特許第6232511号(P6232511)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232511デニム製品用糸の製造方法、並びにその方法によって製造されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品
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  • 特許6232511-デニム製品用糸の製造方法、並びにその方法によって製造されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6232511
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】デニム製品用糸の製造方法、並びにその方法によって製造されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品
(51)【国際特許分類】
   D06P 1/34 20060101AFI20171106BHJP
   A41D 31/00 20060101ALI20171106BHJP
   D06B 3/04 20060101ALI20171106BHJP
   D06B 5/06 20060101ALI20171106BHJP
   D06P 3/24 20060101ALI20171106BHJP
   D06P 7/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   D06P1/34
   A41D31/00 501Q
   A41D31/00 503F
   A41D31/00 502B
   A41D31/00 B
   D06B3/04 Z
   D06B5/06
   D06P3/24 B
   D06P7/00
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-41172(P2017-41172)
(22)【出願日】2017年3月3日
【審査請求日】2017年3月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595074358
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(73)【特許権者】
【識別番号】000105154
【氏名又は名称】株式会社GSIクレオス
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄之助
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−280286(JP,A)
【文献】 特開昭49−108148(JP,A)
【文献】 特開昭52−124985(JP,A)
【文献】 特表平06−503860(JP,A)
【文献】 特開2001−124699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06P 1/34
A41D 31/00
D06B 3/04
D06B 5/06
D06P 3/24
D06P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸を、インディゴ系染料と還元剤とを含有する35〜88℃の染色液に対して浸漬して、デニム製品用糸を連続的に製造する方法であり、
インディゴ系染料は、還元されることにより水溶化し、酸化することで水に対して不溶化するものであり、
前記糸を染色液に対して浸漬する工程は糸の芯の部分に染料が浸透しないように糸に張力を掛けた状態で連続的に行われるものであり、
染色されたデニム製品用糸は、その芯の部分が中白であり、芯の外側はインディゴ系染料によって染色されたものであるデニム製品用糸の製造方法。
【請求項2】
前記糸を染色液に対して浸漬する工程は、前記糸で構成したロープに張力を掛けた状態で染色液に対して浸漬するものである請求項1に記載のデニム製品用糸の製造方法。
【請求項3】
前記糸を染色液に浸漬する工程は複数回にわたって行われるものであり、その浸漬する回数は一定であり、染色液のインディゴ濃度を5〜100g/Lの範囲で変更する請求項1又は2に記載のデニム製品用糸の製造方法。
【請求項4】
染色液のpHは、11.0〜13.9である請求項1ないし3のいずれかに記載のデニム製品用糸の製造方法。
【請求項5】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、ナイロンの短繊維を紡績してなるスパン糸である請求項1ないし4のいずれかに記載のデニム製品用糸の製造方法。
【請求項6】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、ナイロンの長繊維より構成されるフィラメント糸である請求項1ないし5のいずれかに記載のデニム製品用糸の製造方法。
【請求項7】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸であって、糸の芯部が中白であり、芯部の外側はインディゴ系染料によって染色された状態であって、
インディゴ系染料は、還元剤の存在下で還元されることにより水溶化し、酸化することで水に対して不溶化する性質を有するものであるデニム製品用糸。
【請求項8】
請求項7に記載されたデニム製品用糸を生地を構成する糸とするデニム製品用生地。
【請求項9】
請求項8に記載されたデニム製品用生地から構成されるデニム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デニム製品用糸の製造方法、並びにその方法によって製造されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
デニムパンツ、デニムジャケット、デニムシャツなどのデニム製品は、カジュアル衣料品として広く普及している。変わったところでは、デニム生地を使用した鞄などのデニム製品も見受けられる。
【0003】
従来のデニム製品に使用されるデニム生地としては、インディゴ系染料で染色された綿糸を経糸とし、未染色の綿糸を緯糸とする綾織布が一般的である。従来のデニム生地の経糸は、特許文献1に記載されているように、中白になるように染色することが一般的である。
【0004】
一方で、特許文献2や特許文献3のように、綿以外の素材を利用したデニム生地も提案されている。例えば、特許文献2には、ナイロン中空短繊維からなる紡績糸で構成した織物を使用したナイロンデニムが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、ナイロンやポリエステルなどの合成繊維をインディゴ系染料で染色する方法が記載されている。特許文献2の[0013]等によると、高温(90〜130℃)の染色液にポリエステル等の合成繊維を投入したのち、染色物を十分に水洗し、その後乾燥するとされている。そして、この方法によれば、従来は染色が困難であったインディゴ系染料による合成繊維、特に通常のポリエステルの染色が可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭46−2789号公報
【特許文献2】特開2004−316003号公報
【特許文献3】特開平10−280286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では糸が中白に染色されている。このためユーザーがデニム生地を使用しているうちに、摩擦によるインディゴ系染料の脱落や糸の摩耗によって、糸の中白部分が露出する。これによって、デニム生地特有の色落ちによる独特の風合いが生まれる。このようなデニム特有の経年による風合いの変化を楽しむユーザーは少なくない。ユーザーの中には、購入したばかりのジーンズパンツの表面を紙やすりなどを利用して研磨し、中古感を再現する者までいる。
【0008】
特許文献2にはナイロンデニムが記載されているものの、この文献には、ナイロンの糸を中白に染色することは記載されていない。
【0009】
特許文献3の染色方法では、90〜130℃の高温に加熱した染色液に合成繊維を10〜60分間浸漬して染色を行う。このため、合成繊維からなる糸が芯までインディゴ系染料で染色されてしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸をインディゴ系染料で中白にしかも連続的に染め上げることが可能なデニム製品用糸の製造方法を提供することを目的とする。その製造方法を利用することによって、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸でありながらも、糸の芯部が中白でありその外側はインディゴによって染色されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸を、インディゴ系染料を含有する35〜88℃の染色液に対して浸漬してデニム製品用糸を連続的に製造する方法であり、前記糸を染色液に対して浸漬する工程は糸の芯の部分に染料が浸透しないように糸に張力を掛けた状態で行われるものであり、染色されたデニム製品用糸は、その芯の部分が中白であり、芯の外側はインディゴによって染色されたものであるデニム製品用糸の製造方法によって、上記の課題を解決する。
【0012】
上記の製造方法を実施することによって、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸であって、糸の芯部が中白であり、芯部の外側はインディゴによって染色された状態であるデニム製品用糸が得られる。そして、このデニム製品用糸を利用することによって、その糸を生地を構成する糸とするデニム製品用生地が得られる。さらに、このデニム製品用生地を利用することによって当該デニム製用生地から構成されるデニム製品が得られる。
【0013】
上記の製造方法において、糸を染色液に浸漬する工程は複数回にわたって行われるものであり、その浸漬する回数は一定であり、染色液のインディゴ濃度を5〜100g/Lの範囲で変更することが好ましい。これによって、染色液を入れた染色槽の数を増減させずに、インディゴ濃度を変更することで糸の染色濃さを自在に変更することが可能になる。
【0014】
上記の製造方法において、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸の染色は、前記糸で構成したロープに張力を掛けた状態で浸漬液に対して浸漬することが好ましい。糸をロープ状に束ねることにより、張力等で糸切れが生じることを防いで、歩留まりよく染色を行うことが可能になる。
【0015】
上記の製造方法において、染色液のpHは11.0〜13.9であることが好ましい。このようにすることによって、インディゴ系染料が糸により染着しやすくなり、インディンゴ染料の摩擦堅牢度もより向上させることが可能となる。
【0016】
上記の製造方法において、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、ナイロンの短繊維を紡績してなるスパン糸とすることが好ましい。このようにすることによって、デニム製品の外観を綿糸を使用したような自然な風合いに仕上げることが可能になる。
【0017】
上記の製造方法において、ナイロン繊維は、ナイロンの長繊維より構成されるフィラメント糸とすることが好ましい。このようにすることによって、糸の強度を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸をインディゴ系染料で中白にしかも連続的に染め上げることが可能なデニム製品用糸の製造方法を提供することができる。その製造方法を利用することによって、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸でありながらも、糸の芯部が中白でありその外側はインディゴによって染色されたデニム製品用糸、デニム製品用生地、及びデニム製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ロープ染色機の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、デニム製品用糸の製造方法の一実施形態を示して説明する。本実施形態の方法は、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸で構成した糸を、35〜88℃の染色液に対して浸漬してデニム製品用糸を製造する方法であり、前記糸を染色液に対して浸漬する工程は糸の芯の部分に染料が浸透しないようにロープに張力を掛けた状態で行われるものであり、染色されたデニム製品用糸は、その芯の部分が中白であり、芯の外側はインディゴによって染色されたものであるデニム製品用糸の製造方法である。
【0021】
前記糸を染色液に対して浸漬する工程は、例えば、ロープ染色により行ってもよいし、シート染色により行ってもよい。ロープ染色の場合は、前記糸をロープ状に束ねた状態で染色液に対して浸漬するため、張力等により糸切れが生じることが防止される。シート染色の場合は、複数本の糸をシート状に引き揃えた状態で染色液に対して浸漬する。ロープ状に複数の糸を束ねる工程を省略することができるため、製造コストを下げることが可能である。
【0022】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、糸の全質量に占めるナイロン繊維の質量が50質量%を超えるものであればよい。ナイロン繊維以外の副成分としては、例えば、綿やウールなどの天然繊維、レーヨンやポリウレタンなどの化学繊維が挙げられる。これらの副成分は、混紡したり交撚したりすることができる。
【0023】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、芯の部分が中白であり、芯の外側はインディゴ系染料によって染色される。このため、糸は中実に構成することが好ましい。芯の部分の中白に残すことによって、デニム製品を使用するにつれて経時的に糸の中白な部分を露出させることが可能になる。これによって、ナイロン繊維を主たる構成繊維とする糸でありながらも、従来の綿糸で構成したデニム製品用糸と同様にデニム特有の色落ちを楽しむことが可能である。
【0024】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、従来の綿糸に比べて、軽量であり、引張強度に優れ、しかも速乾性においても優れる。このため、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸を使用して得たデニム製品用生地及びデニム製品は、軽量で、破れにくく、濡れても乾きやすい。このような点で従来の綿を使用したデニム製品よりも優れる。
【0025】
上記のような中白なナイロン繊維の糸は、35〜88℃のアルカリ性の染色液に対して糸に張力を掛けた状態で糸を染色液に浸漬し、その後インディゴ系染料を酸化することによって得ることができる。染色液の温度は、78〜88℃であることがより好ましい。糸に張力を掛けた状態で上記温度の染色液に浸漬した場合、糸の外側にインディゴ系染料が浸透し、糸の芯の部分にはインディゴ系染料が浸透しないようにすることができる。ナイロンは結晶性が高くインディゴ系染料に対して染まり難い。上記のような温度範囲にすることで、ナイロン繊維を構成繊維とする糸であっても、インディゴ系染料で糸の芯の部分の外側を染色することができる。これは、高温によりナイロン分子の分子間の距離が大きくなり、複数のナイロン分子の間にインディゴ分子が入りやすくなるためであると推測される。
【0026】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸から構成される糸に張力を掛けた状態で染色液に浸漬するには、例えば、図1に示したロープ染色機1を使用して行うことができる。図1のロープ染色機1は、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸16を巻き付けるための糸巻11と、精錬槽12と、複数の染色槽13と、複数の方向変換用のローラー14と、絞りローラー15と、酸化用ローラー17を備えている。この装置では、糸は一方の糸巻11から他方の糸巻(図示略)へと糸が巻き取られる過程で、糸が染色槽13に溜められた染色液と大気などの酸素を含む気体中とを通過する際に、糸が連続的に染色される。
【0027】
装置1の精錬槽12には加熱された水が入っており、糸の表面に付着した不純物を除去する。染色槽13には、水溶性のインディゴ系染料のロイコ体を含有する染色液が入れられている。染色槽内には、ローラー14が配置されている。染色槽内のローラー14に対してナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸を束にしたロープを張力を掛けた状態で架け渡すことができる。糸を巻き取ることで、染色槽内に貯留された染色液中に糸を通過させることができる。このようにして、ナイロン繊維を含む糸を張力を掛けた状態で染色液に浸漬することができる。その後、染色槽内に投入されたロープは、一対の絞りローラー15で余分な染色液が落とされる。その後ロープは酸化用ローラー17を通過する。ロープに付着したインディゴ系染料は、酸化用ローラー17を通過する際に大気など酸素を含む気体中で酸化を受けて、固化する。酸化用ローラー17は、ロープが通過する距離を稼ぐためのものであり、複数のローラーが上下方向又は左右方向に対して所定のピッチを空けて配置されている。
【0028】
シート染色を行う場合の染色機の構成は、図1のロープ染色機と同様にすることができる。ただし、糸巻16に対して複数の糸を平行に引き揃えた状態で巻き取る点、糸に係る張力などを変更する必要がある。
【0029】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸の染色は、複数回にわたって行うことが好ましい。この点、図1のロープ染色機1は、1つの精錬槽12と、4つの染色槽13とを備えている。ロープは染色液への浸漬、絞り、酸化を4回受けることになる。ロープが染色槽を通過するごとに糸にインディゴ系染料が付着し、糸がより濃色に染め上げられる。各染色槽14には、インディゴ系染料を含有する染料が貯留される。染色液のインディゴ濃度は、5〜100g/Lの範囲で変更することができる。これによって、糸の染色濃さを染色槽13の数を増減させることなく変更することが可能になる。例えば、薄く糸を染め上げたいときは、インディゴ濃度を小さくすることにより薄く染め上げることができる。濃く糸を染め上げたいときは、インディゴ濃度を大きくすることにより濃く染め上げることができる。すなわち、ロープを染色液に浸漬する工程は複数回にわたって行われるものであり、その浸漬する回数は一定であり、染色液のインディゴ濃度を5〜100g/Lの範囲で変更することによって、ロープ染色機1の構成を変更することなく、糸の染色濃さを自在に変更することが可能になる。
【0030】
糸又はロープを染色液に浸漬する時間は、特に制限されない。例えば、一回当たりの浸漬時間が10〜40秒となるようにすればよい。酸化時間についても、同様に特に限定されない。例えば、1回あたりの酸化時間が60〜240秒となるようにすればよい。
【0031】
図1のロープ染色装置1において図示は省略するが、最後の染色槽にロープを通した後は、糊を満たした染色槽を通したり、熱風を吹き付けたりした後、他方の糸巻に巻き取る工程を行えばよい。
【0032】
ロープ染色の場合は、複数の糸を束状にして軽く撚られた状態で複数のローラー14によって、糸が搬送される。複数の糸をシート状に並べて染色槽に供給するシート染色法などでは、糸が細いとローラーで糸を搬送する過程で糸が切れてしまう場合がある。糸が切れるとローラーなど染色装置に糸が巻き付いて著しく作業効率を低下させる。ロープ染色法では、糸が軽く撚られているため、細糸でも切れ難い。このため、細い糸であっても、効率よく染色を行うことが可能である。例えば、70〜900dtexの糸を中白に染色することが可能である。
【0033】
細い糸を破断させずに染色する場合は、糸を糸巻に巻き付けた状態で染色液に浸漬するチーズ染色を行うことが考えられる。しかしながら、チーズ染色の場合はポンプで染色液を循環さながら染色を行うため、糸の芯の部分が染着してしまう。
【0034】
上述の通り、染色液の温度は、35〜88℃の範囲に設定する。染色液の温度が過度に高い場合は、染色液を加圧する設備が必要になるが、上記のような温度範囲であれば加圧設備は特に必要ない。このため、染色機の構成を簡素なものにすることが可能である。耐圧設備を必要としないため、上述の通り、複数のローラー14を利用して、糸を連続的に複数の染色槽に供給することが可能になる。また、圧力を制御する必要がなくなるため、染色をバッチ式ではなく、連続式で行うことが可能になり、染色作業の効率を飛躍的に上昇させることが可能になる。
【0035】
染色液のpHは、11.0〜13.9とすることが好ましい。上述の通り、ナイロンは結晶性が高く、インディゴ系染料では染着しづらい。染色液のpHを上記のようにすることによって、ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸に対するインディゴ系染料の染着性を向上させて、染料の堅牢性も向上させることができる。
【0036】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸は、ナイロンの短繊維を紡績してなるスパン糸としてもよいし、ナイロンの長繊維より構成されるフィラメント糸としてもよい。スパン糸とした場合は、綿糸をインディゴで染め上げた従来のデニム繊維用糸同様の風合いに仕上げることが可能になる。フィラメント糸とした場合は、引張強度が強く光沢感のあるデニム繊維用糸とすることができる。上述の通り、ロープ染色の場合は、糸を破断し難くすることができるため、スパン糸としても歩留まりは良好である。ナイロンの短繊維は、例えば、繊維径が15〜48μmであることが好ましく、15〜18μmであることがより好ましい。ナイロンの長繊維は、例えば、繊維径が15〜20μmであることが好ましい。
【0037】
使用するインディゴ系染料は、発色団に以下の化1の構造を有しており、還元されることによりロイコ体を形成して水溶化し、酸化することで水に対して不溶化するバット染料であればよい。
【化1】
【0038】
使用するインディゴ系染料は、以下の化2に示すインディゴであることが好ましい。
【化2】
【0039】
染色液には還元剤、及び/又はアルカリ剤を配合することが好ましい。配合する還元剤としては、例えば、亜ジチオン酸ナトリウム、グルコースなどが挙げられる。アルカリ剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を挙げてより具体的に説明する。
【0041】
以下のようにして、ナイロン繊維で構成した糸を、インディゴ系染料で染色して、試験片を作製した。それぞれの試験片について、種々の条件で染色を行い、糸の芯部分が中白に染まっているか、染色の濃さ(染色濃度)、摩擦堅牢度を評価した。
【0042】
糸は、繊維長38mm程度のナイロン繊維を用いて紡績した280dtexのスパン糸を使用した。染色液は、インディゴ染料、NaOH、亜ジチオン酸ナトリウム、グルコース、及び水を混合して、pH、インディゴ濃度及び温度を種々変化させたものを用意した。
【0043】
上記のスパン糸を500本束ねてロープ上にしたものを6本引き揃えた状態でボビンに巻き取って、図1のロープ染色機にセットした。精錬槽には熱水が投入されており、複数の染色槽には上記の染色液が投入されている。このため、複数のローラーでロープを搬送する過程で精錬が行われ、その後、染色液への浸漬、絞り、酸化が連続的に繰り返し行われる。浴比は1:300程度になるようにし、染色液への1回あたりの浸漬時間は40秒、1回あたりの酸化時間は240秒になるようにした。
【0044】
染色液の温度と染色液のpHとを表1のように変化させて、ロープ染色を行った。温度とpHとを変更して染められたそれぞれの糸を経糸として使用し、未染色のナイロン繊維で構成した糸を緯糸として使用して、綾織の試験片を作製した。染色液のインディゴ濃度は15g/Lとした。各試験片について、目視による染色濃度を評価し、JISL0849II形法(乾式)の方法に準拠して染料の摩擦堅牢度を評価した。併せて、それぞれの糸を切断して断面を目視で観察した。各試験片の評価結果を表2に示す。表2において中白の欄について×を付したものは、糸の芯の部分に中白部分が確認できなかったものであり、〇を付したものは、糸の芯の部分に中城部分が確認できたものである。摩擦堅牢度及び染色濃度の欄に×を付したものは、それぞれ摩擦によって染色後の試験片の染料が退色したり色移りしやすかったもの、染色後の試験片の色が薄かったものを示す。摩擦堅牢度及び染色濃度の欄に〇を付したものは、摩擦堅牢度及び染色濃度が優れていたものを示す。、摩擦堅牢度及び染色濃度の欄に◎を付したものは摩擦堅牢度及び染色濃度が特に優れていたものを示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2から明らかなように、染色液のpH及び温度が高い方が染色濃度及び摩擦堅牢度が高くなる傾向が確認された。一方、染色液の温度が過度に高いと糸の芯部分まで染色されてしまうことがわかった。これは、染色液の温度が沸点に近づき、染色液中から気泡が立ち上りその気泡によってロープに染料が浸透しやすくなったことによるものと推測される。
【0048】
次に、染色液のpHを12.0、温度を80℃に固定し、インディゴ濃度を5〜100g/Lの範囲で変更して、ロープ染色機の4つの染色槽に投入した。その後、ロープ染色機を稼働してインディゴ濃度を変化さて糸を染め上げ、染色された糸を使用して上記と同様にして綾織りの試験片を作製した。
【0049】
4つの染色槽を全て10g/Lのインディゴ濃度とした場合の試験片と、4つの染色槽を全て50g/Lのインディゴ濃度とした場合の試験片と、4つの染色槽を全て80g/Lのインディゴ濃度とした場合の試験片とを比較すると、インディゴ濃度が濃くなるにつれて、試験片のインディゴ色が濃くなることが確認された。染色槽の数を変更するなど装置構成を変更しなくても、染色槽に投入する染色液の染色濃度を変更することによって、染めの強さを制御することができることが確認された。
【0050】
上述の評価で良好な成績を示した試験片11と同様の製造方法で、デニム製品用糸、及びデニム製品用生地を作製した。そして、さらに定法にしたがって、デニム製品用生地を使用してジーンズパンツを縫製した。このナイロン繊維製のジーンズパンツは、綿で構成した従来のジーンズパンツに比較すると、速乾性に優れており、軽量であった。ナイロン繊維製のジーンズパンツの風合いは、従来の綿で構成したジーンズパンツと同じであった。ナイロン繊維製のジーンズパンツの表面をサンドペーパーで削り、洗濯するなどして中古加工を行ったところ、綿で構成した従来のジーンズパンツと同じような色落ちを示した。一方で、ナイロン製のジーンズパンツは、綿で構成した従来のジーンズパンツに比較して、引き裂けにくく、特に中古加工を行った部分から引き裂けにくい傾向があることが確認された。
【符号の説明】
【0051】
1 ロープ染色機
11 糸巻
12 精錬槽
13 染色槽
14 ローラー
15 絞りローラー
16 糸
17 酸化ローラー

【要約】
【課題】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸をインディゴ系染料で中白にしかも連続的に染め上げることが可能なデニム製品用糸の製造方法等を提供することを目的とする。
【解決手段】
ナイロン繊維を主たる構成繊維として含む糸を、35〜88℃のアルカリ性の染色液に対して浸漬する工程と、その後インディゴ系染料を酸化する工程とを含むデニム製品用糸の製造方法であり、前記糸を染色液に対して浸漬する工程は糸の芯の部分に染料が浸透しないように糸に張力を掛けた状態で行われるものであり、染色されたデニム製品用糸は、その芯の部分が中白であり、芯の外側はインディゴによって染色されたものであるデニム製品用糸の製造方法である。
【選択図】図1
図1