネルギーに変換及び消散させる作用を働く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
特許文献1:韓国特許第1069155号公報
特許文献2:日本特開2009−121520号公報
特許文献3:韓国特許第1053256号公報
特許文献4:米国特許第6134964号公報
【0014】
これに関連して、韓国特許第10−1069155号公報には、圧電素子を弾性橋梁支承に適用して、橋梁の振動エネルギーを電気エネルギーにリサイクルできるように、橋梁上板の底面に固定した上プレートと、橋脚上面に固定したベースプレートと、上プレートとベースプレートのそれぞれに締結ボルトで締結固定する上部固定板及び下部固定板と、前記上、下部固定板に上下両面がそれぞれ熱融着して固定されるゴムパッドと、ゴムパッド内に設けられた複数の鋼鉄板及び圧電素子とから構成された弾性橋梁支承が開示されている。
【0015】
しかし、上記特許は、橋梁上板で発生した振動力がゴムパッドに伝達され、伝達された振動力がゴムパッド内の鋼鉄板と圧電素子に伝達されて、圧電素子により電気エネルギーが発生し、また、膨張が容易でないゴムパッドの構造であるため、橋梁上板の振動力を減衰させる効果、及びこれを電気エネルギーに変換させる効率が低い。
【0016】
また、韓国特許第10−1053256号公報には、構造物に連結した第1の弾性部材及び第1の質量体と、第1の質量体に連結した第2の弾性部材及び第2の質量体と、第2の弾性部材に取り付けられた圧電素子とからなるエネルギーバーベスタが開示されており、圧電素子が備えられた第2の弾性部材が第1の質量体に連結される個数には寸法的な限界があり、更に、第2の弾性部材に振動変位を増幅するために連結される第2の質量体によって、空間的な制限が伴うので、振動エネルギーから電気エネルギーに変換される量を大きく増幅させるには、構成上の不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明の目的は、前記のような従来の問題点を解決するために案出されたものであって、各種の構造物で発生する振動エネルギーをリサイクルできるように、構造物の振動部に設置されるチューンドマスダンパー内に複数の圧電素子を備えることで、構造物の振動を減らすと共に、構造的特性の変化をモニタリングすることができ、振動エネルギーを電気エネルギーに最大限変換して活用する圧電素子を備えたチューンドマスダンパーを提供することである。
【0018】
また、本発明の他の目的は、加振板を、金属ではない柔軟なプラスチックやブラシで構成するか、圧電素子に直接、打撃力、振動力を加えることではなく、圧電素子の一側端に補助質量体を結合して、撓み変形により電気エネルギーを発生させる方式を適用することで、耐久性を向上することができ、質量体の振動において、圧電素子が一体に同じ方向に撓み変形するようにして、圧電素子で生成された全ての電気を効率よく集めて整流し蓄電させるチューンドマスダンパーを提供することである。
【0019】
一方、本発明で解決しようとする技術的課題は、以上で言及した技術的課題に限定されず、言及していない他の技術的課題は、以下の記載から、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の1つの様態によるチューンドマスダンパーは、質量体と、前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、前記質量体を支持し、移動をガイドするガイド部と、前記質量体の移動による打撃力、振動力によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含
み、前記電気エネルギー発生部は、前記質量体に相互離隔して配置される複数の第1の加振板と、前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられた圧電素子と、前記質量体の複数の第1の加振板が設けられた面と対向する支持フレーム又は筐体の内側面に設けられ、前記複数の第1の加振板に対応して設けられた複数の第2の加振板と、前記第2の加振板に取り付けられた圧電素子とを含むことを特徴とする。
【0021】
前記質量体は、移動方向と平行な面に相互離隔して配置される複数の第1の加振板と、前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられる圧電素子とを含む。
【0022】
前記弾性部材は、バネからなり、前記質量体と前記構造物の間、又は前記質量体の支持腕と前記構造物の間に連結される。
【0023】
前記ガイド部は、両端部が構造物又は筐体内に固定されるガイドレールと、前記質量体の進行を阻止するストッパとを備え、前記質量体には、ローラが設けられ、前記ガイドレールで摺動するように構成される。
【0024】
前記ガイド部のガイドレールは、棒状のレール、又は断面がT字状又はフック状のレールであり、前記ローラは、前記棒状のレールに挟まれる中空の円筒状のローラ、T字状のレールに挟まれるフック状のローラ、又はフック状のレールに挟まれるT字状のローラである。
【0026】
前記第1の加振板と第2の加振板とは、それぞれの末端が重畳して設けられ、前記質量体の移動によって、前記第1の加振板は前記第2の加振板に、前記第2の加振板は前記第1の加振板に、打撃力又は振動力を与える。
【0027】
前記第1の加振板又は前記第2の加振板のいずれか1つに圧電素子が取り付けられておらず、圧電素子が取り付けていない第1の加振板又は前記第2の加振板は、打撃体となる。
【0028】
本発明の他の様態によるチューンドマスダンパーは、質量体と、前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、前記質量体を支持し、移動をガイドするガイド部と、前記質量体の移動による打撃力、振動力によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含み、前記ガイド部は、平面上に同一の高さに配置される直線状のガイドレール、又は高さ差を有した傾斜する直線状のガイドレール、又は高さ差を有した半放物線状のガイドレールのいずれか1つを備えることを特徴とする。
【0029】
前記電気エネルギー発生部は、前記質量体に相互離隔して配置された複数の第1の加振板と、前記第1の加振板のそれぞれに取り付けられた圧電素子と、前記質量体の複数の第1の加振板が設けられた面と対向する支持台の面に設けられ、前記複数の第1の加振板に対応して設けられた複数の第2の加振板と、前記第2の加振板に取り付けられた圧電素子とを含む。
【0030】
前記ガイド部に設けられたガイドレールの形状に対応して、前記支持台の形状、及び前記支持台に設けられる複数の第2の加振板の配列が構成される。
【0031】
前記支持台は、前記支持台に取り付けられた第2の加振板と、前記質量体に取り付けられた第1の加振板の末端とが互いに重畳するように、位置が調節される。
【0032】
前記第1の加振板及び前記第2の加振板の少なくともいずれか1つは、柔軟なプラスチック又はブラシで構成される。
【0033】
更に、本発明の他の様態によるチューンドマスダンパーは、質量体と、前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、前記質量体に相互離隔して配置される柔軟な複数の第1の加振板と、前記第1の加振板が設けられた前記質量体の面と離隔して対向配置される移動プレートと、前記移動プレートに設けられ、末端が前記第1の加振板の少なくともいずれか1つと重畳して位置する少なくとも1つの金属板と、前記構造物と前記移動プレートの間、又は前記固定プレートと前記移動プレートの間に設けられる圧電素子に与えられる変形力によって、電気エネルギーが発生する電気エネルギー発生部とを含むことを特徴とする。
【0034】
前記柔軟な複数の第1の加振板は、柔軟なプラスチック又はブラシで構成される。
【0035】
前記電気エネルギー発生部は、前記構造物と前記移動プレートの間、又は前記固定プレートと前記移動プレートの間に複数設けられる柔軟な第2の加振板と、前記第2の加振板のそれぞれに設けられる圧電素子とを含む。
【0036】
前記質量体の移動によって、前記第1の加振板が前記金属板を打撃して前記移動プレートが移動され、複数の前記圧電素子が同一の方向に撓み変形して、電気エネルギーを発生させる。
【0037】
前記第2の加振板に結合される圧電素子の位置によって、前記移動プレートと前記第2の加振板のそれぞれは、剛結又はピン連結される。
【0038】
また、本発明の更に他の様態によるチューンドマスダンパーは、質量体と、前記質量体を構造物に連結する弾性部材と、一側端のそれぞれが前記質量体に相互離隔して配置される柔軟な複数の加振板と、前記加振板のそれぞれに設けられる圧電素子と、前記加振板の他側端のそれぞれに設けられ、前記質量体の移動に連動して移動される補助質量体とを含み、前記質量体と前記補助質量体の移動によって、前記加振板に設けられる前記圧電素子に変形力が与えられて、電気エネルギーが発生することを特徴とする。
【0039】
更に、前記加振板の他側端のそれぞれに設けられる前記補助質量体のそれぞれを相互連結する結合プレートを含み、前記質量体の移動によって前記結合プレートが移動して、複数の前記圧電素子が同一の方向に撓み変形して、電気エネルギーを発生させる。
【0040】
前記加振板に結合される圧電素子の位置によって、前記結合プレートと前記加振板のそれぞれは、剛結又はピン連結される。
【0041】
なお、本発明の更に他の様態によるチューンドマスダンパーは、振子運動をする質量体と、前記質量体の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部とを含
み、前記電気エネルギー発生部は、前記質量体自体、又は前記質量体に取り付けられた打撃体と、前記質量体自体、又は打撃体によって打撃されるように所定の位置に設けられた加振板と、前記加振板に取り付けられた圧電素子とを備えることを特徴とする。
【0042】
前記質量体は、構造物に連結されたケーブルにより振子運動をするか、又は構造物内に曲面のガイド溝が設けられたガイド部に沿って移動しながら、振子運動をする。
【0044】
前記電気エネルギー発生部は、前記質量体自体、又は前記質量体に取り付けられた打撃体と、前記質量体自体、又は打撃体によって打撃されるように、前記ガイド溝の底面、側面、又は前面に設けられた複数の加振板と、前記加振板に取り付けられた圧電素子とを備える。
【発明の効果】
【0045】
本発明の圧電素子を備えたチューンドマスダンパーによると、構造物の振動を減らすことができ、同時に振動エネルギーを電気エネルギーに最大限変換して、エネルギー変換部で充電することで、橋梁や構造物のメンテナンスのためのセンサー、構造的特性の変化、及び構造の損傷を予め認知して、事故を未然に防止することができ、橋梁や構造物で無駄になる振動エネルギーをリサイクルすることができるので、環境にやさしい代替エネルギーとしての活用が可能である。
【0046】
また、本発明によると、加振板を金属ではない柔軟なプラスチックやブラシで構成するか、圧電素子に直接、打撃力、振動力を加えることではなく、圧電素子の一側端に補助質量体を結合して、撓み変形により電気エネルギーを発生させる方式を適用することで、耐久性を向上することができ、質量体の振動において、圧電素子が一体に同じ方向に撓み変形するようにして、圧電素子で生成された全ての電気を効率よく集めて整流し蓄電することができる。
【0047】
一方、本発明で得られる効果は、以上で言及した効果に限定されず、言及していない他の効果は、以下の記載から、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、明確に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本明細書に添付する以下の図面は、本発明の好適な一実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明と共に、本発明の技術思想を更に理解させる役目をするので、本発明は、そのような図面に記載された事項に限定して、解してはいけない。
【
図1】
図1は、従来のチューンドマスダンパーが装着された構造物システムを概略的にモデリングして示す図である。
【
図2】
図2は、従来のチューンドマスダンパーが装着された構造物システムを概略的にモデリングして示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1実施例による電気エネルギー発生部側の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーに設けられた加振板と、その上に取り付けられた圧電素子の結合関係を概略的に示す拡大図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第3実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第4実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の第4実施例により、複数の圧電素子端のそれぞれに連結された結合プレートを有するチューンドマスダンパーの斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面に関連する以下の好適な実施例により、容易に理解されるだろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されるものではなく、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示内容が徹底的で完全になるように、また、通常の技術者に、本発明の思想が十分伝達されるようにするために供される。
【0050】
本明細書において、ある構成要素が他の構成要素上にあるとは、他の構成要素上に直接形成されるか、それらの間に第3の構成要素が介在することもあることを意味する。また、図面において、構成要素の厚みは、技術的内容の効果的な説明のために、誇張されている。
【0051】
本明細書で記述する実施例は、本発明の理想的な例示図である断面図及び/又は平面図を参照して説明される。図面において、膜及び領域の厚みは、技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。そこで、製造技術及び/又は許容誤差などにより、例示図の形態が変形することもある。そこで、本発明の実施例は、図示された特定の形態に制限されるものではなく、製造工程によって生成される形態の変化も含む。例えば、直角に示された領域は、丸いか、所定の曲率を有する形態であり得る。そこで、図面で例示した領域は、属性を有し、図面で例示した領域の模様は、素子の領域の特定形態を例示するためのものであって、発明の範疇を制限するものではない。本明細書の様々な実施例において、第1、第2などの用語が、様々な構成要素を記述するために使われているが、これらの構成要素が、このような用語によって限定されてはいけない。これらの用語は、単に、ある構成要素を他の構成要素と区別するために使用している。ここで説明し、例示する実施例は、その相補的な実施例も含む。
【0052】
本明細書で使用している用語は、実施例を説明するためのものであって、本発明を制限するものではない。本明細書において、単数型は、文章で特別に言及しない限り、複数型も含む。明細書で使用している「含む(comprises)」及び/又は「含み(comprising)」とは、1以上の他の構成要素の存在又は追加を排除しない。
【0053】
以下の特定の実施例を記述するに当たり、様々な特定的な内容は、発明をより具体的に説明し、理解を助けるために作成されている。しかし、本発明を理解する程度に、この分野の知識を有している者は、このような様々な特定的な内容がなくても、使用可能であることを認知している。ある場合は、発明を記述するに当たり、よく知られているが、発明とはあまり関係のない部分は、混乱を防止するために、記述しないことを予め言及しておく。
【0054】
以下で説明する本発明において、「構造物」は、橋梁や高層建物、施設物などを総称する。
【0055】
<第1実施例>
以下では、本発明の第1実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの構成及び機能について、説明する。
【0056】
まず、
図3は、本発明の第1実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図であり、
図4は、本発明の第1実施例による電気エネルギー発生部側の断面図である。また、
図5は、本発明による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーに設けられた加振板と、その上に取り付けられた圧電素子の結合関係を概略的に示す拡大図である。
【0057】
図3〜
図5に示しているように、本発明の第1実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー1は、質量体10と、質量体10を構造物に連結する弾性部材20と、質量体10を支持し、ガイドするガイド部30と、質量体10の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部40とを含む。
【0058】
ここで、チューンドマスダンパー1は、構造物に固定された筐体2内や支持プレート内に内蔵されることもできる。
【0059】
また、
図3及び
図4におけるチューンドマスダンパー1は、鉛直方向に振動することを図示した垂直に設置されたものを示しているが、これは、水平面上に設置して、水平方向の振動にも同様に適用することができる。
【0060】
質量体10は、移動方向と平行な面である正面、背面、又は側面に、複数の第1の加振板11が相互離隔して設けられ、第1の加振板11のそれぞれには、圧電素子12が取り付けられ、移動方向と平行な両側面には、ローラ14が設けられ、ガイド部30のガイドレール31に拘束されて、上下方向に摺動する。
【0061】
質量体10の両側面には、摺動を補助する支持腕13を更に形成することができ、支持腕13の末端部にはローラ14を設けて、ガイド部30のガイドレール31に沿って拘束されて、上下方向に移動するように構成することができる。
【0062】
ここで、圧電素子が取り付けられる第1の加振板11は、厚みに比べて幅が広く、長さの長い形状のカンチレバーであり、フレキシブルなスチール板材質で構成するか、耐久性の向上のために、柔軟なプラスチック材質や柔らかいブラシで構成するのが望ましい。これは、打撃により、振動が効率よく曲げられて、振動エネルギーの発生を最大化するためである。
【0063】
また、質量体10の複数の第1の加振板11は、圧電素子が付着していない強固なスチール板材質で構成して、打撃体の役目をすることができる。ここで、複数の打撃体のそれぞれの強度を異にすると、質量体の摺動で繰返し接触して打撃するフレキシブルな加振板に付着した圧電素子に、打撃量の変化を与えることになり、これで振動を増大させるので、電気エネルギーの発生に効率的である。
【0064】
弾性部材20は、質量体10を構造物に連結させる部材であって、構造物に加えられた衝撃力で質量体10を駆動させて、衝撃エネルギーを振動エネルギーに変換させる。弾性部材20としては、通常、バネが用いられるが、バネ復元力を有した部材であれば、差し支えない。
【0065】
本発明では、弾性部材20が、質量体10の支持腕13の下部側にのみ連結していることを示したが、質量体10の支持腕13の上部側に連結することもでき、質量体10の移動方向と垂直な面である上部面や下部面、又は、その他の部分に直接連結することもできる。
【0066】
ガイド部30は、質量体10を支持し、質量体10が上下方向に摺動可能にガイドするもので、垂直に配置されるガイドレール31の形状に設けられ、ガイドレール31の両端部、すなわち、上端部及び下端部は、構造物又は筐体2の上部内側及び下部内側に固定される。
【0067】
また、ガイド部30の所定の位置には、質量体10の上下方向への進行を阻止するストッパ32を設けるのが望ましい。これは、質量体10が構造物に直接衝突することを防止するためである。
【0068】
また、ストッパ32の上部面又は下部面には、弾性材(図示せず)を取り付けて、質量体又は質量体の支持腕13との衝突において、衝撃を吸収するか、フィードバックさせるのが望ましい。
【0069】
ガイドレール31は、断面が多面体である棒状のレールでもよく、又は、断面がT字状又はフック状のレールでもよい。レール31に拘束されて質量体10が上下方向に摺動するように、質量体10の下部、又は質量体10の支持腕13の末端部に設けられるローラ14は、レール31の形状によって、棒状のレールに挟まれる中空の円筒状のローラ、T字状のレールに挟まれるフック状のローラ、又はフック状のレールに挟まれるT字状のローラで構成される。支持腕13と支持腕末端部のローラ14は、締結構造、又は一体に構成される。
【0070】
また、弾性部材20が質量体10に直接連結される場合は、質量体10に支持腕を設ける必要なく、ガイドレール31に拘束されて摺動するローラ14を、質量体の下部に直接付着して締結することができる。
【0071】
電気エネルギー発生部40は、質量体10の移動によって、電気エネルギーを発生するもので、質量体10に相互離隔して設けられた複数の第1の加振板11と、第1の加振板11のそれぞれに取り付けられた圧電素子12と、質量体10の複数の第1の加振板11が設けられた面と対向する支持フレーム(図示せず)、又は筐体2の内側面に設けられ、複数の第1の加振板11に対応して設けられた複数の第2の加振板41と、第2の加振板41に取り付けられた圧電素子42とから構成される。
【0072】
ここで、第1の加振板11と第2の加振板41とは、それぞれの末端が互いに弾力して打撃できる程度に、一定の寸法重畳して構成され、質量体10の上下動によって、第1の加振板11は第2の加振板41に、第2の加振板41は第1の加振板11に、打撃力又は振動力を与え、それぞれに取り付けられた圧電素子12、42には、打撃力又は振動力が伝達されて、振動エネルギーを電気エネルギーに変換できることになる。
【0073】
また、電気エネルギー発生部40は、質量体10に設けられた複数の第1の加振板11、又は支持フレーム(図示せず)又は筐体2の内側面に設けられた複数の第2の加振板41のいずれか1つに圧電素子が付着しておらず、このように圧電素子が付着していない第1の加振板1又は前記第2の加振板41が、打撃体の役目だけをするように構成することができる。
【0074】
ここで、前記打撃体の役目をする第1の加振板又は第2の加振板は、相対的に強度の強いスチール板材質からなる。
【0075】
更に、圧電素子12、42は、打撃体による打撃力によって、第1の加振板11又は第2の加振板41から容易にずれることなく密着結合するように、薄いフィルム状であるのが望ましいが、このような形状に限られないことは、言うまでもない。
【0076】
前記のように圧電素子が加振板に密着結合することで、加振板の振動を十分吸収でき、結果として、振動エネルギーを電気エネルギーに効率よく変換させることになる。
【0077】
<第2実施例>
以下では、本発明の第2実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの構成及び機能について説明する。まず、
図6及び
図7は、本発明の第2実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの断面図である。
【0078】
図6及び
図7に示しているように、本発明の第2実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー100は、質量体110と、質量体110を構造物に連結する弾性部材120と、質量体110を支持し、ガイドするガイド部130と、質量体110の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部140とを含む。
【0079】
図6及び
図7に示しているチューンドマスダンパー100は、水平方向に振動することを図示した平面上に設置されたものを示しているが、これは、垂直面上に設置して、鉛直方向の振動にも同様に適用することができる。
【0080】
また、ガイドレールの構造を半放物線状に構成し、それに合わせて、支持台に設けられた圧電素子を配列することで、水平方向及び鉛直方向の振動に対して、振動を吸収して減衰させると共に、振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0081】
質量体110は、両側面に複数の第1の加振板141が離隔して配置され、それぞれの第1の加振板141には、圧電素子142が付着しており、下部面には、ローラ(図示せず)が形成されて、ガイド部130のガイドレール131に拘束され、レールに沿って、前後方向に移動するように構成することができる。
【0082】
ここで、圧電素子142及び第1の加振板141の構造は、前述した第1実施例と同様である。弾性部材120は、質量体110を構造物に離隔して設けるための固定台3に連結させる部材で、構造物に加えられた衝撃力で質量体110を駆動させて、衝撃エネルギーを振動エネルギーに変換させる。
【0083】
ガイド部130は、質量体110を支持し、質量体110が平面上で摺動可能にガイドするもので、平面上に同一の高さに配置される直線状のガイドレール131、又は高さ差を有した傾斜する直線状のガイドレール、又は高さ差を有した半放物線状のガイドレールのいずれか1つにすることができ、ガイドレールの前端部及び後端部は、固定台3に固定される。また、ガイド部130の前端部及び後端部側の固定台3の位置には、反力体4を備えて、質量体110が前後進しながら、加える衝撃力を吸収し、質量体110に反発力でフィードバックさせるのが望ましい。これは、質量体110が構造物に直接衝突することを防止するためである。
【0084】
また、質量体110と衝突する固定台3の部位、又は反力体4の部位、及び質量体の部位には、対応する突起(q)を設けて、衝突時における衝突面積を減少させるのが望ましい。
【0085】
ガイドレールやガイドレールに挟まれるローラの構造は、第1実施例と同様であり、レールやローラの形状が本発明の例示に限られないことは、言うまでもない。ローラは、質量体の下部面に締結される構造であるか、又は一体に形成することができる。
【0086】
ガイドレールが、高さ差を有した傾斜する直線状又は半放物線状に構成される場合、構造物の水平方向及び鉛直方向の振動に対応して、質量体は、傾斜する直線又は半放物線に沿って移動しながら、振動を吸収することができる。
【0087】
電気エネルギー発生部140は、質量体110の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させるものであり、質量体110に相互離隔して配置された複数の第1の加振板141と、第1の加振板141に取り付けられた圧電素子142と、質量体110の複数の第1の加振板141が設置された面と対向する支持台5の面に設けられ、複数の第1の加振板141に対応して設けられた複数の第2の加振板143と、第2の加振板143に取り付けられた圧電素子144とから構成される。
【0088】
ここで、固定台3には、支持台5がボルトで締結される長溝3аが形成され、長溝3aの下部にはインジケーター3bが設けられ、質量体110の第1の加振板141と、支持台5の第2の加振板143とが互いに打撃できる程度に重畳する距離を調節し、振動有効幅を把握することができる。
【0089】
また、支持台5は、ガイド部130のガイドレール131の形状に対応して形成され、ガイドレールが直線状の場合は支持台5も直線状であり、ガイドレールが高さ差を有した傾斜する直線状の場合は支持台も傾斜する直線状であり、ガイドレールが半放物線状の場合は支持台も半放物線状であるのが望ましい。
【0090】
また、支持台5に設けられる複数の第2の加振板143の配列も、ガイドレール131の形状に対応して形成するのが望ましい。これは、ガイドレール131に沿って、振動する質量体110に設けられた第1の加振板141と、支持台5に設けられた第2の加振板143とが互いに打撃できるようにするためである。
【0091】
また、電気エネルギー発生部400は、質量体110に設けられた複数の第1の加振板141、又は支持台5の面に設けられた複数の第2の加振板143が、打撃体の役目だけをするように構成することができる。また、第1の加振板141と第2の加振板143との少なくともいずれか1つは、柔軟なプラスチック材質又は柔らかいブラシなどの柔軟部材で構成される。そのため、金属と金属の間の打撃、接触による圧電素子の損傷を防ぐことができ、耐久性を向上することができる。
【0092】
<第3実施例>
以下では、本発明の第3実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの構成及び機能について説明する。まず、
図8は、本発明の第3実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの斜視図である。
【0093】
本発明の第3実施例は、前述した第1、第2実施例と異なり、加振板間の打撃方式ではなく、フィルム、板状の圧電素子に変形力を与えることで、電気エネルギーを発生することになる。すなわち、圧電素子が取り付けられた金属と金属との間の直接的な接触を避けて、圧電素子の損傷を防止し、耐久性を向上させる。
【0094】
図8に示しているように、本発明の第3実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー200は、質量体210と、弾性部材220と、連結プレート211と、フレキシブルな第1の加振板230と、移動プレート240と、金属板241と、第2の加振板250と、圧電素子251とを含む電気エネルギー発生部、及び固定プレート260などを含む。
【0095】
第3実施例によるチューンドマスダンパー200は、構造物に固定されたケース内や支持フレーム内に内蔵することもできる。また、
図8におけるチューンドマスダンパー200は、鉛直方向に振動することを図示した垂直に設置されたものを示しているが、これは、水平面上に設置して、水平方向、放物線方向の振動にも、同様に適用することができる。
【0096】
本発明の第3実施例による質量体210は、前述したものと同様な構成を有し、質量体210の移動方向と平行な面に、
図8に示しているように、フレキシブルな材質の複数の第1の加振板230が設けられる。第1の加振板230は、金属材質ではなく、フレキシブルなプラスチックや柔らかいブラシ材質で構成するのが望ましい。
【0097】
弾性部材220は、前述したように、質量体210を構造物に連結させる部材であって、構造物に加えられた衝撃力で質量体210を駆動させて、衝撃エネルギーを振動エネルギーに変換させる。弾性部材220としては、通常、バネが用いられるが、バネ復元力を有した部材であれば、差し支えない。
【0098】
移動プレート240は、
図8に示しているように、第1の加振板230が設けられた質量体210の面と所定の間隔離隔して対向して配置されている。また、金属板241は、このような移動プレート240に結合され、金属板241の末端が、第1の加振板230の少なくともいずれか1つと重畳して位置する。
【0099】
そして、電気エネルギー発生部は、複数の第2の加振板250と、このような第2の加振板のそれぞれに設けられる圧電素子251とから構成される。複数の第2の加振板250は、構造物、又は
図8に示しているように、構造物上に設けられる固定プレート260と移動プレート240の間に設けられる。そして、圧電素子251は、このような第2の加振板250のそれぞれに面接触して設けられ、与えられる変形力によって、電気エネルギーが生じることになる。
【0100】
すなわち、質量体210の移動によって、第1の加振板230が金属板241を打撃することになり、金属板241を打撃することで、移動プレート240が上下動し、複数の圧電素子251が同一の方向に撓み変形して、電気エネルギーを生じることになる。
【0101】
圧電素子251の撓み方向が互いに異なる場合は、圧電素子251のそれぞれで生成される電気の(+)(−)値が別々であって、1つ1つの圧電素子251に整流子を結合して蓄電しなければならないので、部品点数が増加して経済性が低下するが、本発明の第3実施例でのように、圧電素子251の端のそれぞれを移動プレート240に結合することで、圧電素子251が常に同一の撓み方向を有し、圧電素子251で生成された全ての電気を集めて整流して、効率的且つ経済的に蓄電することができる。
【0102】
そして、発電効率を向上するために、第2の加振板250に結合される圧電素子251の位置によって、移動プレート240と第2の加振板250のそれぞれは、剛結又はピン連結される。
【0103】
また、
図8には示していないが、第3実施例も、前述した第1、第2実施例と同様に、質量体を支持し、移動をガイドするガイド部を含むことができる。
【0104】
<第4実施例>
以下では、本発明の第3実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの構成及び機能について説明する。まず、
図9は、本発明の第4実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパーの斜視図である。
【0105】
本発明の第4実施例は、前述した第1、第2実施例と異なり、加振板間の打撃方式ではなく、フィルム、板状の圧電素子に変形力を与えることで、電気エネルギーを発生させる。すなわち、圧電素子が取り付けられた金属と金属との間の直接的な接触を避けて、圧電素子の損傷を防止し、耐久性を向上させる。
【0106】
図9に示しているように、本発明の第4実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー300は、質量体310と、弾性部材320と、撓み変形することによって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部と、電気エネルギー発生部の端のそれぞれに設けられる補助質量体340などを含む。
【0107】
第4実施例によるチューンドマスダンパー300は、構造物に固定したケース内や支持フレーム内に内蔵することもできる。また、
図9に示したチューンドマスダンパー300は、鉛直方向に振動することを図示した垂直に設置されたものを示しているが、これは、水平面上に設置して、水平方向、放物線方向の振動にも同じく適用することができる。
【0108】
弾性部材320は、前述したように、質量体310を構造物に連結させる部材であって、構造物に加えられた衝撃力で質量体310を駆動させて、衝撃エネルギーを振動エネルギーに変換させる。弾性部材320としては、通常、バネが用いられるが、バネ復元力を有した部材であれば、差し支えない。
【0109】
加振板330は、
図9に示しているように、一側端のそれぞれが質量体310の移動方向と平行な面に相互離隔して配置され、柔軟な材質で構成される。また、このような加振板330のそれぞれに、圧電素子が設けられる。
【0110】
また、補助質量体340は、
図9に示しているように、加振板330の他側端のそれぞれに設けられ、質量体310の移動に連動して移動する。そこで、質量体310と補助質量体340との移動によって、加振板330に設けられる圧電素子331に変形力が与えられ、電気エネルギーが発生することになる。すなわち、圧電素子331が撓み変形しながら、電気エネルギーを発生させる。
【0111】
また、本発明の第4実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー300は、複数の補助質量体340のそれぞれを連結する結合プレート341を含むことができる。
図10は、本発明の第4実施例によって、複数の圧電素子の端のそれぞれに連結した結合プレートを有するチューンドマスダンパーの斜視図である。
【0112】
図10に示しているように、加振板330の他側端のそれぞれに設けられた補助質量体340のそれぞれを互いに連結する結合プレート341を含むことで、質量体310の移動に連動して結合プレート341が移動し、質量体310と前記結合プレート341の間の複数の圧電素子331が、常に同じ方向に撓み変形して、電気エネルギーを発生させる。
【0113】
圧電素子331の撓み方向が互いに異なる場合は、圧電素子331のそれぞれで生成される電気の(+)(−)値が別々であって、1つ1つの圧電素子331に整流子を結合して蓄電しなければならないため、部品点数が増加して経済性が低下するが、
図10に示しているように、圧電素子331の他側端の補助質量体340のそれぞれを互いに連結結合する結合プレート341を設けることで、圧電素子331が常に同一の撓み方向を有することになり、圧電素子331で生成された全ての電気を集めて整流して、効率的且つ経済的に蓄電することができる。
【0114】
そして、発電効率を向上させるために、加振板330に結合される圧電素子331の位置によって、結合プレート341と加振板330のそれぞれは、剛結又はピン連結される。
【0115】
また、
図9及び
図10には示していないが、第4実施例も、前述した第1、第2実施例と同様に、質量体を支持し、移動をガイドするガイド部を含むことができる。
【0116】
<第5実施例>
以下では、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー400の構成及び機能について説明する。
図11、
図12、
図13は、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー400の断面図である。
【0117】
また、
図11〜
図13に示しているように、本発明の第5実施例による圧電素子を備えたチューンドマスダンパー400は、質量体410と、質量体410の移動による打撃によって、圧電素子で電気エネルギーを発生させる電気エネルギー発生部440とを含む。
【0118】
ここで、質量体410は、構造物に連結されたケーブル420によって振子運動をするか、又は内部に曲面のガイド溝430が形成されたガイド部に沿って移動しながら、振子運動をすることになる。
【0119】
ここで、質量体410は、球状や六面体又は多面体で構成される。ガイド部は、内部に一定の幅のガイド溝430が曲面に形成されたもので、質量体が内部曲面に沿って移動しながら、振子運動をする。ガイド部の両末端部には、反力体又は弾性材(図示せず)を設けるのが望ましい。
【0120】
また、電気エネルギー発生部440は、ケーブル420に連結された質量体410自体、又は質量体410に付着した打撃体と、質量体410が運動エネルギーだけを有する平衡地点、又は位置エネルギーだけを有する左右の所定位置に位置した時に打撃されるように、平衡位置又は左右の所定位置の質量体下部の所定の位置に設けられた加振板と、加振板に付着した圧電素子とから構成することができ、また、質量体410自体、又は質量体に付着した打撃体と、質量体が曲面のガイド溝430に沿って振子運動しながら打撃されるように、ガイド溝430の底面、側面又は前面に設けられた加振板と、加振板に付着した圧電素子とから構成することができる。
【0121】
本発明の第5実施例によるチューンドマスダンパー400は、構造物の振動が発生する箇所に設けられるものであって、構造物で発生した振動によって質量体410が移動又は往復動しながら、複数の圧電素子が打撃することになり、打撃力、又は打撃力による振動エネルギーを伝達されたそれぞれの圧電素子は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換させる。
【0122】
このような複数の圧電素子が繰り返し打撃されることで、変換して発生する電気エネルギーの量は、非常に大きいと言え、この圧電素子で発生する電流の強さによって、橋梁上板の上載荷重変化を確認することで、車両の重量を間接して計測することに活用されるだけでなく、圧電素子で発生した電流の変動信号を用いて、構造物の健全性評価に必要な情報を提供することができる。本発明においては、圧電素子の電気的な連結構造は、省略している。
【0123】
前記で説明された装置及び方法は、前記説明された実施例の構成と方法が限定して適用されることではなく、前記実施例は、様々な変形が行われるように、各実施例の全部又は一部が選択的に組合して構成される。
【符号の説明】
【0124】
1、100、200、300、400:圧電素子を備えたチューンドマスダンパー
2:筐体
3:固定台
3a:長溝
3b:インジケーター
4:反力体
5:支持台
10、110、210、310、410:質量体
11、141、230:第1の加振板
12、42、142、144、251、331:圧電素子
13:支持腕
14:ローラ
20、120、220、320:弾性部材
30、130:ガイド部
31、131:ガイドレール
32:ストッパ
40、140、440:電気エネルギー発生部
211:連結プレート
240:移動プレート
241:金属板
260:固定プレート
330:加振板
340:補助質量体
341:結合プレート
420:ケーブル
430:ガイド溝
q:突起