特許第6232545号(P6232545)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232545有機廃棄物の分解促進剤及びこれを含む微生物資材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6232545
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】有機廃棄物の分解促進剤及びこれを含む微生物資材
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20171113BHJP
   C05G 1/00 20060101ALI20171113BHJP
   C05F 11/08 20060101ALI20171113BHJP
   C05F 9/00 20060101ALI20171113BHJP
   C05D 9/02 20060101ALI20171113BHJP
   C05F 11/02 20060101ALI20171113BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B09B3/00 A
   C05G1/00 A
   C05F11/08
   C05F9/00
   C05D9/02
   C05F11/02
   C12N1/00 S
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-219368(P2016-219368)
(22)【出願日】2016年11月10日
【審査請求日】2016年11月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516338039
【氏名又は名称】環境触媒科学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517271108
【氏名又は名称】河野 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100119644
【弁理士】
【氏名又は名称】綾田 正道
(72)【発明者】
【氏名】小栗 光雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 良平
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−087746(JP,A)
【文献】 特開平09−001116(JP,A)
【文献】 特開平04−238887(JP,A)
【文献】 特許第2504364(JP,B2)
【文献】 特開2014−144440(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/079483(WO,A1)
【文献】 特開2011−140436(JP,A)
【文献】 特開平09−029217(JP,A)
【文献】 特開2014−117192(JP,A)
【文献】 特開2005−262107(JP,A)
【文献】 特開2003−285030(JP,A)
【文献】 特開2003−200137(JP,A)
【文献】 特開2003−136044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00 − 5/00
C05F 1/00 − 17/02
C05D 1/00 − 11/00
C05G 1/00 − 5/00
C12N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
玄武岩質安山岩から抽出されたFe3+を含む複数のミネラルと、有機廃棄物とを混合して、約70℃で2か月間攪拌しながら前記有機廃棄物を分解した後、さらに少なくとも2か月間堆積させたまま放置して土壌微生物の作用により腐植化させた、フェリハイドライトを含むミネラル腐植複合体を製造し、
当該ミネラル腐植複合体を、好気性細菌及び通性嫌気性細菌を含む生ゴミ分解用微生物と共に、分解処理対象である生ゴミに投入し、好気的条件下、50℃〜90℃の温度で攪拌及び混合することを含む生ゴミの分解処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物による有機廃棄物の分解促進剤に関し、特に、好機性細菌を含む微生物資材に添加して有機廃棄物の分解速度を高めるための分解促進剤に関するものである。また、当該分解促進剤を含む有機廃棄物分解用微生物資材及びこれを用いる有機廃棄物の分解処理方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、生ゴミ処理のために様々な細菌の活用が探索されている。細菌は外界から物質を取り込み、分解消化することで生存に必要なエネルギーを獲得している。生ゴミ処理に用いられる細菌は、生ゴミの構成成分であるタンパク質、糖質及び脂質等を取り込み、生存に必要なエネルギーを獲得し、これにより生ゴミを分解消滅させる。
【0003】
しかしながら、生ごみ処理の実用化に関する大きな問題は、細菌による生ごみ分解に時間がかかることであり、長時間の処理条件下では、アンモニアをはじめとする臭気物質が発生することも問題である。
【0004】
有機性生ごみを短時間で分解消滅させるために、好気性細菌、通性嫌気性菌のパエニバチルス リゾスファエラ及びバチルス ノバリス、バチルス オレロニウス及び乳酸桿菌を用いて複合菌を培養する方法が報告されている(特許文献1参照)。本発明者らはこれらの複合菌の生ゴミ分解能を最大限に引き出すために、水分、温度、酸素濃度条件を最適に保つ必要があることを見出しているが、細菌を用いた生ゴミ処理技術の飛躍的な革新のためにはさらなる活性化剤の探索が必要である。
【0005】
一方、土壌の残留農薬及び重金属などの汚染物質を除去し、保水性及び通気性に富む土壌の団粒構造を形成して微生物の活動環境を改善するために、フェリハイドライト腐植複合体を用いる技術が報告されている(特許文献2参照)。フェリハイドライト(Ferrihydrite)とは、一般式5Fe・9HOで表される非晶質鉄水和酸化物である。一般的には、地球表層において初期段階で形成される低結晶度の鉄鉱物として知られている。
【0006】
上記、フェリハイドライト腐植複合体は、このようなフェリハイドライトを有機物で複合化したものであるが、その高いイオン交換能や触媒能は、重金属の不活性化、悪臭物質の分解除去、病原性微生物やウイルスの消毒効果に優れている。また、高いガス吸着能は硫化水素やメタン、アンモニア、塩素ガスの吸着効果があるが、有機物の分解については、好気的な一次発酵の後で、主に嫌気性菌による有機物の分解と合成とを繰り返しながら重縮合によって褐色又は黒褐色の無定型高分子物質である「腐植」を生成されることが知られている。また、完熟した腐植を生成するためには通常2〜6か月の期間を要し、これを用いて家畜糞を堆肥化する場合でも、数日〜2週間程度の製造期間を要することが報告されている(例えば、特許文献3、段落「0020」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−117192号公報
【特許文献2】再表02/079483号公報
【特許文献3】特開2013−136507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、生ゴミなどの有機廃棄物を短時間で、しかもできるだけ質量又は容積を減らして分解消滅させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の有機廃棄物の分解促進剤は、玄武岩質安山岩から抽出した鉄を含む複数のミネラルの存在下で腐植化された有機物であるミネラル腐植複合体を含むことを最も主要な特徴とする。
【0010】
また、本発明の有機廃棄物分解用微生物資材は、好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌を含む単一又は複合細菌と、玄武岩質安山岩から抽出した鉄を含む複数のミネラルの存在下で腐植化された有機物であるミネラル腐植複合体とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明により有機廃棄物、特に、生ゴミが短時間で分解消滅処理することができる。また、分解過程で発生していた臭気も少なく、減質量率を向上してほとんどの生ゴミが消滅するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例2における、しいたけ及びしいたけ菌床の分解処理テストの結果を示すグラフである。
図2】実施例3における、食品残渣の分解処理テストの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(有機廃棄物の分解促進剤)
本発明の1つの実施形態は、ミネラル腐植複合体を含む、微生物による有機廃棄物の分解促進剤である。本実施形態の「ミネラル腐植複合体」とは、玄武岩質安山岩から抽出した鉄を含む複数のミネラルの存在下で、有機物を腐植化して得られる複合体からなる組成物をいう。また、「腐植」とは、本明細書では、食品廃棄物及び動植物遺体等の有機物が土壌微生物の作用による分解と合成とを繰り返しながら重縮合によって生じた褐色または黒褐色の無定形高分子物質を意味し、「堆肥」と同義である。
【0014】
用語「ミネラル」とは、医学、生物化学の分野で、生体を構成する元素のうち炭素、窒素、水素及び酸素の4元素以外の元素の総称であり、例えば、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、銅、亜鉛等の金属元素が例示される。本実施形態で用いられるミネラルは玄武岩質安山岩から無機酸で抽出され少なくとも鉄を含む多くの金属元素をからなる。ミネラルの中には、一般式5Fe・9HOで表される非晶質鉄水和酸化物であるフェリハイドライト(Ferrihydrite)が含まれ、これは、一般的に地球表層において初期段階で形成される低結晶度の鉄鉱物として知られている。
フェリハイドライトは、有機化合物のカルボキシル基やカルボニル基のOH端、O端と配位結合する性質があり凝集体を形成する。比表面積が約200(m/g)と大きく、有機化合物のOH端、O端との反応に供される場が広いため、触媒能が高く、凝集体を形成する能力が高いことが分かっている。
【0015】
本実施形態のミネラル腐植複合体は、玄武岩、安山岩等の堆積岩に、濃度10〜20重量%の硫酸水溶液を添加して酸可溶成分を抽出した天然由来のイオン化ミネラル濃縮液と、有機物との混合物とを原料として、下記の製造工程により製造される。
ミネラル液は、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等の無機イオンを含むが、とりわけ、鉄を1.9質量%程度含む(ICP発光分析による)。ミネラル液に含まれる鉄は、pHによって異なる形態で存在する。pH3以下では、鉄は、Fe3+、pH3〜pH4では、Fe3+とFe(OH)2+、pH4〜pH5では、Fe3+とFe(OH)2+とFe(OH)、pH5より高いpHでは、Fe(OH)2+とFe(OH)とFe(OH)として存在する。フェリハイドライト形成のためには原料となる3価の鉄Fe(OH)が存在することが好ましい。しかしながら、酸性のミネラル濃縮液を用いても、有機廃棄物と混合することによりイオン状態の鉄が安定化され、その後の一次発酵、二次発酵の段階で有機物のpHが5以上となるため特にpH調整をする必要はない。マグネシウム及びカルシウムが多く含まれているとFe(OH)の形成が阻害されるため、上記ミネラル液に含まれるマグネシウム及びカルシウムの総含有量が、鉄の含有量の30質量%以下であることが好ましい。このようなミネラル液の1つとして、環境触媒科学株式会社から「アモル21(AMOR21)」(商品名)が販売されている。
【0016】
腐植の原料となる有機物としては、畜糞、生ゴミ、食品廃棄物、剪定枝や廃材チップ、浄化槽汚泥等の有機廃棄物を用いることができる。
【0017】
ミネラル腐植複合体の製造方法について説明する。
まず、公知のシュレッダーで破砕した有機物廃棄物に上述した鉄を含むミネラル液を滴下しながら攪拌、混合する。このとき、オガ粉のような水分調節材及び/又は米糠のようなC/N調節材を添加して適度な水分及びC/N比にすることが好ましい。この一次発酵段階では好気性菌の働きにより有機物が分解されるとともに発熱する。フェリハイドライトの形成を促進するためにpH調整を行う場合は、消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH))を添加して、有機物のpHを、5以上に調整してもよい。ミネラル濃縮液としてアモル21を使用する場合は、約1mの有機廃棄物に対して、総量約300ml程度添加すればよいが、有機物の種類や含有量によって適宜添加量を調整する。
【0018】
次いで、有機物の攪拌を中止し、二次発酵・完熟を行う。この工程では、有機物を、堆肥場内で堆積して発酵させる。有機物の温度が65℃〜70℃に達した時点で、ブルドーザ、ショベルカー等を用いた攪拌による切り返しを行う。
二次発酵・完熟工程開始から2〜6か月程度で有機物は完熟堆肥となる。この二次発酵の期間を短縮するために、完熟した腐植をリサイクルして、有機物を処理する際の母材として用いることが好ましい。これによりミネラル腐植複合体の製造期間を2か月間程度に短縮することもできる。
【0019】
以上で、本実施形態で用いるミネラル(鉄)腐植複合体が完成する。このミネラル腐植複合体中のフェリハイドライト量は5ppm以上であることが好ましい。また、このフェリハイドライト腐植複合体のCEC(陽イオン交換容量)は約50(meq)(肥料分析法の酢酸アンモニウム法による測定)であるが、約100meq以上であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態では、上記方法により製造されたミネラル腐植複合体を用いるが、これに限定されず、他の方法により製造されたものを用いてもよい。このミネラル腐植複合体による有機廃棄物の分解促進メカニズムについては後に詳述する。
【0020】
(有機廃棄物分解用微生物)
有機廃棄物の分解に用いる微生物は特に制限されないが、増殖速度の速い細菌が有用である。特に有用な細菌は、自然界から採取したもので好気性細菌、通性嫌気性細菌からなる。細菌は容易に採取できる環境下で生育しており、安定供給に支障はない。単一の細菌種であってもよいが、複数の細菌種からなる複合細菌を用いることで、生ゴミの内容に左右されず安定的に高い処理効果を得ることができる。複合細菌の同定試験では、数種の分離菌が観察されるが、好気性菌が優勢支配しており形態は桿菌であることが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、株式会社リ・クーブから販売されるクーブ菌(商品名)を用いることができる。クーブ菌に含まれる主たる分離菌3種について、生理的性状試験と、PCR法による16SrRNA領域のDNA塩基配列を解析した。その結果、1つの分離菌はパエニバチルス・リゾスファエラと考えられるが、近縁種にはパエニバチルス・シネリス及びパエニバチルス・ファビスポラスが近い。他の分離菌は、バチルス・ノバリスが最も近縁ながら、データベースにない新種の可能性が考えられる。さらに別の分離菌はバチルス・オレロニウスが考えられる。さらに他の分離菌として乳酸桿菌が同定され、これらの複数の細菌からなる複合菌により短時間分解菌が構成されている。クーブ菌の形態としては、複合菌としての総菌数が1×10〜1×10個/gとなるように米糠に分散させた状態で取り扱うことができる。
【0022】
(微生物資材)
本発明の他の実施形態では、前記ミネラル腐植複合体と、好気性細菌及び/又は通性嫌気性細菌を含む単一又は複合細菌と、を含む有機廃棄物分解用微生物資材が提供される。本実施形態の微生物資材は、前記ミネラル腐植複合体に前記微生物を直接添加して菌床を形成することもできるが、主に保水性や水分の蒸発性改善のため、その他の菌床材を含んでもよい。例えば、木材を細かく破砕、又は細粒化した木質系チップやもみ殻、おがくず、ふすま、活性炭、セラミックビーズ、ポリビニルアルコール、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、ビートモス、シリカゲルなどが挙げられる。したがって、本実施形態の微生物資材を構成するミネラル腐植複合体の含有量は、全体の少なくとも50%であり、70%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。全体のほぼ100%が前記ミネラル腐植複合体であってもよい。微生物資材に含まれる細菌数は、特に制限されないが、通常、微生物資材の全体量に対して、1×10〜1×10個/g程度となるように上記単一又は複合細菌を含有することで処理効率の向上、及び悪臭の低減効果が得られる。
【0023】
本実施形態における「有機廃棄物」とは、一般家庭からの生ゴミや、レストラン厨房からの食品残滓物の他、食品加工工場からの加工残渣、スーパーマーケットからの食品廃棄物などを含む。
【0024】
細菌による有機廃棄物の分解は、例えば、生ゴミの成分であるタンパク質、糖質、脂質等を細菌細胞内に取り込み、これらを代謝することにより生存に必要なエネルギーを獲得することであり、分解により炭酸ガス、水、アンモニアなどを発生し、例えば、蛋白質はアミノ酸に、さらにチッ素分を含む有機物質へと分解される。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、有機廃棄物の分解を促進するとは、処理対象となる有機廃棄物の減質量率を向上させることである。ここで、「減質量率」とは、最初に投入した有機廃棄物の質量に対し、所定の時間経過後に分解されて消失した有機廃棄物の質量の割合をいう。例えば、有機廃棄物と微生物資材とを混合し、所定時間経過後の残存廃棄物質量が1/2のときの減質量率は50%であり、1/4が残存した場合の減質量率は75%である。
【0026】
さらに好ましい実施形態における微生物資材は、有機廃棄物の分解速度を促進させるものである。有機廃棄物の減質量率は高いほど好ましいが、そのために長時間の分解処理を行うとエネルギーコストや臭気の発生などの問題が起こる。そこで、できるだけ短時間に有機廃棄物を消滅させることが好ましい。例えば、本発明の微生物資材は、当該微生物資材と、ほぼ等容量の有機廃棄物とを混合して12時間分解処理したときの前記有機廃棄物の減質量率が、少なくとも80%であり、より好ましくは85%であり、さらに好ましくは90%である。
【0027】
本発明では、前記分解促進剤により、有機廃棄物の分解過程で細菌中の遺伝子と酵素の働きが活性化されると考えられる。その理由は必ずしも明らかではないが、分解促進剤としてのミネラル腐植複合体が、非晶質で表面積が大きく、保水性及び通気性に富むため、有機廃棄物を分解するための微生物の活動環境を最適化するためではないかと推測される。また、硫化水素やメタン、アンモニア、塩素、炭素系のガスの吸着分解にも優れ、脱臭効果も有する。臭気については、ミネラル腐植複合体の作用に加え、好気性条件下において微生物酵素の働きでアンモニアを亜硝酸→硝酸に脱窒するため臭気の発生が抑制される。
【0028】
(有機廃棄物の分解処理方法)
本発明の有機廃棄物の分解処理方法は、前述した微生物資材を生ゴミと共に撹拌槽内で、十分な酸素が存在する好気的条件下、50℃〜90℃の温度で処理することにより、悪臭の生じることが無く、迅速に生ゴミを分解する。短時間の分解消滅を達成するためには、適度な水分調整システムと、撹拌槽内に死角をつくらない構造であることも重要である。
【0029】
本発明の有機廃棄物の分解処理方法を実践するための生ゴミ処理装置は、生ゴミと前記微生物資材とを収容する生ゴミ撹拌槽を有し、撹拌槽内を好気状態に保つために生ゴミと微生物資材とを攪拌する攪拌手段と、攪拌槽内温度を50℃〜90℃にコントロールする温度管理手段とを備える。攪拌手段としては、攪拌槽自体を回動したり、攪拌槽内に配備された攪拌杆を駆動することにより攪拌するものであれよいが、撹拌槽内に死角をつくらない掻き羽根構造であることが好ましい。攪拌手段の駆動は連続的に行ってもよく、一定時間毎に間欠的に行ってもよく、一定の酸素濃度を下回った際に行ってもよい。
【0030】
生ゴミ処理槽内の温度としては、本発明で使用する細菌が活性を示す温度であればよく、通常50℃〜90℃の範囲、特に50℃〜75℃の範囲が良く、更に55℃〜65℃であれば細菌の活性が高く、ごみの処理効率が高くなり好ましい。50℃未満であると、菌体が十分に活性化しない上、悪臭の原因の一つと考えられている処理槽内の寄生虫や有害微生物を十分に不活性化することができず、衛生面及び悪臭低減効果の点で好ましくない。一方、90℃より高い温度であると焦げ臭が生じる上、細菌の活性も低下し、好ましくない。
【0031】
攪拌槽内の加温、及び温度調整としては、通常使用されている方法であれば特に限定するものではなく、例えば、攪拌槽内にヒーターユニットが装着されている攪拌装置を使用するなどの方法が挙げられるが、本発明の微生物資材の場合には、分解が進むに従い、細菌の代謝による発熱で、攪拌槽内の温度が60℃以上に上昇する。このため、ヒータの使用はほとんど生ゴミの初期投入時のみとなる。
【0032】
生ゴミ処理槽内の湿度としては、使用する菌種にあわせて適宜調整、或いは未調整のまま処理をおこなうことができるが、菌体の活性や処理効率の点から80%以下であることが好ましく、特に50%〜60%であることが好ましい。このような湿度の調整方法としては通常用いられている方法であれば特に限定するものではなく、例えば処理槽内に設けた湿度計と連動させて加温装置のON/OFFを切り替える方法や、散水装置を設けるなどの方法が挙げられる。また、処理槽に投与する前に日干し或いは乾燥等の前処理を行い、生ゴミの含水量を低減させた後に投与することもできる。
【0033】
本発明で使用する菌株の使用量としては、対象となる生ゴミが十分に処理できる量であれば特に限定されるものではなく、例えば1×10個以上、特に好ましくは、攪拌槽容量に対し1×10個/L以上、好ましくは1×10〜1×1010個/L程度、或いは、1回に投与する生ゴミの量に対し、5×10個/kg以上、特に好ましくは5×10〜5×1010個/kg程度となる量であればよい。
【0034】
これらの菌株は、数ヶ月または数年に1度など、定期的に新しい種菌を投与して使用することができ、また、処理済の堆肥中には一定量の菌株が生存している為、稼動当初に単回投与するだけで継続して使用することも可能である。
【0035】
本発明の生ゴミ処理装置に用いる攪拌槽としては、通常用いられるものであれば特に限定するものではないが、例えば生ゴミを1日50kg、毎日投与する場合には、攪拌槽の容量として100L以上、好ましくは200〜1500L程度、特に200〜500L程度の容量の攪拌槽を用いることで、撹拌等も好適に行なわれ、処理効率も維持できる。
【実施例1】
【0036】
[実施例1]ミネラル腐植複合体の製造
本例では、ミネラル液として環境触媒科学株式会社製のアモル21(AMOR21)を用いた。
(1)使用する材料
イ)ミネラル腐植複合体(ヒューミック25):50重量部(1.5m)、
ロ)おがくず(長いもの出荷時のクッション材):25重量部(0.75m)、及び
ハ)規格外品の傷物の野菜や果物(破砕して水分を絞ったもの):25重量部(0.75m
【0037】
(2)材料の混合方法
回転式の混合機の上部から、ミネラルを滴下する散布装置を付けた混合機に、あらかじめ上記イ)の母材と、ロ)のおがくずを投入して混合した。これを攪拌しながら約30〜40分の間、ミネラル液を散布しつつ、上記ハ)の野菜及び果物の破砕物を投入した。ミネラルが材料とよく混じるようにすべての材料投入後、約10分間混合機を攪拌しながらミネラル散布を行った。用いたミネラル液の総量は約900mlであった。
30〜40分放置した後、混合気の排出口から上記混合物を排出し、ダンプカーにて堆積場まで搬送した。
【0038】
(3)堆積場での作業
5日分の混合処理済みの材料を一つの山となるように堆積した。堆積物の発酵により温度上昇が始まり、70℃になった時点で一度切り返しを行った。すると、いったん温度は低下するが、2、3日後にまた70℃以上の高温に上昇したため、その時点で2回目の切り返しを行った。この操作を約2か月間繰り返した。その頃から、枯草菌などの好気性細菌の活動が終了し、堆積物の温度は徐々に低下し、それに代わって乳酸菌などの嫌気性菌の働きが始まる。
その後、切り返しをしないで約2か月間、堆積したまま放置した。この時点で、鉄物質(鉄イオン)が触媒作用により、分解された代謝物の還元反応が進み、有機物の重縮合反応が起こると考えられる。このようにして製造したミネラル腐植複合体は、商品名「ヒューミック25」として、環境触媒科学株式会社から販売されている。
【0039】
(4)生成したミネラル腐植複合体(ヒューミック25)の用途及び使用方法
このようにして生成したミネラル腐植複合体の半分は商品(ヒューミック25)として販売する。用途としては、土壌改良剤、例えば、重金属や有害高分子有機物等で汚染された土壌の処理剤として使用されている。残りの半分は、上述した製造方法におけるミネラル腐植複合体材料(母材)として再利用する。
【0040】
完成したミネラル腐植複合体50gをサンプルとして肥料分析法の酢酸アンモニウム法でCEC(陽イオン交換容量)を測定したところ、CECは78(meq)であった。
CECが30(meq)以上のものは、フェリハイドライトを含むことが一般的に知られていることから、本例の製造方法で得られたミネラル腐植複合体にフェリハイドライトが含まれることが実証された。なお、このようにして製造した「ミネラル腐植複合体」は、以下の実施例における「鉄腐植複合体」と同義である。

【0041】
[実施例2]しいたけ及びしいたけ菌床の分解処理テスト
本実施例では、株式会社リ・クーブで販売するバイオロボ・クーブ50Rを処理機として、しいたけ及びしいたけ菌床を分解処理した。実施例1で調製した鉄腐植複合体に、株式会社リ・クーブで販売するクーブ菌を約3.3×10個/gとなるように調整、混合した初期投入菌床材50kgをあらかじめ処理機に投入した。これに、しいたけ26kg及びしいたけ菌床29kgの総量55kgの廃棄物を投入し、12時間後、及び24時間後に処理機内の残渣の総重量を測定した。また、次に示す計算式に基づいて、廃棄物の残存量及び減質量率を算出した。
【0042】
残存量(kg)=残渣総重量−初期投入菌床材の重量 (1)
減質量率(%)=(生ゴミ総投入量−残存量)/生ゴミ総投入量 (2)
【0043】
本実施例におけるこれらの値を、残存量A、及び減質量率Aで示す。
なお、比較例として、実施例1で調製した鉄腐植複合体の代わりにおがくずを使用して初期投入菌床材を調整した。この場合の上記式による計算結果を、残存量B及び減質量率Bで表した。その結果を、表1及び図1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1及び図1に示したように、本発明の分解促進剤を用いると、処理時間12時間ですでに90%以上の減質量率を達成し、きわめて短時間でしいたけ及びしいたけ菌床を分解することが分かった。これに対し、本発明の分解促進剤の代わりにおがくずを使用して菌床を調製した比較例では、図1から実施例に比べて初期分解速度が有意に低く、24時間経過後における減質量率でも劣っていることが分かる。
【0046】
[実施例3]食品残渣の分解処理テスト
本実施例では、株式会社リ・クーブで販売するバイオロボ・クーブ50Rを処理機として使用し、約50kgの食品残渣(野菜、果物、魚のあら)を分解処理した。実施例2と同様に、株式会社リ・クーブで販売するクーブ菌を約3.3×10個/g含む鉄腐植複合体からなる初期投入菌床材50kgをあらかじめ処理機に投入した。これに、野菜及び果物29kg及び魚のあら28kgの総量57kgの廃棄物を投入し、12時間後、及び24時間後に処理機内の残渣の総重量を測定した。また、実施例2で用いた計算式(1)及び(2)に基づいて、廃棄物の残存量及び減質量率を算出した。
【0047】
本実施例におけるこれらの値を、残存量A、及び減質量率Aで示す。
なお、比較例として、実施例1で調製した鉄腐植複合体の代わりにおがくずを使用して初期投入菌床材を調整した。この場合の上記式による計算結果を、残存量B及び減質量率Bで表した。その結果を、表2及び図2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2及び図2に示したように、本発明の分解促進剤を用いると、処理時間12時間ですでに93%以上の減質量率を達成し、きわめて短時間で食品残渣を分解することが分かった。これに対し、本発明の分解促進剤の代わりにおがくずを使用して菌床を調製した比較例では、図2から実施例に比べて初期分解速度が有意に低く、24時間経過後における減質量率でも劣っていることが分かる。
【0050】
[実施例4]にんにくの分解処理テスト
本実施例では、株式会社リ・クーブで販売するバイオロボ・クーブ15R−P1を処理機として使用し、約15kgのにんにく残渣を3日間毎日投入した。実施例2及び3と同様に、株式会社リ・クーブで販売するクーブ菌を約3.3×10個/g含む鉄腐植複合体からなる初期投入菌床材20kgをあらかじめ処理機に投入した。これに、にんにく残渣を1日目は15.3kg、2日目は15.3kg及び3日目は15kgの総量45.6kgを投入し、4日目に装置を停止させて上記計算式(1)及び(2)に基づいて、廃棄物の残存量及び減質量率を算出した。
【0051】
本実施例におけるこれらの値を、残存量A、及び減質量率Aで示す。
なお、比較例として、実施例1で調製した鉄腐植複合体の代わりにおがくずを使用して初期投入菌床材を調整した。この場合の上記式による計算結果を、残存量B及び減質量率Bで表した。その結果を、表3に示す。
【0052】
【表3】
表3に示した通り、装置稼動中は良好な分解効果を示し、悪臭も発生しなかった。また、処理より得られた残存物は実施例では2.26kgであり、減質量率も95%と比較例に比べ、10%程度高い効果が得られた。得られた残存物の色は茶褐色であったが、パウダー状で臭いも無く、肥料等に好適に再利用できるものであった。
【要約】
【課題】生ゴミなどの有機廃棄物を短時間で、しかもできるだけ質量又は容積を減らして分解消滅させる。
【解決手段】玄武岩質安山岩から抽出した鉄を含む複数のミネラルの存在下で有機物を腐植化させて得られるミネラル腐植複合体を含む、有機廃棄物の分解促進剤を提供する。
【選択図】図1
図1
図2