【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例は特許請求の範囲に包含されるか否かによって区別されるものではない。特に良好な結果が得られた実施形態を実施例とし、それ以外の実施形態を比較例とした。
【0042】
<電極触媒の製造>
[実施例1]
担持工程:デンカブラック(1.0g:電気化学工業株式会社製)を純水(41.6mL)に分散させた。白金(1.0g)を含むジニトロジアミン白金硝酸溶液(特許第4315857号:キャタラー株式会社製)を滴下し、デンカブラックと十分に馴染ませた。還元剤としてエタノール(3.2g)を加え、還元担持を行った。分散液をろ過洗浄し、得られた粉末を乾燥させ、白金担持触媒を得た。次に、白金担持触媒の表面上の酸素量を4重量%以下まで低減させ、製品比率(モル比)でPt:Coが7:1となるようにコバルト(0.03g)を担持させた。
【0043】
本実施例で使用したデンカブラックは、中実カーボンであって、X線回折により測定された結晶層厚み(Lc)が19Åであり、N
2吸着によって求められるBET表面積とt−Pot(粒子サイズから粒子外部の表面積を算出した)による外表面積との比率(t−Pot表面積/BET表面積)が49.6%である。なお、中空カーボンの場合、t−Pot表面積/BET表面積は28.1%である。
【0044】
合金化工程:得られた担持触媒をアルゴン雰囲気下、800℃で合金化した。
酸処理工程:合金化した担持触媒を0.5N硝酸を使用して80℃で酸処理し、電極触媒を得た。
【0045】
[実施例2〜27、比較例1〜73]
Pt:Co(モル比)、合金化温度、酸処理温度を変更したこと以外は実施例1と同一の工程で電極触媒を製造した。
実施例及び比較例の製造条件を表1〜4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【表4】
【0050】
<MEA評価>
実施例及び比較例で製造した電極触媒を有機分溶媒に分散させ、分散液をテフロン(登録商標)シートへ塗布して電極を形成した。電極をそれぞれ高分子電解質膜を介してホットプレスによって貼り合わせ、その両側に拡散層を配置して固体高分子形燃料電池用の単セルを作成した。
【0051】
セル温度を80℃、両電極の相対湿度を100%とし、スモール単セル評価装置システム(株式会社東陽テクニカ製)を用いて、サイクリックボルタンメトリー(CV)及びIV測定を行った。
【0052】
CVについては、範囲を0.05〜1.2V、速度を100mV/sとして電位走査を5度行い、5度目のCVのH
2吸着領域の電荷量からECSA(Pt質量当たりの電気化学的な表面積)を算出した。
【0053】
IV測定については、0.01〜1.0A/cm
2の範囲で任意に電流を制御した。0.76V時のPt質量当たりの電流値を質量活性と定義した。
【0054】
<PtCo合金の平均粒径>
JIS K 0131に準拠したX線回折法(XRD法)で測定されたXRDチャートにおける、Pt金属単体が示すピークの強度から算出した。
【0055】
<Co溶出量>
硫酸溶液20mLと電極触媒0.5gをサンプル瓶中に撹拌子と共に入れ、スターラーで混合分散し、室温下で100時間混合する。その後、混合液を固液分離(ろ過)し、ろ液中のCo濃度をICPで測定した。
【0056】
<プロトン抵抗>
単セルのIVを測定後、交流インピーダンス法によりプロトンを算出した。
【0057】
<結果1>
図1にPt/Coモル比と質量活性との関係を示す。
図1における各プロットは、左から:
比較例13(Pt/Coモル比:3、質量活性:253mA/cm
2@0.76V);
実施例14(Pt/Coモル比:4、質量活性:200mA/cm
2@0.76V);
実施例1(Pt/Coモル比:7、質量活性:185mA/cm
2@0.76V);
実施例23(Pt/Coモル比:11、質量活性:175mA/cm
2@0.76V);
比較例86(Pt/Coモル比:15、質量活性:165mA/cm
2@0.76V);
に対応する。
【0058】
FC車に搭載する電極触媒に求められる質量活性は175mA/cm
2@0.76V以上である。そのため、Pt/Coモル比は11以下であることが好ましい。一方、
図4から分かるように、Pt/Coモル比が3である比較例13ではCoの溶出量が多い。従って、好ましいPt/Coモル比は4〜11である。
【0059】
<結果2>
図2にPtCo合金の平均粒径と質量活性との関係を示す。また、
図3にPtCo合金の平均粒径とECSA維持率との関係を示す。
【0060】
図2及び
図3における各プロットは、左から:
比較例44(平均粒径:3nm、質量活性:203mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:37%);
実施例8(平均粒径:3.5nm、質量活性:191mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:40%);
実施例1(平均粒径:4nm、質量活性:185mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:50%);
実施例5(平均粒径:4.1nm、質量活性:178mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:52%);
比較例23(平均粒径:6nm、質量活性:135mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:71%);
比較例55(平均粒径:7nm、質量活性:113mA/cm
2@0.76V、ECSA維持率:83%);
に対応する。
【0061】
上記の通り、FC車に搭載する電極触媒に求められる質量活性は175mA/cm
2@0.76V以上である。そのため、PtCo合金の平均粒径は4.1nm以下であることが好ましい。また、電極触媒に求められるECSA維持率は40%以上である。そのため、PtCo合金の平均粒径は3.5nm以上であることが好ましい。従って、好ましいPtCo合金の平均粒径は3.5〜4.1nmである。
【0062】
<結果3>
図4に、Co溶出量とプロトン抵抗との関係を示す。
図4における各プロットは、左から:
実施例8(Co溶出量:4ppm、プロトン抵抗:0.50mΩ・13cm
2);
実施例1(Co溶出量:16ppm、プロトン抵抗:0.51mΩ・13cm
2);
実施例5(Co溶出量:27ppm、プロトン抵抗:0.52mΩ・13cm
2);
比較例13(Co溶出量:145ppm、プロトン抵抗:0.63mΩ・13cm
2);
比較例26(Co溶出量:350ppm、プロトン抵抗:0.80mΩ・13cm
2);
に対応する。
【0063】
電極触媒に求められるプロトン抵抗は0.6mΩ以下である。従って、好ましいCo溶出量は115ppm以下である。
【0064】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。