(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、身体的に健康な認知症患者は、一見して健常者と区別できず、意外と遠くまで行ってしまうことがある。その場合、上記の対策(1)、(4)では、限定した(登録された)範囲内でしか捜索者との連絡が取れず、また、(2)、(3)では身元を記載した物を身に着けずには外出した場合は効果がない。また、個人情報の保護の観点から、情報の共有化が進まず、その結果、身元が判明していない徘徊老人は数百人に上っていると言われている。
【0007】
本発明の1つの目的は、他所で保護された徘徊患者の連絡先を即座に確認でき、本人の安全確保と介護者の安心を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、必要な情報を手軽に伝えることができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、徘徊の恐れのある認知症患者の連絡先等の情報を二次元コード化し、その二次元コードをネイルシールに印刷し、ネイルシールを本人の爪に貼り付け、必要に応じてスマートフォンや携帯電話などの携帯端末で読取ることにより、本人の識別・確認が即座に容易にできるようにした発明である。
また本発明は、徘徊の恐れのある認知症患者に限らず、例えば、名刺代わり、あるいは自分のホームページやブログ情報など個人情報を伝えたい場合に使うこともできる。
【0010】
本発明は、 二次元コードが印刷された印刷面を有するネイル貼付用識別シールに関する。
【0011】
本発明のネイル貼付用識別シールは、二次元コードが印刷された印刷面の反対面に粘着層を有することが好ましい。
【0012】
本発明のネイル貼付用識別シールでは、二次元コードが含む情報は公開された情報であってもよい。
【0013】
本発明のネイル貼付用識別シールでは、二次元コードが含む情報は個人情報であってもよい。
【0014】
本発明のネイル貼付用識別シールでは、二次元コードが含む情報は企業情報であってもよい。
【0015】
本発明のネイル貼付用識別シールは、二次元コードの印刷部分が耐水性であることが好ましい。
【0016】
本発明のネイル貼付用識別シールは、二次元コードの印刷部分が耐摩耗性であることが好ましい。
【0017】
本発明のネイル貼付用識別シールは、印刷面が光透過性フィルム層で覆われていることが好ましい。
【0018】
該光透過性フィルム層は、クリアコート液の塗布乾燥層であってもよいし、透明フィルムの貼付層であってもよい。
【0019】
本発明はまた、上記のいずれかの識別シールがジェル片に貼付されている識別ジェルシールにも関する。
【0020】
ジェル片が粘着層を有することが好ましい。
【0021】
識別シールは、粘着層の反対面に貼付されていてもよいし、粘着層に貼付されていてもよい。
【0022】
本発明はまた、身元が不明になる可能性のある人の爪に貼付する本発明のネイル貼付用識別(ジェル)シールと、該人が行方不明になった場合保護先で該ネイル貼付用識別(ジェル)シールにコード化された登録連絡先情報を読み取る装置と、読み取った情報に従って登録連絡先に連絡する通信手段とを含む身元不明者の早期保護システムにも関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、他所で保護された徘徊患者の連絡先を即座に確認できるので、本人の安全確保と介護者の安心に寄与する。
更に、本発明の保護システムによれば、保護された徘徊患者等の身元照会が極めて簡単かつ安全、安価に行うことができ、家族や介護者の心配で不安な時間を大幅に短くできると共に、徘徊患者等自身も早期に元の生活に戻ることができる。
【0024】
また、名刺代わり、あるいは自分のホームページやブログ情報など個人情報を伝えたい場合、紙やメールではなく、出先でも即座に必要な情報を手軽に伝えることができる手段を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のネイル貼付用識別シールの構成は極めて簡単であり、例えば
図1〜2に示すように、シート7に二次元コード1(ホームページのURLなど)、二次元コード4(電話番号など)を印刷して印刷部分6を形成した識別シール5である。識別シール5は、爪に貼り付けることを考慮に入れ種々の形を取ることができる。また、識別シール5は例えば剥離面をもつ台紙3に載せておいてもよい。
【0027】
二次元コードは、二次元シンボルとも呼ばれ、例えばQRコード(株式会社デンソーウエーブの登録商標)で知られているQRコード規格に従って作成される識別コードが広く普及しており、その作成アプリケーションは無料で提供されている(たとえば、株式会社シーマンのサイト:http://www.cman.jp/QRcode/)。そして、携帯電話のキャリア各社もその規格に合わせた読取アプリケーションを無料で提供している。そのほか、株式会社エーワンの「ラベル屋さん」というラベル作成サイトでもQRコードを作成することができる。
【0028】
QRコードには専用の読取手段が必要なマイクロQRやデザインQRなども知られている。さらに二次元コードには、Data Matrix(CI Matrix 社)、Maxi Code(URS社)などのマトリックス方式のコードの他、ドット(点)を使ったドットコードも知られている。もちろん、独自に作成基準と読取装置を構築してもよいが、上記の基準に従う方が、汎用性があり便利である。
【0029】
ところで、読み取りに専用の装置を必要とするものより携帯端末やスマートフォンで一般の人でも読み取れるコードの方が即応性があり好ましい。また、高齢者の爪に貼付されているコードネイルが徘徊患者を保護するためのものであることが容易にわかるためにも、QRコードなどの社会に認知されたものの方が有効である。
【0030】
二次元コードに含ませる情報は、使用目的によって適宜決定すればよい。
【0031】
例えば、徘徊老人の保護を目的とする場合、家庭や個人の電話番号などの個別情報を含めると、コンプライアンスの観点から好ましくない。
その場合、二次元コード化する認知症患者の連絡先は、本人または家族へ直接連絡できる情報ではなく、関係施設(介護福祉事務所や担当ケアマネージャーなど)、自治体の福祉課、最寄りの警察の案内所の電話番号やHPのURLという公開情報とする。本人が行方不明になっていれば、周りの関係者は探しているので、個人を特定するような情報(年齢、性別、格好等)は不要であると考えられる。
【0032】
一方、二次元コードに企業情報や私的な情報を含ませてもよい。たとえば、会社のホームページやfacebook、blogのURL、名刺の内容などを二次元コード化し、営業ツールとして用いてもよい。
また、親しい友人等に対しては、個人的な情報、あるいは趣味に情報などを二次元コード化することも面白い。
【0033】
二次元コードを付ける場所として、爪を選んだ理由は、特に高齢者における次の点を考慮した結果である。
(1) 身辺性、倫理性
認知症の患者は、靴、衣服等は履かない、着替えないといった事態が生じやすい。一方、身体に直接書くのは人間の尊厳の点から許されない。その点、爪は髪と同じく成長し切り取られるものであり、倫理面からも許容できる。
(2) 健康性
爪を保護ケアすることで、爪の補強や衛生面が向上する。
(3) 作業性
作業的には、ネイルアートと同じレベルなので医療行為ではなく、資格のない施設の職員や家族が施術できる。
(4) 消費性
爪は成長するので定期的に切らなければならず、商品として、定期的な交換が必要になり(2〜3週間に1回)、消費性が高い。
(5) ファッション性
二次元コード化したネイルシールを貼付した爪以外の爪に対しても、ネイルアートへの関心が高まり、美容・ファッションへの興味を呼び起し、これまで少なかった高齢者のネイル市場の拡大につながる可能性がある。
【0034】
本発明のネイル貼付用識別シールは、構成が簡単な故に種々の態様で実施できる。以下に、実施の形態の例を図面を参照しながら説明するが、それらのみに限定されるものではない。
【0035】
図1は本発明のネイル貼付用識別シール5を台紙3上に載せた概略平面図である。識別シール5は、例えば市販のラベル印刷用のシートに通常のインクジェットまたはレーザープリンターでその都度オンデマンドで印刷してもよいし、例えば自治体の施設や警察署、全国に広がる大手福祉法人の公開番号などは、予め読み取りが確認できた二次元バーコードを連続してオフセット印刷などで多量に印刷して提供してもよい。
また、印刷用シートに台紙3の剥離面から剥がしやすいように識別シール5の周囲を囲う枠2として切込みを入れておいてもよい。
二次元コードの印刷に用いるインクの色は黒でも他の色でもよいが、爪または下地の色とのコントラストがハッキリした組合せにすることが、読み取りを容易にする点から好ましい。
【0036】
図2は、本発明のネイル貼付用識別シール5の一実施形態の概略断面図であり、シート7の上に二次元コードが印刷された印刷部分6が形成されている。また、爪や他のシールに貼付できるように、粘着層8を印刷面の反対側に設けてもよい。粘着層は印刷部分6を覆うように設けてもよい。その場合、印刷する二次元コードは反転した画像として印刷しておく。
シート7は透明でも着色されていてもよいが、二次元コードの印刷部分6とのコントラストが明確になる組合せが、読み取りを容易にする点から好ましい。
もちろん、シート7を接着剤(図示されていない)を用いて爪や他のシールに接着してもよい。接着剤の代わりにクリアだけでなく種々の色のマニキュア液を用いてもよい。
【0037】
印刷用のインクは、耐水性、耐摩耗性を有することが望ましい。しかし、そうした機能を持つインクを入手しにくい家庭または介護や企業の職場で識別シールを作成するときには、耐水性や耐摩耗性に乏しい印刷部分を水や磨耗から保護するための保護フィルム層9を印刷部分6を覆うように設けることが好ましい(
図3参照)。
この保護フィルム層9は光透過性であり、たとえば、ネイルアートの分野で私用されているクリアトップコート用のマニキュア液を塗布乾燥して形成してもよいし、耐水性の透明フィルムを貼付して形成してもよい。
【0038】
図8は本発明のネイル貼付用識別シール5を手の親指の爪に貼り付けたときの写真である。
【0039】
図4〜7及び
図9は、本発明のネイル貼付用識別ジェルシール13を説明するための図面である。
【0040】
高齢者になるほど、爪の状態は悪くなり、爪の表面が波を打ったり皺が寄ったりし、識別シールを平坦に貼付することが難しくなる。二次元コードの印刷面が波を打つと、読み取りが困難になり、本発明の目的が達成しにくくなる。
そのような場合、
図4に示すように、例えば識別シール5を柔らかく厚みのあるジェルシール10に一旦貼付したネイル貼付用識別ジェルシール13とすることにより、貼付する爪の状態にかかわらず、二次元コードの印刷面が平坦になるように貼ることができる。
柔らかく厚みのあるジェルシール10は、ネイルアートの分野で良く知られており、予め3D形状に成形された3Dジェルシールを用いることができる。あるいは、ジェルシール用の液を爪に塗布後光硬化させるという下地処理で形成してもよい。
【0041】
本発明のネイル貼付用識別ジェルシールにおいても、識別シール5について
図3と
図4で述べたように、粘着層11(
図5)、光透過性保護フィルム層12をジェルシール10に設けてもよい(
図6)。
【0042】
ジェルシール10は透明でも着色され、または模様が施されていてもよい。ジェルシール10が光透過性に優れたクリアな物である場合、例えば
図7に示すように、識別シールを粘着層11側に貼付して、爪とジェルシール10とで挟むようにしてもよい。この場合、二次元コードの印刷面は十分に外界から保護され、長持ちさせることができる。
【0043】
図9は、ジェルシール10として模様が施されたシールを用いた本発明のネイル貼付用識別ジェルシール13を手の親指の爪に貼り付けたときの写真である。
【0044】
なお、ジェルシールに代えて柔軟性のある平坦なシールを用いてもよい。
【0045】
爪に貼付したシールは、爪の成長と共に爪の先端に移動し、爪を切ることで一部欠損して読み取れなくなるが、そうなる前に、繰り返し貼り替えることでその機能を維持することができる。貼り替えは、爪の成長やシールの摩耗等の観点から、1週間から10日程度に1回行うことが望ましい。
なお、当初は違和感を持ち直ぐに剥がす人の場合であっても、繰り返すことにより日常化し、気にならなくなる。
【0046】
本発明によれば、前に概説したように、本発明のネイル貼付用識別(ジェル)シールを用いた徘徊患者などの身元不明者の早期保護システムを提供することができる。以下、具体的に説明する。
【0047】
本発明の身元不明者の早期保護システムは、身元が不明になる可能性のある人の爪に貼付する本発明のネイル貼付用識別(ジェル)シールと、該人が行方不明になった場合保護先で該ネイル貼付用識別(ジェル)シールにコード化された登録連絡先情報を読み取る装置と、読み取った情報に従って登録連絡先に連絡する通信手段とを含む。
【0048】
以下、
図10に従って、本発明の身元不明者の早期保護システムの具体例を説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではなく、本発明を知って通常なされる多様な修正や変形をも含むものである。
【0049】
図10において、101は身元が不明になる可能性のある人であり、例えば認知症を患い徘徊の危険性のある高齢者(徘徊患者)、幼児、などが挙げられる。102は徘徊患者等101に貼付するネイル貼付用識別(ジェル)シールである。103は徘徊患者等101の家族や介護者(介護ヘルパー、施設従業員、訪問看護師等)である。
【0050】
104は登録連絡先であり、たとえば、介護施設104a、警察の尋ね人窓口104b、役所の福祉窓口104cなど、電話番号やHPが社会に公開された連絡先が挙げられる。なお、迷子などが対象となる遊園地やイベント会場では、それ専用の連絡先を登録先としてもよい。
105は徘徊患者等101を保護し、身元を確認したい保護先であり、たとえば交番105a、コンビエンスストア105b、福祉施設105cなどの他、善意の個人も含まれる。
【0051】
保護先105では、爪にネイルシール102が貼付されていることが確認された場合、二次元コードの読取装置106でコードに含まれる連絡先を読み取る。この読取装置106は、専用の読取装置でもよいし、携帯端末やスマートフォンにインストールされている読み取りアプリケーションを使うこともできる。
【0052】
「いつでもどこでも」というニーズからは、携帯端末やスマートフォンにインストールされている読み取りアプリケーションを使うことが望ましい。現在は無料でダウンロードできる二次元コードの読み取りアプリケーションは多くないが、これからは、無料でインストールできるアプリケーションの種類や機能が多くなることが望まれる。
読み取られる情報、すなわちコード化された情報は、上記のとおり、登録連絡先(身元照会先情報)である。
【0053】
保護先105は、読取装置106で読み取った情報に従って、通信手段107により直接、登録連絡先104に連絡を取り、身元の照会と引き取りを実現する。読取装置106が携帯端末やスマートフォンである場合、読取装置と通信手段が同一の装置となる。
【0054】
つぎに、
図10に従って、本発明のシステムの流れを説明する。
まず、家族や施設等の介護者103の要請により登録先の連絡情報をコード化した本発明のネイル貼付用識別(ジェル)シール102を作製し、介護者103に提供する。この際、徘徊患者等101の氏名、年齢、性別、身体的特徴、特徴的仕草等を併せて通知しておく。この情報の項目を全国で統一しておくと、身元の照会があったときに確認が容易になる。
提供されたシール102を介護者103は定期的に徘徊患者等101の爪に貼付する。
【0055】
このルーティンを繰り返しているうちに、何かの拍子に徘徊患者101が徘徊を始め、行方不明になった場合、介護者103は、行方不明になったこと、さらに行方不明時の服装や持ち物等を直ちに登録連絡先104に連絡する。
徘徊している地域が地元であれば初期の捜索で徘徊患者等101を知っている方々に見つかる可能性もあるが、地元から離れた他所となると、行方不明情報すら届いておらず、保護したとしても、保護先105では身元不明者と扱われる。
【0056】
本発明では、爪に二次元コードのネイルシール102が貼付されていることが確認されると、徘徊患者等101であると直ちに認識され、読取装置106でコードに含まれる連絡先情報を読み取る。この情報は単に登録連絡先の電話番号でもよいし、注意書き(この人を保護したときは○○署の尋ね人係○○−××××−△△△△にご連絡ください)でもよい。ただし、個人を特定できるような情報は悪用される恐れもあるので記載しないことが望ましい。
【0057】
保護先105は読み取った情報に従い、通信手段107により、「かくかくしかじかの風体の方を保護している」との連絡を登録連絡先104にする。登録連絡先104では、この「かくかくしかじか」を登録されている情報および行方不明時の情報と照らし合わせて、本人確認を行う。その際、上記のように統一された本人情報があるとさらに身元の照会の精度と速度が向上する。
連絡を受け本人確認ができた場合、登録連絡先104は直ちに介護者103に連絡を取る。介護者103または登録連絡先104では、徘徊患者等101の引取りを行う。
【0058】
本発明の身元不明者早期保護システムは、遊園地、イベント会場などでの迷子(子供に限らない)の早期保護にも利用できる。この場合のコード化される連絡先は、必ずしも公開情報でなくてもよく、例えば主催者等の迷子案内所の電話番号などが例示できる。
【0059】
このように本発明の保護システムによれば、保護された徘徊患者等の身元照会が極めて簡単かつ安全、安価に行うことができ、家族や介護者の心配で不安な時間を大幅に短くできると共に、徘徊患者等自身も早期に元の生活に戻ることができる。
【0060】
本発明のシステムには、
図10に記載した機関のほかに、要すれば、各種の手続きや連絡の代行を行う事業所を介することもできる(図示されていない)。
たとえば、ネイル貼付用識別(ジェル)シール102の作製と配布、登録連絡先104の開拓と登録、保護された徘徊患者等101の引取り等を専門に代行する組織(業者)を設けてもよい。