特許第6232543号(P6232543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232543
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】気液混合燃料製造装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20171113BHJP
   C10L 1/00 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 5/04 20060101ALI20171113BHJP
   B01F 5/10 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20171113BHJP
   F02M 21/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F02M37/00 341D
   C10L1/00
   B01F3/04 F
   B01F5/04
   B01F3/04 Z
   B01F5/10
   F02M21/02 Z
   F02M21/04 P
   F02M37/00 341A
   F02M37/00 341Z
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-91758(P2013-91758)
(22)【出願日】2013年4月8日
(65)【公開番号】特開2013-234654(P2013-234654A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2012-104921(P2012-104921)
(32)【優先日】2012年4月11日
(33)【優先権主張国】JP
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】500429343
【氏名又は名称】有限会社コスモテック
(72)【発明者】
【氏名】市川 十七
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−289801(JP,A)
【文献】 特開平04−047159(JP,A)
【文献】 特開平10−266900(JP,A)
【文献】 特開平10−220237(JP,A)
【文献】 特開2008−169250(JP,A)
【文献】 特開2011−247190(JP,A)
【文献】 特開2007−255297(JP,A)
【文献】 特開2008−169852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B01F 3/04
B01F 5/04
B01F 5/10
C10L 1/00
F02M 21/02
F02M 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油、重油あるいはガソリン等が貯留された燃料タンクから送られる液体燃料を所定の圧力に加圧する液体ポンプと、
酸素を含有する気体を所定の圧力に圧縮する気体圧縮機と、
加圧された前記液体燃料の中に圧縮された前記気体の微細気泡を混合して気液混合燃料を生成する気液混合器と、
加圧された液体燃料内に気体を完全溶解させるための攪拌器と、
液体燃料内に気体を完全溶解させるための貯留タンクと、
前記液体燃料内に気体を完全溶解した液体燃料を所定以上の圧力を解放するために前記燃料タンクの内部に設置された圧力解放器と、
前記気液混合燃料を内燃機関や燃焼装置に供給するための送出部を前記気液混合器に設けたことを特徴とする気液混合燃料製造装置。
【請求項2】
前記気液混合器によって生成される前記気体の微細気泡はマイクロバブルまたはナノバブルであり、この微細気泡を前記液体燃料中に混合させた請求項1に記載の気液混合燃料製造装置。
【請求項3】
前記液体燃料に混合する前記気体は、HHOガス発生装置を用いて水を主成分とする電解液から発生させたHHOガスとした請求項1乃至のいずれかに記載の気液混合燃料製造装置。
【請求項4】
前記燃料タンク内には、前記液体燃料と前記圧力開放器から開放された前記気液混合燃料を混在させ、この液体燃料を前記液体ポンプにより加圧されて前記気液混合器に加える請求項1乃至のいずれかに記載の気液混合燃料製造装置。
【請求項5】
燃料の戻り配管が単数及び複数ある内燃機関及び燃焼装置において、気液混合燃料製造装置から供給された気液混合燃料を燃料タンクに戻す戻し配管のおのおのまたは、戻し配管を一括として、その中間または配管先端部に圧力開放器の圧力維持するための圧力開放器を設けたことを特徴とする請求項1乃至に記載の気液混合燃料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や燃焼装置に供給する軽油、重油あるいはガソリン等の液体燃料に酸素を含有する気体の微細気泡を分散させた気液混合燃料を製造する気液混合燃料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン、軽油、あるいは、重油等の液体燃料を使用する自動車用のエンジンなどの内燃機関、あるいは、バーナー等の燃焼装置においては、エンジン等の燃焼を促進させることにより、出力の増加、エンジンの低燃費化、及び、エンジンから排出される有害物質の低減化を達成するための様々な工夫が提案されている。
【0003】
例えば、特開平10−266900号公報(特許文献1)、特開平10−220237号公報(特許文献2)には、HHOガス発生装置によって生成されたHHOガスをエンジンに燃料として供給し、内燃機関を駆動する例が記載されている。HHOガスとは、水素と酸素が2対1の混合比で混ざり合った状態の水素と酸素の混合ガスであり、ブラウンガスとも称され、無公害エネルギーとして自動車用のエンジンなどの内燃機関の燃料に応用することが提案されている。
【0004】
しかしながら、HHOガスを自動車エンジン用の燃料として、一般に使用されているガソリンあるいは軽油などの代替燃料として使用するためには、大量のHHOガスが必要になる。このため、必然的に大型のHHOガス発生装置が必要になるが、大型のHHOガス発生装置を自動車に搭載することは困難であり、しかも、大きな電力を必要とするため、一般的な車載用のバッテリーでは容量が不足し、また、自動車の発電機から十分な電力が得られないなどの理由から、未だ実用化されていない。
【0005】
一方、液体燃料に、空気、酸素、オゾン、あるいは水素等の気体を微細化して混入させて、この液体燃料を使用してエンジンを駆動することにより、出力の増加、エンジンの低燃費化、及び、エンジンから排出される有害物質の低減化を達成させようとすることが、特開2008−169250号公報(特許文献3)により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−266900号公報
【特許文献2】特開平10−220237号公報
【特許文献3】特願2008−169250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3によれば、気体(空気)を微細化して混入させた液体燃料(軽油)を使用して直噴ディーゼルエンジンを駆動したところ、正味燃料消費率が平均14%の低減率であったと記述されている。このように、空気を微細化して混入させた液体燃料を使用することにより、エンジンの低燃費化を実現できるものと期待される。
【0008】
しかしながら、このようにディーゼルエンジンにおける燃料消費率が改善されたにも関わらず、未だ実用化されていない。この原因は、燃料消費率の平均値が14%であり、数%程度から20%程度のバラツキが大きいためであると推察される。このバラツキの要因を分析すると、第一に、空気を微細化したときに、その気泡の直径にバラツキがあり、数百マイクロメートル以上の大径の気泡が混入した場合には、エンジンに噴射するときに大径の気泡により液体燃料の噴射圧力が低下してエンジンへの燃料噴射が遮断され、燃料の燃焼が一時的に停止すること、また、第二に、エンジンへ液体燃料を噴射させるポンプ内に大径の気泡が混入することにより、ポンプが空転あるいは停止するなどの機能が低下して液体燃料の噴射が滞ることが推察される。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、液体燃料に混合する気体比率が高く、しかも、微細気泡の径がさらに微細化された気液混合燃料を製造することができる気液混合燃料製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明による気液混合燃料製造装置は、軽油、重油あるいはガソリン等が貯留された燃料タンクから送られる液体燃料を所定の圧力に加圧する液体ポンプと、酸素を含有する気体を所定の圧力に圧縮する気体圧縮機と、加圧された前記液体燃料中に圧縮された前記気体の微細気泡を混合して気液混合燃料を生成する気液混合器と、前記気液混合燃料の所定以上の圧力を開放するために前記燃料タンクの内部に設置された圧力開放器と、前記気液混合燃料を内燃機関や燃焼装置に供給するための送出部が前記気液混合器に設けられている。
【0011】
また、前記気液混合器と前記燃料タンク内に設置された前記圧力開放器との間には、前記気液混合燃料を一時貯留する貯留タンクを設けることが望ましい。
【0012】
燃料の一部を燃料タンクに戻す戻し配管の一本または複数本ある内燃機関及び燃焼装置において、一本の時は戻り配管の中間またはタンク内先端に、複数本ある内燃機関及び燃焼装置においてはおのおのの戻り配管の中間ままたは燃料タンク内先端に圧力を開放する圧力開放器を設けるが、戻り配管を一括して戻り配管の中間または燃料タンク内先端に圧力を開放する圧力開放器を設けることも可能である。
【0013】
さらにまた、前記気液混合器は、加圧された前記液体燃料と圧縮された前記気体を混合した状態で撹拌して前記気体を微細気泡とする攪拌機を備えおり、加圧し攪拌することにより気体を溶解させる。
【0014】
あらかじめタンク内に微細気泡を混合させた気液混合燃料を使用する方法もある。
【0015】
また、前記液体燃料に混合する前記気体は、HHOガス発生装置を用いて水を主成分とする電解液から発生させたHHOガスとすることも可能である。
【0016】
また、前記燃料タンク内には、前記液体燃料と前記圧力開放器から開放された前記気液混合燃料を混在させ、この液体燃料を前記液体ポンプにより加圧されて前記気液混合器に加えている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に関わる気液混合燃料製造装置の一実施例を示す構成図である。
図2】HHOガス発生装置を示す斜視図である。
図3】微細気泡発生装置の一実施例を示す断面図である。
図4】エンジンの噴射ノズルを示す断面図である。
図5】戻り配管の有る内燃機関の気液混合燃料製造装置の一実施例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
気液混合燃料製造装置は、軽油、重油あるいはガソリン等が貯留された燃料タンクから送られる液体燃料を所定の圧力に加圧する液体ポンプと、酸素を含有する気体を所定の圧力に圧縮する気体圧縮機と、加圧された前記液体燃料中に圧縮された前記気体の微細気泡を混合して気液混合燃料を生成する気液混合器と、前記気液混合燃料の所定以上の圧力を開放するために前記燃料タンクの内部に設置された圧力開放器と、前記気液混合燃料を内燃機関や燃焼装置に供給するための送出部が前記気液混合器に設けられている。液体燃料は液体ポンプによって所定の圧力に加圧される。また、液体燃料に混合される気体も気体圧縮機によって所定の圧力に圧縮される。これら加圧された液体燃料と圧縮された気体は、気液混合器により混合されるが、このとき、気体が微細気泡となって液体燃料と混合されて気液混合燃料が生成される。気液混合器には内燃機関や燃焼装置に気液混合燃料を供給するための送出部が設けられ、さらに、気液混合器の気液混合燃料は軽油、重油あるいはガソリン等の液体燃料を貯留する燃料タンクに送られる。このとき、気液混合燃料を所定の圧力に加圧された状態に保持するため、燃料タンクの内部には圧力開放器が設置され、気液混合燃料が所定の圧力以上に達したときに気液混合燃料を燃料タンク内に放出するように構成されている。
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、気液混合燃料製造装置を、内燃機関として例えばディーゼルエンジンに適用した例を示している。
【0020】
まず、気液混合燃料製造装置について説明する。図1において、気液混合燃料製造装置MXは二点鎖線で囲われている。この気液混合燃料製造装置MXは、少なくとも、液体燃料を所定の圧力に加圧する液体ポンプ1と、気体を所定の圧力に圧縮する気体圧縮機2と、加圧された液体燃料中に圧縮された気体の微細気泡を混合して気液混合燃料を生成する気液混合器3と、気液混合燃料の所定以上の圧力を開放するために、前記液体燃料を貯蔵する燃料タンク4の内部に設置された圧力開放器5とを備えている。なお、燃料タンク4には、給油口4aおよび排気口4bが設けられている。
【0021】
後述するディーゼルエンジンに使用される液体燃料としての軽油は、燃料タンク4に貯蔵されている。この液体燃料は、燃料タンク4から液体ポンプ1に送られて、所定の圧力として例えば5気圧(約0.5MPa)に加圧される。
【0022】
一方、前記液体燃料に混合する気体は、気体圧縮機2によって所定の圧力として例えば5気圧以上(約0.5MPa)に圧縮される。この圧縮圧力は、上記液体燃料を加圧する圧力以上とし気体混入量を調整する調整器を有するのが望ましい。また、気体としては、後述するHHOガス発生装置HG(HHOガスは、水素と酸素が約2:1の割合で混合する気体であり、ブラウンガスとも言う)によって発生するHHOガスを使用することもでき、本実施例においては、HHOガスを使用した例について説明する。なお、気体は、HHOガス以外に、空気、酸素、LPガス等、酸素を含有する気体であれば使用することができる。
また、これらの混合気体も使用することができる。
【0023】
液体ポンプ1によって加圧された軽油と、気体圧縮機2によって圧縮されたHHOガスは、気液混合器3に送られて、軽油とHHOガスが混合される。このとき、気液混合器3によってHHOガスが微細気泡となり、軽油の中にHHOガスの微細気泡が分散して混合される。
【0024】
気液混合器3としては、例えば、図3に示すような、エジェクター式の微細流体発生装置を使用することが好ましい。この気液混合器3は、液体ポンプ1によって加圧された液体燃料としての軽油を配管35を介して導入する液体燃料流路31と、HHOガス発生装置1から供給される気体圧縮機2によって圧縮されたHHOガスを導入する混入流体導入孔32aを備えた混入流体導入流路32と、軽油中にHHOガスを微細化し分散させる微細流体発生空間33aおよび微細流体混合室33を有する。
【0025】
液体燃料流入孔31aと微細流体発生空間33aとは、複数本(この場合は3本)の液体燃料流路31で連通しており、微細流体発生空間33aは、液体燃料流路31に交わる形で設けられた液体燃料誘導溝31cを有している。液体燃料誘導溝31cを設けることにより、液体燃料誘導溝31cの微細流体発生空間33a側に設けた液体燃料流出孔から微細流体発生空間33aに吐出された軽油は、混入流体導入孔32aを有する吐出面にキャビテーションを伴う剥離域が発生することで、導入したHHOガスを均一かつ微細化することができ、これにより、微細流体混合室33には、軽油に10μm(ミクロン)以下の径となったHHOガスの微細気泡(マイクロバブルからナノバブル)を分散させた気液混合燃料が生成される。
【0026】
混入流体導入孔32aと、微細流体発生装置3の側面に接続される混入流体導入管34は、微細流体発生装置3内に設けられる混入流体導入流路32によって連通している。なお、HHOガスの導入量を調整する場合には、混入流体導入管34に調整弁を設けて調整するようにしても良い。
【0027】
このような気液混合器3は、エジェクター式の微細気泡発生方法に限らず、キャビテーション方式、旋回方式、あるいは、加圧溶解方式等の微細気泡発生装置を採用しても良い。ところで、液体燃料として、水のように粘度が低い液体はいずれの微細気泡発生方法も採用できるが、軽油や重油のように、粘度が高い燃料は、上述したエジェクター式の微細気泡発生装置が好適である。
【0028】
気液混合器3によって、軽油の中にHHOガスの微細気泡が分散して混合された気液混合燃料は、配管36を介して攪拌機6に送られる。この攪拌機6は、容器内に蓄えられた気液混合燃料を、プロペラ6a等の撹拌手段を高速で回転するによって撹拌するものである。この攪拌機6により気液混合燃料を撹拌すると、軽油内のHHOガスの微細気泡をさらに微細化することができ、ナノバブルの比率を高め、加圧することにより気体を溶解することが可能となる。
【0029】
軽油内のHHOガスの微細気泡を微細化及び溶解することは、エンジンにとって重要な要素であり、この点を図4によって説明する。通常のエンジンは、液体燃料を噴射器によって霧状にしてエンジンのシリンダー内に噴射される。図4に示す噴射器の噴射ノズル10は、特に先端側の内径が小さく形成されている。仮に、軽油内のHHOガスの微細気泡Bが点線で示すように噴射ノズル10の内径よりも大きい場合には、気泡Bによってノズル10内が占拠され、燃料としての軽油の噴射が滞る。燃料内に気体が一定以上に多く混入すると燃料ポンプは気体を圧縮し、燃料を噴射ができなくなり、このため、エンジンにとっては燃料が不足することになり、所定の出力が得られない問題が生ずる。また、ディーゼルエンジンにおいては、後述するように、サプライポンプ201により気液混合燃料を高圧にした後、コモンレール202、インジェクタ203を介してエンジンの燃焼室20内に噴射するように構成しているが、サプライポンプ201に大きなHHOガスの微細気泡が存在する場合には、大きな気泡によってポンプが空転または停止することがあり、この結果、エンジンが停止するといった重大な問題を招来する原因となる。一方、上述したように、エジェクター式の気液混合器3によって微細気泡を発生させ、攪拌機6によって微細気泡をさらに微細化し、加圧することにより軽油内に溶解させることができ、これらの問題を未然に解消することができる。
【0030】
攪拌機6によって軽油内のHHOガスの微細気泡をさらに微細化し、燃料内に溶解した状態にした気液混合燃料は、滞留タンク7に送られる。滞留タンク7は、気液混合燃料を一旦滞留させることにより、軽油内におけるHHOガスの微細気泡の溶存量を増加させる機能を有している。また、軽油内に存在する大きな気泡が滞留している間に浮力によって表面側に上昇し、滞留タンク7には、浮力の小さな微細気泡が残留することから、実質的には、微細気泡をさらに微細化し、溶解度を高める事ができる。
【0031】
滞留タンク7には送出部が設けられていて、一旦滞留された気液混合燃料を後述するディーゼルエンジンに供給するとともに、燃料タンク4内に設置された圧力開放器5に送出される。前述したように、液体ポンプ1によって加圧された軽油と、気体圧縮機2によって圧縮されたHHOガスは、気液混合器3に送られて軽油とHHOガスが混合されて気液混合燃料を生成するが、軽油とHHOガスは、各々5気圧に加圧されている。また、気液混合器3、攪拌機6及び滞留タンク7は、各々を連通する配管の内部を含めて閉塞状態のため、これらの内部は5気圧となっている。
【0032】
ところが、連続して気液混合燃料を生成すると、ディーゼルエンジンに供給されない余剰の気液混合燃料が増加する。この結果、次第に内部の圧力が高まることから、5気圧を超えた場合には圧力開放器5によって燃料タンク4内に放出し、各々の内部を5気圧に保持するようにしている。このとき、燃料タンク4内には、HHOガスの微細気泡を混合した気液混合燃料が放出され、しかも、燃料タンク4内の液体燃料を液体ポンプ1によって加圧してHHOガスの微細気泡と混合することから、燃料タンク4内には、次第に気液混合燃料の比率が高められることになる。
【0033】
以上説明したように、軽油とHHOガスを各々5気圧に加圧したうえで気液混合器3によって混合することにより、HHOガスの微細気泡の混合比率を大幅に高め、加圧することにより燃料内に溶解させることができる。
【0034】
なお、図1に示す実施例においては、気液混合器3によって軽油中にHHOガスの微細気泡を混合した気液混合燃料を生成し、この気液混合燃料の微細気泡を攪拌機6によってさらに微細化した後、滞留タンク7によって軽油内におけるHHOガスの微細気泡の溶存量を増加させているが、気液混合器3によって、気液混合燃料中の微細気泡の径が所定の大きさ以下の場合には、攪拌機6及び滞留タンク7を省略することができる。この場合、滞留タンク7に設けられた送出部を気液混合器3に設けることになる。ここで、攪拌機6及び滞留タンク7は、気液混合燃料に混合される気体としてのHHOガスの微細気泡を微細化するために設けられていることから、実質的に気液混合器3に含まれる構成の一部とすることができ、従って、送出部は、滞留タンク7あるいは気液混合器3のいずれかに設けた場合でも等価である。
【0035】
前述した特開2008−169250号公報(特許文献3)により提案されているような、気体(空気)を微細化して混入させた液体燃料(軽油)は、大気圧の状態で生成される。この場合の気体の微細気泡の容量は、液体燃料の容量に対して1%未満の混合比率である。このような液体燃料を使用してディーゼルエンジンを駆動した場合には、正味燃料消費率を平均14%低減できたと記述されているが、さらに燃料消費率を低減するためには、気体の微細気泡の混合比率を高める必要がある。
【0036】
上述した実施例による気液混合燃料製造装置によれば、液体燃料である軽油と、気体であるHHOガスを各々5気圧に加圧することにより、HHOガスの微細気泡の容積が圧力により5分の1まで圧縮されて小さくなるので、高圧とした軽油内に混合し易くなることから、気体の微細気泡の混合比率を5%まで上昇させることが可能となる。しかし、実際には軽油を加圧することにより、軽油内で気体及びHHOが溶解し、更に多く気体及びHHOを溶けませることが出来、加圧する圧力により溶解するHHOを更に増やすことが出来る。例えば5気圧に加圧した軽油に5気圧以上に圧縮した気体を混入させ、攪拌し、滞留させることにより、軽油内の気体が完全に溶解し、軽油が透明になることは実験により確かめられている。このときの気体混入量は体積比100%であった。
【0037】
次に、図2に示すHHOガス発生装置HGについて説明する。HHOガスを発生させるHHOガス発生装置HGは、電気分解装置100と、電気分解装置100の各電極における陽極と陰極との間に流す電流が所定の電流値となるように制御を行う電流制御装置110と、直流電源としての電源装置120を有している。
【0038】
電気分解装置100は、内部に水(純水)を主成分とする電解液を貯留する電解槽101と、電解槽101の上端開口部を密閉する密閉蓋102と、それぞれの組が陽極及び陰極で構成される例えば3組からなる複数組の電極(図2においては、電極103のみを示し、他の2組の電極は図示しない)のそれぞれに電力を供給するための陽極側電極端子104a、104b、104c及び陰極側電極端子105a、105b、105cと、電気分解によって生成されたHHOガスを排出するHHOガス排出ノズル106とを備えている。なお、図示しないが、密閉蓋102には、電解液107を電解槽101内に供給するための電解液供給口が設けられる。また、必要に応じて、標高の違いなどによる気圧変化に対応して電解槽101内の圧力を調整する圧力調整部が備えられる。この圧力調整部は、標高の違いだけではなく、電解槽101内の圧力が何らかの原因で高くなった場合にも、電解槽101内の圧力を逃がすように作動することにより、電解槽101内の圧力を適正な圧力に保持する機能も有している。
【0039】
電解槽101は、強化合成樹脂により形成され、また、密閉蓋102は、電解槽101よりも強度的に低い合成樹脂によって構成されている。このように、密閉蓋102を電解槽101よりも強度的に低い合成樹胎としたのは、仮に、電解槽101の内部の圧力が何らかの原因で異常に高くなって電解槽101が破裂するような場合を想定したときに、電解槽101よりも強度的に低い密閉蓋102のみが破壊されるので、破壊による電解液の流出も阻止され、損失を最小限に抑えることができる。
【0040】
また、隣接する2つの電極の間には、合成樹脂などによる板状部材によって形成された仕切り板108が備えられている。この仕切り板108は、その下端辺が電解槽101の内部底面に密接し、かつ、両側の側端辺が電解槽101の内部側面に密接した状態で電解槽101内に設置される。また、仕切り板108の上端辺の高さは、電極103の高さよりも若干高く設定され、仕切り板180の上端辺と密閉蓋102の内面との間は連通している。このように、電極の間にそれぞれ仕切り板108を設けることにより、電解槽101が多少傾いた場合においても、電解液101が各仕切り部屋ごとに水平となり、特定の電極が電解液101の液面から露出することを防止することができる。
【0041】
電極103における陽極及び陰極は、1枚の陽極板103aと2枚の陰極板103bとで構成されており、1枚の陽極板103aの両面に2枚の陰極板103bが一定間隔を置いて挟むように対向配置されている。これらの陽極板103aと2枚の陰極板103bは、下端側が電解槽101の内部底面に動きが規制された状態で支持されている。また、1枚の陽極板103aは、上端部が陽極板吊り下げ金具109aに取り付けられ、2枚の陰極板103bは、陰極板吊り下げ金具109bに取り付けられることにより固定されている。上記陽極板吊り下げ金具109aは、陽極側電極端子104aに電気的に接続され、陰極板吊り下げ金具109bは、陰極側電極端子105aに電気的に接続されている。この陽極板吊り下げ金具109aおよび陰極板吊り下げ金具109bによる取り付けは、電極103を含めた3組の電極においても同一構成としている。
【0042】
なお、電極103の陽極板103aは、基材としてチタン材が用いられ、チタン材にイリジウム皮膜が塗布法、めっき法又は溶着法によって形成されている。一方、陰極板103bも基材としてはチタンが用いられ、チタン材にプラチナ皮膜が塗布法、めっき法又は溶着法によって形成されている。このように陽極板103a及び陰極板103bを構成とすることにより、耐電蝕性に優れた電極とすることができるので、電蝕によって劣化することを抑制でき、長期間の使用にも耐え得る電極とすることができる。
【0043】
次に、電流制御装置110は、3組の電極のそれぞれに対応した3個の電流流制御部111、112、113を有している。電流制御部111の正(+)側端子は電気分解装置100に設けられている陽極側電極端子104aに接続され、電流制御部110の負(−)側端子は、電気分解装置100に設けられている負極側電極端子105aに接続されている。また、電流制御部112の正(+)側端子は電気分解装置100に設けられている陽極側電極端子104bに接続され、電流制御部112の負(−)側端子は電気分解装置100に設けられている負極側電極端子105bに接続されている。また、電流制御部113の正(+)側端子は電気分解装置100に設けられている陽極側電極端子104cに接続され、電流制御部113の負(−)側端子は電気分解装置100に設けられている負極側電極端子105cに接続されている。
【0044】
上記電解槽101に貯留する電解液107は、水(純水)を主成分とするが、HHOガス発生装置1における電解液107は、蒸留水に所定量の炭酸ナトリウムを重量比で0.1%から20%、好ましくは、5%程度溶解した炭酸ナトリウム水溶液を用いている。このような成分の電解液107によって、電気分解を促進することができる。なお、電解液としては、安価かつ安全性を得られるならば、他の物質を溶解しても良い。また、この電解液107を寒冷地において使用可能とする場合には、凍結防止剤として、例えば、エチレングリコールなどを使用場所の気温に応じて適量だけ混入することが好ましい。
【0045】
また、電源装置120としては、自動車に搭載されている12ボルトまたは24ボルトの蓄電池を使用することが好ましい。この蓄電池から電流制御部111、112、113に電力を供給して、3つの電極103などにおける陽極板と陰極板との間に流す電流を所定の電流値となるように制御する。このように、電流制御部111、112、113によって、電流値を制御することにより、HHOガス発生装置1から最適量のHHOガスを発生させるとともに、3つの電極103などの発熱を抑制して室温程度に抑えることができる。
【0046】
以上のように構成したHHOガス発生装置HGからHHOガスを発生させるには、まず電流制御部111、112、113に電源装置120から電力を印加する。電流制御部111、112、113により、各電極103などにおける陽極板と陰極板との間に制御された所定の電流値の電流を流すことにより、電解液107が電気分解されて泡状のHHOガスが発生する。このHHOガスは、電解槽101の電解液107の上部に蓄積された後にHHOガス排出ノズル106から排出され、所定の配管を通って、前述した気液混合器3に供給される。
【0047】
なお、気液混合燃料におけるHHOガスの微細気泡の比率を所定の容量比率にするために、気液混合器3へのHHOガスの導入量を調整弁によって調整する手段、HHOガス発生装置HGの運転をHHOガスの微細気泡の比率に応じて稼働と停止を間欠的に行う手段、もしくは、気液混合器3へ導入するHHOガスに空気を混合してHHOガスの比率を調整する手段などにより調整することが望ましい。
【0048】
一方、滞留タンク7の送出部7aから送出される気液混合燃料は、図1に示すような、自動車、船舶等のディーゼルエンジンの燃料として供給される。図1は、一般的に使用されているコモンレール式ディーゼルエンジンの燃料供給システムを例示している。この図1において、燃料となる気液混合燃料は、サプライポンプ201、コモンレール202、インジェクタ203を経由してエンジンの燃焼室20に供給される。
【0049】
なお、インジェクタ203の数は、燃焼室20の数と同数設けられる。図1では4気筒エンジンを例に挙げているので四個のインジェクタ203を備えているが、例えば6気筒エンジンの場合には6個となる。
【0050】
この燃料供給システムは、サプライポンプ201により気液混合燃料を所定の圧力にした後、コモンレール202内に蓄積させておき、このコモンレール202内の高圧となった混合燃料を、各インジェクタ203を介してエンジンの燃焼室20内に噴射するように構成している。
【0051】
なお、サプライポンプ201に送られながらコモンレール202に圧送されなかった混合燃料は、燃料リターン通路(図示しない)を介して、また、コモンレール202に送られながらインジェクタ203へ圧送されなかった気液混合燃料は、燃料リターン通路204を介して、さらに、インジェクタ203に圧送されながら燃焼室20へ噴射されずに余った気液混合燃料は、燃料リターン通路205を介して、それぞれ燃料タンク2へ戻されるようになっている。
【0052】
なお、これらのリターン燃料のうち、特にインジェクタ203からのリターン燃料は、例えば百数十℃もの高温になっている関係から、この高温のリターン燃料がそのまま燃料タンク2内に戻されると、発火事故等の原因となるので好ましくない。そこで、通常の場合は、インジェクタ203から燃料タンク2への燃料リターン通路205の上流側に、その内部を流れる燃料を冷却するための冷却手段が設けられる。
【0053】
このようなディーゼルエンジンには、発電機206(またはダイナモ)が連結されていて、この発電機206は、前述した電流制御装置110の電源装置120としての蓄電池に接続されている。そして、ディーゼルエンジンが回転駆動したときに、発電機206から発電された電力が電源装置120としての蓄電池に蓄電され、電流制御装置110の電源としている。
【0054】
図1に示すコモンレール式ディーゼルエンジンに対し、通常の軽油の代わりに、軽油の中にHHOガスの微細気泡を分散させた混合燃料を使用してディーゼルエンジンを備えた自動車により実験した。実験車Aは、排気量が2650ccの軽油を燃料とするディーゼル車を使用した。一般の軽油を燃料として、一般道を約200Km走行したときの燃費は、8.3Km/リットルであった。次に、HHOガスの微細気泡を分散させた気液混合燃料を燃料として、同一条件で走行したときの燃費は、12.2Km/リットル乃至13.8Km/リットルであった。この結果、気液混合燃料を燃料とした場合には、45%以上の燃費が向上した。また、ディーゼルエンジン車に求められる黒煙の排出量を測定したところ、通常の軽油を使用した場合は15%であったが、気液混合燃料を使用した場合には8%に減少し、約50%改善することが確認された。さらに、排気ガスについても、47%が削減された。このように、燃費、黒煙排出量、排気ガス量のいずれについても、著しく改善されることが確認できた。
【0055】
次に、実験車Bについても同様の実験を行った。実験車Bは、排気量が2660ccの軽油を燃料とするディーゼル車を使用した。走行する条件は実験車Aと同じである。その結果、一般の軽油を燃料としたときの燃費は、6.7Km/リットルであったが、HHOガスの微細気泡を分散させた混合燃料を燃料としたときの燃費は、11.0Km/リットル乃至12.8Km/リットルとなり、64%以上の燃費向上が確認された。また、実験車Bにおいても、黒煙の排出量を測定したところ、通常の軽油を使用した場合は18%であったが、混合燃料を使用した場合は7%に減少し、さらに、排気ガスについても、61%削減される結果となった。
【0056】
実験車Aと実験車Bについて、燃費、黒煙排出量、排気ガス量に差が生じた原因は究明中であるが、車種によるディーゼルエンジンの型式の相違によるものと考えられる。ただし、いずれの車種においても、少なくとも燃費が40%以上向上することは確かである。
【0057】
一方、船舶などの重油を燃料としたエンジンの場合は、初期の実験の結果では、燃費が約55%向上することが確認された。重油の場合は粘度が高いため、HHOガスの微細気泡を分散させた気液混合燃料を生成することが比較的困難であるが、前述した本発明の気液混合燃料製造装置によれば、液体燃料と、気体を各々5気圧に加圧することにより、気体の微細気泡の容積が圧力によって圧縮されて小さくなるので、粘度が高い重油であっても、高圧とした重油内に混合し易くなり、加圧により重油内で気体が溶解する状態となる圧力にすることも可能である。
【0058】
上述した各実施例に示した気液混合燃料製造装置は、場合によっては故障することも想定される。この装置の故障により、自動車または船舶が運行不能に至ることは、損失の原因となる。このため、本発明による気液混合燃料製造装置においては、故障した場合であっても通常状態に復帰できるように配慮されている。
【0059】
図1に示した気液混合燃料製造装置において、万一、HHOガス発生装置HGが故障した場合、気液混合器3へHHOガスが供給されなくなる。このとき、エジェクター式の気液混合器3は、液体燃料誘導溝31cを設けていることから、例えHHOガス発生装置HGからHHOガスが供給されなくなっても、液体燃料が流通することができる。そのために、内燃機関の燃焼室には、通常の場合と同様の液体燃料が供給されることになり、通常の運行状態に復帰できるので、何らの支障なく通常の運行状態に復帰できる。
【0060】
本発明による気液混合燃料製造装置は、例えばバーナーのような燃焼装置にも適用できる。パーナーの多くはA重油を燃料としている。このバーナーに供給する燃料として、気液混合燃料製造装置によって、A重油の中に所定量のHHOガスの微細気泡を分散させた気液混合燃料を使用することにより、燃費、黒煙排出量、排気ガス量を著しく改善させることができる。
【0061】
燃料をタンク内に戻す戻し配管が一配管及び複数配管存在する内燃機関及び燃焼装置が存在するが、この戻し配管の中間部またはタンク内先端部に気液混合燃料の圧力を一定に維持するための圧力開放器をもどし配管のおのおのに設けることにより、内燃機関及び燃焼装置の燃料系統内の気液混合燃料が一定圧力に維持することができる。
【0062】
図5では戻り配管が二系統存在する内燃機関の戻り配管を統合し、タンク内先端に圧力開放器5aが設けられている一実施例を示しており、気体を混入した燃料が燃料内で気体が完全に溶解し、気液混合燃料が更に加圧されても体積の減少を起こさない圧力に維持されている。
【0063】
内燃機関及び燃焼装置において、気液混合燃料製造装置からの気液混合燃料の戻り配管に取り付けられた圧力開放器を代用し、気液混合燃料製造装置に直接接続する圧力開放器を省略することも可能である。
【0064】
図1及び図5において、貯留タンク7の上部から内燃機関及び燃焼装置に燃料を供給するように記載されているが、貯留タンク7の中間部から内燃機関及び燃焼装置に燃料を供給することも可能で、気液混合燃料の未溶解気体分を気体混合燃料製造装置に接続された圧力開放器を通してタンク内に戻し、気体が溶解した燃料のみを内燃機関及び燃焼機関に供給する事が出来る。
【0065】
以上、本発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能であることは言うまでもない。前述した各実施例において、内燃機関や燃焼装置の液体燃料として、軽油、重油を例示したが、その他、ガソリン、バイオエタノール、バイオガソリン、潤滑油や食用油などの各種廃油等であっても、気体の微細気泡を分散させた混合燃料とすることができる。また、内燃機関や燃焼装置としては、自動車、船舶のエンジンの他、エンジン付発電機、トラクター、耕耘機、田植機、稲刈り機、刈払い機等の各種農業用機械、航空機のエンジン、あるいは、建設・建築機械用のエンジンにも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 液体ポンプ
2 気体圧縮機
3 気液混合器
4 燃料タンク
5 圧力開放器
6 攪拌機
7 滞留タンク
MX 気液混合燃料製造装置
HG HHOガス発生装置
DE 内燃機関及び燃焼装置
図1
図2
図3
図4
図5