特許第6232537号(P6232537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232537
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】脈管連通装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61M25/06 512
   A61M25/06 510
   A61M25/06 580
【請求項の数】20
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-557177(P2013-557177)
(86)(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公表番号】特表2014-514016(P2014-514016A)
(43)【公表日】2014年6月19日
(86)【国際出願番号】GB2012050530
(87)【国際公開番号】WO2012120311
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年3月9日
(31)【優先権主張番号】1104016.9
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509343356
【氏名又は名称】ノッティンガム トレント ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一
(73)【特許権者】
【識別番号】508349702
【氏名又は名称】オルベロン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】アル‐ハバイベ アミン エイチ. エー.
(72)【発明者】
【氏名】バクティアリ‐ネジャド‐エスファ‐アンリ アラシュ
(72)【発明者】
【氏名】ステッド トーマス デビッド
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0209912(US,A1)
【文献】 特開平10−151206(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0106903(US,A1)
【文献】 特開平05−168644(JP,A)
【文献】 特開2008−200161(JP,A)
【文献】 国際公開第94/004206(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/06
A61M 5/158
A61B 17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管挿入装置であって、
スリーブ内に位置するように構成された穿刺部材と、
使用時に前記穿刺部材を前記スリーブに対して、前記穿刺部材の一端が前記スリーブの一端を越えて突き出る第1の状態と、前記穿刺部材の端部が前記スリーブの内部に退避する第2の状態のいずれかに作動させるリトラクト機構と、
を備え、
前記穿刺部材の先端は、使用時に脈管に穿刺するための穿刺端であり、前記穿刺部材は中空であって、前記穿刺部材を作動させる前は、装置の内部は大気圧に保持されるとともに、
前記リトラクト機構は圧力センサを備え、前記穿刺部材を介して前記脈管挿入装置の内部が正の流体圧力と連通することによる、前記穿刺部材の前記端部における大気圧よりも所定圧力差以上高い正の流体圧力を前記圧力センサが検知したことに応じて、自動的に、前記穿刺部材の前記第1と第2の状態のいずれかへの退避を起動させる、装置。
【請求項2】
前記中空の穿刺部材は、前記リトラクト機構と流体連通可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、医療機器を備え、かつ前記穿刺部材は針を備える、請求項1〜2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記リトラクト機構はチャンバを備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記チャンバは休止状態においては実質的に大気圧に維持され、前記チャンバの内部と前記穿刺部材の前記端部における外部圧力との間に圧力勾配がある場合には前記リトラクト機構にトリガを掛けて前記穿刺部材を前記第2の状態へ作動させるように構成された、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記穿刺部材は前記チャンバ内に伸張し、かつ前記チャンバの内部と流体連通するための開口を備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記チャンバの内部は、前記穿刺部材の開口を介する以外は、前記装置の外部からは実質的に密閉されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記リトラクト機構と前記圧力センサとは、チャンバと、前記チャンバ内の圧力変化に応答して作動可能である隔膜とを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記リトラクト機構は、前記穿刺部材の前記端部と流体連通するチャンバと、前記チャンバの内部の圧力に依存して前記穿刺部材を解放可能に係合するように構成された係合部材とを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記穿刺部材は、前記第2の状態に向かって付勢され、かつ前記係合部材によって前記第1の状態に解放可能に保持されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記穿刺部材はバネによって付勢されている、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
リトラクト機構による前記穿刺部材の行程を所定の距離に制限するように構成された停止部材を備える、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記リトラクト機構のためのハウジングを備え、前記穿刺部材は、前記穿刺部材の第1の端部が前記ハウジングから離間し、前記穿刺部材の第2の端部が前記ハウジングの内部に装着されるようにして前記ハウジングから支持されている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記ハウジングはスリーブをそこに圧入して収納する形状となっている、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記リトラクト機構は、チャンバとそのチャンバ内の電子圧力センサとを備え、さらに、前記穿刺部材の前記第1または前記第2の状態への退避を始動させるように構成されたコントローラを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記リトラクト機構は電気アクチュエータを含む、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の装置と、
前記穿刺部材をその端部近傍において密接して取り囲むように配置されたスリーブと、を備える、脈管連通アセンブリ。
【請求項18】
前記スリーブは、第1の状態において前記穿刺部材が貫通して突き出る開放端を有し、前記スリーブの開放端は、前記第1の状態においては、前記穿刺部材の端部にすぐ隣接している、請求項17に記載の脈管連通アセンブリ。
【請求項19】
前記スリーブは、前記リトラクト機構のハウジングの前記穿刺部材の端部から離れた位置に取り外し可能に装着され、第1の状態と第2の状態との間に作動される間、前記穿刺部材が前記ハウジングとスリーブの両方に対して退避するようになっている、請求項17または18に記載の脈管連通アセンブリ。
【請求項20】
前記スリーブはカニューレを備える、請求項17〜19のいずれか一項に記載の脈管連通アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は脈管連通装置に関し、特に、脈管に挿入して脈管内部と流体連通を図るための装置に関する。このような装置は、それに限るものではないが、医療用途に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
既存の脈管と連通させるためには、管壁を穿刺してそこにポートを設けることが必要となることが多い。脈管との継続的な流体連通が必要な場合には、穿刺部材を除去して、より適した流体導管、例えばそれ以上の望ましくない損傷を脈管に与えるリスクの小さい導管に置き換えた脈管分岐部を確立することが必要となることがある。
【0003】
医療分野においては、上記のような形で脈管を穿刺して、体内の脈管に流体を供給し、または流体を除去することが必要な場合が多くある。
【0004】
静脈カニューレ法はそのような医療処置の一般的な例である。英国だけで1年に少なくとも2500万回のカニューレ処置が行われているものと推定される。静脈カニューレ法は、最初の試行の約20〜30%が日常的に失敗しているものと予測され、特定の患者群、または経験の浅い操作者にとっては問題となり得る。
【0005】
発明者らは、失敗したカニューレ試行の少なくともある部分は、体内の脈管、例えば血管の壁が、針の進行に対して周辺組織と比べて特に顕著な抵抗の増加を示さないことが多い、という事実によるものだと判定した。穿刺すべき脈管の深さも比較的小さく、操作者が、針の端部を血管内に入れようとする場合に失敗の余地が少ない場合もある。目標範囲が小さいことと、触覚によるフィードバックが低いこととが組合わされて、操作者は針が血管内に正しく配置されたことに気付かずに、血管を貫通して針を挿入し、その結果針とカニューレの双方とも正しい位置取りに失敗してしまう、ということになる。
【0006】
操作者が、血管を穿刺した時点を正しく理解したとしても、操作者や患者がその後意図せずに動くことによって、例えば向こう側の血管壁までさらに穿刺して、カニューレ挿入に失敗してしまう、という可能性も残る。
【0007】
過去において、操作者が体内での針の位置を判定する助けとなる、追加的なフィードバックがかかる装置を提供する努力がなされてきた。特許文献1にはそのような装置の一例が提供されている。これは硬膜外腔内の負圧検知に特化したものであり、針の正しい位置を操作者に視覚的に示すことを目的としている。
【0008】
ただし、触覚的なフィードバックが相対的に低いことを補足するために、正しい針の位置を視覚的に表示することは、上記の問題点に対する部分的な解決にしかならない。更に、視覚的な表示は、正確な挿入地点とその中での針の前進への操作者の集中を削いでしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,175,608号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、挿入の改良された精度と信頼性の両方またはいずれか一方を可能とする、脈管挿入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、スリーブ内に位置するように構成された穿刺部材と、使用時に穿刺部材をスリーブに対して、穿刺部材の一端がスリーブの一端を越えて突き出る第1の状態と、穿刺部材の端部がスリーブの内部にある第2の状態のいずれかに退避させるリトラクト機構と、を備え、リトラクト機構は、穿刺部材の端部における外部流体の圧力に応じて穿刺部材に第1と第2の状態を取らせる、脈管挿入装置が提供される。
【0012】
流体圧は流体の静圧または動圧のいずれか、または任意の組合せから成ると考えられ、穿刺部材が脈管壁または周囲の物質を貫通することにより受ける接触力または摩擦力とは別であってよい。
【0013】
穿刺部材を退避させるトリガとして流体圧力を判定することは、流体の内圧が一般に既知または予測可能である脈管内へ穿刺部材が入った時点を正確に評価することが可能となる故に有利である。判定は、周囲の流体圧レベルからの流体圧の偏差に基づいて行われてもよい。有利なことには、この判定は穿刺に対する脈管壁の抵抗力に関するフィードバックには頼らない。
【0014】
さらに、穿刺部材をスリーブに対して退避させるのに必要なのは、最小限の移動量とリトラクト力の両方または一方である。こうして、スリーブは脈管内の所望の位置に、最小の擾乱しか受けずに確実に留まることができる。
【0015】
リトラクト機構は、穿刺部材の端部における正の流体圧力に応答して作動してよい。これは例えば、端部における流体圧が、大気圧より大きいか、装置またはその一部の、例えば装置内にあり得る内部チャンバの中の流体の圧力レベルより大きいか、のいずれかまたは両方によるものである。
【0016】
スリーブは、装置と、リトラクト機構と、チャンバおよび装置ハウジングの両方または片方、の任意のもの、またはその任意の組合せに対して、位置と方向を固定されて装着されてもよい。スリーブは支持構造に装着されてもよい。これは装置に取り外し可能に取り付け可能であって使用時に所望の方向を取るが、穿刺部材が退避してしまうとそこから取り外すことが可能である。
【0017】
穿刺部材は、リトラクト機構と流体連通できるような形状であってよい。一般的には穿刺部材は中空であって、中を流体が通過することができる。穿刺部材は、形状が細長いか、チューブ状であるかのいずれかまたはその両方であってよい。穿刺部材は、鋭い先端に向かってテーパが付いており、針またはトロカールを備えていてもよい。
【0018】
穿刺部材が中空であることにより、穿刺部材の端部における流体圧力を離れた位置で決定できる。リトラクト機構は、穿刺部材の内部と連通したチャンバを備えていてもよい。従って穿刺部材の端部における流体圧力は、チャンバ内で経験することができる。
【0019】
チャンバは、装置の本体またはハウジング内部に配置されてもよい。チャンバは、休止状態では最初に第1の圧力、通常は大気圧に維持されてよく、これはリトラクト機構の第1の状態に対応させることができる。チャンバは作動状態になってもよく、これはリトラクト機構の第2の状態に対応させることができる。チャンバとリトラクト機構の両方または少なくとも一方が、この第1の状態から第2の状態へ変化することは、チャンバ内の圧力が第1の状態よりも上がることにより起こされてもよい。これは、チャンバの内部と穿刺部材の端部における流体圧力との間に、正の圧力勾配または差圧が存在することに対応し得る。
【0020】
チャンバは1つまたは複数の変形可能な壁または構造を備え、チャンバ内の圧力に応答して作動可能なようになっていてもよい。チャンバは隔膜を備えていてもよい。隔膜の移動がリトラクト機構にトリガを掛けてもよい。隔膜は、一般的な管内の流体圧力に応答して、特に敏感で応答性の良いトリガ/アクチュエータを提供できることが分かっている。チャンバの容積と隔膜の寸法、並びに隔膜の材料/質量の全てが、静脈カニューレなどの所望の使用に適するように調整することができる。
【0021】
穿刺部材の退避は、周囲との圧力差が所定の圧力になった時、またはそれを超えた時に自動的に起きてもよい。リトラクト機構は、所定の正または負の圧力差に応答して穿刺部材を作動させてもよい。有利には、この装置では正しい動作のための予備加圧は必要でなく、周りの内部圧力で使用可能状態とすることができる。
【0022】
一実施形態において、装置はリトラクト機構用のハウジングを備え、穿刺部材は穿刺部材の自由端がハウジングから離れるようにそのハウジングから支持されている。穿刺部材はスリーブ内部に挿入可能であって、スリーブがハウジングに当接するようになっていてもよい。穿刺部材とハウジングの両方または一方は、使用時にスリーブと摩擦嵌合を形成するようになっていてもよい。ハウジングは、スリーブ部材と嵌合するための1つまたは複数の構造を備えていてもよい。押込み嵌合または捩り嵌合による係合構造がハウジングに備えられてもよい。
【0023】
リトラクト機構は、チャンバと、チャンバ内の流体圧力の変化に応答する穿刺部材に解放可能に係合できる係合部材とを備えていてもよい。中空の穿刺部材は、穿刺部材の端部から離れた位置に開口を有していてもよい。この開口は、チャンバに向かって開放されていて、穿刺部材の端部とチャンバとの間が流体連通できるようになっていてもよい。従って針の端部における流体圧力は、チャンバ内で経験することができる。
【0024】
リトラクト機構はアクチュエータを備え、それがチャンバ内の圧力に応じて係合部材を移動させて、選択的に穿刺部材からの係合を解くように構成されていてもよい。穿刺部材は、例えばバネによって第2の状態の方向へ付勢されていてもよい。付勢手段は穿刺部材と、チャンバおよびリトラクト機構ハウジングの両方または一方との間で結合されていてもよい。係合部材は穿刺部材を付勢手段の付勢力に逆らって保持して、そこから係合が外された場合に穿刺部材の退避を可能とするようになっていてもよい。
【0025】
穿刺部材は、係合部材と協働するための係合構造を備えていてもよい。係合部材は、穿刺部材から半径方向の外向きに突き出た突起を備えていてもよい。
【0026】
リトラクト機構は、穿刺部材が所定の距離を越えて退避することを防止するための停止部材を備えていてもよい。停止部材は、第2の状態で穿刺部材の係合構造に当接するように構成されていてもよい。有利には停止部材の位置によって、穿刺部材が所定の距離だけ確実に退避可能となる。
【0027】
リトラクト機構は、チャンバに結合するかチャンバと一緒に形成された隔膜部材のような、膨張可能部材を備えていてもよい。これはチャンバ内の流体圧力に応答して可動である。係合部材は膨張可能部材によって作動可能であってよく、そこに取り付けられるか、そこから突き出ていてもよい。膨張可能部材すなわち隔膜部材は、圧力センサとしての役目を果たしてもよい。
【0028】
これに追加して、もしくはこの代わりに、リトラクト機構にはチャンバ内の流体圧力を検出するための電子圧力センサが備えられていてもよい。そのような実施形態においては、アクチュエータは、電気的または電子的に作動するアクチュエータであってよい。
【0029】
穿刺部材は細長い形状であって、長手軸を有していてもよい。リトラクト機構は、実質的に軸方向の第1と第2の状態に、穿刺部材を作動させてもよい。
【0030】
一実施形態において、装置はスリーブを備える。スリーブには開放端があり、第1の状態において、穿刺部材がそこを通って突き出ていてもよい。スリーブの開放端は、第1の状態では、穿刺部材の端部のすぐ傍にあってもよい。スリーブは好ましくはその端部において、穿刺部材の周りに圧入または密着嵌合している。第2の状態では、スリーブとハウジングは好ましくは、穿刺部材の端部から離間した位置に一緒に結合されたままでいる。穿刺部材は一般的に細長い形状であり、ハウジング内部に支持された第2の端部を有している。
【0031】
穿刺部材とスリーブは一般的に異なる材料で形成されている。穿刺部材は金属製であってよいが、その一方でスリーブはポリマ材料で形成されていてもよい。別の実施形態において、穿刺部材とスリーブは、例えば金属などの同一材料で形成されていてもよい。そのような実施形態では、2つの部分から成る針構造となっていてもよい。
【0032】
一実施形態において、装置はカニューレ挿入装置の形をとる医療機器から成っている。スリーブは、カニューレを備えていてもよく、これはポート付きのカニューレであってもよい。
【0033】
ここで、本明細書における“脈管”という用語は、導管、空洞、または貯蔵器を構成していてもよいし、それに応じて解釈されるべきであることは、当業者には理解されるであろう。
【0034】
本発明の実行可能な実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】装置とスリーブとから成る本発明の第1の実施形態によるアセンブリの3次元図である。
図2】装置とスリーブを分解した状態の図1のアセンブリを示す図である。
図3図1のアセンブリの第1の状態における長手方向断面図である。
図4図3の長手方向断面の3次元図である。
図5図1のアセンブリの第2の状態における長手方向断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態によるアクチュエータと穿刺部材との間の代替構成を示す3次元図である。
図7】第2の実施形態の第1の状態におけるアセンブリの長手方向断面図である。
図8】第2の実施形態の第2の状態におけるアセンブリの長手方向断面図である。
図9A】本発明の第3の実施形態による装置とスリーブとカバーから成るアセンブリの3次元図である。
図9B】本発明の第3の実施形態による装置とスリーブとカバーから成るアセンブリの3次元図である。
図10】第3の実施形態の第1の状態における装置の長手方向断面図である。
図11】第3の実施形態の第2の状態における装置の長手方向断面図である。
図12】本発明の第4の実施形態による装置とスリーブから成るアセンブリの3次元図である。
図13図12のアセンブリの第1の状態における長手方向断面図である。
図14図12のアセンブリの第2の状態における長手方向断面図である。
図15】本発明の第5の実施形態による装置とスリーブから成るアセンブリの3次元図である。
図16図15のアセンブリの第1の状態における長手方向断面図である。
図17図15のアセンブリの第2の状態における長手方向断面図である。
図18A】本発明による穿刺装置の更なるオプション機能を示す図である。
図18B】本発明による穿刺装置の更なるオプション機能を示す図である。
図19図18の構成に追加または代替する安全機能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下で説明する本発明は、脈管と連通させるためにスリーブを正しく配置した後に穿刺装置を引っ込める自動機構の構想に由来するものである。カニューレなどのスリーブを体内の脈管へ挿入するための医療機器の場合、機器が周辺組織から脈管の中へ移動する際にトリガがかけられる。これによれば、操作者が例えば血管内に正しく配置されたことを判断して手動で針を退避させる、ということをしないで済む。処置のこの部分を自動化することにより、血管を穿刺した瞬間を正しく検出できないことによるカニューレ挿入不良の主要原因が低減される。
【0037】
この発明では、スリーブが脈管に挿入されるとすぐに、脈管中の流体と脈管の外部の流体やその他のものとの間の圧力変化に基づいて、穿刺部材の自動引込みにトリガを掛けることができる。
【0038】
本発明は特に体内の脈管中への導管の挿入に使用されるが、管への挿入用途に限らず、流体の損失を最小とするためにそのような操作を必要とする場合や、手動で操作を制御することで失敗を起こしやすいような場合のいずれかまたは両方のその他の例に対して使用可能である。
【0039】
図1〜5において、経皮的な脈管アクセスに使用可能な、本発明によるアセンブリ10と装置12の第1の実施形態が示されている。アセンブリ10は通常、穿刺装置12とスリーブ構造14を備えている。装置は、ハウジング16と、そこから突き出た針の形態をした、穿刺部材18とから成る。
【0040】
スリーブ構造14は、カニューレの形態をしており、これは通常の設計のものであってよく、支持構造22から突き出た細長のプラスチックまたは金属のチューブ20である。チューブ20は略一定の直径であるが、その自由端24に向かってテーパが付いている。チューブ20には長手軸方向の穴があって、支持構造22の内部へ開放されており、スリーブ構造は全長に亘って実質的に中空となっている。支持構造を貫通する穴は、チューブ構造を貫通する穴よりも直径が大きく、支持構造のチューブと係合する端部と本体を結合する首部分がテーパの付いた壁26となっている。
【0041】
スリーブ構造14は、長手軸から外に突き出た、耳たぶ状の横方向突起28も備えている。これは使用中には患者の皮膚の上に配置される。
【0042】
この実施形態においてスリーブ構造はポート付きであり、支持構造本体から実質的に半径方向外側に向かって突き出た、さらなるポート30がある。ポート30は支持構造の空洞内へ供給する側面ダクトとなっていて、チューブ24と流体連通を可能とする。別の実施形態においては、このダクト30は省略されてもよい。
【0043】
装置12は針18がハウジング16に入る領域の周りに凹み31を備えている。凹み31はスリーブ14の支持構造22の開放端の周囲に摩擦嵌合を形成するような形状となっている。凹み31はわずかにテーパが付いているかまたはその他の形状となっていて、スリーブ14にきちんと嵌るようになっていてもよい。別の実施形態においては、スリーブとハウジング16の両方または片方が、対応する固定構造をしていて、両者間で捩り込みによる嵌合が可能となるようになっている。
【0044】
スリーブ14は、図1に示すようにハウジングに固定されて使用される。つまり、針の先端18Aがカニューレチューブ20の開放端24を僅かに超えて突き出ている。これに関しては、針の先端18Aにはテーパが付いていて、長さ方向に実質的に一定の直径をしている主チューブ部分の端部に鋭い穿刺構造を与えている。チューブ状の針の構造におけるテーパは先端が開口されて、針の長手軸に対して斜めの配向となっている。これは面内では略楕円形となっている。スリーブの端部24は使用時には、針の先端18Aの開口の端部に実用的に可能な限り近くなるように配置されている。
【0045】
スリーブ14の配置と装置10への接続は、一般に以下の図3〜17に関連して説明するすべての実施形態に共通である。したがって、簡潔とするために説明を繰り返さない。本発明は、装置そのものの操作が主要な関心事であるが、装置はこのようなスリーブと共に使用するように構成されて、通常、装置とスリーブ14がすぐ使える状態に組み立てられたアセンブリとして配布される。
【0046】
次に図3〜5において、装置12と、スリーブに関連するその操作を説明する。
【0047】
装置のハウジング16は、内部チャンバ32を画定するような形状となっている。チャンバ32は前端壁34と後端壁36を持ち、その内部に針18の長手軸に整列した開口があって、針18を密着して取り囲み、液密となるような形状となっている。この実施形態において、チャンバ32は一般に円筒形状である。ただしその形状に限定される必要はない。
【0048】
後端壁36のチャンバ32とは反対側に、ハウジング16の後方に延びる円筒部40によって画定される、後部穴または凹み38がある。栓または止め具の形状の本体42が凹み38内に位置し、その中を軸方向に移動可能である。本体42は、この実施形態ではコイルばねの形態となっているバイアス部材44によって後ろ方向、すなわち退避方向(矢印Aで示す)に付勢されている。本体42は、本体とハウジングの間に圧縮力で拘束されているバネ44によって、ハウジングの内壁36に対して付勢されている(braded against the internal wall 36)。
【0049】
針18は細長い形状であって、ハウジング16、具体的にはハウジング内の本体42に装着された端部18Bから、チャンバ32とその壁34、36を通って、ハウジングからは離間している自由端18Aまで延びている。したがって、針はハウジング内に装着されて、そこから突き出ている。
【0050】
針18のハウジングチャンバ32を貫通する部分の、その長さ方向の途中に開口46が備えられている。
【0051】
針18のハウジングチャンバ32内にある部分はまた、針本体から半径方向の外向きに突き出た係合構造48も備えている。係合構造は、テーパの付いた、すなわち傾斜した停止部材の形態で、円錐台形であってよい。
【0052】
チャンバ32は、のど部52を経由して、一般により幅の広い、さらなるチャンバ50と連通する。このさらなるチャンバは、基体部と、ハウジング16の残りの部分から直立し、かつ、平面形状が一般に円形である周壁54によって画定される。別の実施形態においては、チャンバは円筒形である必要はなく、十分な寸法の隔膜を収納できる任意の適切な形状であってよい。基体と直立壁54とはハウジング16の残りの部分と一体的に形成される。
【0053】
チャンバ50は、壁54の外周面の周りに取り付けられた隔膜56(図4では省略)によって、装置の外部から密閉される。隔膜は、ポリマなどの変形可能材料で構成され、チャンバ54の内部と装置の外部との間の圧力変化に応答して動けるようになっている。隔膜は一般に、チャンバ50の形状に倣った形となっている。
【0054】
隔膜は一般的に、装置と針の両方またはいずれかの長手軸から外れている。隔膜は、これらの軸に対して実質的に垂直な方向に作動可能であってよい。隔膜とチャンバは、装置の残りの部分よりも幅が広くてもよい。
【0055】
隔膜56は、隔膜アセンブリに更なる剛性を与える、対向する円盤58同士の間に挟まれている。外側円盤58から針18の方向に突き出た、ピン60形状をした係合構造が備えられている。この実施形態では、ピン60は外側円盤58と一体形成されていて、隔膜56と内側円盤を貫通してチャンバ32の方へ延びている。のど部52内にガイド構造があり、そこを通ってピン60が延びている。
【0056】
チャンバ32とチャンバ50は、ハウジング内に別々のチャンバとして形成され、のど部52で接続されているが、これらのチャンバでは実質的に均一の圧力が維持されていることは理解されるであろう。従って、代替実施形態において、これらのチャンバは結合されてもよい。
【0057】
図3に示す第1の状態において、ピン60は針18の係合構造48に係合し、バネ44による針の退避を防止している。こうして装置は、脈管に挿入できる準備状態にある。この状態において、針の先端18Aは、前述したように、チューブ20の自由端から突き出ている。針の穴とその中にある開口46を介して、チャンバが装置外部と連通しているので、チャンバ32、50の圧力は、外部の圧力と等しい。従って、装置の内外の圧力が等しいために、隔膜は静止状態にある。
【0058】
使用時には、針の先端18Aと関連するカニューレ20が患者の体内に挿入される。針の先端18Aが組織を通過する際には、針18には殆どあるいは全く流体が入ってこないので、装置の内部圧力は実質的に変化しない。しかし、針が体内の脈管壁を突き刺して脈管中に入ると、内部チャンバ32、50は脈管中の流体の圧力に曝される。
【0059】
流体が脈管を通って流れるためには、流体に圧力差が存在することが必要である。従って、針の先端18Aが脈管内に入ると、チャンバ32、50と脈管内部との間に圧力勾配が生じる。静脈のような血管、またはその他の流体が流れている脈管を例に取ると、脈管内の圧力は一般に周囲の圧力(つまり、装置12内の圧力)よりも大きい。従って、流体はチャンバ32、50の内部に流れようとし、それによって隔膜を膨張するように作動させる。
【0060】
隔膜が作動して(すなわち膨張して)針18から離れることで、ピン60が針の軸から半径方向に移動して離れ、それによって係合構造48を解放する。解放されると、針は本体42にあるバネ44の付勢力の下に軸方向後方に移動して、係合構造48がチャンバ壁36に当接する。こうして、針はスリーブ14に対して所定の距離(すなわち図3における係合構造48と壁36の間の距離)だけ退避させられ、図5に示す状態となる。
【0061】
チャンバ32、50の圧力上昇は、脈管からチャンバ内への流体の流れとチャンバ内にそれ以前に存在する任意の既存流体(例えば空気)の圧縮のいずれかまたは両方によって実現され得る。また、必要なピンの移動距離は比較的小さい。従って、装置は特に感度が高く、作動させるのに最小限の流体流しか必要としない。
【0062】
図5は、針の端部18Aがチューブ20内に含まれ、本体42がハウジング16の端部を越えて後方に突き出ている、展開状態を示している。隔膜は作動状態に保持されている。有利にはこの状態において本体42は、ユーザに対して針が退避した状態であることの視覚的表示も与えている。これに関して、本体42は着色されているかまたはその他の方法で印がつけられていて、本体がハウジング16を越えて突き出るとはっきり見えるようになっていてもよい。しかし代わりの実施形態においては、本体はハウジング16から突き出ずに、操作者が不注意で装置の作動を妨げることのないようになっていてもよい。
【0063】
この実施形態において、上記のように針18を退避させることで、チューブ18、この実施形態においてはカニューレ、を脈管内に正しく配置した状態にする。作動圧力と関連するバネ力は十分に小さいので、装置12を保持している操作者へは最小限の乱れしか与えられない。この時、針は露出状態になく、間違って脈管をそれ以上に穿刺することがない状態であり、針に対する仮の安全策となることも有利である。
【0064】
装置12はスリーブ14から完全に取り外される。スリーブ構造14は通常の方法で患者の皮膚上に固定することができる。こうしてカニューレが患者の皮膚上に固定されて、脈管への流体の投与、または脈管からの流体の取出しなどのその後の使用が可能となる。通常スリーブは、装置12の取り外しの後に固定されるが、必要があれば装置が結合されたままの状態で固定されてもよい。
【0065】
上記の実施形態では、流体圧が特定の閾値に達した場合、円盤形の隔膜を利用してピンの解放運動を起こすようになっている。隔膜の上下にある剛体の円盤部品により、隔膜の均一な膨張と、それによる解放ピンの予測可能な効果が確保される。
【0066】
流体の差圧に対する装置の感度は正確な操作のために重要である。比較的低圧力で機構の作動を可能とし、かつ使用していないときには装置の不必要な作動を防げるように、隔膜の拡大面積を適合させることによって、所望の感度が達成される。
【0067】
代わりの実施形態においては、図1〜5に示した拡大面積を持つ隔膜に加えて、またはそれに代わって、積層した隔膜を利用して感度を向上させることも可能である。こうすることで、装置の全体寸法を小さくすることに寄与できる。
【0068】
装置の運転精度をさらに上げるために、(図3における方向で)針先端18Aの下側に、小さな開口を設け、針の開口全体が脈管内に入る地点まで、流体を逃がすようになっていてもよい。穿刺部材のこの主たる開口の壁内における副次的な開口により、穿刺部材が脈管中に入る際に装置の早すぎる作動を防止することができる。針内部での流体圧力が上昇した時には、カニューレの端部は既に脈管中に入っていることが重要であり、そうして、その後で針を退避させるとカニューレが脈管内にうまく挿入される。針の壁にある副次的開口は、カニューレ末端にすぐ隣接して設けられてもよい。
【0069】
図6〜8には、本発明の更なる実施形態が示されている。これは穿刺部材18が、装置内のチャンバ32、50の圧力よりも低い脈管内に挿入された場合の装置12の作動を可能としている。図6〜8の装置12Aの構造は、係合ピン60に図6〜8に示すようなヘッド構造62が設けられていることを除けば、前述の図1〜5における装置と同一である。
【0070】
ヘッド構造62は、一対の隣り合う開口64、66をその中に有している。第1の開口46は、針18の直径よりも少しだけ大きいが、係合構造48よりも小さい。第2の開口66は第1の開口64に隣接して、第1の開口と係合構造48の直径よりも大きな直径となっている。第1の開口64は円盤58から(ヘッド構造62の外端方向に向かって)最も遠い位置にあり、その一方で第2の開口66は、第1の開口と円盤の間(すなわちピンシャフト60の近く)にある。
【0071】
図6〜7に示された第1の、準備完了した状態において、ヘッド構造62は、図3と同様にバネ44の付勢力に抗してピン18の係合構造48に係合している。しかし、使用時に、装置12Aの針の先端18Aが、装置12Aの内部よりも圧力の低い脈管に挿入されると、隔膜は負の差圧を受け、それによって図8に示すように隔膜56と円盤58を針の軸方向に作動させる。
【0072】
図8に示した、隔膜と円盤58と関連するヘッド構造62の作動により、大きい開口66が係合構造48に整列させられ、それによって構造48が解放されて、針が退避して図8に示す第2の状態となって、係合構造48がチャンバ壁36に当接する。
【0073】
従って、係合部材60の変化によって、正の差圧でも負の差圧でも装置を作動可能とすることができる。これにより本発明を、一般に大気圧よりも低い流体圧をもつ空洞を含む、広範な解剖学的導管へ適用することが可能となる。
【0074】
次に図9には、本発明によるアセンブリのさらに2つの実施形態が示されている。これは前述の第1または第2の実施形態のいずれかの装置、12または12Aを備えている。図9〜11の実施形態にはカバーがあり、ハウジング16を形成するのに用いられるプラスチックのような剛体材料で形成されている。カバーは装置の周囲壁54に取り付けられる形となっていて、隔膜56と円盤58を覆っている。
【0075】
カバーは蓋またはキャップとして作用し、円盤58を含む隔膜56とカバーとの間に内部空間を形成して、使用時に隔膜が移動できる形状となっている。このカバーは、装置を意図的に使用する以前に、隔膜56に不必要または偶発的な作動をさせ得る隔膜へのアクセスを防止する。
【0076】
図9Aには示されていないが、カバーには一般に隔膜の外側面が大気圧に曝されるようにするための空気入口がある。この空気入口の寸法は、針の中の流体圧変化に対する隔膜の応答性に影響する。従って、空気入口は可変寸法となっていて感度調節を可能とする。ただし一般に、装置の作動の遅延時間を短くするために、カバーを通して隔膜へ流入または隔膜から流出する任意の流れを詰まらせないようにすることが好ましい。
【0077】
そのような調整可能なカバーの一実施形態が、図9Bに示されている。ここではカバーは第1のカバー部材67Aと第2のカバー部材67Bとから構成されている。カバー部材67Bは隔膜と関連する装置のチャンバを覆って配置されている。カバー部材67Aは、カバー部材67Bよりもわずかに大きく、カバー部材67Bを覆うように配置することができる。両カバー部材はその中に開口69を持ち、カバー部材67Aの開口とカバー部材67Bの開口との間の重なり具合が窓、すなわち空気入口の寸法を決定する。カバー67Aはこのように回転して開口寸法を調節することができる。カバー部材中の両開口69は好ましくは、細長い形状で、円周方向に整列しており、容易かつ正確に調節できるようになっている。
【0078】
図9A、10、11の実施形態におけるカバー66は、バネの形状をした付勢部材68によって隔膜の移動に対する抵抗を調節する手段も含んでいる。バネは、バネを圧縮または伸張させ、装置の作動にはこのバネ弾性を超える差圧の大きさが必要であることを利用して、移動を調節する。バネはまた、隔膜の運動を減衰する役割も果たして、装置の円滑な動作を確保する。
【0079】
バネ68は、カバー66の対応するポートで受けられた、調節可能な軸部70上に装着されている。こうしてバネ68が提供する弾性は調節されて、装置が第1の状態となるか、第2の状態となるかの閾値圧力の調節を可能とする。この例において、軸部70とカバーの開口部には相対応したネジが切られている。軸部には、つまみネジまたはノブ構造72または類似の手動調節構造が備えられ、バネ68の圧縮または伸張の度合いが手で簡単に調節できるようになっている。カバー上には事前設定の閾値条件を示す1つまたは複数の印が記されていて、これによって操作者が所定数の回転または所定数の部分回転により構造72を調節して、所望の閾値の設定を行うことができるようになっていてもよい。図9A〜11と図9Bの特徴を結合させてもよい。
【0080】
図12〜14には、本発明のさらなる実施形態12Bが示されている。これは変更された装置のハウジング16Bがチャンバ50も隔膜56も関連する円盤58も有しないことを除けば、図1〜8の任意のものと同じである。その代りに、チャンバ32Bは変更されて違うタイプの、バルーン74の形をした隔膜を収納する。これは長手または凸型のタイプの隔膜を提供すると考えてもよい。第1の、非作動状態では、バルーンは部分的にのみチャンバ32Bを充填している。このバルーン74は、医療装置の分野で周知のステントバルーン装置を膨らますのに使用される材料と類似のもので形成されていてもよい。バルーンには1つまたは複数の剛体リブまたはロッド76があり、これが係合構造60Bを支持し、これらは針18の長手軸に実質的に平行に配置されている。従ってリブは長手方向になるように設計されていると考えてよい。
【0081】
また、装置のハウジング16Bは複数の開口75をその中に有している。装置はまた、対応する開口をそこに有する、カラーまたは部分的なカラー部材77の形状をしたカバーを備えている。ハウジング16B上のカラー77の位置は調整可能であって、開口部の大きさを変えてバルーン74の外部との流体連通を可能とし、バルーンが上記の図9に関して説明したのと同じようにして、膨張と収縮を自由に行えるようになっている。カラー77はこの実施形態においては軸方向に移動可能である。ただし、これに代わるカバーの動作は、開口の形状と方向に依存して実行可能である。
【0082】
図12〜14の実施形態は、前述の図3〜5または図6〜8と同様に動作する。つまり、脈管内に挿入した針が生じる差圧がバルーン74の膨張または収縮を起こし、その結果係合構造48を解放して、針18をスリーブの中へ退避させる。
【0083】
以上述べた実施形態に代わる、他の膨張可能または圧力感応性のある作動装置の実施形態は、当業者にとっては明らかであろう。そして、所望の圧力感度特性が達成されれば、上記の作動機構に置き換えられるであろう。そのような実施形態は、例えば、ベローズ構造または低摩擦ピストン構成を備えていてもよい。
【0084】
次に図15〜17に、代替実施形態100が示されている。これは、これまでに述べた実施形態で提案された、純粋に機械的な検知および作動手段の代わりに、装置の動作を電子制御しようとするものである。
【0085】
図15〜17の実施形態100は、構造と動作はこれまでに述べた実施形態と同様であるが、以下の点が異なっている。
【0086】
ハウジング116は、単一の内部チャンバ132を備え、そこに電子圧力センサ101が装着されるように変更されている。プロセッサが備えられて(図示せず)、センサ101が検知した圧力を事前設定の閾値圧力と比較し、検知した圧力が閾値に等しいかそれを超える場合にアクチュエータの動作を制御する。プロセッサは単純なコンパレータの形態であるか、または意図する動作に必要な性能レベルに依存した、より複雑なプログラマブルチップであってよい。そのような実施形態におけるアクチュエータは、係合部材160を前述したものと同様に移動させるように配置された、例えばソレノイド103のような、電気的または電子的なアクチュエータを備えていてよい。バッテリ(batter)のような電源も通常備えられて、動作機構に電力を供給する。
【0087】
これまでに説明した実施形態は、相対的に小さな差圧の下での針の作動を可能とすることにより、連続的に付勢された針構造を利用しているが、今後一般的に医療応用で経験されると考えられるように、針へのラッチ手段を解放するのではなく、アクチュエータで針を直接移動させることも可能であろう。例えば、特に電子制御された実施形態においては、一般的にソレノイドまたはその他の動力を与えられたアクチュエータが、前以って退避状態に向けて針を付勢する必要なしに、確実に針そのものを十分に駆動して退避させることができるであろう。
【0088】
閾値圧力は、患者により異なり得る。しかし、低血圧患者(例えば老齢患者や失血症の患者など)に対する設定の可能性もあるが、装置が基準の閾値を有する可能性が高いであろう。流体圧力はまた止血帯をしていることによって正常の静脈圧よりも高い可能性もある。その場合に、閾値圧力を調整してもよいし、それに合わせて事前設定してもよい。正常の閾値としては、15〜25mmHgの間の値、典型的には約20mmHgの値の静水圧が提案される。
【0089】
次に図18A、18Bには、使用後の針18を安全化する安全機能を備えた、図1〜5の装置12が示されている。この例では、装置のハウジング16が2つの部分16Aと16Bで構成されている。針18は部分16Bに装着される。2つのハウジング部分16A、16Bは装置の使用中はしっかりと互いに固定されているが、取り外し可能である。これは装置12とスリーブ構造14との間に関して前述したものと類似の取付構造によって実現されてもよく、相対応した形状と密接な嵌合のいずれか、または両方を有する構造間の、例えば押込み嵌合などの摩擦係合を備えていてもよい。この他の通常の係合構造、例えば捩り嵌合やロック係合などが使用されてもよい。
【0090】
前述したように装置が使用された後、針が装着されているハウジング部分16Bは、ハウジング部16Aから引き離して、針の端部18Aがハウジング部16A内に配置されるようにする。こうして装置は安全に廃棄できるようになる。単純な機構、例えばバネ荷重の掛けられた板などを利用して、ハウジング部16Aと16Bの分離可能な距離に制限を加えることと、ハウジング部分16A内で安全化された状態で針を固定することの、いずれかまたは両方を行うことが可能である。
【0091】
次に図19では、すでに述べた任意の実施形態の装置のオプション機能が拡大枠内に示されている。針18は、針と同心で同一軸内に延びているシースまたはチューブを備えていてもよい。チューブ200は自由端が尖っていなくて、好適なプラスチック材料またはその他の材料で形成されていてもよい。チューブは固定端202で装置12内に装着されている。ただし、針18とは違ってチューブ200は、装置のハウジング16の剛体部分、例えば内部壁(例えば壁34か36)に固定して取り付けられていて、そこに対して作動可能ではない。
【0092】
チューブはスリーブ20内に保持される。
【0093】
使用時には、針の端部18Aがチューブの自由端204を越えて突き出る。この状態で、チューブの自由端204もまたスリーブ20の自由端24の後方にあって、前述した装置の動作に干渉しない。ただし、針を退避させると、針は固定チューブに関して作動され、チューブの自由端204を越えて引き込められる。そうして、使用後に装置12がスリーブ構造から外されると、針の端部18Aはチューブ200内にとどまり、それによって、露出している針が起こす可能性のある、偶発的な傷害が回避される。
【0094】
図18と19の両方またはいずれか一方に関して前述したようにして、これまでに述べた本発明の任意の実施形態は、防刃すなわち安全化された特徴を備えることができる。
【0095】
本発明を適用し得る異なる医療用の利用法としては、例えば静脈カニューレ法、体腔内の流体(例えば胸水、腹水)の吸引/ドレナージ(排液法)、腹腔鏡トロカール、の全てまたはいずれかが含まれる。カニューレはまた、代替のスリーブ、例えば2つの部分から成る針構造として使用される金属スリーブなどで置き換えてもよい。本発明は、最初に容器を穿刺することにより、既存の流体容器に連通して導管を配置することが要求される、より広範な工学的な使用法にも適用されてよい。
【0096】
前述の任意の実施形態において、ハウジング内のチャンバは、窓やそれに似た形状の透明材料部分を備え、使用時に操作者に流体がチャンバ内に入っていることを表示するようになっていてもよい。そのような、チャンバ内に入る流体の視覚的表示を利用することにより、装置が正確に動作していることをチェックするための有益な第2の手段が提供される。従って、装置が作動したかどうかを判定するための突起と、容器とチャンバの間の流体連通が達成されたことを判定するための窓との両者を利用して、操作者は、装置の正確な展開を目視的にチェックすることができる。
【0097】
1つの表示が目視確認されて、もう1つが確認できない場合は、不正確または不完全な装置の操作が推定され、操作者は、穿刺部材を取り外す前に、装置の再配置を試みたり、別のステップを行って正確な操作を確認したりすることが可能である。流体が窓越しに見えるのにリトラクト機構が作動してない場合には、操作者は穿刺部材をスリーブから手動で引き抜いて退避させて、操作を完結させることができる。
【0098】
更なる実施形態において、装置は、電子システムなどの追加または代替の警報手段を備えていて、針の退避を感知して、視覚または聴覚表示によって操作者に警報を与えるようになっていてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19