特許第6232521号(P6232521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232521カソード均一化エリア及びアノード均一化エリアの圧力損失を調和する電気化学的リアクタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232521
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】カソード均一化エリア及びアノード均一化エリアの圧力損失を調和する電気化学的リアクタ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20171106BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20171106BHJP
【FI】
   H01M8/02 R
   H01M8/02 Z
   H01M8/02 E
   !H01M8/10
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-504143(P2017-504143)
(86)(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公表番号】特表2017-528869(P2017-528869A)
(43)【公表日】2017年9月28日
(86)【国際出願番号】FR2015051893
(87)【国際公開番号】WO2016016535
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2017年3月21日
(31)【優先権主張番号】1457327
(32)【優先日】2014年7月29日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン レミ
(72)【発明者】
【氏名】ポワロ−クローヴェジエ ジャン−フィリップ
【審査官】 守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−293758(JP,A)
【文献】 特開2010−129265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽子交換薄膜と、前記陽子交換薄膜の第1面上のアノードと、前記陽子交換薄膜の第2面上のカソードと、前記陽子交換薄膜の1つの面に配設され且つ前記アノード又は前記カソードを囲む少なくとも1つの第1補強部材とを含む、薄膜電極アセンブリと
第1フローマニホルドが挿入され、且つ、第1面が、カソードリアクティブゾーンのフローチャネル群を有すると共に、前記カソードリアクティブゾーンを前記第1フローマニホルドに繋げるカソード均一化チャネル群を有する、導電性バイポーラプレートと
を有し、
前記陽子交換薄膜及び前記第1補強部材のうちの少なくとも1つの要素は、前記カソード均一化チャネル群をカバーしておらず、
前記カソード均一化チャネル群の深さは、前記カソードリアクティブゾーンの前記フローチャネル群の深さよりも大きい、
電気化学的リアクタ。
【請求項2】
請求項1記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記第1補強部材は、前記カソードを囲み、
前記電気化学的リアクタは、前記陽子交換薄膜の前記第1面に固定され且つ前記アノードを囲む第2補強部材をさらに具備し、
前記陽子交換薄膜、前記第1補強部材、及び前記第2補強部材のうちの少なくとも2つの要素は、前記カソード均一化チャネルをカバーしていない、
電気化学的リアクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記カソードリアクティブゾーンの前記フローチャネル群は、同一方向に延びている、
電気化学的リアクタ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記カソードに接するガス拡散層をさらに具備する、
電気化学的リアクタ。
【請求項5】
請求項4記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記カソード均一化チャネル群と前記カソードリアクティブゾーンの前記フローチャネル群との間の深さの差は、前記ガス拡散層の厚さと前記カソード均一化チャネル群をカバーしていない前記要素の厚さとの総和に、少なくとも等しい、
電気化学的リアクタ。
【請求項6】
請求項2記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記カソードに接するガス拡散層をさらに具備し、
前記カソード均一化チャネル群と前記カソードリアクティブゾーンの前記フローチャネル群との間の深さの差は、前記ガス拡散層の厚さと前記カソード均一化チャネル群をカバーしていない前記少なくとも2つの要素の厚さとの総和に、少なくとも等しい、
電気化学的リアクタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記導電性バイポーラプレートは、第2フローマニホルドが挿入され、且つ、前記導電性バイポーラプレートの第2面が、アノードリアクティブゾーンのフローチャネル群を有すると共に、前記アノードリアクティブゾーンを前記第2フローマニホルドに繋げるアノード均一化チャネル群を有し、
前記カソード均一化チャネル群の深さは、前記アノード均一化チャネル群の深さよりも大きい、
電気化学的リアクタ。
【請求項8】
請求項7記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記カソード均一化チャネル群と前記アノード均一化チャネル群との間の深さの差は、前記カソード均一化チャネル群をカバーしていない前記要素の厚さに、少なくとも等しい、
電気化学的リアクタ。
【請求項9】
請求項2記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記導電性バイポーラプレートは、第2フローマニホルドが挿入され、且つ、前記導電性バイポーラプレートの第2面が、アノードリアクティブゾーンのフローチャネル群を有すると共に、前記アノードリアクティブゾーンを前記第2フローマニホルドに繋げるアノード均一化チャネル群を有し、
前記カソード均一化チャネル群の深さは、前記アノード均一化チャネル群の深さよりも大きく、
前記カソード均一化チャネル群と前記アノード均一化チャネル群との間の深さの差は、前記カソード均一化チャネル群をカバーしていない前記少なくとも2つの要素の厚さの総和に、少なくとも等しい、
電気化学的リアクタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の電気化学的リアクタにおいて、
前記導電性バイポーラプレート内に、冷却液フローチャネル群が設けられている、
電気化学的リアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の個別の燃料電池のスタックを含む電気化学的リアクタ群に関連し、より具体的には、複数のバイポーラプレート及び複数の陽子交換薄膜(proton exchange membranes)を含むスタックに関する。電気化学的リアクタ群は、例えば、燃料電池群又は電解槽群を構成する。
【背景技術】
【0002】
上記燃料電池群は、特に、将来多量に製造される動力車のエネルギー源として、又は、航空学における補助エネルギー源として、想定されている。燃料電池は、化学的エネルギーを電気エネルギーへ直接的に変換する電気化学的デバイスである。燃料電池は、いくつかのセルの一連のスタックである。各セルが典型的には1ボルトオーダーの電圧を生成し、それらセルのスタックは、例えば100ボルトオーダーの高レベルの供給電圧を生成することができる。
【0003】
既知のタイプの燃料電池には、低温度で動作する陽子交換薄膜(PEM)燃料電池が含まれている。そのような燃料電池は、特に、興味深いコンパクト特性(compactness properties)を有している。各セルは、陽子だけを通し電子を通さない電解薄膜(electrolytic membrane)を含んでいる。上記電解薄膜は、第1面にアノードを有し、第2面にカソードを有しており、AMEと呼ばれる薄膜電極アセンブリ(MEA)を形成している。
【0004】
上記アノードでは、燃料として用いられる水素分子(molecular hydrogen)がイオン化され、結果として、上記電解薄膜を通る陽子を生成する。このように、上記電解質薄膜は、イオン導電体(ion conductor)を形成する。この反応から生成される電子は、フロープレートに移動し、そして、電流を形成するために、上記セルの外部の電気回路を通る。上記カソードでは、酸素が還元されて陽子と反応して水を形成する。
【0005】
上記燃料電池は、例えば金属製で1つの上に他が積み重ねられた、複数のバイポーラプレートと呼ばれる、複数のプレートを含んでいてもよい。上記薄膜は、2つのバイポーラプレートの間に配設される。上記複数のバイポーラプレートは、上記薄膜へ/上記薄膜から、反応物質及び生成物を案内するための、フローチャネル群(flow channels)及び孔群(orifices)を含んでいてもよい。また、上記複数のバイポーラプレートは、生成された熱を放出する冷却液を案内するための、フローチャネル群を有している。上記反応生成物及び非反応種(non-reactive species)は、上記フローチャネルのネットワークの排出口(the outlet of the networks of flow channels)への上記フローによるエントレインメント(entrainment)によって、取り除かれる。上記異なるフロー群の上記フローチャネル群は、特定のバイポーラプレート群によって分離される。
【0006】
また、上記バイポーラプレート群は、上記アノードで生成された電子を集めるために、電気的伝導性である。また、上記バイポーラプレート群は、上記電気的接触の質のために必要な、上記スタックのクランプ力(clamping forces)を伝える、機械的機能を有している。ガス拡散層群(Gas diffusion layers)は、上記電極群と上記バイポーラプレート群との間に挿入されて、上記バイポーラプレート群と接触している。
【0007】
電子伝導は、上記バイポーラプレート群を通して行われ、イオン伝導は、上記薄膜を通して得られる。
【0008】
上記フローチャネル群における上記反応物質の流れ(circulation)の3つの方法が、有名である。
ヘビのようなチャネル群(serpentine channels):1つ又は複数のチャネルが、別々にパス群に向けて及びパス群から、上記アクティブ表面(active surface)の全体を通る。
並行なチャネル群(parallel channels):平行で真っ直ぐなチャネル群の束であり、上記アクティブ表面の端から端まで横断する。上記フローチャネル群は、ストレート又はやや波状であってもよい。
インターデジタルチャネル群(interdigital channels):平行で塞がれたチャネル群の束であり、上記アクティブ表面の端から端まで横断する。各チャネルは、上記流入側(fluid inlet side)から又は上記流出側(fluid outlet side)から塞がれている。そして、チャネルに入る流体は、隣接チャネルに合流して該隣接チャネルの流出口(fluid outlet)に到達するために、局所的に上記ガス拡散層を通るようにされている。
【0009】
コンパクト化及びパフォーマンスを促進するために、デザインは、上記フローチャネル群の寸法を小さくすることを含んでいる。そして、並行なチャネル群による上記流れの方法(method of circulation)は、寸法が小さくなったそのようなフローチャネル群における圧力損失(pressure drops)を制限して、ホットスポットを生じさせる可能性のある、冷却液フローの問題を防ぐために、好まれている。
【0010】
並行なフローチャネル群を用いた、反応物質の電極群に対する分配は、上記電気化学的リアクタの動きが変わることを避けるために、電極の表面全体に亘って、できるだけ均質である必要がある。この目的を達成するために、並行なフローチャネル群を有する上記バイポーラプレート群は、しばしば、入り口マニホルド(inlet manifolds)及び出口マニホルド(outlet manifolds)を上記バイポーラプレート群の異なるチャネル群へ繋ぐために、均一化ゾーン(homogenizing zones)群を用いる。上記反応物質は、入り口マニホルドを用いて運ばれて上記電極群と接触し、上記反応生成物は、異なるフローチャネル群へ接続された出口マニホルドを用いて排出される。上記入り口マニホルド及び上記出口マニホルドは、上記スタックの厚さを通る。上記入り口マニホルド及び上記出口マニホルドは、各バイポーラプレートの表面で各バイポーラプレートを通る個別の孔群(respective orifices)と、各薄膜の表面で各薄膜を通る個別の孔群(respective orifices)とによって通常得られ、ガスケットによってそれぞれバイポーラプレートと薄膜との間に挿入される。各ガスケットは、薄膜の孔及びバイポーラプレートの孔を囲む。薄膜との接触面は、通常、薄膜をフレキシブルな状態に維持するために、平面的である。
【0011】
上記入り口マニホルド及び上記出口マニホルドを上記異なるフローチャネル群へ繋ぐための、異なる複数の技術的解決手段が知られている。特に、バイポーラプレートの2つの金属シートの間に複数の路を作ることが知られている。これらの路は、一方において個別のマニホルドの孔群に通じており、他方において注入孔群(injection orifices)に通じている。均一化ゾーンは、注入孔群をフローチャネル群へ繋ぐ、チャネル群を有している。
【0012】
上記均一化ゾーンは、それぞれ重なって且つ冷却液マニホルド、酸化剤回路マニホルド、及び燃料回路マニホルドにそれぞれ通じている、冷却液移動ゾーン(coolant transfer zone)、酸化剤回路均一化ゾーン(oxidant circuit homogenizing zone)、燃料回路均一化ゾーン(fuel circuit homogenizing zone)を有している。
【発明の概要】
【0013】
実際上、上記アノードに流れる燃料としての水素分子と上記カソードで気流する酸化剤としての酸素分子とを用いると、上記均一化ゾーンにおける及び上記リアクティブゾーンの上記フローチャネル群における上記同じ複数のフロー回路についての上記2つのフローの間に、とても大きな圧力損失不均衡(pressure drop disparity)が生じる。上記水素分子フローと空気フローとの間の上記圧力損失の割合は、通常、2から10の間である。一方、水素分子は、通常、酸素分子を含む空気よりも、粘性が小さく、一方で、その流動率(flow rate)がより小さい。このため、上記気流における圧力損失は、上記リアクタのパフォーマンスに関して、とても不利である可能性がある。
【0014】
さらに、均一化ゾーン群の存在下では、特に、上記電気化学的反応に参加せず又は部分的にのみ参加する均一化ゾーン群のかさばりを減らす目的のデザインにおいては、均一化ゾーン群が上記フロー群における圧力損失のかなり大きな部分を形成することに気づく。
【0015】
本発明は、これらの欠点のうちの1つ又は複数を解決することを狙いとする。このため、本発明は、特許請求の範囲で規定されているような、電気化学的リアクタに関係する。
【0016】
米国特許出願公開第2010/0129694号明細書及び日本特開2010/0129265号公報は、複数のバイポーラプレートの間に薄膜電極アセンブリを有する燃料電池を記述している。これらの文献は、流出ゾーンに対して流入ゾーンにおける圧力損失を減らすことを提案している。第1実施形態は、均一化チャネル群を有さない均一化ゾーンに関する。第2実施形態は、フローチャネル群を有する均一化ゾーンに関する。第2実施形態においては、上記圧力損失の低減は、出口フローチャネル群(outlet flow channels)と比べて、入り口フローチャネル群(inlet flow channels)の幅を大きくすることによって、成し遂げられている。記述されている薄膜電極アセンブリは、全ての実施形態において、補強を欠いている。全ての実施形態において、薄膜は、上記フローチャネル群と上記アノードプレート及び上記カソードプレートの均一化ゾーン群とを覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の特徴及び有利な点は、以下の図面を参照することによって、非限定的に示された以降の記述から明らかになるであろう。
図1】燃料電池についての複数の薄膜電極アセンブリ及び複数のバイポーラプレートのスタックの一例の分解透視図である。
図2】スタックを通るフローマニホルド群を形成するために積み重ねられようとしている、複数のバイポーラプレート及び薄膜電極アセンブリの分解透視図である。
図3】バイポーラプレートの一例のメタルシートの部分下面図である。
図4】本発明の実装例における、複数のバイポーラプレートを含むスタックについてのフローパスに沿った概略断面図である。
図5図4のスタックの1つのバイポーラプレートの断面図である。
図6図4のスタックの均一化ゾーン群における横断面図である。
図7】均一化ゾーンを覆っていない補強部材の一例の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、燃料電池4のセル群1のスタックを概略的に描いた分解透視図である。燃料電池4は、重ねられた個別のセル群1を有している。個別のセル群1は、陽子交換薄膜又は高分子電解薄膜を有するタイプのものである。
【0019】
燃料電池4は、燃料源40を有している。燃料源40は、ここでは各セル1の入り口に水素分子を供給している。また、燃料電池4は、酸化剤源42を有している。酸化剤源42は、ここでは各セル1の入り口に空気を供給し、空気中の酸素が、酸化剤として用いられる。また、各セル1は、排出チャネル群(exhaust channels)を有している。また、1つ又は複数のセル1は、冷却回路を有している。
【0020】
各セル1は、薄膜電極アセンブリ110又はMEA110を含んでいる。薄膜電極アセンブリ110は、電解質113と、カソード112と、電解質113の両側に配置され且つ電解質113に固定されたアノード(図示せず)とを含んでいる。電解質113の層は、上記セル1内に存在するガスに対して不透過性であり且つ陽子を伝導させる、半透過性の薄膜を形成している。また、電解質113の層は、上記アノードとカソード112との間の電子の移動を防いでいる。
【0021】
隣接したMEAトークのペアの間に、バイポーラプレート5は、配設されている。各バイポーラプレート5は、アノードフローチャネル群及びカソードフローチャネル群を規定している。また、バイポーラプレート5は、2つの連続する薄膜電極アセンブリの間に、冷却液フローチャネル群を規定している。
【0022】
既知の方法で、燃料電池4が作動している間、空気は、MEAと1つのバイポーラプレート5との間を流れ、水素分子は、このMEAともう1つのバイポーラプレート5との間を流れる。上記アノードでは、水素分子がイオン化されて、MEAを通る陽子を生成する。この反応によって生成された電子は、バイポーラプレート5によって集められる。
そして、生成された電子は、電流を形成するために、燃料電池1に接続されている電気負荷へ供給される。上記カソードでは、酸素が還元されて上記陽子と反応して、水を形成する。上記アノード及び上記カソードにおける上記反応は、次のように制御される。
→2H+2e (アノードでの反応)
4H+4e+O→2HO (カソードでの反応)
【0023】
作動中、上記燃料電池の1つのセルは、通常、上記アノードと上記カソードとの間に、1ボルトオーダーの直流電圧を生成する。
【0024】
図2は、燃料電池スタック4に含まれる、2つのバイポーラプレート5及び薄膜電極アセンブリを概略的に示す分解透視図である。複数のバイポーラプレート5及び複数の薄膜電極アセンブリ110のスタックは、複数のフローマニホルドを形成しようとしている。ただし、ここでは、それらの配置が概略的にだけ図示されている。この目的のために、複数のバイポーラプレート5及び複数の薄膜電極アセンブリ110を通る、個別の孔群が形成されている。このように、複数のバイポーラプレート5は、第1端に、複数の孔591,593,595を有し、第1端と反対側の第2端に、複数の孔592,594,596を有する。孔591は、例えば燃料供給マニホルドを形成するために用いられ、孔596は、例えば燃焼残渣排出マニホルドを形成するために用いられ、孔595は、例えば冷却液供給マニホルドを形成するために用いられる。また、孔592は、例えば冷却液排出マニホルドを形成するために用いられ、孔594は、例えば酸化剤供給マニホルドを形成するために用いられ、孔593は、例えば水排出マニホルドを形成するために用いられる。
【0025】
複数のバイポーラプレート5及び複数の薄膜電極アセンブリ110の複数の孔は、異なる複数のフローマニホルドを形成するために、向かい合って配置される。例えば、複数の孔12,14,16は、薄膜電極アセンブリ110に設けられ、それぞれ、複数の孔592,594,596と向かい合って配置される。単純化のために、孔594は、酸化剤供給マニホルドとなるであろう。
【0026】
図3は、複数のマニホルド592,594,596での本発明のバイポーラプレート5の実装例であるメタルシート61の部分下面図である。図4は、上記プレート5に等しい2つのバイポーラプレート51,52を含むスタックの断面図である。薄膜電極アセンブリの薄膜113は、バイポーラプレート51,52の間に配設されている。上記断面図は、ここでは、カソードフローチャネル群とマニホルド594との間の上記酸化剤フローパスをフォローしている。さらに、1つの例示的なバイポーラプレート5が、図5の断面図に詳しく示されている。
【0027】
図示されているバイポーラプレート5,51,52のそれぞれは、固定された2つの伝導性メタルシート61,62を含んでいる。伝導性メタルシート61,62は、(これに限られるものではないが)有利には、ステンレス鋼、つまり、広く受け入れられた産業的な多くの変形方法、例えば、延伸加工、スタンピング、及び/又はパンチングに適したとても一般的な素材によって、形成されている。伝導性メタルシート61,62は、ここでは、接合部513によって固定されている。
【0028】
既知の方法では、上記スタックを通っている異なる複数のマニホルドは、個別の複数の注入ゾーンに繋がっている。図3に示された例では、マニホルド596は、注入ゾーン586に繋がっており、マニホルド594は、注入ゾーン584に繋がっており、マニホルド592は、注入ゾーン582に繋がっている。各注入ゾーンは、個別の複数のフローチャネルに繋がった、個別の複数の注入孔を有している。注入ゾーン586,584,582は、横方向にオフセットしており、この結果、バイポーラプレートの同一端に、複数のマニホルドを収容することができる。
【0029】
複数の注入孔512は、注入ゾーン586においてメタルシート62に設けられている。複数の注入ポート孔514は、注入ゾーン584においてメタルシート61に設けられている。図4に示されるように、複数の孔514は、特に複数のガスケット2の複数のサポートリブを通る路511によって、マニホルド594と繋がっている。上記複数のサポートリブ及び複数のガスケット2は、マニホルド594を取り囲んでいる。
【0030】
また、詳しく記述されず図示されてもいない、流体連結は、一方においてはマニホルド596と注入ゾーン586との間に形成され、他方においてはマニホルド592と注入ゾーン582との間に形成されている。
【0031】
伝導性メタルシート61,62は、各バイポーラプレートの外表面で、有利には、これらのバイポーラプレートのそれぞれの中の伝導性メタルシート61,62の間で、複数の流体フローチャネルを形成するために、起伏がある。伝導性メタルシート61は、それの外面に、リアクティブゾーン615及び均一化ゾーン611を有している。リアクティブエリア615は、複数のフローチャネル616を有している。均一化ゾーン611は、点線矢印で図示されているように、注入ゾーン584をリアクティブエリア615に繋げる、複数の均一化チャネル612を有している。
【0032】
伝導性メタルシート62は、それの外面に、リアクティブゾーン625及び均一化ゾーン621を有している。リアクティブゾーン625は、複数のフローチャネル626を有している。均一化ゾーン621は、注入ゾーン586を複数のフローチャネル626に繋げる、複数の均一化チャネル622を有している。
【0033】
均一化ゾーンは、薄膜電極アセンブリ110においてこの均一化ゾーンに張り出している電極が無いことによって、及び/又は、リアクティブエリアのフローチャネル群に対して側方偏位を有する均一化チャネル群が存在することによって、通常、リアクティブゾーンと区別されており、結果として、均一化ゾーンをよりコンパクトにしている。均一化領域の機能は、特に、それの個別のリアアクティブゾーンの異なるフローチャネル間のレート差を制限すること、及び、異なる複数のフローパスについての圧力損失を均一化することである。
【0034】
薄膜電極アセンブリ110は、ここでは、カソード112を取り囲み且つ薄膜113に固定された、補強部材116を有している。補強部材116は、カソード112へのアクセスを与えている正中口(median opening)を有している。ガス拡散層114は、ここでは、この正中口を横切ってカソード112と接触した状態で、配設されている。また、この例では、薄膜電極アセンブリ110は、薄膜113に固定された且つアノード111を取り囲む、補強部材117を有している。補強部材117は、アノード111へのアクセスを与えている正中口を含んでいる。ガス拡散層115は、ここでは、この正中口を横切ってアノード111と接触した状態で、配設されている。
【0035】
点線は、複数のリアクティブゾーン615,625と複数の均一化ゾーン611,612との間の境界を図示している。
本発明によれば、少なくとも補強部材又は薄膜113は、複数の均一化ゾーン611,621まで延びておらず、それゆえ、複数の均一化チャネル612,622をカバーしていない。
【0036】
このため、複数の均一化ゾーン611,621をカバーしている薄膜電極アセンブリ110の厚さは、薄膜113と補強部材116との間のオーバーラップ部分での薄膜電極アセンブリ110の厚さよりも小さい。
【0037】
図示されている例においては、薄膜113及び補強部材116,117のうちの2つの要素は、均一化エリア611,612まで延びていない。特に、薄膜113及び補強部材116が、均一化エリア611,612まで延びていない。
【0038】
このため、均一化ゾーン611,612をカバーしている薄膜電極アセンブリ110の厚さは、薄膜113と補強部材116,117とが重なった部分に対して、さらに、小さくなっている。
【0039】
それゆえ、均一化ゾーン611を通る上記フローの圧力損失を減らすために、複数の均一化チャネル612の深さを大きくしてもよい。図5に図示されるように、複数の均一化チャネル612の深さ(パラメータhhによって図示)は、複数のフローチャネル616の深さ(パラメータheによって図示)よりも大きい。
Δh=hh−he
【0040】
複数の均一化チャネル612と複数のフローチャネル616との間の深さの差は、均一化ゾーン611まで延びていない、少なくとも薄膜113の厚さ(厚さem)又は補強部材116の厚さ(厚さer116)に等しい。
Δh≧em、又は、Δh≧er116
【0041】
深さemは、典型的には、15μmと60μmとの間である。
【0042】
薄膜113並びに補強部材116及び補強部材117(厚さer117)のうちの少なくとも2つの要素が均一化ゾーン611まで延びていない場合、複数の均一化チャネル612と複数のフローチャネル616との間の深さの差は、少なくともこれら2つの要素の厚さの総和に等しい。
Δh≧em+er116、又は、Δh≧em+er117、又は、Δh≧er116+er117
【0043】
さらに、カソード112に接触するガス拡散層114の存在下では、上記深さの差は、ガス拡散層114の厚さによって、さらに大きくなる。
【0044】
図6は、均一化ゾーン611及び均一化ゾーン621でのスタックの横断面図である。複数の均一化チャネル612の深さhhは、上記カソードフロー及び上記アノードフローの圧力損失を調和するために、有利には、複数の均一化チャネル622の深さhhaよりも大きい。
【0045】
Δhca=hh−hha
【0046】
均一化ゾーン611をカバーしない上記複数の要素に従うと、次の関係が成立しうる。
Δhca≧em、又は、Δhca≧er116、又は、Δhca≧er117、又は、Δhca≧em+er116、又は、Δhca≧em+er117、又は、Δhca≧er116+er117
【0047】
複数の均一化チャネル622の深さhhaは、典型的には、200μmと500μmとの間である。複数の均一化チャネル622及び複数の均一化チャネル612の幅(平均幅として規定)は、典型的には、1mmと3mmとの間である。厚さemは、典型的には、15μmと60μmとの間である。厚さer116及び厚さer117は、典型的には、30μmと200μmとの間である。
【0048】
このため、このシナリオに基づけば、深さの差Ahcaが15μmと400μmとの間であると予測することができる。
【0049】
例えば、図4に図示されている例に従って、em=25μm、er116=50μm、er117=50μmとすると、シミュレーションによれば、カソード側の圧力損失が30%減ることがわかる。
【0050】
図6では、また、複数のバイポーラプレート51,52内に形成された、複数の冷却液フローチャネル515が区別されている。
【0051】
図7は、図4のスタックについての補強部材116の一例の上面図である。補強部材116は、カソード112へのアクセスを与える正中口(median through opening)121を有している。また、補強部材116は、複数の貫通孔(through orifices)122,123を有している。孔122,123は、正中口121の両サイドに配設されている。孔122,123は、リアクティブゾーン615の両サイドに配設された、複数の均一化ゾーン611の複数のフローチャネル612の複数の壁によって、横切られるものである。また、補強部材116は、上記スタックの上記複数のマニホルドのための路を形成するために、正中口121の両サイドに配設された複数の孔124を有している。
【0052】
薄膜電極アセンブリ110は、カソードフローをアノードフローから分離するために、上記プレート52の均一化ゾーン611及び上記プレート51の均一化ゾーン622をカバーしている。薄膜電極アセンブリ110は、ここでは、複数の注入孔514をカバーしながら、複数のガスケット2まで延びている。この例では、薄膜電極アセンブリ110のアノード補強部材117だけが、上記複数の均一化ゾーンをカバーしている。
【0053】
複数のフローチャネル616及び複数のフローチャネル626は、ここでは、平行タイプであり、同じ方向に延びている。
これらの異なるフローチャネル群は、直線的である必要は無く(これらのチャネル群は波形であってもよく)、このとき、これらの方向は、これらの入り口と出口とを繋いだ直線によって規定される。
【0054】
本発明は、燃料電池への水素分子タイプ燃料の注入を参照して、記述されてきた。本発明は、また当然に、他の燃料タイプ、例えばメタノールの注入にも適用可能である。
【0055】
本発明は、陽子交換薄膜燃料電池タイプの電気化学的リアクタを参照して、記述されてきた。本発明は、また当然に、他のタイプの電気化学的リアクタ、例えば、複数のバイポーラプレート及び複数の陽子交換薄膜のスタックを有する電解槽に適用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7