(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しつつ、本実施形態について説明する。
【0019】
まず、本実施形態の廃油処理装置及び水処理装置について説明する。
【0020】
本実施形態に係る水処理装置は、水と、該水と相分離できる液状有機物とが混合状態となっている被処理水を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離部を備える。前記被処理水はリン酸イオンを含有する。
また、本実施形態に係る水処理装置は、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤を、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン部を更に備える。
【0021】
本実施形態の廃油処理装置は、リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニルを含有する廃油と、アルカリ水溶液とを混合することにより、アルカリ混合液を作製するアルカリ混合部と、前記アルカリ混合液を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離部と、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤を、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン部とを備える。
また、本実施形態の廃油処理装置は、前記分離部と前記脱リン部とを有する装置として、本実施形態の水処理装置を備える。
【0022】
具体的には、
図1に示すように、本実施形態の廃油処理装置1は、リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニル(以下、「PCB」ともいう。)を含有する廃油Aと、アルカリ水溶液としての水酸化ナトリウム水溶液Bとを混合してアルカリ混合液を作製するアルカリ混合部2を備える。
また、本実施形態の廃油処理装置1は、前記アルカリ混合液を静置することにより、有機物相たる油相と水相とに分離する第1分離部3を備える。
さらに、本実施形態の廃油処理装置1は、前記第1分離部3で得られた有機物相たる油相に前記脱リン剤を加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン部6を備える。
また、本実施形態の廃油処理装置1は、前記脱リン部6でリン酸イオン濃度が低減された油相から固形分を除去する固形分除去部4を備える。
さらに、本実施形態の廃油処理装置1は、該固形分除去部4で固形分が除去された前記油相のPCBを分解するPCB分解部5を備える。
また、本実施形態の廃油処理装置1は、前記第1分離部3で得られた水相をアルカリ性廃水として処理するアルカリ性廃水処理装置10を備える。
【0023】
また、本実施形態の廃油処理装置1は、前記第1分離部3及び前記脱リン部6を有する装置として、本実施形態の水処理装置30を備える。本実施形態の水処理装置30では、前記被処理水として前記アルカリ混合液を相分離する。
前記被処理水は、通常、リン酸イオンを3.1〜6.2質量%含有する。
【0024】
前記アルカリ性廃水処理装置10は、具体的には、
図1に示すように、PCB及びフェノール類を含有するアルカリ性廃水たる前記水相と酸Dとを混合して酸混合液を作製する酸混合部11を備える。
また、前記アルカリ性廃水処理装置10は、前記被処理水として前記酸混合液を静置することにより、水相と、有機物相たるフェノール類相とに分離する分離部を備える。
さらに、前記アルカリ性廃水処理装置10は、前記第2分離部12で得られた水相をPCB抽出剤Eで洗浄する洗浄部15を備える。
また、前記アルカリ性廃水処理装置10は、該洗浄部15で洗浄された水相からリン酸イオンを除去するリン除去部13を備える。
さらに、前記アルカリ性廃水処理装置10は、該リン除去部13でリン酸イオンが除去された前記水相を中和する中和部14を備える。
【0025】
前記廃油Aは、通常、リン酸エステルを10〜20質量%含有する。また、前記廃油Aは、通常、PCBを30〜41質量%含有する。
また、前記廃油Aは、リン酸エステルやPCB以外に、鉱物油や合成油を含有し、例えば、潤滑油や絶縁油等を含有する。潤滑油や絶縁油としては、パラフィン系ベースオイル、ナフテン系ベースオイル等が挙げられる。パラフィン系ベースオイルとしては、ニュートラル油、ブライトストック油等が挙げられる。
前記リン酸エステルは、フェノール類(置換フェノール及び非置換フェノールを含む概念)とリン酸との縮合物である。
前記リン酸エステルは、アルカリによって分解されてフェノール類が生成されるリン酸エステルである。前記リン酸エステルとしては、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルを含む概念である。前記リン酸エステルとしては、例えば、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシリルホスフェート、t−ブチルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等が挙げられる。
【0026】
前記アルカリ混合部2は、廃油Aと水酸化ナトリウム水溶液Bとを好ましくは70℃以上で混合することによりアルカリ混合液を得る。
前記アルカリ混合部2は、容器と容器内の収容液(油)を加熱する加熱器(例えば加熱ジャケット)とを備え、更に、ホモジナイザー、ラインミキサ、回転ミル、超音波振動発生機等を用いて廃油Aと水酸化ナトリウム水溶液Bとを撹拌し混合するように構成されている。
前記リン酸エステルがTCPである場合には、廃油Aと水酸化ナトリウム水溶液Bとを混合することにより、TCPは、下記式の反応で水酸化ナトリウムと反応し分解される。
【0028】
前記アルカリ混合部2で用いる前記水酸化ナトリウム水溶液Bは、水酸化ナトリウムの濃度が、好ましくは15質量%を超え、より好ましくは20質量%以上、更により好ましくは20〜40質量%である。
前記アルカリ混合部2での混合は、リンの量に対する水酸化ナトリウムの量のモル比を好ましくは3以上にして行い、より好ましくはこの比を3〜15にして行う。なお、前記「リンの量」は、廃油中のリン濃度と、前記水酸化ナトリウムに混合される前記廃油の量とから求めることができる。前記廃油中のリン濃度は、廃油を酸分解した後、酸分解した廃油を定容しICP分析により求めることができる。
この比が3以上であることにより、エステル結合を1分子に複数有するリン酸ジエステルやリン酸トリエステルがリン酸エステルとして廃油Aに多く含まれていても水酸化ナトリウムによってリン酸エステルを十分に分解することができる。
前記アルカリ混合部2での混合温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは、70〜100℃である。
前記廃油Aと、前記水酸化ナトリウム水溶液Bとの混合時間(撹拌時間)は、好ましくは30〜500分、より好ましくは100〜300分である。
【0029】
前記第1分離部3は、前記被処理水として前記アルカリ混合液を静置することにより、有機物相たる油相と、水相とに分離する分離部である。
【0030】
前記第1分離部3で得られる水相たるアルカリ性廃水は、前記廃油Aで含まれていたPCBと、前記アルカリ混合部2で生成されたフェノール類とを含有する。
【0031】
前記第1分離部3で得られる有機物相たる油相は、水と、前記アルカリ混合部2で生成されたリン酸イオンとを含有する。
【0032】
前記脱リン部6は、前記第1分離部3で得られる有機物相たる油相と、脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fとを混合して、脱リン剤を含有する有機物相を得る混合部6aと、脱リン剤を含有する有機物相から脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fを取り出す取り出し部6bとを備える。
【0033】
前記水酸化ナトリウム水溶液Fの水酸化ナトリウム濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらにより好ましくは20〜40質量%である。
前記水酸化ナトリウム水溶液Fの水酸化ナトリウム濃度が15質量%以上であることにより、有機物相たる油相に含まれるリン酸イオン濃度を低減し易くなる。
前記混合部6aでは、油相と水酸化ナトリウム水溶液Fとの混合体積比は、好ましくは
1:0.5〜1:3、より好ましくは1:0.8〜1:2.2である。
【0034】
前記取り出し部6bは、脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液を含有する有機物相を静置して、有機物相と、水酸化ナトリウム水溶液を含む水相とに分離することにより、有機物相から水酸化ナトリウム水溶液を取り出す取り出し部である。
【0035】
本実施形態に係る廃油処理装置1では、脱リン部で使用されたアルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液(取り出し部6bで取り出した水酸化ナトリウム水溶液)を、前記アルカリ混合部でアルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液として用いてもよい。
本実施形態に係る廃油処理装置1は、脱リン部で使用されたアルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液を、前記アルカリ混合部でアルカリ水溶液として用いることにより、使用済みの水酸化ナトリウム水溶液を有効利用することができる。
【0036】
前記固形分除去部4は、前記脱リン部6でリン酸イオン濃度が低減された油相に含まれる固形分を前記油相から除去するフィルターを備える。
【0037】
前記PCB分解部5は、前記固形分除去部4で固形分が除去された前記油相を水熱分解処理して、該油相のポリ塩化ビフェニル(PCB)を分解するように構成されている。
【0038】
前記アルカリ性廃水処理装置10の前記酸混合部11は、前記第1分離部3で得られる水相たるアルカリ性廃水と、酸Dとを混合して、酸混合液を作製する。
前記アルカリ性廃水は、pHが14以上である。アルカリ性廃水のpHは、pHメーターの電極にアルカリ性廃水を接触させて測定することができる。
前記酸Dとしては、無機酸、有機酸が挙げられる。前記無機酸としては、硫酸、塩酸等が挙げられる。前記有機酸としては、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ギ酸等が挙げられる。
【0039】
前記酸混合液は、具体的には、前記アルカリ性廃水と、前記酸Dと、PCB抽出剤Eとを混合して作製する。前記酸混合液は、より具体的には、前記アルカリ性廃水と前記酸とを混合して予備混合液を作製し、前記予備混合液と前記PCB抽出剤Eとを混合して作製する。
前記予備混合液は、pHが、好ましくは8以上14未満、より好ましくは8以上10未満である。予備混合液のpHは、pHメーターの電極に予備混合液を接触させて測定することができる。
【0040】
前記PCB抽出剤Eとしては、常温常圧下(例えば、25℃、1気圧下)で液状の有機化合物が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、天然油、合成油等が挙げられる。天然油としては鉱物油等が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、燃料油、潤滑油、食用油、溶剤などとして用いられるものを用いることができる。前記溶剤としては、炭化水素系溶剤が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては、炭化水素、アルコール、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。炭化水素としては、ヘキサン(n−ヘキサン等)、ペンタン(n−ペンタン等)、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリンなどが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソブタノールなどが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、塩化メチレン、HCFC−225、ブロモプロパンなどが挙げられる。
【0041】
前記第2分離部12は、被処理水たる酸混合液を静置することにより、有機物相たるフェノール類相と水相とに分離する分離部である。
前記酸混合液は、pHが、好ましくは8以上14未満、より好ましくは8以上10未満である。酸混合液のpHは、pHメーターの電極に酸混合液を接触させて測定することができる。
前記酸混合液のpHが低いほど、酸混合液からフェノール類が分離されやすくなる。
なお、フェノール類相は、PCB抽出剤Eを主成分として含み、水相よりもフェノール類を多く含む相と、フェノール類を主成分として含む相とに分離することがある。
【0042】
前記第2分離部12で得られたフェノール類相については、PCBを分解すべく、前記固形分除去部4で得られる油相を処理するための前記PCB分解部5で水熱分解処理してもよく、或いは、前記PCB分解部5とは別に設けたPCB分解部で水熱分解処理してもよい。
【0043】
前記洗浄部15は、前記第2分離部12で得られた水相とPCB抽出剤Eとを混合することにより、該水相に含有される成分をPCB抽出剤Eによって除去するように構成されている。該水相に含有される成分は、PCB等の油溶性成分である。
また、前記洗浄部15は、水相とPCB抽出剤Eとを混合してPCB抽出剤混合液を作製するPCB抽出剤混合部15aと、被処理水たる該PCB抽出剤混合液を、有機物相たるPCB抽出剤相と水相とに分離する第3分離部15bとを備える。
本実施形態では、前記酸混合部11は、PCB抽出剤混合部15aを兼ねている。また、前記第2分離部12は、第3分離部15bを兼ねている。
前記PCB抽出剤Eとしては、常温常圧下(例えば、25℃、1気圧下)で液状の有機化合物が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、天然油、合成油等が挙げられる。天然油としては鉱物油等が挙げられる。また、前記PCB抽出剤Eとしては、燃料油、潤滑油、食用油、溶剤などとして用いられるものを用いることができる。前記溶剤としては、炭化水素系溶剤が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては、炭化水素、アルコール、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。炭化水素としては、ヘキサン(n−ヘキサン等)、ペンタン(n−ペンタン等)、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリンなどが挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、イソブタノールなどが挙げられる。有機ハロゲン化合物としては、塩化メチレン、HCFC−225、ブロモプロパンなどが挙げられる。
【0044】
前記洗浄部15で用いたPCB抽出剤は、PCBを含有する。前記洗浄部15で用いたPCB抽出剤は、前記固形分除去部4で得られる油相を処理するための前記PCB分解部5で水熱分解処理してもよく、或いは、前記PCB分解部5とは別に設けたPCB分解部で水熱分解処理してもよい。
【0045】
前記リン除去部13は、金属カルシウム(Ca)、金属マグネシウム(Mg)、金属ナトリウム(Na)、金属アルミニウム(Al)の少なくとも何れかを含有する固形吸着剤が充填された無機充填槽を有している。該リン除去部13は、前記洗浄部15で洗浄された水相を固形吸着剤に接触させることにより、前記アルカリ混合部2で生成されたリン酸イオンを前記固形吸着剤と接触させ、リン酸イオンを金属塩(例えば、アパタイト(Ca
5(PO
4)
3(F、Cl、OH))として無機充填槽に固定化するように構成されている。
前記リン除去部13は、前記無機充填槽の代わりに、カルシウムイオン(Ca
2+)、マグネシウムイオン(Mg
2+)、ナトリウムイオン(Na
2+)、アルミニウムイオン(Al
3+)の少なくとも何れかのイオンを含有する水溶液を収容し、収容液を撹拌する撹拌分離槽を有してもよい。該リン除去部13は、前記第2分離部12で得られた水相を前記撹拌分離槽で前記水溶液と接触させることにより、リン酸イオンを金属塩(例えば、アパタイト(Ca
5(PO
4)
3(F、Cl、OH))として撹拌分離槽で晶析して分離するように構成されている。
【0046】
前記中和部14は、前記リン除去部13でリン酸イオンが除去された前記水相をpH7付近(例えば、pH5〜9)に中和させて浄化水Cを得るように構成されている。
該浄化水Cは、アルカリ性廃水処理装置10外に移送される。
なお、前記リン除去部13でリン酸イオンが除去された前記水相のpHが、7付近(例えば、pH5〜9)であれば、該水相を中和部14で中和させずに浄化水Cとして、アルカリ性廃水処理装置10外に移送してもよい。
【0047】
次に、本実施形態の廃油処理方法及び水処理方法について説明する。
【0048】
本実施形態の廃油処理方法は、本実施形態の廃油処理装置を用いて、廃油Aに含まれるリン酸エステル及びPCBを分解する方法である。
【0049】
本実施形態の廃油処理方法は、リン酸エステルを含有する廃油Aと、水酸化ナトリウム水溶液Bとを前記アルカリ混合部2で混合(撹拌)してアルカリ混合液を作製するアルカリ混合工程を備える。
また、本実施形態の廃油処理方法は、前記アルカリ混合液を前記第1分離部3で相分離することにより、有機物相たる油相と水相とを得る第1分離工程を備える。
さらに、本実施形態の廃油処理方法は、前記脱リン部6で、脱リン剤を用いて、第1分離工程で得られた有機物相たる油相に含まれるリン酸イオン濃度を低減させる脱リン工程を備える。
また、本実施形態の廃油処理方法は、前記脱リン工程でリン酸イオン濃度が低減された油相から固形分を前記固形分除去部4で除去することと、固形分が除去された前記油相のPCBを前記PCB分解部5で分解することとを備える。
さらに、本実施形態の廃油処理方法は、前記第1分離部3で得られた水相をアルカリ性廃水として処理するアルカリ性廃水処理方法を備える。
【0050】
また、本実施形態の廃油処理方法は、前記第1分離工程と前記脱リン工程とを有する方法として、本実施形態の水処理方法を備える。
【0051】
本実施形態の廃油処理方法は、第1アルカリ混合工程及び第2アルカリ混合工程を含む2回以上の前記アルカリ混合工程を実施する。また、本実施形態の廃油処理方法は、前記第1アルカリ混合工程を前記第2アルカリ混合工程よりも前に実施する。さらに、本実施形態の廃油処理方法は、前記第1アルカリ混合工程と前記第2アルカリ混合工程との間に、前記分離工程及び前記脱リン工程を実施する。前記脱リン工程では、前記脱リン剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いる。前記第2アルカリ混合工程では、前記廃油と混合する水酸化ナトリウム水溶液として、前記脱リン工程で用いた前記脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液を用いる。
【0052】
前記アルカリ性廃水処理方法は、前記アルカリ性廃水たる前記第1分離部3で得られた水相と、酸Dとを前記酸混合部11で混合して、酸混合液を作製することを備える。
また、前記アルカリ性廃水処理方法は、該酸混合液を水相と有機物相たるフェノール類相とに前記第2分離部12で分離する第2分離工程を備える。
また、前記アルカリ性廃水処理方法は、前記第2分離部12で得られた水相からリン酸イオンを前記リン除去部13で除去することと、該リン除去部13でリン酸イオンが除去された前記水相を前記中和部14で中和することとを備える。
【0053】
さらに、前記アルカリ性廃水処理方法は、前記酸混合液を分離して得られた水相から前記リン酸イオンを除去する前に、前記酸混合液を分離して得られた水相をPCB抽出剤Eで1回又は複数回洗浄する洗浄工程をさらに実施することが好ましい。
該洗浄工程では、前記酸混合液を分離して得られた水相と前記PCB抽出剤Eとを前記洗浄部15で混合することにより、該水相に含有される成分を前記PCB抽出剤によって除去する。該水相に含有される成分は、PCB等の油溶性成分である。
該洗浄工程は、具体的には、水相とPCB抽出剤EとをPCB抽出剤混合部15aで混合してPCB抽出剤混合液を作製することと、被処理水としての前記PCB抽出剤混合液を第3分離部15bで有機物相たるPCB抽出剤相と水相とに分離する第3分離工程とを有する。
【0054】
本実施形態に係る水処理方法、水処理装置、廃油処理方法、及び、廃油処理装置は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0055】
すなわち、本実施形態に係る水処理方法は、水と、該水と相分離できる液状有機物とが混合状態となっている被処理水を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離工程を備える。前記被処理水はリン酸イオンを含有する。本実施形態に係る水処理方法は、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fを、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン工程を更に備える。
【0056】
斯かる水処理方法によれば、有機物相のリン酸イオン濃度を低減することができる。
【0057】
本実施形態に係る廃油処理方法は、リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニルを含有する廃油Aと、アルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液Bとを混合することにより、アルカリ混合液を作製するアルカリ混合工程を備える。また、本実施形態に係る廃油処理方法は、前記アルカリ混合液を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離工程を備える。さらに、本実施形態に係る廃油処理方法は、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fを、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン工程を備える。
【0058】
また、本実施形態に係る廃油処理方法は、第1アルカリ混合工程及び第2アルカリ混合工程を含む2回以上の前記アルカリ混合工程を実施する。また、本実施形態に係る廃油処理方法は、前記第1アルカリ混合工程を前記第2アルカリ混合工程よりも前に実施する。さらに、本実施形態に係る廃油処理方法は、前記第1アルカリ混合工程と前記第2アルカリ混合工程との間に、前記分離工程及び前記脱リン工程を実施する。また、本実施形態に係る廃油処理方法は、前記脱リン工程では、前記脱リン剤としてアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液)を用い、前記第2アルカリ混合工程では、前記廃油と混合するアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液)として、前記脱リン工程で用いた前記脱リン剤たるアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0059】
斯かる廃油処理方法によれば、使用済みのアルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液を有効利用することができる。
【0060】
さらに、本実施形態に係る水処理装置30は、水と、該水と相分離できる液状有機物とが混合状態となっている被処理水を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離部3を備える。前記被処理水は、リン酸イオンを含有する。また、本実施形態に係る水処理装置30は、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fを、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン部6を更に備える。
【0061】
また、本実施形態に係る廃油処理装置1は、リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニルを含有する廃油Aと、アルカリ水溶液たる水酸化ナトリウム水溶液Bとを混合することにより、アルカリ混合液を作製するアルカリ混合部2を備える。また、本実施形態に係る廃油処理装置1は、前記アルカリ混合液を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離部3を備える。さらに、本実施形態に係る廃油処理装置1は、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤たる水酸化ナトリウム水溶液Fを、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン部6を備える。
【0062】
なお、本発明に係る水処理方法、水処理装置、廃油処理方法、及び、廃油処理装置は、上記実施形態の構成に限定されるものではない。また、本発明に係る水処理方法、水処理装置、廃油処理方法、及び、廃油処理装置は、上記した作用効果に限定されるものでもない。さらに、本発明に係る水処理方法、水処理装置、廃油処理方法、及び、廃油処理装置は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、本実施形態に係る廃油処理装置のアルカリ混合部では、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムを含む水溶液を用いるが、本発明に係る廃油処理方法では、アルカリ混合部で他のアルカリ水溶液を用いてもよく、例えば、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等を用いてもよい。
【0064】
また、本実施形態に係る廃油処理装置のアルカリ混合部では、脱リン剤として、水酸化ナトリウム水溶液を用いるが、本発明に係る廃油処理方法では、有機物相からリン酸イオンを除去できるものであれば、他の脱リン剤を用いてもよい。
他の脱リン剤としては、粉粒体であってもよく、液体であってもよい。
【0065】
脱リン剤は、粉粒体である場合には、水と反応して水和物を生成できる化合物である。
粉粒体の脱リン剤としては、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム等が挙げられる。
脱リン剤が粉粒体である場合には、前記取り出し部6bは、濾過部(例えば、フィルター等)を備えている。前記取り出し部6bは、水和物たる粉粒体を含有する有機物相を濾過部たるフィルターで濾過することにより、粉粒体を取り出す取り出し部である。
前記脱リン工程では、粉粒体の脱リン剤を有機物相に加えることにより、前記脱リン剤が有機物相に含まれる水滴の水と水和物を生成する際に、水和物の粉粒体内にリン酸イオンを取り込む。そして、前記脱リン工程では、有機物相から水和物の粉粒体を分離させる。その結果、有機物相のリン酸イオン濃度を低減できる。
【0066】
液体の脱リン剤としては、水(純水、水溶液などを含む概念)が挙げられる。
前記水溶液たる脱リン剤としては、水酸化ナトリウム水溶液以外に、他のアルカリ水溶液(例えば、水酸化マグネシウム水溶液、水酸化カルシウム水溶液等)、塩化ナトリウム水溶液等が挙げられる。
前記脱リン工程では、脱リン剤たる水を有機物相に加えることにより、有機物相に含まれる水滴を増やして、有機物相の水滴におけるリン酸イオンを希釈することができる。そして、前記脱リン工程では、水を加えられた有機物相を相分離することにより、有機物相に存在していたリン酸イオンを水相に移動させることができる。その結果、有機物相のリン酸イオン濃度を低減できる。
前記脱リン工程での相分離により有機物相が上相として形成され水相が下相として形成される場合には、液体の脱リン剤としては、アルカリ水溶液又は塩化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
液体の脱リン剤として、アルカリ水溶液又は塩化ナトリウム水溶液を用いることにより、前記脱リン工程で相分離する有機物相と水相との比重差を大きくすることができ、前記脱リン工程での相分離が促進され、その結果、有機物相のリン酸イオン濃度を低減し易くなる。
脱リン剤として用いるアルカリ水溶液のアルカリ濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更により好ましくは20〜40質量%である。
脱リン剤として用いる塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム濃度は、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%〜飽和濃度、さらにより好ましくは飽和濃度である。
前記塩化ナトリウム水溶液の塩化ナトリウム濃度が15質量%以上であることにより、有機物相たる油相における水の含有量を低減し易くなり、その結果、リン酸イオン濃度も低減し易くなる。
【0067】
前記混合部6aでは、有機物相たる油相と塩化ナトリウム水溶液との混合体積比は、好ましくは1:0.5〜1:3、より好ましくは1:0.9〜1:2である。
脱リン剤として無水硫酸ナトリウムを用いる場合には、有機物相たる油相と無水硫酸ナトリウムとの混合質量比は、好ましくは5:1〜50:1、より好ましくは5:1〜10:1である。
【0068】
さらに、本実施形態に係る水処理装置では、被処理水としてアルカリ混合液を用いるが、本発明に係る水処理装置では、被処理水は、水と、該水と相分離できる液状有機物とが混合状態となっている被処理水であればよい。
なお、“水と、該水と相分離できる液状有機物とが混合状態となっている被処理水”は、“静置することにより、水を含有する水相と、液状有機物を含有する有機物相とに分離できる被処理水”を意味する。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の試験例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
(試験例1−1)
リン酸エステル及びPCBを含有する廃油と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合してアルカリ混合液を得、該アルカリ混合液を油相と水相(pH14)とに分離した。
次に、該水相100質量部に炭化水素系溶剤(NSクリーン(登録商標)100)を100質量部添加し、常温、400rpm、30minの条件下で撹拌して、酸混合液を作製した。
そして、酸混合液を5分間静置してフェノール類相と水相とに分離した。
その後、該水相を炭化水素系溶剤で9回(酸混合液に含まれる炭化水素系溶剤による洗浄を含めると実質的に10回)洗浄した。1回の洗浄では、該水相100質量部に炭化水素系溶剤(NSクリーン(登録商標)100)を100質量部添加し、常温、400rpm、30minの条件下で撹拌し、5分間静置して水相を得た。
次に、炭化水素系溶剤で洗浄した水相を撹拌しながら、カルシウムイオンとリンイオンとの当量比が15となるように水相にCaCl
2水溶液(CaCl
2が飽和している水溶液)を添加し、ヒドロキシアパタイトを析出させて、固液分離してリンを除去した。
リンを除去した水相における全リン濃度(以下、単に「リン濃度」ともいう。)、及び、PCB濃度を測定した。結果を表1に示す。
全リン濃度は、流れ分析法(JIS K0170−4:2011「流れ分析法による水質試験方法−第4部:りん酸イオン及び全りん」)によって測定した。
PCB濃度は、昭和46年環境庁告示54号に従って測定した。
【0071】
(試験例1−2)
アルカリ混合液から得られた水相(pH14)に塩酸を混合してpH10にし、pH10にした水相に炭化水素系溶剤を加えたこと以外は、試験例1−1と同様な処理を行った。
そして、リンを除去した水相における全リン濃度、PCB濃度、及び、フェノール類濃度を測定した。結果を表1に示す。
フェノール類濃度は、JIS K0102:2013に従って測定した。
【0072】
(試験例1−3)
アルカリ混合液から得られた水相(pH14)に塩酸を混合してpH8にしたこと以外は、試験例1−1と同様な処理を行った。
そして、リンを除去した水相における全リン濃度、PCB濃度、及び、フェノール類濃度を測定した。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
表1に示すように、アルカリ混合液に酸を加えることにより、PCB濃度を低減できることがわかる。また、アルカリ混合液に酸を加えることにより、全リン濃度及びフェノール類濃度も低減できることがわかる。
アルカリ混合液に酸を加えることにより、全リン濃度を低減できたのは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、アルカリ混合液に酸を加えることにより、水相のフェノール類濃度を低減でき、その結果、リンとカルシウムとが反応しやすくなったことによるものと考えられる。
【0075】
(試験例2)
リンの除去率に関する試験を行った。
まず、リン酸エステルとしてのトリクレジルホスフェート(TCP)と表2、3の溶媒油とを表2、3のリン濃度となるようにして仮想廃油を調製した。
なお、溶媒油としては、JX日鉱日石エネルギー社製の炭化水素系洗浄剤(商品名:NS200)と、出光興産社製の電気絶縁油(商品名:出光トランスフォーマーオイルH)(以下、「出光H」ともいう。)とを用いた。
また、表2、3の水酸化ナトリウム濃度となる水酸化ナトリウム水溶液を調製した。
次に、表2、3に示す仮想廃油の処理条件で、仮想廃油と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合した。
そして、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度を測定し、リンの除去率を算出した。結果を表2、3に示す。
なお、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度は、仮想廃油を酸分解した後、酸分解した仮想廃油を定容しICP分析により求めた。或いは、混合後(処理後)の仮想廃油中のリン濃度は、水相中のリン濃度より算出した。なお、水相中のリン濃度は、流れ分析法(JIS K0170−4:2011「流れ分析法による水質試験方法−第4部:りん酸イオン及び全りん」)によって測定した。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】
表2、3に示すように、廃油と水酸化ナトリウム水溶液とを70℃以上で混合し、リンの量に対する水酸化ナトリウムの量のモル比を3以上にして前記混合を行い、前記水酸化ナトリウム水溶液Bの水酸化ナトリウムを15質量%以上にすることにより、廃油に含まれるリン酸エステルを十分に分解し、油相からリン化合物を抽出することができることがわかる。
【0079】
(試験例3)
リン濃度が220mg/kgである絶縁油と、水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム濃度:25%)とを質量比1:1で容器に入れて混合液を得、該混合液が入った容器を恒温槽で90℃20時間加熱した。次に、容器をボルテックスミキサーにセットして混合液を1分間撹拌した。そして、下記表4の温度条件下で混合液を24時間静置分離させた。次に、静置分離で得られた有機物相のリン濃度を測定した。
なお、室温(10.5℃)での静置は、混合液が収容された容器を室温(10.5℃)下に置いた状態で行った。
また、40℃、90℃での静置は、混合液が収容された容器を恒温槽で40℃、90℃に加熱した状態で行った。
なお、絶縁油中のリン濃度は、絶縁油を酸分解した後、酸分解した絶縁油を定容しICP分析により求めた。
また、有機物相中のリン濃度は、有機物相を酸分解した後、酸分解した有機物相を定容しICP分析により求めた。
【0080】
【表4】
【0081】
表4に示すように、静置時の温度が高いほど、有機物相中のリン濃度が低い傾向を示した。
【0082】
(試験例4)
リン酸エステルを含有する廃油と、水酸化ナトリウム水溶液とを混合することにより、リン酸エステルが加水分解された混合液を得た。そして、下記表5の温度条件下で混合液を24時間静置分離させた。次に、静置分離で得られた有機物相のリン濃度を測定した。
【0083】
【表5】
【0084】
表5に示すように、静置時の温度が高いほど、有機物相中のリン濃度が低い傾向を示した。
【0085】
(試験例5−1:純水による洗浄)
(1)2L分液漏斗に、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)100gと、純水1000g(PCB油の10倍量)を加えた。
(2)分液漏斗を手で約1分間激しく振とうし、30〜60分間静置分離した。
(3)分液漏斗のコックを開き、下層(水相)を回収し、上層(PCB油)を分液漏斗に残した。
(4)分液漏斗に(1)と同じ量(1000g)の純水を新たに加えた。
(5)(2)〜(4)を所定回数繰り返した。
なお、PCB油のリン濃度を測定する際は、(3)を行った後に上層(PCB油)を回収し、上層(PCB油)を遠心分離(4,000rpm、10分)にかけた。
PCB油のリン濃度は、PCB油を酸分解した後、酸分解したPCB油を定容しICP分析により求めた。
洗浄前及び洗浄回数毎のPCB油のリン濃度を下記表6に示す。
【0086】
【表6】
【0087】
(試験例5−2:水酸化ナトリウム水溶液による洗浄)
<No.1>
(1)2L分液漏斗に、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)50gと、25質量%水酸化ナトリウム水溶液50g(PCB油と同じ量)を加えた。
(2)分液漏斗を手で約1分間激しく振とうし、30〜60分間静置分離した。
(3)分液漏斗のコックを開き、下層(水酸化ナトリウム水溶液)を回収し、上層(PCB油)を分液漏斗に残した。
(4)分液漏斗に(1)と同じ量(50g)の水酸化ナトリウム水溶液を新たに加えた。
(5)(2)〜(4)を所定回数繰り返した。
なお、PCB油のリン濃度を測定する際は、(3)を行った後に上層(PCB油)を回収し、上層(PCB油)を遠心分離(4,000rpm、10分)にかけた。
PCB油のリン濃度の測定については、試験例5−1と同様に、PCB油のリン濃度を測定した。
洗浄前及び洗浄回数毎のPCB油のリン濃度を下記表7に示す。
【0088】
<No.2>
(1)2Lセパラブルフラスコに、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)400gと、25質量%水酸化ナトリウム水溶液400g(PCB油と同じ量)を加えた。
(2)常温で、タービン翼500rpmで1時間撹拌した。
(3)撹拌終了後、常温で1晩静置分離した。
(4)PCB油を回収し、遠心分離(4,000rpm、10分)にかけ、試験例5−1と同様に、PCB油のリン濃度を測定した。
洗浄前及び洗浄後のPCB油のリン濃度を下記表7に示す。
【0089】
<No.3>
(1)2Lセパラブルフラスコに、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)170gと、25質量%水酸化ナトリウム水溶液450g(PCB油の2.6倍量)を加えた。
(2)90℃下で、タービン翼500rpmで1時間撹拌した。
(3)撹拌終了後、90℃下で1晩静置分離した。
(4)PCB油を回収し、遠心分離(4,000rpm、10分)にかけ、試験例5−1と同様に、PCB油のリン濃度を測定した。
洗浄前及び洗浄後のPCB油のリン濃度を下記表7に示す。
【0090】
【表7】
【0091】
(試験例5−3:飽和食塩水による洗浄)
(1)30mLガラス瓶に、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)10gと、飽和食塩水10gを加えた。
(2)ガラス瓶を手で約1分間激しく振とうし、30分間静置分離した。
(3)上層(PCB油)を回収し、遠心分離(4,000rpm、10分)にかけ、試験例5−1と同様に、PCB油のリン濃度を測定した。
洗浄前及び洗浄後のPCB油のリン濃度を下記表8に示す。
【0092】
【表8】
【0093】
(試験例5−4:無水硫酸ナトリウムによる洗浄)
(1)30mLガラス瓶に、リン酸イオンを含有するPCB油(リン濃度:既知)35gと、無水硫酸ナトリウムをPCB油の質量に対して20質量%となるように加えた。
(2)ガラス瓶を手で約1分間激しく振とうし、20分間静置分離した。
(3)遠心分離(4,000rpm、10分)にかけ、PCB油を回収した。
(4)ガラス瓶に新たに無水硫酸ナトリウムを(1)と同じ割合で加えた。
(5)(2)〜(4)を所定回数繰り返した。
なお、PCB油のリン濃度の測定については、(3)の遠心分離後にPCB油を回収し、試験例5−1と同様に、PCB油のリン濃度を測定した。
洗浄前及び洗浄回数毎のPCB油のリン濃度を下記表9に示す。
【0094】
【表9】
【0095】
表6〜9に示すように、本発明によれば、有機物相のリン酸イオン濃度を低減できることがわかる。
【解決手段】リン酸エステル及びポリ塩化ビフェニル(PCB)を含有する廃油Aと、アルカリ水溶液Bとを混合することにより、アルカリ混合液を作製するアルカリ混合工程と、アルカリ混合液を相分離することにより、有機物相と水相とを得る分離工程と、前記有機物相からリン酸イオンを除去する脱リン剤Fを、前記有機物相に加えることにより、前記有機物相のリン酸イオン濃度を低減させる脱リン工程とを備える、廃油処理方法等である、廃油A処理方法。