特許第6232513号(P6232513)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232513ボルダリングタワー及びボルダリングユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6232513
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ボルダリングタワー及びボルダリングユニット
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   A63B69/00 517
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-85729(P2017-85729)
(22)【出願日】2017年4月24日
【審査請求日】2017年7月11日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月3日〜平成28年11月5日に「リバーウォーク北九州店のオープンイベント」にて公開
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517146079
【氏名又は名称】JAPPAAAN株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597089554
【氏名又は名称】有限会社 環境造形
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】重岡 敬之
(72)【発明者】
【氏名】三由 野
(72)【発明者】
【氏名】大亀 守
(72)【発明者】
【氏名】藤本 隆志
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06083142(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0100407(US,A1)
【文献】 独国実用新案第000029722516(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂によって形成され、断面の外形線が多角形をなす側板の外面に複数のホールドが取り付けられた筒体からなるとともに、
前記側板の両端に内側を向くように設けられ、平面視した場合の外形線が正多角形をなす一対のフランジを備え、
前記フランジの外形線の外接円の円周方向へ等間隔となるように複数のボルト穴が前記フランジに対して設けられていることを特徴とするボルダリングユニット。
【請求項2】
繊維強化樹脂に代えて、金属あるいは木材によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボルダリングユニット。
【請求項3】
前記側板の長さよりも短い筒状の補強部材と、
一直線上に配置された複数本の前記補強部材を互いに連結した状態で前記フランジに固定する連結具と、を備え、
複数の前記ボルト穴は、互いの中心軸が一致するように一対の前記フランジに対して、それぞれ対をなすように設けられ、
前記補強部材は、前記ボルト穴に連通する前記連結具に連結された状態で一対の前記フランジの間に設置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボルダリングユニット。
【請求項4】
前記側板は、平面視三角形状をなす複数対の板材によって形成され、
一対の前記フランジは、互いに大きさが異なる第一のフランジと第二のフランジからなり、
前記板材は、平面視した場合の外形線が、前記第一のフランジと前記第二のフランジの一方の外形線を構成する正多角形の一辺と他方の外形線を構成する正多角形の頂点を結ぶようにして形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のボルダリングユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のボルダリングユニットが鉛直方向に複数段積み重ねられるようにして形成されていることを特徴とするボルダリングタワー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルダリングに用いられるボルダリングユニットとそれを用いたボルダリングタワーに係り、特に、運搬や設置等の作業が容易であって、しかもホールドの配置パターンを自由に変更することが可能なボルダリングユニットとボルダリングタワーに関する。
【背景技術】
【0002】
フリークライミングとは、安全確保のための最小限の用具のみを用いて岩壁を登攀するスポーツであるが、その中でもロープを用いずに5m以下の高さの壁を自分の手と足だけを使って登攀するボルダリングが特に注目されている。
ボルダリングは特殊な用具を必要としないため、誰でも比較的手軽に行うことができる。また、最近では、室内でもボルダリングを楽しむことができるように、自然の岩壁を模した人工壁が設置された施設が数多く作られている。
【0003】
ボルダリングに用いられる装置や構造物については、従来、いろいろな構造のものが提案されている。
例えば、特許文献1には、「人工壁」という名称で、ボルダリングに用いられる人工的な構造物に関する発明が開示されている。
この発明に係る「人工壁」は、平面形状が多角形をなし各側縁に所定の角度で互いに接合される第1壁面構成要素と第2壁面構成要素が単位区画として組み立てられた構造となっている。
このような構造によれば、安価に製造することが可能であり、また、ホールドのサイズや取付け可能な個数を増大させることができる。
【0004】
また、特許文献2には、「フリークライミング用人工壁」という名称で、突起状をなす複数のホールドが表面に設置されたベニヤ板によって構成された構造物に関する考案が開示されている。
この考案は、ベニヤ板からなるパネルが任意の方向に湾曲した曲面を有し、その表面に複数のホールドが設置された構造となっている。
このような構造によれば、製造コストが安いことに加え、取り付けられているパネルを形状の異なる別のパネルに交換することで、形状を容易に変更できるというメリットがある。
【0005】
さらに、特許文献3には、「組み立て式ロッククライミング装置」という名称で、壁や支持フレームなどの既設の構造物を用いずに設置できるロッククライミング用の装置に関する考案が開示されている。
この考案は、少なくとも一つの表面と、この表面に連接する少なくとも一つの接続面を有し、この表面に把持部が取り付けられた複数の組み立てブロックを備え、この組み立てブロックが接続面同士を組み合わせるようにして構成されたことを特徴とする。
このような構造によれば、壁や支持フレーム等の既設の構造物を必要としないため、設置場所に対する制限がない。そして、本考案は、結合や分離が容易なため、広い保管スペースを必要とせず、また、運搬が容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−222202号公報
【特許文献2】実用新案登録第3156846号公報
【特許文献3】実用新案登録第3157513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の従来技術である特許文献1に開示された発明では、ホールドの配置パターンを変更するには、ボルトを緩めて第1壁面構成要素や第2壁面構成要素からホールドを取り外さなければならず、ホールドの配置パターンの変更が容易でないという課題があった。また、第1壁面構成要素と第2壁面構成要素は、それのみでは設置することができないため、設置場所の制約が多いという課題があった。
【0008】
特許文献2に開示された考案では、パネルを設置する際に、格子状に組み上げられた複数本の足場パイプが必要であるため、設置や撤去の作業に時間を要するという課題があった。また、ホールドの配置パターンを変更するためには、パネル自体を交換する必要があるため、効率が悪いという課題もあった。
【0009】
さらに、特許文献3に開示された考案では、組み立てブロックの配置を変更することによってホールドの配置パターンを変更することができるものの、ホールドの配置パターンのバリエーションが乏しいという課題があった。また、組み立てブロックの数が多い場合には連結や分離に多くの時間がかかるため、設置や撤去の際の作業効率が悪いという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、運搬や設置等の作業が容易であって、しかもホールドの配置パターンを自由に変更することが可能なボルダリングユニットとボルダリングタワーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、第1の発明であるボルダリングユニットは、繊維強化樹脂によって形成され、側板の外面に複数のホールドが取り付けられた筒体からなることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、水平面内で回転して設置したり、上下を逆にして設置したりすることにより、ホールドの配置パターンが変化するという作用を有する。そして、繊維強化樹脂によって形成される筒体という軽量で簡単な構造であるため、製造コストが安く、かつ、運搬や設置あるいは撤去等の作業が容易である。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、繊維強化樹脂に代えて、金属あるいは木材によって形成されていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、第1の発明の作用を有することに加え、サイズによっては、材料コストが安くなるというメリットがある。
【0013】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、側板には、外側へ雌ネジ部を露出させた状態で板付ナットが設置されていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、板付ナットが外面に突出していないため、ホールドが取り付けられていない箇所についても美観が損なわれず、かつ、ボルダリングを行う際にも邪魔にならないという作用を有する。
【0014】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかにおいて、側板の両端に内側を向くように設けられた一対のフランジを備え、側板は、断面の外形線が円形をなし、フランジには、複数のボルト穴が円周方向へ等間隔に設けられていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの作用に加え、複数個を積み上げることにより所望の高さのボルダリングタワーが容易に構築されるという作用を有する。その際、ボルダリングユニットを積み上げる順序を変更することで、ホールドの配置パターンが変化するという作用を有する。さらに、作業員は上下のボルダリングユニットのフランジ同士をボルト締めする作業をボルダリングユニットの内部に入って行うことができるため、作業性が良い。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、側板の断面の外形線は、円形をなす代わりに正多角形をなし、フランジは、平面視した場合の外形線が正多角形をなしていることを特徴とするものである。
側板の断面の外形線が正多角形をなす場合、側板は平坦な外面を有することになるため、ボルダリングユニットが繊維強化樹脂製の場合には、その平坦な外面に対して平行に板付ナットが側板に埋設された状態にすれば、側板の断面の外形線が円形をなす場合よりも側板を薄くしても、側板に板付ナットを完全に埋設することが可能である。また、ボルダリングユニットが金属製や木製の場合には、側板に対して内側からビス止めできるため、板付ナットを埋設する場合に比べて側板を薄くすることができる。
すなわち、上記構造のボルダリングユニットにおいては、側板の厚さを薄くできるため、第4の発明の作用に加え、製造コストが安く、かつ、運搬や設置あるいは撤去等の作業が容易であるという第1の発明の作用がより一層発揮される。
また、側板の断面の外形線が円形をなす場合には、側板に対するホールドの当接面の形状が側板の外面の形状に合っていないと、側板とホールドの間に隙間が生じてしまう。そのため、ボルダリングユニットのサイズが変更になると、ホールドを作り直す必要がある。これに対し、上記構造のボルダリングユニットにおいては、側板に対するホールドの当接面は平坦であれば良いため、同一のホールドをサイズの異なるボルダリングユニットに対して共通に使用できる。そのため、本発明のボルダリングユニットは汎用性に優れている。
【0016】
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明において、側板の長さよりも短い筒状の補強部材と、一直線上に配置された複数本の補強部材を互いに連結した状態でフランジに固定する連結具と、を備え、複数のボルト穴は、互いの中心軸が一致するように一対のフランジに対して、それぞれ対をなすように設けられ、補強部材は、複数対のボルト穴に連通した状態で一対のフランジの間に設置されていることを特徴とするものである。
ボルダリングユニットをクレーン等で吊り上げる場合、吊り金具をボルダリングユニットの上部に取り付けると、側板には引っ張り荷重が加わる。一方、吊り金具をボルダリングユニットの下部に取り付けると、側板には圧縮荷重が加わる。これに対し、上記構造であれば、それらの荷重が側板と補強部材に分散されることになる。すなわち、上記構造のボルダリングユニットにおいては、第4の発明又は第5の発明の作用に加え、クレーン等で吊り上げる際に、側板に加わる力が補強部材によって緩和されるため、側板が破損し難いという作用を有する。
【0017】
第7の発明は、第4の発明又は第5の発明において、ボルト穴が外面から露出するように側板に凹部が設けられていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、第4の発明又は第5の発明の作用に加え、複数のボルダリングユニットを積み上げて、上下のボルダリングユニットをボルトによって連結する際に、ボルダリングユニットの径が細く、内部が狭いため作業員が入り込めないなどの事情がある場合でも、ボルト締め作業をボルダリングユニットの外部から行うことができるため、作業性が良いという作用を有する。
【0018】
第8の発明は、第1の発明又は第2の発明において、側板は、断面の外形線が扇形をなし、筒体は、一端が閉塞されるとともに、他端が蓋体によって開閉自在に閉塞されていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットにおいては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、扇形を構成する2本の半径をそれぞれ含み、中心軸方向に平行な2つの平面の少なくともいずれか一方を既設の構造物等の平坦面に当接させることにより、当該構造物に対する設置状態が安定するという作用を有する。
【0019】
また、上述の2つの平面に対して同時に当接可能に形成された2つの平坦面を有する固定部材が既設の構造物等の壁面に、上記2つの平坦面を突出させた状態で設置されている場合には、ボルト等を用いてボルダリングユニットの上記平面と固定部材の上記平坦面を連結することにより、上記壁面に固定部材を介して本発明のボルダリングユニットを取り付けることができる。その際、本発明のボルダリングユニットは、蓋体が設置されている側の端部を開放状態にして、当該端部から手を差し入れるようにしてボルトを操作できることから、作業性に優れている。
【0020】
第9の発明は、第5の発明において、側板は、平面視三角形状をなす複数対の板材によって形成され、一対のフランジは、互いに大きさが異なる第一のフランジと第二のフランジからなり、板材は、平面視した場合の外形線が、第一のフランジと第二のフランジの一方の外形線を構成する正多角形の一辺と他方の外形線を構成する正多角形の頂点を結ぶようにして形成されていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングユニットを鉛直方向に複数段積み重ねてボルダリングタワーを構築した場合、水平断面の面積が鉛直方向に沿って連続的に増減するため、外周面の一部にオーバーハングとなる箇所が繰り返し形成されるという作用を有する。また、本発明のボルダリングユニットは、平面視した場合の形状が上記板材と同一の三角形をなし、上記フランジの一部を構成するフランジ片が三角形の一辺に立設された複数対の板材を互いに接合することによって容易に形成されるという作用を有する。
【0021】
第10の発明であるボルダリングタワーは、第1の発明乃至第9の発明のいずれかに記載のボルダリングユニットが鉛直方向に複数段積み重ねられるようにして形成されていることを特徴とするものである。
このような構造のボルダリングタワーは、軽量で簡単な構造の複数のボルダリングユニットを用いて構築されるものであるため、製造が容易であり、かつ、運搬や設置あるいは撤去等の作業が容易である。また、一部のボルダリングユニットを水平面内で回転させたり、上下を逆にして設置したり、積み重ねる順序を変えたりすることにより、外周面におけるホールドの配置パターンが変化するという作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、第1の発明によれば、運搬や設置あるいは撤去等の作業を効率よく行うことができる。また、ホールドの配置パターンを変更する際に、ホールドの取り付けや取り外しを何度も繰り返して行うと、ホールドを固定するためのボルトが挿通されるボルト穴が破損し易くなるのに対し、本発明によれば、ホールドの取り付けや取り外しを行うことなく、ホールドの配置パターンを変更できるため、ホールドのボルト穴が破損してしまうおそれがない。そして、ホールドの配置パターンの変更が容易であるため、その作業を効率よく行うことができる。
【0023】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、ボルダリングユニットの製造コストの削減を図ることができるという効果を奏する。
【0024】
第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、ボルダリングの支障とならない状態でホールドを設置できるという効果を奏する。
【0025】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの効果に加え、積み重ねられた複数のボルダリングユニット同士を連結する作業が容易であるため、安価にボルダリングタワーを構築できるという効果を奏する。また、ボルダリングユニットを積み重ねる順序を変更することでホールドの配置パターンが変化することから、ホールドの配置パターンを効率よく変更できるという効果がより一層発揮される。
【0026】
第5の発明によれば、ボルダリングユニットが安価で汎用性に優れるものとなるため、ボルダリングタワーを安価に構築できるという第4の発明の効果がより一層発揮される。
【0027】
第6の発明によれば、第4の発明又は第5の発明の効果に加え、クレーン等を用いてボルダリングユニットを積み上げる際の安全性が向上するという効果を奏する。
【0028】
第7の発明によれば、第4の発明又は第5の発明の効果に加え、ボルダリングユニットの径が細く、内部が狭いため作業員が入り込めないような場合でも効率よくボルダリングタワーを構築できるという効果を奏する。
【0029】
第8の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、扇形を構成する2本の半径をそれぞれ含み、中心軸方向に平行な2つの平面の少なくともいずれか一方を既設の構造物等の平坦面に当接させ、その平坦面に上記平面を連結することにより、当該構造物に対して容易に設置できるという効果を奏する。
【0030】
第9の発明によれば、第5の発明の効果に加え、外周面にオーバーハングとなる箇所が規則的に形成された独特な起伏を有する非常に変化の富んだ形状のボルダリングタワーを容易に構築できるという効果を奏する。
【0031】
第10の発明によれば、第1の発明乃至第9の発明のいずれかに記載のボルダリングユニットが鉛直方向と平行に複数段積み重ねられるようにして形成されるものであるため、既設の構造物等がない場所に対しても容易に設置することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態に係るボルダリングタワーの実施例1の外観斜視図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ実施例1のボルダリングタワーを構成するボルダリングユニット及び板付ナットの外観斜視図であり、(c)は同図(a)に示したボルダリングユニットの側板の断面図であり、(d)は同図(c)においてボルダリングユニットの側板に対する板付ナットの取り付け方法の変形例を示した図である。
図3】(a)及び(b)は中心軸を通る鉛直平面でボルダリングユニット2を切断した場合の断面図であり、(c)乃至(f)はそれぞれ同図(b)に示した補強部材と2種類の連結具とスペーサの外観斜視図である。
図4】実施例1のボルダリングタワーを構築する手順を示したフローチャートである。
図5】(a)及び(b)は図2(a)に示したボルダリングユニットが積み上げられる工程を模式的に表した図である。
図6】(a)及び(b)は図2(a)に示したボルダリングユニットが積み上げられる工程を模式的に表した図である。
図7】(a)は本発明の実施の形態に係るボルダリングタワーの実施例2を構成するボルダリングユニットの外観斜視図であり、(b)はそのボルダリングユニットに設置されるプランターの外観斜視図であり、(c)は同図(a)に示したボルダリングユニットが2つ積み上げられた状態を表した外観斜視図であり、(d)は同図(c)におけるA−A線矢視断面図である。
図8】実施例2のボルダリングタワーの外観斜視図である。
図9】(a)及び(b)は本発明の実施の形態に係るボルダリングユニットの実施例3の外観斜視図である。
図10】(a)及び(b)は実施例3のボルダリングユニットの変形例を示した外観斜視図であり、(c)は固定部材の外観斜視図である。
図11】(a)及び(b)は実施例3のボルダリングユニットの変形例が図10(c)の固定部材に取り付けられる様子を示した図である。
図12】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係るボルダリングタワーの実施例4を構成するボルダリングユニットの外観斜視図及び平面図であり、(c)及び(d)はそれぞれボルダリングユニットを構成する側板の平面図及び側面図であり、(e)は同図(c)のB−B線矢視断面図である。
図13】実施例4のボルダリングタワーの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明のボルダリングタワーとボルダリングユニットの構造と、その作用及び効果について、図1乃至図13を用いて説明する。なお、これらの図において、ホールドとボルトとナット及びボルト穴等については、図が煩雑になるのを避けるため、代表的なものについてのみ符号を付し、それ以外のものについては符号の図示を省略している。
【実施例1】
【0034】
図1は本発明のボルダリングタワーの外観の一例を示した斜視図であり、図2(a)は、そのボルダリングタワーを構成するボルダリングユニットの外観の一例を示した斜視図であり、図2(b)はボルダリングユニットにホールドを取り付ける際に用いられる板付ナットの外観の一例を示した斜視図である。また、図2(c)は板付ナットが取り付けられたボルダリングユニットの側板の内部構造を示す断面図であり、当該側板をボルダリングユニットの中心軸を通る鉛直平面で切断した状態を表している。さらに、図2(d)は図2(c)においてボルダリングユニットの側板に対する板付ナットの取り付け方法の変形例を示した図である。
【0035】
図1に示すように、ボルダリングタワー1は、略円筒状をなし、中心軸を一致させた状態で鉛直方向に積み上げられた複数個のボルダリングユニット2からなり、その外周面1aには、ボルダリングをする際に掴み手となる複数のホールド3が取り付けられるとともに、スラックラインと呼ばれ、綱渡りをする際に用いられる細いベルト状の紐状体4がアイボルト5を介して取り付けられている。
図2(a)乃至図2(c)に示すように、ボルダリングユニット2は、断面の外形線が正24角形をなす側板2aと、この側板2aの両端に内側を向くように設けられた一対のフランジ2b,2bを備え、繊維強化樹脂によって形成された筒状体であり、側板2aには、複数の板付ナット6が雌ネジ部6aを外側へ露出させた状態で埋設されており、フランジ2b,2bには、12対のボルト穴7a,7aが互いの中心軸を一致させた状態で円周方向へ略等間隔に設けられている。
【0036】
図2(c)に示すように、ホールド3はボルト穴3aを有しており、雌ネジ部6aに螺合するボルト3bを用いて板付ナット6(図2(b)を参照)に固定されている。また、図1に示すアイボルト5は雌ネジ部6aに対して螺合可能に形成されており、紐状体4(図1参照)は、このアイボルト5を用いて板付ナット6に固定されている。
なお、板付ナット6は、ボルダリングユニット2の側板2aに埋設される代わりに、図2(d)に示すようにビス31を用いてボルダリングユニット2の内部から側板2aに対してビス止めされた構造であっても良い。この場合、板付ナット6が埋設される場合に比べて、側板2aの厚さを薄くできるというメリットがある。また、繊維強化樹脂の代わりに、アルミニウムや鉄などの金属あるいは木材等を用いて側板2aを形成することも可能である。すなわち、本実施例では、ボルダリングユニット2を繊維強化樹脂製としているが、ボルダリングユニット2は金属製あるいは木製であっても良い。
ボルダリングユニット2のサイズによっては、金属製や木製とした方が繊維強化樹脂製とするよりも材料コストが安くなる場合がある。したがって、上記構造によれば、ボルダリングユニット2の製造コストの削減を図ることができる。
【0037】
さらに、本実施例では、図1に示すように、上部が閉塞されたボルダリングユニット2をボルダリングタワー1の最上段に用いているが、ボルダリングタワー1は、このような構造に限定されるものではない。すなわち、ボルダリングタワー1は、上部が閉塞されていないボルダリングユニット2を最上段に用いた構造であっても良い。
また、図1には示していないが、ボルダリングタワー1が高く、かつ、周囲に構造物がある場合には、ボルダリングタワー1の設置状態を安定化させる目的で、ロープやワイヤ等をボルダリングタワー1と構造物の間に張設することもできる。その際、アイボルト5と板付ナット6を利用すれば、ボルダリングタワー1の外周面1aに対してロープ等の一端を短時間で確実に連結することができる。
【0038】
図3(a)と図3(b)は中心軸を通る鉛直平面でボルダリングユニット2を切断した場合の断面図である。また、図3(c)乃至図3(f)はそれぞれ図3(b)に示した補強部材8と連結具29a,29bとスペーサ29cの外観斜視図である。なお、図3(a)及び図3(b)では、図が煩雑になるのを避けるために、ボルト7bとナット7cとスペーサ30について、その外観を表示している。
図3(a)に示すように、2個のボルダリングユニット2,2は、フランジ2bのボルト穴7a(図2(a)参照)に挿通されたボルト7bとナット7cを用いて互いに連結されている。
【0039】
図3(b)及び図3(c)に示すように、補強部材8は、長さが側板2aよりも短く、内部に雌ネジ部8aが形成された金属製の円筒体であり、ボルダリングユニット2のフランジ2b,2bの間に設置可能な構造となっている。
連結具29a,29bは、補強部材8の雌ネジ部8aに螺合する雄ネジ部が両端の小径部に設けられた段付き棒であり、連結具29aは、一方の小径部がフランジ2bの厚さの2倍よりも長く、連結具29bは、一方の小径部がフランジ2bの厚さよりも短くなるように形成されている。また、スペーサ30は、略直方体をなし、その一つの側面には、平面視U字状をなす切り欠き30aが連結具29aの小径部を内部へ配置可能に形成されている。
【0040】
ボルダリングユニット2のフランジ2b,2bには、対向するように配置された上下一対のボルト穴7a,7aに対して、一端を挿通した状態で連結具29a,29aが設置されており、補強部材8は、この一対の連結具29a,29aの他端が両端にそれぞれ螺入されるようにしてフランジ2b,2bに固定されている。そして、補強部材8とフランジ2bの隙間を埋めるように、スペーサ30が設置されている。なお、連結具29bは、最下段のボルダリングユニット2の下側のフランジ2bのみに設置されている。
また、本実施例では、4本の補強部材8がフランジ2bの円周方向へ等間隔に配置された構造となっているが、これに限らず、設置される補強部材8の個数は適宜変更可能である。
【0041】
一般に、ホールドの配置パターンを変更するには、ホールドの取り付けや取り外しという作業が発生するが、この作業を何度も繰り返して行うと、ホールドを固定するためのボルトとナット及びホールドのボルト穴が破損し易くなる。これに対し、ボルダリングユニット1においては、水平面内で回転して設置したり、上下を逆にして設置したりすることにより、ホールド3の配置パターンを容易に変更できるため、ホールド3のボルト穴3aが破損してしまうおそれがなく、また、ホールド3の配置パターンを短時間で効率よく変更することができる。
さらに、ボルダリングユニット2が繊維強化樹脂製の筒体という軽量で簡単な構造であることから、安価に製造することが可能であって、しかも運搬や設置あるいは撤去等を行う際の作業効率が良い。
また、ボルダリングユニット2では板付ナット6が外面に突出していないため、板付ナット6にホールド3が取り付けられていない場合でも美観が損なわれず、かつ、ボルダリングを行う際にも邪魔にならない。すなわち、ボルダリングユニット2は、ボルダリングの支障とならない状態でホールド3を設置できるという効果を有している。
【0042】
図2(a)に示すように、側板2aは平坦な外面を有しているため、その平坦な外面に対して平行に板付ナット6を側板2aに埋設された状態にすれば、側板2aの断面の外形線が円形をなす場合よりも側板2aを薄くしても、側板2aに板付ナット6を完全に埋設することが可能である。すなわち、ボルダリングユニット2では、側板2aの厚さを薄くすることができる。
なお、側板2aの断面の外形線が円形をなす場合、側板2aに対するホールド3の当接面の形状が側板2aの外面の形状に合っていないと、側板2aとホールド3の間に隙間が生じてしまう。そのため、ボルダリングユニットのサイズが変更になると、ホールド3を作り直す必要がある。これに対し、ボルダリングユニット2では、側板2aに対するホールド3の当接面が平坦であれば良いため、いろいろなサイズのボルダリングユニット2に対して、ホールド3を共通して使用することができる。したがって、ボルダリングユニット2は汎用性に優れている。
【0043】
ボルダリングユニット2を用いてボルダリングタワー1を構築する方法について図4乃至図6を用いて説明する。なお、図4はボルダリングタワー1を構築する手順を示したフローチャートであり、図5及び図6はボルダリングユニット2が積み上げられる工程を模式的に表した図である。
図4に示すように、ステップS1において、ボルダリングタワー1を構成する複数のボルダリングユニット2のうち、最上段と2段目のボルダリングユニット2,2を所定の箇所に設置し、ホールド3をそれぞれ取り付ける。
ステップS2では、最上段のボルダリングユニット2に吊り金具9aを取り付け、この吊り金具9aをフック9bに取り付けた後、クレーン(図示せず)を用いて最上段のボルダリングユニット2を吊り上げる(図5(a)参照)。そして、ステップS3において、作業員10が内部に入った状態の2段目のボルダリングユニット2の上に最上段のボルダリングユニット2を設置する(図5(b)参照)。そして、ステップS4において、作業員10は、所定の箇所に補強部材8を設置するとともに、最上段と2段目のボルダリングユニット2,2の互いに接触しているフランジ2b,2bに取り付けられたボルト7bとナット7cを締結するとともに、連結具29aを介して上下の補強部材8,8を互いに連結する。これにより、最上段と2段目のボルダリングユニット2,2が互いに連結されるとともに、図3を用いて説明したように、補強部材8が所定の箇所に固定される。
【0044】
ステップS5では、3番目のボルダリングユニット2を所定の箇所に設置してホールド3を取り付ける。ステップS6では、最上段のボルダリングユニット2に吊り金具9aを取り付け、クレーンを用いて最上段と2段目のボルダリングユニット2,2を吊り上げる(図6(a)参照)。ステップS7では、3段目のボルダリングユニット2の内部に作業員10が入り、この状態で3段目のボルダリングユニット2の上に最上段と2段目のボルダリングユニット2,2を設置する(図6(b)参照)。
ステップS8では、作業員10が補強部材8を所定の箇所に設置するとともに、2段目と3段目のボルダリングユニット2,2の互いに接触しているフランジ2b,2bに取り付けられたボルト7bとナット7cを締結するとともに、連結具29aを介して上下の補強部材8,8を互いに連結する。これにより、2段目と3段目のボルダリングユニット2,2が互いに連結されるとともに、補強部材8が所定の箇所に固定される。
【0045】
そして、4段目乃至10段目のボルダリングユニット2に対し、ステップS5乃至ステップS8と同様の手順を行うことにより、最上段から10段目までのボルダリングユニット2が全て連結された状態のボルダリングタワー1(図1参照)が構築される。
【0046】
このように、ボルダリングユニット2を用いると、積み上げる個数を変えることで所望の高さのボルダリングタワー1が容易に構築される。その際、ボルダリングユニット2の積み上げ順序を変更することで、ホールド3の配置パターンを効率よく変更することができる。また、作業員10が上下のボルダリングユニット2,2のフランジ2b,2b同士をボルト締めする作業をボルダリングユニット2の内部に入って行うことができるため、作業性が良い。すなわち、ボルダリングユニット2では、他のボルダリングユニット2との連結作業が容易であるため、安価にボルダリングタワー1を構築することが可能である。
【0047】
ボルダリングユニット2をクレーン等で吊り上げる場合に吊り金具9aをボルダリングユニット2の上部に取り付けると、側板2aには引っ張り荷重が加わる。一方、吊り金具9aをボルダリングユニット2の下部に取り付けると、側板2aには圧縮荷重が加わる。これに対し、ボルダリングユニット2の内部に補強部材8を設置すると、上述の荷重が側板2aと補強部材8に分散されるため、側板2aが破損し難い。これにより、クレーン等を用いてボルダリングユニット2を積み上げる際の安全性が向上する。
【実施例2】
【0048】
図7(a)及び図7(c)は本実施例のボルダリングタワーを構成するボルダリングユニットの外観の一例を示した斜視図であり、図7(b)はボルダリングユニットに設置されるプランターの外観の一例を示した斜視図であり、図7(d)は図7(c)におけるA−A線矢視断面図である。
なお、図7(c)は図7(a)に示したボルダリングユニットが2個積み上げられた状態を表した図に相当する。また、図1乃至図3に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0049】
図7(a)に示すように、本実施例のボルダリングユニット11は、円柱状をなし、その上面11bの外周面11aの近傍には、円周方向へ略等間隔に12個のナット12が雌ネジ部12aを露出させた状態で設けられている。一方、下面11cには、上部に埋設された12個のナット12に対して、それぞれ中心軸が一致するように12個のボルト穴7aが設けられている。そして、このボルト穴7aのそれぞれに対して連通するように凹部11dが外周面11aに設けられている。また、外周面11aには、外側へ雌ネジ部6aを露出させた状態で埋設された板付ナット6を利用してホールド3が取り付けられている。
なお、図7(b)に示すプランター13は、植物14が配置された状態で凹部11dに対して嵌め込み可能に形成されている。
【0050】
図7(c)及び図7(d)に示すように、12個のボルト穴7aとナット12の雌ネジ部12aをそれぞれ一致させた状態で2つのボルダリングユニット11,11が積み重ねられた場合、ボルト穴7aが凹部11dを通してボルダリングユニット11の外周面11aから露出した状態となるため、ボルト7bをボルト穴7aに挿通してナット12に対して締め付けたり、緩めたボルト7bをボルト穴7aから取り出したりする作業をボルダリングユニット11の外部から容易に行うことができる。
【0051】
すなわち、実施例1のボルダリングユニット2では、複数個を積み上げて互いに連結する際に、それらの径が細く、内部が狭くて作業員10が入り込めない場合には、前述のボルト締め作業が困難となる。これに対し、上記構造のボルダリングユニット11においては、作業員10が外部からボルト締め作業を行うことが可能である。
また、本実施例のボルダリングタワー15は、複数個のボルダリングユニット11が鉛直方向に積み上げられて、ボルト7bを用いて互いに連結された構造であるため、花が咲いた状態の植物14をプランター13に設置し、このプランター13をボルダリングユニット11の凹部11dに嵌め込むことで、図8に示すように、外周面15aが花によって囲まれた「花のタワー」を容易に構築することができる。
なお、本実施例では、ボルダリングユニット11及びボルダリングタワー15を中実構造としているが、中空構造であっても良い。この場合、ボルダリングタワー15の外周面15aに設置された植物14に水を供給するためのホース等をボルダリングタワー15の内部に設置することができるというメリットがある。
【実施例3】
【0052】
図9(a)及び図9(b)は本実施例のボルダリングユニットの外観の一例を示した斜視図である。また、図10(a)及び図10(b)は本実施例のボルダリングユニットの変形例の外観斜視図であり、図10(c)は固定部材の外観の一例を示した斜視図である。そして、図11(a)及び図11(b)は図10(a)と図10(b)に示したボルダリングユニットが固定部材に取り付けられる様子を示した図である。
なお、図1乃至図3に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0053】
図9(a)及び図9(b)に示すように、本実施例のボルダリングユニット16,17は、断面の外形線が扇形をなす部材からなり、外周面16a,17aには、実施例2のボルダリングユニット11と同様に、外側へ雌ネジ部6aを露出させた状態で埋設された板付ナット6(図7(d)参照)を利用してホールド3が取り付けられている。なお、本明細書では、上述の扇形の中心角が180度より大きいものと小さいものをそれぞれボルダリングユニット16、17としている。
このような構造のボルダリングユニット16,17においては、扇形を構成する2本の半径をそれぞれ含み、中心軸方向に平行な2つの平面の少なくともいずれか一方を既設の構造物等の平坦面に当接させることにより、当該構造物に対する設置状態が安定する。したがって、既設の構造物を利用して、安全かつ容易に設置することができる。
【0054】
図10(a)及び図10(b)に示すように、ボルダリングユニット18は、ボルダリングユニット16において、下部が閉塞された筒状体からなり、開口した上部を閉塞する蓋体19を備えたことを特徴としている。すなわち、ボルダリングユニット18の外周面18aには、ボルダリングユニット16と同様に、外側へ雌ネジ部6aを露出させた状態で埋設された板付ナット6(図7(d)参照)を利用してホールド3が取り付けられている。なお、ボルダリングユニット18では、扇形を構成する2本の半径をそれぞれ含み、鉛直方向に平行な2つの平面18b,18bに複数のボルト穴18cが設けられている。
【0055】
図10(c)に示すように、固定部材20は、一方の端部が閉塞され、断面の外形が三角形をなす筒状体からなり、開口した端部を閉塞する蓋体21を備えるとともに、壁面22に当接しない2つの平面20a,20aのなす角度が、ボルダリングユニット18の平面18b,18bのなす角度と等しくなるように形成されている。なお、平面20a,20aには、ボルダリングユニット18の平面18b,18bが当接した状態で、ボルト穴18cと連通するように、複数のボルト穴20bが設けられている。
【0056】
このような構造の固定部材20が図10(c)に示すような状態で壁面22に設置されている場合、図11(a)に示すように、蓋体19,21を外した状態で、平面20a,20aに平面18b,18bを当接させるとともに、ボルト穴18cとボルト穴20bの各中心軸が一致するように、ボルダリングユニット18を固定部材20に取り付ける。そして、開口した端部から手を差し込んで、ボルトとナット(いずれも図示せず)を用いて、ボルダリングユニット18と固定部材20を連結した後、図11(b)に示すように、蓋体19,21をボルダリングユニット18と固定部材20にそれぞれ取り付ける。
すなわち、ボルダリングユニット18では、蓋体19を外して、一端を開放状態にできるため、ボルトを用いて固定部材20に連結する作業を効率よく行うことができる。
【実施例4】
【0057】
図12(a)及び図12(b)はそれぞれ本実施例のボルダリングユニットの外観斜視図及び平面図であり、図12(c)及び図12(d)はそれぞれボルダリングユニットの側板の平面図及び側面図であり、図12(e)は図12(c)のB−B線矢視断面図である。また、図13は本実施例のボルダリングユニットからなるボルダリングタワーの外観斜視図である。
なお、図1乃至図3に示した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0058】
図12(a)及び図12(b)に示すように、本実施例のボルダリングユニット23は、実施例1のボルダリングユニット2において、側板2aとフランジ2b,2bの代わりに、平面視三角形状をなす12対の板材24a,24bからなる側板23aと、平面視した場合の外形線が正六角形をなすとともに、大きさの異なる2種類のフランジ23b,23cを備え、板材24a,24bを平面視した場合の外形線が、フランジ23b,23cの一方の外形線を構成する正六角形の一辺と他方の外形線を構成する正六角形の頂点を結ぶようにして形成された構造となっている。そして、フランジ23b,23cが平面視して互いに30度ずれた状態で設置されていることを特徴とする。
【0059】
ボルダリングユニット23は、型枠内に敷設されたガラスクロスやカーボンクロスに熱硬化樹脂を塗布した後、加熱して硬化させることにより、一体として形成することができるが、繊維強化樹脂によって個別に成形した板材24a,24bに相当する部材を互いに接合するようにして形成することもできる。
すなわち、図12(c)乃至図12(e)に示すように、平面視した場合の形状が板材24a,24bとそれぞれ同一であり、接合部25a,25bと、フランジ23b,23cのいずれかの一部を構成するフランジ片25cがそれぞれ3辺に立設された2種類の板材26,27を上述の方法によって形成した後、ボルトとナットを用いて接合部25a,25bを連結するのである。なお、このような方法によれば、大きなボルダリングユニット23を形成する場合でも、大きな型枠を用いる必要がないため、製造コストを安くすることができる。
【0060】
フランジ23b,23b同士とフランジ23c,23c同士が互いに接触するように複数個のボルダリングユニット23を中心軸が鉛直方向と平行となるように積み重ねて、それらをボルトとナットによって連結すると、図13に示すようなボルダリングタワー28が構築される。
このボルダリングタワー28は、鉛直方向に沿って水平断面の面積が連続的に増減するため、外周面28aの一部にオーバーハングとなる箇所が繰り返し形成されるという作用を有している。
すなわち、ボルダリングユニット23を用いることによれば、外周面28aにオーバーハングとなる箇所が規則的に表れることから、独特な起伏を有する非常に変化の富んだ形状のボルダリングタワー28を容易に構築することができる。
【0061】
なお、本発明のボルダリングタワーやボルダリングユニットは、上述の実施例において示した構造に限定されるものではない。例えば、実施例1ではボルダリングユニット2及びボルダリングタワー1の断面の外形線を正24角形としているが、それ以外の正多角形であっても良い。また、実施例4のボルダリングユニット23及びボルダリングタワー28についても、その断面の外形線は正六角形に限らず、それ以外の正多角形とすることもできる。さらに、実施例2では、ボルダリングユニット11の凹部11dへ嵌め込み可能に形成れるプランター13の代わりに、板付ナット6にボルトを用いて固定されるプランターを用いても良い。そして、ホールド3やボルダリングユニットに設けられるボルト穴や板付ナット6の個数についても、各実施例で示したものに限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のボルダリングユニットとボルダリングタワーは、特に既設の構造物がない場所にボルダリングを行うための設備を構築する場合などに有用である。
【符号の説明】
【0063】
1…ボルダリングタワー 1a…外周面 2…ボルダリングユニット 2a…側板 2b…フランジ 3…ホールド 3a…ボルト穴 3b…ボルト 4…紐状体 5…アイボルト 6…板付ナット 6a…雌ネジ部 7a…ボルト穴 7b…ボルト 7c…ナット 8…補強部材 8a…雌ネジ部 9a…吊り金具 9b…フック 10…作業員 11…ボルダリングユニット 11a…外周面 11b…上面 11c…下面 11d…凹部 12…ナット 12a…雌ネジ部 13…プランター 14…植物 15…ボルダリングタワー 15a…外周面 16,17…ボルダリングユニット 16a,17a…外周面 18…ボルダリングユニット 18a…外周面 18b…平面 18c…ボルト穴 19…蓋体 20…固定部材 20a…平面 20b…ボルト穴 21…蓋体 22…壁面 23…ボルダリングユニット 23a…側板 23b,23c…フランジ 24a,24b…板材 25a,25b…接合部 25c…フランジ片 26,27…板材 28…ボルダリングタワー 28a…外周面 29a,29b…連結具 30…スペーサ 30a…切り欠き 31…ビス
【要約】
【課題】運搬や設置等の作業が容易であって、しかもホールドの配置パターンを自由に変更することが可能なボルダリングユニットとボルダリングタワーを提供する。
【解決手段】ボルダリングタワー1は、略円筒状をなし、中心軸を一致させた状態で鉛直方向に積み上げられた複数個のボルダリングユニット2からなり、その外周面1aには、ボルダリングをする際に掴み手となる複数のホールド3が取り付けられるとともに、スラックラインと呼ばれる細いベルト状の紐状体4がアイボルト5を介して取り付けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13